(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158288
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】媒体処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/16 20190101AFI20241031BHJP
【FI】
G07D11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073372
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174104
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 康一
(72)【発明者】
【氏名】細川 和宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智久
【テーマコード(参考)】
3E141
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA06
3E141CA07
3E141FG01
(57)【要約】
【課題】搬送部の操作性を保ちつつ破損を防止する。
【解決手段】紙幣入出金装置11は、上搬送部64と、ステー82と、ポスト摺動溝78gと、搬送部開放状態にあるときのポスト摺動溝78gにおけるステーポスト82pの位置に設けられたロック機構79とを設け、ロック機構79は、搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ回動する際にステーポスト82pの外形とほぼ同一の間隔をポスト摺動溝78gの摺動溝上側縁部78guSとの間で空けることにより、ステーポスト82pの移動を許容し、搬送部開放状態において、第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力が加わらない限り搬送部開放状態を維持する一方、第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力が加わると、ポスト摺動溝78gにおいて摺動溝上側縁部78guSと対向する傾斜面78Sよりもポスト摺動溝78gの外側へ退避することにより、ステーポスト82pの移動を許容する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体が搬送される搬送路を有し、前記搬送路を閉塞して前記媒体を搬送する搬送部閉鎖状態と、前記搬送路を開放する搬送部開放状態との間で本体部に対し回動可能である搬送部と、
一端側が前記搬送部に接続され他端側にステーポストが形成され、前記搬送部閉鎖状態と前記搬送部開放状態との間を回動する前記搬送部と連動して移動し、前記搬送部開放状態の前記搬送部を支持するステー部と、
前記本体部側に設けられ、内部において前記ステーポストを摺動させ、前記搬送部と連動した前記ステー部の移動軌跡を規定する溝部と、
前記搬送部が前記搬送部開放状態にあるときの前記溝部における前記ステーポストの位置に設けられたロック機構と
を有し、
前記ロック機構は、
前記搬送部が前記搬送部閉鎖状態から前記搬送部開放状態へ回動する際に前記溝部における前記ステーポストの移動を許容し、前記搬送部開放状態において、第1の弾性力よりも大きい力が加わらない限り前記搬送部開放状態を維持する
媒体処理装置。
【請求項2】
前記ロック機構は、
前記搬送部が前記搬送部閉鎖状態から前記搬送部開放状態へ回動する際に、前記ステーポストの外形とほぼ同一の間隔を前記溝部の一方の縁部との間で空けることにより前記溝部における前記ステーポストの移動を許容し、前記搬送部開放状態において、前記第1の弾性力よりも大きい力が加わると、前記溝部において前記一方の縁部と対向する他方の縁部よりも前記溝部の外側へ退避する
請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項3】
前記ロック機構は、
前記搬送部が前記搬送部閉鎖状態から前記搬送部開放状態へ回動する際に、前記第1の弾性力よりも小さい第2の弾性力よりも大きい力が加えられた場合に前記溝部における前記ステーポストの移動を許容し、前記搬送部開放状態において、前記第1の弾性力よりも大きい力が加わらない限り前記搬送部開放状態を維持する
請求項1に記載の媒体処理装置。
【請求項4】
前記ロック機構は、
前記搬送部が前記搬送部閉鎖状態から前記搬送部開放状態へ回動する際に、前記第2の弾性力よりも大きい力が加えられた場合に前記ステーポストの外形とほぼ同一の間隔を前記溝部の一方の縁部との間で空けることにより前記溝部における前記ステーポストの移動を許容し、前記搬送部開放状態において、前記第1の弾性力よりも大きい力が加わると、前記溝部において前記一方の縁部と対向する他方の縁部よりも前記溝部の外側へ退避する
請求項3に記載の媒体処理装置。
【請求項5】
前記ロック機構は、少なくとも第1のロック機構及び第2のロック機構を有し、
前記第1のロック機構は、
前記搬送部が前記搬送部閉鎖状態から前記搬送部開放状態へ回動する際に、前記第2の弾性力よりも大きい力が前記ステーポストから加えられた場合に前記溝部における前記ステーポストの移動経路から退避し、
前記第2のロック機構は、
前記第1のロック機構に対し前記溝部から離隔する側において前記第1のロック機構と少なくとも一部分に隙間を空けて配され、前記搬送部開放状態において、前記第1の弾性力よりも大きい力が加えられた前記第1のロック機構に当接され前記溝部から離隔する方向へ移動し、前記第1のロック機構を前記ステーポストの移動経路から退避させる
請求項3又は請求項4に記載の媒体処理装置。
【請求項6】
前記ステーポストは、
前記搬送部が前記搬送部閉鎖状態から前記搬送部開放状態へ回動する際に、前記溝部における上側の縁部と当接しつつ移動して前記第2の弾性力よりも大きい力を前記第1のロック機構に加えて前記第1のロック機構を乗り越え、前記搬送部開放状態において、前記溝部における下側の縁部と当接しつつ移動して前記第1の弾性力よりも大きい力を前記第1のロック機構及び前記第2のロック機構に加えて前記第1のロック機構を乗り越える
請求項5に記載の媒体処理装置。
【請求項7】
前記ステーポストは、
前記搬送部が前記搬送部閉鎖状態から前記搬送部開放状態へ回動する際に、前記溝部における上側の縁部と当接しつつ移動して前記ロック機構を乗り越え、前記搬送部開放状態において、前記溝部における下側の縁部と当接しつつ移動して前記第1の弾性力よりも大きい力を前記ロック機構に加えて前記ロック機構を乗り越える
請求項1又は請求項2に記載の媒体処理装置。
【請求項8】
前記ステー部は、前記搬送部における回動軸方向の一方向側の端部に設けられ、
前記搬送部は、前記ステー部とは前記回動軸方向の逆方向側の端部に、前記搬送部閉鎖状態と前記搬送部開放状態との間で前記搬送部が回動する際に使用者により把持される取手が形成されている
請求項3又は請求項4に記載の媒体処理装置。
【請求項9】
前記ロック機構は、弾性部材を含む
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の媒体処理装置。
【請求項10】
前記ロック機構は、板ばねである
請求項9に記載の媒体処理装置。
【請求項11】
前記搬送部は、前記搬送部の一端側に設けられた搬送部回動軸を軸として回動先端側が上下移動するように回動し、
前記ステー部は、
前記一端側が前記搬送部に対し回動可能に接続され、
前記他端側が前記本体部に対し摺動可能に支持される
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の媒体処理装置。
【請求項12】
前記媒体は紙幣であり、
前記搬送部は、前記紙幣を収納する紙幣収納庫の上側に設けられている
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の媒体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は媒体処理装置に関し、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストア等のような小売店舗の精算所において使用されるレジ釣銭システムに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レジ釣銭システムにおいては、POS(Point Of Sales)システム等に接続されたPOSレジに、紙幣や硬貨の入出金処理を行う釣銭機が組み合わされたものが普及している。この釣銭機のうち紙幣を処理する媒体処理装置としての紙幣入出金装置は、レジ係員との間で紙幣の授受を行う入出金部と、紙幣を搬送する搬送部と、投入された紙幣の金種及び真偽を鑑別する鑑別部と、再利用可能な紙幣を金種毎に収納する紙幣収納庫と、再利用すべきでない紙幣を収納するリジェクト庫とを有するものがある。また紙幣入出金装置としては、例えば搬送部に紙幣が詰まった際に、該紙幣入出金装置の内部を外部へ開放させるように搬送部が回動軸を軸として開放方向へ回動するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような紙幣入出金装置においては、搬送部を容易に開閉可能とすると共に、搬送部に想定以上の大きな外力が加わった場合に搬送部の破損を防止することにより、搬送部の操作性を保ちつつ破損を防止することが望まれている。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、搬送部の操作性を保ちつつ破損を防止し得る媒体処理装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明の媒体処理装置においては、媒体が搬送される搬送路を有し、搬送路を閉塞して媒体を搬送する搬送部閉鎖状態と、搬送路を開放する搬送部開放状態との間で本体部に対し回動可能である搬送部と、一端側が搬送部に接続され他端側にステーポストが形成され、搬送部閉鎖状態と搬送部開放状態との間を回動する搬送部と連動して移動し、搬送部開放状態の搬送部を支持するステー部と、本体部側に設けられ、内部においてステーポストを摺動させ、搬送部と連動したステー部の移動軌跡を規定する溝部と、搬送部が搬送部開放状態にあるときの溝部におけるステーポストの位置に設けられたロック機構とを設け、ロック機構は、搬送部が搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ回動する際に溝部におけるステーポストの移動を許容し、搬送部開放状態において、第1の弾性力よりも大きい力が加わらない限り前記搬送部開放状態を維持するようにした。
【0007】
これにより本発明は、ステー部により搬送部開放状態の搬送部を支持し搬送部閉鎖状態へ回動しないようにできると共に、搬送部開放状態の搬送部に大きな外力が加わり第1の弾性力よりも大きい力がステーポストからロック機構に加わるとロック機構を溝部の外側へ退避させてステーポストの移動を許容することにより、搬送部に掛かる負荷を軽減できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ステー部により搬送部開放状態の搬送部を支持し搬送部閉鎖状態へ回動しないようにできると共に、搬送部開放状態の搬送部に大きな外力が加わり第1の弾性力よりも大きい力がステーポストからロック機構に加わるとロック機構を溝部の外側へ退避させてステーポストの移動を許容することにより、搬送部に掛かる負荷を軽減でき、搬送部の操作性を保ちつつ破損を防止し得る媒体処理装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】レジ釣銭システムの外観構成を示す斜視図である。
【
図2】紙幣入出金装置の内部構成を示す右側面図である。
【
図3】搬送部閉鎖状態における紙幣入出金装置の構成を示す斜視図である。
【
図4】搬送部開放状態における紙幣入出金装置の構成を示す斜視図である。
【
図5】第1の実施の形態によるブラケット及びロック機構の構成を示す左側面図である。
【
図6】第1の実施の形態による搬送部閉鎖状態における紙幣入出金装置の構成を示す左側面図である。
【
図7】第1の実施の形態による搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する途中の状態(1)であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図8】第1の実施の形態による搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する途中の状態(2)であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図9】第1の実施の形態による搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する途中の状態(3)であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図10】第1の実施の形態による搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する途中の状態(4)であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図11】第1の実施の形態による搬送部開放状態であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図12】第1の実施の形態によるロック解除状態であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図13】第1の実施の形態による搬送部開放状態から搬送部閉鎖状態へ遷移する途中の状態であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図14】第1の実施の形態による第1ロック板ばね退避状態であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図15】従来のブラケットの構成を示す左側面図である。
【
図16】従来の搬送部開放状態であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図17】第2の実施の形態によるブラケット及びロック機構の構成を示す左側面図である。
【
図18】第2の実施の形態による搬送部閉鎖状態における紙幣入出金装置の構成を示す左側面図である。
【
図19】第2の実施の形態による搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する途中の状態(1)であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図20】第2の実施の形態による搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する途中の状態(2)であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図21】第2の実施の形態による搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する途中の状態(3)であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図22】第2の実施の形態による搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する途中の状態(4)であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図23】第2の実施の形態による搬送部開放状態であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図24】第2の実施の形態によるロック解除状態であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図25】第2の実施の形態による搬送部開放状態から搬送部閉鎖状態へ遷移する途中の状態であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【
図26】第2の実施の形態によるロック板ばね退避状態であり、(A)は紙幣入出金装置、(B)は開放時ポスト収納空間近辺を示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0011】
[1.第1の実施の形態]
[1-1.レジ釣銭システムの構成]
図1に外観を示すように、レジ釣銭システム1は、それぞれ独立した装置である上側のPOSレジ2と下側の釣銭機3とにより構成されている。このレジ釣銭システム1は、例えばスーパーマーケットやコンビニエンスストアのような小売店舗の精算所(いわゆるレジ)において、顧客が購入したい商品を精算する際に、レジ係員により操作される。以下では、レジ係員が対峙する側面及びその反対面をそれぞれ前面及び後面とし、さらに該レジ係員から見て左右及び上下を定義して説明する。
【0012】
POSレジ2は、内蔵されたレジ制御部5が全体を統括制御する。またPOSレジ2には、図示しないバーコードリーダが接続されており、商品に付されたバーコードをこのバーコードリーダで読み取ることにより、該商品を認識する。表示操作部6は、例えばタッチパネルにより構成されており、認識した商品の名称や金額等を液晶ディスプレイに表示する。また表示操作部6は、表示画面の一部に数字等の入力キーを表示しており、タッチパネル上の入力キーに対応する箇所が押下操作されると、該入力キーに対応した入力操作を受け付けてレジ制御部5へ送信する。これに応じてレジ制御部5は、商品の数量の増減や金額の修正等の各処理を行う。またPOSレジ2には、レシート処理部7が内蔵されている。レシート処理部7は、認識した商品の名称や金額等をレシートに印字し、これをレシート排出口7Aから排出する。
【0013】
一方、釣銭機3は、大きく分けて、右側の紙幣入出金装置11と、左側の硬貨入出金装置12と、前側上部の表示操作部13とにより構成されている。
【0014】
紙幣入出金装置11は、レジ係員により紙幣入出金口14から入金された紙幣を取り込んで紙幣収納庫15(紙幣収納庫15a、15b及び15c)(
図2)に収納すると共に、レジ制御部5から指示された紙幣を紙幣収納庫15(
図2)から取り出し、これを紙幣入出金口14から釣銭として出金する。
【0015】
硬貨入出金装置12の前面には、上段に硬貨入金口16が設けられ、その下方にリジェクト口17及び硬貨出金口18が設けられている。硬貨入出金装置12は、レジ係員により硬貨入金口16へ投入された硬貨を取り込んで内部の収納庫に収納すると共に、レジ制御部5から指示された金額に応じた金種及び枚数の硬貨を硬貨出金口18から釣銭として出金する。
【0016】
表示操作部13は、所定の表示パネル及び所定の操作ボタンの組み合わせにより構成されている。表示操作部13の表示パネルは、紙幣入出金装置11及び硬貨入出金装置12における稼働状況を表示し、例えば硬貨入出金装置12において釣銭用の硬貨が不足していることや、所定のセンサにより異常を検出したこと、及びその箇所等を表示する。表示操作部13の操作ボタンは、レジ係員等による押下操作を介して、例えば硬貨の搬送等に関する指示を受け付ける。
【0017】
また釣銭機3の内部には、釣銭制御部21が設けられている。釣銭制御部21は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を中心に構成されており、フラッシュメモリ等でなるメモリから各種プログラムを読み出して実行することにより、釣銭機3を統括制御し、入金取引や出金取引等の種々の処理を行う。
【0018】
[1-2.紙幣入出金装置の構成]
紙幣入出金装置11は、
図2に示すように、紙幣入出金装置フレーム63の内部に紙幣に関する種々の処理を行う複数の部分が組み込まれており、釣銭制御部21(
図1)が各部(入出金部24、搬送部26、鑑別部28、紙幣収納庫15(紙幣収納庫15a、15b及び15c)並びにリジェクト回収庫30)を統括制御する。
【0019】
入出金部24は、紙幣入出金装置11内における前側上部に位置している。この入出金部24は、使用者であるレジ係員により紙幣入出金口14(
図1)から入金された紙幣を取り込んで1枚ずつ分離し搬送部26へ繰り出すと共に、使用者へ出金すべき紙幣を紙幣収容空間39において入出金部ステージ38に紙面を上下方向に向けて集積された状態で、すなわち上下方向に沿って整列された状態で収容し紙幣入出金口14から釣銭として出金する。
【0020】
入出金部24において第1搬送部26aと紙幣を受け渡す繰出集積口の近傍には、繰出集積部40が設けられている。繰出集積部40は、ピックアップローラ41、繰出集積ローラ42及び集積ローラ45により構成されており、図示しない入出金部繰出集積部駆動モータにより駆動される。ピックアップローラ41は、入出金部24において紙幣を収容する空間である紙幣収容空間39の上側において入出金部ステージ38の上面と対向するよう設けられ、その外周面の一部にゴム等の摩擦係数の大きい高摩擦部材が取り付けられている。またピックアップローラ41は、
図2中反時計回り(繰出方向)に回転することにより、入金処理において紙幣入出金口14(
図1)から投入された入出金部ステージ38上の紙幣を搬送部26側に送り出す。繰出集積ローラ42は、フィードローラ43及びゲートローラ44により構成されており、ピックアップローラ41によって送り出された紙幣をゲートローラ44により1枚ずつ分離しながらフィードローラ43により搬送部26へと繰り出す。フィードローラ43は、ピックアップローラ41に対し紙幣の繰出方向の下流側である後側に設けられ、その外周面の一部にゴム等の摩擦係数の大きい高摩擦部材が取り付けられている。またフィードローラ43は、
図2中反時計回り(繰出方向)に回転することにより、ピックアップローラ41によって送り出された紙幣を集積繰出口を介して搬送部26へと繰り出す。ゲートローラ44は、フィードローラ43の下側に対向配置され、紙幣の繰出時には回転しないことにより紙幣収容空間39から送り出されてきた紙幣を1枚ずつ分離する一方、紙幣収容空間39へ紙幣を戻す紙幣戻しの際にはフィードローラ43と共に回転することにより、紙幣を搬送部26から紙幣収容空間39内に戻す。集積ローラ45は、フィードローラ43の下側においてゲートローラ44よりも紙幣の集積方向の下流側である前側に設けられ、
図2中反時計回り(集積方向)に回転することにより、搬送部26から搬送され出金処理において紙幣入出金口14から排出される紙幣を紙幣収容空間39へ集積させる。集積ローラ45の回転軸である集積ローラ軸には、ゴム等の弾性部材で形成された舌片が、左右方向に所定の間隔を空けて複数本設けられている。この舌片は、集積ローラ45と共に
図2中反時計回りに回転することにより、紙幣収容空間39へ送り出された紙幣の後端部分を叩き、該紙幣を入出金部ステージ38上に集積させる。
【0021】
搬送部26は、ローラやベルト等により、搬送路に沿って長方形の紙幣を短手方向に搬送する。搬送部26の分岐点には、ブレード35(ブレード35a、35b及び35c)が設けられており、釣銭制御部21(
図1)の制御に基づき回動することにより、紙幣の搬送先を切り替える。
【0022】
鑑別部28は、入出金部24の後方に位置している。この鑑別部28は、入金される紙幣、出金される紙幣及び回収される紙幣をその内部で搬送しながら、光学素子や磁気検出素子等を用いて該紙幣の金種及び真偽、正損(損傷しているか否か)、搬送状態を認識し、その鑑別結果を釣銭制御部21へ通知する。これに応じて釣銭制御部21は、取得した鑑別結果に基づいて紙幣の搬送先を決定する。
【0023】
リジェクト回収庫30は、紙幣入出金装置11内における前端近傍であって入出金部24の下に隣接する位置に設けられており、内部に紙幣を集積して収納する紙幣収容空間を有している。このリジェクト回収庫30は、上側のリジェクト庫31と下側の回収庫32とが一体となりリジェクトステージ33により互いに空間が分離された一体型収納庫であり、紙幣入出金装置11に対し着脱可能な着脱式収納庫である。リジェクト回収庫30は、回収庫32へ紙幣を収納する場合はリジェクトステージ33の後端を持ち上げることにより第3搬送部26cから回収庫32へ紙幣を搬送し得る状態にする一方、リジェクト庫31へ紙幣を収納する場合はリジェクトステージ33の後端を下げることにより第3搬送部26cからリジェクト庫31へ紙幣を搬送し得る状態にする。
【0024】
リジェクト庫31は、鑑別部28及び釣銭制御部21により、破損した紙幣(いわゆる損券)と鑑別された紙幣、偽造券と判別された紙幣及び5千券や2千券等の還流されない金種の紙幣等、再利用すべきで無いと判断された紙幣(すなわち異常判定された異常紙幣)が第3搬送部26cにより搬送されてくると、該紙幣を内部に収納する。回収庫32は、紙幣収納庫15に収納された紙幣の売り上げ金等の一部を回収する回収処理が行われる際に、該紙幣が第3搬送部26cにより搬送されて来ると、該紙幣を内部に収納する。
【0025】
リジェクト回収庫30において第3搬送部26cから紙幣を受け取る集積口の近傍には、集積ローラ50が設けられており、図示しない集積駆動モータにより駆動される。集積ローラ50は、テンションローラ51及びフィードローラ52により構成されている。テンションローラ51は、
図2中時計回り(集積方向)に回転することにより、第3搬送部26cから搬送された紙幣をリジェクト庫31又は回収庫32へ集積させる。フィードローラ52は、テンションローラ51の下側に対向配置され、
図2中反時計回り(集積方向)に回転することにより、第3搬送部26cから搬送された紙幣をリジェクト庫31又は回収庫32へ集積させる。フィードローラ52の回転軸であるフィードローラ軸には、ゴム等の弾性部材で形成された舌片が、左右方向に所定の間隔を空けて複数本設けられている。この舌片は、フィードローラ52と共に
図2中反時計回りに回転することにより、リジェクト庫31又は回収庫32の紙幣収容空間へ送り出された紙幣の後端部分を叩き、該紙幣をリジェクトステージ33又は回収庫32の底板上に集積させる。
【0026】
リジェクト回収庫30の後方には、前側から後側へ向けて順に紙幣収納庫15a、15b及び15cが設けられている。各紙幣収納庫15(紙幣収納庫15a、15b及び15c)は、何れも同様に構成されており、直方体状に形成されると共に内部に紙幣を集積して収納する紙幣収容空間19を有している。各紙幣収納庫15は、それぞれ収納すべき紙幣の金種が予め設定されている。この紙幣収納庫15は、鑑別部28及び釣銭制御部21により損傷の程度が小さく再利用が可能であると判断された紙幣が、その金種に応じて第2搬送部26bにより搬送されてくると、該紙幣を内部に集積して収納する。また紙幣収納庫15は、釣銭制御部21から紙幣を繰り出す指示を受け付けると、集積している紙幣を1枚ずつに分離して繰り出し、搬送部26に受け渡す。
【0027】
それぞれの紙幣収納庫15において第2搬送部26bと紙幣を受け渡す繰出集積口の近傍には、繰出集積部60が設けられている。この繰出集積部60は、入出金部24における繰出集積部40とほぼ同様に構成されており、図示しない収納庫繰出集積部駆動モータにより駆動される。具体的に紙幣収納庫15cの繰出集積部60は、繰出集積部40におけるピックアップローラ41、繰出集積ローラ42(フィードローラ43及びゲートローラ44)並びに集積ローラ45とそれぞれ対応する、ピックアップローラ90、繰出集積ローラ91(フィードローラ92及びゲートローラ93)並びに集積ローラ94により構成されている。
【0028】
このような紙幣入出金装置11は、
図3に示す釣銭機筐体4に対し前後方向へ往復移動可能に構成されている。紙幣入出金装置11は、保守員により紙幣入出金装置11の内部の保守作業が行われる場合、釣銭機筐体4又は紙幣入出金装置11に設けられた装置引出錠部(図示せず)が解錠され、紙幣入出金装置11が釣銭機筐体4から前方へ向かって
図3に示すように前側へ引き出されると、紙幣入出金装置11の内部の保守作業が可能な状態となる。一方、紙幣入出金装置11は、保守作業が完了し保守員により後側へ押し込まれると、紙幣入出金装置11における後側の大部分が、釣銭機筐体4内部に収納された状態となる。
【0029】
かかる構成においてレジ釣銭システム1は、鑑別部28による紙幣の鑑別結果等をもとに釣銭制御部21が各部を制御して、紙幣の入金処理、出金処理及び回収処理等を行う。
【0030】
[1-3.搬送部の構成]
[1-3-1.搬送部全体の構成]
搬送部26には、多数の回転するローラや紙幣を案内するガイド等が適宜配置されており、紙幣の短手方向を進行方向として、主にほぼ水平方向に沿った前後方向に搬送させるような直線状の搬送路が形成されている。また搬送部26は、入出金部24と鑑別部28の前側とを接続する第1搬送部26aと、鑑別部28を前後方向に挿通させるように紙幣を搬送し、鑑別部28の後側と紙幣収納庫15a、15b及び15cそれぞれとを接続する第2搬送部26bと、リジェクト回収庫30と鑑別部28の前側とを接続する第3搬送部26cとにより構成されている。
【0031】
搬送部26には、主に第2搬送部26bに、複数組の搬送ローラ62が前後方向に並んで設けられていると共に、該搬送ローラ62の上側にベルト74が前後方向に沿って設けられており、これらが図示しない搬送部駆動モータにより駆動される。ベルト74と各搬送ローラ62とは、搬送部26の搬送路を挟んで上下方向に互いに対向するようにそれぞれ上側と下側とに配置されており、上側のベルト74と下側の搬送ローラ62とで紙幣を挟んで、入金方向に回転することにより紙幣を後方へ向けて搬送すると共に、出金方向に回転することにより紙幣を前方へ向けて搬送する。この搬送部26のベルト74及び搬送ローラ62と、入出金部24の繰出集積部40と、リジェクト回収庫30の集積ローラ50と、紙幣収納庫15の繰出集積部60とは、別々の駆動源によって駆動されることにより、互いに独立して駆動する。
【0032】
また搬送部26には、前方から順に、複数の切替部34(第1切替部34a、第2切替部34b及び第3切替部34c)が直列に配置されており、これらの間が比較的短い搬送短路によりそれぞれ接続されることで、全体として前後方向に沿った直線状の搬送経路が形成されている。各切替部34は、図中三角形で示すブレード35(ブレード35a、35b及び35c)とその周囲に配置された複数のローラとにより構成されている。ブレード35は、左右方向に長く、且つ左右方向から見て楔形に形成されており、回動することにより傾斜方向を変化させることで紙幣の搬送方向を切り替える。各ローラは、紙幣の搬送路を挟んで互いに対向するように配置されている(図示せず)。この切替部34は、釣銭制御部21の制御に従い、各紙幣の搬送先に応じてブレード35の傾斜方向を変化させると共に各ローラを所定の回転方向へ回転させることにより、紙幣の搬送方向を適宜切り替えて所望の搬送先へ搬送する。
【0033】
第1切替部34aは、第1搬送部26aにおける入出金部24と鑑別部28との間に配され先端が後方を向くブレード35aの傾斜方向を変化させて、紙幣の搬送経路を2通りに切り替える。すなわち第1切替部34aは、前側の入出金部24と後側の鑑別部28との間を結ぶ搬送経路を形成するか、又は前下側のリジェクト回収庫30と後側の鑑別部28とを結ぶ搬送経路を形成する。このため第1切替部34aは、第2搬送部26b内を後方から前方へ向けて搬送された紙幣の搬送経路を、入出金部24又はリジェクト回収庫30の2方向に切り替える、いわゆる2ウェイブレードとなっている。
【0034】
第1切替部34aは、出金処理において第2搬送部26bを前方へ向かって搬送された出金紙幣が、鑑別部28において正常判定された場合、その搬送経路を入出金部24へ切り替える一方、異常判定された場合、その搬送経路をリジェクト回収庫30へ切り替える。また第1切替部34aは、回収処理において第2搬送部26bを前方へ向かって搬送された回収紙幣が、鑑別部28において正常判定された場合、その搬送経路をリジェクト回収庫30へ切り替える一方、異常判定された場合、その搬送経路を入出金部24へ切り替える。
【0035】
ブレード35aは、出金紙幣及び回収紙幣が鑑別部28で鑑別処理される必要があるため、入出金部24と鑑別部28との間であり、且つ、リジェクト回収庫30と鑑別部28との間に配置されている。
【0036】
第2切替部34bは、第2搬送部26bの前後方向のほぼ中央部に配され、第1切替部34aとほぼ前後対称に形成されており、先端が前方を向くブレード35bの傾斜方向を変化させて紙幣の搬送経路を2通りに切り替える。すなわち第2切替部34bは、前側の搬送短路と後側の搬送短路とを結ぶ搬送経路を形成するか、又は前側の搬送短路と前下側の紙幣収納庫15aとを結ぶ搬送経路を形成するかを切り替える。このため第2切替部34bは、第2搬送部26b内を前方から後方へ向けて搬送された紙幣の搬送経路を、後方の紙幣収納庫15b若しくは15cか、又は紙幣収納庫15aの2方向に切り替える、いわゆる2ウェイブレードとなっている。
【0037】
ブレード35bは、入金紙幣が鑑別部28で鑑別処理されてから振り分けられる位置であり、且つ各紙幣収納庫15から出金された紙幣が必ず鑑別部28を通過できる位置に配置されている。
【0038】
第3切替部34cは、第2搬送部26bの後端よりも僅かに前側に配され、第2切替部34bと同様に先端が前方を向くブレード35cの傾斜方向を変化させて紙幣の搬送経路を2通りに切り替える。すなわち第3切替部34cは、前側の搬送短路と前下側の紙幣収納庫15bとを結ぶ搬送経路を形成するか、又は前側の搬送短路と後下側の紙幣収納庫15cとを結ぶ搬送経路を形成するかを切り替える。このため第3切替部34cは、第2搬送部26b内を前方から後方へ向けて搬送された紙幣の搬送経路を、紙幣収納庫15b又は紙幣収納庫15cの2方向に切り替える、いわゆる2ウェイブレードとなっている。
【0039】
ブレード35cは、ブレード35bよりも後方であり、入金紙幣を紙幣収納庫15b又は15cへ振り分けられる位置に配置されている。
【0040】
このように搬送部26は、第2搬送部26bにより前後方向に沿った直線状の搬送経路を形成し、この搬送経路に沿って紙幣を主に前後方向へ搬送すると共に、搬送路の分岐部に配された第2切替部34b及び第3切替部34cによりその搬送経路を紙幣収納庫15a、15b又は15cに切り替える。また搬送部26は、第2搬送部26bを前方向へ搬送された紙幣の搬送経路を、第1切替部34aにより第1搬送部26a又は第3搬送部26cに切り替える。
【0041】
[1-3-2.上搬送部の構成]
このような搬送部26は、
図3及び
図4に示すように、主に、上側の上搬送部64及び下側の本体側搬送部66により構成されている。上搬送部64は、主に、ガイド68、プーリ70(プーリ70f及び70b)、シャフト72並びにベルト74により構成されており、本体側搬送部66の上側に位置している。
【0042】
この上搬送部64は、搬送部回動軸としてのシャフト72を軸として、
図3に示す搬送部閉鎖状態から、前端部を後方上側へ移動させるように
図3中時計回りである搬送部開放方向Doへ回動可能となっている。また上搬送部64は、シャフト72を軸として、
図4に示す搬送部開放状態から、前端部を前方下側へ移動させるように
図4中反時計回りである搬送部閉鎖方向Dcへ回動可能となっている。このため上搬送部64は、使用者との間で取引処理が行われる取引動作時の場合には搬送部閉鎖状態となり本体側搬送部66と上下方向に対向することにより、搬送される紙幣をガイドする。一方、上搬送部64は、保守員により保守作業が行われる保守作業時の場合には、上搬送部64に設けられた上搬送部錠部(図示せず)が解錠され、該上搬送部64が必要に応じて回動され搬送部開放状態となり本体側搬送部66を外部に開放させることにより、上搬送部64と本体側搬送部66との間に詰まったジャム紙幣を除去させる。また上搬送部64は、搬送部閉鎖状態においてはほぼ水平方向に沿って寝た姿勢となり、搬送部開放状態においてはほぼ鉛直方向に沿って起立した姿勢となる。
【0043】
以下では、上搬送部64において、搬送部閉鎖状態における、シャフト72が配置された後端部側を回動軸側とも呼び、前端部側を回動先端側とも呼ぶ。
【0044】
ガイド68は、上搬送部64の大部分を占めており、搬送部閉鎖状態において、上下方向に薄く前後方向に沿って延びる板状部材であり、搬送される紙幣を案内し滑らかに搬送させるガイド面68Sがその下面に形成されている。このガイド68は、搬送部閉鎖状態において、入出金部24における繰出集積部40の後方から紙幣収納庫15cにおける繰出集積部60の前方までに亘って連続的に形成されており、ガイド面68Sが本体側搬送部66のガイド76のガイド面76Sと上下方向に対向し、繰出集積部40から繰り出され紙幣収納庫15a、15b又は15cまで搬送される紙幣の上面をガイド面68Sによりガイドする。ガイド面68Sとガイド面76Sとの間には、紙幣を通過させる隙間が形成されている。さらに、ガイド68の回動先端側端部近傍における右側面には、保守員により把持可能な取手としての上搬送部取手64hが設けられている。
【0045】
プーリ70f及び70bは、ガイド68におけるそれぞれ回動先端側端部及び回動軸側端部において、紙幣の長辺方向の長さよりも短い間隔を空けて左右に並んでそれぞれ2個ずつ設けられている。プーリ70fは、円筒形状であり左右方向に沿って延在しガイド68に固定されたシャフトを軸として回転自在に設けられている。プーリ70bは、円筒形状であり左右方向に沿って延在し、紙幣入出金装置11のフレームに固定されたシャフト72を軸として回転自在に設けられている。
【0046】
ベルト74は、ゴムにより形成されており、プーリ70fとプーリ70bとの外周面に架設されている。このベルト74は、入出金部24における繰出集積部40から紙幣収納庫15cにおける繰出集積部60までに亘って架設されている。
【0047】
[1-3-3.本体側搬送部の構成]
図4に示すように、本体側搬送部66は、主に、ガイド76及び搬送ローラ62により構成されている。
【0048】
ガイド76は、本体側搬送部66の大部分を占めており、上下方向に薄く前後方向に沿って延びる板状部材であり、搬送される紙幣を案内し滑らかに搬送させるガイド面76Sがその上面に形成されている。このガイド76は、入出金部24における繰出集積部40の後方から紙幣収納庫15cにおける繰出集積部60の前方までに亘って連続的に形成されており、搬送部閉鎖状態(
図3)において、ガイド面76Sが上搬送部64のガイド68のガイド面68Sと上下方向に対向し、繰出集積部40から繰り出され紙幣収納庫15a、15b又は15cまで搬送される紙幣の下面をガイド面76Sによりガイドする。
【0049】
搬送ローラ62は、ガイド76に穿設された孔部から、その外周面をガイド面76Sよりも上側まで突出させており、ベルト74との間で紙幣を挟持し回転することにより該紙幣を搬送する。
【0050】
ガイド68における、搬送部閉鎖状態(
図3)において前後方向の中央部よりもやや後ろ寄りにおける左側面には、回動シャフト64r(
図6)が設けられている。回動シャフト64rは、左右方向に沿う円筒形状の部材であり、ステー82の回動シャフト孔部82aが回動可能に嵌め込まれている(後述する)。
【0051】
[1-4.ブラケット及びロック機構の構成]
図6に示すように、紙幣入出金装置フレーム63における、上搬送部64の下側でありステー82(後述する)の左側には、ブラケット78が固定されている。
図5に示すように、ブラケット78は、板金加工により形成されており、左右方向の幅が狭く前後方向に沿って延びる直線状の板状部材である。
【0052】
ブラケット78は、ポスト摺動溝78gが穿設されている。ポスト摺動溝78gは、前端部から後方へ向かって水平方向に沿って延びてから後ろ斜め上方向へ屈曲して延び、その後、後方へ屈曲して水平方向に沿って延びる形状である。ポスト摺動溝78gには、後述するステー82におけるステーポスト82pが摺動可能に嵌まり込んでいる。このためブラケット78は、ステー82が移動する際にポスト摺動溝78g内部においてステーポスト82pを摺動させつつステー82を移動させることにより、ステー82の移動軌跡を規定する。
【0053】
ポスト摺動溝78gにおける後端部には、後ろ下がりの平面形状の下端面である傾斜面78S(
図7)が形成されている。傾斜面78Sの角度は、水平方向に対し45[°]程度傾斜している。またポスト摺動溝78gにおける後端部には、開放時ポスト収納空間78pが形成されている。開放時ポスト収納空間78pは、ポスト摺動溝78gにおける開放時ポスト収納空間78pの前側よりも上下方向の高さが広く構成されている。ポスト摺動溝78gは、開放時ポスト収納空間78p以外の箇所における上側の縁部と下側の縁部との間隔が、ステーポスト82pの直径よりも僅かに広く形成されている。一方、ポスト摺動溝78gは、開放時ポスト収納空間78pにおける上側の縁部と下側の縁部との間隔は、ステーポスト82pの直径よりも十分に広く形成されている。
【0054】
またブラケット78における開放時ポスト収納空間78pの近傍には、第1ロック板ばね80が設けられている。第1ロック板ばね80は、弾性部材としての板ばねであり、板ばね本体部80m及びロック部80lにより構成されている。板ばね本体部80mは、第1ロック板ばね80における後側の大部分を占める薄い板状部材であり、側面視において直線状で前上がりに延びている。この板ばね本体部80mは、後端部が紙幣入出金装置フレーム63に固定されている。ロック部80lは、板ばね本体部80mの前端部において英字の「V」を上下反転させたような、上方へ突出する山型形状の突起のような板状部材である。このような第1ロック板ばね80により、第1の実施の形態によるロック機構79が構成されている。
【0055】
かかる構成において第1ロック板ばね80は、
図7に示すように、外部から力が加えられていない自然状態においてはポスト摺動溝78gの傾斜面78Sよりも上側、すなわちポスト摺動溝78gの内部までロック部80lを突出させる。このとき、ポスト摺動溝78gの上側の縁部である摺動溝上側縁部78guSと、ロック部80lとの間隔であるばね隙間GPは、ステーポスト82pの外形である直径よりも狭くなるように設定されている。一方、第1ロック板ばね80は、搬送部開放状態(
図11)においては、開放時ポスト収納空間78pに位置しているステーポスト82pの前側にロック部80lを配置させる。これにより第1ロック板ばね80は、ステーポスト82pが前方へ移動しようとした場合にロック部80lをステーポスト82pに当接させることにより、ステーポスト82pの前方への移動を規制する。
【0056】
一方、第1ロック板ばね80は、弾性力として第1実施形態第1ロック板ばね弾性力を有しており、
図9、
図13及び
図14に示すように、ロック部80lに対し外部から下方向へ向かってステーポスト82pにより第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力が加えられると、ロック部80lが下側へ移動するように板ばね本体部80mが撓む。
【0057】
このため第1ロック板ばね80は、
図9に示すように、開放時ポスト収納空間78pに向かって摺動溝上側縁部78guSと摺動しつつ後方へ移動するステーポスト82pにより第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力で押し下げられると、ばね隙間GPをステーポスト82pの直径と同一まで広げることにより、後方へのステーポスト82pの移動経路からロック部80lを退避させる。これにより第1ロック板ばね80は、上搬送部64が搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する際にステーポスト82pの後方への移動を規制しない状態となる。
【0058】
一方、第1ロック板ばね80は、
図12に示すように、開放時ポスト収納空間78pにおいて一旦後ろ上方向へ移動してから摺動溝上側縁部78guSと摺動しつつ前方へ移動するステーポスト82pにより第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力で押し下げられると、
図13に示すように、ばね隙間GPをステーポスト82pの直径と同一まで広げることにより、前方へのステーポスト82pの移動経路からロック部80lを退避させる。これにより第1ロック板ばね80は、上搬送部64が搬送部開放状態から搬送部閉鎖状態へ遷移する際にステーポスト82pの前方への移動を規制しない状態となる。
【0059】
また一方、第1ロック板ばね80は、
図14に示すように、傾斜面78Sと摺動しつつ開放時ポスト収納空間78pから前方に向かって移動するステーポスト82pにより第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力で押し下げられると、ロック部80lの上端部を傾斜面78Sよりも下側へ移動させることにより、ステーポスト82pの前側にロック部80lを存在させない状態とし、前方へのステーポスト82pの移動経路からロック部80lを退避させる。これにより第1ロック板ばね80は、搬送部開放状態において上搬送部64に搬送部閉鎖方向Dcへ強い力が加わった際にステーポスト82pの前方への移動を規制しない状態となる。
【0060】
[1-5.ステーの構成]
図4に示すように、上搬送部64の左側にはステー82が設けられている。ステー82は、例えば板金加工により形成されている。
図6に示すように、ステー82は、搬送部閉鎖状態において、水平方向に対し前下がりに傾斜した姿勢であり、前端がブラケット78のポスト摺動溝78gにおける前寄りに位置し、後端が上搬送部64に接続されている。この搬送部閉鎖状態においてステー82は、水平方向に沿う方向に最も倒れた姿勢であるステー傾倒状態となっている。
【0061】
ステー82は、ステー本体部82m、回動シャフト孔部82a及びステーポスト82pにより構成されている。ステー本体部82mは、ステー82の大部分を占めており、左右方向の幅が狭い直線状の板状部材である。
【0062】
回動シャフト孔部82aは、ステー本体部82mの後端部に穿設されており、上搬送部64における回動シャフト64rが貫通している。このためステー82は、回動シャフト64rを軸として上搬送部64に対し回動可能となっている。
【0063】
ステーポスト82pは、ステー本体部82mの前端部に設けられた左方向に突出する円筒形状の部材であり、ブラケット78のポスト摺動溝78g(
図5)に摺動可能に嵌まり込んでいる。またステーポスト82pは、搬送部閉鎖状態において、ポスト摺動溝78gの前後中央部よりも前寄りに位置している。
【0064】
このためステー82は、回動シャフト64rを軸として、
図6に示すステー傾倒状態から、前端部を後側へ移動させつつ
図6中時計回りに回動可能となっている。
図11に示すようにステー82が鉛直方向に沿う方向に最も起立した姿勢をステー起立状態とも呼ぶ。またステー82は、回動シャフト64rを軸として、
図11に示すステー起立状態から、前端部を前側へ移動させつつ
図4中反時計回りに回動可能となっている。
【0065】
さらに、ステー82の長手方向のほぼ中央部には、保守員により把持可能なステー取手82hが設けられている。
【0066】
[1-6.上搬送部の開閉動作について]
かかる構成において、保守員が上搬送部64の上搬送部取手64hを例えば右手で持ち上げることにより、搬送部閉鎖状態(
図3及び
図6)から上搬送部64が搬送部開放方向Doへ回動すると、
図7に示すように、ステー82はブラケット78のポスト摺動溝78g内で開放時ポスト収納空間78pに向かってステーポスト82pを摺動させることにより後方へスライド移動しつつ、回動シャフト64rを軸として時計回りに回動する。このとき、回動シャフト64r及び回動シャフト孔部82aがステーポスト82pよりも上側に配されていると共に、上搬送部64が持ち上げられるように搬送部開放方向Doへ回動するため、ステーポスト82pは
図8に示すように摺動溝上側縁部78guSに摺動しつつ後方へ移動する。続いて、ステーポスト82pがポスト摺動溝78g内部の摺動溝上側縁部78guSに当接しつつ移動し、
図9に示すようにロック部80lを押し下げることによりロック部80lを乗り越え、
図10に示すように開放時ポスト収納空間78pに入り込む。続いて保守員が上搬送部64の上搬送部取手64hから右手を離すと、
図11に示すようにステーポスト82pが落下して上搬送部64が搬送部開放状態(
図4)となる。
【0067】
この搬送部開放状態においては、ステー82は、ステー起立状態となり、第1ロック板ばね80のロック部80lがステーポスト82pの前側に当接し、該ステーポスト82pの前方への移動を規制している。このためステー82は、保守員が上搬送部64の上搬送部取手64hから右手を離しても搬送部開放状態を保持し、上搬送部64が搬送部開放状態(
図4及び
図11)から自重で搬送部閉鎖方向Dcへ回動して搬送部閉鎖状態(
図3及び
図6)へ戻ってしまうことを防止する。
【0068】
一方、搬送部開放状態において保守員が上搬送部64の上搬送部取手64hを例えば右手で持ち上げると共に、ステー取手82hを例えば左手で手前に引きステー82を反時計回りに回動させると、
図12に示すように、開放時ポスト収納空間78pにおいてステーポスト82pが後ろ上方向へ移動し、ステー82のロックが解除されてロック解除状態となり、上搬送部64が搬送部閉鎖方向Dcへ回動可能な状態となる。続いて、保守員がステー取手82hから左手を離し、上搬送部64を搬送部閉鎖方向Dcへ回動させると、ステー82はブラケット78のポスト摺動溝78g内で前方向に向かってステーポスト82pを摺動させることにより前方へスライド移動しつつ、回動シャフト64rを軸として反時計回りに回動する。このときステーポスト82pが
図13に示すようにロック部80lを押し下げることによりロック部80lを乗り越える。引き続き上搬送部64が搬送部閉鎖方向Dcへ回動されると、上搬送部64が搬送部閉鎖状態(
図6)となり、このときステー82はステー傾倒状態となる。
【0069】
また一方、搬送部開放状態の上搬送部64に対し、上搬送部64が持ち上げられてステー82が反時計回りに回動されていない状態(すなわちステー82のロックが解除されていない状態)で、例えば誤操作により搬送部閉鎖方向Dcへ強い力が加わると、回動シャフト64r及び回動シャフト孔部82aがステーポスト82pよりも上側に配されていると共に、上搬送部64が押し下げられるように搬送部閉鎖方向Dcへ回動するため、ステーポスト82pは傾斜面78Sに摺動しつつ移動する。このとき第1ロック板ばね80に対し搬送部閉鎖方向Dcへ第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力が加えられると、
図14に示すように、第1ロック板ばね80は、傾斜面78Sに当接しつつ前方上方向へ向かって移動するステーポスト82pによって押し下げられてロック部80lが下側へ移動するように板ばね本体部80mが撓むことにより、傾斜面78Sよりも下側へロック部80lが移動する。このため第1ロック板ばね80は、ステーポスト82pの移動経路から下側へ退避し、第1ロック板ばね退避状態となり、該ステーポスト82pの前方への移動を規制しなくなる。続いてステーポスト82pは、傾斜面78Sに当接しつつ前方上方向へ向かって移動することにより開放時ポスト収納空間78pから前方へ移動する。
【0070】
[1-7.効果等]
ところで、
図5と対応する部材に同一符号を付した
図15に示すブラケット178のように、ポスト摺動溝178gにおける後端部において第1ロック板ばね80(
図5)のロック部80lのような形状である摺動溝ロック部178lを形成し、
図11と対応する部材に同一符号を付した
図16に示すように搬送部開放状態においてステーポスト82pが前方へ移動しようとした場合に摺動溝ロック部178lをステーポスト82pに当接させることにより、ステーポスト82pの前方への移動を規制し、搬送部開放状態を保つことも考えられる。
【0071】
このような紙幣入出金装置211においては、上搬送部64及びステー82への保守員の操作によりステーポスト82pが移動し摺動溝ロック部178lを乗り越えることにより、ステー82のロックが解除されてロック解除状態となり、上搬送部64が搬送部閉鎖方向Dcへ回動可能な状態となる。
【0072】
しかしながらこのような紙幣入出金装置211においては、搬送部開放状態の上搬送部64に対し、ステー82のロックが解除されていない状態で、搬送部閉鎖方向Dcへ強い力が加えられると、摺動溝ロック部178lからステーポスト82pへ強い力が加わり、上搬送部64における特に回動シャフト64r近辺が破損してしまう可能性がある。
【0073】
これに対し紙幣入出金装置11は、搬送部開放状態(
図11)において、第1ロック板ばね80のロック部80lをステーポスト82pの前側に当接させ、該ステーポスト82pの前方への移動を規制するようにした。このため紙幣入出金装置11は、保守員が上搬送部64の上搬送部取手64hから右手を離しても、第1ロック板ばね80の第1実施形態第1ロック板ばね弾性力により搬送部開放状態を保持できる。
【0074】
また紙幣入出金装置11は、搬送部開放状態において保守員による上搬送部64及びステー取手82hへの操作により、搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する際のステーポスト82pの移動経路とほぼ同様の移動経路を逆方向へステーポスト82pを移動させる。この際、紙幣入出金装置11は、ステーポスト82pから第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力が第1ロック板ばね80に加えられた場合、第1ロック板ばね80を撓ませてステーポスト82pの移動経路から退避させ(
図13)、摺動溝上側縁部78guSと摺動させつつステーポスト82pに第1ロック板ばね80を乗り越えさせることにより、ロックを解除でき、搬送部閉鎖状態へ遷移可能な状態とすることができる。
【0075】
さらに紙幣入出金装置11は、搬送部開放状態においてステー82のロックが解除されていない状態で、上搬送部64に対し搬送部閉鎖方向Dcへ力が加えられ、第1実施の形態による第1の弾性力である第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力が第1ロック板ばね80に加えられた場合、第1ロック板ばね80を撓ませることにより、第1ロック板ばね80のロック部80lをポスト摺動溝78gの外側へ移動させてステーポスト82pの移動経路から退避させ(
図14)、傾斜面78Sと摺動させつつステーポスト82pに第1ロック板ばね80を乗り越えさせることができる。
【0076】
このため紙幣入出金装置11は、搬送部開放状態の上搬送部64に対しステー82のロックが解除されていない状態で搬送部閉鎖方向Dcへ強い力が加えられたとしても、ステーポスト82pからステー82へ強い力が加わり、上搬送部64が破損してしまうことを防止できる。
【0077】
ここで、
図7に示すように、ロック部80lが傾斜面78Sに直交する方向へ傾斜面78Sから突出する長さであるばね突出量PRが大きいほど、搬送部開放状態(
図11)においてステーポスト82pの前方への移動を強く規制でき、搬送部開放状態を保持しやすくなる。しかしながら、ばね突出量PRが大きくなるほどばね隙間GPは狭くなるため、搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する際にステーポスト82pが第1ロック板ばね80を乗り越えにくくなる。このように、ばね突出量PRとばね隙間GPとは背反関係にある。
【0078】
これに対し、ばね突出量PRが小さくても搬送部開放状態を保持できるように、第1ロック板ばね80の厚さを厚くすることも考えられる。しかしながら第1ロック板ばね80の厚さを厚くする場合、板ばね本体部80mを長くすることにより第1ロック板ばね80の塑性変形を抑える必要がある。しかしながらその場合、第1ロック板ばね80が大型化してしまい、紙幣入出金装置11に組み込むことが困難になってしまう。
【0079】
これに対し紙幣入出金装置11は、第1ロック板ばね80の自然状態(
図7)においてばね隙間GPをステーポスト82pの直径よりも狭くする程度にばね突出量PRを大きくすることにより、搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する際にはステーポスト82pに第1ロック板ばね80を乗り越えさせる必要はあるものの、板ばね本体部80mの長さを抑えて第1ロック板ばね80が大型化してしまうことを防止しつつ、搬送部開放状態を保持しやすくできる。
【0080】
また紙幣入出金装置11は、ロック機構79として小型化しやすい板ばねである第1ロック板ばね80を用いることにより、ロック機構79を紙幣入出金装置11に組み込みやすくすることができる。
【0081】
以上の構成によれば紙幣入出金装置11は、媒体としての紙幣が搬送される搬送路としての搬送部26を有し、搬送部26を閉塞して紙幣を搬送する搬送部閉鎖状態と、搬送部26を開放する搬送部開放状態との間で本体部としての紙幣入出金装置フレーム63に対し回動可能である上搬送部64と、一端側としての後端側が上搬送部64に接続され他端側としての前端側にステーポスト82pが形成され、搬送部閉鎖状態と搬送部開放状態との間を回動する上搬送部64と連動して移動し、搬送部開放状態の上搬送部64を支持するステー82と、紙幣入出金装置フレーム63側に設けられ、内部においてステーポスト82pを摺動させ、上搬送部56と連動したステー82の移動軌跡を規定するポスト摺動溝78gと、上搬送部56が搬送部開放状態にあるときのポスト摺動溝78gにおけるステーポスト82pの位置に設けられたロック機構79とを設け、ロック機構79は、上搬送部64が搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ回動する際にステーポスト82pの外形とほぼ同一の間隔をポスト摺動溝78gの一方の縁部としての摺動溝上側縁部78guSとの間で空けることにより、ポスト摺動溝78gにおけるステーポスト82pの移動を許容し、搬送部開放状態において、第1の実施の形態による第1の弾性力としての第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力が加わらない限り搬送部開放状態を維持する一方、第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力が加わると、ポスト摺動溝78gにおいて摺動溝上側縁部78guSと対向する他方の縁部としての傾斜面78Sよりもポスト摺動溝78gの外側へ退避することにより、ステーポスト82pの移動を許容するようにした。
【0082】
これにより紙幣入出金装置11は、ステー82により搬送部開放状態の上搬送部64を支持し搬送部閉鎖状態へ回動しないようにできると共に、搬送部開放状態の上搬送部64に大きな外力が加わり第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力がステーポスト82pから第1ロック板ばね80に加わると第1ロック板ばね80をポスト摺動溝78gの外側へ退避させてステーポスト82pの移動を許容することにより、上搬送部64に掛かる負荷を軽減できる。
【0083】
[2.第2の実施の形態]
[2-1.レジ釣銭システム、釣銭機及び紙幣入出金装置の構成]
第2の実施の形態によるレジ釣銭システム101(
図1)は、第1の実施の形態によるレジ釣銭システム1と比較して、釣銭機3の紙幣入出金装置11に代わる釣銭機103の紙幣入出金装置111を有する点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
図5と対応する部材に同一符号を付した
図17に示すように、第2の実施の形態による紙幣入出金装置111は、第1の実施の形態による紙幣入出金装置11と比較して、ロック機構79に代わるロック機構179が設けられている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。
【0084】
[2-2.ブラケット及びロック機構の構成]
第2の実施の形態によるロック機構179は、第1の実施の形態によるロック機構79と比較して、第1ロック板ばね80に代わる第1ロック板ばね180が設けられていると共に、第2ロック板ばね84が追加されている点において相違するものの、他の点については同様に構成されている。また、
図18、
図19、
図20、
図21、
図22、
図23、
図24、
図25及び
図26は、それぞれ、
図6、
図7、
図8、
図9、
図10、
図11、
図12、
図13及び
図14と対応する部材に同一符号が付されている。
【0085】
第1のロック機構としての第1ロック板ばね180は、第1ロック板ばね80と比較して、弾性力として第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも弱い第2実施形態第1ロック板ばね弾性力を有しており、
図21、
図25及び
図26に示すように、ロック部80lに対し外部から下方向へ向かってステーポスト82pにより第2の弾性力としての第2実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力が加えられると、ロック部80lが下側へ移動するように板ばね本体部80mが撓む。この第2実施形態第1ロック板ばね弾性力は、第1実施形態第1ロック板ばね弾性力の半分程度に設定されている。
【0086】
第2のロック機構としての第2ロック板ばね84は、弾性部材としての板ばねであり、第1ロック板ばね180を間に挟んでポスト摺動溝78gの逆側である、第1ロック板ばね180よりも下側に設けられており、薄い板状部材である。この第2ロック板ばね84は、後端部が第1ロック板ばね180の後端部と同様の箇所において紙幣入出金装置フレーム63に固定されており、第1ロック板ばね180に対し前方へ向かうに連れてやや下側へ離れるように(すなわち第1ロック板ばね180との間に隙間を空けて)、側面視において直線状で前上がりに第1ロック板ばね180のロック部80lの先端部よりもやや後側まで延びている。このような第1ロック板ばね180と第2ロック板ばね84とは、英語の「V」のような形状となっている。
【0087】
かかる構成において第2ロック板ばね84は、
図19に示すように、外部から力が加えられていない自然状態においては直線状であり、前部分が下側へ移動するように撓んでいない。
【0088】
一方、第2ロック板ばね84は、弾性力として第2ロック板ばね弾性力を有しており、
図26に示すように、下方向へ向かって第1ロック板ばね180により第2ロック板ばね弾性力よりも大きい力が加えられると、前部分が下側へ移動するように撓む。この第2ロック板ばね弾性力は、第1実施形態第1ロック板ばね弾性力の半分程度、すなわち、第2実施形態第1ロック板ばね弾性力と同程度に設定されている。
【0089】
また、第1ロック板ばね180の第2実施形態第1ロック板ばね弾性力と、第2ロック板ばね84の第2ロック板ばね弾性力とを合成した弾性力を、第2の実施の形態による第1の弾性力とする。このためロック機構179は、第2の実施の形態による第1の弾性力を有している。第2の実施の形態による第1の弾性力は、第1の実施の形態による第1の弾性力としての第1実施形態第1ロック板ばね弾性力と同程度となっている。
【0090】
また第1ロック板ばね180は、
図19に示すように、外部から力が加えられていない自然状態においてはポスト摺動溝78gの傾斜面78Sよりも上側、すなわちポスト摺動溝78gの内部までロック部80lを突出させる。このとき、ポスト摺動溝78gの摺動溝上側縁部78guSと、ロック部80lとの間隔であるばね隙間GPは、ステーポスト82pの外形である直径よりも狭くなるように設定されている。またこのとき、第2ロック板ばね84は、第1ロック板ばね180との間に隙間が空いているため、直線状である。一方、第1ロック板ばね180は、搬送部開放状態(
図23)においては、開放時ポスト収納空間78pに位置しているステーポスト82pの前側にロック部80lを配置させる。これにより第1ロック板ばね180は、ステーポスト82pが前方へ移動しようとした場合にロック部80lをステーポスト82pに当接させることにより、ステーポスト82pの前方への移動を規制する。またこのとき、第2ロック板ばね84は、第1ロック板ばね80との間に隙間が空いているため、直線状である。
【0091】
第1ロック板ばね180は、
図21に示すように、開放時ポスト収納空間78pに向かって摺動溝上側縁部78guSと摺動しつつ後方へ移動するステーポスト82pにより第2実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力で押し下げられると、ばね隙間GPをステーポスト82pの直径と同一まで広げることにより、後方へのステーポスト82pの移動経路からロック部80lを退避させる。これにより第1ロック板ばね180は、上搬送部64が搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する際にステーポスト82pの後方への移動を規制しない状態となる。このとき、第1ロック板ばね180は撓むものの、第1ロック板ばね180と第2ロック板ばね84との間にはまだ隙間が空いている。このため第2ロック板ばね84は、第2ロック板ばね弾性力よりも大きい力を第1ロック板ばね180からは受けないこととなり、直線状である。
【0092】
一方、第1ロック板ばね180は、
図24に示すように、開放時ポスト収納空間78pにおいて一旦後ろ上方向へ移動してから摺動溝上側縁部78guSと摺動しつつ前方へ移動するステーポスト82pにより第2実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力で押し下げられると、
図25に示すように、ばね隙間GPをステーポスト82pの直径と同一まで広げることにより、前方へのステーポスト82pの移動経路からロック部80lを退避させる。これにより第1ロック板ばね180は、上搬送部64が搬送部開放状態から搬送部閉鎖状態へ遷移する際にステーポスト82pの前方への移動を規制しない状態となる。このとき、第1ロック板ばね180は撓むものの、第1ロック板ばね180と第2ロック板ばね84との間にはまだ隙間が空いている。このため第2ロック板ばね84は、第2ロック板ばね弾性力よりも大きい力を第1ロック板ばね180からは受けないこととなり、直線状である。
【0093】
また一方、第1ロック板ばね180は、
図26に示すように、傾斜面78Sと摺動しつつ開放時ポスト収納空間78pから前方に向かって移動するステーポスト82pにより第2実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力で押し下げられると、第2ロック板ばね84に当接する。このとき第1ロック板ばね180に対し第2の実施の形態による第1の弾性力よりも大きい力が加わっていると、第1ロック板ばね180は、第2ロック板ばね84に対し第2ロック板ばね弾性力よりも大きい力を加える。このため第2ロック板ばね84は、前部分が下側へ移動するように撓むことにより、第1ロック板ばね180をさらに下方向へ撓むことが可能な状態とする。
【0094】
このためロック機構179は、第1ロック板ばね180のロック部80lの上端部を傾斜面78Sよりも下側へ移動させることにより、ステーポスト82pの前側にロック部80lを存在させない状態とし、前方へのステーポスト82pの移動経路からロック部80lを退避させる。これによりロック機構179の第1ロック板ばね180は、搬送部開放状態において上搬送部64に搬送部閉鎖方向Dcへ強い力が加わった際にステーポスト82pの前方への移動を規制しない状態となる。
【0095】
[2-3.上搬送部の開閉動作について]
かかる構成において、保守員が上搬送部64の上搬送部取手64hを例えば右手で持ち上げることにより、搬送部閉鎖状態(
図3及び
図18)から上搬送部64が搬送部開放方向Doへ回動すると、
図19に示すように、ステー82はブラケット78のポスト摺動溝78g内で開放時ポスト収納空間78pに向かってステーポスト82pを摺動させることにより後方へスライド移動しつつ、回動シャフト64rを軸として時計回りに回動する。このとき、回動シャフト64r及び回動シャフト孔部82aがステーポスト82pよりも上側に配されていると共に、上搬送部64が持ち上げられるように搬送部開放方向Doへ回動するため、ステーポスト82pは
図20に示すように摺動溝上側縁部78guSに摺動しつつ後方へ移動する。続いて、ステーポスト82pがポスト摺動溝78g内部の摺動溝上側縁部78guSに当接しつつ移動し、
図21に示すようにロック部80lを押し下げることによりロック部80lを乗り越え、
図22に示すように開放時ポスト収納空間78pに入り込む。続いて保守員が上搬送部64の上搬送部取手64hから右手を離すと、
図23に示すようにステーポスト82pが落下して上搬送部64が搬送部開放状態(
図4)となる。
【0096】
この搬送部開放状態においては、ステー82は、ステー起立状態となり、第1ロック板ばね180のロック部80lがステーポスト82pの前側に当接し、該ステーポスト82pの前方への移動を規制している。このためステー82は、保守員が上搬送部64の上搬送部取手64hから右手を離しても搬送部開放状態を保持し、上搬送部64が搬送部開放状態(
図23)から自重で搬送部閉鎖方向Dcへ回動して搬送部閉鎖状態(
図18)へ戻ってしまうことを防止する。
【0097】
一方、搬送部開放状態において保守員が上搬送部64の上搬送部取手64hを例えば右手で持ち上げると共に、ステー取手82hを例えば左手で手前に引きステー82を反時計回りに回動させると、
図24に示すように、開放時ポスト収納空間78pにおいてステーポスト82pが後ろ上方向へ移動し、ステー82のロックが解除されてロック解除状態となり、上搬送部64が搬送部閉鎖方向Dcへ回動可能な状態となる。続いて、保守員がステー取手82hから左手を離し、上搬送部64を搬送部閉鎖方向Dcへ回動させると、ステー82はブラケット78のポスト摺動溝78g内で前方向に向かってステーポスト82pを摺動させることにより前方へスライド移動しつつ、回動シャフト64rを軸として反時計回りに回動する。このときステーポスト82pが
図25に示すようにロック部80lを押し下げることによりロック部80lを乗り越える。引き続き上搬送部64が搬送部閉鎖方向Dcへ回動されると、上搬送部64が搬送部閉鎖状態(
図18)となり、このときステー82はステー傾倒状態となる。
【0098】
また一方、搬送部開放状態の上搬送部64に対し、上搬送部64が持ち上げられてステー82が反時計回りに回動されていない状態(すなわちステー82のロックが解除されていない状態)で、搬送部閉鎖方向Dcへ強い力が加わると、回動シャフト64r及び回動シャフト孔部82aがステーポスト82pよりも上側に配されていると共に、上搬送部64が押し下げられるように搬送部閉鎖方向Dcへ回動するため、ステーポスト82pは傾斜面78Sに摺動しつつ移動する。このとき第1ロック板ばね180に対し搬送部閉鎖方向Dcへ第2実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力が加えられると、第1ロック板ばね180は、傾斜面78Sに当接しつつ前方上方向へ向かって移動するステーポスト82pによって押し下げられてロック部80lが下側へ移動するように板ばね本体部80mが撓む。このため第1ロック板ばね180は、板ばね本体部80mが第2ロック板ばね84に当接する。このとき第1ロック板ばね180に対し搬送部閉鎖方向Dcへ第2の実施の形態による第1の弾性力よりも大きい力が加えられていた場合、
図26に示すように、第1ロック板ばね180が第2ロック板ばね84を、前部分が下側へ移動するように撓ませる。これにより第1ロック板ばね180は、ロック部80lが傾斜面78Sよりも下側へ移動する。このため第1ロック板ばね180は、ステーポスト82pの移動経路からロック部80lを下側へ退避させて第1ロック板ばね退避状態となり、該ステーポスト82pの前方への移動を規制しなくなる。続いてステーポスト82pは、傾斜面78Sに当接しつつ前方上方向へ向かって移動することにより開放時ポスト収納空間78pから前方へ移動する。
【0099】
[2-4.効果等]
ロック機構79として第1ロック板ばね80のみを有する第1の実施の形態による紙幣入出金装置11において、搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態に遷移する際に、上搬送部取手64hを保守員が右手でゆっくり持ち上げる場合がある。その場合、
図8に示したようにステーポスト82pが第1ロック板ばね80のロック部80lに接触した際に、ステーポスト82pとロック部80lとの接触負荷により、ステーポスト82pがロック部80lを乗り越えられずに、上搬送部64が、左側部分は搬送部開放方向Doへ回動せず右側部分は搬送部開放方向Doへ回動して捻れるように撓み、搬送部閉鎖状態へ遷移できない可能性があった。これは、上搬送部取手64hが上搬送部64における回動軸方向としての左右方向のうち一方向側である右方向側の端部に設けられ、ステー82が上搬送部64における左右方向のうち他方向側である左方向側の端部に設けられている、すなわち、上搬送部取手64hが上搬送部64において左右方向に関しステー82とは反対側の右側に設けられているためである。その場合、保守員が左手でステー82を後側へ押し込むことにより、ステーポスト82pにロック部80lを乗り越えさせ、搬送部開放状態へ遷移させる必要があり、操作性が悪化してしまう。
【0100】
これに対し、ステー82及び上搬送部取手64hを上搬送部64における右側端部又は左側端部の何れか一方のみにまとめて設けることにより、ステーポスト82pと第1ロック板ばね80のロック部80lとの接触負荷があっても上搬送部64が捻れるように撓んでしまうことを防止することも考えられる。しかしながらその場合、保守員は、上搬送部64における左右方向に関し一方向側の端部のみに設けられた上搬送部取手64hを例えば右手で、ステー取手82hを例えば左手で把持することになるため、操作性が極めて悪化してしまう。
【0101】
これに対し紙幣入出金装置111は、搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移する際に、第1の実施の形態による第1の弾性力である第1実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも弱く設定された第2の弾性力である第2実施形態第1ロック板ばね弾性力よりも大きい力が第1ロック板ばね180に加えられた場合、第1ロック板ばね180を撓ませてステーポスト82pの外形とほぼ同一の間隔を第1ロック板ばね80のロック部80lと摺動溝上側縁部78guSとの間で空けることにより(
図21)、第1ロック板ばね180をステーポスト82pの移動経路から退避させて摺動溝上側縁部78guSと摺動させつつステーポスト82pを後方へ移動させ、搬送部開放状態へ遷移させることができる。
【0102】
このため紙幣入出金装置111は、紙幣入出金装置11よりも小さい力が第1ロック板ばね180に加えられるだけで、ステーポスト82pに第1ロック板ばね180を乗り越えさせることができる。これにより紙幣入出金装置111は、上搬送部64がゆっくり持ち上げられたとしても、軽い力で搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移させることができ、操作性を保つことができる。
【0103】
また紙幣入出金装置111は、搬送部開放状態(
図23)において、第1ロック板ばね180のロック部80lをステーポスト82pの前側に当接させ、該ステーポスト82pの前方への移動を規制するようにした。このため紙幣入出金装置111は、保守員が上搬送部64の上搬送部取手64hから右手を離しても、第2実施形態第1ロック板ばね弾性力と第2ロック板ばね弾性力との合力である第2の実施の形態による第1の弾性力よりも大きい力が第1ロック板ばね180に加えられない限りは、第2の実施の形態による第1の弾性力により搬送部開放状態を保持できる。
【0104】
このため紙幣入出金装置111は、軽い力で上搬送部64を搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移させることができ操作性を保つことができると共に、搬送部開放状態に遷移した場合は搬送部開放状態を保持できる。
【0105】
また紙幣入出金装置111は、搬送部開放状態においてステー82のロックが解除されていない状態で、上搬送部64に対し搬送部閉鎖方向Dcへ力が加えられ、第2の実施の形態による第1の弾性力よりも大きい力が第1ロック板ばね180及び第2ロック板ばね84に加えられた場合、第1ロック板ばね80を撓ませると共に第1ロック板ばね180を第2ロック板ばね84に当接させて第2ロック板ばね84も撓ませることにより、第1ロック板ばね80のロック部80lをポスト摺動溝78gの外側へ移動させてステーポスト82pの移動経路から退避させ(
図26)、傾斜面78Sと摺動させつつステーポスト82pに第1ロック板ばね180を乗り越えさせることができる。
【0106】
このため紙幣入出金装置111は、搬送部開放状態の上搬送部64に対しステー82のロックが解除されていない状態で搬送部閉鎖方向Dcへ強い力が加えられたとしても、ステーポスト82pからステー82へ強い力が加わり、上搬送部64が破損してしまうことを防止できる。
【0107】
このように紙幣入出金装置111は、搬送部開放状態の場合、第2の実施の形態による第1の弾性力よりも大きい力が第1ロック板ばね180及び第2ロック板ばね84に加わらない限り搬送部開放状態を維持する一方、第2の実施の形態による第1の弾性力よりも大きい力が第1ロック板ばね180及び第2ロック板ばね84に加わると、第1ロック板ばね180及び第2ロック板ばね84をポスト摺動溝78gの外側へ退避させてステーポスト82pの進行を許容するようにした。
【0108】
以上の構成によれば紙幣入出金装置111は、上搬送部56が搬送部開放状態にあるときのポスト摺動溝78gにおけるステーポスト82pの位置に設けられたロック機構179を設け、ロック機構179は、上搬送部64が搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ回動する際に、第2実施形態第1ロック板ばね弾性力と第2ロック板ばね弾性力との合力である第2の実施の形態による第1の弾性力よりも小さい第2の弾性力よりも大きい力が加えられた場合にステーポスト82pの外形とほぼ同一の間隔をポスト摺動溝78gの一方の縁部としての摺動溝上側縁部78guSとの間で空けることにより、ポスト摺動溝78gにおけるステーポスト82pの移動を許容し、搬送部開放状態において、第2の実施の形態による第1の弾性力よりも大きい力が加わらない限り搬送部開放状態を維持する一方、第2の実施の形態による第1の弾性力よりも大きい力が加わると、ポスト摺動溝78gにおいて摺動溝上側縁部78guSと対向する他方の縁部としての傾斜面78Sよりもポスト摺動溝78gの外側へ退避することにより、ステーポスト82pの移動を許容するようにした。
【0109】
これにより紙幣入出金装置111は、上搬送部64を搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ容易に回動させることができると共に、搬送部開放状態の上搬送部64に大きな外力が加わり第2の実施の形態による第1の弾性力よりも大きい力がステーポスト82pから第1ロック板ばね180及び第2ロック板ばね84に加わると第1ロック板ばね180及び第2ロック板ばね84をポスト摺動溝78gの外側へ退避させてステーポスト82pの移動を許容することにより、上搬送部64に掛かる負荷を軽減できる。
【0110】
その他の点においても、第2の実施の形態による紙幣入出金装置111は、第1の実施の形態による紙幣入出金装置11と同様の作用効果を奏し得る。
【0111】
[3.他の実施の形態]
なお上述した第1の実施の形態において紙幣入出金装置11は、第1ロック板ばね80のロック部80lの形状を上方へ突出する山型形状とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、紙幣入出金装置11は、搬送部開放状態の上搬送部64をロック部80lにより支持し搬送部閉鎖状態へ遷移しないようにできると共に、搬送部開放状態において第1の実施の形態による第1の弾性力よりも大きい力がステーポスト82pから第1ロック板ばね80に加わった際にロック部80lをポスト摺動溝78gの外側へ退避させることができれば、ロック部80lを他の種々の形状としても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0112】
また上述した第1の実施の形態において紙幣入出金装置11は、ばね隙間GPをステーポスト82pの直径よりも狭くなるように設定する場合について述べた。本発明はこれに限らず、紙幣入出金装置11は、ばね隙間GPをステーポスト82pの直径と同じか、又は広くなるように設定しても良い。この場合、紙幣入出金装置11は、上搬送部64を搬送部閉鎖状態から搬送部開放状態へ遷移させる動作(
図8、
図9及び
図10)と、上搬送部64を搬送部開放状態から搬送部閉鎖状態へ遷移させる動作(
図12及び
図13)とにおいて、移動するステーポスト82pによりロック部80lは押し下げられないものの、搬送部開放状態において、傾斜面78Sと摺動しつつ開放時ポスト収納空間78pから前方に向かって移動しようとするステーポスト82pの移動をロック部80lにより規制できれば良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0113】
さらに上述した第1の実施の形態において紙幣入出金装置11は、ポスト摺動溝78gが形成されたブラケット78を紙幣入出金装置フレーム63ではなく上搬送部64に設けると共に、ステー82の上端部においてブラケット78のポスト摺動溝78gに摺動可能なステーポスト82pを設け、ステー82の下端部を紙幣入出金装置フレーム63に回動可能に接続し、上搬送部64において第1ロック板ばね80を上下反転したような第1ロック板ばねを設けても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0114】
さらに上述した第1の実施の形態において紙幣入出金装置11は、板ばねである第1ロック板ばね80によりロック機構79を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、紙幣入出金装置11は、圧縮コイルばねやねじりコイルばね等、他の種々の弾性部材を用いてロック機構79を構成しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0115】
さらに上述した第1の実施の形態において紙幣入出金装置11は、1つの第1ロック板ばね80を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、紙幣入出金装置11は、第1ロック板ばね80と同様の形状の1枚以上のロック板ばねか、又は、第1ロック板ばね80の板ばね本体部80mと同様の形状のロック板ばねを、第1ロック板ばね80と重ねるように設けても良い。その場合、紙幣入出金装置11は、ロック機構の小型化を保ちつつ、搬送部開放状態における上搬送部64の保持力を向上させることができる。第2の実施の形態においても同様である。
【0116】
さらに上述した第2の実施の形態において紙幣入出金装置111は、1つの第2ロック板ばね84を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、紙幣入出金装置111は、第2ロック板ばね84と同様の形状の1枚以上のロック板ばねを、第2ロック板ばね84と重ねるように設けても良い。
【0117】
さらに上述した第2の実施の形態において紙幣入出金装置111は、1枚の板ばねを屈曲させることにより、第1ロック板ばね180及び第2ロック板ばね84を形成しても良い。
【0118】
さらに上述した第1の実施の形態において紙幣入出金装置11は、ステーポスト82pを円筒形状の部材とする場合について述べた。本発明はこれに限らず、紙幣入出金装置11は、ステーポスト82pを他の種々の多角形の柱形状としても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0119】
さらに上述した第1の実施の形態において紙幣入出金装置11は、上搬送部64よりも左方において1組のステー82及びブラケット78を設ける場合について述べた。本発明はこれに限らず、紙幣入出金装置11は、ステー82及びブラケット78に代えて、上搬送部64よりも右方においてステー82及びブラケット78を左右反転させたような構成の1組のステー及びブラケットを設けても良い。また紙幣入出金装置11は、ステー82及びブラケット78に加えて、上搬送部64よりも右方においてステー82及びブラケット78を左右反転させたような構成の1組のステー及びブラケットを設けても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0120】
さらに上述した第1の実施の形態において紙幣入出金装置11は、回動させることにより上搬送部64を開閉させる場合について述べた。本発明はこれに限らず、紙幣入出金装置11は、回動と共にスライド移動させることにより上搬送部64を開閉させても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0121】
さらに上述した第1の実施の形態においては、ほぼ水平方向に沿って紙幣を搬送する搬送部26を有する紙幣入出金装置11に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、水平方向に対し傾斜した方向に沿って紙幣を搬送する搬送部を有する紙幣入出金装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0122】
さらに上述した第1の実施の形態においては、3個の紙幣収納庫15(15a、15b及び15c)を有する紙幣入出金装置11に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、2個以下又は4個以上の任意の個数の紙幣収納庫を有する紙幣入出金装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0123】
さらに上述した第1の実施の形態においては、媒体としての紙幣を搬送し開閉可能な上搬送部64を有する紙幣入出金装置11に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、媒体としての硬貨を搬送し開閉可能な硬貨搬送部を有する硬貨入出金装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0124】
さらに上述した第1の実施の形態においては、スーパーマーケット、コンビニエンスストア等のレジ精算場において使用されるPOSレジスタ等に接続して紙幣の入出金処理を行う釣銭機3に本発明を適用する場合について述べた。本発明はこれに限らず、銀行内において使用される自動テラー現金預払機(窓口端末)等の銀行員が使用する端末の種々の装置に本発明を適用しても良い。第2の実施の形態においても同様である。
【0125】
さらに本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態に限定されるものではない。すなわち本発明は、上述した各実施の形態と上述した他の実施の形態の一部又は全部を任意に組み合わせた実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。また本発明は、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうち任意の実施の形態に記載された構成の一部を抽出し、上述した各実施の形態及び他の実施の形態のうちの任意の実施の形態の構成の一部と置換・転用した実施の形態や、抽出された構成の一部を任意の実施の形態に追加した実施の形態にも適用範囲が及ぶものである。
【0126】
さらに上述した実施の形態においては、搬送部としての上搬送部64と、ステー部としてのステー82と、溝部としてのポスト摺動溝78gと、ロック機構としてのロック機構79又は179とによって、媒体処理装置としての紙幣入出金装置11又は111を構成する場合について述べた。本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる搬送部と、ステー部と、溝部と、ロック機構とによって、媒体処理装置を構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、紙幣等の媒体を搬送すると共に判別する種々の搬送装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0128】
1……レジ釣銭システム、2……POSレジ、3……釣銭機、4……釣銭機筐体、5……レジ制御部、6……表示操作部、7……レシート処理部、7A……レシート排出口、11……紙幣入出金装置、12……硬貨入出金装置、13……表示操作部、14……紙幣入出金口、15……紙幣収納庫、16……硬貨入金口、17……リジェクト口、18……硬貨出金口、19……紙幣収容空間、21……釣銭制御部、24……入出金部、26……搬送部、26a……第1搬送部、26b……第2搬送部、26c……第3搬送部、28……鑑別部、30……リジェクト回収庫、31……リジェクト庫、32……回収庫、33……リジェクトステージ、34a……第1切替部、34b……第2切替部、34c……第3切替部、35a、35b、35c……ブレード、38……入出金部ステージ、39……紙幣収容空間、40……繰出集積部、41……ピックアップローラ、42……繰出集積ローラ、43……フィードローラ、44……ゲートローラ、45……集積ローラ、50……集積ローラ、51……テンションローラ、52……フィードローラ、60……繰出集積部、62……搬送ローラ、63……紙幣入出金装置フレーム、64……上搬送部、64h……上搬送部取手、64r……回動シャフト、66……本体側搬送部、68……ガイド、70……プーリ、72……シャフト、74……ベルト、76……ガイド、76S……ガイド面、78、178……ブラケット、78g、178g……ポスト摺動溝、78guS……摺動溝上側縁部、178l……摺動溝ロック部、78S……傾斜面、78p……開放時ポスト収納空間、79、179……ロック機構、80、180……第1ロック板ばね、80m……板ばね本体部、80l……ロック部、82……ステー、82m……ステー本体部、82a……回動シャフト孔部、82p……ステーポスト、82h……ステー取手、84……第2ロック板ばね、90……ピックアップローラ、91……繰出集積ローラ、92……フィードローラ、93……ゲートローラ、94……集積ローラ、Dc……搬送部閉鎖方向、Do……搬送部開放方向、GP……ばね隙間、PR……ばね突出量。