(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158314
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】摩擦ダンパ
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20241031BHJP
F16F 7/08 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16F15/02 E
F16F7/08
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073428
(22)【出願日】2023-04-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100229091
【弁理士】
【氏名又は名称】山路 英洋
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】平木 達也
(72)【発明者】
【氏名】栗野 治彦
(72)【発明者】
【氏名】久保田 淳
(72)【発明者】
【氏名】上瀧 敬太
【テーマコード(参考)】
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
3J048AC01
3J048BE12
3J048EA38
3J066AA26
3J066CA05
(57)【要約】
【課題】摩擦材を低コストかつ確実に保持でき、摩擦ダンパの作動時の摩擦材の破断も防止できる摩擦ダンパ等を提供する。
【解決手段】摩擦ダンパ1では、摺動板3が摩擦板4上を摺動する際の摩擦により振動エネルギーを吸収する。摩擦板4は、厚さ方向の両側が支持板2と摺動板3のそれぞれに接するように配置され、摺動板3の摺動方向における摩擦板4の位置を保持するための保持機構としてストッパ6が配置される。ストッパ6は、支持板2と摺動板3の間で、摩擦板4の上記摺動方向の両側に接するように配置され、摩擦板4よりも厚さが小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動材が摩擦材上を摺動する際の摩擦により振動エネルギーを吸収する摩擦ダンパであって、
前記摩擦材は、厚さ方向の両側が支持材と前記摺動材のそれぞれに接するように配置され、
前記摺動材の摺動方向における前記摩擦材の位置を保持するための保持機構を有し、
前記保持機構は、前記支持材と前記摺動材の間に設けられ、前記摩擦材の前記摺動方向の両側に接するように配置される、前記摩擦材より厚さの小さいストッパを含むことを特徴とする摩擦ダンパ。
【請求項2】
前記ストッパが前記支持材に直接固定されたことを特徴とする請求項1記載の摩擦ダンパ。
【請求項3】
前記保持機構は、前記摺動材の摺動方向における前記ストッパの位置を拘束するための拘束部を有することを特徴とする請求項1記載の摩擦ダンパ。
【請求項4】
前記ストッパが、前記摺動方向と直交する摺動直交方向において、前記摩擦材の両側に接するように配置されたことを特徴とする請求項1記載の摩擦ダンパ。
【請求項5】
前記摩擦材の前記摺動方向の両側に凸部または凹部が設けられ、
前記ストッパは、前記凸部または凹部と噛み合う形状を有することを特徴とする請求項1記載の摩擦ダンパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦ダンパ等に関する。
【背景技術】
【0002】
建物において、地震等による振動を抑制するため摩擦ダンパが用いられることがある。摩擦ダンパは、地震時等に進退する摺動材が摩擦材に対して摺動することで、両部材間の摩擦により振動エネルギーを吸収し、振動を減衰させるものである。
【0003】
摩擦ダンパでは、エポキシ系接着剤を使用して摩擦材を固定対象の支持材に接着固定することがあるが、特許文献1では、この固定方法が有する性能面の問題(摩擦熱による温度上昇を原因とする接着箇所の劣化等)とコスト面の問題を解決するため、摩擦材の支持材への固定面に塗料を塗布したり、当該固定面にブラスト加工や研削加工を行ったりすることで、摩擦材と支持材の間の摩擦係数を、摩擦材と摺動材の間の摩擦係数より大きくすることが記載されている。
【0004】
その他、摩擦材の固定方法としては、支持材を彫り込んで凹部を形成し、当該凹部に摩擦材を嵌め込む方法や、摩擦材にビス孔を空け、ビスにより摩擦材を支持材に固定する方法もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように摩擦材と支持材の間の摩擦係数を大きくしても、摺動材表面のステンレスの貰い錆などにより摩擦材と摺動材の間の摩擦係数が想定より大きくなり、摩擦ダンパの作動時に摩擦材が支持材に対して滑る可能性は払しょくできない。
【0007】
一方、支持材を彫り込んで凹部を形成する場合も、凹部の底面の傾斜や不陸により摺動材と摩擦材の間の面圧が不均等になるのを防ぐため、支持材の加工には高い精度が要求され、高コストとなる。また摩擦材にビス孔を空けてビスにより固定する場合も、摩擦材のビス孔が弱点となり、摩擦ダンパの作動時に摩擦材が破断する恐れがある。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、摩擦材を低コストかつ確実に保持でき、摩擦ダンパの作動時の摩擦材の破断も防止できる摩擦ダンパ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明は、摺動材が摩擦材上を摺動する際の摩擦により振動エネルギーを吸収する摩擦ダンパであって、前記摩擦材は、厚さ方向の両側が支持材と前記摺動材のそれぞれに接するように配置され、前記摺動材の摺動方向における前記摩擦材の位置を保持するための保持機構を有し、前記保持機構は、前記支持材と前記摺動材の間に設けられ、前記摩擦材の前記摺動方向の両側に接するように配置される、前記摩擦材より厚さの小さいストッパを含むことを特徴とする摩擦ダンパである。
【0010】
本発明によれば、摩擦ダンパで使用する摩擦材の変位をストッパにより拘束し、摩擦材を支持材上に保持できる。係る方法によれば、摩擦材と支持材の摩擦によらずに摩擦材を確実に保持でき、支持材を彫り込んで凹部を形成する必要が無いので低コストであり、摩擦材にビス孔を加工する必要も無いので摩擦ダンパの作動時に摩擦材の破断が生じることもない。またストッパは摩擦材よりも薄いので、ストッパが摩擦材と摺動材の間の摩擦に干渉することもない。ストッパの厚さは、摩擦材が摩耗して多少薄くなってもなおストッパの方が薄くなるように決定される。
【0011】
前記ストッパが前記支持材に直接固定されることが望ましい。あるいは、前記保持機構が、前記摺動材の摺動方向における前記ストッパの位置を拘束するための拘束部を有することも望ましい。
前者の場合、ストッパを支持材に確実に固定し、ストッパにより摩擦材を確実に保持できる。後者の場合、ストッパの位置を拘束することで摩擦材を保持でき、ストッパを支持材に直接固定する必要が無くなる。
【0012】
前記ストッパが、前記摺動方向と直交する摺動直交方向において、前記摩擦材の両側に接するように配置されることが望ましい。また前記摩擦材の前記摺動方向の両側に凸部または凹部が設けられ、前記ストッパは、前記凸部または凹部と噛み合う形状を有することも望ましい。
これらの方法により、摩擦材の摺動直交方向の変位も拘束することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、摩擦材を低コストかつ確実に保持でき、摩擦ダンパの作動時の摩擦材の破断も防止できる摩擦ダンパ等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る摩擦ダンパ1の要部を示す図である。
図1(a)は摩擦ダンパ1の断面図であり、
図1(b)は摩擦板4の上面を示す図である。
【0017】
図1(a)に示すように、摩擦ダンパ1は、支持板2、摺動板3、摩擦板4、ストッパ6等を有する。
【0018】
支持板2は、摩擦板4を保持する対象となる支持材であり、本実施形態では炭素鋼等の鋼材により形成される板状の部材である。
【0019】
摺動板3は、地震等の振動に応じて進退する板状の摺動材である。
【0020】
摩擦板4は、支持板2上に保持される板状の摩擦材であり、厚さ方向の一方の面が摺動板3に接し、他方の面が支持板2に接する。なお、摩擦板4は支持板2に接するのみであり、接着剤やビス等で支持板2に直接固定されることはない。
【0021】
摺動板3の進退時、摺動板3は摩擦板4上を摺動し、摺動板3と摩擦板4の間に摩擦が生じることで、地震等の振動エネルギーが摩擦熱等により消費(吸収)される。摺動板3の摺動方向は、
図1(a)、(b)の左右方向に対応する。
図1(a)は、摺動板3の摺動方向および摩擦板4の厚さ方向に沿った摩擦ダンパ1の断面を示したものである。
【0022】
摺動板3の表面は例えばステンレス製であり、摩擦板4には樹脂材料が用いられる。しかしながら、摺動板3の表面や摩擦板4の材質はこれに限らない。例えば、摺動板3の表面や摩擦板4をアルミや合金等の金属製のものとし、これらの金属同士の間で摩擦が生じる構成としてもよい。
【0023】
本実施形態では、摺動板3の摺動方向における摩擦板4の位置を保持するための保持機構として、支持板2上にストッパ6が設けられる。ストッパ6は炭素鋼等の金属により形成され、溶接またはビス等(不図示)により支持板2に直接固定される。
【0024】
図1(b)に示すように、摩擦板4は矩形状の平面を有し、ストッパ6は、摺動板3の摺動方向における摩擦板4の両側の辺に接するように、ライン状に配置される。
【0025】
図1(a)に示すように、ストッパ6は支持板2と摺動板3の間に設けられるが、ストッパ6の厚みは摩擦板4より小さく、ストッパ6と摺動板3の間には隙間が形成され、ストッパ6が摩擦板4と摺動板3の間の摩擦に干渉することはない。ストッパ6の厚さは、摩擦板4が摩耗して多少薄くなってもなおストッパ6の方が薄くなるように決定される。摩擦板4の摩耗量は概ね1mm未満なので、摩擦板4とストッパ6の厚さの差は1mm以上とすればよい。
【0026】
一方、ストッパ6が薄すぎると、摩擦ダンパ1の作動時に、摩擦板4とストッパ6の接触箇所の面圧が大きくなり、摩擦板4が破壊する可能性がある。そのため、ストッパ6の厚さは、上記の面圧も考慮し、薄くなりすぎないように適度な値(例えば摩擦板4の厚さの1/2以上)とされる。
【0027】
以上説明したように、本実施形態によれば、摩擦ダンパ1で使用する摩擦板4の変位をストッパ6により拘束し、摩擦板4を支持板2上に保持できる。係る方法によれば、摩擦板4と支持板2の摩擦によらずに摩擦板4を確実に保持でき、支持板2を彫り込んで凹部を形成する必要が無いので低コストであり、摩擦板4にビス孔を加工する必要も無いので摩擦ダンパ1の作動時に摩擦板4の破断が生じることもない。またストッパ6は摩擦板4よりも薄いので、ストッパ6が摩擦板4と摺動板3の間の摩擦に干渉することもない。ストッパ6の厚さは、摩擦板4が摩耗して多少薄くなってもなおストッパ6の方が薄くなるように決定される。
【0028】
さらに、本実施形態では、ストッパ6が支持板2に直接固定されるので、ストッパ6を支持板2に確実に固定し、ストッパ6により摩擦板4を確実に保持できる。
【0029】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限定されない。例えば上記の実施形態では、摺動板3の摺動方向における摩擦板4の変位をストッパ6により拘束しているが、
図2(a)に示すように、摩擦板4の全周を囲うようにストッパ6を配置することで、上記摺動方向と平面視で直交する摺動直交方向(
図2(a)の上下方向に対応する)においても摩擦板4の両側にストッパ6が接する構成とし、摺動直交方向における摩擦板4の変位も拘束することができる。
【0030】
また上記の実施形態では摩擦板4の辺の全長に亘ってストッパ6を配置しているが、
図2(b)、(c)に示すように、ストッパ6を摩擦板4の辺の一部に配置してもよく、
図2(d)に示すように、摩擦板4の四隅のそれぞれと接するように、L字状のストッパ6を4つ配置することも可能である。ただし、摩擦板4とストッパ6との接触面積が小さくなると、前記と同様、摩擦板4とストッパ6の接触箇所の面圧増大による摩擦板4の破壊の恐れが生じるので、摩擦板4とストッパ6(特に摩擦板4の摺動方向の両側のストッパ6)の接触面積は、上記の面圧も考慮して適度な値に保つ必要がある。
【0031】
また、
図3に示すように、摺動板3の摺動方向における摩擦板4’の両側に凸部41を設けるとともに、ストッパ6’には、上記凸部41と噛み合う凹部61を設けることで、摺動直交方向における摩擦板4’の変位を拘束することもできる。摩擦板4’に凸部41の代わりに凹部を設け、ストッパ6’には当該凹部と噛み合う凸部を設けることも可能である。
【0032】
また、摩擦板4、4’とストッパ6、6’の間には、加工組立上必要なクリアランス(例えば0.5mm程度)が設けられてもよい。一方、摩擦板4、4’の製作時に摩擦板4、4’をストッパ6、6’と一体成形することもでき、摩擦板4、4’に予めストッパ6、6’が固定されることで、ストッパ6、6’を支持板2に溶接等により固定することで摩擦板4、4’の取り付けが完了し、作業が容易になる。また、摺動板3の摺動方向におけるストッパ6、6’の幅をより小さくすることもできる。なお、摩擦板4、4’とストッパ6、6’の一体成形については、例えば型枠に樹脂材料を流し込んで固め、摩擦板4、4’を成形する際に、その型枠の側面にストッパ6、6’となる金属部材を仕込んでおけばよい。
【0033】
また、上記の実施形態では摩擦板4の保持機構をストッパ6のみとしているが、摩擦板4の保持機構がこれに限ることもない。以下、摩擦板4の保持機構が異なる例を第2の実施形態として説明する。第2の実施形態は、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、同様の構成については図等で同じ符号を付すなどして説明を省略する。
【0034】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態に係る摩擦ダンパ10を示す図である。
図4(a)は摺動板3の摺動方向に沿った摩擦ダンパ10の断面図であり、
図4(b)は摺動直交方向に沿った摩擦ダンパ10の断面図である。
図4(a)は
図4(b)の線B-Bの位置での断面を示したものであり、
図4(b)は
図4(a)の線A-Aの位置での断面を示したものである。
【0035】
図4(a)、(b)に示すように、摩擦ダンパ10は、外殻部20、支持板2、摺動板3、摩擦板4(4-1、4-2)、押圧部5、保持機構60等を有する。
【0036】
外殻部20は角筒状の部材であり、炭素鋼等の鋼材により形成されるが、これに限ることは無い。支持板2と摺動板3は、外殻部20内で、外殻部20の対向する一組の壁部21(21-1、21-2)と平行に配置される。一組の壁部21のうち一方の壁部21-1には孔22が設けられ、壁部21-1の内面の孔22に対応する位置にはナット23が固定される。孔22は、ナット23のネジ孔と連通する。
【0037】
支持板2は、外殻部20の内部において、摺動板3と上記の壁部21-1の間に配置される。摩擦板4(4-1、4-2)は、摺動板3の両面のそれぞれに配置される。一方の摩擦板4-1は、支持板2と摺動板3の間に配置され、厚さ方向の両側が支持板2と摺動板3のそれぞれに接する。他方の摩擦板4-2は、外殻部20の壁部21-2(前記した一組の壁部21のうち他方の壁部)と摺動板3の間に配置され、厚さ方向の両側が壁部21-2と摺動板3のそれぞれに接する。
【0038】
本実施形態では、摺動板3が長尺の平板状とされ、その一端は外殻部20から外側に突出する。摺動板3は、地震等の振動に応じて長手方向に進退し、この際、摺動板3が摩擦板4上を摺動する。摺動板3の摺動方向は、
図4(a)の左右方向、
図4(b)の紙面法線方向に対応する。
【0039】
本実施形態では、押圧部5から支持板2に押圧力を加えることで、摺動板3の両面の摩擦板4-1、4-2を摺動板3側に押さえ付けることができる。本実施形態の押圧部5はボルトであり、当該ボルトの軸部を外殻部20のナット23に螺合させることで、軸部の先端から支持板2に押圧力を加えることができる。なお、孔22をネジ孔としてボルトを螺合してもよく、この場合はナット23を省略できる。また支持板2に押圧力を加えるための構成が上記に限ることもない。
【0040】
図4(a)に示すように、摺動板3の摺動方向において、摩擦板4-1の両側にはストッパ6aが配置される。ストッパ6aは、
図1のストッパ6と同様の構成を有するが、支持板2に直接固定されない点で異なる。
【0041】
外殻部20の壁部21-1には拘束部6bが設けられる。拘束部6bは、外殻部20の内側に突出するように、壁部21-1の孔22の周囲の内面に固定される部材であり、板材62を角筒状に組み合わせた構成を有する。
【0042】
拘束部6bの対向する一組の板材62(
図4(a)の左右の板材62)は、上記摺動方向において、摩擦板4-1の両側のストッパ6aの外側に接するように配置される。これらの板材62の摺動板3側の端部は、ストッパ6aの厚さ方向の途中まで達し、当該端部と摺動板3の間には若干の隙間が形成される。
【0043】
本実施形態では、摺動板3の摺動方向におけるストッパ6aの変位が拘束部6bの上記した一組の板材62によって拘束されることで、結果として摩擦板4-1の上記摺動方向の変位が拘束される。本実施形態では、このストッパ6aと拘束部6bが、摩擦板4-1の保持機構60を構成する。
【0044】
また本実施形態では、外殻部20の壁部21-1を角筒状の拘束部6bによって内側から面外補剛することができるので、壁部21-1が受けるボルト反力に対し、壁部21-1を増厚したり外側から補剛したりする必要が無く、摩擦ダンパ10がコンパクトになる。しかしながら、拘束部6bがこれに限ることはなく、摺動板3の摺動方向におけるストッパ6aの変位を拘束できるものであればよい。
【0045】
摺動板3の摺動方向において、支持板2の寸法は摩擦板4-1の寸法に摩擦板4-1の両側のストッパ6aの寸法を足したものにほぼ等しく、ストッパ6aは支持板2、摺動板3、摩擦板4-1および拘束部6bに囲まれるので、ストッパ6aを支持板2に直接固定しなくても、ストッパ6aが大きくずれ動く心配は無い。
【0046】
またストッパ6aは摩擦板4-1よりも薄いので押圧部5からの押圧力が加わることはなく、ストッパ6aが摩擦板4-1と摺動板3の間の摩擦に干渉することはない。
【0047】
なお、摺動板3の摺動方向において、摩擦板4-2の両側には
図1と同様のストッパ6が配置される。このストッパ6は、外殻部20の壁部21-2(支持材)に溶接やビス等により直接固定される。
【0048】
本実施形態の摩擦ダンパ10では、押圧部5のボルトを強く締め込むと、外殻部20の壁部21-2が
図4(b)の破線aで示すように面外変形し、
図4(a)の拘束部6b等が摺動板3に対して浮き上がる可能性がある。仮にストッパ6aが存在せず、拘束部6bによって摩擦板4-1を保持する構成とすると、拘束部6bの浮き上がりによって
図5に示すように摩擦板4-1と拘束部6bの接触面積が小さくなり、摩擦ダンパの作動時に、摩擦板4-1と拘束部6bの接触箇所の面圧増大による摩擦板4-1の破壊の恐れが生じる。
【0049】
一方、本実施形態では、拘束部6bの浮き上がりが生じても、摩擦板4-1とストッパ6aの接触面積が変化しない(接触面積が小さくならない)ので、摩擦板4-1とストッパ6aの接触箇所の面圧は変化せず、当該面圧により摩擦板4-1が破壊することはない。なお、ストッパ6aの厚さや拘束部6bの下端の位置は、上記の面外変形が生じた際にも、ストッパ6aと拘束部6bとの掛かり代が残るように定められる。
【0050】
以上説明したように、第2の実施形態では、拘束部6bによりストッパ6aの位置を拘束することで摩擦板4-1を保持でき、摩擦ダンパ10で使用する摩擦板4-1について、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また本実施形態ではストッパ6aを支持板2に直接固定する必要が無く、さらに、摩擦ダンパ10の変形等により拘束部6bの摺動板3からの浮き上がりが生じても、ストッパ6aと摩擦板4-1の接触面積を一定に保つことができ、面圧増大による摩擦板4-1の破壊を防ぐことができる。
【0051】
なお、前記の
図2(a)~(d)で説明したストッパ6の構成は、いずれも、上記の摩擦ダンパ10において、ストッパ6aとして適用することが可能である。また
図3で説明した摩擦板4’とストッパ6’の構成も、上記の摩擦ダンパ10において、摩擦板4-1とストッパ6aとして適用することが可能である。
【0052】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0053】
1、10:摩擦ダンパ
2:支持板
3:摺動板
4、4'、4-1、4-2:摩擦板
5:押圧部
6、6'、6a:ストッパ
6b:拘束部
20:外殻部
60:保持機構
【手続補正書】
【提出日】2023-09-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動材が摩擦材上を摺動する際の摩擦により振動エネルギーを吸収する摩擦ダンパであって、
前記摩擦材は、厚さ方向の両側が板状の支持材と前記摺動材のそれぞれに接するように配置され、
前記摺動材の摺動方向における前記摩擦材の位置を保持するための保持機構を有し、
前記保持機構は、前記支持材と前記摺動材の間に設けられ、前記摩擦材の前記摺動方向の両側に接するように配置される、前記摩擦材より厚さの小さいストッパを含み、
前記ストッパが前記支持材とは別の部材であり、前記支持材に直接固定され、
前記摩擦材、および前記保持機構を内部に配置する、前記摺動方向を軸方向とした筒状の外殻部が設けられ、
前記支持材は、前記外殻部の壁部であることを特徴とする摩擦ダンパ。
【請求項2】
摺動材が摩擦材上を摺動する際の摩擦により振動エネルギーを吸収する摩擦ダンパであって、
前記摩擦材は、厚さ方向の両側が支持材と前記摺動材のそれぞれに接するように配置され、
前記摺動材の摺動方向における前記摩擦材の位置を保持するための保持機構を有し、
前記保持機構は、前記支持材と前記摺動材の間に設けられ、前記摩擦材の前記摺動方向の両側に接するように配置される、前記摩擦材より厚さの小さいストッパであって、前記支持材とは別に設けられるストッパを含み、
前記保持機構は、前記摺動材の摺動方向における前記ストッパの位置を拘束するための拘束部であって、前記支持材とは別に設けられる拘束部を有し、
前記摩擦材、前記支持材、および前記保持機構を内部に配置する、前記摺動方向を軸方向とした筒状の外殻部が設けられたことを特徴とする摩擦ダンパ。
【請求項3】
前記ストッパが、前記摺動方向と直交する摺動直交方向において、前記摩擦材の両側に接するように配置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の摩擦ダンパ。
【請求項4】
摺動材が摩擦材上を摺動する際の摩擦により振動エネルギーを吸収する摩擦ダンパであって、
前記摩擦材は、厚さ方向の両側が支持材と前記摺動材のそれぞれに接するように配置され、
前記摺動材の摺動方向における前記摩擦材の位置を保持するための保持機構を有し、
前記保持機構は、前記支持材と前記摺動材の間に設けられ、前記摩擦材の前記摺動方向の両側に接するように配置される、前記摩擦材より厚さの小さいストッパを含み、
前記摩擦材の前記摺動方向の両側に凸部または凹部が設けられ、
前記ストッパは、前記凸部または凹部と噛み合う形状を有することを特徴とする摩擦ダンパ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記の課題を解決するための第1の発明は、摺動材が摩擦材上を摺動する際の摩擦により振動エネルギーを吸収する摩擦ダンパであって、前記摩擦材は、厚さ方向の両側が板状の支持材と前記摺動材のそれぞれに接するように配置され、前記摺動材の摺動方向における前記摩擦材の位置を保持するための保持機構を有し、前記保持機構は、前記支持材と前記摺動材の間に設けられ、前記摩擦材の前記摺動方向の両側に接するように配置される、前記摩擦材より厚さの小さいストッパを含み、前記ストッパが前記支持材とは別の部材であり、前記支持材に直接固定され、前記摩擦材、および前記保持機構を内部に配置する、前記摺動方向を軸方向とした筒状の外殻部が設けられ、前記支持材は、前記外殻部の壁部であることを特徴とする摩擦ダンパである。
第2の発明は、摺動材が摩擦材上を摺動する際の摩擦により振動エネルギーを吸収する摩擦ダンパであって、前記摩擦材は、厚さ方向の両側が支持材と前記摺動材のそれぞれに接するように配置され、前記摺動材の摺動方向における前記摩擦材の位置を保持するための保持機構を有し、前記保持機構は、前記支持材と前記摺動材の間に設けられ、前記摩擦材の前記摺動方向の両側に接するように配置される、前記摩擦材より厚さの小さいストッパであって、前記支持材とは別に設けられるストッパを含み、前記保持機構は、前記摺動材の摺動方向における前記ストッパの位置を拘束するための拘束部であって、前記支持材とは別に設けられる拘束部を有し、前記摩擦材、前記支持材、および前記保持機構を内部に配置する、前記摺動方向を軸方向とした筒状の外殻部が設けられたことを特徴とする摩擦ダンパである。
第3の発明は、摺動材が摩擦材上を摺動する際の摩擦により振動エネルギーを吸収する摩擦ダンパであって、前記摩擦材は、厚さ方向の両側が支持材と前記摺動材のそれぞれに接するように配置され、前記摺動材の摺動方向における前記摩擦材の位置を保持するための保持機構を有し、前記保持機構は、前記支持材と前記摺動材の間に設けられ、前記摩擦材の前記摺動方向の両側に接するように配置される、前記摩擦材より厚さの小さいストッパを含み、前記摩擦材の前記摺動方向の両側に凸部または凹部が設けられ、前記ストッパは、前記凸部または凹部と噛み合う形状を有することを特徴とする摩擦ダンパである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
第1の発明では、前記ストッパが前記支持材に直接固定される。第2の発明では、前記保持機構が、前記摺動材の摺動方向における前記ストッパの位置を拘束するための拘束部を有する。
前者の場合、ストッパを支持材に確実に固定し、ストッパにより摩擦材を確実に保持できる。後者の場合、ストッパの位置を拘束することで摩擦材を保持でき、ストッパを支持材に直接固定する必要が無くなる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
前記ストッパが、前記摺動方向と直交する摺動直交方向において、前記摩擦材の両側に接するように配置されることが望ましい。また第3の発明では、前記摩擦材の前記摺動方向の両側に凸部または凹部が設けられ、前記ストッパは、前記凸部または凹部と噛み合う形状を有する。
これらの方法により、摩擦材の摺動直交方向の変位も拘束することができる。