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特開2024-158320水中音響材の被取り付け面への取り付け構造および水中音響材
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  • 特開-水中音響材の被取り付け面への取り付け構造および水中音響材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158320
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】水中音響材の被取り付け面への取り付け構造および水中音響材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
G10K11/16 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073436
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】竹本 周平
(72)【発明者】
【氏名】中川 美薫
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061AA04
5D061AA06
5D061BB31
5D061DD01
(57)【要約】
【課題】被取り付け面の曲面の曲率半径Rが小さい場合であっても、簡単に取り付けることができ作業性の向上を図る上で有利な水中音響材の被取り付け面への取り付け構造および水中音響材を提供する。
【解決手段】水中音響材14の取り付け面16に、開口部3002と一対の溝面3004と底部3006とを備える複数の溝部30を形成した。そして、水中音響材14は、取り付け面16が水中構造体10の凸状の曲面で形成された被取り付け面12に重ね合わされることにより曲面に追従して変形し、この変形により複数の溝部30の一対の溝面3004が互いに隙間なく密着し開口部3002が閉塞されるようにした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料からなり均一の厚さの矩形板状を呈し、その厚さ方向の両面のうちの一方の面である取り付け面が、水中構造体の凸状の曲面で形成された被取り付け面に重ね合わされて取り付けられる水中音響材の被取り付け面への取り付け構造であって、
前記取り付け面に、前記取り付け面の4辺のうち互いに対向する1組の2辺に平行し前記4辺のうち互いに対向する残りの1組の2辺間の全長にわたって延在する溝部が互いに間隔をおいて複数形成され、
前記溝部は、前記取り付け面に開口する開口部と、前記開口部に接続され互いに対向する一対の溝面と、前記一対の溝面の前記開口部と反対側の端部が接続される底部とを備え、
前記溝部は、前記一対の溝面が前記開口部から前記底部に至るにつれて前記一対の溝面間の間隔が次第に小さくなるくさび状を呈し、
前記水中音響材は、前記取り付け面が前記被取り付け面に重ね合わされることにより前記曲面に追従して変形し、この変形により前記複数の溝部の前記一対の溝面が互いに隙間なく密着して前記開口部が閉塞され、
この状態で前記水中音響材が前記被取り付け面に取り付けられている、
ことを特徴とする水中音響材の被取り付け面への取り付け構造。
【請求項2】
前記水中音響材の前記被取り付け面への取り付けは、前記水中音響材の厚さ方向に貫通され前記被取り付け面に結合する複数の締結部材を介してなされている、
ことを特徴とする請求項1記載の水中音響材の被取り付け面への取り付け構造。
【請求項3】
前記被取り付け面を形成する曲面は均一の曲率半径Rの円筒面で形成され、
前記被取り付け面に取り付けられた前記水中音響材の前記被取り付け面と反対側の面の曲率半径を曲率半径R′とし、
前記溝部の延在方向と直交する方向の前記水中音響材の寸法を幅Wとし、
前記水中音響材の厚さを厚さTとし、
前記溝部の前記開口部の幅を幅wとし、
前記複数の溝部の前記開口部の前記幅wの総和である全体開口部の寸法L1が以下の式(1)で示される、
ことを特徴とする請求項1記載の水中音響材の被取り付け面への取り付け構造。
L1=aWT/R…(1)
(ただし、0.6≦a≦0.9)
【請求項4】
前記溝部の深さを深さtとしたとき、前記深さtは以下の式(3)を満たす、
ことを特徴とする請求項3記載の水中音響材の被取り付け面への取り付け構造。
(1/4)T≦t≦(3/4)T…(3)
【請求項5】
前記被取り付け面に形成される前記溝部の本数をn本としたとき、前記本数nは以下の式(4)を満たす、
ことを特徴とする請求項3記載の水中音響材の被取り付け面への取り付け構造。
(1/100)W≦n≦(1/10)W…(4)
【請求項6】
前記開口部の前記幅wは、以下の式(5)を満たす、
ことを特徴とする請求項3記載の水中音響材の被取り付け面への取り付け構造。
(1/20)T≦w≦(1/2)T…(5)
【請求項7】
弾性材料からなり均一の厚さの矩形板状を呈し、その厚さ方向の両面のうちの一方の面である取り付け面が、水中構造体の凸状の曲面で形成された被取り付け面に重ね合わされて取り付けられる水中音響材であって、
前記取り付け面に、前記取り付け面の4辺のうち互いに対向する1組の2辺に平行し前記4辺のうち互いに対向する残りの1組の2辺間の全長にわたって延在する溝部が互いに間隔をおいて複数形成され、
前記溝部は、前記取り付け面に開口する開口部と、前記開口部に接続され互いに対向する一対の溝面と、前記一対の溝面の前記開口部と反対側の端部が接続される底部とを備え、
前記溝部は、前記一対の溝面が前記開口部から前記底部に至るにつれて前記一対の溝面間の間隔が次第に小さくなるくさび状を呈し、
前記水中音響材は、前記取り付け面が前記被取り付け面に重ね合わされることにより前記曲面に追従して変形し、この変形により前記複数の溝部の前記一対の溝面が互いに隙間なく密着し前記開口部が閉塞される、
ことを特徴とする水中音響材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中音響材の被取り付け面への取り付け構造および水中音響材に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の船体などの水中構造体に取り付けることで、遮音、吸音、あるいは、振動抑制を図る水中音響材が提供されている(特許文献1参照)。
このような水中音響材として、弾性材料からなり均一の厚さの矩形板状を呈するものがあり、水中音響材は、その厚さ方向の両面のうちの一方の面である取り付け面が、水中構造体の被取り付け面に重ね合わされて取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-227702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被取り付け面が凸状の曲面で形成されている場合、水中音響材は、弾性材料で形成されているため、水中音響材の矩形面が曲面に追従して変形する。
しかしながら、被取り付け面の曲率半径Rが小さくなるほど、水中音響材が曲面に追従して変形しにくくなることから、水中音響材の取り付け作業が難しくなる問題がある。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、被取り付け面の曲面の曲率半径Rが小さい場合であっても、簡単に取り付けることができ作業性の向上を図る上で有利な水中音響材の被取り付け面への取り付け構造および水中音響材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明の一実施の形態は、弾性材料からなり均一の厚さの矩形板状を呈し、その厚さ方向の両面のうちの一方の面である取り付け面が、水中構造体の凸状の曲面で形成された被取り付け面に重ね合わされて取り付けられる水中音響材の被取り付け面への取り付け構造であって、前記取り付け面に、前記取り付け面の4辺のうち互いに対向する1組の2辺に平行し前記4辺のうち互いに対向する残りの1組の2辺間の全長にわたって延在する溝部が互いに間隔をおいて複数形成され、記溝部は、前記取り付け面に開口する開口部と、前記開口部に接続され互いに対向する一対の溝面と、前記一対の溝面の前記開口部と反対側の端部が接続される底部とを備え、前記溝部は、前記一対の溝面が前記開口部から前記底部に至るにつれて前記一対の溝面間の間隔が次第に小さくなるくさび状を呈し、前記水中音響材は、前記取り付け面が前記被取り付け面に重ね合わされることにより前記曲面に追従して変形し、この変形により前記複数の溝部の前記一対の溝面が互いに隙間なく密着して前記開口部が閉塞され、この状態で前記水中音響材が前記被取り付け面に取り付けられていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態は、弾性材料からなり均一の厚さの矩形板状を呈し、その厚さ方向の両面のうちの一方の面である取り付け面が、水中構造体の凸状の曲面で形成された被取り付け面に重ね合わされて取り付けられる水中音響材であって、前記取り付け面に、前記取り付け面の4辺のうち互いに対向する1組の2辺に平行し前記4辺のうち互いに対向する残りの1組の2辺間の全長にわたって延在する溝部が互いに間隔をおいて複数形成され、前記溝部は、前記取り付け面に開口する開口部と、前記開口部に接続され互いに対向する一対の溝面と、前記一対の溝面の前記開口部と反対側の端部が接続される底部とを備え、前記溝部は、前記一対の溝面が前記開口部から前記底部に至るにつれて前記一対の溝面間の間隔が次第に小さくなるくさび状を呈し、前記水中音響材は、前記取り付け面が前記被取り付け面に重ね合わされることにより前記曲面に追従して変形し、この変形により前記複数の溝部の前記一対の溝面が互いに隙間なく密着し前記開口部が閉塞されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態の水中音響材の被取り付け面への取り付け構造および水中音響材によれば、被取り付け面の凸状の曲面の曲率半径Rが小さい場合であっても水中音響材が被取り付け面の曲面に追従して確実に変形することから、水中音響材の水中構造物の被取り付け面への取り付け作業が容易となり、作業性の向上を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る水中音響材を取り付け面側から見た平面図である。
図2図1を矢印A方向から見た側面図である。
図3】実施の形態に係る水中音響材を被取り付け面に取り付けた状態を示す側面図である。
図4】(A)は水中音響材の各部の寸法を示す側面図、(B)は被取り付け面に取り付けられた水中音響材の各部の寸法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に図面を参照して本実施の形態に係る水中音響材の被取り付け面への取り付け構造および水中音響材について説明する。
図3に示すように、水中音響材14が取り付けられる船体などの水中構造体10の被取り付け面12は、凸状の曲面で形成され、本実施の形態では、曲面は均一の曲率半径Rの円筒面で形成されている。
【0009】
図1図2に示すように、水中音響材14は、弾性材料からなり均一の厚さの矩形板状を呈している。
弾性材料としては、ゴムやウレタンなど従来公知のさまざまな弾性材料が使用可能である。
水中音響材14は、厚さ方向の平坦な両面16、18と、両面16、18の互いに対向する4辺をそれぞれ接続する4つの平坦な端面20、22、24、26とを有している。
水中音響材14の厚さ方向の両面16、18のうちの一方の面は、水中構造体10の被取り付け面12に重ね合わされて取り付けられる取り付け面16とされる。
本実施の形態では、水中音響材14は、取り付け面16の1組の2辺を円筒面の軸心方向に沿わせ、取り付け面16の残りの1組の2辺を円筒面の周方向に沿わせて被取り付け面12に取り付けられる。
なお、図1において、符号28は水中音響材14の四隅において厚さ方向に貫通する取り付け孔28を示す。
【0010】
図1図2に示すように、取り付け面16に、取り付け面16の4辺のうち互いに対向する1組の2辺に平行し4辺のうち互いに対向する残りの1組の2辺間の全長にわたって延在する溝部30が互いに間隔をおいて複数形成されている。
本実施の形態では、複数の溝部30は同形同大で1組の2辺が対向する方向において等間隔で設けられている。
溝部30の延在方向の両端は、互いに対向する2つの端面20、22において開放されている。
溝部30は、取り付け面16に開口する開口部3002と、開口部3002に接続され互いに対向する一対の溝面3004と、一対の溝面3004の開口部3002と反対側の端部が接続される底部3006とを備えている。
溝部30は、一対の溝面3004が開口部3002から底部3006に至るにつれて一対の溝面3004間の間隔が次第に小さくなるくさび状を呈している。
【0011】
図3に示すように、水中音響材14は、取り付け面16が、水中構造体10の凸状の曲面で形成された被取り付け面12に重ね合わされて取り付けられる。
水中音響材14の被取り付け面12への取り付けは、不図示の締結部材が各取り付け孔28を貫通して被取り付け面12の例えば雌ねじに結合することでなされる。
言い換えると、水中音響材14の被取り付け面12への取り付けは、水中音響材14の厚さ方向に貫通され被取り付け面12に結合する複数の締結部材を介してなされ、複数の締結部材は、取り付け面16の四隅に配置されている。
なお、締結部材として、ボルトなど従来公知のさまざまな部材が使用可能である。
また、水中音響材14の被取り付け面12への取り付けに際して締結部材以外の従来公知のさまざまな取付構造を採用することが可能である。
【0012】
図3に示すように、水中音響材14は、取り付け面16が被取り付け面12に重ね合わされることにより被取り付け面12の曲面に追従して変形し、この変形により複数の溝部30の一対の溝面3004が互いに隙間なく密着して開口部3002が閉塞され、この状態で水中音響材14が被取り付け面12に取り付けられている。
【0013】
本実施の形態によれば、水中音響材14の取り付け面16に、開口部3002と一対の溝面3004と底部3006とを備える複数の溝部30を形成した。そして、水中音響材14は、取り付け面16が水中構造体10の凸状の曲面で形成された被取り付け面12に重ね合わされることにより曲面に追従して変形し、この変形により複数の溝部30の一対の溝面3004が互いに隙間なく密着し開口部3002が閉塞されるようにした。
したがって、被取り付け面12の凸状の曲面の曲率半径Rが小さい場合であっても水中音響材14が被取り付け面12の曲面に追従して確実に変形することから、水中音響材14の水中構造物の被取り付け面12への取り付け作業が容易となり、作業性の向上を図る上で有利となる。
また、水中音響材14が被取り付け面12の曲面に追従して確実に変形することから、水中音響材14の取り付け面16と水中構造物の被取り付け面12との間に隙間が生じないことは無論のこと、溝部30の一対の溝面3004が互いに隙間なく密着し開口部3002が閉塞されるため、溝部30に隙間が生じずそれら隙間に水が侵入することがなく、水中音響材14の音響性能を十分に発揮させる上で有利となる。
【0014】
また、本実施の形態によれば、曲面は、均一の曲率半径の円筒面であり、水中音響材14は、取り付け面16の1組の2辺を円筒面の軸心方向に沿わせ、取り付け面16の残りの1組の2辺を円筒面の周方向に沿わせて被取り付け面12に取り付けられ、複数の溝部30は同形同大で1組の2辺が対向する方向において等間隔で設けられている。
したがって、水中音響材14の取り付け面16を円筒面からなる被取り付け面12に取り付けた際に、複数の溝部30の一対の溝面3004が互いに隙間なく密着しやすくなることから、水中音響材14を被取り付け面12に追従して確実に変形させる上でより有利となり、水中音響材14の水中構造物の被取り付け面12への取り付け作業がより容易となり、作業性の向上を図る上でより有利となる。
また、複数の溝部30の一対の溝面3004が互いに隙間なく密着しやすくなることから、溝部30の隙間を抑制する上でより有利となり、水中音響材14の音響性能を十分に発揮させる上でより有利となる。
【0015】
また、本実施の形態によれば、水中音響材14の被取り付け面12への取り付けは、水中音響材14の厚さ方向に貫通され被取り付け面12に結合する複数の締結部材を介してなされているため、水中音響材14の被取り付け面12への取り付けを簡単に確実に行なう上で有利となる。
また、複数の締結部材は、取り付け面16の四隅に配置されているので、矩形板状の水中音響材14を被取り付け面12に安定して確実に取り付ける上で有利となる。
【0016】
なお、本実施の形態では、被取り付け面12を形成する曲面が均一の曲率半径の円筒面である場合について説明したが、本発明は被取り付け面12を形成する曲面が円筒面以外の曲面であっても無論適用可能である。
例えば、曲面が円錐面の場合、円錐面の軸心方向に沿って溝部30の開口部3002の幅や深さや溝部30間の間隔を増減させればよい。また、曲面の曲率半径Rが場所によって変わっているような場合、曲面の曲率半径Rの変化に応じて溝部30の開口部3002の幅や深さや溝部30間の間隔を変化させればよい。また、曲面が球面状などの場合には、複数の溝部30を格子状に交差するように配置させるなど任意である。
要するに、水中音響材14は、取り付け面16が被取り付け面12に重ね合わされることにより曲面に追従して変形し、この変形により複数の溝部30の一対の溝面3004が互いに隙間なく密着して開口部3002が閉塞され、この状態で水中音響材14が被取り付け面12に取り付けられればよい。
【0017】
次に、水中音響材14の設計例について具体的な数値を挙げて説明する。
図4(A)に示す溝部30の深さt、溝部30の開口部3002の幅w、溝部30の本数nについて検討する。
まず、複数の溝部30の開口部3002の幅wの総和である理論上の全体開口部の寸法Lを算出する。
ここで、図4(A)、(B)に示すように各部の寸法を以下のように規定する。
なお、以下の設計例においても実施の形態と同様に被取り付け面12を形成する曲面は均一の曲率半径Rの円筒面で形成されているものとする。
R:被取り付け面12の曲率半径である目標曲率半径
R′:被取り付け面12に取り付けられた水中音響材14の被取り付け面12と反対側の面18の曲率半径
W:水中音響材14の幅
T:水中音響材14の厚さ
なお、水中音響材14の幅Wは、溝部30の延在方向と直交する方向の寸法とする。
【0018】
ここで、「被取り付け面12の円弧の長さ(W-L)/目標曲率半径R」で示される比と、「水中音響材14の被取り付け面12と反対側の面18の円弧の長さW/面18の曲率半径R′」で示される比とは同一の値となる。これは、中心角が同一であれば、円弧の長さは半径に比例することによる。
すなわち、(W-L)/R=W/R′となる。
ここで、R′=R+Tであるため、上記の式は、
(W-L)/R=W/(R+T)となる。
これをLについて解くと、
L=WT/(R+T)となる。
ここで、R≫Tとすると、
L=WT/R…(1)
すなわち、上記式(1)によって理論上の全体開口部の寸法Lが算出される。
【0019】
しかしながら、理論上の全体開口部の寸法Lでは、水中音響材14が被取り付け面12に取り付けられた状態で、溝部30の溝面3004同士が単に接触することになる。
上述したように、本発明では、水中音響材14を被取り付け面12に取り付けることで溝部30の溝面3004同士が押圧されて密着した状態が必要であり、溝面3004同士を確実に押圧させることでシール性が向上し、溝部30に水が侵入することを抑制し水中音響材14の音響性能を確保することが必要である。
このような観点から理論上の全体開口部の寸法Lをより小さい寸法に設定することで、溝部30の溝面3004同士をより確実に押圧させ密着させることが好ましい。
そこで、以下のように係数a(a<1)を設定し、係数aを式(1)の理論上の全体開口部の寸法Lに乗じることで実際の全体開口部の寸法L1を以下の式(2)のように算出する。
L1=aWT/R…(2)
係数aは、水中音響材14に用いる弾性材料の弾性や水中音響材14の大きさにもよるが、0.6≦a≦0.9が好ましい。
係数aが0.6に満たないと、溝部30の開口部3002の幅wが狭くなることから水中音響材14が目標曲率半径Rに追従して変形しやすくなる効果が低下し、係数aが0.9を超えると、溝部30の開口部3002の幅wが広くなることから溝部30の溝面3004同士をより確実に押圧させ密着させる効果が低下する。
【0020】
次に、図4(A)に示す水中音響材14の溝部30の深さtの寸法を以下のように規定する。
溝部30の深さtは、水中音響材14の強度と変形しやすさとを考慮して設定する。
すなわち、溝部30の深さtが大きすぎると、水中音響材14が目標曲率半径Rに追従して変形しやすいが、溝部30での強度が低下する。
一方、溝部30の深さtが小さすぎると、溝部30での強度が確保できるが、水中音響材14が目標曲率半径Rに追従して変形しにくくなる。
したがって、溝部30の深さtを以下の式(3)で規定される範囲で設定することにより水中音響材14の強度と変形しやすさとの双方が確保される。
(1/4)T≦t≦(3/4)T…(3)
すなわち、溝部30の深さtが(1/4)Tに満たないと、水中音響材14が目標曲率半径Rに追従して変形しやすくなる効果が低下し、溝部30の深さtが(3/4)Tを超えると、溝部30が位置する水中音響材14の部分の強度を確保する効果が低下する。
【0021】
次に、図4(A)に示す水中音響材14の溝部30の開口部3002の幅w、溝部30の本数nを以下のように規定する。
溝部30の開口部3002の幅wを狭くするほど、かつ、溝部30の本数nを多くするほど、水中音響材14が目標曲率半径Rに追従して変形しやすくなるが、水中音響材14に溝部30を形成する加工性の点で幅wと本数nにはそれぞれ制約がある。
また、溝部30の本数nは、実際の全体開口部の寸法L1と溝部30の開口部3002の幅wに基づいて以下の式(4)で規定される。
n=L1/w…(4)
ここで、上述した幅wと本数nの制約を考慮して水中音響材14の変形しやすさと加工性の双方を確保するためには、1本の溝部30当たりの水中音響材14の幅方向の寸法、すなわち、水中音響材14の幅Wを溝部30の本数nで除した値W/nが10mm以上100mm以下の範囲にすることが好ましいと考えられる。
すなわち、10≦W/n≦100…(5)
式(5)を、溝部30の本数nの範囲を規定するように変形すると、
(1/100)W≦n≦(1/10)W…(6)
したがって、上記(6)式によって、水中音響材14の変形しやすさと溝部30の加工性との双方を考慮した溝部30の本数nの範囲が規定される。
すなわち、溝部30の本数nが(1/100)Wに満たないと、水中音響材14が目標曲率半径Rに追従して変形しやすくなる効果が低下し、溝部30の本数nが(1/10)Wを超えると、水中音響材14に溝部30を加工する際の加工性を高める効果が低下する。
【0022】
また、上述した幅wと本数nの制約を考慮して、水中音響材14の変形しやすさと加工性の双方を確保するためには、溝部30の開口部3002の幅wは、水中音響材14の厚さTの20分の1から2分の1の範囲とすることが好ましいと考えられ、以下の式(7)で溝部30の開口部3002の幅wの範囲が規定される。
(1/20)T≦w≦(1/2)T…(7)
すなわち、溝部30の開口部3002の幅wが(1/20)Tに満たないと、水中音響材14に溝部30を加工する際の加工性を高める効果が低下し、溝部30の開口部3002の幅wが(1/2)Tを超えると、水中音響材14が目標曲率半径Rに追従して変形しやすくなる効果が低下する。
【符号の説明】
【0023】
10 水中構造体
12 被取り付け面
14 水中音響材
16 取り付け面(両面)
18 両面
20 端面
22 端面
24 端面
26 端面
28 取り付け孔
30 溝部
3002 開口部
3004 溝面
3006 底部
図1
図2
図3
図4