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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158317
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ロータ、およびモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20241031BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073432
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】羅 大殷
(72)【発明者】
【氏名】徐 豫偉
(72)【発明者】
【氏名】楊 ▲寛▼
(72)【発明者】
【氏名】施 佩均
(72)【発明者】
【氏名】顔 聖展
(72)【発明者】
【氏名】顔 國智
(72)【発明者】
【氏名】劉 承宗
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622CA02
5H622CA10
5H622CB05
5H622DD02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】出力トルクを向上できる構造を有するロータを備えるモータを提供する。
【解決手段】中心軸線Jを回転軸として回転可能なロータ10であって、軸方向に沿って延びるロータコア20と、ロータコア内に配置される複数の補助マグネット43と、を備える。ロータコアは、径方向に並ぶ複数の第1スリット31、32、33からならなるスリット群30と、軸方向から見てスリット群の径方向内側に配置される第2スリット50と、を有する。複数組のスリット群と複数の第2スリットとは、それぞれ周方向に並ぶ。第1スリットは、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状で周方向に沿って延びる。第2スリットは、径方向に沿って延びるマグネット収容部51と、マグネット収容部の径方向外側の端部から周方向一方側および他方側に延びる一対の外側フラックスバリア部52と、を有する。補助マグネットは、周方向を磁化方向としてマグネット収容部に配置される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を回転軸として回転可能なロータであって、
軸方向に沿って延びるロータコアと、
前記ロータコア内に配置される複数の補助マグネットと、を備え、
前記ロータコアは、
径方向に並ぶ複数の第1スリットからならなるスリット群と、
軸方向から見て前記スリット群の径方向内側に配置される第2スリットと、を有し、
複数組の前記スリット群と複数の第2スリットとは、それぞれ周方向に並び、
前記第1スリットは、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状で周方向に沿って延び、
前記第2スリットは、
径方向に沿って延びるマグネット収容部と、
前記マグネット収容部の径方向外側の端部から周方向一方側および他方側に延びる一対の外側フラックスバリア部と、を有し、
前記補助マグネットは、周方向を磁化方向として前記マグネット収容部に配置される、
ロータ。
【請求項2】
前記第2スリットは、前記マグネット収容部の径方向内側の端部から周方向一方側および他方側に延びる一対の内側フラックスバリア部を有する、
請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記中心軸線に沿って軸方向に延びるシャフトを備え、
前記ロータコアは、前記シャフトが通される中央孔を有し、
前記第2スリットは、径方向内側の端部で前記中央孔に繋がり、
前記シャフトの外周面の少なくとも一部、または前記中央孔の内周面の少なくとも一部は、常磁性体材料から構成される、
請求項1に記載のロータ。
【請求項4】
前記中心軸線を中心として軸方向に延びるシャフトを備え、
前記ロータコアは、前記シャフトが通される中央孔を有し、
前記第2スリットは、径方向内側の端部で前記中央孔に繋がり、
前記シャフトの外周面は、前記第2スリットの径方向内側の端部と対向し軸方向に延びる凹溝を有する、
請求項1に記載のロータ。
【請求項5】
前記第2スリットは、周方向に並びそれぞれ前記補助マグネットが収容される複数のマグネット収容部を有する、
請求項1に記載のロータ。
【請求項6】
前記外側フラックスバリア部は、周方向寸法が径方向寸法よりも大きい、
請求項1に記載のロータ。
【請求項7】
前記外側フラックスバリア部は、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状で周方向に沿って延びる、
請求項1に記載のロータ。
【請求項8】
前記補助マグネットは、希土類焼結磁石である、
請求項1に記載のロータ。
【請求項9】
前記ロータは、6組以上の前記スリット群を有する、
請求項1に記載のロータ。
【請求項10】
前記中心軸線を中心として軸方向に延びるシャフトを備え、
前記ロータコアは、前記シャフトが通される中央孔を有し、
前記第2スリットは、径方向内側の端部で前記中央孔に繋がり、
前記シャフトの外周面は、前記第2スリットの径方向内側の端部と対向し軸方向に延びる凹溝を有し、
前記第2スリットは、周方向に並びそれぞれ前記補助マグネットが収容される複数のマグネット収容部を有し、
前記外側フラックスバリア部は、周方向寸法が径方向寸法よりも大きく、
前記ロータは、6組以上の前記スリット群を有し、
前記ロータコア内に配置される複数の主マグネットを備え、
前記主マグネットは、それぞれの前記スリット群において少なくとも1つの前記第1スリット内に配置され径方向を磁化方向とする、
請求項1に記載のロータ。
【請求項11】
前記ロータコア内に配置される複数の導体を備え、
前記導体は、それぞれの前記スリット群において少なくとも1つの前記第1スリット内に配置される、
請求項1に記載のロータ。
【請求項12】
請求項1~11の何れか一項に記載のロータと、
前記ロータを径方向外側から囲むステータと、を備える、
モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、およびモータに関する。
【背景技術】
【0002】
リラクタンスモータのトルクを改善するために、フラックスバリア内に永久磁石が配置された回転電機が知られている。例えば、特許文献1には、フラックスバリア内に永久磁石を配置することに加えて、径方向外側に磁束総量のより大きな永久磁石を配置することで、トルクの改善を図った例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-272031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁束は、ロータコアの内部で最短のリラクタンス経路を通る。このため、インナーロータ型のモータにおいて、ロータを6極以上に多極化すると、ロータコア内の磁路は径方向外側の領域に偏って形成されやすくなる。このため、ロータコア内の径法内側の領域の利用率が低下しモータの出力トルクを十分に向上できない場合があった。特許文献1のロータにおいても、主に径方向外側の領域がトルク発生に寄与しており、フラックスバリアよりも内側の領域は有効に利用できていない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、モータの出力トルクを向上できる構造を有するロータ、およびそのようなロータを備えるモータを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロータの一つの態様は、中心軸線を回転軸として回転可能なロータであって、軸方向に沿って延びるロータコアと、前記ロータコア内に配置される複数の補助マグネットと、を備える。前記ロータコアは、径方向に並ぶ複数の第1スリットからなるスリット群と、軸方向から見て前記スリット群の径方向内側に配置される第2スリットと、を有する。複数組の前記スリット群と複数の第2スリットとは、それぞれ周方向に並ぶ。前記第1スリットは、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状で周方向に沿って延びる。前記第2スリットは、径方向に沿って延びるマグネット収容部と、前記マグネット収容部の径方向外側の端部から周方向一方側および他方側に延びる一対の外側フラックスバリア部と、を有する。前記補助マグネットは、周方向を磁化方向として前記マグネット収容部に配置される。
【0007】
本発明のモータの一つの態様は、上述のロータと、前記ロータを径方向外側から囲むステータと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、モータの出力トルクを向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態のモータの断面模式図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う一実施形態のロータの断面図である。
図3図3は、一実施形態の一部を示す部分断面図である。
図4図4は、モータ内での磁束の流れのシミュレーション結果を示す図である。
図5図5は、変形例1のロータの一部を示す部分断面図である。
図6図6は、変形例2のロータの一部を示す部分断面図である。
図7図7は、変形例3のロータの一部を示す部分断面図である。
図8図8は、変形例4のロータの一部を示す部分断面図である。
図9図9は、変形例5のロータの一部を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各図に適宜示すZ軸方向は、正の側を「上側」とし、負の側を「下側」とする上下方向である。各図に適宜示す中心軸線Jは、Z軸方向と平行であり、上下方向に延びる仮想線である。以下の説明においては、中心軸線Jの軸方向、すなわち上下方向と平行な方向を単に「軸方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0011】
なお、上下方向、上側、および下側とは、単に各部の配置関係等を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0012】
図1は、一実施形態のモータの断面模式図である。
本実施形態のモータ1は、インナーロータ型のモータである。また、本実施形態のモータ1は、永久磁石補助形シンクロナスリラクタンスモータ(PMa-SynRM)である。
【0013】
モータ1は、ハウジング2と、ロータ10と、ステータ3と、ベアリングホルダ4と、ベアリング5a,5bと、を備える。ハウジング2は、ロータ10、ステータ3、ベアリングホルダ4、およびベアリング5a,5bを内部に収容している。ハウジング2の底部は、ベアリング5bを保持している。ベアリングホルダ4は、ベアリング5aを保持している。ベアリング5a,5bは、例えば、ボールベアリングである。
【0014】
ステータ3は、ロータ10を径方向外側から囲む。ステータ3は、ステータコア3aと、インシュレータ3dと、複数のコイル3eと、を有する。ステータコア3aは、コアバック3bと、複数のティース3cと、を有する。コアバック3bは、中心軸線Jを中心とする円環状である。複数のティース3cは、コアバック3bから径方向内側に延びている。図示は省略するが、複数のティース3cは、周方向に沿って一周に亘って等間隔に配置されている。複数のコイル3eは、インシュレータ3dを介してステータコア3aに装着されている。
【0015】
図2は、図1のII-II線に沿うロータ10の断面図である。
ロータ10は、シャフト21と、ロータコア20と、ロータコア20内に配置される複数の主マグネット41、42および複数の補助マグネット43と、を備える。ロータ10は、中心軸線Jを回転軸として回転可能である。
【0016】
図1に示すように、シャフト21は、中心軸線Jに沿って軸方向に延びる。シャフト21は、中心軸線Jを中心とする円柱状である。シャフト21は、ベアリング5a,5bによって中心軸線J回りに回転可能に支持されている。シャフト21の材質は特に限定されないが、剛性および製造コストの観点から鉄系合金が採用される。
【0017】
ロータコア20は、磁性体材料から構成される。ロータコア20は、軸方向に沿って延びる。ロータコア20は、シャフト21の外周面に固定されている。ロータコア20は、ロータコア20を軸方向に貫通する中央孔20hを有する。図2に示すように、中央孔20hは、軸方向から見て、中心軸線Jを中心とする円形状である。中央孔20hには、シャフト21が通される。シャフト21は、例えば圧入等により、中央孔20h内に固定されている。図示は省略するが、ロータコア20は、例えば、複数の電磁鋼板が軸方向に積層されて構成されている。
【0018】
図2には、ロータ10のq軸Lqおよびd軸Ldを仮想的に図示する。d軸Ldの延びる方向(以下、d軸Ld方向)は、ロータ10の磁極の周方向の中心を通る径方向である。q軸Lqの延びる方向(以下、q軸Lq方向)は周方向で隣り合う磁極同士の間における周方向中心を通る径方向である。ロータ10は、q軸Lq方向およびd軸Ld方向において磁気的な異方性を有する。
【0019】
ロータコア20は、複数の第1スリット31、32、33と、複数の第2スリット50と、を有する。それぞれの第1スリット31、32、22および第2スリット50は、ロータコア20を軸方向に貫通する。
【0020】
複数の第1スリット31、32、33には、径方向に沿って並ぶ3種類のスリットが含まれる。以下の説明で、3種類の第1スリット31、32、33を区別する場合、最も径方向内側に位置する1つを最内スリット31と呼び、最も径方向外側に位置する1つを最外スリット33と呼び、最内スリット31と最外スリット33との間に位置する1つを中間スリット32と呼ぶ。最内スリット31、中間スリット32、および最外スリット33は、径方向内側から径方向外側に向かってこの順で並ぶ。
【0021】
1個の最内スリット31と、1個の中間スリット32と、1個の最外スリット33とは、1組のスリット群30を構成する。すなわち、ロータコア20は、径方向に並ぶ複数の第1スリット31、32、33からなるスリット群30を有する。ロータコア20は、周方向に沿って等間隔に配置される複数のスリット群30を有する。すなわち、各スリット群30において、複数の第1スリット31、32,33は、q軸Lq上に配置される。各スリット群30において、複数の第1スリット31、32、33は、q軸Lqに対して線対称形状を有する。
【0022】
本実施形態のロータコア20は、周方向に並ぶ8組のスリット群30を有する。しかしながら、スリット群30の組数は、偶数であれば本実施形態に限定されない。また、本実施形態では、スリット群30に3つの第1スリット31、32、33が含まれる場合について説明したが、スリット群30に含まれる第1スリットの数は複数であれば本実施形態に限定されない。
【0023】
図3は、ロータ10の一部を示す部分断面図である。
図3に示すように、第1スリット31、32、33は、それぞれ、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状で周方向に沿って延びる。最外スリット33は、軸方向から見て径方向内側に凸となる略三角形状である。中間スリット32は、最外スリット33の径方向内側に離れて位置する。中間スリット32の周方向の両端部は、それぞれ最外スリット33の周方向両側に位置する。最内スリット31は、中間スリット32の径方向内側に離れて位置する。最内スリット31の両端部は、それぞれ中間スリット32の周方向両側に位置する。本実施形態において最外スリット33と中間スリット32と最内スリット31とは、径方向に略等間隔に並んで配置されている。本実施形態において最外スリット33の全体と、中間スリット32の周方向両端部と、最内スリット31の周方向両端部とは、ロータコア20の径方向外縁部に位置する。最外スリット33の全体と、中間スリット32の周方向両端部と最内スリット31の周方向両端部とは、例えば、ロータコア20の外周面から僅かに径方向内側に離れて位置する。
【0024】
最内スリット31は、主マグネット収容部31aと、一対のフラックスバリア部31bと、を有する。主マグネット収容部31aは、軸方向から見て径方向と直交する方向を長手方向とする矩形状である。主マグネット収容部31aには、後述する主マグネット41が収容される。一対のフラックスバリア部31bは、それぞれ主マグネット収容部31aの周方向の両端部に繋がる。一対のフラックスバリア部31bのうち周方向一方側に位置する一方は、周方向一方側に向かうに従い径方向外側に向かう方向に延びる。また、一対のフラックスバリア部31bのうち周方向他方側に位置する他方は、周方向他方側に向かうに従い径方向外側に向かう方向に延びる。一対のフラックスバリア部31bは、軸方向から見て、それぞれ径方向内側を凸とする円弧形状を有する。1つの最内スリット31の一対のフラックスバリア部31bの円弧中心同士は、互いに一致する。本実施形態において、フラックスバリア部31bの円弧中心は、最内スリット31の径方向外側であってq軸Lq(図2参照)上に位置する。
【0025】
同様に、中間スリット32は、主マグネット収容部32aと、一対のフラックスバリア部32bと、を有する。主マグネット収容部32aは、軸方向から見て径方向と直交する方向を長手方向とする矩形状である。中間スリット32の主マグネット収容部32aは、最内スリット31の主マグネット収容部31aと略同形状である。主マグネット収容部32aには、後述する主マグネット42が収容される。一対のフラックスバリア部32bは、それぞれ主マグネット収容部32aの周方向の両端部に繋がる。一対のフラックスバリア部32bのうち周方向一方側に位置する一方は、周方向一方側に向かうに従い径方向外側に向かう方向に延びる。また、一対のフラックスバリア部32bのうち周方向他方側に位置する他方は、周方向他方側に向かうに従い径方向外側に向かう方向に延びる。一対のフラックスバリア部32bは、軸方向から見て、それぞれ径方向内側を凸とする円弧形状を有する。1つの中間スリット32の一対のフラックスバリア部32bの円弧中心同士は、互いに一致する。本実施形態において、フラックスバリア部32bの円弧中心は、中間スリット32の径方向外側であってq軸Lq(図2参照)上に位置する。また、中間スリット32の一対のフラックスバリア部32bの円弧中心は、その径方向内側に配置される最内スリット31の一対のフラックスバリア部31bの円弧中心と一致する。
【0026】
図2に示すように、複数の第2スリット50は、周方向に並ぶ。第2スリット50は、軸方向から見てスリット群30の径方向内側に配置される。複数の第2スリット50は、互いに異なるスリット群30の径方向内側に位置する。第2スリット50の個数は、スリット群の組数と一致する。本実施形態のロータコア20には、8個の第2スリット50が設けられる。すなわち、複数組のスリット群30と複数の第2スリット50とは、それぞれ周方向に並ぶ。複数の第2スリット50は、周方向において等間隔に配置される。第2スリット50は、q軸Lq上に配置される。第2スリット50は、q軸Lqに対して線対称形状を有する。
【0027】
図3に示すように、第2スリット50は、マグネット収容部51と、一対の外側フラックスバリア部52と、一対の内側フラックスバリア部53と、を有する。マグネット収容部51は、軸方向から見て径方向を長手方向とする矩形状である。すなわち、マグネット収容部51は、径方向に沿って延びる。マグネット収容部51には、後述する補助マグネット43が収容される。
【0028】
一対の外側フラックスバリア部52は、マグネット収容部51の径方向外側の端部に繋がる。外側フラックスバリア部52は、マグネット収容部51の径方向外側の端部から周方向一方側および他方側にそれぞれ延びる。本実施形態の外側フラックスバリア部52は、q軸Lq(図2参照)と直交する方向に直線状に延びる。一対の外側フラックスバリア部52同士の間には、第1突起部28が設けられる。一対の外側フラックスバリア部52は、第1突起部28によって区画される。第1突起部28は、第2スリット50の内側面のうち径方向内側を向く面から径方向内側に突出する。第1突起部28の先端は、補助マグネット43に接触する。これにより、第1突起部28は、補助マグネット43の径方向外側への移動を制限する。なお、補助マグネット43が、ロータコア20に接着固定される場合、第1突起部28は省略される。この場合、一対の外側フラックスバリア部52同士は、互いに繋がる(図7等)。
【0029】
一対の内側フラックスバリア部53は、マグネット収容部51の径方向内側の端部に繋がる。内側フラックスバリア部53は、マグネット収容部51の径方向内側の端部から周方向一方側および他方側にそれぞれ延びる。一対の内側フラックスバリア部53同士の間には、第2突起部27が設けられる。一対の内側フラックスバリア部53は、第2突起部27によって区画される。第2突起部27は、第2スリット50の内側面のうち径方向外側を向く面から径方向外側に突出する。第2突起部27の先端は、補助マグネット43に接触する。これにより、第2突起部27は、補助マグネット43の径方向内側への移動を制限する。なお、補助マグネット43が、ロータコア20に接着固定される場合、第2突起部27は省略される。この場合、一対の内側フラックスバリア部53同士は、互いに繋がる。
【0030】
複数の主マグネット41、42は、第1主マグネット41と第2主マグネット42とを含む。本実施形態のロータは、8個の第1主マグネット41と8個の第2主マグネット42とを有する。主マグネット41、42としては、例えば、フェライト磁石が採用される。
【0031】
本実施形態の第1主マグネット41と第2主マグネット42とは、互いに同形状である。第1主マグネット41および第2主マグネット42は、軸方向に沿って延びる角柱形状である。第1主マグネット41および第2主マグネット42は、軸方向から見て径方向と直交する方向を長手方向とする矩形状である。
【0032】
なお、第1主マグネット41と第2主マグネット42とは、互いに異なる形状であってもよい。一例として、第1主マグネット41の周方向に沿う長さ寸法を第2主マグネット42の周方向に沿う長さ寸法よりも大きくしてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、スリット群30を構成する3個の第1スリット31、32、33のうち、2個の第1スリット31、32にのみ主マグネット41、42を配置する場合について説明した。しかしながら、全ての第1スリット31、32、33に主マグネットが配置されていてもよく、また、何れか一つの第1スリット31、32、33のみに主マグネットが配置されていてもよい。すなわち、主マグネットは、それぞれのスリット群30において少なくとも1つの第1スリット内に配置されていればよい。
【0034】
第1主マグネット41は、最内スリット31の主マグネット収容部31aに配置される。第2主マグネット42は、中間スリット32の主マグネット収容部32aに配置される。したがって、第1主マグネット41と第2主マグネット42とは、径方向に並んで配置される。第1主マグネット41および第2主マグネット42は、q軸Lq上に配置される。第1主マグネット41は、第2主マグネット42の径方向内側に配置される。本実施形態の第1主マグネット41は、主マグネット収容部31aの軸方向の略全体に亘って設けられている。同様に、第2主マグネット42は、主マグネット収容部32aの軸方向の略全体に亘って設けられている。
【0035】
図2には、主マグネット41、42および補助マグネット43の磁化方向を矢印で示す。図2に示すように、第1主マグネット41および第2主マグネット42は、径方向を磁化方向とする。同組のスリット群30に収容される第1主マグネット41の磁化方向と第2主マグネット42の磁化方向とは、互いに一致する。すなわち、径方向に並んで配置される第1主マグネット41および第2主マグネット42のN極は、両方とも径方向外側を向くか、両方とも径方向内側を向く。
【0036】
周方向に隣り合うスリット群30に配置される主マグネット41、42の磁化方向は、互いに径方向に反転している。したがって、N極を径方向外側に向ける第1主マグネット41とN極を径方向内側に向ける第1主マグネット41とは、周方向に沿って交互に配置される。同様に、N極を径方向外側に向ける第2主マグネット42とN極を径方向内側に向ける第2主マグネット42とは、周方向に沿って交互に配置される。
【0037】
図3に示すように、第1主マグネット41の径方向外側を向く面は、主マグネット収容部31aの径方向内側を向く面と対向し好ましくは接触する。第1主マグネット41の径方向内側を向く面は、主マグネット収容部31aの径方向外側を向く面と対向し好ましくは接触する。第1主マグネット41の周方向の両端面のうち径方向外側の領域は、主マグネット収容部31aとフラックスバリア部31bとの境界部分に設けられる段差面31cに接触する。これにより、第1主マグネット41は、最内スリット31の内部で周方向に位置決めされる。また、第1主マグネット41の周方向の両端面のうち径方向外側の領域は、フラックスバリア部31b内に露出する。フラックスバリア部31bは、空隙部である。フラックスバリア部31bは、第1主マグネット41の周方向の端面からの磁束の漏れ出しを抑制する。
【0038】
第2主マグネット42の径方向外側を向く面は、主マグネット収容部32aの径方向内側を向く面と対向し好ましくは接触する。第2主マグネット42の径方向内側を向く面は、主マグネット収容部32aの径方向外側を向く面と対向し好ましくは接触する。第2主マグネット42の周方向の両端面のうち径方向外側の領域は、主マグネット収容部32aとフラックスバリア部32bとの境界部分に設けられる段差面32cに接触する。これにより、第2主マグネット42は、中間スリット32の内部で周方向に位置決めされる。また、第2主マグネット42の周方向の両端面のうち径方向外側の領域は、フラックスバリア部32b内に露出する。フラックスバリア部32bは、空隙部である。フラックスバリア部32bは、第2主マグネット42の周方向の端面からの磁束の漏れ出しを抑制する。
【0039】
補助マグネット43は、軸方向に沿って延びる角柱形状である。補助マグネット43は、軸方向から見て径方向を長手方向とする矩形状である。補助マグネット43は、第2スリット50のマグネット収容部51に配置される。補助マグネット43は、q軸Lq上に配置される。本実施形態の補助マグネット43は、マグネット収容部51の軸方向の略全体に亘って設けられている。
【0040】
図2に示すように、補助マグネット43は、周方向を磁化方向とする。周方向に隣り合う第2スリット50に配置される補助マグネット43の磁化方向は、互いに径方向に反転している。したがって、N極を周方向一方側に向ける補助マグネット43とN極を周方向他方側に向ける補助マグネット43とは、周方向に沿って交互に配置される。
【0041】
図3に示すように、補助マグネット43の周方向一方側を向く面は、マグネット収容部51の周方向他方側を向く面と対向し好ましくは接触する。補助マグネット43の周方向他方側を向く面は、マグネット収容部51の周方向一方側を向く面と対向し好ましくは接触する。補助マグネット43の径方向外側を向く面の周方向の中央部は、第1突起部28に接触する。補助マグネット43の径方向内側を向く面の周方向の中央部は、第2突起部27に接触する。これにより、補助マグネット43は、第2スリット50の内部で径方向に位置決めされる。
【0042】
補助マグネット43の径方向外側を向く面の周方向両端部は、それぞれ外側フラックスバリア部52に露出する。同様に、補助マグネット43の径方向内側を向く面の周方向両端部は、それぞれ内側フラックスバリア部53に露出する。外側フラックスバリア部52および内側フラックスバリア部53は、それぞれ補助マグネット43の径方向内外の端面からの磁束の漏れ出しを抑制する。
【0043】
図4は、本実施形態と同様の構成を有するモータ1における磁束の流れのシミュレーション結果を示す図である。
【0044】
一般的に、ロータ10の極数が大きくなると隣り合う磁極同士の距離が近くなり、これに伴い磁極間に構成される磁路がロータコア20の径方向外側の領域に集中しやすくなる。これに対し、本実施形態によれば、スリット群30の径方向内側に補助マグネット43を設けることで、ロータコア20の径方向内側の領域内に磁束が誘導され、ロータコア20の径方向内外の各領域における磁束密度を均一に近づけることができる。磁束密度をロータコア20内の径方向内外の領域で均一に分布させることで、d軸Ld方向の磁束密度をさらに高めることができ、モータ1の出力トルクを高めることができる。また、本実施形態のロータ10によれば、d軸Ld方向の磁束密度が高まることで、d軸Ld方向とq軸Lq方向との位置が判別し易くなり、ロータ10の回転制御が容易となる。
【0045】
このような効果は、6極以上に多極化したロータ10において、より顕著に得られる効果である。すなわち、本実施形態に示すように、ロータ10は、6組以上のスリット群30を有する場合に、多極化に伴うロータコア20内の磁路の集中を抑制しつつ、ロータ10の多極化のメリットを得ることができる。なお、ロータ10を多極化することのメリットとしては、ロータ10の回転時の振動することができ、静音性に優れ高効率のモータ1を得ることができる点などが主に挙げられる。
【0046】
さらに、本実施形態のロータ10は、補助マグネット43の径方向外側の端面から周方向両側に延びる外側フラックスバリア部52を有する。外側フラックスバリア部52は、スリット群30の径方向外側でスリット群30の第1スリット31に沿って周方向に延びる。このため、外側フラックスバリア部52は、スリット群30と補助マグネット43との間でd軸Ld方向に向かう磁束の流れを整えることができる。これにより、d軸Ld方向の磁束密度をさらに高めることができ、モータ1の出力トルクを高めることができる。また、外側フラックスバリア部52は、補助マグネット43の径方向外側で、補助マグネット43の磁束が短絡することを抑制する。本実施形態のロータ10によれば、補助マグネット43を通りd軸Ld方向に導かれる磁路を増加させてロータ10のトルクを好適に高めることができる。
【0047】
図3に示すように、本実施形態の外側フラックスバリア部52は、周方向寸法w1が径方向寸法d1よりも大きい(w1>d1)。外側フラックスバリア部52の周方向寸法w1を長く確保することで、スリット群30と外側フラックスバリア部52との間の周方向に広い領域で磁束をd軸Ld方向に導くことができ、磁束をd軸Ld方向に集中させやすくできる。一方で、外側フラックスバリア部52の径方向寸法d1を小さくすることで、スリット群30と外側フラックスバリア部52との間の領域を径方向に広く確保して、磁束をd軸Ld方向に導きやすくすることができる。本実施形態によれば、外側フラックスバリア部52の周方向寸法w1を大きく、径方向寸法d1を小さくすることで、磁束をd軸Ld方向に効果的に集中させることができる。
【0048】
本実施形態のロータ10は、補助マグネット43の径方向内側の端面から周方向両側に延びる内側フラックスバリア部53を有する。内側フラックスバリア部53は、補助マグネット43の径方向内側で、補助マグネット43の磁束が短絡することを抑制する。本実施形態のロータ10によれば、補助マグネット43を通りd軸方向dに導かれる磁路を増加させてロータ10のトルクを好適に高めることができる。
【0049】
本実施形態の内側フラックスバリア部53は、周方向寸法w2と径方向寸法d2とが略等しい。本実施形態のロータコア20によれば、内側フラックスバリア部53に起因して、補助マグネット43の径方向内側の端部の近傍でロータコア20の剛性が低下することを抑制できる。本実施形態の外側フラックスバリア部52の周方向寸法w1は、内側フラックスバリア部53の周方向寸法w2よりも大きい(w1>w2)。本実施形態によれば、補助マグネット43の径方向内側でロータコア20の剛性を確保しつつ、補助マグネット43の径方向外側でd軸Ld方向に向かう磁束の流れを円滑にすることができる。
【0050】
本実施形態において、補助マグネット43は、ネオジム磁石などの希土類焼結磁石であることが好ましい。磁束の流れのシミュレーション結果を図4に示したが、この例において、シミュレーションの対象となっているロータの補助マグネットはネオジム磁石であり、主マグネットはフェライト磁石である。ネオジム磁石としては、例えばNd-Fe-Bで表される組成を有するものが採用される。補助マグネット43として希土類焼結磁石を採用することで、補助マグネット43の磁力を高めモータ1の出力トルクをさらに向上できる。しかしながら、補助マグネット43は、フェライト磁石などの他の磁石であってもよい。補助マグネット43としてフェライト磁石を採用する場合、モータ1の出力トルク向上は限定的となるが、モータ1の製造コストを抑えることができる。さらに、出力トルク向上と製造コストとのバランスを加味して、補助マグネット43としてジスプロシウム(Dy)を含むネオジム磁石やサマリウムコバルト磁石(SmCo磁石)等の他の希土類磁石、或いは更に他の種類の磁石を選択してもよい。
【0051】
<変形例>
上述の実施形態のモータ1に採用可能な変形例のロータ10について説明する。以下に説明する各変形例の説明において、既に説明した実施形態又は変形例と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
(変形例1)
図5は、変形例1のロータ110の一部を示す部分断面図である。本変形例のロータ110は、上述の実施形態と比較して、1つの第2スリット150に複数の補助マグネット143が配置される点が異なる。
【0053】
上述の実施形態と同様に、ロータ110は、シャフト21と、ロータコア120と、複数の主マグネット41、42と、複数の補助マグネット143と、を備える。また、ロータコア120は、複数組のスリット群30と、複数の第2スリット150と、を有する。本変形例の第2スリット150は、複数のマグネット収容部151と、一対の外側フラックスバリア部152と、一対の内側フラックスバリア部153と、を有する。
【0054】
本変形例において1個の第2スリット150には、2個のマグネット収容部151が設けられる。複数のマグネット収容部151は、周方向に並ぶ。それぞれのマグネット収容部151は、径方向に沿って延びる。周方向に並ぶマグネット収容部151同士の間には、マグネット収容部151同士を区画する壁部120wが設けられる。壁部120wは、径方向に沿って延びる。複数のマグネット収容部151には、それぞれ補助マグネット143が収容される。したがって、本変形例の1個の第2スリット150には、2個の補助マグネット143が配置される。1個の第2スリット150に配置される複数の補助マグネット143の磁化方向は、互いに一致する。すなわち、1つの第2スリット150に収容される複数の補助マグネット143のN極は、両方とも周方向一方側を向くか、両方とも周方向他方側を向く。
【0055】
一対の外側フラックスバリア部152は、それぞれ異なるマグネット収容部151から周方向一方側および他方側に延びる。同様に、一対の内側フラックスバリア部153は、それぞれ異なるマグネット収容部151から周方向一方側および他方側に延びる。
【0056】
本変形例の第2スリット150は、周方向に並びそれぞれ補助マグネット143が収容される複数のマグネット収容部151を有する。本変形例によれば、第2スリット150内に配置される補助マグネット143の磁力を高めることができ、スリット群30の径方向内側で好適に磁束をd軸Ld方向に集中させることができる。また、本変形例の1つの第2スリット150に配置される複数の補助マグネット143は、補助マグネット143同士の間に配置される壁部120wに接触する。このため、補助マグネット143同士の間で磁束を周方向に沿って円滑に流すことができ、ロータコア120の径方向内側の領域に磁束を分布させる効果を高めることができる。
【0057】
(変形例2)
図6は、変形例2のロータ210の一部を示す部分断面図である。本変形例のロータ210は、上述の実施形態と比較して、外側フラックスバリア部252の形状が異なる。
【0058】
上述の実施形態と同様に、ロータ210は、シャフト21と、ロータコア220と、複数の主マグネット41、42と、複数の補助マグネット43と、を備える。また、ロータコア220は、複数組のスリット群30と、複数の第2スリット250と、を有する。第2スリット250は、マグネット収容部51と、一対の外側フラックスバリア部252と、一対の内側フラックスバリア部53と、を有する。マグネット収容部51には、補助マグネット43が収容される。
【0059】
一対の外側フラックスバリア部252は、マグネット収容部51の径方向外側の端部に繋がる。外側フラックスバリア部252は、マグネット収容部51の径方向外側の端部から周方向一方側および他方側にそれぞれ延びる。外側フラックスバリア部252は、軸方向から見て、それぞれ径方向内側を凸とする円弧形状を有する。1つの第2スリット250の一対の外側フラックスバリア部252の円弧中心同士は、互いに一致する。外側フラックスバリア部252の円弧中心は、第2スリット250の径方向外側に位置する。
【0060】
本変形例の外側フラックスバリア部252は、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状で周方向に沿って延びる。したがって、本変形例の外側フラックスバリア部252は、周方向においてマグネット収容部51から離れるに従い径方向外側に延びる。本変形例によれば、スリット群30と外側フラックスバリア部252との間の領域で磁束をd軸Ld方向に向けて好適に導くことが可能となり、d軸Ld方向の磁束密度を高めることができる。
【0061】
(変形例3)
図7は、変形例3のロータ310の一部を示す部分断面図である。本変形例のロータ310は、上述の実施形態と比較して、内側フラックスバリアとして機能する構成が異なる。
【0062】
上述の実施形態と同様に、ロータ310は、シャフト321と、ロータコア320と、複数の主マグネット41、42と、複数の補助マグネット43と、を備える。また、ロータコア320は、複数組のスリット群30と、複数の第2スリット350と、を有する。第2スリット350は、マグネット収容部351と、一対の外側フラックスバリア部352と、を有する。
【0063】
本変形例において、シャフト321は、アルミニウム合金などの常磁性体材料から構成される。或いは、シャフト321として、鉄系合金製の部材の外周面の少なくとも一部あるいは全部がアルミニウム合金などの常磁性体材料で覆われた構成のものを採用することもできる。更には、シャフト321は鉄系合金製とし、ロータ310の中央孔320hの内周面の少なくとも一部あるいは全部を、アルミニウム合金などの常磁性体材料で覆っても良い。シャフト321の少なくとも一部を鉄系材料製とすることで、シャフトの剛性あるいは強度を高めることができる。また、マグネット収容部351は、一定の幅寸法で径方向に沿って延びて第2スリット350の径方向内側に位置する中央孔320hに開口する。マグネット収容部351の開口は、シャフト321の外周面321aによって覆われる。なお、シャフト321の表面の一部、或いは、中央孔320hの内周面の一部をアルミニウム合金などの常磁性体材料で覆う場合、第2スリット350の径方向内側が中央孔320hに開口する部分を覆うことが、特に好ましい。また、第2スリット350の径方向内側の領域の一部または全部を、鋳造などの方法により、当該常磁性体材料で満たした構成としても良い。マグネット収容部351には、補助マグネット43が収容される。マグネット収容部351の周方向一方側および他方側を向く内側面と補助マグネット43との間には接着層9が配置される。接着層9は、補助マグネット43をマグネット収容部351の内側面に接着固定する。一対の外側フラックスバリア部352は、マグネット収容部351の径方向外側の端部に繋がる。本変形例において、本変形例の補助マグネット43は、マグネット収容部351の内側面に接着固定されるため一対の外側フラックスバリア部352の間に突起部は設けられていない。このため、本変形例の一対の外側フラックスバリア部352同士は、互いに繋がっている。
【0064】
本変形例のロータ310において、第2スリット350は、径方向内側の端部で中央孔320hに繋がる。補助マグネット43の径方向内側を向く面は、マグネット収容部351の開口を介してシャフト321の外周面321aと対向する。本変形例において、シャフト321が中央孔320hの内周面に接触する部位は、少なくとも一部において常磁性体材料が介在するため、シャフト321の内部には磁路が形成されにくい。本変形例によれば、シャフト321の内部を通って補助マグネット43の径方向内側の端面から磁束が漏れ出して短絡することを抑制できる。本変形例によれば、補助マグネット43をマグネット収容部351の径方向内側の開口から挿入する製造工程を採用できる。また、本変形例によれば、第2スリット350に内側フラックスバリア部が設けられていないため、補助マグネット43をシャフト321の外周面321aに近づけて配置できる。これにより、ロータ310全体の径方向の小型化が可能となり、ひいてはモータ1の小型化に繋がる。
【0065】
(変形例4)
図8は、変形例4のロータ410の一部を示す部分断面図である。本変形例のロータ410は、上述の実施形態と比較して、内側フラックスバリアとして機能する構成が異なる。
【0066】
上述の実施形態と同様に、ロータ410は、シャフト421と、ロータコア420と、複数の主マグネット41、42と、複数の補助マグネット43と、を備える。また、ロータコア420は、複数組のスリット群30と、複数の第2スリット350と、を有する。第2スリット350は、マグネット収容部351と、一対の外側フラックスバリア部352と、を有する。
【0067】
変形例3と同様に、マグネット収容部351は、一定の幅寸法で径方向に沿って延びて第2スリット350の径方向内側に位置する中央孔420hに開口する。マグネット収容部351には、補助マグネット43が収容され接着層9を介して接着固定される。
本変形例のシャフト421の材質は特に限定されないが、剛性および製造コストの観点から鉄系合金が採用される。シャフト421の外周面421aは、凹溝421gを有する。凹溝421gは、第2スリット350の径方向内側の端部と対向し軸方向に延びる。したがって、第2スリット350と凹溝421gとは、互いに繋がる。
【0068】
本変形例のロータ410において、第2スリット350は、径方向内側の端部でシャフト421の外周面421aに設けられる凹溝421gに連通する。本変形例によれば、シャフト421の内部にフラックスバリア部が配置された構成となり、シャフト421の内部を通って補助マグネット43の径方向内側の端面から磁束が漏れ出して短絡することを抑制できる。本変形例によれば、シャフト421を構成する材料として、常磁性体材料を選択する必要がなく、鉄系合金などの低コストの材料を選択できる。また、本変形例によれば、第2スリット350に内側フラックスバリア部が設けられていないため、補助マグネット43をシャフト421の外周面421aに近づけて配置できる。これにより、ロータ410全体の径方向の小型化が可能となり、ひいてはモータ1の小型化に繋がる。
【0069】
(変形例5)
図9は、変形例5のロータ510の一部を示す部分断面図である。本変形例のロータ510は、上述の実施形態と比較して、第1スリット531、532、533に、導体541、542、543を配置する点が異なる。
【0070】
上述の実施形態と同様に、ロータ510は、シャフト21と、ロータコア520と、複数の導体541、542、543と、複数の補助マグネット43と、を備える。また、ロータコア520は、複数組のスリット群530と、複数の第2スリット50と、を有する。スリット群530には、径方向に並ぶ3個の第1スリット531、532、533が含まれる。上述の実施形態と同様に、3個の第1スリット531、532、533をそれぞれ、最内スリット531、中間スリット532、最外スリット533と呼ぶ。
【0071】
第1スリット531、532、533は、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状で周方向に沿って延びる。最外スリット533は、軸方向から見て、径方向内側に凸となる略三角形状である。最内スリット531および中間スリット532は、軸方向から見て、径方向内側を凸とする円弧形状を有する。第1スリット531、532、533には、それぞれ導体541、542、543が配置される。すなわち、複数の導体541、542、543は、ロータコア520内に配置される。複数の導体541、542、543はそれぞれのスリット群530において少なくとも1つの第1スリット531、532、533内に配置されていればよい。
【0072】
シンクロナスリラクタンスモータのスリット群530内に導体541、542、543が配置された場合、回転する磁界の中に導体が配置されることになる。このため、ステータ3により発生した磁界が回転した際に、電磁誘導により導体541、542、543に誘導電流が流れ、誘導電流のローレンツ力によりロータ510に回転力を発生させることが可能となる。特に、静止したロータ510の回転を開始する時にローレンツ力によるトルクを得ることができるため、モータ1の起動時に許容できる慣性負荷を向上させることができる。このように、起動時の特性を向上させたシンクロナスリラクタンスモータは、特にDOL SynRM(Direct-On-Line Synchronous Reluctance Motor)とも呼ばれる。すなわち、本変形例によれば、起動時の特性を向上させたモータ1を提供できる。なお、上述の各変形例においても、スリット群30の内部に導体541、532、543を配置する構成を採用してもよい。
【0073】
以上に、本発明の実施形態およびその変形例を説明したが、実施形態およびその変形例における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態およびその変形例によって限定されることはない。
【0074】
本発明が適用されるモータの用途は、特に限定されない。モータは、例えば、車両に搭載されてもよいし、車両以外の機器に搭載されてもよい。また、上述の実施形態およびその変形例におけるスリット群の各構成、例えば第1スリットの形状および数等は一例であり、所望の性能に応じて適宜変更できる。
【0075】
なお、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1) 中心軸線を回転軸として回転可能なロータであって、軸方向に沿って延びるロータコアと、前記ロータコア内に配置される複数の補助マグネットと、を備え、前記ロータコアは、径方向に並ぶ複数の第1スリットからならなるスリット群と、軸方向から見て前記スリット群の径方向内側に配置される第2スリットと、を有し、複数組の前記スリット群と複数の第2スリットとは、それぞれ周方向に並び、前記第1スリットは、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状で周方向に沿って延び、前記第2スリットは、径方向に沿って延びるマグネット収容部と、前記マグネット収容部の径方向外側の端部から周方向一方側および他方側に延びる一対の外側フラックスバリア部と、を有し、前記補助マグネットは、周方向を磁化方向として前記マグネット収容部に配置される、ロータ。
(2) 前記第2スリットは、前記マグネット収容部の径方向内側の端部から周方向一方側および他方側に延びる一対の内側フラックスバリア部を有する、(1)に記載のロータ。
(3) 前記中心軸線に沿って軸方向に延びるシャフトを備え、前記ロータコアは、前記シャフトが通される中央孔を有し、前記第2スリットは、径方向内側の端部で前記中央孔に繋がり、前記シャフトの外周面の少なくとも一部、または前記中央孔の内周面の少なくとも一部は、常磁性体材料から構成される、(1)に記載のロータ。
(4) 前記中心軸線を中心として軸方向に延びるシャフトを備え、前記ロータコアは、前記シャフトが通される中央孔を有し、前記第2スリットは、径方向内側の端部で前記中央孔に繋がり、前記シャフトの外周面は、前記第2スリットの径方向内側の端部と対向し軸方向に延びる凹溝を有する、(1)に記載のロータ。
(5) 前記第2スリットは、周方向に並びそれぞれ前記補助マグネットが収容される複数のマグネット収容部を有する、(1)~(4)の何れか一項に記載のロータ。
(6) 前記外側フラックスバリア部は、周方向寸法が径方向寸法よりも大きい、(1)~(5)の何れか一項に記載のロータ。
(7) 前記外側フラックスバリア部は、軸方向から見て径方向内側に凸となる形状で周方向に沿って延びる、(1)~(6)の何れか一項に記載のロータ。
(8) 前記補助マグネットは、希土類焼結磁石である、(1)~(7)の何れか一項に記載のロータ。
(9) 前記ロータは、6組以上の前記スリット群を有する、(1)~(8)の何れか一項に記載のロータ。
(10) 前記ロータコア内に配置される複数の主マグネットを備え、前記主マグネットは、それぞれの前記スリット群において少なくとも1つの前記第1スリット内に配置され径方向を磁化方向とする、(1)~(9)の何れか一項に記載のロータ。
(11) 前記ロータコア内に配置される複数の導体を備え、前記導体は、それぞれの前記スリット群において少なくとも1つの前記第1スリット内に配置される、(1)~(10)の何れか一項に記載のロータ。
(12) (1)~(11)の何れか一項に記載のロータと、前記ロータを径方向外側から囲むステータと、を備える、モータ。
【符号の説明】
【0076】
1…モータ、3…ステータ、10,110,210,310,410,510…ロータ、20,120,220,320,420,520…ロータコア、20h,320h,420h…中央孔、21,321,421…シャフト、30,530…スリット群、31,32,33,531,532,533…第1スリット、41,42…主マグネット、43,143…補助マグネット、50,150,250,350…第2スリット、51,151,351…マグネット収容部、52,152,252,352…外側フラックスバリア部、53,153…内側フラックスバリア部、321a,421a…外周面、421g…凹溝、541…導体、J…中心軸線、d1,d2…径方向寸法、w1,w2…周方向寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9