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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158310
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両の衝突判定装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/013 20060101AFI20241031BHJP
   B60R 21/0136 20060101ALI20241031BHJP
   B60R 21/0134 20060101ALI20241031BHJP
   G08G 1/16 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
B60R21/013
B60R21/0136 310
B60R21/0134 313
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073420
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100120499
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 淳
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕太
(72)【発明者】
【氏名】軽部 将彦
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC11
5H181CC14
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】簡素な構成で軽微な衝突を判定することが可能な車両の衝突判定装置を提供する。
【解決手段】ECU150のプロセッサ152は、車両の前後方向の加速度Gを取得する前後加速度取得部152aと、車両の速度変化ΔVを取得する速度変化取得部152bと、車両の周辺に存在する物体と車両との距離Dを取得する距離取得部152cと、加速度Gが第1の所定値TH1以上であること及び速度変化ΔVが第2の所定値TH2以上であることの少なくともいずれか一方が成立し、且つ距離Dが第3の所定値TH3以下である場合、車両が軽衝突したと判定する軽衝突判定部152dと、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前後方向の加速度を取得する前後加速度取得部と、
車両の速度変化を取得する速度変化取得部と、
車両の周辺に存在する物体と車両との距離を取得する距離取得部と、
前記加速度が第1の所定値以上であること及び前記速度変化が第2の所定値以上であることの少なくともいずれか一方が成立し、且つ前記距離が第3の所定値以下である場合、車両が軽衝突したと判定する軽衝突判定部と、
を備える、車両の衝突判定装置。
【請求項2】
車両が軽衝突したと判定されると、車両のドライバに対する所定の通知を発生させる通知部を更に備える、請求項1に記載の車両の衝突判定装置。
【請求項3】
車両が軽衝突したと判定されると、近接センサを用いた車両への物体の近接判定を一時的に中止させる中止部を更に備える、請求項1又は2に記載の車両の衝突判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波受信器の近くに、車両衝突を検出するため車両外材に生ずる応力を検出する衝突検出センサを備えることが公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-212662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されている超音波受信器のようなセンサは、駐車時など低速時の障害物への衝突防止として車両前後端のバンパーに搭載されていることが多く、検知しようとする方向や角度が予め定められている。軽微な衝突によりバンパーが歪むと、センサが本来検知しようとする方向や角度に対する実際のセンサの向きのずれ(以下、軸ずれとも称する)が発生する。車両側でセンサ自体の通信不良、導通不良などの故障を検知する機能が設けられていたとしても、バンパーの変形に伴う軸ずれを検知する機能は通常設けられていない。そして、センサの故障に至らないような軸ずれによる不具合では、センサ自体は故障しておらず正常動作するため、車両のドライバが軸ずれによる誤った検出結果を信用してしまう問題が生じる。
【0005】
また、軽微な衝突に起因してバンパーの歪みによりセンサの軸ずれが生じていたとしても、導通不良などのセンサ故障でない限り車両側からドライバへ点検やチェックを促すこともできないため、システム異常の可能性をドライバに警告することができない。更に、センサに軸ずれが生じると、車両周辺の物体(障害物)を正確に検知できず、車両が物体に接触する可能性がある。
【0006】
更に、車両がエアバッグを作動させるために衝突を検知するシステムを備えていたとしても、バンパーが多少歪む程度の軽微な衝突は、不要作動を防止する観点から検知対象としていない場合が多い。
【0007】
特許文献1に記載された技術では、超音波受信器に加えて、更に衝突検出センサを設けており、衝突を検出するために製造コストが上昇する問題がある。また、同文献に記載された技術では、超音波送信器及び超音波受信器が車両設計段階で設置した位置にある場合に受信される直接波の特性は概ね一定であることに鑑み、この一定性が保たれているか否かにより超音波受信器が設置される部材に変形が生じていないか否かを判断している。このため、バンパーが変形する程度の軽衝突が発生したことを事後的に判定することはできるものの、軽衝突が発生した時点で判定することは困難である。
【0008】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、簡素な構成で軽微な衝突を判定することが可能な車両の衝突判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0010】
(1)車両の前後方向の加速度を取得する前後加速度取得部と、
車両の速度変化を取得する速度変化取得部と、
車両の周辺に存在する物体と車両との距離を取得する距離取得部と、
前記加速度が第1の所定値以上であること及び前記速度変化が第2の所定値以上であることの少なくともいずれか一方が成立し、且つ前記距離が第3の所定値以下である場合、車両が軽衝突したと判定する軽衝突判定部と、
を備える、車両の衝突判定装置。
【0011】
(2)車両が軽衝突したと判定されると、車両のドライバに対する所定の通知を発生させる通知部を更に備える、上記(1)に記載の車両の衝突判定装置。
【0012】
(3)車両が軽衝突したと判定されると、近接センサを用いた車両への物体の近接判定を一時的に中止させる中止部を更に備える、上記(1)又は(2)に記載の車両の衝突判定装置。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、簡素な構成で軽微な衝突を判定することが可能な車両の衝突判定装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一つの実施形態による衝突判定システムの構成を示す模式図である。
図2】衝突判定システムによる衝突判定のロジックを説明するための図である。
図3】通常の軽衝突の判定ロジックを示す模式図である。
図4】本実施形態に係る、より軽微な衝突を含めて軽衝突を判定するため判定ロジックを示す模式図である。
図5】ECUのプロセッサの機能ブロックを示す模式図である。
図6】ECUのプロセッサが行う処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る幾つかの実施形態について図を参照しながら説明する。しかしながら、これらの説明は、本発明の好ましい実施形態の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施形態に限定することを意図するものではない。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0016】
図1は、一つの実施形態による車両システム100の構成を示す模式図である。車両システム100は、例えば自動車などの車両に搭載される。車両の前後端部近傍には近接センサ(クリアランスソナー等)が設けられており、車両システム100は、近接センサを用いて、例えば車庫入れ時などに、隣接して駐車している他車両、壁などへの車両の近接を判定する。更に、車両システム100は、近接センサを用いて、車両の物体(他車両、人など)への衝突、より具体的には、軽微な衝突を判定する。そして、車両システム100は、近接センサが故障しない程度の軽微な衝突が起きたと判定すると、その旨を車両のドライバへ通知するとともに、近接センサを用いた近接判定を一時的に使用不可とする。
【0017】
図1に示すように、車両システム100は、近接センサ110と、Gセンサ120と、表示装置130と、スピーカ140と、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit、以下、ECUと称する)150と、を有している。近接センサ110と、Gセンサ120と、表示装置130と、スピーカ140と、ECU150のそれぞれは、コントローラエリアネットワーク(Controller Area Network (CAN))といった規格に準拠した車内ネットワークを介して接続される。
【0018】
近接センサ110は、物体の車両への近接を検出するセンサであり、例えば、超音波センサ(クリアランスソナー)、ライダー(Lidar:Light Detection and Ranging)、レーダ(Radar)等のセンサである。近接センサ110は、車両の前後端のバンパーに複数設けられていてよい。
【0019】
Gセンサ120は、車両にかかる加速度G、特に車両の前後方向の加速度Gを検出する。Gセンサ120は、エアバッグを作動させるシステムに含まれていてもよく、この場合、Gセンサ120の検出値はエアバッグシステムのECUを介してECU150に送られてもよい。
【0020】
表示装置130は、例えば液晶表示ディスプレイ(LCD)から構成され、車両内部のメーターパネル、またはダッシュボードの近辺等に設けられ、ドライバに向けた通知を表示する。同様に、スピーカ140は、車内に設けられ、ドライバに向けた通知を音声で出力する。ドライバに向けた通知は、本実施形態に係る判定ロジックにより車両が軽衝突したと判定された場合に、その旨をドライバに知らせるとともに、以降は近接センサ110を用いた近接判定を利用できない旨をドライバに知らせる通知を含む。また、ドライバに向けた通知は、例えば車庫入れ等の際に、近接センサ110を用いた近接判定により物体(隣接して駐車している車両、壁など)が車両に近接していると判定された場合に、その旨をドライバに知らせる通知を含む。
【0021】
ECU150は、プロセッサ152と、メモリ154と、通信インターフェース156とを有する。プロセッサ152は、1個または複数個のCPU及びその周辺回路を有し、メモリ154の作業領域に実行可能に展開されたコンピュータプログラムの実行により所定の機能を提供する。メモリ154は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。通信インターフェース156は、ECU150を車内ネットワークまたは外部の通信ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。ECU150は、近接センサ110を用いて物体の車両への近接を判定するシステム(クリアランスソナーシステム)のECUであってもよい。
【0022】
図2は、車両システム100による衝突判定のロジックを説明するための図である。車両システム100は、Gセンサ120が検出した車両の前後方向の加速度Gと、加速度Gの積分値(速度V)の所定時間(例えば、150ms)当たりの速度変化(ΔV)とに基づいて、車両の軽衝突を判定する。さらに、車両システム100は、加速度Gと、ΔVと、車両の周辺に存在する物体と車両との距離Dに基づいて、より軽微な衝突を判定する。距離Dは、近接センサ110に検出値に基づいて取得される。
【0023】
最初に、通常の軽衝突の判定ロジックについて説明する。図3は、加速度Gを用いた通常の軽衝突の判定ロジックを示す模式図である。図3に示す判定ロジックでは、車両システム100は、加速度Gが図2に示す閾値TH1以上であり、且つΔVが閾値TH2以上である場合、すなわち、加速度GとΔVが図2中にドットを付した範囲に属する場合に、車両が軽衝突したと判定する。一例として、軽衝突は、車両同士が5%程度ラップした状態で衝突した場合、20cm程度の高さの縁石に対し90度の角度で車両が乗り上げた場合等に該当する。ここでの軽衝突はエアバッグが作動しない程度の衝突であってよく、エアバッグが作動する程度の比較的大きな衝突は、閾値TH1およびTH2よりも更に大きな閾値によって判定されてもよい。
【0024】
なお、加速度Gのみで衝突を判定しようとすると、車両が悪路または道路に設置されたスピードブレーカーなどの凹凸路面を走行して加速度Gが瞬間的に閾値TH1以上となった場合に誤って軽衝突と判定されてしまう可能性がある。一方、ΔVの値は、上述した所定時間の間で速度Vに変化が生じていないと閾値TH2以上とならず、加速度Gが瞬間的に閾値TH1以上となった場合は閾値TH2以上とならない。したがって、加速度Gに加えてΔVに基づく判定をすることで、悪路走行時等に誤って軽衝突と判定されることが抑制される。
【0025】
しかし、図3に示す通常の軽衝突の判定ロジックでは、より軽微な衝突については、加速度Gが図2に示す閾値TH1以上であり、且つΔVが閾値TH2以上とならないため、軽衝突としての判定が成立しない。例えば、走行に影響を与えない程度の低速域での衝突、きわめて小さな軽微な接触などについては、図3に示す軽衝突の判定ロジックで判定することができない。このため、図3に示す判定ロジックは、近接センサ110自体は故障せずに、バンパーが変形して近接センサ110の軸ずれが生じる程度の軽微な衝突の判定には適用できない。
【0026】
このため、本実施形態では、より軽微な衝突を含めて軽衝突を判定するため、図4に示す判定ロジックで軽衝突を判定する。図4に示す判定ロジックでは、車両システム100は、加速度Gが閾値TH1以上であること、およびΔVが閾値TH2以上であることの少なくともいずれか一方が成立し、且つ距離Dが閾値TH3以下の場合に、車両が軽衝突したと判定する。ここで、閾値TH3は0または0より小さい負の値であってもよい。閾値TH3に0または負の値を含めることで、車両が物体に接触して物体がバンパー等にめり込んだ場合を軽衝突に含めることができる。
【0027】
一例として、図2では、距離Dが閾値TH3以下となり得る範囲にハッチングを付して示している。図4に示す判定ロジックにより、加速度Gが閾値TH1以上であること、およびΔVが閾値TH2以上であることの少なくともいずれか一方が成立すれば軽衝突として判定され得るので、図2中に破線で示す領域Rが軽衝突として判定され得る。閾値TH1,TH2の値を更に低下させると、加速度GおよびΔVがより小さい領域Rが軽衝突として判定されることになる。これにより、例えば、車両同士が微小ラップ量で衝突した場合、ガードレールに対して5°程度の角度で車両が接触した場合、車両がポストコーンを通過した場合などのより軽微な軽衝突を判定可能となる。
【0028】
以上のように、図4の判定ロジックによれば、図3の判定ロジックに比べて軽衝突として判定される領域が拡大されており、バンパーが変形して近接センサ110の軸ずれが生じる程度の軽微な衝突が軽衝突として判定される。
【0029】
軽衝突として判定される領域を拡大した場合に、いかにして悪路等を走行した場合と軽衝突した場合とを切り分けるかが重要となる。上述したようにΔV≧TH2の判定は悪路等の走行時に軽衝突と判定されないようにするものであるため、図4の判定ロジックにおいて、G≧TH1とΔV≧TH2のOR条件のみで軽衝突を判定してしまうと、悪路等の走行時にG≧TH1且つΔV<TH2の場合に誤って軽衝突と判定されてしまう可能性がある。しかし、図4の判定ロジックではD≦TH3がAND条件で加えられており、悪路等の走行時にD≦TH3となることはないため、AND条件が成立すれば軽衝突と判定できる。一方で、G≧TH1且つΔV<TH2の場合にD>TH3であれば、悪路等の走行であると判定できる。したがって、図4の判定ロジックによれば、G≧TH1とΔV≧TH2をOR条件にして軽衝突として判定される領域を拡大しても悪路等の走行と軽衝突の切り分けが可能となる。
【0030】
前述したように、バンパーに取付けられた近接センサ110が故障に至らない程度の衝突が発生すると、近接センサ110に軸ずれ等が発生し、以降に検出されるセンサ情報が正しくないものとなる可能性がある。図4に示す判定ロジックによれば、近接センサ110が故障に至らない程度の軽い衝突を軽衝突として判定することが可能であるため、以降に近接判定を一時的に利用不可とすることで、近接判定の誤りが抑制される。
【0031】
図5は、上記の処理を実現するための、ECU150のプロセッサ152の機能ブロックを示す模式図である。プロセッサ152は、本開示に係る車両の衝突判定装置の一態様であり、前後加速後取得部152aと、速度変化取得部152bと、距離取得部152cと、軽衝突判定部152dと、通知部152eと、近接判定部152fと、中止部152gと、を有する。プロセッサ152が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ152上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。つまり、プロセッサ152が有するこれらの各部は、プロセッサ152とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成される。
【0032】
プロセッサ152の前後加速後取得部152aは、Gセンサ120が検出した車両の前後方向の加速度Gを取得する。プロセッサ152の速度変化取得部152bは、前後方向の加速度Gを積分して所定時間当たりの車両の速度変化ΔVを取得する。プロセッサ152の距離取得部152cは、例えば複数の近接センサ110の検出値に基づいて、三角測量の原理により、車両の周辺に存在する物体と車両との距離Dを取得する。
【0033】
プロセッサ152の軽衝突判定部152dは、加速度Gが閾値TH1以上であること、およびΔVが閾値TH2以上であることの少なくともいずれか一方が成立し、且つ距離Dが閾値TH3以下の場合に、車両が軽衝突したと判定する。これにより、軽衝突として判定される領域が拡大され、且つ悪路等の走行と軽衝突の切り分けも可能であるため、近接センサ110が故障に至らない程度の軽微な衝突であっても軽衝突として判定することが可能なる。
【0034】
プロセッサ152の通知部152eは、車両が軽衝突したと判定されると、車両のドライバに対する所定の通知を発生させる。具体的には、通知部162eは、表示装置130に「軽衝突が発生しました!誤作動の可能性があるため、これ以降、近接判定は利用できません。」といった警告を表示させ、またはスピーカ140から同様の警告を音声で出力させる。これにより、通知を受けたドライバは、軽衝突が発生したこと、および近接判定を利用できないことを認識できる。
【0035】
プロセッサ152の近接判定部152fは、例えば車庫入れ時などに近接センサ110を用いた車両への物体の近接判定を行う。
【0036】
プロセッサ152の中止部152gは、車両が軽衝突したと判定されると、以降の近接センサ110を用いた車両への物体の近接判定を一時的に中止させる。これにより、車両のドライバが近接センサ110の軸ずれによる誤った近接判定結果を信用してしまうことが抑制される。
【0037】
次に、図6のフローチャートに基づいて、ECU150のプロセッサ152が行う処理について説明する。図6の処理はプロセッサ152により所定の制御周期毎に行われる。先ず、前後加速後取得部152aが、Gセンサ120が検出した前後方向の加速度Gを取得する(ステップS10)。次に、速度変化取得部152bが所定時間当たりの速度変化ΔVを取得し(ステップS12)、距離取得部152cが、車両の周辺に存在する物体と車両との距離Dを取得する(ステップS14)。
【0038】
次に、軽衝突判定部152dが、G≧TH1またはΔV≧TH2であるか否かを判定し(ステップS16)、G≧TH1またはΔV≧TH2が成立する場合、D≦TH3であるか否かを判定する(ステップS18)。ステップS18でD≦TH3の場合、通知部152eが車両のドライバに対して警告を発生させる(ステップS20)。次に、中止部152gが、以降の近接センサ110を用いた車両への物体の近接判定を一時的に中止させる(ステップS22)。ステップS16でG≧TH1またはΔV≧TH2でない場合、またはステップS18でD≦TH3でない場合、本制御周期における処理は終了する。
【0039】
なお、通信不良、導通不良等による近接センサ110の故障の判定については、軽衝突の判定とは別フローの処理により常時行われる。近接センサ110が故障したと判定されると、表示装置130またはスピーカ140からその旨がドライバに通知される。
【0040】
以上説明したように本実施形態によれば、加速度Gが閾値TH1以上であること、およびΔVが閾値TH2以上であることの少なくともいずれか一方が成立し、且つ距離Dが閾値TH3以下の場合に、車両が軽衝突したと判定するようにしたため、軽衝突として判定される領域が拡大され、且つ悪路等の走行と軽衝突の切り分けも可能となる。したがって、より軽微な衝突であっても軽衝突として判定することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
150 ECU
152 プロセッサ
152a 前後加速後取得部
152b 速度変化取得部
152c 距離取得部
152d 軽衝突判定部
152e 通知部
152g 中止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6