(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158315
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20241031BHJP
B66C 13/23 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B66C23/88 Q
B66C13/23 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073430
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000148380
【氏名又は名称】株式会社前田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100199819
【弁理士】
【氏名又は名称】大行 尚哉
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】土屋 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 竜海
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204BA02
3F204CA05
3F204DB03
3F204DC01
3F204DD07
3F204FB03
3F204FC01
3F204FC03
3F204FD01
3F204FE03
3F205AA05
3F205AA07
3F205CA03
3F205CB02
3F205DA04
(57)【要約】
【課題】フックが巻過状態に陥ったことを確実に検出できるようにした移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置を提供すること。
【解決手段】ブーム式クレーン3の安全装置10は、フックブロック8が巻上限界(距離L1)を超えて巻き過ぎ状態になったことを検出する巻き過ぎ検出器30として、検出範囲が相互に異なる第1~第3超音波センサ31~33を備えている。これらの超音波センサ31~33を用いることで、ウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器20が動作不良になりフックブロック8が巻上限界に達したことを検出できなかった場合においても確実にフックブロック8の巻き過ぎ状態を検出して、巻上ワイヤーロープ7の破断等の弊害を未然に回避できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームのブームヘッドから吊り下げられているフックブロックが、巻上限界よりも上に巻き上げられた巻き過ぎ状態になったことを検出する巻き過ぎ検出器を備え、
前記巻き過ぎ検出器は、前記ブームヘッドに取り付けた第1超音波センサ、第2超音波センサおよび第3超音波センサを備えており、
前記第1超音波センサの検出範囲は、前記ブームが、第1ブーム角度範囲の起伏状態の場合に、前記フックブロックを検出可能な第1検出範囲に設定され、
前記第2超音波センサの検出範囲は、前記ブームが、第2ブーム角度範囲の起伏状態の場合に、前記フックブロックを検出可能な第2検出範囲に設定され、
前記第3超音波センサの検出範囲は、前記ブームが、第3ブーム角度範囲の起伏状態の場合に、前記フックブロックを検出可能な第3検出範囲に設定されている移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1ブーム角度範囲は、前記ブームのブーム角度が最小の場合を含む範囲であり、
前記第2ブーム角度範囲は、前記ブーム角度が最小から最大までの間の中間の角度の場合を含む範囲であり、
前記第3ブーム角度範囲は、前記ブーム角度が最大の場合を含む範囲である移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1ブーム角度範囲および前記第2ブーム角度範囲は、相互に一部重複する角度範囲を含んでおり、
前記第2ブーム角度範囲および前記第3ブーム角度範囲は、相互に一部重複する角度範囲を含んでいる巻上ワイヤーロープ破断防止装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記フックブロックに取り付けた検出板を備えており、
前記第1、第2および第3超音波センサのそれぞれは、前記検出板を検出することで、前記フックブロックの前記巻き過ぎ状態を検出する移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記フックブロックは、前記ブームのブーム角度に応じて、前記ブームヘッドの第1端面および第2端面のいずれかに当接したフック格納状態に設定可能であり、
前記フックブロックは、前記フック格納状態になると、前記ブーム角度に応じて、少なくとも、前記第1検出範囲および前記第3検出範囲のうちのいずれか一方の範囲に入るように設定されている巻上ワイヤーロープ破断防止装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記巻き過ぎ検出器の検出出力に基づき、前記フックブロックの状態を判別する巻き過ぎ制御部を備えており、
前記巻き過ぎ制御部は、
前記ブームが前記第1ブーム角度範囲の起伏状態において、前記第1超音波センサが前記フックブロックを検出した場合に前記巻き過ぎ状態であると判別し、
前記ブームが前記第2ブーム角度範囲の起伏状態において、前記第2超音波センサが前記フックブロックを検出した場合には前記巻き過ぎ状態であると判別し、
前記ブームが前記第3ブーム角度範囲の起伏状態において、前記第3超音波センサが前記フックブロックを検出した場合には前記巻き過ぎ状態であると判別する移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記第1、第2および第3超音波センサのそれぞれには、それぞれの不感帯領域を取り囲む筒状の第1カバー、第2カバーおよび第3カバーがそれぞれ取り付けられている移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれか一つの項において、更に、
前記ブームヘッドから吊り下げられているフックブロックが前記巻上限界まで巻き上げられたことを検出するウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器を備えている移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式クレーンに関し、更に詳しくは、クレーンブームのブームヘッドから吊り下げられているフックブロックが巻上限界を超えて巻き上げられた巻き過ぎ状態になったことを検出する移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式クレーンにおいては、ブーム先端からロープによって吊り下げたフックが巻上限界を超えて巻き上げられることを防止するための巻過防止装置が取り付けられる。巻過防止装置としては、巻き上げられるフックが、ブームヘッドから吊り下げたウエイト(錘)に当たり、当該ウエイトを押し上げたことを検出することで、フックが巻上限界まで巻き上げられたことを検出するウエイト吊り下げ式の装置が知られている。特許文献1(特開平8-259182号公報)においては、2組のウエイト吊り下げ式の検出器を配置し、一方の検出器で上昇するフックを検出するとフックの巻上速度を減速させ、更にフックが上昇して他方の検出器で検出されると、フック巻上動作を停止させるようにしている。特許文献2(特開2000-313589号公報)においては、ウエイト吊り下げ式の巻過防止スイッチを用いてフックの巻上を停止すると共に、停止前において、上昇するフックから停止位置までの距離を、超音波式の非接触型位置センサを用いたフック位置検出センサによって検出し、停止手前の位置からフックの巻上速度を減速させて、停止位置において停止させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-259182号公報
【特許文献2】特開2000-313589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ウエイト吊り下げ式の巻過防止装置では、ウエイトがブームヘッドからフックを吊り下げているロープ等に絡み、巻過状態になってもウエイトをフックが下側から押し上げた状態にならず、巻過防止装置が作動せず、フックがブームヘッドに当たった状態になるおそれがある。このような状態のまま、クレーン作業においてブームの伸操作をすると、巻上ワイヤーロープが破断し、フックと共に吊り荷が落下するなどの事故が発生してしまう。
【0005】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、フックが巻き過ぎ状態に陥ったことを確実に検出できる移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置を提供することにある。
また、本発明の目的は、ウエイト吊り下げ式の検出機構が動作不良になった場合でもフックが巻過状態に陥ったことを確実に検出できる移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置は、
ブームのブームヘッドから吊り下げられているフックブロックが、巻上限界よりも上に巻き上げられた巻き過ぎ状態になったことを検出する巻き過ぎ検出器を備え、
前記巻き過ぎ検出器は、前記ブームヘッドに取り付けた第1超音波センサ、第2超音波センサおよび第3超音波センサを備えており、
前記第1超音波センサの検出範囲は、前記ブームが、第1ブーム角度範囲の起伏状態の場合に、前記フックブロックを検出可能な第1検出範囲に設定され、
前記第2超音波センサの検出範囲は、前記ブームが、第2ブーム角度範囲の起伏状態の場合に、前記フックブロックを検出可能な第2検出範囲に設定され、
前記第3超音波センサの検出範囲は、前記ブームが、第3ブーム角度範囲の起伏状態の場合に、前記フックブロックを検出可能な第3検出範囲に設定されていることを特徴としている。
【0007】
移動式クレーンでは、ブームが起伏動作を行ってブーム角度が変わると、ブームヘッドから吊り下げられているフックブロックの巻上方向(鉛直方向)に対して、ブームヘッドに取り付けられている第1~第3超音波センサの検出範囲も変化する。単一の超音波センサを用いる場合、特に、指向性の高い超音波センサを用いる場合には、ブーム角度によって、フックブロックが検出範囲から外れて検出できないおそれがある。
【0008】
本発明では、ブーム角度が変化しても、フックブロックの巻上方向が3つの超音波センサのいずれかの検出範囲内に入るので、フックブロックが巻上限界を超えた巻き過ぎ状態になったことを確実に検出できる。また、第1~第3超音波センサの検出範囲を、隣接する超音波センサの間で一部重複するように設定することで、フックブロックが振れる状態においても確実にフックブロックを検出でき、巻き過ぎ状態の検出精度を高めることができる。さらに、第1~第3超音波センサによる検出範囲を適切に設定することで、これらの超音波センサの検出結果に基づき、フックブロックが巻き過ぎ状態になった場合と、フックブロックがブームヘッドに当接したフック格納状態にある場合を認識することができる。
【0009】
また、巻き過ぎ検出器として、フックブロックの巻上限界を検出するウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器を備えている場合には、当該ウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器が動作不良になりフックブロックが巻上限界に達したことを検出できなかった場合においても確実にフックブロックの巻き過ぎ状態を検出して、巻上ワイヤーロープの破断等の弊害の発生を未然に防止できる。
【0010】
さらに、本発明による第1~第3超音波センサを備えた巻き過ぎ検出器は、既存の移動式クレーンにおけるウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器を備えた巻過防止装置に付設して用いることができる。この場合にも、ウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器が動作不良になりフックブロックが巻上限界に達したことを検出できなかった場合でも確実にフックブロックの巻き過ぎ状態を検出できるので、巻上ワイヤーロープの破断等の弊害の発生を未然に防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置は、フックブロックが巻上限界を超えて巻き過ぎ状態になったことを検出する巻き過ぎ検出器として、検出範囲が相互に異なる第1~第3超音波センサから構成される超音波式の巻き過ぎ検出器を備えている。これらの超音波センサを用いることで、フックブロックの巻き過ぎ状態を確実に検出でき、巻上ワイヤーロープの破断、吊荷の落下などの弊害の発生を未然に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明を適用した移動式クレーンの巻上ワイヤーロープ破断防止装置の部分を示す説明図である。
【
図2】(A)はブームヘッドに組み込まれた超音波式の巻き過ぎ検出器を示す説明図であり、(B)はフックブロックの上端に取り付けた検出板を示す説明図であり、(C)は巻き過ぎ検出器を構成する超音波センサを示す説明図である。
【
図3】(A)はウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器による検出状態を示す説明図であり、(B)~(D)は、それぞれ、超音波式の巻き過ぎ検出器による検出状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本発明を適用した移動式クレーンの実施の形態を説明する。
図1は実施の形態に係る移動式クレーンの概略部分側面図であり、巻き過ぎ検出器が取り付けられている移動式クレーンの部分を示す。移動式クレーン1は、例えば、クローラ式の下部走行体2と、ブーム式クレーン3を架装した上部旋回体4で構成されており、作業現場内での自走による移動(走行)と、定格総荷重以内でのクレーン作業を行うことができる。ブーム式クレーン3は多段式のブーム5を備えており、ブーム5は伸縮動作および起伏動作を行う。ブーム5の最終段のブーム先端に取り付けたブームヘッド6からは、巻上ワイヤーロープ7によってフックブロック8が吊り下げられる。
【0014】
移動式クレーン1には、クレーン作業中等においてフックブロック8が巻上限界を超えて巻き上げられる巻き過ぎ状態に陥ることのないように、安全装置10が備わっている。安全装置10は、ブーム式クレーン3に取り付けたウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器20および超音波式の巻き過ぎ検出器30と、これらの検出信号に基づき巻き過ぎ判別および所定の動作制限等の制御を行う巻き過ぎ制御部40とを備えている。巻き過ぎ制御部40は、上部旋回体4に搭載されているコントローラによって実現される機能である。
【0015】
ウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器20は、一般的に用いられているウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器と同様な構成であり、ブームヘッド6の側面から吊り下げ用のロープ21によって吊り下げられたウエイト22と、ブームヘッド6の側面に取り付けたメカニカルスイッチ23とを備えている。ウエイト22は例えば円環状のものであり、フックブロック8を吊り下げている巻上ワイヤーロープ7に沿って上下方向への移動が自由である。ウエイト22は、ブームヘッド6の下端から所定の距離の位置にあり、フックブロック8が、その上端からブームヘッド6の下端までの距離が巻上限界を規定する距離となる位置まで巻き上げられると、ウエイト22がフックブロック8の上端部によって押し上げられ、メカニカルスイッチ23が例えばオンからオフに切り替わる。この切り替わり信号に基づき、巻き過ぎ制御部40は、フックブロック8が巻上限界に達したと判別し、警告音を発生すると共に、その後のウインチ巻上操作、ブーム伸長操作等を強制的に禁止する。
【0016】
図2(A)はブームヘッド6に組み込まれた超音波式の巻き過ぎ検出器30を示す説明図であり、
図2(B)はフックブロックの上端に取り付けた検出板を示す説明図であり、
図2(C)は巻き過ぎ検出器30を構成する超音波センサを示す説明図である。
【0017】
これらの図に示すように、超音波式の巻き過ぎ検出器30は、ブームヘッド6に取り付けた3個の超音波センサを備えている。これらの3個の超音波センサを、第1、第2および第3超音波センサ31、32、33として説明する。第1~第3超音波センサ31~33は、横方向から見た場合に、それらの検出方向が下向きで、相互に異なる方向となるように取り付けられている。本例では、フックブロック8の上端に取り付けた矩形輪郭のクッション板81に超音波検出用の検出板82が取り付けられており、この検出板82が第1~第3超音波センサ31~33によって検出される。フックブロック8が吊り下げられた状態において、検出板82は、フックブロック8の側面8aから、クッション板81よりも水平方向に張り出した形状をしている。
【0018】
第1~第3超音波センサ31~33は、所定の指向性を備えたセンサであり、図においては、これらの検出範囲である第1~第3検出範囲31a~33aをグレーの領域で示してある。これら第1~第3超音波センサ31~33の第1~第3検出範囲31a~33aは、巻上限界を超えた巻き過ぎ状態になったフックブロック8の検出板82を検出できるように設定されている。すなわち、フックブロック8の上端からブームヘッド6の下端までの距離が、巻上限界を規定する距離L1よりも短い距離(超音波センサ検出距離)以下になると、検出板82を検出できるように、第1~第3検出範囲31a~33aが設定されている。
【0019】
さらに詳しく説明すると、第1超音波センサ31の第1検出範囲31aは、ブーム5が第2ブーム角度範囲に一部重複する第1ブーム角度範囲(例えば、0°から40°)の起伏状態の場合に、巻上限界(距離L1の位置)を超えた高さ位置にあるフックブロック8の検出板82を検出できるように設定されている。第2超音波センサ32の第2検出範囲32aは、ブーム5が第1ブーム角度および第3ブーム角度範囲に一部重複する第2ブーム角度範囲(例えば、20°~60°)の起伏状態の場合に、巻上限界を超えた高さ位置に達したフックブロック8の検出板82を検出できるように設定されている。また、第3超音波センサ33の第3検出範囲33aは、ブーム5が、第2ブーム角度範囲に一部重複する第3ブーム角度範囲(例えば、40°~80°)の起伏状態の場合に、巻上限界を超えた高さ位置に達したフックブロック8の検出板82を検出できるように設定されている。
【0020】
ここで、本例の巻き過ぎ検出器30を構成する第1~第3超音波センサ31~33には、それぞれの不感帯エリアを取り囲む筒状の第1カバー34、第2カバー35および第3カバー36がそれぞれ取り付けられている。
図2(C)においては第1超音波センサ31の第1カバー34を切断した状態で示してある。この第1超音波センサ31の第1検出範囲31aにおいて、そのセンサ面31bから所定の距離の位置までの間は不感帯領域31cである。本例では、不感帯領域31cを含む検出範囲の部分を、前方に開口し後端が封鎖された筒状のカバー34によって取り囲んでいる。同様に、第2、第3超音波センサ32、33においても、カバー35、36がそれぞれ取り付けられている。これら第1~第3カバー34~36によって、第1~第3超音波センサ31~33のそれぞれのセンサ面が保護され、センサ面への異物付着を防止でき、また、センサ面を塞ぐなどの悪戯を防止できる。
【0021】
次に、安全装置10の巻き過ぎ制御部40(
図1参照)は、ウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器20および第1~第3超音波センサ31~33から構成される超音波式の巻き過ぎ検出器30の検出結果に基づき、フックブロック8の巻上状態を判別する。
図3を参照して、巻き過ぎ制御部40による判別動作を説明する。
図3(A)はウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器20による検出動作を示す説明図であり、
図3(B)~
図3(D)は超音波式の巻き過ぎ検出器30による検出動作を示す説明図である。
【0022】
クレーン作業等において、ブームヘッド6から吊り下げられているフックブロック8の巻上動作が行われる。
図3(A)に示すように、フックブロック8が巻上限界まで巻き上げられると、フックブロック8がウエイト22を押し上げ、メカニカルスイッチ23が切り替わる。巻き過ぎ制御部40は、ウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器20の検出信号に基づき、フックブロック8が、ブームヘッド6から距離L1の巻上限界に達したと判別し、必要な制御動作を行う。
【0023】
ウエイトあるいはウエイト吊り下げ用のロープが、他の部位に絡まり、巻き過ぎ検出器20が正常に動作せず、フックブロック8が巻上限界(距離L1の位置)に達しても、巻き過ぎ検出器20によって検出されないことがある。本例では、フックブロック8が巻上限界を超えた巻き過ぎ状態になると(距離L2又はL3又はL4以内の位置に達すると)、第1~第3超音波センサ31~33を備えた巻き過ぎ検出器30の検出信号から、フックブロック8の巻き過ぎ状態が検出される。
【0024】
図3(B)を参照して説明すると、ブーム5が第1ブーム角度範囲(例えば、0°~40°の範囲)の起伏状態において、フックブロック8が距離L2(<L1)の位置まで巻き上げられた状態では、第1超音波センサ31がフックブロック8の検出板82を検出する。第1超音波センサ31の検出結果に基づき、巻き過ぎ制御部40は、フックブロック8が巻き過ぎ状態に陥ったか否かを判別する。
図3(B)にはブーム角が0°(最小)の場合を示してある。
【0025】
図3(C)を参照して説明すると、ブーム5が第2ブーム角度範囲(例えば、20°~60°の範囲)の起伏状態において、フックブロック8が距離L3(<L1)の位置まで巻き上げられた状態では、第2超音波センサ32がフックブロック8の検出板82を検出する。第2超音波センサ32の検出結果に基づき、巻き過ぎ制御部40は、フックブロック8が巻き過ぎ状態に陥ったか否かを判別する。
図3(C)にはブーム角が40°(中間)の場合を示してある。
【0026】
図3(D)を参照して説明すると、ブーム5が第3ブーム角度範囲(例えば、40°~80°の範囲)の起伏状態において、フックブロック8が距離L4(<L1)の位置まで巻き上げられると、第3超音波センサ33がフックブロック8の検出板82を検出する。第3超音波センサ33の検出結果に基づき、巻き過ぎ制御部40は、フックブロック8が巻き過ぎ状態に陥ったか否かを判別する。
図3(D)にはブーム角が80°(最大)の場合を示してある。
【0027】
このように、本例の安全装置10は、ウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器20に加えて、第1~第3超音波センサ31~33を備えた超音波式の巻き過ぎ検出器30を備えている。ウエイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器20に動作不良が発生した場合でも、超音波式の巻き過ぎ検出器30によって、フックブロック8の巻き過ぎ状態を確実に検出でき、巻上ワイヤーロープの破断、吊荷の落下等の弊害を未然に回避できる。
【0028】
また、本例では、第1~第3超音波センサ31~33の検出範囲は、隣り合う超音波センサの間で一部重複するように設定されている。この結果、隣り合う2個の超音波センサが同時にフックブロック8(検出板82)を検出する場合がある。例えば、ブーム角度が25°近辺では、第1、第2超音波センサ31、32の双方によってフックブロック8が巻き過ぎ状態に陥ったことが検出される。クレーン作業において、フックブロック8が前後に振れることがあるが、そのような状態においても、いずれかの超音波センサによってフックブロック8が必ず検出される。よって、隣接する超音波センサの検出範囲を一部重複するように設定することで、フックブロック8の巻き過ぎ状態の検出精度を高めることができる。
【0029】
なお、本例では、3個の超音波センサ31~33を配置している。超音波センサの個数は、2個あるいは4個以上とすることも可能である。超音波センサの指向性(検出範囲)、ブーム角度の範囲等を考慮すると、実用上においては、本例のように、3個の超音波センサを用いることが適切である。
【0030】
また、本例において、第1、第2、第3超音波センサ31、32、33の出力を利用して、フックブロック8が格納状態にあることを確認できる機能を持たせることも可能である。
【0031】
例えば、
図2、
図3において想像線で示すように、フックブロック8はブーム角度により格納位置が変わる。本例では、
図2(A)において想像線8Aで示すように、ブーム角度が0°~30°程度までは、ブームヘッド6の下端面60(第1端面)に下側から当接したフック格納状態が形成され、ブーム角度がそれ以上の角度の場合には、想像線8Bで示すように、ブームヘッド6の傾斜端面61(第2端面)に当接したフック格納状態が形成される。
【0032】
フックブロック8を格納するときは、移動式クレーン1の操作盤(図示せず)などに配置されている格納ボタン(図示せず)が操作される。格納ボタンが操作されると、巻上ウインチの巻上力が弱くなり、格納ボタンを押しながら巻上操作を行うことでフックブロック8の巻き上げ動作が行われる。このように、フックブロック8がブームヘッド6に当たっても安全なように、格納ボタン操作時には巻上力が弱くなるように油圧制御される。このため、フックブロック8の格納時には巻過防止機能が働かないように設定される。
【0033】
フックブロック8がフック格納状態にある場合には、フック格納状態にあるフックブロック8の検出板82が、例えばブーム角度が0~30°の時は、第1超音波センサ31の検出範囲31a内に位置し、ブーム角度が30°~80°の時は第2超音波センサ32の検出範囲32a内および第3超音波センサ33の検出範囲33a内に位置する。これら第1~第3超音波センサ31~33による検出板82の検出状態に基づき、フックブロック8がフック格納状態にあることを確認できる。
【0034】
なお、公知のように、フック格納カムを使うと、ブーム角度に拘わらず、フックブロック8を同一位置、姿勢のフック格納状態にできる。ブームヘッド6の先端部に、格納カムが、その上端部が前後にスイング可能な状態に吊り下げられる。格納位置に向けて巻き上げられるフックブロックが格納カムの下端に当たると、フックブロックの巻上力によって、フックブロックが下側から押し付けられた格納カムが、その上端部を中心としてブーム側に旋回して、フックブロックは、予め設定された位置、姿勢のフック格納状態になる。この場合には、第1~第3超音波センサのうち、当該フック格納位置にあるフックブロック8(検出板82)を含む範囲を検出範囲とする超音波センサの出力状態に基づき、フック格納状態を確認できる。
【符号の説明】
【0035】
1 移動式クレーン
2 クローラ式の下部走行体
3 ブーム式クレーン
4 上部旋回体
5 ブーム
6 ブームヘッド
7 巻上ワイヤーロープ
8 フックブロック
8a 側面
8A、8B 想像線
10 安全装置
20 ウェイト吊り下げ式の巻き過ぎ検出器
21 ロープ
22 ウエイト
23 メカニカルスイッチ
30 超音波式の巻き過ぎ検出器
31 第1超音波センサ
31a 第1検出範囲
31b センサ面
31c 不感帯領域
32 第2超音波センサ
32a 第2検出範囲
33 第3超音波センサ
33a 第3検出範囲
34、35、36 カバー
40 巻き過ぎ制御部
60 下端面
61 傾斜端面
81 クッション板
82 検出板
L1 距離(巻上限界)
L2、L3、L4 距離(巻き過ぎ状態)