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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158291
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】恒温槽型圧電発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H03B5/32 H
H03B5/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073376
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】森脇 徹
(72)【発明者】
【氏名】寺田 直人
【テーマコード(参考)】
5J079
【Fターム(参考)】
5J079AA04
5J079BA02
5J079BA43
5J079CA04
5J079HA05
5J079HA07
5J079HA23
5J079HA25
5J079HA30
(57)【要約】
【課題】ワイヤボンディングによるワイヤの接合強度を高めることが可能な恒温槽型圧電発振器を提供する。
【解決手段】コア部5が断熱用のパッケージ2の内部に密閉状態で封入されたOCXO1において、コア部5は、可撓性を有するコア基板4に搭載され、コア基板4は、このコア基板4の端部で非導電性接着剤7によってパッケージ2に機械的接合されており、コア部5とパッケージ2とは、ワイヤ6a,6bによって電気的接合され、コア基板4とパッケージ2の底面の間には空間2dが設けられている。コア基板4のうち非導電性接着剤7による接合領域と、パッケージ2の底面と距離C1が、コア基板4のうち少なくともワイヤ接続用のワイヤパッドが形成された領域でかつパッケージ2の底面と対向する領域の最下部と、パッケージ2の底面との距離C2よりも大きくなっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部が断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入された恒温槽型圧電発振器であって、
前記コア部は、少なくとも発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICを含んだ構成になっており、
前記コア部は、可撓性基板に搭載され、この可撓性基板は当該可撓性基板の端部で接合材によって前記パッケージの内底面に機械的接合されており、
前記コア部と前記パッケージとは、ワイヤによって電気的接合され、
前記可撓性基板と前記パッケージの前記内底面の間には空間が設けられ、
前記可撓性基板のうち前記接合材による接合領域と、前記パッケージの前記内底面との距離が、前記可撓性基板のうち少なくともワイヤ接続用のワイヤパッドが形成された領域でかつ前記パッケージの前記内底面と対向する領域の最下部と、前記パッケージの前記内底面との距離よりも大きくなっていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項2】
請求項1に記載の恒温槽型圧電発振器であって、
前記パッケージの前記内底面で前記ワイヤパッドが形成された領域には、周囲よりも肉厚に形成された凸部が設けられていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の恒温槽型圧電発振器であって、
前記可撓性基板のうち前記ワイヤパッドが形成された領域でかつ前記パッケージの前記内底面と対向する領域には、周囲よりも厚肉に形成された第2の凸部が設けられていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項4】
請求項2に記載の恒温槽型圧電発振器であって、
前記凸部は、前記コア部のうち平面視で面積が最も大きい部材の一部と重畳可能な平面視で略田字状に形成され、前記凸部の幅が前記可撓性基板の幅よりも大きくなっていることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項5】
請求項2または4に記載の恒温槽型圧電発振器であって、
前記凸部は、全面的なパターンとして形成されず、凸部が形成されていない非形成部を有していることを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【請求項6】
請求項1または2に記載の恒温槽型圧電発振器であって、
前記接合領域は、平面視で前記可撓性基板に対する前記コア部の配置領域と重畳しないことを特徴とする恒温槽型圧電発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒温槽型圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
水晶振動子等の圧電振動子は、固有の周波数温度特性に基づいて、温度に応じて振動周波数が変化する。そこで、圧電振動子の周囲の温度を一定に保つために、恒温槽内に圧電振動子を封入した恒温槽型圧電発振器(Oven-Controlled Xtal(crystal) Oscillator:以下、「OCXO」とも言う。)が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のOCXOは、発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICが積層されたコア部が、可撓性基板(コア基板)を介して断熱用のパッケージ内部に支持された構成になっており、ワイヤボンディングを用いて必要な配線が行われている。これにより、小型化を実現しながらもコア部の断熱性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/186124号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなOCXOでは、ワイヤボンディングを行う際に可撓性基板の撓みが不十分な状態となったり、可撓性基板の一部の傾きが大きくなる領域が生じたりすることで、可撓性基板のパッケージへの接触状態が不足する可能性がある。このため、ワイヤボンディングを行う際の超音波印加が十分に行われず、ワイヤの接合強度が低下するといった問題点が生じることが懸念される。
【0005】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、ワイヤボンディングによるワイヤの接合強度を高めることが可能な恒温槽型圧電発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、コア部が断熱用のパッケージの内部に密閉状態で封入された恒温槽型圧電発振器であって、前記コア部は、少なくとも発振用IC、圧電振動子、およびヒータ用ICを含んだ構成になっており、前記コア部は、可撓性基板に搭載され、この可撓性基板は当該可撓性基板の端部で接合材によって前記パッケージの内底面に機械的接合されており、前記コア部と前記パッケージとは、ワイヤによって電気的接合され、前記可撓性基板と前記パッケージの前記内底面の間には空間が設けられ、前記可撓性基板のうち前記接合材による接合領域と、前記パッケージの前記内底面との距離(距離C1)が、前記可撓性基板のうち少なくともワイヤ接続用のワイヤパッドが形成された領域でかつ前記パッケージの前記内底面と対向する領域の最下部と、前記パッケージの前記内底面との距離(距離C2)よりも大きくなっていることを特徴とする。
【0007】
上記構成によれば、上記の寸法関係(C1>C2)を満たすことで、可撓性基板のうちワイヤ接続用のワイヤパッドが形成された領域の撓み量が抑制された状態で、可撓性基板をより確実にパッケージの内底面に接触させることができ、可撓性基板の一部に生じる傾きも抑制できる。その結果、ワイヤボンディングする際の超音波印加を十分に行うことができ、ワイヤの接合強度を向上させることができる。また、可撓性基板の撓み量が抑制されるので、外部応力の影響によるコア部へ伝わる衝撃を低減させることができる。加えて、可撓性基板とパッケージの内底面との空間を確保することができ、コア部の断熱性の低下を抑制することができる。
【0008】
上記構成において、前記パッケージの前記内底面で前記ワイヤパッドが形成された領域には、周囲よりも肉厚に形成された凸部が設けられていることが好ましい。また、前記可撓性基板のうち前記ワイヤパッドが形成された領域でかつ前記パッケージの前記内底面と対向する領域には、周囲よりも厚肉に形成された第2の凸部が設けられていることが好ましい。これにより、凸部、第2の凸部を設けることによって、上記の距離C2が、凸部、第2の凸部の厚みの分だけ小さくなり、上記の寸法関係(C1>C2)が成り立つので、ワイヤボンディングによるワイヤの接合強度を高め、かつコア部への外部応力による衝撃の影響を低減することができる。また、撓み抑制部としての凸部、第2の凸部を一体的に設けることにより、パッケージの内底面と可撓性基板とが接触した際の安定性を高めることができる。
【0009】
上記構成において、前記凸部は、前記コア部のうち平面視で面積が最も大きい部材の一部と重畳可能な平面視で略田字状に形成され、前記凸部の幅が前記可撓性基板の幅よりも大きくなっていることが好ましい。これにより、略田字状の凸部によって、面積が最も大きい部材の重心および外縁部が支持されるので、ワイヤボンディングする際の超音波印加を十分に行うことができ、コア部に対するワイヤの接合強度を向上させることができる。さらに、コア部からの輻射熱による放熱が抑えられる。しかも、略田字状の凸部が可撓性基板よりも幅広に形成されているので、可撓性基板の幅方向の端部の撓みに自由度を持たせつつ、可撓性基板と凸部との接触性が高まる。これにより、可撓性基板のさらなる撓み抑制が可能になるとともに、ワイヤボンディングのさらなる安定化が可能になる。
【0010】
上記構成において、前記凸部は、全面的なパターンとして形成されず、凸部が形成されていない非形成部を有していることが好ましい。これにより、凸部を形成しない非形成部を設け、凸部の総面積を小さくすることによって、凸部からの放熱による影響を低減することができる。
【0011】
上記構成において、前記接合領域は、平面視で前記可撓性基板に対する前記コア部の配置領域と重畳しないことが好ましい。これにより、可撓性基板を挟んで、コア部の配置領域と接合領域とが連続して設けられていないため、コア部の熱が、接合材を介して外部へ逃げることを抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の恒温槽型圧電発振器によれば、可撓性基板のうちコア部と重畳する領域の撓み量が抑制された状態で、可撓性基板をより確実にパッケージの内底面に接触させることができ、可撓性基板の一部に生じる傾きも抑制できる。その結果、ワイヤボンディングする際の超音波印加を十分に行うことができ、ワイヤの接合強度を向上させることができる。また、可撓性基板の撓み量が抑制されるので、外部応力の影響によるコア部へ伝わる衝撃を低減させることができる。加えて、可撓性基板とパッケージの内底面との空間を確保することができ、コア部の断熱性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
図2図1のOCXOの平面図である。
図3図1のOCXOの底面図である。
図4図1のOCXOのパッケージの平面図である。
図5図1のOCXOのコア部およびコア基板の概略構成を示す断面図である。
図6図5のコア部の水晶発振器(水晶振動子および発振用IC)を模式的に示した概略構成図である。
図7】(a)~(f)は、パッケージの変形例を示す平面図である。
図8】(a)~(d)は、OCXOの変形例を示す断面図である。
図9】他の実施形態にかかるOCXOの概略構成を示す断面図である。
図10】コア基板の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
本実施形態にかかるOCXO1は、図1図4に示すように、セラミック製等で断面形状が略H型形状のパッケージ(筐体)2の凹部2aの内部にコア部5が配置され、リッド(蓋)3によって気密封止された構造とされている。図2は、リッド3を取り外した状態のOCXO1を示しており、パッケージ2の凹部2aの内部の構造を示している。
【0016】
詳細には、図1図2に示すように、OCXO1は、上方が開口された凹部2aおよび下方が開口された凹部2eが形成された断面形状が略H型形状のパッケージ2を有している。パッケージ2の凹部2aの内部にコア部5が気密状態で封入されている。凹部2aを囲う周壁部2bの上面には、リッド3が封止材8を介してシーム溶接によって固定されており、凹部2aの内部が密閉状態(気密状態)になっている。封止材8としては、例えばAu-Su合金や、はんだ等の金属系封止材が好適に用いられるが、低融点ガラス等の封止材を用いてもよい。また、これらに限らず、金属リングを用いたシーム封止や金属リングを用いないダイレクトシーム封止、ビーム封止等の手法による封止部材の構成を採用することも可能である(真空度を低下させない上では、シーム封止が好ましい)。凹部2aの内部空間は、高真空(例えば真空度が10Pa以下)あるいは低真空の雰囲気、または低圧の窒素やアルゴン等の熱伝導率が低い雰囲気であることが好ましい。
【0017】
図1図3に示すように、パッケージ2のコア部5の実装部となる主面(凹部2aが形成された主面)と反対側の他主面に形成される凹部2eには、コア部5のヒータ用IC52と組み合わせて使用される調整用電子部品として、コンデンサ9等の回路部品が配置されている。凹部2eは、凹部2aとは異なり、リッド3によって封止する必要はない。このように、パッケージ2のコア部5を収容する空間外に回路部品を配置することで、コア部5の小電力での温度制御や、コア部5の温度追従性の向上を図ることができる。また、気密封止された凹部2a内部の雰囲気に対して、はんだやフラックス等による事後的なガスの発生をなくすことができる。このため、ガスの悪影響をコア部5に対して与えることがなくなり、電気的特性のさらなる安定化を実現できるうえで望ましい。
【0018】
本実施形態では、3つのコンデンサ9が、パッケージ2における一主面とは反対側の他主面(この場合、凹部2eの底面)に搭載されている。コンデンサ9は、パッケージ2の凹部2eの底面に形成された搭載パッド9aに、はんだによって接合される。コンデンサ9の配置領域を図3では一点鎖線にて示している。一対の搭載パッド9a,9aは、パッケージ2の短辺方向に沿って対向して配置されており、3つのコンデンサ9それぞれのパッケージ2の短辺方向の両端部が、搭載パッド9a,9aに接合されるようになっている。パッケージ2の下面には、OCXO1を外部に設けられる外部回路基板(図示省略)にはんだ等を介して電気的に接続するための複数(図3では8つ)の外部接続端子2gも形成されている。なお、パッケージ2の他主面に搭載されるコンデンサ9の数は特に限定されるものではなく、コンデンサ9の数は3つ以外であってもよい。また、コンデンサ9以外の回路部品をパッケージ2の他主面に搭載してもよい。また、全ての回路部品の大きさ(体積、表面積)が同一でなくてもよい。
【0019】
図1図2に示すように、パッケージ2の凹部2aの周壁部2bの内壁面には、複数の接続端子(ワイヤパッド)2hの並びに沿った段差部2cが形成されている。コア部5は、対向する一対の段差部2c,2c間における凹部2aの底面(内底面)に、板状の可撓性部材からなるコア基板(可撓性基板)4を介して配置されている。あるいは、段差部2cは、凹部2aの底面の4方を囲むように形成されていてもよい。段差部2cの段差面上に形成されたワイヤパッド2hは、ワイヤ6a,6bを介して、コア部5の各構成部材に形成されたワイヤパッドにワイヤボンディングにより接続されている。具体的には、段差部2cのワイヤパッド2hが、ワイヤ6aを介して、コア部5の発振用IC51に形成されたワイヤパッド(図2参照)に接続されている。段差部2cのワイヤパッド2hが、ワイヤ6bを介して、コア部5のヒータ用IC52に形成されたワイヤパッド(図2参照)に接続されている。また、コア部5の水晶振動子50に形成されたワイヤパッド(図2参照)が、ワイヤ6cを介して発振用IC51に形成されたワイヤパッド(図2参照)にワイヤボンディングにより接続されている。
【0020】
コア基板4は、非導電性接着剤(接合材)7により凹部2aの底面に接合されており、コア基板4の下側の部分には空間(ギャップ)2dが形成されている。具体的には、パッケージ2の底面には、所定の間隔を隔てて一対のスペーサ部材2fが設けられており、各スペーサ部材2fの上に非導電性接着剤7が塗布されている。非導電性接着剤7により、コア基板4が、コア基板4の両端部でパッケージ2の底面に機械的接合されるようになっている。各スペーサ部材2fおよび非導電性接着剤7は、コア基板4の短手方向(図1の紙面に直交する方向)に沿って直線状に設けられている。
【0021】
また、コア基板4をパッケージ2に接合するための接合領域(非導電性接着剤7の塗布領域)は、平面視においてコア基板4の上面におけるコア部5の配置領域と重畳しないように配置されている。コア基板4は、例えばポリイミド等の耐熱性および可撓性を有する樹脂材料からなる。スペーサ部材2fは、例えばモリブデン、タングステン等のペースト材(メタライズ材)からなる。非導電性接着剤7としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。なお、コア基板4を水晶によって形成してもよい。
【0022】
次に、コア部5について、図5を参照して説明する。図5では、コア部5がコア基板4上に搭載された状態を図示している。コア部5は、OCXO1で使用される各種電子部品をパッケージングしたものであり、発振用IC51、水晶振動子(圧電振動子)50、およびヒータ用IC52が上側から順に積層された3層構造(積層構造)の構成になっている。発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52は、平面視におけるそれぞれの面積が、上方に向かって漸次小さくなっている。コア部5は、特に、温度特性の大きい水晶振動子50、発振用IC51、およびヒータ用IC52の温度調整を行うことで、OCXO1の発振周波数を安定させるように構成されている。なお、コア部5の各種電子部品は封止樹脂によって封止されていないが、封止雰囲気によっては封止樹脂による封止を行うようにしてもよい。
【0023】
水晶振動子50および発振用IC51によって、水晶発振器100が構成される。発振用IC51としては、例えばVCXO用ICを用いることが可能であり、この場合、水晶発振器100がVCXOとして構成される。発振用IC51によって水晶振動子50の圧電振動を制御することにより、OCXO1の発振周波数が制御されるようになっている。
【0024】
水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面の間には、非導電性接着剤53が介在されており、非導電性接着剤53によって水晶振動子50および発振用IC51の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の上面(第1封止部材20の第1主面)と、発振用IC51の下面とが、非導電性接着剤53を介して接合される。
【0025】
発振用IC51は、平面視における面積が水晶振動子50よりも小さくなっており、発振用IC51の全体が、平面視で水晶振動子50の範囲内に位置している。発振用IC51の下面の全体が、水晶振動子50の上面(第1封止部材20の第1主面)に接合されている。
【0026】
ヒータ用IC52は、例えば発熱体(熱源)と、発熱体の温度制御用の制御回路(電流制御用の回路)と、発熱体の温度を検出するための温度センサとが一体になった構成とされている。ヒータ用IC52によってコア部5の温度制御を行うことにより、コア部5の温度が略一定の温度に維持され、OCXO1の発振周波数の安定化が図られている。なお、温度センサがヒータ用IC52とは別部材として設けられた構成であってもよい。
【0027】
水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面の間には、非導電性接着剤54が介在されており、非導電性接着剤54によって水晶振動子50およびヒータ用IC52の互いの対向面が固定されている。この場合、水晶振動子50の下面(第2封止部材30の第2主面)と、ヒータ用IC52の上面とが、非導電性接着剤54を介して接合される。
【0028】
水晶振動子50は、平面視における面積がヒータ用IC52よりも小さくなっており、水晶振動子50の全体が、平面視でヒータ用IC52の範囲内に位置している。水晶振動子50の下面(第2封止部材30の第2主面)の全体が、ヒータ用IC52の上面に接合されている。
【0029】
ヒータ用IC52およびコア基板4の互いの対向面の間には、非導電性接着剤55が介在されており、非導電性接着剤55によってヒータ用IC52およびコア基板4の互いの対向面が固定されている。非導電性接着剤53,54および55としては、例えばポリイミド系接着剤、エポキシ系接着剤等が用いられる。
【0030】
図5に示すコア部5において、発振用IC51、水晶振動子50およびヒータ用IC52の上面にはワイヤボンディング用のワイヤパッド(図2参照)が形成されている。発振用IC51、水晶振動子50およびヒータ用IC52のワイヤボンディングは、コア部5をパッケージ2に搭載する前には行われず、コア部5(コア基板4)をパッケージ2に搭載した後に行われる。すなわち、図1図2に示すように、コア部5(コア基板4)をパッケージ2に搭載した後、水晶振動子50の上面に形成されたワイヤパッドがワイヤ6cを介して、発振用IC51に形成されたワイヤパッドに接続される。発振用IC51に形成されたワイヤパッドがワイヤ6aを介して、段差部2cの段差面上に形成されたワイヤパッド2hに接続される。ヒータ用IC52の上面に形成されたワイヤパッドがワイヤ6bを介して、段差部2cの段差面上に形成されたワイヤパッド2hに接続される。このように、コア部5をパッケージ2に搭載した後でワイヤボンディングを行うことによって、効率よくワイヤボンディングを行うことができ、量産性に優れたOCXO1を提供することができる。
【0031】
コア部5に用いられる水晶振動子50の種類は特に限定されるものではないが、デバイスを薄型化しやすい、サンドイッチ構造のデバイスを好適に使用できる。サンドイッチ構造のデバイスは、ガラスや水晶からなる第1、第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板とから構成され、第1封止部材と第2封止部材とが、圧電振動板を介して積層して接合され、内部に配された圧電振動板の振動部が気密封止される3枚重ね構造のデバイスである。
【0032】
このようなサンドイッチ構造の水晶振動子50と、発振用IC(例えばVCXO用IC)51とが一体的に設けられた水晶発振器100の一例について、図6を参照して説明する。なお、サンドイッチ構造の水晶振動子自体は公知であるため、水晶振動子50の内部構造についての詳細な説明は省略する。
【0033】
水晶発振器100は、図6に示すように、水晶振動板(圧電振動板)10、第1封止部材20、第2封止部材30、および発振用IC51を備えて構成されている。この水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが環状の封止接合部40によって接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが環状の封止接合部40によって接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージが構成される。封止接合部40,40は、例えば、水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30のそれぞれの接合面に、表面がAu層とされた接合パターン(例えば、最下層側からTi層とAu層とが形成された接合パターン)を形成し、接合面同士を貼り合わせたときのAu-Au拡散接合によって接合が行われるものとすることができる。この構成によれば、水晶振動板10と各封止部材20,30との隙間寸法を0.15μm~1μm程度と非常に小さくできるため、薄型化とコア部5の熱容量の縮小化に有利な構成とすることができる。
【0034】
水晶発振器100においては、振動部(図示省略)が形成される水晶振動板10の両主面のそれぞれに第1封止部材20および第2封止部材30が接合されることでパッケージの内部空間(キャビティ)が形成され、この内部空間に水晶振動板10の振動部が気密封止される。第1封止部材20の上面には、複数の外部端子22が形成されている。そのうち2つの外部端子22は、その一端側に水晶振動板10の振動部の励振電極が(水晶振動子50内の配線やスルーホールを介して)電気的に接続されており、他端側に発振用IC51がワイヤ6cによって電気的に接続される。発振用IC51は、第1封止部材20上にダイボンディングされ、水晶振動子50に対してワイヤボンディングによって電気的に接続されている。第1封止部材20上に搭載される発振用IC51は、水晶振動板10とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子である。なお、金属バンプを用いたFCB(Flip Chip Bonding)法により発振用IC51の水晶振動子50への搭載を行ってもよい。
【0035】
ここで、水晶振動子50とパッケージ2との直接的なワイヤ接続は行わず、水晶振動子50に直接的にワイヤ接続されるのは発振用IC51のみとすることが好ましい。本実施形態では、ワイヤ6cを介して水晶振動子50と発振用IC51とが接続されているのみである。この構成では、水晶振動子50からワイヤを通じてパッケージ2へ熱が逃げることを抑制できる。その結果、水晶振動子50に対する断熱性が高くなり、水晶振動子50に対する温度制御性が高くなるといったメリットがある。
【0036】
本実施形態では、上記構成のOCXO1において、コア部5が断熱用のパッケージ2の内部に密閉状態で封入されており、コア部5は、可撓性を有するコア基板4に搭載され、コア基板4は、このコア基板4の端部で非導電性接着剤7によってパッケージ2に機械的接合されており、コア部5とパッケージ2とは、ワイヤ6a,6bによって電気的接合され、コア基板4とパッケージ2の凹部2aの底面(内底面)の間には空間2dが設けられている。そして、コア基板4のうち非導電性接着剤7による接合領域(パッケージ2の凹部2aの底面と機械的に接合される領域)と、パッケージ2の凹部2aの底面と距離C1が、ワイヤ接続用のワイヤパッド(図2参照)が形成された領域でかつパッケージ2の凹部2aの底面と対向する領域の最下部と、パッケージ2の凹部2aの底面との距離C2よりも大きくなっている(C1>C2)。以下、この特徴について説明する。
【0037】
図1図4に示すように、パッケージ2の凹部2aの底面には、撓み抑制部としての凸部21が形成されており、凸部21は、周囲よりも厚肉に形成されている。凸部21は、パッケージ2の凹部2aの底面に一体的に設けられている。凸部21は、ワイヤ接続用のワイヤパッド(図2参照)が形成された領域と重畳する領域に設けられている。
【0038】
具体的には、図4に示すように、凸部21は、平面視で田の字状に形成されている。凸部21は、外周形状が略矩形に形成され、その内部に4つの略矩形の空間部(非形成部)が形成されている。凸部21の内部において、4つの空間部は、十字状の仕切り部によって縦横2つずつの空間部に区画されている。凸部21は、パッケージ2の凹部2aの底面の略中央部に設けられており、一対のスペーサ部材2f,2fの間に配置されている。凸部21は、パッケージ2の凹部2aの底面の中心に対し、点対称な形状になっている。凸部21は、パッケージ2の短辺方向の中心線に対して対称的な形状になっている。また、凸部21は、パッケージ2の長辺方向の中心線に対して対称的な形状になっている。
【0039】
凸部21の厚みは、スペーサ部材2fの厚みよりも若干小さくなっている。凸部21は、パッケージ2と同じ材料(例えばセラミック)によって形成してもよいし、あるいは、パッケージ2と異なる材料(例えばメタライズ材)によって形成してもよい。凸部21をメタライズ材により形成する場合、スペーサ部材2fと同じ材料(例えばモリブデン、タングステン)によって形成してもよい。また、凸部21を例えばアルミナ等のコーティング材によって形成してもよい。凸部21をメタライズ材によって形成する場合、他の電極パッドとともにスクリーン印刷等により、セラミック製のパッケージ2に対して容易に形成することができる。金等のメッキの場合、伝熱性が高く放熱しやすくなるといった懸念があるため、メタライズ材のみで凸部21を形成することが好ましい。しかし、メタライズ材で凸部21を形成した場合にも、凸部21からの放熱による影響が懸念される。このため、図4に示すように、凸部を形成しない空間部(非形成部)を設け、凸部21の総面積を小さくすることによって、凸部21からの放熱による影響を低減することができる。なお、凸部21をアルミナコート等によって形成する場合、凸部21からの放熱の懸念はほとんどなくなる。
【0040】
本実施形態によれば、凸部21を設けることによって、上記の距離C2が、凸部21の厚みの分だけ小さくなり、上記の寸法関係(C1>C2)が成り立つ。これにより、ワイヤ接続用のワイヤパッドが形成された領域の撓み量が抑制された状態で、コア基板4をより確実にパッケージ2の凹部2aの底面に接触させることができ、コア基板4の一部に生じる傾きも抑制できる。その結果、ワイヤボンディングする際の超音波印加を十分に行うことができ、ワイヤ6a,6b,6cの接合強度を向上させることができる。また、コア基板4の撓み量が抑制されるので、外部応力の影響によるコア部5へ伝わる衝撃を低減させることができる。加えて、コア基板4とパッケージ2の凹部2aの底面との空間2dを確保することができ、コア部5の断熱性の低下を抑制することができる。また、パッケージ2の凹部2aの底面に、撓み抑制部としての凸部21を一体的に設けることにより、コア基板4が接触した際の安定性を高めることができる。
【0041】
ここで、凸部21は、平面視でコア部5の一部と重畳する領域に設けられている。具体的には、コア部5の重心や、外縁部、隅部等の領域に重畳する位置に、凸部21が設けられていることが好ましい。また、コア部5のワイヤパッド(図2参照)が設けられた領域(ワイヤボンディングを行う領域)に重畳する位置に、凸部21が設けられていることが好ましい。これにより、ワイヤボンディングする際の超音波印加を十分に行うことができ、コア部5に対するワイヤ6a,6b,6cの接合強度を向上させることができる。
【0042】
また、凸部21は、コア部5のうち平面視で面積が最も大きい部品であるヒータ用IC52と重畳可能な平面視で略田字状に形成されており、凸部21の幅はコア基板4の幅よりも大きくなっている(図2参照)。略田字状の凸部21によって、面積が最も大きいヒータ用IC52の重心および外縁部が支持されるので、ワイヤボンディングする際の超音波印加を十分に行うことができ、コア部5に対するワイヤ6a,6b,6cの接合強度を向上させることができる。さらに、ヒータ用IC52の輻射熱による放熱が抑えられる。しかも、略田字状の凸部21がコア基板4よりも幅広に形成されているので、コア基板4の幅方向の端部の撓みに自由度を持たせつつ、コア基板4と凸部21との接触性が高まる。これにより、コア基板4のさらなる撓み抑制が可能になるとともに、ワイヤボンディングのさらなる安定化が可能になる。
【0043】
また、コア基板4のうち非導電性接着剤7による接合領域(パッケージ2の凹部2aの底面と機械的に接合される領域)は、平面視でコア基板4に対するコア部5の配置領域と重畳していない。これにより、コア基板4を挟んで、コア部5の配置領域と接合領域とが連続して設けられていないため、コア部5の熱が、接合領域(非導電性接着剤7)を介して外部へ逃げることを抑制できる。
【0044】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
上述した撓み抑制部としての凸部21は一例であって、例えば図7(a)~(f)に示すようにさまざまに変更することが可能である。図7(a)~(f)は、パッケージ2の凹部2aの底面に形成された凸部21の平面視形状を示している。図7(a)~(f)に示す各凸部21は、上記実施形態の凸部21(図4参照)と同様、パッケージ2の凹部2aの底面の略中央部に設けられており、一対のスペーサ部材2f,2fの間に配置されている。図7(a)~(f)の各凸部21は、パッケージ2の凹部2aの底面の中心に対し、点対称な形状になっている。図7(a)~(f)の各凸部21は、パッケージ2の短辺方向の中心線に対して対称的な形状になっている。また、図7(a)~(f)の各凸部21は、パッケージ2の長辺方向の中心線に対して対称的な形状になっている。図7(a)~(f)の各凸部21は、コア部5の重心や、外縁部、隅部等の領域に重畳する位置に設けられている。また、図7(a)~(f)の各凸部21は、コア部5のワイヤパッド(図2参照)が設けられた領域(ワイヤボンディングを行う領域)に重畳する位置に設けられている。なお、ワイヤパッドが形成された領域が、平面視でコア部5と重畳していなくてもよい。
【0046】
図7(f)に示すように、略矩形の凸部21を全面的なパターンとして設けてもよいが、図7(a)~(e)に示すように、凸部を形成しない空間部(非形成部)を設けたり、凸部21を複数に分割して形成して空間部(非形成部)を設けたりすることによって、凸部21の総面積を小さくすることができ、凸部21からの放熱による影響を低減することができる。
【0047】
上記実施形態では、凸部21をパッケージ2の凹部2aの底面に設けることによって、上記の寸法関係(C1>C2)を満足させるようにしたが、例えば図8(a)~(d)に示すようにさまざまに変更することが可能である。図8(a)~(c)の例では、スペーサ部材2fを上下に2段重ねにすることによって、上記の寸法関係(C1>C2)を満足させている。また、図8(b)~(d)の例では、コア基板4に凸部41(第2の凸部)を設けることによって、上記の寸法関係(C1>C2)を満足させている。
【0048】
図8(b)、(d)に示す凸部41は、コア基板4の一部を周囲よりも厚肉に形成することによって形成されている。例えば、コア基板4の下側に、別部材を取り付けることにより、凸部41を形成してもよいし、あるいは、コア基板4の一部分を肉厚構造とすることにより、凸部41を形成してもよい。コア基板4の下側に別部材を取り付ける手段としては、例えば、コア基板4の積層による貼り合わせや、コア基板4への接着剤の塗布、コア基板4へのメタライズ材の形成等がある。また、図8(c)に示す凸部41のように、コア基板4を平板状ではなく階段状とし、下側に窪む段差部を有する形状としてもよい。
【0049】
なお、図1図8(a)に示すような凸部21をパッケージ2の凹部2aの底面に設けるとともに、図8(b)~(d)に示すような凸部41(第2の凸部)をコア基板4に設けることによって、上記の寸法関係(C1>C2)を満足させるようにしてもよい。
【0050】
例えば、上記実施形態では、サンドイッチ構造の水晶振動子50を含む水晶発振器100を用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、サンドイッチ構造以外の発振器(例えば、SMD(Surface Mount Device)型の発振器)を用いてもよい。
【0051】
また、OCXO1に含まれるヒータの数は特に限定されるものでは無く、OCXO1は、ヒータ用IC52に含まれるヒータ以外に、他のヒータを有していてもよい。例えば、コア部5の上部にさらにヒータを追加した構成、パッケージ2内でコア部5以外に配置された回路部品の搭載領域にヒータを追加した構成、およびパッケージ2本体に膜状のヒータを埋め込んだ構成等が考えられる。
【0052】
また、2段重ねパッケージのOCXO1として、図示は省略するが、一方のみに凹部を有するパッケージを上下方向に積層し電気的機械的に接合するとともに、上側のパッケージをリッドで気密封止する形態とすることもできる。この場合、上側のパッケージは、図1に示すように凹部にコア部5を格納する構成とし、下側のパッケージにコンデンサのみを格納する形態とすることができる。さらに他のOCXO1としては、図1のリッド3の上にコンデンサ9を配置する構成とすることもできる。
【0053】
また、コンデンサ9をパッケージ外に配置する場合、図1に示すパッケージ2のように凹部2eが形成されることは必須ではなく、例えば図9に示すように、凹部2aが形成された主面とは反対側の他主面を平面状としたパッケージ2を用いてもよい。図9では、コンデンサ9の図示は省略しているが、凹部2aが形成された主面とは反対側の他主面の平面状の部分にコンデンサ9を配置してもよいし、あるいは、パッケージ2とは別の場所にコンデンサを配置してもよい。
【0054】
なお、図9に示すOCXO1では、スペーサ部材2fと非導電性接着剤7とが上下に重ねて設けられていない点で、上記実施形態のOCXO1(図1参照)とは異なる。図9に示すOCXO1では、スペーサ部材2fと非導電性接着剤7とが左右に並んで配置されており、スペーサ部材2fおよび非導電性接着剤7が、コア基板4とパッケージ2の凹部2aの底面との間に介在されている。この場合、スペーサ部材2fにより、コア基板4とパッケージ2の凹部2aの底面との間の空間2dを確保しやすくなり、非導電性接着剤7の厚みを確保しやすくなる。
【0055】
また、上述したコア部5は、発振用IC51、水晶振動子50、およびヒータ用IC52が上側から順に積層された3層構造とされているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ヒータ用IC52の上に発振用IC51および水晶振動子50が平置き(横並び)配置される構成とされてもよい。この構成では、水晶振動子50が発振用IC51からの熱の影響を受けにくくなり、水晶振動子50およびヒータ用IC52の温度が均一化されやすくなるため、ヒータ用IC52に備えられた温度センサによって、温度制御対象である水晶振動子50に対してより高精度な温度制御が行える。
【0056】
OCXO1における温度制御性を高めるためには、コア部5からパッケージ2への放熱を低減することが重要である。ここで、コア部5からパッケージ2への放熱は、主にコア基板4を介した熱伝導によって生じる。すなわち、コア基板4による熱伝導量を低減することで、OCXO1における温度制御性を向上させることができる。図10は、そのようなコア基板4の一例を示す平面図である。図10において、領域R1はコア基板4の上面においてコア部5の一部であるヒータ用IC52が搭載される領域であり、領域R2はコア基板4の裏面においてパッケージ2と接合される領域(接合材の塗布領域)である。
【0057】
図10に示すコア基板4では、領域R1と領域R2との間にスリット43が設けられ、このスリット43によって領域R1と領域R2との間の伝熱経路が狭められる。コア基板4を介した熱伝導によってコア部5からパッケージ2への放熱が生じることを低減することができる。スリット43による熱伝導低減効果(断熱効果)を好適に得るため、スリット43は、コア基板4の両側における領域R2の並び方向(図10での左右方向)に対して直交する方向(図10での上下方向)を長手方向とすることが好ましい。これにより、スリット43は、領域R1から領域R2に伝わる熱を広範囲に遮断することができ、スリット43による断熱効果が向上する。
【0058】
なお、スリット43の短手方向(図10では左右方向)寸法は、スリット43の断熱効果に特に影響を与えるものではなく、コア基板4の強度低下を避ける観点からできるだけ小さくすることが好ましい。コア基板4の強度が低下すると、コア部5をパッケージ2にワイヤボンディングする際に、超音波が効率的に接合に寄与しなくなり、良好なワイヤボンディングが行いにくくなる。
【0059】
領域R1と1つの領域R2との間に設けられるスリット43は、1つの長いスリットとして形成するよりも、長手方向に複数に分割されたスリットとすることが好ましい。このように、スリット43を複数に分割することにより、1つの長いスリットとする場合に比べ、コア基板4の強度低下を避けることができる。これにより、コア部5をパッケージ2にワイヤボンディングする際に、超音波を効率的に接合に寄与させることができ、良好なワイヤボンディングが行えるようになる。
【0060】
また、図10に示すコア基板4では、コア部5の一部であるヒータ用IC52の直下領域に、すなわち領域R1とほぼ重なるように開口44が設けられている。この開口44によってヒータ用IC52とコア基板4との接触面積が低減され、ヒータ用IC52からコア基板4への伝熱量を低減することができる。その結果、コア基板4を介した熱伝導によってコア部5からパッケージ2への放熱が生じることを低減することができる。なお、開口44は開口内部に領域R1を完全に含むことはなく、開口44は領域R1の少なくとも4隅を含まない形状とされている。これにより、ヒータ用IC52はその4隅でコア基板4に接着固定できるようになっている。
【0061】
また、開口44は、開口44の縦および横寸法が領域R1の縦および横寸法よりも小さくなるように形成されている。これにより、領域R1は4隅のみでなく、外縁部の周辺全体が開口44に含まれない形状とされている。この場合、コア部5をパッケージ2にワイヤボンディングする際に、コア部5のワイヤボンディングパッドの直下に開口44が存在しないようにすることができる。その結果、ワイヤボンディングの際にコア部5の姿勢を安定化させ、超音波を効率的に接合に寄与させることができ、良好なワイヤボンディングが行えるようになる。
【符号の説明】
【0062】
1 OCXO(恒温槽型圧電発振器)
2 パッケージ
2d 空間
4 コア基板(可撓性基板)
5 コア部
6a,6b,6c ワイヤ
7 非導電性接着剤(接合材)
21 凸部
50 水晶振動子(圧電振動子)
51 発振用IC
52 ヒータ用IC
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図10