(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158330
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電力変換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/06 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02M7/06 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073451
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】横山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲也
(72)【発明者】
【氏名】戸田 颯
(72)【発明者】
【氏名】大前 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】福野 研一
(72)【発明者】
【氏名】砂田 将平
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA01
5H006BB05
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC08
5H006DA04
5H006FA02
(57)【要約】
【課題】システム共振の発生を抑制できる電力変換システムを提供する。
【解決手段】電力変換システム100は、AC/DC変換を行う。電力変換システム100は、AC電源110、AC変圧器130、ダイオード140、リアクトル150、およびコンデンサ170を備える。AC電源110、AC変圧器130、ダイオード140、およびリアクトル150が、この順に直列接続される。リアクトル150のAC変圧器130側と反対側に直流ライン5が設けられ、直流ライン5に、複数の負荷およびコンデンサ170が接続され、各負荷と直流ライン5の間にブレーカ180が配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AC/DC変換を行う電力変換システムであって、
AC電源、AC変圧器、ダイオード、リアクトル、およびコンデンサを備え、
前記AC電源、前記AC変圧器、前記ダイオード、および前記リアクトルが、この順に直列接続され、
前記リアクトルの前記AC変圧器側とは反対側に直流ラインが設けられ、
前記直流ラインに、複数の負荷およびコンデンサが接続され、
各負荷と前記直流ラインの間にブレーカが配置される
電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ダイオード整流器を用いて直流電力を供給するシステムが開示されている。直流電力を供給する直流ラインには、回生電力を発生させる負荷が接続されている。回生電力により直流ラインの電圧が上昇することを防止するため、蓄電設備が設けられている。また、負荷ごとに平滑コンデンサが設けられ、負荷に供給される電圧を安定化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーブルのインピーダンスや平滑コンデンサのキャパシタンスによって定まる共振周波数が、各負荷の初段に設けられた電力変換器のスイッチング周波数と一致した場合、いわゆるシステム共振が発生し、直流ラインの電圧が上昇するという問題がある。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、システム共振の発生を抑制できる電力変換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態における電力変換システムは、
AC/DC変換を行う電力変換システムであって、
AC電源、AC変圧器、ダイオード、リアクトル、およびコンデンサを備え、
前記AC電源、前記AC変圧器、前記ダイオード、および前記リアクトルが、この順に直列接続され、
前記リアクトルの前記AC変圧器側とは反対側に直流ラインが設けられ、
前記直流ラインに、複数の負荷およびコンデンサが接続され、
各負荷と前記直流ラインの間にブレーカが配置される。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、システム共振の発生を抑制できる電力変換システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1にかかる電力変換システムの構成を説明する図である。
【
図2】実施形態1にかかる電力変換システムの動作を説明する図である。
【
図3】実施形態1にかかる電力変換システムの動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0010】
実施形態1
以下、図面を参照して実施形態1にかかる電力変換システムについて説明する。
図1は、実施形態1にかかる電力変換システム100の構成を説明する図である。以下の図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0011】
電力変換システム100は、AC電源110、高圧盤120、AC変圧器130、ダイオード140、リアクトル150、DC/DC変換器161、DC/DC双方向変換器162、およびDC/AC変換器163、コンデンサ170、ブレーカ180、および逆方向PWM(Pulse Width Modulation)変換器190を備えている。AC電源110、高圧盤120、AC変圧器130、ダイオード140、およびリアクトル150は、この順に直列接続されている。逆方向PWM変換器190は、ダイオード140に並列に接続されている。
【0012】
AC変圧器130は、AC電源110から高圧盤120を介して供給された高電圧のAC電力を、低電圧のAC電力に変換する。AC変圧器130は、具体的には三巻線の変圧器である。AC変圧器130は、B種接地されている。AC変圧器130は、混触防止板を含んでいる。
【0013】
ダイオード140は、AC変圧器130から供給されたAC電力をDC電力に変換する。ダイオード140は、具体的には、ダイオードを含む12相整流装置である。
【0014】
リアクトル150のダイオード140側とは反対側に、直流ライン5が設けられている。直流ライン5には、複数の負荷およびコンデンサ170が接続される。なお、負荷とは、AC電源110から見て電力を消費する側の設備や装置を意味しており、モータ等の動力負荷には限定されず、発電設備や蓄電設備であってもよい。また、負荷は回生電源として動作してもよい。
【0015】
各負荷の初段には、電力変換器(例:DC/DC変換器161、DC/DC双方向変換器162、DC/AC変換器163)が備えられる。DC/DC変換器161やDC/DC双方向変換器162には、直流設備が接続される。DC/DC双方向変換器162は、回生電力を直流ライン5に供給する機能を有していてもよい。DC/AC変換器163には、交流設備が接続される。
【0016】
直流ライン5等のケーブルのインピーダンス、コンデンサ170のキャパシタンス、およびリアクトル150のリアクタンスにより定まる共振周波数が、各電力変換器のスイッチング周波数と一致しないように、コンデンサ170およびリアクトル150が適切に選定される。これにより、電力変換システム100は、システム共振の発生を抑制できる。
【0017】
各負荷からの電力が逆潮流される場合、直流ライン5の電圧値が上昇する。コンデンサ170は、直流ライン5の電圧変化のうちで応答速度が速い成分を吸収する。電力変換システム100がコンデンサ170を備えているため、直流ライン5の電圧を安定化させる平滑コンデンサが負荷ごとに設けられる必要はない。従来は、システム共振を抑制するために、負荷を追加するたびに平滑コンデンサの容量を選定する場合があった。
【0018】
ブレーカ180は、各負荷(例:DC/DC変換器161、DC/DC双方向変換器162、DC/AC変換器163)と直流ライン5の間に配置されている。DC/DC変換器161に接続されたブレーカ180は、ブレーカ1とも言われる。DC/DC双方向変換器162に接続されたブレーカ180は、ブレーカ2とも言われる。DC/AC変換器163に接続されたブレーカ180は、ブレーカ3とも言われる。
【0019】
逆方向PWM変換器190は、各負荷で発生した電力をAC電源110側に逆潮流させる。直流ライン5に接続された蓄電設備の容量を越える電力が発生した場合、逆方向PWM変換器190は、容量を越えた分の電力を逆潮流させる。なお、蓄電設備は、各電力変換器に接続されていてもよい。逆方向PWM変換器190により、直流ライン5の電圧上昇を抑制できる。
【0020】
また、従来技術にかかる電力変換システムでは、ダイオード140の代わりにPWM方式の電力変換器が備えられる。いずれかの負荷(例:DC/DC変換器161、DC/DC双方向変換器162、DC/AC変換器163)で短絡が発生した場合、PWM方式の電力変換器に短絡電流が流れる。PWM方式の電力変換器に短絡電流が流れることを許容できる時間(例:数ミリ秒)は、ブレーカ180の遮断速度と比べて短い。したがって、短絡が発生するとPWM方式の電力変換器が停止し、波及停電が生じる可能性がある。
【0021】
一方、ダイオード140に短絡電流が流れることを許容できる時間は、ブレーカ180の遮断速度と比べて長い。したがって、ダイオード140の動作が停止する前に、短絡が発生した負荷のブレーカ180を動作させることができる。したがって、電力変換システム100は、波及停電が発生することを防止できる。
【0022】
また、交流送電ではなく直流送電を行うため、各負荷で交流を直流に変換する必要がない。したがって、変換ロスを低減できるという利点がある。
【0023】
次に、
図2を参照して、電力変換システム100の力行時の動作の流れを説明する。まず、AC変圧器130が、高調波対策を行いつつ、高圧の交流電力を低圧の交流電力に変換する(ステップS101)。次に、ダイオード140が、低圧の交流電力を低圧の直流電力に変換する(ステップS102)。次に、ブレーカ180等を経由して、各電力変換装置に低圧の直流電力が送電される(ステップS103)。ダイオード140は短絡電流に数秒程度耐えられるため、各電力変換装置の周辺で短絡が発生した場合、対応するブレーカ180が動作し、波及停電は発生しない。
【0024】
DC/DC変換器161は、直流電力の電圧を変圧し(ステップS104)、直流設備に電力を供給する(ステップS105)。DC/DC双方向変換器162も、同様に、直流電力の電圧を変圧し(ステップS106)、直流設備に電力を供給する(ステップS107)。そして、DC/AC変換器163は、直流電力を交流電力に変換し(ステップS108)、交流設備に電力を供給する(ステップS109)。
【0025】
次に、
図3を参照して、電力変換システム100の回生時の動作の流れを説明する。まず、DC/DC双方向変換器162が、直流設備からの直流電圧(回生電圧)を変圧する(ステップS201)。そして、低圧の直流電力が、ブレーカ1およびブレーカ3を経由して送電される(ステップS202)。次に、DC/DC変換器161が、直流電力を変圧し(ステップS203)、直流設備に電力を供給する(ステップS204)。DC/AC変換器163は、直流電力を交流電力に変換し(ステップS205)、交流設備に電力を供給する(ステップS206)。
【0026】
回生電力が大きい場合、逆方向PWM変換器190が、逆潮流される直流電力(逆潮流電力)を交流電力に変換する(ステップS207)。そして、AC変圧器130が、低圧の交流電力を高圧の交流電力に変換し(ステップS208)、AC電源に電力を逆潮流させる(ステップS209)。逆方向PWM変換器190の故障に備えて、DC/DC双方向変換器162やリアクトル150も過電圧や過電流により停止する機能を備えていてもよい。
【0027】
直流ライン5の電圧変化のうち応答速度が速い部分がコンデンサ170で吸収され、AC変圧器130に供給される電圧や、直流ライン5の電圧の上昇が抑制される(ステップS210)。応答速度が遅い部分は、直流設備等に設けられた蓄電池によって吸収されてもよい。また、リアクトル150によってシステム共振の発生が抑制されるため、電圧上昇が抑制される(ステップ211)。
【0028】
実施形態1にかかる電力変換システムは、コンデンサおよびリアクトルによりシステム共振の発生を抑制できる。また、負荷ごとに平滑コンデンサが設けられる必要がない。
【0029】
なお、直流ラインに蓄電設備を接続して電圧上昇を吸収することも可能であるが、この場合、負荷が追加されるたびに蓄電設備の容量を増加させなければならないという課題があった。実施形態1は、この課題を解決できる。さらに、実施形態1にかかる電力変換システム100は、波及停電の発生を防止し、保護協調を成立させることができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0031】
100 電力変換システム
110 AC電源
120 高圧盤
130 AC変圧器
140 ダイオード
150 リアクトル
161 DC/DC変換器
162 DC/DC双方向変換器
163 DC/AC変換器
170 コンデンサ
180 ブレーカ
190 逆方向PWM変換器
5 直流ライン