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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158336
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/08 20060101AFI20241031BHJP
   F04D 29/10 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F04D29/08 E
F04D29/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073463
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】田中 隆太
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB12
3H130AB27
3H130AB42
3H130AC30
3H130BA51A
3H130BA51C
3H130CA06
3H130CA21
3H130CB05
3H130DA02Z
3H130DC12X
3H130EA06A
3H130EA06C
3H130EB01A
3H130EB01C
(57)【要約】
【課題】所望の圧縮能力を得る。
【解決手段】圧縮機1は、低圧側インペラ2と、低圧側インペラ2が取り付けられた連結シャフト4と、連結シャフト4が挿通されるシャフト貫通穴5Hを有するプレート5と、を備える。低圧側インペラ2の低圧側ハブ背面21とプレート5の低圧側プレート主面5Aとは互いに対面する。低圧側インペラ2の低圧側ハブ背面21にはインペラ凸部21Aが設けられる。プレート5の低圧側プレート主面5Aには、プレート凹部51が設けられる。低圧側インペラ2とプレート5との間には、インペラ凸部21A及びプレート凹部51によって形成される流路部を含む第1隙間流路F1が設けられる。第1隙間流路F1には、高圧側プレートラビリンスシール8及び低圧側プレートラビリンスシール9が設けられる。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラと、
前記インペラが取り付けられたシャフトと、
前記シャフトが挿通されるシャフト貫通穴を有するプレートと、を備え、
前記インペラの背面と前記プレートの主面とは互いに対面し、
前記インペラの背面及び前記プレートの主面の一方には、前記インペラの背面及び前記プレートの主面の対面する方向に延びる凸部が設けられ、
前記インペラの背面及び前記プレートの主面の他方には、前記凸部を収容する凹部が設けられ、
前記インペラと前記プレートとの間には、前記凸部及び前記凹部によって形成される流路部を含む第1隙間流路が形成され、
前記第1隙間流路には第1ラビリンスシールが設けられる、圧縮機。
【請求項2】
前記凸部は、前記インペラの背面に設けられたインペラ凸部であり、
前記凹部は、前記プレートの主面に設けられたプレート凹部である、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記インペラ凸部は、前記シャフトの回転軸線に交差する凸部周面を有し、
前記プレート凹部は、前記凸部周面に向く凹部周面を有し、
前記凸部周面及び前記凹部周面の少なくとも一方には、前記第1ラビリンスシールのためのシール突起が設けられている、請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記シャフトと前記シャフト貫通穴との間には第2隙間流路が形成され、
前記第2隙間流路の入口における流路断面の面積は、前記第1隙間流路の出口における流路断面の面積よりも、小さい、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記シャフトと前記シャフト貫通穴との間には第2隙間流路が形成され、
前記第2隙間流路には、第2ラビリンスシールが設けられる、請求項1に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記プレートは、
前記シャフト貫通穴が設けられたプレート内周筒と、
前記プレート内周筒を収容する本体貫通穴が設けられたプレート本体と、
前記プレート内周筒の外周面と前記本体貫通穴の内周面との間に配置されたプレート中間円板と、を有する、請求項1に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、回転するインペラを備えている。インペラは、シャフトによって支持されている。このシャフトも、ハウジングによって回転可能に支持されている。インペラは、ハウジングに対して相対的に運動するので、インペラはハウジングに対してわずかに離間している。この隙間は、圧縮される流体の流路になる。そこで、隙間から漏れ出る流体を抑制するために、いわゆるラビリンスシールが設けられる。特許文献1~4は、ラビリンスシールを備えた圧縮機を開示する。
【0003】
例えば、特許文献1の圧縮機は、第1のインペラによって圧縮した流体を、第2のインペラによって更に圧縮するいわゆる多段式の圧縮機である。特許文献1の圧縮機は、複数のインペラの背面同士が重ね合わされた形状を有する複合インペラと、複合インペラを収容するケーシングと、を備える。特許文献1の圧縮機は、複合インペラのハブの外周端面と外周端面に対向するケーシングの内面との間に設けられたシール部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-251528号公報
【特許文献2】国際公開第2020/189292号
【特許文献3】特開2016-183578号公報
【特許文献4】特開平8-14056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧縮機に求められる圧縮能力が高まるにつれて、ラビリンスシールに求められるシール能力も高まる。また、圧縮能力の高まりは、インペラの回転数の高まりも招く。ラビリンスシールのシール能力の観点からすると、ラビリンスシールのシール長が長いほうが望ましい。一方、インペラの回転数を高める観点からすると、インペラを含む回転体の剛性は高いほうが望ましい。つまり、回転体の高剛性化と、ラビリンスシールのシール能力の向上とは、相反する関係にあった。このような関係は、圧縮機の圧縮能力の向上の妨げとなっていた。
【0006】
そこで、本発明は、所望の圧縮能力を得ることが可能な圧縮機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態である圧縮機は、インペラと、インペラが取り付けられたシャフトと、シャフトが挿通されるシャフト貫通穴を有するプレートと、を備え、インペラの背面とプレートの主面とは互いに対面し、インペラの背面及びプレートの主面の一方には、インペラの背面及びプレートの主面の対面する方向に延びる凸部が設けられ、インペラの背面及びプレートの主面の他方には、凸部を収容する凹部が設けられ、インペラとプレートとの間には、凸部及び凹部によって形成される流路部を含む第1隙間流路が形成され、第1隙間流路には第1ラビリンスシールが設けられる。
【0008】
この圧縮機のインペラとプレートとの間には、凸部及び凹部によって形成される流路部を含む第1隙間流路が存在する。凸部及び凹部によって形成される流路部を含む第1隙間流路の長さは、凸部及び凹部によって形成される流路部を含まない流路と比べると、流路長さが長い。そうすると、流路長さの長い第1隙間流路に、第1ラビリンスシールを設けることによって、インペラとプレートの間におけるシール性能を高めることができる。その結果、プレートとシャフトとの間におけるシール性能の一部又は全部を第1隙間流路に設けた第1ラビリンスシールによって負担することが可能になる。従って、所望のシール性能を得るために、プレートの厚みを大きくする必要がない。つまり、求められるシール性能によってインペラが取り付けられたシャフトの長さが決まることがなく、高い回転数にも対応できるインペラとの連結構造を採用できる。その結果、所望のシール性能と所望の回転数とを満たすことができるので、圧縮機は、所望の圧縮能力を得ることができる。
【0009】
上記の圧縮機の凸部は、インペラの背面に設けられたインペラ凸部であり、凹部は、プレートの主面に設けられたプレート凹部であってもよい。この場合には、凸部を有するインペラと、凹部を有するプレートとにより第1隙間流路を形成することができる。
【0010】
上記の圧縮機のインペラ凸部は、シャフトの回転軸線に交差する凸部周面を有し、プレート凹部は、凸部周面に向く凹部周面を有し、凸部周面及び凹部周面の少なくとも一方には、第1ラビリンスシールのためのシール突起が設けられてもよい。この構造によっても、シール性能を向上させることができる。
【0011】
上記の圧縮機において、シャフトとシャフト貫通穴との間には第2隙間流路が形成され、第2隙間流路の入口における流路断面の面積は、第1隙間流路の出口における流路断面の面積よりも、小さくてもよい。この構造によっても、所望のシール性能を得ることができる。
【0012】
上記の圧縮機において、シャフトとシャフト貫通穴との間には第2隙間流路が形成され、第2隙間流路には、第2ラビリンスシールが設けられてもよい。この構成によれば、シール性能をさらに向上することができる。
【0013】
上記の圧縮機のプレートは、シャフト貫通穴が設けられたプレート内周筒と、プレート内周筒を収容する本体貫通穴が設けられたプレート本体と、プレート内周筒の外周面と本体貫通穴の内周面との間に配置されたプレート中間円板と、を有してもよい。この構成によれば、ラビリンスシールを構成するプレートを容易に組み立てることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、所望の圧縮能力を得ることが可能な圧縮機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態の圧縮機が備える低圧側インペラの一部とプレートの一部を断面視して示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す圧縮機が備える3つのシール構造を示す断面図である。
図3図3は、図1に示すプレートを分解して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、実施形態の圧縮機を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示すように、圧縮機1は、低圧側インペラ2(第1インペラ)と、高圧側インペラ3(第2インペラ)と、を有する。低圧側インペラ2は、第1圧力である第1流体を受けて、第1流体を第1圧力から第1圧力よりも高い第2圧力まで圧縮する。第2圧力まで圧縮された流体を第2流体と称する。第2流体は、連絡流路(不図示)を介して高圧側インペラ3に送られる。高圧側インペラ3は、第2圧力から第2圧力よりも高い第3圧力まで第2流体を圧縮する。第3圧力まで圧縮された流体を第3流体と称する。圧縮機1は、第3流体を外部に提供する。
【0018】
低圧側インペラ2は、低圧側インペラブレードと、低圧側ハブ2Hと、を有する。低圧側インペラブレードは、圧縮機1に要求される性能に応じた三次元的な形状を有する。図1では、低圧側インペラブレードの詳細な形状の図示は省略する。低圧側ハブ2Hは、略円錐状の回転体である。低圧側ハブ2Hは、所定の曲線を回転軸線の回りに回転させて得られる曲面であって、低圧側インペラブレードが設けられるブレード配置面を有する。さらに、低圧側ハブ2Hは、円錐形状の底面に相当する低圧側ハブ背面21を有する。低圧側ハブ背面21には、連結シャフト4の第1端部41が固定されている。さらに、低圧側ハブ2Hのブレード側には、支持シャフト6の端部が固定されている。連結シャフト4は、支持シャフト6と別の部品として扱ってよい。なお、連結シャフト4と支持シャフト6とは、一体のシャフトであってもよい。
【0019】
高圧側インペラ3も、基本的には低圧側インペラ2と同様の構成を有する。つまり、高圧側インペラ3は、高圧側インペラブレードと、高圧側ハブ3Hと、を有する。そして、高圧側ハブ3Hは、高圧側ハブ背面31を有する。高圧側ハブ背面31には、連結シャフト4の第2端部42が固定されている。
【0020】
高圧側インペラ3に要求される圧縮能力は、低圧側インペラ2に要求される圧縮能力とは異なる。従って、高圧側ハブ3Hの直径は、低圧側ハブ2Hの直径とは異なることがある。また、高圧側インペラブレードの具体的な構成は、高圧側インペラブレードの詳細な構成と異なることもある。
【0021】
例えば、高圧側インペラ3は、流体からプレート5に向かう力FHを受ける。低圧側インペラ2も同様に、流体からプレート5に向かう力FLを受ける。高圧側インペラ3と低圧側インペラ2とは、連結シャフト4を介して一体とされている。従って、高圧側インペラ3、低圧側インペラ2及び連結シャフト4を含む一体物には、力FHと力FLとの差分が作用する。この場合において、力FHの大きさと力FLの大きさとが異なっていると、差分の力に応じた方向に一体物が押される。圧縮機1は、このような偏りを生じさせないために、力FHの大きさと力FLの大きさとが略同じとなるように構成されている。力FH、FLの大きさは、流体の圧力とその圧力を受ける面積との積によって決まる。従って、圧力と面積との積が略同じとなるように、低圧側インペラ2の外径を、高圧側インペラ3の外径より大きく設定してもよい。
【0022】
本実施形態では、圧縮機1として、低圧側インペラ2及び高圧側インペラ3を備える2段圧縮機を例示する。しかし、圧縮機は、低圧側インペラ2を省略した1段圧縮機であってもよい。
【0023】
図2に示すように、低圧側ハブ背面21は、インペラ凸部21Aと、ハブ背面外周部21Bと、ハブ背面内周部21Cと、を有する。インペラ凸部21Aは、低圧側ハブ背面21から回転軸線AXの方向に突出する。インペラ凸部21Aの形状は、回転軸線AXを中心軸とする円環状である。低圧側ハブ背面21において、インペラ凸部21Aからハブ外縁までの面は、ハブ背面外周部21Bである。ハブ背面外周部21Bの形状は、インペラ凸部21Aを囲む円環状である。低圧側ハブ背面21において、インペラ凸部21Aの内側の面は、ハブ背面内周部21Cである。ハブ背面内周部21Cの形状は、インペラ凸部21Aに囲まれた円環状である。
【0024】
インペラ凸部21Aは、凸部外側壁面211と、凸部端面212と、凸部内側壁面213と、を有する。インペラ凸部21Aの高さは、ハブ背面外周部21B又はハブ背面内周部21Cから、凸部端面212までの距離として定義できる。インペラ凸部21Aの高さは、プレート5の厚みよりも小さい。
【0025】
プレート5は、低圧側インペラ2が配置される領域と、高圧側インペラ3が配置される領域と、を仕切る。プレート5は、低圧側プレート主面5Aと、高圧側プレート主面5Bと、を有する。低圧側プレート主面5Aは、低圧側インペラ2の低圧側ハブ背面21に面する。高圧側プレート主面5Bは、高圧側インペラ3の高圧側ハブ背面31に面する。
【0026】
プレート5は、シャフト貫通穴5Hを有する。シャフト貫通穴5Hには、連結シャフト4が挿通される。シャフト貫通穴5Hの内径は、連結シャフト4の外径よりわずかに大きい。つまり、シャフト貫通穴5Hの内周面5H1と連結シャフト4の外周面4Sとの間には、隙間が形成される。この隙間は、高圧側インペラ3側から低圧側インペラ2側への流体の経路(第2経路R2)である。そこで、この経路上に、シャフトラビリンスシール7を設ける。
【0027】
シャフトラビリンスシール7は、複数のシール突起71、71Sによって形成される。複数のシール突起71、71Sは、円環状である。複数のシール突起71、71Sは、シャフト貫通穴5Hの内周面5H1に配置されている。複数のシール突起71、71Sは、回転軸線AXの方向に沿って、所定の間隔を設けて固定されている。そうすると、経路は、シール突起71の突起先端面711と連結シャフト4の外周面4Sとの間の隙間と、シャフト貫通穴5Hの内周面5H1と連結シャフト4の外周面4Sとの間の隙間とが、交互に配置された構成を有する。
【0028】
シール突起71の突起先端面711と連結シャフト4の外周面4Sとの間の隙間は、シャフト貫通穴5Hの内周面5H1と連結シャフト4の外周面4Sとの間の隙間より狭い。これらの隙間は、流路断面積の相違をもたらす。つまり、シール突起71の突起先端面711と連結シャフト4の外周面4Sとの間の流路断面積は、シャフト貫通穴5Hの内周面5H1と連結シャフト4の外周面4Sとの間の流路断面積より狭い。流路断面積が異なる構造が交互に配置されることによって、流体の圧力損失が発生する。その結果、シール効果が発揮される。
【0029】
なお、シャフトラビリンスシール7のシール性能に影響を及ぼす流路断面として、入口流路断面7Sを挙げる。入口流路断面7Sは、高圧側プレート主面5B側に配置されたシール突起71Sによって規定される流路の断面である。入口流路断面7Sは、回転軸線AXから、シャフト貫通穴5Hの内周面5H1までの距離によって規定される仮想的な円と、回転軸線AXから連結シャフト4の外周面4Sまでの距離によって規定される仮想的な円と、の差分として定義できる。なお、入口流路断面7Sは、回転軸線AXからシール突起71Sの突起先端面711までの距離によって規定される仮想的な円と、回転軸線AXから連結シャフト4の外周面4Sまでの距離によって規定される仮想的な円と、の差分として定義してもよい。
【0030】
プレート5は、さらに、低圧側プレート主面5Aに設けられたプレート凹部51を有する。プレート凹部51は、低圧側インペラ2のインペラ凸部21Aを受け入れる。従って、プレート凹部51も回転軸線AXの方向からみて、回転軸線AXと同心である円環状である。
【0031】
低圧側プレート主面5Aにおいて、プレート凹部51より外側の領域は、低圧側プレート主面外周部51Aである。低圧側プレート主面5Aにおいて、プレート凹部51より内側の領域は、低圧側プレート主面内周部51Bである。低圧側プレート主面内周部51Bには、シャフト貫通穴5Hが設けられている。
【0032】
プレート凹部51は、凹部内側壁面511と、凹部外側壁面512と、凹部底面513と、を有する。プレート凹部51は、所定の隙間が形成されるようにインペラ凸部21Aを受け入れる。より詳細には、凹部内側壁面511と凸部内側壁面213との間に隙間が形成される。つまり、凹部内側壁面511は、凸部内側壁面213と接触しない。この隙間は、高圧側インペラ3側から低圧側インペラ2側への流体の経路(第4経路R4)である。そこで、この経路上には、高圧側プレートラビリンスシール8を設ける。
【0033】
凹部底面513と凸部端面212との間にも隙間が形成される。凹部底面513は、凸部端面212と接触しない。この隙間は、高圧側インペラ3側から低圧側インペラ2側への流体の経路(第5経路R5)である。
【0034】
凹部外側壁面512と凸部外側壁面211との間にも隙間が形成される。凹部外側壁面512は、凸部外側壁面211と接触しない。この隙間は、高圧側インペラ3側から低圧側インペラ2側への流体の経路(第6経路R6)である。この経路上には、低圧側プレートラビリンスシール9を設ける。
【0035】
高圧側プレートラビリンスシール8は、複数のシール突起81によって形成される。複数のシール突起81は、凹部内側壁面511に固定されている。なお、複数のシール突起81は、凸部内側壁面213に設けられてもよい。さらに、複数のシール突起81は、凹部内側壁面511及び凸部内側壁面213の両方に設けられてもよい。
【0036】
複数のシール突起81は、回転軸線AXの方向に沿って、所定の間隔を設けて配置されている。そうすると、第4経路R4は、シール突起81の突起先端面811と凸部内側壁面213との間の隙間と、凹部内側壁面511と凸部内側壁面213との間の隙間とが、交互に配置された構成を有する。シール突起81の突起先端面811と凸部内側壁面213との間の隙間は、凹部内側壁面511と凸部内側壁面213との間の隙間より狭い。従って、シール突起81の突起先端面811と凸部内側壁面213との間の流路断面積は、凹部内側壁面511と凸部内側壁面213との間の流路断面積より狭い。その結果、流路断面積が異なる構造が交互に配置されることになり、流体の圧力損失が発生する。よって、高圧側プレートラビリンスシール8は、シール効果を発揮することができる。
【0037】
低圧側プレートラビリンスシール9も、複数のシール突起91、91Sによって形成される。複数のシール突起91、91Sは、凹部外側壁面512に配置されている。複数のシール突起91、91Sは、凸部外側壁面211に配置されてもよい。複数のシール突起91、91Sは、凹部外側壁面512及び凸部外側壁面211の両方に配置されてもよい。
【0038】
複数のシール突起91、91Sは、回転軸線AXの方向に沿って、所定の間隔を設けて固定されている。そうすると、経路は、シール突起91の突起先端面911と凸部外側壁面211との間の隙間と、凹部外側壁面512と凸部外側壁面211との間の隙間とが、交互に配置された構成を有する。シール突起91の突起先端面911と凸部外側壁面211との間の隙間は、凹部外側壁面512と凸部外側壁面211との間の隙間より狭い。従って、シール突起91の突起先端面911と凸部外側壁面211との間の流路断面積は、凹部外側壁面512と凸部外側壁面211との間の流路断面積より狭い。その結果、流路断面積が異なる構造が交互に配置されることになり、流体の圧力損失が発生する。よって、低圧側プレートラビリンスシール9も、シール効果を発揮することができる。
【0039】
なお、低圧側プレートラビリンスシール9のシール性能に影響を及ぼす流路断面として、出口流路断面9Sを挙げる。出口流路断面9Sは、回転軸線AXから凹部外側壁面512までの距離によって規定される仮想的な円と、回転軸線AXから凸部外側壁面211までの距離によって規定される仮想的な円と、の差分として定義できる。なお、出口流路断面9Sは、回転軸線AXからシール突起91Sの突起先端面911までの距離によって規定される仮想的な円と、回転軸線AXから凸部外側壁面211までの距離によって規定される仮想的な円と、の差分として定義してもよい。
【0040】
前述した入口流路断面7Sの直径は、明らかに出口流路断面9Sの直径よりも小さい。従って、入口流路断面7Sの面積は、出口流路断面9Sの面積よりも小さい。
【0041】
上述したように、圧縮機1は、シャフトラビリンスシール7と、高圧側プレートラビリンスシール8と、低圧側プレートラビリンスシール9と、を有する。これらのシール構造を、高圧側インペラ3が配置された領域S1から、低圧側インペラ2が配置された領域S2に至る経路の視点から説明する。
【0042】
まず、高圧側インペラ3が配置された領域から、低圧側インペラ2が配置された領域に至る経路は、例えば、第1経路R1、第2経路R2、第3経路R3、第4経路R4、第5経路R5、第6経路R6及び第7経路R7から構成されると捉えることができる。
【0043】
第1経路R1は、高圧側ハブ背面31と高圧側プレート主面5Bとの間の領域である。第2経路R2は、シャフト貫通穴5Hの内周面5H1と連結シャフト4の外周面4Sとの間の領域である。つまり、第2経路R2は、連結シャフト4とプレート5との間に形成される第2隙間流路F2に対応する。第3経路R3は、ハブ背面内周部21Cと低圧側プレート主面内周部51Bとの間の領域である。第4経路R4は、凸部内側壁面213と凹部内側壁面511との間の領域である。第5経路R5は、凸部端面212と、凹部底面513との間の領域である。第6経路R6は、凸部外側壁面211と凹部外側壁面512との間の領域である。第7経路R7は、低圧側ハブ背面21と低圧側プレート主面外周部51Aとの間の領域である。つまり、第3経路R3、第4経路R4、第5経路R5、第6経路R6及び第7経路R7は、低圧側インペラ2と、プレート5との間に形成される第1隙間流路F1に対応する。
【0044】
従って、第2隙間流路F2の長さは、実質的には、プレート5の厚みによって規定される。一方、第1隙間流路F1の長さは、第3経路R3、第4経路R4、第5経路R5、第6経路R6及び第7経路R7の合計長さによって規定される。プレート凹部51は、いわゆる止まり穴であるから、第4経路R4及び第6経路R6のそれぞれの長さは、プレート凹部51の深さによって規定される。第4経路R4及び第6経路R6のそれぞれの長さは、プレート5の厚み、つまり、第2隙間流路F2の長さより短い。しかし、第1隙間流路F1は、第4経路R4及び第6経路R6によって形成される。従って、これらを含んで構成される第1隙間流路F1の長さは、第2隙間流路F2の長さよりも長い。
【0045】
流体は、高圧側から低圧側に移動しようとする。従って、流体は、第1経路R1、第2経路R2、第3経路R3、第4経路R4、第5経路R5、第6経路R6及び第7経路R7の順に移動しようとする。
【0046】
そして、第2隙間流路F2である第2経路R2には、シャフトラビリンスシール7が設けられている。つまり、第2隙間流路F2には3つのシール突起71が配置されている。
【0047】
第1隙間流路F1を構成する第4経路R4には、高圧側プレートラビリンスシール8が設けられている。さらに、第1隙間流路F1を構成する第6経路R6には、低圧側プレートラビリンスシール9が設けられている。つまり、第1隙間流路F1には6つのシール突起81、91が配置されている。シール性能は、流路の構成が複雑になるほど高まる。換言すると、流路上に設けられたシール突起71、81、91の数が増えるほど、シール性能が高まる。つまり、実施形態の圧縮機1は、所定の厚みを有するプレート5を備えながら、その厚みの制限を受けるシャフトラビリンスシール7のシール性能よりも高いシール性能を、高圧側プレートラビリンスシール8及び低圧側プレートラビリンスシール9によって得ることができる。
【0048】
なお、ラビリンスシールのシール性能は、流路断面積の影響を受ける。例えば、連結シャフト4がプレート5に対して回転軸線AXの方向にわずかに動いた場合を想定する。連結シャフト4が回転軸線AXの方向に動いたとしても、シール突起71の突起先端面711と連結シャフト4の外周面4Sとの間の隙間の大きさは変化しない。また、シャフト貫通穴5Hの内周面5H1と連結シャフト4の外周面4Sとの間の隙間の大きさも変化しない。従って、連結シャフト4が回転軸線AXの方向に動いたとしても、シャフトラビリンスシール7のシール性能は、影響を受けない。
【0049】
同様に、低圧側インペラ2がプレート5から離間する方向にわずかに動いた場合を想定する。低圧側インペラ2がプレート5から離間する方向に移動した場合であっても、シール突起81の突起先端面811と凸部内側壁面213との隙間の大きさは変化しない。従って、低圧側インペラ2がプレート5から離間する方向に動いたとしても、高圧側プレートラビリンスシール8のシール性能は、影響を受けない。同様に、シール突起91の突起先端面911と凸部外側壁面211との隙間の大きさも変化しない。従って、低圧側インペラ2がプレート5から離間する方向に動いたとしても、低圧側プレートラビリンスシール9のシール性能も、影響を受けない。
【0050】
なお、仮に、第5経路R5にラビリンスシールを設けた場合には、低圧側インペラ2がプレート5から離間する方向に動くと、シール突起によって形成される隙間が大きくなってしまう。つまり、低圧側インペラ2がプレート5から離間する方向に動いた場合には、第5経路R5に設けられたラビリンスシールのシール性能が影響を受ける可能性がある。
【0051】
上述したシール構造を有するプレート5は、図3に示すように、3つの部品の組み合わせによって構成されてもよい。プレート5は、プレート本体52と、プレート中間円板53と、プレート内周筒54と、を有する。
【0052】
プレート本体52は、高圧側プレート主面5Bの一部5B2と、低圧側プレート主面外周部51Aと、本体貫通穴52Hと、を含む。本体貫通穴52Hの内周面の一部は、凹部外側壁面512である。従って、本体貫通穴52Hの内周面には、低圧側プレートラビリンスシール9のためのシール突起91が設けられている。本体貫通穴52Hの内周面の別の部分には、プレート中間円板53が固定される。プレート中間円板53は、高圧側プレート主面5Bの一部5B3と、凹部底面513と、を含む。
【0053】
プレート内周筒54は、プレート中間円板53の貫通穴53Hの内周面に固定される。プレート内周筒54は、凹部内側壁面511と、低圧側プレート主面内周部51Bと、シャフト貫通穴5Hと、高圧側プレート主面5Bの一部5B4と、を含む。従って、プレート内周筒54の外周面には、高圧側プレートラビリンスシール8のためのシール突起81が設けられている。さらに、プレート内周筒54のシャフト貫通穴5Hの内周面には、シャフトラビリンスシール7のためのシール突起71が設けられている。
【0054】
プレート5を上記の3つの部品によって構成することによれば、3つのシール構造を有するプレート5を容易に製造することができる。
【0055】
<作用効果>
圧縮機1は、低圧側インペラ2と、低圧側インペラ2が取り付けられた連結シャフト4と、連結シャフト4が挿通されるシャフト貫通穴5Hを有するプレート5と、を備える。低圧側インペラ2の低圧側ハブ背面21とプレート5の低圧側プレート主面5Aとは互いに対面する。低圧側インペラ2の低圧側ハブ背面21にはインペラ凸部21Aが設けられる。プレート5の低圧側プレート主面5Aには、プレート凹部51が設けられる。低圧側インペラ2とプレート5との間には、インペラ凸部21A及びプレート凹部51によって形成される流路部を含む第1隙間流路F1が設けられる。第1隙間流路F1には、高圧側プレートラビリンスシール8及び低圧側プレートラビリンスシール9が設けられる。
【0056】
圧縮機1の低圧側インペラ2とプレート5との間には、インペラ凸部21A及びプレート凹部51によって形成される流路部(第4経路R4、第6経路R6)を含む第1隙間流路F1が存在する。インペラ凸部21A及びプレート凹部51によって形成される流路部を含む第1隙間流路F1の長さは、インペラ凸部21A及びプレート凹部51によって形成される流路部を含まない流路と比べると、流路長さが長い。そうすると、流路長さの長い第1隙間流路F1に、高圧側プレートラビリンスシール8及び低圧側プレートラビリンスシール9を設けることによって、低圧側インペラ2とプレート5の間におけるシール性能を高めることができる。その結果、プレート5と連結シャフト4との間におけるシャフトラビリンスシール7のシール性能の一部又は全部を第1隙間流路F1に設けた高圧側プレートラビリンスシール8及び低圧側プレートラビリンスシール9によって負担することが可能になる。従って、所望のシール性能を得るために、プレート5の厚みを大きくする必要がない。つまり、求められるシール性能によって低圧側インペラ2が取り付けられた連結シャフト4の長さが決まることがなく、高い回転数にも対応できる連結構造を採用できる。その結果、所望のシール性能と所望の回転数とを満たすことができるので、圧縮機1は、所望の圧縮能力を得ることができる。
【0057】
圧縮機1のインペラ凸部21Aは、連結シャフト4の回転軸線AXに交差する凸部周面(凸部外側壁面211、凸部内側壁面213)を有する。プレート凹部51は、凸部周面に向く凹部周面(凹部内側壁面511、凹部外側壁面512)を有する。凸部周面及び凹部周面の少なくとも一方には、第1ラビリンスシールのためのシール突起が設けられる。この構造によっても、シール性能を向上させることができる。
【0058】
第2隙間流路F2の入口流路断面7Sの面積は、第1隙間流路F1の出口流路断面9Sの面積よりも、小さい。
【0059】
圧縮機1の第2隙間流路F2には、シャフトラビリンスシール7が設けられる。この構成によれば、シール性能をさらに向上することができる。
【0060】
上記の圧縮機1のプレート5は、シャフト貫通穴5Hが設けられたプレート内周筒54と、プレート内周筒54を収容する本体貫通穴52Hが設けられたプレート本体52と、プレート内周筒54の外周面と本体貫通穴52Hの内周面との間に配置されたプレート中間円板53と、を有する。この構成によれば、高圧側プレートラビリンスシール8及び低圧側プレートラビリンスシール9を構成するプレート5を容易に組み立てることができる。
【0061】
<変形例>
本発明の圧縮機は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0062】
例えば、第1経路R1に第3のラビリンスシールが設けられてもよい。第3のラビリンスシールによれば、シール性能をさらに向上させることができる。
【0063】
インペラ凸部21A及びプレート凹部51の形状は、円環状でなくてもよい。インペラ凸部21A及びプレート凹部51の形状は、例えば、三角柱状又は半円柱状などの他の形状をなしていてもよい。
【0064】
〔付記〕
本開示は、以下の構成を含む。
【0065】
本開示は、[1]「インペラと、
前記インペラが取り付けられたシャフトと、
前記シャフトが挿通されるシャフト貫通穴を有するプレートと、を備え、
前記インペラの背面と前記プレートの主面とは互いに対面し、
前記インペラの背面及び前記プレートの主面の一方には、前記インペラの背面及び前記プレートの主面の対面する方向に延びる凸部が設けられ、
前記インペラの背面及び前記プレートの主面の他方には、前記凸部を収容する凹部が設けられ、
前記インペラと前記プレートとの間には、前記凸部及び前記凹部によって形成される流路部を含む第1隙間流路が形成され、
前記第1隙間流路には第1ラビリンスシールが設けられる、圧縮機。」である。
【0066】
本開示は、[2]「前記凸部は、前記インペラの背面に設けられたインペラ凸部であり、
前記凹部は、前記プレートの主面に設けられたプレート凹部である、上記[1]に記載の圧縮機。」である。
【0067】
本開示は、[3]「前記インペラ凸部は、前記シャフトの回転軸線に交差する凸部周面を有し、
前記プレート凹部は、前記凸部周面に向く凹部周面を有し、
前記凸部周面及び前記凹部周面の少なくとも一方には、前記第1ラビリンスシールのためのシール突起が設けられている、上記[2]に記載の圧縮機。」である。
【0068】
本開示は、[4]「前記シャフトと前記シャフト貫通穴との間には第2隙間流路が形成され、前記第2隙間流路の入口における流路断面の面積は、前記第1隙間流路の出口における流路断面の面積よりも、小さい、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の圧縮機。」である。
【0069】
本開示は、[5]「前記シャフトと前記シャフト貫通穴との間には第2隙間流路が形成され、前記第2隙間流路には、第2ラビリンスシールが設けられる、上記[1]~[4]の何れか一項に記載の圧縮機。」である。
【0070】
本開示は、[6]「前記プレートは、
前記シャフト貫通穴が設けられたプレート内周筒と、
前記プレート内周筒を収容する本体貫通穴が設けられたプレート本体と、
前記プレート内周筒の外周面と前記本体貫通穴の内周面との間に配置されたプレート中間円板と、を有する、上記[1]~[5]の何れか一項に記載の圧縮機。」である。
【符号の説明】
【0071】
1 圧縮機
2 低圧側インペラ(第1インペラ)
3 高圧側インペラ(第2インペラ)
4S 外周面
5 プレート
5H シャフト貫通穴
21A インペラ凸部
41 第1端部
42 第2端部
51 プレート凹部
53 プレート中間円板
54 プレート内周筒
71,81,91 シール突起
AX 回転軸線
F1 第1隙間流路
F2 第2隙間流路
図1
図2
図3