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特開2024-158299上アーム駆動回路および電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158299
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】上アーム駆動回路および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20241031BHJP
   H02M 1/00 20070101ALI20241031BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20241031BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02M1/08 A
H02M1/00 E
H03K17/16 H
H03K17/687 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073391
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】ミネベアパワーデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】家坂 聡
(72)【発明者】
【氏名】桜井 健司
(72)【発明者】
【氏名】松本 佳朗
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BB08
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM01
5J055AX25
5J055AX56
5J055AX64
5J055BX16
5J055CX07
5J055CX13
5J055DX09
5J055DX13
5J055DX22
5J055DX43
5J055DX56
5J055EX07
5J055EY12
5J055EY13
5J055EY21
5J055EZ63
5J055EZ66
5J055EZ67
5J055GX01
5J055GX05
(57)【要約】
【課題】
下アームに還流電流が流れた際の上アームスイッチング素子の誤動作を抑制する。
【解決手段】
上アーム駆動回路2は、上アームスイッチング素子Q1のゲート電極と上アームスイッチング素子Q1の基準電位側の主電極との間に接続された第1のスイッチング素子SW1と、ドレイン電極が上アームスイッチング素子Q1のゲート電極に接続された第2のスイッチング素子SW2と、第2のスイッチング素子SW2のドレイン電極と上アームスイッチング素子Q1のゲート電極との間に、カソードが第2のスイッチング素子SW2側でアノードが上アームスイッチング素子Q1側で直列に配置された第1のダイオードD1および第2のダイオードD2とを有し、第2のダイオードD2の耐圧は第1のダイオードD1よりも低く、第2のダイオードD2のリカバリ電流は第1のダイオードD1よりも低く、第1のダイオードD1の耐圧は60Vから100Vの範囲である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換回路の上アームスイッチング素子を駆動する上アーム駆動回路であって、
ドレイン電極が前記上アームスイッチング素子のゲート電極に接続され、ソース電極が前記上アームスイッチング素子の基準電位側となる一方の主電極に接続された第1のスイッチング素子と、
ドレイン電極が前記上アームスイッチング素子の前記ゲート電極に接続された第2のスイッチング素子と、
前記第2のスイッチング素子の前記ドレイン電極と前記上アームスイッチング素子の前記ゲート電極との間、かつ、前記第2のスイッチング素子の前記ドレイン電極と前記第1のスイッチング素子の前記ドレイン電極との間に、カソードが前記第2のスイッチング素子側でアノードが前記上アームスイッチング素子側で直列に配置された第1のダイオードおよび第2のダイオードとを有し、
前記第2のダイオードの耐圧は、前記第1のダイオードの耐圧よりも低く、
前記第2のダイオードのリカバリ電流は、前記第1のダイオードのリカバリ電流よりも低く、
前記第1のダイオードの耐圧は60Vから100Vの範囲であることを特徴とする上アーム駆動回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2のダイオードの耐圧は3Vから20Vの範囲であることを特徴とする上アーム駆動回路。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2のダイオードの耐圧は10Vから20Vの範囲であることを特徴とする上アーム駆動回路。
【請求項4】
請求項1において、
前記第2のダイオードは、PN接合ダイオードであることを特徴とする上アーム駆動回路。
【請求項5】
請求項1において、
前記第2のダイオードは、ショットキーバリアダイオードであることを特徴とする上アーム駆動回路。
【請求項6】
請求項1において、
前記第2のスイッチング素子のソース電極は、接地電位に接続されていることを特徴とする上アーム駆動回路。
【請求項7】
請求項1において、
前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子は、前記上アームスイッチング素子のオフ時に前記上アームスイッチング素子のゲート電荷を引き抜くように制御されることを特徴とする上アーム駆動回路。
【請求項8】
請求項1に記載の前記上アーム駆動回路と、
前記上アーム駆動回路によって駆動される上アームスイッチング素子と、
前記上アームスイッチング素子に直列に接続された下アームスイッチング素子とを有することを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記下アームスイッチング素子に対して逆並列に接続された下アーム還流ダイオードを有し、
前記第1のダイオードの耐圧は、前記下アーム還流ダイオードの還流中に発生する電圧より大きいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記第2のダイオードの耐圧は、前記下アーム還流ダイオードの還流中に発生する前記電圧より小さいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項9において、
前記第2のダイオードの耐圧は、前記下アーム還流ダイオードの還流中に発生する前記電圧より大きいことを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
電力変換回路の上アームスイッチング素子を駆動する上アーム駆動回路であって、
ドレイン電極が前記上アームスイッチング素子のゲート電極に接続され、ソース電極が前記上アームスイッチング素子の基準電位側となる一方の主電極に接続された第1のスイッチング素子と、
ドレイン電極が前記上アームスイッチング素子の前記ゲート電極に接続された第2のスイッチング素子と、
前記第2のスイッチング素子の前記ドレイン電極と前記上アームスイッチング素子の前記ゲート電極との間、かつ、前記第2のスイッチング素子の前記ドレイン電極と前記第1のスイッチング素子の前記ドレイン電極との間に接続され、カソードが前記第2のスイッチング素子側でアノードが前記上アームスイッチング素子側であるダイオードと、
ドレイン電極が前記第2のスイッチング素子のソース電極側に接続された接合型電界効果トランジスタとを有し、
前記接合型電界効果トランジスタは、前記上アームスイッチング素子の前記一方の主電極が0V以上の時にはオンし、0Vより小さい時にはオフするように制御されることを特徴とする上アーム駆動回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上アーム駆動回路および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置の上アーム駆動回路に関する技術として、例えば特許文献1がある。
【0003】
特許文献1の図1および段落0024には、「上アームQT1をオフするときは、スイッチング素子S2をオンして、QT1の入力容量に保持された電荷を逆バイアスして引き抜く。但し、この引き抜き電流i2は、レベルシフト回路と同様消費電力を増大する要素があるので、パルス駆動として低消費電力化しても良い。この場合、パルス駆動後はQT1が完
全に不定となるため、別回路でオフを保持する手段が必要となる。この機能は、Nチャンネル型スイッチング素子M1がオンすることによって受け持つ。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-313488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、理想的な場合を想定しており、実際には上アームQT1のオフ時にスイッチング素子S2とスイッチング素子M1とを用いて上アームQT1のゲート電荷を引き抜いた後、下アームQB1の還流用ダイオードDB1の還流により出力が負電圧となり、スイッチング素子S2から電流が逆流する可能性があるという問題がある。
【0006】
この問題を解決する方法として、スイッチング素子S2の前に電流の逆流を防止するためのダイオードを設けることが考えられる。
【0007】
図4は、比較例の上アーム駆動回路および電力変換装置の回路図である。
【0008】
図4において、上アームスイッチング素子Q1と、第1のスイッチング素子SW1と、第2のスイッチング素子SW2は、それぞれ、特許文献1の上アームQT1、スイッチング素子M1、スイッチング素子S2に対応する。そして、第2のスイッチング素子SW2と上アームスイッチング素子Q1のゲート電極との間には、電流の逆流を防止するための第1のダイオードD1が設けられている。
【0009】
図5は、比較例の理想的な動作を説明する波形図である。図6は、比較例の実際の動作を説明する波形図である。図5および図6において、縦軸は出力端子OUTの電圧である出力端子電圧VOUT、第1のダイオードの電圧VD1(耐圧方向を正とする)、上アームオフ時電流IOFF、横軸は時刻tを示している。
【0010】
図5に示すように、時刻t1において、上アームスイッチング素子Q1のゲート電極に印加される駆動信号がオン(ON)信号からオフ(OFF)信号になったとき、第1のスイッチング素子SW1および第2のスイッチング素子をオンにすることで、上アームスイッチング素子Q1のゲート電荷の引き抜きが行われる。これにより、時刻t1から時刻t2では第1のダイオードD1には順方向電圧が印加されて順方向通流し、上アームオフ時電流IOFFが流れる。
【0011】
時刻t1から遅延時間T1後に、下アームスイッチング素子Q2に逆接続された下アーム還流ダイオードDQ2に、還流電流IDQ2が流れ、時刻t2では、出力端子電圧VOUTには下アーム還流ダイオードの順方向電圧VFが発生する。
【0012】
このとき、第1のダイオードD1は下アーム還流ダイオードの順方向電圧VFで逆バイアスされ、上アームオフ時電流IOFFは流れなくなるとともに、理想的には第1のダイオードD1によって電流の逆流が防止される。
【0013】
しかしながら、実際には、図6に示すように、第1のダイオードD1のリカバリが発生し、時刻t2から時刻t3の間のリカバリ期間T2において、第1のダイオードD1のリカバリ電流IRが逆方向に流れてしまい、例えば上アームスイッチング素子Q1がオンになってしまうなどの回路の誤動作が発生するという問題がある。
【0014】
ダイオードは、リカバリを低減しようとすると耐圧が低下するというトレードオフがあるので、第1のダイオードD1は、下アーム還流ダイオードの順方向電圧VFより大きい耐圧とする必要がある。そのため、リカバリ電流IRを低減することが難しい。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、下アームに還流電流が流れた際の上アームスイッチング素子の誤動作を抑制できる上アーム駆動回路および電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した課題を解決するために、本発明の上アーム駆動回路は、電力変換回路の上アームスイッチング素子を駆動する上アーム駆動回路であって、ドレイン電極が前記上アームスイッチング素子のゲート電極に接続され、ソース電極が前記上アームスイッチング素子の基準電位側となる一方の主電極に接続された第1のスイッチング素子と、ドレイン電極が前記上アームスイッチング素子の前記ゲート電極に接続された第2のスイッチング素子と、前記第2のスイッチング素子の前記ドレイン電極と前記上アームスイッチング素子の前記ゲート電極との間、かつ、前記第2のスイッチング素子の前記ドレイン電極と前記第1のスイッチング素子の前記ドレイン電極との間に、カソードが前記第2のスイッチング素子側でアノードが前記上アームスイッチング素子側で直列に配置された第1のダイオードおよび第2のダイオードとを有し、前記第2のダイオードの耐圧は、前記第1のダイオードの耐圧よりも低く、前記第2のダイオードのリカバリ電流は、前記第1のダイオードのリカバリ電流よりも低く、前記第1のダイオードの耐圧は60Vから100Vの範囲であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の電力変換装置は、上記した上アーム駆動回路と、前記上アーム駆動回路によって駆動される上アームスイッチング素子と、前記上アームスイッチング素子に直列に接続された下アームスイッチング素子とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第2のダイオードにより第1のダイオードのリカバリ電流を低減できるので、下アームに還流電流が流れた際の上アームスイッチング素子の誤動作を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例の上アーム駆動回路および電力変換装置の回路図。
図2】実施例の動作を説明する波形図。
図3】実施例の動作を説明する波形図。
図4】比較例の上アーム駆動回路および電力変換装置の回路図。
図5】比較例の理想的な動作を説明する波形図。
図6】比較例の実際の動作を説明する波形図。
図7】変形例の上アーム駆動回路および電力変換装置の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、実施例の上アーム駆動回路および電力変換装置の回路図である。
【0022】
実施例の電力変換装置1は、上アーム駆動回路2と、図示しない下アーム駆動回路と、電力変換回路3とを有し、直流電源4からの直流電力を交流電力に変換し、出力端子VOUTに接続された負荷5に供給する。
【0023】
電力変換回路3は、上アームスイッチング素子Q1と、上アームスイッチング素子Q1に直列に接続された下アームスイッチング素子Q2と、上アームスイッチング素子Q1に対して逆並列に接続された上アーム還流ダイオードDQ1と、下アームスイッチング素子Q2に対して逆並列に接続された下アーム還流ダイオードDQ2とを有する。
【0024】
上アームスイッチング素子Q1および下アームスイッチング素子Q2のそれぞれは、ゲート電極と、基準電位側となる一方の主電極と、他方の主電極とを有している。上アームスイッチング素子Q1および下アームスイッチング素子Q2としては、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)などを用いることができる。IGBTの場合は、一方の主電極はエミッタ電極であり、他方の主電極はコレクタ電極である。MOSFETの場合は、一方の主電極はソース電極であり、他方の主電極はドレイン電極である。また、MOSFETの場合は、上アーム還流ダイオードDQ1と下アーム還流ダイオードDQ2として、MOSFETに内蔵されたボディダイオードを用いることができる。
【0025】
上アームスイッチング素子Q1の他方の主電極は、直流電源4の高電位側に接続され、下アームスイッチング素子Q2の一方の主電極は、接地電位GND(直流電源4の低電位側)に接続され、上アームスイッチング素子Q1の一方の主電極と下アームスイッチング素子Q2の他方の主電極との間の接続ノードに出力端子OUTが接続されている。
【0026】
なお、本実施例では、負荷5として例えば3相のモータを想定しているが、図1では1相分の構成のみ図示し、残りは図示省略している。
【0027】
上アームスイッチング素子Q1は、上アーム駆動回路2によって駆動され、下アームスイッチング素子Q2は、図示しない下アーム駆動回路によって駆動される。
【0028】
実施例の上アーム駆動回路2は、第1のスイッチング素子SW1と、第2のスイッチング素子SW2と、第1のダイオードD1と、第2のダイオードD2とを有する。また、上アーム駆動回路2は、第3のスイッチング素子と、ツェナーダイオードDZとを有している。図4に示した比較例と比較すると、図1に示した上アーム駆動回路2は、第2のダイオードD2が追加されている点で異なっている。第2のダイオードD2についての詳細は後述する。
【0029】
第1のスイッチング素子SW1は、ドレイン電極が上アームスイッチング素子Q1のゲート電極に接続され、ソース電極が上アームスイッチング素子Q1の基準電位側となる一方の主電極に接続されている。
【0030】
第2のスイッチング素子SW2は、ドレイン電極が上アームスイッチング素子Q1のゲート電極に接続されている。また、第2のスイッチング素子SW2のソース電極は、接地電位GNDに接続されている。なお、第2のスイッチング素子SW2は、第2のスイッチング素子のボディダイオードDSW2を有している。
【0031】
第1のスイッチング素子SW1と第2のスイッチング素子SW2は、上アームスイッチング素子Q1のオフ時に上アームスイッチング素子Q1のゲート電荷を引き抜くように制御される。
【0032】
第1のダイオードD1および第2のダイオードD2は、第2のスイッチング素子SW2のドレイン電極と上アームスイッチング素子Q1のゲート電極との間、かつ、第2のスイッチング素子SW2のドレイン電極と第1のスイッチング素子SW1のドレイン電極との間に、カソードが第2のスイッチング素子SW2側でアノードが上アームスイッチング素子Q1側で直列に配置されている。ここで、第1のダイオードD1および第2のダイオードD2の接続の順序は、第1のダイオードD1が第2のダイオードD2よりも第2のスイッチング素子SW2側にある例を図1に示しているが、これに限られず、接続の順序は逆であってもよい。そして、実施例における第2のダイオードD2の耐圧は、第1のダイオードD1の耐圧よりも低く、第2のダイオードD2のリカバリ電流は、第1のダイオードD1のリカバリ電流よりも低く設定されている。
【0033】
例えば、第1のダイオードD1の耐圧は30Vから100Vの範囲とすることができるが、第1のダイオードD1の耐圧は、出力端子電圧VOUTのアンダーシュート電圧も考慮すると、60Vから100Vの範囲とすることがより望ましい。
【0034】
第2のダイオードD2の耐圧は3Vから20Vの範囲であることが望ましい。第2のダイオードD2の耐圧は、下アーム還流ダイオードの順方向電圧VFより大きいことがより望ましいので、10Vから20Vの範囲であることがより望ましい。
【0035】
また、第2のダイオードD2は、PN接合ダイオードを用いることを想定しているが、リカバリ電流を低減するためにショットキーバリアダイオードを用いても良い。
【0036】
第3のスイッチング素子SW3は、ドレイン電極が上アームスイッチング素子Q1の他方の主電極に接続され、ソース電極が上アームスイッチング素子Q1のゲート電極に接続されている。
【0037】
ツェナーダイオードDZは、カソードが上アームスイッチング素子Q1のゲート電極に接続され、アノードが上アームスイッチング素子Q1の基準電位側となる一方の主電極に接続されている。
【0038】
なお、本実施例では第1のスイッチング素子SW1と第2のスイッチング素子SW2としてNMOSを用い、第3のスイッチング素子SW3としてPMOSを用いた例を示しているが、同じ役割を果たせるのであればこれに限られない。
【0039】
図2および図3は、実施例の動作を説明する波形図である。図2および図3において、縦軸は出力端子OUTの電圧である出力端子電圧VOUT、第1のダイオードの電圧VD1(耐圧方向を正とする)、上アームオフ時電流IOFF、横軸は時刻tを示している。
【0040】
ここで、図2は、第1のダイオードD1の耐圧>下アーム還流ダイオードの順方向電圧VF>第2のダイオードD2の耐圧である場合の波形図である。また、図3は、第1のダイオードD1の耐圧>第2のダイオードD2の耐圧>下アーム還流ダイオードの順方向電圧VFである場合の波形図である。
【0041】
図2および図3に示すように、時刻t1までは、上アームスイッチング素子Q1のゲート電極に印加される駆動信号はオン信号であり、このとき、下アームスイッチング素子Q2はオフ、第1のスイッチング素子SW1はオフ、第2のスイッチング素子SW2はオフ、第3のスイッチング素子SW3はオンとなっている。具体的には、第3のスイッチング素子SW3がオンになることで、上アームスイッチング素子Q1のゲート電極にはオン信号が供給され、上アームスイッチング素子Q1がオンになり、出力端子電圧VOUTは直流電源電圧VSになっている。直流電源電圧VSは、例えば300V程度であるが、これに限られない。
【0042】
その後、時刻t1において、第1のスイッチング素子SW1はオン、第2のスイッチング素子SW2はオン、第3のスイッチング素子SW3はオフになり、上アームスイッチング素子Q1のゲート電極に印加される駆動信号がオフ信号になり、上アームスイッチング素子Q1のゲート電荷の引き抜きが開始される。これにより、時刻t1から時刻t2では、第1のダイオードD1には順方向電圧が印加されて順方向通流し、上アームオフ時電流IOFFが流れる。
【0043】
時刻t1から遅延時間T1後に、ゲート電荷が引き抜かれたことにより上アームスイッチング素子Q1がオフとなり、下アームスイッチング素子Q2に逆接続された下アーム還流ダイオードDQ2に、還流電流IDQ2が流れ、時刻t2では、出力端子電圧VOUTには下アーム還流ダイオードの順方向電圧VFが発生して負電圧となる。下アーム還流ダイオードの順方向電圧VFの大きさは、下アーム還流ダイオードDQ2の順方向電圧に加え、抵抗成分も含むため、還流電流IDQ2の大きさに依存して変化し、0.6Vから10V程度の大きさとなる。その結果、時刻t2では、第1のダイオードD1および第2のダイオードD2には下アーム還流ダイオードの順方向電圧VFの大きさの逆バイアスの電圧がかかる。
【0044】
図2のように、第1のダイオードD1の耐圧>下アーム還流ダイオードの順方向電圧VF>第2のダイオードD2の耐圧である場合は、第2のダイオードD2がアバランシェするため逆流する電流は流れるが、第1のダイオードD1にかかる逆バイアスの電圧は、第2のダイオードの耐圧VRMD2の分だけ減少するので、VF-VRMD2となり、リカバリ電流IRは第2のダイオードD2がない場合に比べて減少する。そして、リカバリ期間T2経過後の時刻t3以降は、リカバリ電流IRが流れなくなる。
【0045】
また、図3のように、第1のダイオードD1の耐圧>第2のダイオードD2の耐圧>下アーム還流ダイオードの順方向電圧VFである場合は、第2のダイオードD2はアバランシェしないので、第1のダイオードD1にかかる逆バイアスの電圧は0Vになり、逆流する電流は阻止されて、リカバリ電流IRは流れない。そして、リカバリ期間T2経過後の時刻t3以降は、第1のダイオードD1にかかる逆バイアスの電圧は0Vよりは大きくなるが、第2のダイオードD2と分担するため下アーム還流ダイオードの順方向電圧VFより小さくなる。そして、時刻t3以降も、リカバリ電流IRは流れない。
【0046】
このように、本実施例によれば、第2のダイオードD2により第1のダイオードD1のリカバリ電流IRを低減できるので、下アームに還流電流が流れた際の上アームスイッチング素子Q1の誤動作を抑制できる。
【0047】
また、ダイオードは、リカバリを低減しようとすると耐圧が低下するというトレードオフがあるが、第2のダイオードD2を追加することで、リカバリ電流IRを低減できるので、第1のダイオードD1の耐圧を、下アーム還流ダイオードの順方向電圧VFより大きく設定することができる。
【0048】
図7は、変形例の上アーム駆動回路および電力変換装置の回路図である。
【0049】
変形例の電力変換装置1は、第2のダイオードD2に代えて、ドレイン電極が第2のスイッチング素子SW2のソース電極側に接続された接合型電界効果トランジスタJFETを有し、この接合型電界効果トランジスタJFETは、出力端子電圧VOUT(上アームスイッチング素子Q1の基準電位側となる一方の主電極の電位と同じ)が0V以上の時にはオンし、出力端子電圧VOUTが0Vより小さい時にはオフするように制御される点で、実施例とは異なっている。
【0050】
なお、接合型電界効果トランジスタJFETのソース電極は、接地電位GNDに接続されている。
【0051】
このように、接合型電界効果トランジスタJFETを追加し、出力端子電圧VOUTの正負に応じて制御することで、リカバリ電流IRを低減し、下アームに還流電流が流れた際の上アームスイッチング素子Q1の誤動作を抑制できる。
【0052】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に記載された構成に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、各実施例で説明した構成の一部または全部を組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 電力変換装置
2 上アーム駆動回路
3 電力変換回路
4 直流電源
5 負荷
Q1 上アームスイッチング素子
Q2 下アームスイッチング素子
DQ1 上アーム還流ダイオード
DQ2 下アーム還流ダイオード
OUT 出力端子
SW1 第1のスイッチング素子
SW2 第2のスイッチング素子
SW3 第3のスイッチング素子
D1 第1のダイオード
D2 第2のダイオード
DZ ツェナーダイオード
DSW2 第2のスイッチング素子のボディダイオード
GND 接地電位
VS 直流電源電圧
VF 下アーム還流ダイオードの順方向電圧
VOUT 出力端子電圧
VD1 第1のダイオードの電圧
IOFF 上アームオフ時電流
IDQ2 還流電流
IR リカバリ電流
T1 遅延時間
T2 リカバリ期間
VRMD2 第2のダイオードの耐圧
JFET 接合型電界効果トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7