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特開2024-158294プラセンタ抽出物の製造方法、及びプラセンタ抽出物
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  • 特開-プラセンタ抽出物の製造方法、及びプラセンタ抽出物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158294
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】プラセンタ抽出物の製造方法、及びプラセンタ抽出物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/98 20060101AFI20241031BHJP
   A61K 35/50 20150101ALI20241031BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241031BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20241031BHJP
   A61P 17/18 20060101ALN20241031BHJP
   A61P 9/12 20060101ALN20241031BHJP
   A61P 39/06 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
A61K8/98
A61K35/50
A61P43/00 111
A23L33/10
A61P17/18
A61P9/12
A61P39/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073383
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】519096389
【氏名又は名称】株式会社DMA
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(72)【発明者】
【氏名】柴橋 知明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅紀
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B018MD69
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF07
4C083AA071
4C083AA072
4C083CC01
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE12
4C083EE16
4C083FF01
4C087AA03
4C087BB58
4C087CA06
4C087MA52
4C087MA55
4C087NA03
4C087NA05
4C087ZA42
4C087ZA89
4C087ZC02
(57)【要約】
【課題】所望の粒径の細胞外小胞を多く含有するプラセンタ抽出物の製造方法、及び所望の粒径の細胞外小胞を多く含有するプラセンタ抽出物を提供すること。
【解決手段】本プラセンタ抽出物の製造方法は、第1の粉砕工程により、プラセンタの固体サイズを小さくした後、得られた粉砕物に殺菌を施す殺菌工程が設けられている。更に、その殺菌を施した粉砕物を、より細かな粉砕を行いゲル状やペースト状のプラセンタ抽出物を得るための第2の粉砕工程が設けられている。プラセンタ抽出物を精製した後、ナノサイトトラッキング法により粒径分布や粒径を測定したところ、同プラセンタ抽出物には、平均粒径が30~300nmの細胞外小胞が含まれていることが確認された。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外小胞を含むプラセンタ抽出物の製造方法であって、
プラセンタを粉砕して粉砕物を得る第1の粉砕工程と、
前記第1の粉砕工程により得られた粉砕物を殺菌する殺菌工程と、
前記殺菌工程による殺菌後の粉砕物を粉砕する第2の粉砕工程と、
を含む、プラセンタ抽出物の製造方法。
【請求項2】
前記第1の粉砕工程による粉砕前のプラセンタ、又は前記第1の粉砕工程により得られた粉砕物と、液体とを前記第2の粉砕工程前に接触させる接触工程を更に含む、請求項1に記載のプラセンタ抽出物の製造方法。
【請求項3】
前記接触工程では、前記殺菌工程による殺菌後の粉砕物と前記液体とを接触させる、請求項2に記載のプラセンタ抽出物の製造方法。
【請求項4】
前記第2の粉砕工程による粉砕後のプラセンタ抽出物に含まれる細胞外小胞の平均粒径が30~300nmである、請求項1又は請求項2に記載のプラセンタ抽出物の製造方法。
【請求項5】
前記第2の粉砕工程による粉砕後のプラセンタ抽出物に含まれる細胞外小胞のモード粒径が100~200nmである、請求項4に記載のプラセンタ抽出物の製造方法。
【請求項6】
前記第2の粉砕工程による粉砕後のプラセンタ抽出物に含まれる細胞外小胞の濃度が、1×10個/mL以上である、請求項1に記載のプラセンタ抽出物の製造方法。
【請求項7】
前記細胞外小胞がエクソソームである、請求項1に記載のプラセンタ抽出物の製造方法。
【請求項8】
細胞外小胞を含み、
前記細胞外小胞の平均粒径が30~300nmであり、前記細胞外小胞のモード粒径が100~200nmであって、前記細胞外小胞の濃度が1×10個/mL以上である、プラセンタ抽出物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞外小胞を含有するプラセンタ抽出物の製造方法、及び細胞外小胞を含有するプラセンタ抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラセンタ(哺乳類の胎盤)は、抗酸化性やコラーゲン産生促進能、コラゲナーゼ阻害活性、血圧上昇抑制作用、エラスターゼ阻害作用、チロシナーゼ阻害作用等の多くの機能を備えることが知られており、そのプラセンタを、化粧品、健康食品、医療品等として活用することが期待されている(特許文献1)。これらの機能は、プラセンタに含まれる脂質やタンパク質、核酸(マイクロRNA、メッセンジャーRNA、DNA等)、サイトカイン等の生理活性物質が寄与しているものと考えられている。
【0003】
一方で、生理活性物質は分解され易いものが多く、生体内では細胞外小胞に包含されていることが知られている。細胞外小胞の一種であるエクソソームとは、エンドサイトーシスにより細胞内にできたエンドソームが陥入することで作られた膜小胞が、細胞外に放出される過程で作られるものである。細胞外に放出されたエクソソームは、細胞間の情報伝達物質として機能し、エクソソームが受け取り側の細胞の表面にある受容体に作用してシグナル伝達を引き起こしたり、細胞内部に取り込まれたエクソソームの内容物が、受け取り側の細胞で機能すると考えられている。
【0004】
細胞外小胞としては、エクソソームのほかに、マイクロベシクルやアポトーシス小体が知られている。これらの違いは、エクソソームは30~200nm、マイクロベシクルは100~1000nm、アポトーシス小体は1000~4000nmと、いったようにその粒径が異なる点と、生産機構が異なる点である。マイクロベシクルは、細胞膜から直接出芽して細胞外へと分泌されて生産され、アポトーシス小胞はアポトーシスを起こした細胞が膜から出芽されて生産される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-100998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プラセンタに含まれる上記の生理活性物質を化粧品等に利用する場合、製造工程でこれらの生理活性物質が失活・変性してしまう可能性がある。また、その抽出物に生理活性物質が含まれていても、細胞外小胞に包含されていない状態で含まれていると、保存時や使用時の失活・変性が懸念されるし、化粧品等でのターゲットに作用しにくい可能性もある。その一方で、細胞外小胞自体も分解され易いものであり、製造工程や保存時の破壊や変性によって、内部の生理活性物質が遊離し、これによって生理活性物質が失活・変性する可能性がある。そのため、プラセンタの機能を化粧品等に期待する場合、所望の粒径の細胞外小胞を多く含む抽出物であることが望まれている。
【0007】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、所望の粒径の細胞外小胞を多く含有するプラセンタ抽出物の製造方法、及び所望の粒径の細胞外小胞を多く含有するプラセンタ抽出物を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明1のプラセンタ抽出物の製造方法は、
細胞外小胞を含むプラセンタ抽出物の製造方法であって、
プラセンタを粉砕して粉砕物を得る第1の粉砕工程と、
前記第1の粉砕工程により得られた粉砕物を殺菌する殺菌工程と、
前記殺菌工程による殺菌後の粉砕物を粉砕する第2の粉砕工程と、
を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明2のプラセンタ抽出物の製造方法は、発明1において、
前記第1の粉砕工程による粉砕前のプラセンタ、又は前記第1の粉砕工程により得られた粉砕物と、液体とを前記第2の粉砕工程前に接触させる接触工程を更に含むことを特徴とする。
【0010】
本発明3のプラセンタ抽出物の製造方法は、発明2において、
前記接触工程では、前記殺菌工程による殺菌後の粉砕物と前記液体とを接触させることを特徴とする。
【0011】
本発明4は、発明1又は発明2において、前記第2の粉砕工程による粉砕後のプラセンタ抽出物に含まれる細胞外小胞の平均粒径が30~300nmであることを特徴とする。
【0012】
本発明5は、発明4において、前記第2の粉砕工程による粉砕後のプラセンタ抽出物に含まれる細胞外小胞のモード粒径が100~200nmであることを特徴とする。
【0013】
本発明6は、前記第2の粉砕工程による粉砕後のプラセンタ抽出物に含まれる細胞外小胞の濃度が、1×10個/mL以上であることを特徴とする。
【0014】
本発明7は、発明1において、前記細胞外小胞がエクソソームであることを特徴とする。
【0015】
本発明8は、細胞外小胞を含むプラセンタ抽出物であって、
前記細胞外小胞の平均粒径が30~300nmであり、前記細胞外小胞のモード粒径が100~200nmであって、前記細胞外小胞の濃度が1×10個/mL以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1の粉砕工程後に殺菌工程を行うことにより、プラセンタ内部の微生物やウイルスを効率的に殺菌することが可能となり、プラセンタ自体へのダメージを抑え、製造工程での細胞外小胞の破壊や変性等を抑えることが可能となる。また、殺菌工程における殺菌用の薬液と第1の粉砕工程後の粉砕物との接触により当該粉砕物の軟化作用が生じるため、その後の第2の粉砕工程による粉砕力を弱めても、所望の粉砕物を得ることが可能となる。更には、粉砕工程を複数回行うことになるため、1回ずつの粉砕工程の粉砕力を弱めることも可能となる。これらを通じて、粉砕工程に伴う摩擦熱の発生を抑制することができ、細胞外小胞の破壊や変性を抑制することが可能となり、所望の粒径の細胞外小胞を多く含むプラセンタ抽出物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】プラセンタ抽出物の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図2】プラセンタ抽出物に含まれる細胞外小胞の濃度を示す図である。
図3】プラセンタ抽出物に含まれる細胞外小胞の粒径分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪プラセンタ抽出物の製造方法≫
本開示におけるプラセンタ抽出物の製造方法(以下、「本製造方法」ともいう。)は、プラセンタを粉砕する第1の粉砕工程と、第1の粉砕工程により得られた粉砕物を殺菌する殺菌工程と、殺菌工程による殺菌後の粉砕物を粉砕する第2の粉砕工程と、を含む。以下、本製造方法に含まれる各工程について詳細に説明する。
【0019】
<第1の粉砕工程>
第1の粉砕工程は、プラセンタを粉砕する工程である。より詳しくは、プラセンタ抽出物の原料とされるプラセンタの固体サイズを小さく細分化する工程である。
【0020】
なお、本明細書においてプラセンタとは哺乳動物の胎盤を示し、例えば、ヒト、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマの胎盤を示している。なお、安全性の観点からは、豚の胎盤であると好ましい。
【0021】
第1の粉砕工程で用いるプラセンタは、生体から取り出した後、又は生体から取り出し、凍結保存したものを解凍した後、そのまま用いてもよいが、洗浄した後用いてもよい。洗浄する方法は特に限定されず、各種薬液や純水等の液体によりプラセンタを洗浄するとよい。洗浄に用いる液体は、不純物を洗い流す作用を有していればよいが、安全性や生理活性物質の機能を保護する観点から薬剤を含まないものが好ましい。ただし、これは純水に限定するものではなく、若干量の塩等を含むものであってもよい。
【0022】
また、上記の洗浄を行う前に、血管、血液、変色箇所等の不純物を除去するトリミングを行うことが好ましい。トリミングを行った後のプラセンタを洗浄することで、トリミングにより除去した不純物だけでなく、トリミングにより露出されたプラセンタ断面に含まれる雑菌やウイルスを洗い流す効果も期待できる。
【0023】
第1の粉砕工程における粉砕の方法は、特に限定されず公知の方法を採用することができ、例えば、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、エッジミル、製粉ミル、ハンマーミル、ペレットミル、カッティングミル、ローラーミル、ジェットミル、ミキサー等が挙げられる。
【0024】
なお、この第1の粉砕工程においては、比較的、粉砕力(せん断応力、摩擦力、粉砕回数のいずれか1又はその組み合わせにより設定される粉砕力)が低い粉砕方法を採用すること(例えば、ミキサー、ディスクミル、カッティングミル、ローラーミルのいずれかを採用すること)により、細胞外小胞の破壊や変性を抑制しながら粉砕を行うことが可能である。また、第1の粉砕工程を行う粉砕時間としては、例えば1分以内、好ましくは30秒以内、より好ましくは10秒以内に設定するとよい。更に、第1の粉砕工程で生じる摩擦熱は、例えば40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下となるように設定するとよい。
【0025】
特に、本第1の粉砕工程では、プラセンタ組織片の細分化に留め、各細胞が破壊されない程度とすることが好ましく、例えば、細分化後の組織片が1mm以上、好ましくは1cm以上、より好ましくは3cm以上となるように粉砕するとよい。また、粉砕によりプラセンタの断面を露出させる観点からは、例えば、細分化後の組織片が20cm以下、好ましくは15cm以下、より好ましくは10cm以下となるように粉砕するとよい。なお、粉砕後の組織片が全てこれらのサイズとなる必要はなく、例えば、1mm未満の組織片が含まれていてもよく、20cmを超える組織片が含まれていてもよく、全体の約80%(組織片の個数%)が上記のサイズとなるように粉砕するとよい。
【0026】
なお、第1の粉砕工程では、細胞外小胞の含有濃度を高める観点や、その後、抽出液を除去する又は減らす(濃縮する)工程を設けることによる細胞外小胞の破壊や変性を抑制する観点から、抽出液を用いないか、用いても極力少なくすることが好ましい。具体的には、プランセンタの質量に対して、抽出液を10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下となるように設定するとよい。
【0027】
<殺菌工程>
殺菌工程は、第1の粉砕工程により得られた粉砕物に対して殺菌処理を施す工程である。より詳しくは、粉砕物の断面、血管、血液中等のプラセンタ内部に含まれる微生物やウイルス等を死滅させるもしくは減らすための処理である。第1の粉砕工程の後に殺菌処理を施す工程を設けることにより、プラセンタ表面だけでなく内部に含まれる微生物やウイルス等に対する殺菌処理を施すことが可能であり、プラセンタ表面のみを殺菌するよりも殺菌効率を高めることができる。プラセンタ表面からプラセンタ内部の殺菌を行おうとする場合よりも殺菌効率が高められることから、粉砕前に殺菌処理を施す場合と同等の殺菌効果を得ようとする場合であっても、殺菌力や殺菌回数を抑えた方法にて殺菌を行うことが可能となり、プラセンタ自身へのダメージを減らすことも可能である。これにより、殺菌処理に伴う細胞外小胞の破壊や変性を抑えることが可能となる。
【0028】
殺菌の方法は特に限定されないが、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、フェノール、クレゾール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸アルキルジアミンエチルグリシン、グルコン酸クロルヘキシジン、酸化剤、酸・アルカリ等の溶媒を用いた殺菌であってもよく、高圧処理や熱処理により殺菌を行うものであってもよい。ただし、高圧処理や熱処理による殺菌は、細胞外小胞の破壊や変性を招く可能性があるため、好ましくは、溶液による殺菌を採用するとよい。なお、高圧処理や熱処理による殺菌であっても、例えば50℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われるものであれば採用することが可能である。殺菌に用いる溶液は、好ましくはエタノールやクエン酸、次亜塩素酸ナトリウム等の溶液を用いることで、プラセンタ組織片等へのダメージを減らし、細胞外小胞の破壊や変性を抑制しながら、効率的に殺菌を行うことが可能である。
【0029】
殺菌処理では、微生物やウイルスの殺菌効果だけでなく、殺菌対象物の軟化作用が期待できる。つまり、殺菌に用いる溶液との接触や、高圧処理や熱処理によって、プラセンタ組織や細胞膜が軟化される。これにより、当該殺菌工程の後で実施される、下記の第2の粉砕工程における粉砕力を弱く設定することが可能である。そのため、第2の粉砕工程における粉砕時の摩擦熱の発生等を抑え、細胞外小胞の破壊や変性を抑制することが可能である。
【0030】
なお、第1の粉砕工程後に加え、第1の粉砕工程の前にも殺菌処理を実施してもよい(以下、第1の粉砕工程の前に殺菌処理を施す工程を「第1の殺菌工程」、第1の粉砕工程の後に殺菌処理を施す工程を「第2の殺菌工程」という)。
【0031】
第1の殺菌工程を設けることにより、特に、プラセンタ表面に付着する微生物やウイルス等の殺菌を行うことが可能である。当該第1の殺菌工程の殺菌方法も特に限定されず、第2の殺菌工程における殺菌方法と同じ方法を採用することができる。ただし、第2の殺菌工程の殺菌方法とは異なる殺菌方法を採用してもよい。
【0032】
上記のように、粉砕工程前に殺菌工程を設けることで、殺菌処理に伴う殺菌対象物の軟化作用が見込める。そのため、第1の粉砕工程前に第1の殺菌工程を設けることで、プラセンタが軟化されることから、第1の粉砕工程においてもその粉砕力を弱く設定しても同等の粉砕物を得ることが可能である。よって、より細胞外小胞の破壊や変性を抑制することが可能である。
【0033】
この場合、第1の殺菌工程と第2の殺菌工程との殺菌を、それぞれもしくはいずれか一方を複数回行うようにしてもよい。例えば、第1の殺菌工程、及び第2の殺菌工程において、いずれも複数回の殺菌処理を施すことで、殺菌効果をより高めることが可能となる。また、第1の殺菌工程での殺菌の実施回数を第2の殺菌工程での殺菌の実施回数よりも多くする(例えば、第1の殺菌工程では複数回、第2の殺菌工程では1回の殺菌を施す)、もしくは第1の殺菌工程での殺菌の実施回数よりも第2の殺菌工程での殺菌の実施回数を多くする(例えば、第1の殺菌工程では1回、第2の殺菌工程では複数回の殺菌を施す)ようにしてもよい。なお、殺菌処理によるプラセンタ自体へのダメージや細胞外小胞の破壊や変性を抑制する観点からすると、第1の殺菌工程、及び第2の殺菌工程の少なくともいずれか一方は、2回、好ましくは1回とするとよい。
【0034】
殺菌方法や殺菌処理の回数は、例えば、プラセンタに含まれる微生物やウイルスの分布によって決定することも可能であり、プラセンタ表面のほうがプラセンタ内部よりも微生物やウイルスが多く含まれる場合、第1の殺菌工程を第2の殺菌工程よりも殺菌効果を高める殺菌方法や殺菌処理の回数とするとよく、プラセンタ表面よりもプラセンタ内部のほうが微生物やウイルスが多く含まれる場合、第2の殺菌工程を第1の殺菌工程よりも殺菌効果を高める殺菌方法や殺菌処理の回数とするとよい。
【0035】
この場合、殺菌方法は第1の殺菌工程のほうが第2の殺菌工程よりも強い殺菌処理とし、殺菌処理の回数は第2の殺菌工程のほうが第1の殺菌工程よりも多く設定する、又は、殺菌方法は第2の殺菌工程のほうが第1の殺菌工程よりも強い殺菌処理とし、殺菌処理の回数は第1の殺菌工程のほうが第2の殺菌工程よりも多く設定する、といったように、殺菌方法と殺菌処理の回数とを設定してもよい。
【0036】
<第2の粉砕工程>
第2の粉砕工程は、第1の粉砕工程により得られた粉砕物を更に粉砕する工程である。より詳しくは、第1の粉砕工程による粉砕物の固体サイズを更に小さく細分化する工程であり、例えばゲル状やペースト状にする工程である。
【0037】
第2の粉砕工程における粉砕の方法は、第1の粉砕工程と同一の方法であってもよく、異なる方法であってもよい。例えば、ミキサー、ディスクミル、カッティングミル、ローラーミルのいずれかを採用することが可能である。
【0038】
この第2の粉砕工程においては、第1の粉砕工程よりもより細分化が求められる。そのため、例えば、粉砕後の粒子径が1mm以下、好ましくは500μm以下、より好ましくは100μm以下となるように粉砕するとよい。粒子径が1mmよりも大きいと、粉砕物の肌触りや塗り心地が悪くなる恐れがあるし、エクソソーム等の細胞外小胞の遊離量が少なくなる恐れがある。一方で、粉砕による細胞外小胞の破壊を抑制する観点から、例えば、粉砕後の粒子径が1μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは50μm以上となるように粉砕するとよい。
【0039】
また、第2の粉砕工程を行う粉砕時間としては、例えば5分以内、好ましくは2分以内、より好ましくは1分以内に設定するとよい。更に、第2の粉砕工程で生じる摩擦熱としては、例えば40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下となるように設定するとよい。
【0040】
ただし、第2の粉砕工程前に殺菌工程が設けられていることから、当該殺菌工程による殺菌対象物(第1の粉砕工程後の粉砕物)が軟化されている。そのため、第2の粉砕工程では、比較的、粉砕力を弱めながらも、求めるサイズまで細分化を行うことが可能である。よって、生じる摩擦熱を抑えることが可能であるし、細胞外小胞の物理的破壊(細胞外小胞の膜の破壊)も抑制することが可能である。
【0041】
更に、上記のように粉砕工程を複数回に分けて行うようにしていることから、1回の粉砕工程により求める状態(例えばゲル状やペースト状)まで粉砕するよりも、1回ずつの粉砕力を弱く設定することができる。これによっても、粉砕に伴う摩擦熱の発生や、細胞外小胞の物理的破壊を抑制することが可能である。
【0042】
なお、第2の粉砕工程でも、細胞外小胞の含有濃度を高める観点や、その後、抽出液を除去する又は減らす(濃縮する)工程を設けることによる細胞外小胞の破壊や変性を抑制する観点から、抽出液を用いないか、用いても極力少なくすることが好ましい。具体的には、プランセンタの質量に対して、抽出液を10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは1%以下となるように設定するとよい。
【0043】
また、第2の粉砕工程により得られる粉砕物の状態やサイズは、第2の粉砕工程よりも後の粉砕工程が設けられることを否定するものではなく、更に粉砕工程を設けてもよい。
【0044】
<その他の工程>
本製造方法は、上述した第1の粉砕工程、殺菌工程及び第2の粉砕工程に加え、第1の粉砕工程、殺菌工程及び第2の粉砕工程とは異なる工程(以下、「その他の工程」ともいう。)を更に含んでいてもよい。その他の工程としては、例えば、抽出対象物(プラセンタ、プラセンタの粉砕物等)を液体と接触させる接触工程が挙げられる。
【0045】
(接触工程)
接触工程は、抽出対象物に液体を接触させてプラセンタ組織片や細胞膜を軟化させる等し、細胞外小胞の抽出効率や細胞外小胞の遊離率を高めるための工程である。抽出対象物に液体を接触させる方法としては、抽出対象物に液体を噴霧する方法であってもよく、抽出対象物を液体に浸す方法であってもよい。抽出対象物を液体に浸す場合、抽出対象物が液体に50%以上浸るようにするとよく、好ましくは70%以上浸るようにするとよく、より好ましくは100%浸るようにするとよい。
【0046】
接触工程は、抽出効率を高める観点から、第1及び第2の粉砕工程の少なくともいずれか一方の前に行うことが好ましく、例えば、第2の粉砕工程の前に行うとよく、より好ましくは第2の粉砕工程の前であって殺菌工程(第2の殺菌工程)の後で行うとよい。
【0047】
接触工程に用いる液体は特に限定されないが、例えば、水であってもよく、好ましくは浸透圧調整物質(浸透圧有効物質、オスモナイト)を含む液体であってもよい。浸透圧調整物質としては、無機イオン類(カリウムイオン、塩化物イオン)、単糖類や二糖類、多価アルコール、アミノ酸類、メチルアンモニウム類、尿素類等を用いることが可能である。浸透圧調整物質を含む液体を用いて当該液体との接触工程を行うことで、接触工程による抽出効率をより高めることが可能である。
【0048】
接触工程は、抽出効率を高める観点から、例えば、1時間以上、好ましくは半日(12時間)以上、より好ましくは1日(24時間)以上であるとよい。一方で、接触工程中の微生物やウイルスの増加を抑制する観点からは、例えば1週間以内、好ましくは3日以内、より好ましくは1日半以内で行うとよい。
【0049】
接触工程を行うタイミングは特に限定されないが、接触工程を殺菌工程の後で行うようにすると、接触工程中に微生物やウイルスが増加することを抑制することができる。
【0050】
また、第1及び第2の粉砕工程の少なくともいずれかの粉砕工程の前に接触工程を行うようにすると、プラセンタの軟化作用により各粉砕工程の粉砕効率を高めることが可能である。そのため、粉砕時の粉砕力を弱く設定することが可能であり、粉砕に伴う摩擦熱の発生を抑制でき、細胞外小胞の破壊や変性を抑制しながら粉砕を行うことが可能である。特に、第2の粉砕工程は、より微細化が求められる粉砕であるところ、第2の粉砕工程の前に接触工程を設定することで、同粉砕工程の粉砕力を弱く設定しながらも、求める最終製品用の微細化(ゲル化)を実現することが可能である。この場合、製造工程の簡略化と、細胞外小胞の破壊や変性を抑制する観点から、第1、第2の粉砕工程のうち第2の粉砕工程の前に接触工程を設けるとよく、第1の粉砕工程により得られた粉砕物と、液体とを第2の粉砕工程前に接触させる接触工程を設けるとよい。
【0051】
また、接触工程を浸漬により行う場合であって、同浸漬に浸透圧調整物質を含む液体を用いる場合、浸漬前に同液体にて浸漬対象物を洗浄する工程を設けてもよい。このようにすることで、当該浸漬に用いる浸透圧調整物質の濃度の一定化を図ることが可能である。
【0052】
その他の工程としては、上記のほか、例えば原料の解凍工程、洗浄工程、精製工程、プラセンタ抽出物の凍結工程等が挙げられる。
【0053】
(解凍工程)
解凍工程は、原料とされるプラセンタが冷凍して保存されている場合に、それを解凍する工程である。
【0054】
解凍の温度は細胞外小胞の破壊や変性を抑える観点から、例えば30℃以下、好ましくは20℃(常温)以下、より好ましくは15℃以下で行うとよい。また、解凍の方法は、細胞外小胞の流出を防ぐべく、例えば、水等の液体を用いずに(液体と非接触で)解凍するとよい。
【0055】
(洗浄工程)
洗浄工程は、付着している微生物やウイルスの他、血液等の不純物を洗い流す工程である。洗浄に用いる液体は、対象物を洗い流す作用を有していればよいが、安全性や生理活性物質の機能を保護する観点から薬剤を含まないものが好ましい。ただし、これは純水に限定するものではなく、若干量の塩等を含むものであってもよい。
【0056】
洗浄工程は、実施する工程に応じて、洗浄回数や洗浄方法を異ならせてもよい。例えば、殺菌工程の後に洗浄を行う場合、殺菌工程に用いた溶媒を洗い流すといった安全性の観点から、例えば2回、好ましくは3回、より好ましくは4回行うとよい。なお、複数回の洗浄を行う場合、各洗浄後に、洗浄に用いた液体を除去することで洗浄効率を高めることが可能である。
【0057】
(精製工程)
精製工程は、主に含まれる不純物(微生物やウイルス、その死骸、細胞片等)を除去するための工程である。精製工程は、例えば、クロマトグラフィーを用いた分画、濾紙やメンブランフィルター、限外濾過膜等を用いた濾過、乾燥、pH調整、脱臭、脱色、長時間の静置保管等が例示でき、これらを任意に選択し、組み合わせた処理を行うことが可能である。
【0058】
(凍結・保存工程)
凍結工程は、第2の粉砕工程により得られた粉砕物(プラセンタ抽出物)を凍結して保存するための工程である。なお、これは第2の粉砕工程と凍結工程との間に別の工程が含まれることを否定するものではなく、例えば、第2の粉砕工程後に殺菌工程や、精製工程、粉砕工程などの他の工程を設け、その処理後のものを凍結して保存する工程を凍結・保存工程としてもよい。
【0059】
凍結の温度は、微生物やウイルスの増加を抑える観点から、例えば0℃以下、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-30℃以下で行うとよい。凍結されたプラセンタ抽出物は、例えば、同温度にて保存するとよくいが、凍結用の温度とは異なる温度(例えば、凍結用の温度よりも高い温度)で保存してもよい。ただし、保存中に溶解してしまうと、最終製品の品質悪化が懸念されるため、0℃以下で保存することが好ましい。
【0060】
次に、本製造方法の一実施形態について、図1のフローチャートを用いて説明する。
【0061】
先ず、採取・冷凍して保存されているプラセンタを、水等の液体に漬けることなく20℃(常温)にて解凍する(ステップS10)。解凍後は、血管、血液、変色箇所等の不純物を除去するトリミングを行う(ステップS20)。トリミング後は、20℃の流水で洗浄し、トリミング後の不純物や付着している微生物やウイルスを除去する(ステップS30)。
【0062】
洗浄後は、第1の粉砕工程(ステップS40)にて、プラセンタを3cm以上であって10cm以下の組織片に細分化する。第1の粉砕工程にて得られた粉砕物は、エタノールやクエン酸、次亜塩素酸ナトリウム等を用いて殺菌(ステップS50)を行う。その後、流水にて、第1の粉砕工程にて溶出した血液等の不純物、殺菌工程にて殺菌された微生物やウイルス、殺菌に用いられた溶媒を洗い流す(ステップS60)。
【0063】
続けて、洗浄後のプラセンタを塩化ナトリウム等の浸透圧調整物質を含む液体に漬ける(ステップS70)。浸漬後は、第2の粉砕工程(ステップS80)にて、プラセンタを例えばゲル状に粉砕してプラセンタ抽出物を得る。得られたプラセンタ抽出物は、その後凍結して保存する。
【0064】
≪プラセンタ抽出物≫
上述した本製造方法によれば、平均粒径が30~300nmである細胞外小胞を含むプラセンタ抽出物(以下、「本抽出物」ともいう。)を得ることができる。
【0065】
なお、本明細書において平均粒径とは、ナノサイトトラッキング法により測定された細胞外小胞の粒径の値の平均値を意味する。
【0066】
また、本抽出物の細胞外小胞には、例えば、エクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス小体のいずれか1が含まれるとよく、このうち複数又は全部が含まれるものであってもよい。
【0067】
本抽出物に含まれる個々の細胞外小胞の粒径は、約30~600nmの範囲にある。細胞外小胞の平均粒径の下限について、好ましくは50nm以上であり、より好ましくは75nm以上である。また、細胞外小胞の平均粒径の上限は、好ましくは270nm以下であり、より好ましくは250nm以下である。
【0068】
また、本プラセンタ抽出物は、100~200nmのモード粒径(最頻粒径)を有する。モード粒径の下限について、好ましくは110nm以上であり、より好ましくは115nm以上である。また、モード粒径の上限は、好ましくは180nm以下であり、より好ましくは150nm以下である。
【0069】
本明細書においてモード粒径とは、ナノサイトトラッキング法により測定された細胞外小胞の粒径の頻度分布値が最大となる粒径であり、頻度分布グラフの最も高い頂点を示す粒径である。
【0070】
上記の通り、エクソソームは、粒径が約30~200nmの細胞外小胞であり、マイクロベシクルは、粒径が約100~1000nmの細胞外小胞であり、アポトーシス小体は、粒径が約1000~4000nmの細胞外小胞である。そのため、本抽出物は、細胞外小胞として主にエクソソームを含むことになる。
【0071】
本抽出物における細胞外小胞の含有量は、細胞外小胞に含まれる生理活性物質の機能を十分に期待できる含有量であればよく、具体的には1×10個/mL以上であり、好ましくは1×10/mL以上であり、より好ましくは1×1010/mL以上である。また、その最大含有量は特に限定されないが、1×1020/mL以下であり、好ましくは1×1019/mL以下であり、より好ましくは1×1018/mL以下である。
【0072】
本明細書において細胞外小胞の含有量は、ナノサイトトラッキング法により測定された細胞外小胞の粒子数から算出される濃度を示している。
【0073】
本抽出物は、細胞外小胞以外の成分(以下、「他の成分」ともいう。)を更に含有していてもよい。他の成分としては、pH調整剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等)、香料、清涼化剤(メントール、ハッカ油、カンフル等)、抗炎症剤(サリチル酸、グリチルリチン酸又はその塩、グリチルレチン酸、アラントイン等)、殺菌剤(グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール等)、防腐剤(パラベン類(メチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン等)、安息香酸又はその塩、フェノキシエタノール等)、保湿剤(ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸、多価アルコール(グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール等)、アミノ酸(L-セリン、L-プロリン、L-ヒドロキシプロリン等)等)、各種動植物(ボタンピ、カンゾウ、ローズマリー、セージ等)の抽出物、ビタミン類(パルミチン酸レチノール、アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチン、リボフラビン、ニコチン酸アミド等)、抗酸化剤(ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、トコフェロール、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソプロピルガレート等)、溶解補助剤(各種植物油、各種動物油、アルキルグリセリルエーテル、炭化水素類等)、代謝賦活剤、ゲル化剤(水溶性高分子(カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、油性ゲル化剤(ステアリン酸イヌリン、パルミチン酸デキストリン等)等)、粘着剤等が挙げられる。他の成分の含有量は、本開示の効果を損なわない範囲において、各化合物に応じて適宜設定することができる。
【0074】
本抽出物は、例えば、化粧品、健康食品、機能性食品、医薬部外品、医薬品などの用途に使用できる。また使用方法は、例えば経口投与、内服剤、外用剤、注射剤として使用するとよい。
【実施例0075】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0076】
1.プラセンタ抽出物の製造方法と細胞外小胞の精製
[実施例1]
図1のフローチャートに従ってプラセンタ抽出物を製造した。
【0077】
得られたプラセンタ抽出物の細胞外小胞を精製した後、ナノサイト解析を行った。精製は、MagCaptureエクソソームアイソレーションキットPS Ver.2(Wako Code 290-84103)を使用した。具体的には、ホファルジルセリン結合分子を用いて細胞外小胞を金属イオン依存的に補足した後、キレート剤(Exoxome Elution Buffer)により細胞外小胞を溶出して試験液とした。
【0078】
[比較例1~3]
市販のプラセンタ抽出物を比較例1~3とした。比較例1は他社A社製プラセンタ抽出物であり、比較例2は他社B社製プラセンタ抽出物であり、比較例3は他社C社製プラセンタ抽出物である。いずれの比較例1~3も、加熱処理により抽出されたプラセンタ抽出物である。これら比較例1~3を、上記実施例1と同様に、細胞外小胞を精製した後、ナノサイト解析を行った。精製は、MagCaptureエクソソームアイソレーションキットPS Ver.2(Wako Code 290-84103)を使用した。具体的には、ホファルジルセリン結合分子を用いて細胞外小胞を金属イオン依存的に補足した後、キレート剤(Exoxome Elution Buffer)により細胞外小胞を溶出して試験液とした。
【0079】
実施例、比較例1~3のナノサイト解析は、NanoSight LM10(Malvern Panalyticai)を用いた。上記各試験液をmillQ水にて希釈し、映像取得条件Camera LeveL 13にて、60秒間の映像を5回撮影し、映像解析より粒子径および粒子濃度を算出した。
【0080】
2.評価
図2に示すように、実施例1の本プラセンタ抽出物には、2.18×1010/mLの粒子濃度の細胞外小胞が含有されることが確認された。これに対して、比較例1、比較例2、比較例3の細胞外小胞の粒子濃度はほぼ0であり、細胞外小胞が含有されないか、含有されてもごく微量であることが確認された。具体的には、比較例1は0.10×1010/mL、比較例2は0.13×1010/mL、比較例3は0.10×1010/mLであった。
【0081】
上記のようにエクソソームやマイクロベシクルをはじめとする細胞外小胞に生理活性物質が含有・保護されていることを鑑みると、含まれる細胞外小胞の量が多いほど、当該生理活性物質を多く含むことが期待でき、また、当該生理活性物質の失活や変性が抑えられていることも期待できる。
【0082】
図3に示すように、本プラセンタ抽出物には、30~600nmにわたって多数のピークを持つ粒径分布を有する細胞外小胞が確認された。そのため、本プラセンタ抽出物には多くの粒径の細胞外小胞を有するものと考えられる。また、表1に示すように、平均粒径は210nm(標準偏差117nm)であり、モード粒径は143nmであった。なお、粒径が30~300nmのものが特に多く含まれており、30~300nmの粒径のものは全体の83.5%、30~240nmの粒径のものは全体の75.6%、30~200nmの粒径のものは全体の63.8%を占めることが確認された。
【0083】
【表1】
【0084】
本プラセンタ抽出物のモード粒径はエクソソームに分類される細胞外小胞の粒径を示し、本プラセンタ抽出物には、特にエクソソームに分類される細胞外小胞が多く含まれていることが確認された。
【0085】
上記のように、細胞外小胞は粒径によってエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス小体に分類され、その生成機構が異なり、含まれる生理活性物質やその機能も異なると考えられている。そうすると、上記のように複数種類の粒径の細胞外小胞が確認されたことは、本発明の製造方法に基づくプラセンタ抽出物が、より多様な生理活性物質を有する、もしくはより多様な機能を有するプラセンタ抽出物であることを期待させるものである。
図1
図2
図3