(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158292
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】心拍測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0245 20060101AFI20241031BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20241031BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61B5/0245 100C
G01L5/00 101Z
A61B5/0245 C
A61B5/11 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073378
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】阿形 光敏
【テーマコード(参考)】
2F051
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
2F051AA17
2F051AB06
2F051BA07
4C017AA02
4C017AC04
4C017DD14
4C017FF05
4C038VA04
4C038VB32
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】測定精度の向上した心拍測定装置1を提供する。
【解決手段】複数の圧力センサセル42を備えるセンサ3と、複数の圧力センサセル42から選択された複数の選択セル43によって被験者の体圧を計測する計測部44と、複数の選択セル43が計測した体圧から被験者の心拍情報を推定する心拍算出部53と、複数の選択セル43が計測した体圧に基づいて判定値JVを算出する判定値算出部54と、今回の計測時における判定値JVである今回判定値JV2と、今回の計測時よりも前の計測時における判定値JVである先回判定値JV1と、を比較して、先回判定値JV1と今回判定値JV2との間の変化量が選択用閾値TV1を下回っているときに計測部44を構成する複数の選択セル43を維持し、変化量が選択用閾値TV1を上回っているときに計測部44を構成する複数の選択セル43を変更する、判定部55と、を備えた心拍測定装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧力センサセルを備えるセンサと、
前記複数の圧力センサセルから選択された複数の選択セルを備え、前記複数の選択セルによって被験者の体圧を計測する計測部と、
前記複数の選択セルが計測した前記体圧から前記被験者の心拍情報を推定する心拍算出部と、
前記複数の選択セルが計測した前記体圧に基づいて判定値を算出する判定値算出部と、
今回の計測時における判定値である今回判定値と、今回の計測時よりも前の計測時における判定値である先回判定値と、を比較して、前記先回判定値と前記今回判定値との間の変化量が選択用閾値を下回っているときに前記計測部を構成する前記複数の選択セルを維持し、前記変化量が前記選択用閾値を上回っているときに前記計測部を構成する前記複数の選択セルを変更する、判定部と、を備えた心拍測定装置。
【請求項2】
前記判定値算出部は、
すべての前記複数の選択セルが前記体圧を計測するごとに、前記判定値を算出する、請求項1に記載の心拍測定装置。
【請求項3】
前記判定値は前記体圧に対して正の相関を有し、
前記判定部は、
前記変化量として、前記先回判定値から前記今回判定値を減じた差分を用い、
前記差分が前記選択用閾値を下回っているときに前記計測部を構成する前記複数の選択セルを維持し、
前記差分が前記選択用閾値を上回っているときに前記計測部を構成する前記複数の選択セルを変更する、請求項1に記載の心拍測定装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記先回判定値と前記今回判定値との間の変化量が前記選択用閾値を上回っているとき、すべての前記複数の圧力センサセルの一部のみにより構成される複数の候補セルを選択し、
前記複数の候補セルは、
前記複数の選択セルの少なくとも1つを含み、
前記判定値算出部は、さらに、
前記複数の候補セルを構成する前記複数の圧力センサセルが計測した前記被験者の体圧に基づいて、候補セル用判定値を算出し、
前記判定部は、
前記候補セル用判定値と前記先回判定値との間の変化量が前記選択用閾値を下回っているとき、前記複数の候補セルを、新たな複数の選択セルとして更新する、請求項1に記載の心拍測定装置。
【請求項5】
前記判定部は、さらに、
複数の候補セル群を選択し、前記複数の候補セル群のそれぞれは、前記複数の候補セルを含み、
前記判定部は、
前記複数の候補セル群のそれぞれについて前記候補セル用判定値を算出し、
前記複数の候補セル群のそれぞれについて算出された前記候補セル用判定値を比較し、
前記複数の候補セル群のうち、算出された前記候補セル用判定値と前記先回判定値との間の変化量が前記選択用閾値を下回った候補セル群を選択し、
選択された前記候補セル群に含まれる複数の候補セルを、新たな複数の選択セルとして更新する、請求項4に記載の心拍測定装置。
【請求項6】
前記複数の候補セル群は、
前記複数の選択セルと、前記複数の選択セルの周囲に配された圧力センサセルと、により構成する圧力センサセルのうち、計測された前記被験者の体圧が最も高い圧力センサセルを含む、請求項5に記載の心拍測定装置。
【請求項7】
前記判定部は、
前記複数の選択セルのうち今回の計測時に最も高い体圧を計測した今回最高圧力セルが、今回の計測時よりも前の計測時に最も高い体圧を計測した先回最高圧力セルと同じでないとき、すべての前記複数の圧力センサセルの一部のみにより構成される新たな複数の候補セルを選択し、
前記新たな複数の候補セルは、
前記複数の選択セルの少なくとも1つと、前記複数の選択セルの周囲に配された圧力センサセルと、を含み、
前記判定部は、
前記複数の候補セルを構成する前記複数の圧力センサセルが計測した前記被験者の体圧に基づいて、前記複数の候補セルを構成する前記複数の圧力センサセルのうち最も高い体圧を測定した候補セル最高圧力セルを含む新たな複数の選択セルを選択する、請求項1に記載の心拍測定装置。
【請求項8】
さらに
前記心拍測定装置が起動されたとき、前記複数の圧力センサセルのすべてが計測した前記被験者の体圧に基づいて、前記複数の圧力センサセルのうち最も高い体圧を計測した全セル最高圧力セルを含む複数の選択セルを選択する、初期選択部を備える、請求項1に記載の心拍測定装置。
【請求項9】
前記判定部は、
前記先回判定値と前記今回判定値との間の変化量が前記選択用閾値を上回っているとき、すべての前記複数の圧力センサセルの一部のみにより構成される複数の候補セルを選択し、
前記複数の候補セルは、
前記複数の選択セルの少なくとも1つと、前記複数の選択セルの周囲に配された圧力センサセルと、を含み、
前記判定部は、
前記複数の候補セルを構成する前記複数の圧力センサセルが計測した前記被験者の体圧に基づいて、前記複数の候補セルを構成する前記複数の圧力センサセルのうち最も高い体圧を測定した候補セル最高圧力セルを含む新たな複数の選択セルを選択し、
さらに、
前記心拍測定装置が起動されたとき、前記複数の圧力センサセルのすべてが計測した前記被験者の体圧に基づいて、前記複数の圧力センサセルのうち最も高い体圧を計測した全セル最高圧力セルを含む複数の選択セルを選択する、初期選択部を備え、
前記判定部は、
前記全セル最高圧力セルの位置と、前記候補セル最高圧力セルの位置と、を比較し、前記全セル最高圧力セルの位置と、前記候補セル最高圧力セルの位置と、の位置ずれが、位置ずれ用閾値よりも大きいとき、前記被験者の姿勢が大きくずれたと判定する、請求項1に記載の心拍測定装置。
【請求項10】
さらに、
前記判定部が前記被験者の姿勢が大きくずれたと判定したとき、前記複数の圧力センサセルのすべてが計測した前記被験者の体圧に基づいて、前記複数の圧力センサセルのうち最も高い体圧を計測した全セル最高圧力セルを含む複数の選択セルを選択する、位置ずれ時選択部を備える、請求項9に記載の心拍測定装置。
【請求項11】
前記判定部は、
前記先回判定値と前記今回判定値との間の変化量が、前記選択用閾値より大きな選択セル位置ずれ用閾値を上回っているとき、前記被験者の姿勢が大きくずれたと判定する、請求項1に記載の心拍測定装置。
【請求項12】
さらに、
前記判定部が、前記被験者の姿勢が大きくずれたと判定したとき、前記複数の圧力センサセルのすべてが計測した前記被験者の体圧に基づいて、前記複数の圧力センサセルのうち最も高い体圧を計測した全セル最高圧力セルを含む複数の選択セルを選択する、位置ずれ時選択部を備える、請求項11に記載の心拍測定装置。
【請求項13】
前記判定値は、前記計測部を構成する前記複数の選択セルの各選択セルにより計測された前記被験者の体圧に係る計測値の合計値、平均値、標準偏差、または最大値のいずれか一つである、請求項1~12のいずれか一項に記載の心拍測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心拍測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の圧力センサセルを備えた心拍測定装置として、特許文献1に記載のものが知られている。この心拍測定装置は、複数の圧力センサセルを備えた触覚センサを備える。触覚センサは二次元の圧力パターンを検出する。この心拍測定装置は、触覚センサにより検出された被験者の体圧分布情報と圧力変動分布情報とに基づいて、被験者の心拍測定に適した参照モデルを選択する。心拍測定装置は、参照モデルに基づいて、複数の圧力センサセルの中から心拍情報を検出するための心拍測定用素子を選択する。これにより、被験者の心拍情報を良好な検出精度をもって測定することが期待された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の技術においては、心拍測定用素子は、予め定められた、わずか4種類の参照モデルに基づいて選択される。このため、被験者の姿勢が変化する場合に、心拍情報の測定精度を一定の水準に維持させる点において、改良の余地があった。
【0005】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、測定精度の安定性を向上した心拍測定装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、
複数の圧力センサセルを備えるセンサと、
前記複数の圧力センサセルから選択された複数の選択セルを備え、前記複数の選択セルによって被験者の体圧を計測する計測部と、
前記複数の選択セルが計測した前記体圧から前記被験者の心拍情報を推定する心拍算出部と、
前記複数の選択セルが計測した前記体圧に基づいて判定値を算出する判定値算出部と、
今回の計測時における判定値である今回判定値と、今回の計測時よりも前の計測時における判定値である先回判定値と、を比較して、前記先回判定値と前記今回判定値との間の変化量が選択用閾値を下回っているときに前記計測部を構成する前記複数の選択セルを維持し、前記変化量が前記選択用閾値を上回っているときに前記計測部を構成する前記複数の選択セルを変更する、判定部と、を備えた心拍測定装置にある。
【発明の効果】
【0007】
体圧に基づいて算出された判定値について、先回判定値と今回判定値との変化量が選択用閾値を下回っているということは、今回より前の計測時において計測部が計測した被験者の体圧と、今回の計測時に計測部が計測した被験者の体圧との間の変化量が比較的に小さいことを意味する。この場合、本発明の態様によれば、計測部を構成する複数の選択セルを維持する。これにより、心拍測定装置の精度を維持することができる。
【0008】
一方、体圧に基づいて算出された判定値について、先回判定値と今回判定値との変化量が選択用閾値を上回っている場合、今回より前の計測時において計測部が計測した被験者の体圧に比べて、今回の計測時に計測部が計測した被験者の体圧の変化量が、比較的に大きかったことを意味する。この場合、本発明の態様によれば、次回の計測時において、被験者の心拍情報の検出精度が低下するおそれがある。そこで、本態様によれば、計測部を構成する複数の選択セルを変更する。これにより、心拍情報の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の心拍測定装置を示すブロック図。
【
図2】実施形態1のセンサが配置されたシートを示す断面図。
【
図5】実施形態1のセンサにおいて、全セル最高圧力セルの位置を示す模式図。
【
図6】実施形態1のセンサにおいて、選択セル最高圧力セルの位置が初期位置からずれた状態を示す模式図。
【
図7】実施形態1のセンサにおいて、候補セルが選択された状態を示す模式図。
【
図8】実施形態1のセンサにおいて、候補セル最高圧力セルが初期位置から大きくずれていない状態を示す模式図。
【
図9】実施形態1のセンサにおいて、新たな選択セルが選択された状態を示す模式図。
【
図10】実施形態1のセンサにおいて、候補セル最高圧力セルが初期位置から大きくずれた状態を示す模式図。
【
図11】実施形態1の心拍測定装置の動作を示すフローチャート。
【
図12】実施形態1の心拍用体圧計測処理の動作を示すフローチャート。
【
図13】実施形態1の候補セル処理の動作を示すフローチャート。
【
図14】実施形態1の位置ずれ時選択処理の動作を示すフローチャート。
【
図15】実施形態2の心拍計測装置の動作を示すフローチャート。
【
図16】実施形態3の心拍計測装置を示すブロック図。
【
図17】実施形態3の心拍計測装置の動作を示すフローチャート。
【
図18】実施形態4および実施形態5の心拍測定装置を示すブロック図。
【
図19】実施形態4の候補セル処理の動作を示すフローチャート。
【
図20】実施形態4のセンサにおいて、候補セルが選択された状態を示す模式図。
【
図21】実施形態4のセンサにおいて、新たな選択セルが選択された状態を示す模式図。
【
図22】実施形態5の心拍測定装置の動作を示すフローチャート。
【
図23】実施形態5の候補セル群処理の動作を示すフローチャート。
【
図24】実施形態5のセンサにおいて、複数の候補セル群が選択された状態を示す模式図。
【
図25】実施形態5のセンサにおいて、新たな選択セルが選択された状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
1.心拍測定装置1の構成
図1~
図10を参照して、実施形態1に係る心拍測定装置1の概要を説明する。心拍測定装置1は、シート状に形成されたセンサ3によって、被験者の体圧を計測し、心拍情報を推定する。以下の説明においては、複数の部材については一部の部材にのみ符号を付し、他の部材の符号を省略する場合がある。
【0011】
図1に示すように、本形態の心拍測定装置1は、センサ3、電源装置51、初期選択部52、心拍算出部53、判定値算出部54、判定部55、位置ずれ時選択部56、および、記憶部57を備える。記憶部57は、初期位置IP、選択用閾値TV1、先回判定値JV1、今回判定値JV2、および位置ずれ用閾値TV2を格納する。心拍測定装置1は、推定された心拍情報を状態推定部58に送信し、状態推定部58は、取得した心拍情報に基づいて被験者の状態を推定する。また、表示部59は、状態推定部58、または、心拍測定装置1から取得した情報に基づいて、被験者に様々な情報を表示する。ただし、表示にされる情報は特に限定されず、視覚情報を含むとともに、音声情報等も含む。
【0012】
図2に示すように、センサ3は、例えば車両(図示せず)のシート2に配置される。センサ3は、可撓性を有する扁平なシート状に形成されている。ただし、センサ3の配置場所は特に限定されず、例えば、船舶や航空機等のシート2に配置しても良いし、家庭内で使用される椅子に配置しても良い。
【0013】
図2に示すように、本形態のシート2は、フレーム部8と、クッション部9と、ヘッドレスト27と、を備える。ただし、ヘッドレスト27は省略してもよい。
【0014】
フレーム部8は、座面シートフレーム11と、背面シートフレーム21と、を備える。クッション部9は、座面シートフレーム11に取り付けられる座面シートクッション10と、背面シートフレーム21に取り付けられる背面シートクッション22と、を備える。
【0015】
座面シートフレーム11は、例えば、金属や硬質樹脂などの硬質材料により形成されており、車両に取付けられる。座面シートフレーム11の上面には座面シートクッション10が取付けられている。座面シートクッション10は、発泡樹脂などの弾性材料により形成される。座面シートクッション10の上面は、被験者の臀部により圧力を受ける受圧面14となる。
【0016】
座面シートクッション10の表面には、座面表皮部材13が被覆されている。座面表皮部材13は、座面シートクッション10の少なくとも受圧面14を被覆する。座面表皮部材13は、布、革など、座面シートクッション10よりも伸縮しにくい材料により形成されている。
【0017】
背面シートフレーム21は、例えば、金属や硬質樹脂などの硬質材料により形成されている。背面シートフレーム21は、板状、棒状などに形成される。
【0018】
背面シートクッション22は、発泡樹脂などの弾性材料により形成される。背面シートクッション22は、背面シートフレーム21に積層して取り付けられる。背面シートクッション22のうち背面シートフレーム21と反対側の面が、搭乗者の背部により圧力を受ける受圧面14となる。
【0019】
背面シートクッション22の表面には、背面表皮部材23が被覆されている。背面表皮部材23は、背面シートクッション22の少なくとも受圧面24を被覆する。背面表皮部材23は、布、革などの材料により形成されている。
【0020】
ヘッドレスト27は、背面シートクッション22の上端に配置される。ヘッドレスト27は、クッション25および表皮部材26を備える。ここで、
図2においては、第一座面シートクッション12と背面シートクッション22とを別体としたが、一体としても良い。また、背面シートクッション22とヘッドレスト27とを別体としたが、一体としても良い。
【0021】
本形態においては、センサ3は、座面シートクッション10の内部に配置されている。詳細には図示しないが、例えば、センサ3は、座面シートクッション10の一部をくりぬいて形成した凹部内に収容し、凹部に対応する形状の弾性材料で凹部を塞ぐことにより、座面シートクッション10内に配置することができる。ただし、センサ3は、座面シートクッション10と座面表皮部材13との間に配置しても良いし、座面シートクッション10と座面シートフレーム11との間に配置しても良く、任意の位置に配置することができる。
【0022】
また、センサ3は、例えば、背面シートフレーム21と背面シートクッション22との間に配置しても良いし、背面シートクッション22の内部に配置しても良いし、背面シートクッション22と背面表皮部材23との間に配置しても良く、任意の位置に配置することができる。
【0023】
図3に示すように、センサ3は、第一面36aおよび第二面36bを有する絶縁体シート36と、絶縁体シート36の第一面36aに積層される第一電極シート32と、絶縁体シート36の第二面36bに積層される第二電極シート37と、を備える。以下において、積層方向とは、特に断らない限り、センサ3を構成する、第一電極シート32、絶縁体シート36、および第二電極シート37の積層方向として用いる。
【0024】
絶縁体シート36は、絶縁性を有するとともに、可撓性を有しており、シート状(膜状)に形成されている。絶縁体シート36は、例えば、矩形状に形成される。絶縁体シート36を構成する材料は特に限定されないが、エラストマーから構成されてもよい。エラストマーには、例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴムなどが適用される。
【0025】
第一電極シート32は、可撓性を有しており、シート状(膜状)に形成されている。第一電極シート32は、例えば、矩形状に形成される。第一電極シート32は、絶縁体シート36の第一面36aと対向する面(
図3の下面)に配置された第一電極層34と、第一電極シート32のうち第一電極層34と反対側の面に配置された第一シールド層33と、を備える。第一電極層34は、絶縁体シート36の第一面36aと第二面36bにそれぞれ配される、一対の電極の一方を構成する。本形態においては、第一電極層34は、1枚の電極により構成されている。また、本形態においては、第一シールド層33は、1枚の電極により構成されている。第一シールド層33は、第一電極層34と、積層方向について重畳している。第一シールド層33は、第一電極層34よりもやや大きく形成されている。
【0026】
第二電極シート37は、第一電極シート32とは別体に構成されており、絶縁体シート36の第二面36bに対向して配置される。第二電極シート37は、例えば、矩形状に形成されている。第二電極シート37と第一電極シート32との間には絶縁体シート36が介在している。第二電極シート37は、可撓性を有しており、シート状(膜状)に形成されている。第二電極シート37は、絶縁体シート36の第二面36bと対向する面(
図2の上面)に配置された第二電極層39と、第二電極シート37のうち第二電極層39と反対側の面に配置された第二シールド層38と、を備える。
【0027】
第二電極層39は、第一電極シート32を構成する第一電極層34に対して距離を隔てて対向して配置される。つまり、第一電極層34と第二電極層39とは、積層方向の投影において、重なるように配置されている。第二電極層39は、静電センサまたは圧電センサにおける一対の電極の他方を構成する。
【0028】
また、本形態においては、第二電極層39は、複数の第二電極セル41により構成されている。複数の第二電極セル41のそれぞれは、第一電極シート32を構成する1枚の第一電極層34に対向するように層方向に配列される。本形態においては、
図3に示すように、例えば、第二電極層39は、8行×8列に配列された64個の第二電極セル41により構成される。ただし、第二電極層39を構成する第二電極セル41の数は、任意に設定できる。
【0029】
1つの第二電極セル41と、第一電極層34のうち当該1つの第二電極セル41と対向する領域と、が、1つの圧力センサセル42を構成する。すなわち、シート2に着座した被験者によって受圧面14が押下されると、絶縁体シート36が圧縮される。これにより、1つの第二電極セル41と、第一電極層34との距離が小さくなり、これにより、1つの第二電極セル41と、第一電極層34のうち当該1つの第二電極セル41と対向する領域と、で構成される1つの圧力センサセル42の静電容量が大きくなる構成とされる。本形態では、第二電極セル41の個数と同数の、64個の圧力センサセル42が形成されている。ただし、圧力センサセル42の個数は任意に設定できる。
【0030】
本形態においては、第二シールド層38は、1枚の電極により構成されている。第二シールド層38は、第二電極層39と、積層方向について重畳している。第二シールド層38は、第二電極層39の外形状よりもやや大きく形成されている。
【0031】
図4に、説明の便宜のために、センサ3の外形と、複数の圧力センサセル42の外形と、を模式的に記載したものを示す。以下、
図5~
図10についても同様である。センサ3の左方に記載した数字と、センサ3の上方に記載したアルファベットは、複数の圧力センサセル42の位置を説明する便宜のためのものである。
【0032】
図4に示すように、センサ3は、複数の圧力センサセル42から選択された複数の選択セル43を備えた計測部44を備える。本形態では、破線で囲まれた9つの圧力センサセル42により、計測部44が構成される。ただし、計測部44を構成する圧力センサセル42の個数は特に限定されない。計測部44は、複数の選択セル43によって被験者の体圧を計測する。複数の選択セル43によって計測された体圧に基づいて、被験者の心拍情報が算出される。
【0033】
図1に戻って、センサ3には電源装置51が接続されている。電源装置51は、所定の電圧を発生し、センサ3の第一電極層34または第二電極層39に対して所定の電圧を印可する。
【0034】
初期選択部52は、心拍測定装置1が起動されたときに、複数の圧力センサセル42のすべてを用いて、被験者の体圧を計測する。初期選択部52は、複数の圧力センサのうち最も高い体圧を計測した圧力センサセル42を、全セル最高圧力セル42aとする。初期選択部52は、全セル最高圧力セル42aを含む複数の選択セル43を選択する。
【0035】
図5に示すように、本形態では、64個の圧力センサセル42によって、被験者の体圧が計測され、64個の圧力センサセル42のうち、最も高い体圧を計測した圧力センサセル42が、全セル最高圧力セル42aとされる。本形態では、例えば、上から4行目、C列の圧力センサセル42が、1つの全セル最高圧力セル42aとされる。全セル最高圧力セル42aには、ドットパターンを付した。
【0036】
被験者の体圧を計測するために、圧力センサセル42ごとのチャンネルを切替える周期も含めて、例えば400μ秒かかったとする。そうすると、64個の圧力センサセル42のすべてにおいて被験者の体圧を計測すると、下記の式のように、25600秒の時間が必要となる。
400μ秒×64個=25600μ秒
すなわち、すべての圧力センサセル42で被験者の体圧を計測する際の周期は、25600μ秒となる。ただし、体圧を計測するための計測周期は400μ秒に限定されない。
【0037】
最も高い体圧が計測された圧力センサセル42が1つである場合、1つの圧力センサセル42を、全セル最高圧力セル42aとする。また、最も高い体圧が計測された圧力センサセル42が複数ある場合、複数の圧力センサセル42を、全セル最高圧力セル42aとしてもよい。
【0038】
複数の選択セル43は、1つの全セル最高圧力セル42aの近傍に配置された複数の圧力センサセル42から選択される構成とすることができる。複数の選択セル43と、全セル最高圧力セル42aの位置関係は特に限定されず、例えば、1つの全セル最高圧力セル42aを包囲する9個の圧力センサセル42を選択セル43としてもよいし、また、1個の全セル最高圧力セル42aの前後方向および左右方向に隣り合う4個の圧力センサセル42を選択セル43としてもよい。
【0039】
図4に示すように、本形態では、上記した全セル最高圧力セル42aを包囲する9個の圧力センサセル42が、選択セル43とされる。本形態では、
図4にうち、破線で囲まれた領域が計測部44とされ、計測部44の内部に、複数(本実施形態では9個)の選択セル43が配置されている。9個の選択セル43は、被験者の心拍情報を推定する目的で、被検査の体圧を計測する。
【0040】
図1に戻って、初期選択部52は、すべての圧力センサセル42を用いて計測した被験者の体圧データを記憶部57に送信し、記憶部57に全セル体圧データADとして記憶させる。また、初期選択部52は、全セル最高圧力セル42aの、複数の圧力センサセル42における位置情報を記憶部57に送信し、全セル最高圧力セル42aの初期位置IPに関する情報として、記憶部57に記憶させる。
【0041】
心拍算出部53は、複数の選択セル43が計測した体圧に基づいて、被験者の心拍情報を推定する。心拍は1秒から2秒の周期で早く動作する。このため、被験者の心拍情報を推定するために被験者の体圧を計測する場合、単に被験者の体圧を計測する場合に比べて、高い計測精度が求められる。そこで、計測精度を高めるため、例えば、被験者の体圧を複数回計測したデータを用いることができる。ただし、積算回数は特に限定されない。
【0042】
被験者の心拍情報を推定するために、圧力センサセル42ごとのチャンネルを切替える周期も含めて、例えば400μ秒かかったとする。そうすると、9個の選択セル43のすべてにおいて被験者の体圧を計測すると、下記の式のように、3600秒の時間が必要となる。
400μ秒×9個=3600μ秒
すなわち、9個の選択セル43で被験者の心拍情報を推定するために体圧を計測する際の周期は3600μ秒となる。ただし、体圧を計測するための計測周期は400μ秒に限定されない。
【0043】
仮に、64個の圧力センサセル42すべてを用いて、被験者の心拍情報を推定するために体圧を計測しようとすると、下記の式のように、25600μ秒必要となる。
400μ秒×64=25600μ秒
本形態によれば、被験者の心拍情報を推定するために体圧を計測する際の周期を短縮できるので、被験者の心拍情報を高精度で推定することができる。
【0044】
心拍算出部53は、被験者の心拍情報を推定するために計測した被験者の体圧に関するデータを記憶部57に送信し、記憶部57に、選択セル体圧データSDとして記憶させる。また、心拍算出部53は、複数の選択セル43のうち最も高い体圧を計測した選択セル最高圧力セル43aの位置を記憶部57に送信し、記憶部57に、選択セル最高圧力セル位置SPとして記憶させる。
【0045】
心拍算出部53は、被験者の心拍情報を状態推定部58に送信する。状態推定部58は、被験者の心拍情報に基づいて、被験者の状態(例えば健康状態、眠気の状態、疲れ具合等)を推定する。
【0046】
状態推定部58は、推定した被験者の状態に基づいたサービスを、表示部59を用いて被験者に報知する。表示部59としては、ディスプレイ、スピーカ等、任意の装置を適宜に選択できる。被験者に報知するサービスとしては、特に限定されず、例えば、被験者に休憩を促したり、被験者に休憩場所までの道のりを示したり、することが挙げられる。
【0047】
判定値算出部54は、記憶部57に記憶された選択セル体圧データSDを取得し、選択セル体圧データSDに基づいて判定値JVを算出する。すなわち、判定値算出部54が用いる選択セル体圧データSDは、心拍算出部53が被験者の心拍情報を推定するために計測した被験者の体圧に関するデータを用いる。判定値算出部54は、複数の選択セル43のすべてが、被験者の心拍情報を推定するために被験者の体圧を計測するごとに、判定値JVを算出する。本形態では、9個の選択セル43が被験者の体圧を計測するごとに、判定値算出部54が判定値JVを算出する。
【0048】
判定値JVは、複数の選択セル43のうち最も高い体圧を計測した選択セル最高圧力セル43aの位置がずれたか否かを判定するための値である。判定値JVは体圧に対して正の相関を有する。すなわち、判定値JVの値が高ければ高いほど、体圧の値も高くなる傾向がある。判定値JVは、計測部44を構成する複数の選択セル43の各選択セル43により計測された被験者の体圧に係る計測値の統計量であり、例えば、合計値、平均値、標準偏差、または最大値のいずれか一つである。本形態においては、判定値JVとして、複数の選択セル43の各選択セル43により計測された被験者の体圧に係る計測値の合計値を用いる。
【0049】
判定値JVとして、複数の選択セル43の各選択セル43により計測された被験者の体圧に係る計測値の合計値を用いることにより、選択セル43において最も高い体圧を計測する圧力センサセル42についての分析の精度を向上させることができる。以下に説明する。
【0050】
例えば、2つの隣り合う圧力センサセル42が、複数の選択セル43のうち最も高い体圧を計測した場合を想定する。この場合において、例えば、被験者が座骨の位置を変えずに左右のいずれかに重心をずらしたと仮定する。すると、硬い座骨の位置に対応する、最も高い圧力を計測した圧力センサセル42の位置や、値については変化しない可能性がある。しかし、重心がずれたということは、座骨に比べて柔らかい筋肉部分の、複数の選択セル43への荷重のかかり方については、変化した可能性がある。このような場合に、判定値JVとして、複数の選択セル43の各選択セル43により計測された被験者の体圧に係る計測値の合計値を用いると、被験者の重心のずれに対応して、複数の選択セル43全体に加えられる荷重の変化を検出することが可能となる。
【0051】
判定値算出部54は、算出した判定値JVを記憶部57に送信し、記憶部57に記憶させる。記憶部57は、判定値算出部54から取得した判定値JVを、取得した順に、時系列にしたがって記憶する。すなわち、今回の体圧計測で算出された判定値JVを今回判定値JV2として記憶し、今回の体圧計測より前の体圧計測で算出された判定値JVは、先回判定値JV1として記憶する。先回判定値JV1には、1回前の前回判定値、2回前の前々回判定値、3回前の3回前判定値などが含まれる。
【0052】
判定部55は、記憶部57から今回判定値JV2、および、先回判定値JV1を取得する。先回判定値JV1については、何回前の計測時における判定値JVかは特に限定されず、1回前の前回判定値でも良いし、2回前の前々回判定値でも良く、任意の判定値JVを適宜に選択できる。本形態では、先回判定値JV1として、例えば、前回判定値が用いられる。
【0053】
判定部55は、記憶部57から、選択用閾値TV1を取得する。判定部55は、今回判定値JV2と先回判定値JV1との間の変化量と、選択用閾値TV1と、を比較することにより、複数の選択セル43を維持するか、または、複数の選択セル43を変更するか、を判断する。本形態においては、先回判定値JV1と今回判定値JV2との間の変化量として、先回判定値JV1から今回判定値JV2を減じた差分ΔJVが用いられる。
【0054】
判定部55は、先回判定値JV1と今回判定値JV2との間の変化量が選択用閾値TV1を下回っているとき、すなわち、先回判定値JV1と今回判定値JV2との差異が比較的に小さいときには、計測部44を構成する複数の選択セル43を維持する。本形態においては、先回判定値JV1から今回判定値JV2を減じた差分ΔJVが選択用閾値TV1を下回っているときに計測部44を構成する複数の選択セル43を維持する。複数の選択セル43を維持するとは、複数の選択セル43を構成する複数の圧力センサセル42の範囲、および個数を変更しないことを意味する。
【0055】
一方、判定部55は、先回判定値JV1と今回判定値JV2との間の変化量が選択用閾値TV1を上回っているとき、すなわち、先回判定値JV1と今回判定値JV2との差異が比較的に大きいときには、計測部44を構成する複数の選択セル43を変更する。本形態においては、先回判定値JV1から今回判定値JV2を減じた差分ΔJVが選択用閾値TV1を上回っているときに計測部44を構成する複数の選択セル43を変更する。複数の選択セル43を変更するとは、複数の選択セル43を構成する複数の圧力センサセル42の範囲、および個数を変更することを意味する。
【0056】
図6を参照して、先回判定値JV1と今回判定値JV2との間の変化量が選択用閾値TV1を上回っているとき、すなわち、先回判定値JV1と今回判定値JV2との差異が比較的に大きい場合について説明する。この場合、複数の選択セル43のうち、最も高い体圧を計測する圧力センサセル42の位置がずれたと考えられる。
図4と
図6を併せて参照すると、
図4においてドットパターンが付された全セル最高圧力セル42aの位置(4行、C列)と、
図6においてドットパターンが付された圧力センサセル42の位置(5行、B列)と、が異なっていることがわかる。このような場合、被験者の体圧の計測精度が低下する可能性がある。
【0057】
図7に示すように、判定部55は、先回判定値JV1と今回判定値JV2との間の変化量が選択用閾値TV1を上回っているとき、すべての複数の圧力センサセル42の一部のみにより構成される複数の候補セル45を選択する。複数の候補セル45は、次回の計測時に、被験者の体圧の計測精度が低下することを抑制するために、新たに選択セル43を選択するために用いられる。
【0058】
複数の候補セル45の個数は、特に限定されず、任意の個数に設定することができる。本形態では、複数の候補セル45の個数は、複数の選択セル43の個数と同じか、または複数の選択セル43の個数よりも多く設定されている。
【0059】
候補セル45の個数と、選択セル43の個数と、が同じ場合の例を以下に説明する。例えば、9個の選択セル43のうち最も高い体圧を計測した選択セル最高圧力セル43aが、前回の計測時からずれた場合に、前回の計測時からずれた選択セル最高圧力セル43aを中心として、選択セル43と同数の9個の候補セル45を選択しても良い。
【0060】
また、複数の候補セル45の個数が、複数の選択セル43の個数よりも多い例として、例えば本形態においては、
図7において一点鎖線で囲まれた領域Rに示すように、2行目から6行目までと、A列からE列までの、25個の圧力センサセル42により候補セル45が構成されている。
【0061】
複数の候補セル45は、複数の選択セル43の少なくとも1つを含むとともに、複数の選択セル43の周囲に配された圧力センサセル42を含む。複数の候補セル45に含まれる選択セル43としては、例えば、選択セル43のうち最も高い体圧を計測した、1つの選択セル最高圧力セル43aとしてもよい。また、同じ値の体圧が計測された選択セル最高圧力セル43aが複数個存在するときは、複数の選択セル最高圧力セル43aが候補セル45に含まれる構成としても良い。
【0062】
複数の選択セル43の周囲に配された圧力センサセル42としては、選択セル43の周囲に配置された圧力センサセル42であればよく、選択セル43の周囲を囲っていてもよいし、また、囲っていなくてもよい。
【0063】
本形態では、
図7に示すように、3行目から5行目までと、B列からD列までの9個の選択セル43と、9個の選択セル43の周囲を囲むように配置された16個の圧力センサセル42と、を含む25個の候補セル45が選択される。
【0064】
判定部55は、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42によって被験者の体圧を計測する。複数の候補セル45による被験者の体圧の計測は、単なる体圧の計測なので、心拍情報を推定する場合に比べて計測精度が低くても良い。複数の候補セル45によって被験者の体圧を算出するために、圧力センサセル42ごとのチャンネルを切替える周期も含めて、例えば400μ秒かかったとする。そうすると、25個の候補セル45のすべてにおいて被験者の体圧を計測すると、下記の式のように、10000秒の時間が必要となる。
400μ秒×25個=10000μ秒
すなわち、25個の候補セル45で被験者の心拍情報を推定するために体圧を計測する際の周期は10000μ秒となる。ただし、体圧を計測するための計測周期は400μ秒に限定されない。
【0065】
図1に戻って、判定部55は、25個の候補セル45によって計測された被験者の体圧に関する体圧データを、記憶部57に送信し、記憶部57に、候補セル体圧データCDとして記憶させる。
【0066】
判定部55は、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42が計測した被験者の体圧に基づいて、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42のうち最も高い圧力を測定した圧力センサセル42を、候補セル最高圧力セル45aとする。最も高い体圧が計測された圧力センサセル42が1つである場合、1つの圧力センサセル42を、候補セル最高圧力セル45aとする(
図7参照)。また、最も高い体圧が計測された圧力センサセル42が複数ある場合、複数の圧力センサセル42を、候補セル最高圧力セル45aとしてもよい。
【0067】
判定部55は、記憶部57から、全セル最高圧力セル42aの位置である初期位置IPを取得する。また、判定部55は、記憶部57から、計測部44を構成する複数の選択セル43のうち最も高い体圧を計測した選択セル最高圧力セル43aの位置である、選択セル最高圧力セル位置SPを取得する。判定部55は、初期位置IPと、選択セル最高圧力セル位置SPと、を比較し、初期位置IPと、選択セル最高圧力セル位置SPと、の位置ずれΔMVを検出する。判定部55は、記憶部57から、位置ずれ用閾値TV2を取得する。判定部55は、上記の位置ずれΔMVと、位置ずれ用閾値TV2と、を比較し、位置ずれが位置ずれ用閾値TV2よりも大きいとき、被験者の姿勢が大きくずれたと判定する。判定部55は、被験者の姿勢が大きくずれたと判定したとき、位置ずれ時選択部56に、被験者の姿勢が大きくずれたという情報を送信する。また、判定部55は、被験者の姿勢が大きくずれたという情報を、表示部59に送信し、表示部59によって、被験者に、姿勢が大きくずれたという情報を報知する。
【0068】
まず、
図8を参照して、被験者の姿勢が大きくずれてないと判断される場合について説明する。
図8において、選択セル最高圧力セル43aは、5行、B列、の位置の圧力センサセル42である。一方、全セル最高圧力セル42aの初期位置IPは、4行、C列、の位置の圧力センサセル42である。この場合、選択セル最高圧力セル43aの位置と、初期位置IPとは、斜め方向について隣接している。このような場合、判定部55は、被験者の姿勢が大きくずれていないと判断する。この場合、判定部55は、候補セル最高圧力セル45aを含む、新たな複数の選択セル43を選択する。
【0069】
複数の選択セル43は、1つの候補セル最高圧力セル45aの近傍に配置された複数の圧力センサセル42から選択される構成とすることができる。複数の選択セル43と、候補セル最高圧力セル45aの位置関係は特に限定されず、例えば、1つの候補セル最高圧力セル45aと、この候補セル最高圧力セル45aを包囲する8個の圧力センサセル42と、からなる合計9個の圧力センサセル42を選択セル43としてもよいし、また、例えば、1つの候補セル最高圧力セル45aと、この候補セル最高圧力セル45aの前後方向および左右方向に隣り合う4個の圧力センサセル42からなる合計5個の圧力センサセル42を選択セル43としてもよい。
【0070】
図9に示すように、本形態では、5行、B列に位置する圧力センサセル42が、候補セル最高圧力セル45aである場合を例示する。候補セル最高圧力セル45aは、ドットパターンを付して示す。本形態では、1つの候補セル最高圧力セル45aと、この候補セル最高圧力セル45aを包囲する8個の圧力センサセル42と、からなる合計9個の圧力センサセル42が選択セル43とされる。
【0071】
次に、
図10を参照して、被験者の姿勢が大きくずれた状態について説明する。
図10においては、複数の選択セル43は、4行目から6行目までと、A列からC列までの圧力センサセル42により構成されている。一方、最も高い体圧を計測した圧力センサセル42は、例えば、ドットパターンを付した、6行、A列、の圧力センサセル42であったとする。この場合、現状の選択セル43では、被験者の着座姿勢がわずかに左方にずれただけで、被験者の体圧が最も高く検出される位置が、複数の圧力センサセル42が配置された範囲から外れてしまい、体圧計測の精度が低下する可能性がある。
【0072】
図10において、上記した初期位置IPは、4行、C列、において、クロスハッチングを付した圧力センサセル42の位置となっている。判定部55は、初期位置IPと、6行、A列、の圧力センサセル42の位置と、を比較し、初期位置IPと、選択セル最高圧力セル位置SPと、の位置ずれを検出する。
【0073】
位置ずれ時選択部56は、判定部55から、被験者の姿勢が大きくずれたという情報を取得した時、複数の圧力センサのすべてを用いて、被験者の体圧を計測する。位置ずれ時選択部56は、複数の圧力センサのうち最も高い体圧を計測した圧力センサセル42を、全セル最高圧力セル42aとする。位置ずれ時選択部56は、全セル最高圧力セル42aを含む複数の選択セル43を選択する。本形態では、64個の圧力センサセル42によって、被験者の体圧が計測され、64個の圧力センサセル42のうち、最も高い体圧を計測した圧力センサセル42が、全セル最高圧力セル42aとされる。なお、すべての圧力センサセル42を用いて被験者の体圧を測定するのは、姿勢が大きくずれたことを報知された被験者が、姿勢を正して座り直す状態を想定しているからである。本形態においては、被験者が座り直した結果、全セル最高圧力セル42aが、例えば、
図5に示す位置になったとする。ただし、被験者が座り直した後の、全セル最高圧力セル42aの位置は限定されない。
【0074】
最も高い体圧が計測された圧力センサセル42が1つである場合、1つの圧力センサセル42を、全セル最高圧力セル42aとする。また、最も高い体圧が計測された圧力センサセル42が複数ある場合、複数の圧力センサセル42を、全セル最高圧力セル42aとしてもよい。
【0075】
複数の選択セル43は、1つの全セル最高圧力セル42aの近傍に配置された複数の圧力センサセル42から選択される構成とすることができる。複数の選択セル43と、全セル最高圧力セル42aの位置関係は特に限定されず、例えば、1つの全セル最高圧力セル42aを包囲する9個の圧力センサセル42を選択セル43としてもよいし、また、1個の全セル最高圧力セル42aの前後方向および左右方向に隣り合う4個の圧力センサセル42を選択セル43としてもよい。本形態では、9個の圧力センサセル42が選択セル43とされる(
図4参照)。
【0076】
図1に戻って、位置ずれ時選択部56は、すべての圧力センサセル42を用いて計測した被験者の体圧データを記憶部57に送信し、記憶部57に、新たな全セル体圧データADとして記憶させる。また、位置ずれ時選択部56は、全セル最高圧力セル42aの、複数の圧力セルにおける位置情報を記憶部57に送信し、全セル最高圧力セル42aの、新たな初期位置IPに関する情報として、記憶部57に記憶させる。
【0077】
ただし、位置ずれ時選択部56と、初期選択部52とは、すべての圧力センサセル42を用いて被験者の体圧を計測する点で共通する。このため、初期選択部52が位置ずれ時選択部56を兼ねる構成としても良い。
【0078】
2.心拍測定装置1の動作
次に、
図4、
図7、
図11~
図14を参照して、本形態の心拍測定装置1の動作について説明する。ただし、心拍測定装置1の動作は、以下の説明に限定されない。
図11に、心拍測定装置1の動作のメインフローを示す。
【0079】
心拍測定装置1が起動されると、全セル体圧計測処理(S1)が実行される。S1においては、初期選択部52が、センサを構成するすべて(本形態では64個)の圧力センサセル42を用いて、被験者の体圧を計測する。
【0080】
次に、初期選択部52は、起動時選択処理(S2)を実行する。
図4に示すように、初期選択部52は、すべての圧力センサセル42のうち最も高い体圧を計測した圧力センサセル42を、全セル最高圧力セル42aとする。本件では、4行、C列に位置する圧力センサセル42を全セル最高圧力セル42aとする。初期選択部52は、全セル最高圧力セル42aと、全セル最高圧力セル42aの周囲に位置する8個の圧力センサセル42と、を選択して、複数(本形態では9個)の選択セル43とする。
【0081】
次に、心拍用体圧計測処理(S3)が実行される。心拍用体圧計測処理(S3)について、
図12を参照して説明する。
【0082】
図12に示すように、心拍用体圧計測処理(S3)が実行されると、心拍算出部53は、複数の選択セル43を用いて、被験者の体圧を計測する(S31)。本形態では、9個の選択セル43によって被験者の心拍情報を推定するために、被験者の体圧を計測する。これにより、すべて(本形態では64個)の圧力センサセル42を用いて被験者の体圧を計測する場合に比べて、計測周期を短くすることができる。
【0083】
次に、心拍算出部53は、被験者の体圧に基づいて、被験者の心拍情報を推定する(S32)。
【0084】
状態推定部58は、心拍算出部53から被験者の心拍情報を取得し、心拍情報に基づいて被験者の状態を推定する(S33)。
【0085】
表示部59は、状態推定部58から被験者の状態を取得し、被験者に、被験者の状態に基づいてサービスを提供する(S34)。以上により、心拍用体圧計測処理が終了する。なお、状態推定部58による状態推定、表示部59によるサービス提供は、必須の処理ではなく、心拍算出部53による心拍情報を推定後に、心拍用体圧計測処理を終了してもよい。
【0086】
図11に戻って、心拍用体圧計測処理(S3)が終了すると、判定部55は、先回判定値JV1から今回判定値JV2を減じた差分ΔJVが、選択用閾値TV1を下回っているかを判断する(S4)。判定部55は、先回判定値JV1から今回判定値JV2を減じた差分ΔJVが、選択用閾値TV1を下回っていないとき(S4:N)、複数の選択セル43を維持し、
図11のS3に戻る。
【0087】
一方、判定部55は、先回判定値JV1から今回判定値JV2を減じた差分ΔJVが、選択用閾値TV1を下回っているとき(S4:Y)、候補セル処理を実行する(S5)。
【0088】
図13に、候補セル処理のフローチャートを示す。判定部55は、すべての複数の圧力センサセル42の一部のみによって構成される複数(本形態では25個)の候補セル45を選択する(S51)。複数の候補セル45は、複数の選択セル43の少なくとも1つと、複数の選択セル43の周囲に配された圧力センサセル42と、を含む(
図7の領域Rの複数のセル参照)。25個の候補セル45は、新たな選択セル43を選択するために用いられる。
【0089】
次に、判定部55は、複数の候補セル45を用いて被験者の体圧を計測する(S52)。判定部55は、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42のうち最も高い体圧を計測したものを候補セル最高圧力セル45aとする(S53)。以上により、候補セル処理が終了する。
【0090】
図11に戻って、判定部55は、全セル最高圧力セル42aの位置と、候補セル最高圧力セル45aの位置と、を比較し、全セル最高圧力セル42aの位置と、候補セル最高圧力セル45aの位置と、の距離である位置ずれΔMVが、位置ずれ用閾値TV2よりも大きいか否かを判断する(S6)。
【0091】
全セル最高圧力セル42aの位置と、候補セル最高圧力セル45aの位置と、の位置ずれΔMVが、位置ずれ用閾値TV2よりも大きくないとき(S6:N)、判定部55は、更新時選択処理を実行する(S7)。判定部55は、候補セル最高圧力セル45aを含む新たな複数の選択セル43を選択する。新たな複数の選択セル43が選択されると、
図11のS3に戻る。上記したように、複数の選択セル43は、被験者の心拍情報の算出に用いられる。
【0092】
一方、全セル最高圧力セル42aの位置と、候補セル最高圧力セル45aの位置と、の位置ずれΔMVが、位置ずれ用閾値TV2よりも大きいとき(S6:Y)、位置ずれ時選択処理が実行される(S8)。
図14に、位置ずれ時選択処理(S8)のフローチャートを示す。位置ずれ時選択処理(S8)が実行されると、表示部59は、被験者に、被験者の姿勢が大きくずれたこととを報知するとともに、正しく座り直すよう注意を促す(S81)。
【0093】
S81が実行された後、位置ずれ時選択部56は、複数の圧力センサセル42のすべてを用いて、被験者の体圧を計測する(S82)。すべて(本形態では64個)の圧力センサセル42を用いて被験者の体圧を計測するのは、上記した被験者への報知または注意により、被験者が正しく座り直す場合があるからである。
【0094】
次に、位置ずれ時選択部56は、初期選択部52は、すべての圧力センサセル42のうち最も高い体圧を計測した圧力センサセル42を、全セル最高圧力セル42aとする。位置ずれ時選択部56は、全セル最高圧力セル42aと、全セル最高圧力セル42aの周囲に位置する8個の圧力センサセル42と、を選択して、複数(本件では9個)の選択セル43とする(S83)。以上により、位置ずれ時選択処理が終了する。
【0095】
図11に戻って、位置ずれ時選択処理(S8)が終了すると、
図11のS3に戻る。
【0096】
3.本形態の作用効果
続いて、本形態の作用効果について説明する。本形態の心拍測定装置1は、センサ3と、計測部44と、心拍算出部53と、判定値算出部54と、判定部55と、を備える。センサ3は、複数の圧力センサセル42を備える。計測部44は、複数の圧力センサセル42から選択された複数の選択セル43を備え、複数の選択セル43によって被験者の体圧を計測する。心拍算出部53は、複数の選択セル43が計測した体圧から被験者の心拍情報を推定する。判定値算出部54は、複数の選択セル43が計測した体圧に基づいて判定値JVを算出する。判定部55は、今回の計測時における判定値JVである今回判定値JV2と、今回の計測時よりも前の計測時における判定値JVである先回判定値JV1と、を比較して、先回判定値JV1と今回判定値JV2との間の差分ΔJVが選択用閾値TV1を下回っているときに計測部44を構成する複数の選択セル43を維持し、差分ΔJVが選択用閾値TV1を上回っているときに計測部44を構成する複数の選択セル43を変更する。
【0097】
体圧に基づいて算出された判定値JVについて、先回判定値JV1と今回判定値JV2との差分ΔJVが選択用閾値TV1を下回っているということは、以前の計測時において計測部44が計測した被験者の体圧と、今回の計測時に計測部44が計測した被験者の体圧との間の変化量が比較的に小さいことを意味する。この場合、計測部44を構成する複数の選択セル43を維持することにより、心拍測定装置1の精度を維持することができる。
【0098】
一方、体圧に基づいて算出された判定値JVについて、先回判定値JV1と今回判定値JV2との差分ΔJVが選択用閾値TV1を上回っている場合、以前の計測時において計測部44が計測した被験者の体圧に比べて、今回の計測時に計測部44が計測した被験者の体圧の変化量が、比較的に大きかったことを意味する。この場合、次回の計測時において、被験者の心拍情報の検出精度が低下するおそれがある。本形態によれば、計測部44を構成する複数の選択セル43を変更することにより、心拍情報の精度を向上させることができる。
【0099】
また、本形態によれば、判定値算出部54は、すべての複数の選択セル43が体圧を計測するごとに、判定値JVを算出する。本形態によれば、判定値JVと選択用閾値TV1との比較を、心拍情報の計測ごとに行うので、心拍測定装置1の精度を向上させることができる。
【0100】
また、本形態によれば、判定値JVは体圧に対して正の相関を有し、判定部55は、変化量として、先回判定値JV1から今回判定値JV2を減じた差分ΔJVを用い、差分ΔJVが選択用閾値TV1を下回っているときに計測部44を構成する複数の選択セル43を維持し、差分ΔJVが選択用閾値TV1を上回っているときに計測部44を構成する複数の選択セル43を変更する。
【0101】
体圧に基づいて算出された判定値JVについて、先回判定値JV1から今回判定値JV2を減じた差分ΔJVが選択用閾値TV1を下回っているということは、以前の計測時において計測部44が計測した被験者の体圧に比べて、今回の計測時に計測部44が計測した被験者の体圧の減少幅が、選択用閾値TV1よりも小さかったことを意味する。この場合、計測部44を構成する複数の選択セル43を維持することにより、心拍測定装置1の精度を維持することができる。
【0102】
一方、体圧に基づいて算出された判定値JVについて、先回判定値JV1から今回判定値JV2との差分ΔJVが選択用閾値TV1を上回っている場合、以前の計測時において計測部44が計測した被験者の体圧に比べて、今回の計測時に計測部44が計測した被験者の体圧の減少幅が、選択用閾値TV1よりも大きかったことを意味する。この場合、次回の計測時において、被験者の心拍情報の検出精度が低下するおそれがある。本態様によれば、この場合に、計測部44を構成する複数の選択セル43を変更することにより、計測部44に加わる体圧をより大きくするように変更することができる。これにより、心拍情報の精度を向上させることができる。
【0103】
また、本態様に係る判定部55は、先回判定値JV1と今回判定値JV2との間の変化量が選択用閾値TV1を上回っているとき、すべての複数の圧力センサセル42の一部のみにより構成される複数の候補セル45を選択する。複数の候補セル45は、複数の選択セル43の少なくとも1つと、複数の選択セル43の周囲に配された圧力センサセル42と、を含む。判定部55は、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42が計測した被験者の体圧に基づいて、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42のうち最も高い体圧を測定した候補セル最高圧力セル45aを含む新たな複数の選択セル43を選択する。
【0104】
新たに選択された複数の選択セル43は、複数の候補セル45のうち最も高い体圧を計測した候補セル最高圧力セル45aを含むので、新たに選択された複数の選択セル43によって計測される心拍の測定精度を向上させることができる。
【0105】
また、本形態に係る心拍測定装置1は、さらに心拍測定装置1が起動されたとき、複数の圧力センサセル42のすべてが計測した被験者の体圧に基づいて、複数の圧力センサセル42のうち最も高い体圧を計測した全セル最高圧力セル42aを含む複数の選択セル43を選択する、初期選択部52を備える。
【0106】
本形態によれば、心拍測定装置1が起動されたときに、複数の圧力センサセル42の中から、最も高い体圧を計測した全セル最高圧力セル42aを含む選択セル43を選択することができる。これにより、複数の選択セル43により計測される心拍情報の測定精度を向上させることができる。
【0107】
本形態に係る判定部55は、全セル最高圧力セル42aの位置と、候補セル最高圧力セル45aの位置と、を比較し、全セル最高圧力セル42aの位置と、候補セル最高圧力セル45aの位置と、の位置ずれΔMVが、位置ずれ用閾値TV2よりも大きいとき、被験者の姿勢が大きくずれたと判定する。
【0108】
本形態によれば、被験者の姿勢が大きくずれたか否かを判定することができる。被験者の体圧については、センサを構成するすべての圧力センサセル42によって体圧を計測することにより判定できる。しかし、すべての圧力センサセル42による計測を行うことは、多くの計測時間が必要となるので好ましくない。本形態によれば、初期選択部52が複数の選択セル43を選択する際に用いた全セル最高圧力セル42aの位置と、複数の候補セル45により計測された候補セル最高圧力セル45aの位置と、に基づいて被験者の姿勢が大きくずれたか否かを判定できる。これにより計測時間を短縮できる。
【0109】
本形態に係る心拍測定装置1は、さらに、判定部55が被験者の姿勢が大きくずれたと判定したとき、複数の圧力センサセル42のすべてが計測した被験者の体圧に基づいて、複数の圧力センサセル42のうち最も高い体圧を計測した全セル最高圧力セル42aを含む複数の選択セル43を選択する、位置ずれ時選択部56を備える。
【0110】
被験者の姿勢が大きくずれたときに、複数の圧力センサセル42の中から、最も高い体圧を計測した全セル最高圧力セル42aを含む複数の選択セル43を選択することができるので、複数の選択セル43により計測される心拍情報の測定精度を向上させることができる。
【0111】
本形態に係る判定値JVは、計測部44を構成する複数の選択セル43の各選択セル43により計測された被験者の体圧に係る計測値の合計値、平均値、標準偏差、または最大値のいずれか一つである。
【0112】
本形態によれば、複数の選択セル43により計測された被験者の体圧は、心拍算出部53が被験者の心拍を算出するために取得されたデータを用いて計測される。これにより、心拍を計測するために取得されたデータを用いて体圧も計測することができるので、体圧を計測するための工程を別に設けなくてもよい。これにより、全体として心拍測定装置1の計測効率を向上させることができる。
【0113】
複数の候補セル45によって被験者の体圧が計測されているときは、複数の選択セル43が選択されていない状態なので、複数の選択セル43による被験者の心拍計測を行うことはできない。本形態によれば、被験者の心拍計測が行えない期間を可及的に短くすることができる。
【0114】
(実施形態2)
続いて、
図15を参照して実施形態2について説明する。本形態においては、判定部55は、複数の選択セル43のうち今回の計測時に最も高い体圧を計測した今回最高圧力セルが、今回の計測時よりも前の計測時に最も高い体圧を計測した先回最高圧力セルと同じか否かを判定する(S41)。
【0115】
今回最高圧力セルと、先回最高圧力セルとが、同じであるとき(S41:Y)、
図15のS3に戻る。
【0116】
今回最高圧力セルと、先回最高圧力セルとが、同じでないとき(S41:N)、判定部55は、候補セル処理(
図15のS5)を実行する。
【0117】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0118】
本形態によれば、判定部55は、複数の選択セル43のうち今回の計測時に最も高い体圧を計測した今回最高圧力セルが、今回の計測時よりも前の計測時に最も高い体圧を計測した先回最高圧力セルと同じでないとき、すべての複数の圧力センサセル42の一部のみにより構成される新たな複数の候補セル45を選択する。新たな複数の候補セル45は、複数の選択セル43の少なくとも1つと、複数の選択セル43の周囲に配された圧力センサセル42と、を含む。判定部55は、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42が計測した被験者の体圧に基づいて、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42のうち最も高い体圧を測定した候補セル最高圧力セル45aを含む新たな複数の選択セル43を選択する。
【0119】
本形態によれば、今回最高圧力セルと、先回最高圧力セルと、を比較することにより、被験者の姿勢がずれたか否かを判定することができる。
【0120】
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0121】
(実施形態3)
次に、
図16および
図17を参照して、実施形態3について説明する。
図16に示すように、本形態においては、記憶部57は、位置ずれ用閾値TV2の代わりに、選択セル位置ずれ用閾値TV3を記憶している。選択セル位置ずれ用閾値TV3は、選択用閾値TV1より大きい。
【0122】
図17に示すように、判定部55は、先回判定値JV1と今回判定値JV2との間の差分ΔJVが、選択セル位置ずれ用閾値TV3を上回っているか否かを判定する(S61)。
【0123】
判定部55は、先回判定値JV1と今回判定値JV2との間の差分ΔJVが選択セル位置ずれ用閾値TV3を上回っていないとき(S61:N)、更新時選択処理(S7)を実行する。
【0124】
一方、判定部55は、先回判定値JV1と今回判定値JV2との間の差分ΔJVが選択セル位置ずれ用閾値TV3を上回っているとき(S61:Y)、位置ずれ時選択処理を実行する(
図17のS8)。
【0125】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0126】
被験者の姿勢が大きくずれたか否かについては、センサを構成するすべての圧力センサセル42によって体圧を計測することにより判定できる。しかし、すべての圧力センサセル42による計測を行うことは、多くの計測時間が必要となるので好ましくない。本形態によれば、複数の選択セル43により計測された体圧に基づいて算出された判定値JVによって、被験者の姿勢が大きくずれたか否かを判定できる。これにより計測時間を短縮できる。
【0127】
(実施形態4)
続いて、
図18~
図21を参照して、実施形態4について説明する。
図18に示すように、本形態においては、記憶部57は、さらに、候補セル用判定値JV3を記憶している点で、実施形態1と異なる。
【0128】
また、本形態においては、
図11に記載された候補セル処理(S5)の内容が実施形態1と異なっている。
図19に、本形態に係る候補セル処理(S150)のフローチャートを示す。
【0129】
候補セル処理(S150)が実行されると、判定部55は、複数の候補セル45を選択する。複数の候補セル45は、すべての圧力センサセル42の一部のみにより構成される。複数の候補セル45は、複数の選択セル43の少なくとも一つを含む。
図20に示すように、本形態では、領域R内に、9個の候補セル45が選択されている。本形態では、候補セル45の個数(9個)は、選択セル43の個数(9個)と同数である。ただし、候補セル45の個数は選択セル43の個数と異なっていても良い。
【0130】
図19に戻って、次に、判定部55は、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42が計測した被験者の体圧に基づいて、複数の候補セル45について、候補セル用判定値JV3を算出する(S152)。候補セル用判定値JV3は、複数の候補セル45の各候補セル45により計測された被験者の体圧に係る計測値の統計量であり、例えば、合計値、平均値、標準偏差、または最大値のいずれか一つである。
【0131】
次に、判定部55は、複数の候補セル45について算出された候補セル用判定値JV3と先回判定値JV1との変化量が選択用閾値TV1を下回っているか否かを判断する(S153)。詳細には、先回判定値JV1から候補セル用判定値JV3を減じた差分が、選択用閾値TV1を下回っているとき(S153:Y)、判定部55は、複数の候補セル45を、複数の選択セル43として選択する(S154)。
図21には、
図20において領域Rで示された複数の候補セル45が、複数の選択セル43とされた状態が示されている。以上により、候補セル処理(S150)は終了する。
【0132】
なお、
図19のS153の代わりに、判定部55は、複数の候補セル45について算出された候補セル用判定値JV3と今回判定値JV2との変化量と、候補セル用判定値JV3と、に基づいて、複数の選択セル43を選択する構成としてもよい。
【0133】
一方、先回判定値JV1から候補セル用判定値JV3を減じた差分が、選択用閾値TV1を下回っていないとき(
図19のS153:N)、S151に戻って、複数の候補セル45が新たに選択される。
【0134】
(実施形態5)
続いて、
図18、
図22~
図25を参照して実施形態5について説明する。
図18に示すように、本形態においては、記憶部57は、さらに、候補セル用判定値JV3を記憶している点で、実施形態1と異なる。
【0135】
図22に、本形態の心拍測定装置の動作のフローチャートを示す。本形態は、候補セル処理(S5)の代わりに、候補セル群処理(S250)が実行される点で、実施形態1と異なる。
【0136】
図23に、候補セル群処理(S250)のフローチャートを示す。候補セル群処理(S250)が実行されると、判定部55は、複数の候補セル45を選択する。複数の候補セル45は、すべての圧力センサセル42の一部のみにより構成される。複数の候補セル45は、複数の選択セル43の少なくとも一つを含む。
【0137】
判定部55は、さらに、複数の候補セル45を要素とする、候補セル群60を選択する。候補セル群60の個数は任意であり、1つでもよいし、2つ以上の複数であっても良い。
図24に示すように、本形態では、例えば、第一候補セル群61、第二候補セル群62、第三候補セル群63、および第四候補セル群64が選択される。以下の説明において、第一~第四候補セル群61~64を区別しない場合は、候補セル群60と記載する場合がある。
【0138】
第一候補セル群61を構成する候補セル45の個数は任意であり、適宜に選択される。本形態の第一候補セル群61を構成する候補セル45の個数は9個であり、複数の選択セル43の個数と同数に設定されている。ただし、第一候補セル群61を構成する候補セル45の個数は、複数の選択セル43の個数と異なっていても良い。
【0139】
本形態では、第一~第四候補セル群61~64を構成する候補セル45の個数は同じに設定されている。ただし、第一~第四候補セル群61~64を構成する候補セル45の個数は、それぞれの候補セル群61~64において異なっていても良い。
【0140】
本形態では、第一候補セル群61は、1行目~3行目、A列~C列の範囲であり、第二候補セル群62は、4行目~6行目、A列~C列の範囲であり、第三候補セル群63は、1行目~3行目、D列~F列の範囲であり、第四候補セル群64は、4行目~6行目、D列~F列の範囲に設定されている。本形態においては、第一~第四候補セル群61~64の領域は互いに重ならないように設定されている。ただし、第一~第四候補セル群61~64として設定される領域は任意であり、一部が重なるように設定されても良い。
【0141】
また、判定部55は、候補セル45の個数を拡張し、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42と、複数の候補セル45の周囲の圧力センサセル42と、を含む圧力センサセル42から、新たな候補セル45を設定しても良い。例えば、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42に隣接する周囲の行または列の少なくとも一方を、所定数拡大して設定される所定の範囲に含まれるすべての圧力センサセル42について被験者の体圧を計測し、最も体圧の高い圧力センサセル42を含み、かつ、現在の候補セル45の個数となる同数となる、複数の候補セル群60が設定される構成としても良い。
【0142】
第一~第四候補セル群61~64を構成する候補セル45には、複数の選択セル43が少なくとも1つ含まれている。好ましくは、第一~第四候補セル群61~64を構成する候補セル45のいずれか一つには、複数の選択セル43のうち、計測された体圧が最も高い選択セル最高圧力セル43aが含まれるように設定される。
【0143】
図23に戻って、第一~第四候補セル群61~64が選択されると(S251)、判定部55は、複数の候補セル45を構成する複数の圧力センサセル42が計測した被験者の体圧に基づいて、第一~第四候補セル群61~64のそれぞれについて、候補セル用判定値JV3を算出する(S252)。候補セル用判定値JV3は、複数の候補セル45の各候補セル45により計測された被験者の体圧に係る計測値の統計量であり、例えば、合計値、平均値、標準偏差、または最大値のいずれか一つである。なお、判定部55は、複数の候補セル群60についてそれぞれ算出された候補セル用判定値JV3と今回判定値JV2との変化量と、選択用閾値TV1と、に基づいて、複数の選択セル43を選択する構成としてもよい。
【0144】
次に、判定部55は、比較処理(S253)を実行する。比較処理(S253)において、判定部55は、第一~第四候補セル群61~64のそれぞれについて算出された候補セル用判定値JV3を比較し、第一~第四候補セル群61~64のうち、算出された候補セル用判定値JV3と先回判定値JV1との間の変化量が選択用閾値TV1を下回った候補セル群を選択する。本形態では、例えば、第二候補セル群62が選択された場合について説明する。
【0145】
続いて、判定部55は、選択された第二候補セル群62に含まれる複数(本形態では9個)の候補セル45を、新たな複数の選択セル43として更新する(S254)。
図25に示すように、新たな選択セル43として、
図24において第2候補セル群62とされた9個の候補セル45が選択された。以上により、候補セル群処理(S250)が終了する。
【0146】
本形態によれば、1つの候補セル群60を構成する候補セル45の個数が、複数の選択セル43を構成する選択セル43の個数と同数なので候補セル群60を構成する候補セル45の中から、さらに選択セル43を選択する工程が不要となる。これにより、被験者の体圧の計測周期を短縮できる。
【0147】
(実施形態6)
続いて、
図26~
図27を参照して、実施形態6について説明する。
図26に示すように、本形態のセンサ103は、8列の第一電極134と、8列の第二電極137と、絶縁体シート36と、を備える。なお、第一電極134と第二電極137の列数は適宜変更可能である。
【0148】
第一電極134は帯状に形成され、相互に平行に配置される。第二電極137は、センサ103の面法線方向に、第一電極134に対して距離を隔てて配置される。第二電極137は、帯状に形成され、相互に平行に配置される。第二電極137の延在方向は、第一電極134の延在方向に対して直交する方向である。絶縁体シート36は、弾性変形可能な免状に形成され、第一電極134と第二電極137との間に配置される。
【0149】
第一電極134および第二電極137は、エラストマー中に導電性フィラーを配合させることにより形成される。第一電極134および第二電極137は、可撓性を有し、伸縮自在な性質と有する。第一電極134および第二電極137を構成するエラストマーは、実施形態1に記載された第一電極シート32および第二電極シート37のエラストマーと同一なので、重複する説明を省略する。
【0150】
図27に示すように、本形態によれば、第一電極134と第二電極137との交差位置がマトリックス上に位置する。センサ103は、マトリックス状の電極交差位置において、静電容量型センサとして機能する圧力センサセル142を備える。本形態においては、センサ103は、縦8行、横8列に配列された64個の圧力センサセル142を備える。そして、64個の圧力センサセル142が、面状に配列されている。センサ103の左方に記載された数字、およびセンサ103の上方に記載されたアルファベットは、説明の便宜のために記載したものである。
【0151】
そして、センサ103が面法線方向に圧縮する力を受けた場合には、絶縁体シート36が圧縮変形することにより、第一電極134と第二電極137との距離が短くなる。つまり、第一電極134と第二電極137との間の静電容量が大きくなる。
【0152】
本形態においては、3行から5行、およびB列からD列に位置する9個の圧力センサセル142が選択セル43とされ、9個の選択セル43により計測部44が構成される。9個の選択セルの43うち、4行、C列、に位置する選択セル43は、選択セル最高圧力セル43aとされる。
【0153】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0154】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0155】
1:心拍測定装置、3,103:センサ、42,142:圧力センサセル、42a:全セル最高圧力セル、43:選択セル、43a:選択セル最高圧力セル、44:計測部、45:候補セル、45a:候補セル最高圧力セル、52:初期選択部、53:心拍算出部、54:判定値算出部、55:判定部、56:位置ずれ時選択部、57:記憶部、AD:全セル体圧データ、CD:候補セル体圧データ、IP:初期位置、JV:判定値、JV1:先回判定値、JV2:今回判定値、JV3:候補セル用判定値、60:候補セル群、61:第一候補セル群、62:第二候補セル群、63:第三候補セル群、64:第四候補セル群、SD:選択セル体圧データ、SP:選択セル最高圧力セル位置、TV1:選択用閾値、TV2:位置ずれ用閾値、TV3:選択セル位置ずれ用閾値