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特開2024-158341振動デバイス、スピーカユニット、及び振動デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158341
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】振動デバイス、スピーカユニット、及び振動デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20241031BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20241031BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20241031BHJP
【FI】
H04R17/00
H10N30/20
H10N30/853
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073470
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】阿賀 寿典
【テーマコード(参考)】
5D004
【Fターム(参考)】
5D004AA09
5D004BB00
5D004CC01
5D004CC06
5D004CC07
5D004DD01
5D004GG00
(57)【要約】
【課題】小型、かつ、メンブレンの変位が抑制されることを防止する振動デバイスの提供を目的とする。
【解決手段】本発明の一態様に係る振動デバイスは、基板と、前記基板上に配置されて前記基板を振動させる第1駆動源と、前記基板上に、前記第1駆動源と離れて配置されて前記基板を振動させる第2駆動源と、前記第1駆動源上から前記第2駆動源上に亘って配置されるとともに、面内方向に広がる主部と、面直方向に突出するダンパー部と、を備えるメンブレンと、を備え、前記主部は、前記第1駆動源に積み重なる第1領域と、前記第2駆動源に積み重なる第2領域と、前記第1領域と前記第2領域の間に配置される第3領域と、を備え、前記ダンパー部は、前記第1領域及び前記第3領域をつなぐ第1部分と、前記第2領域及び前記第3領域をつなぐ第2部分と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置されて前記基板を振動させる第1駆動源と、
前記基板上に、前記第1駆動源と離れて配置されて前記基板を振動させる第2駆動源と、
前記第1駆動源上から前記第2駆動源上に亘って配置されるとともに、面内方向に広がる主部と、面直方向に突出するダンパー部と、を備えるメンブレンと、
を備え、
前記主部は、前記第1駆動源に積み重なる第1領域と、前記第2駆動源に積み重なる第2領域と、前記第1領域及び前記第2領域の間に配置される第3領域と、を備え、
前記ダンパー部は、前記第1領域及び前記第3領域をつなぐ第1部分と、前記第2領域及び前記第3領域をつなぐ第2部分と、を備える、
振動デバイス。
【請求項2】
前記ダンパー部は、前記第1部分及び前記第2部分の一端同士をつなぐ第3部分と、前記第1部分及び前記第2部分の他端同士をつなぐ第4部分と、を備え、前記第1部分、前記第2部分、前記第3部分、及び前記第4部分が連なった周状の形態を有する、
請求項1に記載の振動デバイス。
【請求項3】
前記基板は、枠状のフレーム部と、前記フレーム部の内側に形成された開口部と、を備え、
前記ダンパー部は、前記開口部の縁に沿って周状に設けられる、
請求項2に記載の振動デバイス。
【請求項4】
前記ダンパー部は、前記面直方向に突出する、放物線状の断面形状を有する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の振動デバイス。
【請求項5】
振動デバイスを備え、
前記振動デバイスは、
基板と、
前記基板上に配置されて前記基板を振動させる第1駆動源と、
前記基板上に、前記第1駆動源と離れて配置されて前記基板を振動させる第2駆動源と、
前記第1駆動源上から前記第2駆動源上に亘って配置されるとともに、面内方向に広がる主部と、面直方向に突出するダンパー部と、を備えるメンブレンと、
を備え、
前記主部は、前記第1駆動源に積み重なる第1領域と、前記第2駆動源に積み重なる第2領域と、前記第1領域及び前記第2領域の間に配置される第3領域と、を備え、
前記ダンパー部は、前記第1領域及び前記第3領域をつなぐ第1部分と、前記第2領域及び前記第3領域をつなぐ第2部分と、を備える、
スピーカユニット。
【請求項6】
基板上の互いに離れた位置に、第1駆動源と第2駆動源とを形成する工程と、
前記基板上、前記第1駆動源上、前記第2駆動源上に、フォトレジスト膜を形成する工程と、
前記フォトレジスト膜から所定距離離してフォトマスクを配置して、前記フォトレジスト膜を露光し、前記フォトレジスト膜に、感光部と、突状形状の第1非感光部と、突状形状の第2非感光部と、をそれぞれ形成する工程と、
前記フォトレジスト膜の前記感光部を除去する工程と、
前記感光部が除去されて露出した、前記第1非感光部上及び前記第2非感光部上を含む領域にメンブレンを形成し、前記第1非感光部の前記突状形状及び前記第2非感光部の前記突状形状のそれぞれに倣って突出するダンパー部を形成する工程と、
前記第1非感光部及び前記第2非感光部を除去する工程と、
を含む、振動デバイスの製造方法。
【請求項7】
前記感光部を除去する工程より後に、前記第1非感光部及び前記第2非感光部を加熱する工程をさらに含む、
請求項6に記載の振動デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイス、スピーカユニット、及び振動デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微小電気機械システム(Micro Electro Mechanical Systems:MEMS)における微細加工技術によって作製されたMEMS音響変換器等の振動デバイスが開発されている。
【0003】
特許文献1に、平板状のMEMSアクチュエータと、MEMSアクチュエータによる振動で動作するメンブレンと、メンブレンを補強するためのメンブレンプレートと、メンブレンが渡されるメンブレンフレームと、を備える振動デバイスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0139543号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示のメンブレン、メンブレンプレート、及びメンブレンフレームからなる音響要素は、MEMSアクチュエータの上方に離れて配置される。そのため、振動デバイスが大型化する。また、メンブレンは、メンブレンプレート及びメンブレンフレームのそれぞれに、物理的に拘束されているため、MEMSアクチュエータの振動に応じたメンブレンの変位が抑制され得る。
【0006】
本発明は、小型、かつ、メンブレンの変位が抑制されることを防止する振動デバイス、スピーカユニット、及び振動デバイスの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る振動デバイスは、基板と、前記基板上に配置されて前記基板を振動させる第1駆動源と、前記基板上に、前記第1駆動源と離れて配置されて前記基板を振動させる第2駆動源と、前記第1駆動源上から前記第2駆動源上に亘って配置されるとともに、面内方向に広がる主部と、面直方向に突出するダンパー部と、を備えるメンブレンと、を備え、前記主部は、前記第1駆動源に積み重なる第1領域と、前記第2駆動源に積み重なる第2領域と、前記第1領域及び前記第2領域の間に配置される第3領域と、を備え、前記ダンパー部は、前記第1領域及び前記第3領域をつなぐ第1部分と、前記第2領域及び前記第3領域をつなぐ第2部分と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型、かつ、メンブレンの変位が抑制されることを防止する振動デバイス、スピーカユニット、及び振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る振動デバイスの平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る振動デバイスのA-A断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る振動デバイスの製造方法における第1圧電層と第2圧電層とを形成する工程を説明するための断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る振動デバイスの製造方法における第1圧電層と第2圧電層とを形成する工程を説明するための他の断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る振動デバイスの製造方法における第1圧電層と第2圧電層とを形成する工程を説明するためのさらに他の断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る振動デバイスの製造方法におけるフォトレジスト膜を形成する工程を説明するための断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る振動デバイスの製造方法におけるフォトレジスト膜を露光する工程を説明するための断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る振動デバイスの製造方法におけるフォトレジスト膜の感光部を除去する工程を説明するための断面図である。
図9】本発明の実施形態に係る振動デバイスの製造方法におけるメンブレンを形成する工程を説明するための断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る振動デバイスの製造方法におけるフォトレジスト膜の非感光部を除去する工程を説明するための断面図である。
図11】本発明の実施形態に係る振動デバイスの製造方法におけるフォトレジスト膜の非感光部を除去する工程を説明するための他の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明の実施形態について説明する。各図面において、同一の部材には同一の符号を付す場合がある。また、各図面の説明において、既に説明した部材と同一の構成部についての説明は省略する場合がある。
【0011】
各図面において、方向表現として、X軸、Y軸及びZ軸を有する直交座標を用いる。X軸、Y軸及びZ軸は、互いに直交する。X軸に沿うX方向は、実施形態に係る振動デバイスの幅方向を示すものとする。Y軸に沿うY方向は、実施形態に係る振動デバイスの奥行き方向を示すものとする。Z軸に沿うZ方向は、実施形態に係る振動デバイスの厚さ方向を示すものとする。X方向、Y方向、Z方向のそれぞれにおいて、矢印の向く側を「+側」といい、その反対側を「-側」という。X方向及びY方向を「面内方向」という場合がある。Z方向を「面直方向」という場合がある。ただし、これらは、実施形態に係る振動デバイスの使用時における向きを制限するものではなく、実施形態に係る振動デバイスの向きは任意である。
【0012】
<全体構成>
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る振動デバイス1の全体構成の一例を説明する。図1は、実施形態に係る振動デバイス1の平面図である。図2は、図1のA-A線で切断した振動デバイス1の断面図である。
【0013】
振動デバイス1は、電気信号を、所定の振動数を有する音波に変換する電気音響変換器として利用される。また、振動デバイス1は、例えば、使用者の耳に装着されるスピーカユニットの音源として適用され得る。振動デバイス1を備えるスピーカユニットは、振動デバイス1を収容する筐体をさらに備えることが好ましい。ただし、振動デバイス1の用途は、これに限定されない。
【0014】
図1及び図2に示すように、振動デバイス1は、基板10と、第1圧電層21と、第2圧電層22と、メンブレン30と、を備える。また、図示を省略しているが、振動デバイス1は、第1圧電層21及び第2圧電層22のそれぞれに、電気信号を入出力するための電極をさらに備える。電極は、例えば、基板10の適宜の位置に設けられてよい。ただし、電極の位置は、限定されない。なお、第1圧電層21は、「第1駆動源」の一例である。第2圧電層22は、「第2駆動源」の一例である。
【0015】
まず、基板10の構成を説明する。基板10は、振動デバイス1の土台となる部材である。本実施形態の基板10は、平板状のSOI(Silicon On Insulator)基板をエッチング等で所望の形状に加工して得られたものである。ただし、基板10は、これに限定されず、Si(シリコン)基板、サファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、石英基板、水晶基板、ガラス基板、又はセラミック基板等から構成されるものであってもよい。この中で、微細加工を容易に行える等の観点から、SOI基板やSi基板が、基板10として好ましい。
【0016】
図1に示すように、基板10は、フレーム部11と、フレーム部11の内側に設けられる2本の梁部15a,15bと、梁部15a,15bのそれぞれに支持される片状部12と、を備える。ただし、基板10の構造は、第1圧電層21及び第2圧電層22の振動に応じたメンブレン30の自由振動が担保されていれば、これに限定されない。また、構成の簡素化や加工の容易性等の観点から、フレーム部11、梁部15a,15b、及び片状部12は、構造上一体であることが好ましいが、互いに異なる部材であってもよい。
【0017】
フレーム部11は、枠状の形態を有するとともに、矩形の平面形状を有する。ただし、フレーム部11の平面形状は、矩形に限定されず、円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形等、他の形状であってもよい。
【0018】
本実施形態のフレーム部11は、図1及び図2に示すように、第1長辺部11aと、第2長辺部11bと、第1短辺部11cと、第2短辺部11dと、第1薄片部11eと、第2薄片部11fと、を備える。また、第1長辺部11aと、第2長辺部11bと、第1短辺部11cと、第2短辺部11dと、第1薄片部11eと、第2薄片部11fとに囲まれる領域に、開口部13が形成される。
【0019】
第1長辺部11a及び第2長辺部11bは、それぞれ、X方向に延びる帯状部位である。第1長辺部11a及び第2長辺部11bは、開口部13を挟んで、互いに対向するように離れて配置される。
【0020】
第1短辺部11c及び第2短辺部11dは、それぞれ、Y方向に延びる帯状部位である。第1短辺部11c及び第2短辺部11dの長さは、第1長辺部11a及び第2長辺部11bの長さより短い。第1短辺部11c及び第2短辺部11dは、開口部13を挟んで、互いに対向するように離れて配置される。
【0021】
第1短辺部11cは、第1長辺部11aのX方向-側に位置する一端と、第2長辺部11bのX方向-側に位置する一端とをつなぐ。第2短辺部11dは、第1長辺部11aのX方向+側に位置する他端と、第2長辺部11bのX方向+側に位置する他端とをつなぐ。
【0022】
図2に示すように、第1薄片部11eは、第1短辺部11cの内縁からX方向+側に突出する。第1薄片部11eは、可撓性を有する板状部位である。図2に示すように、第1薄片部11eは、第1圧電層21の先端側と重なり合う。第1圧電層21の振動に応じて、第1薄片部11eの先端側が、面直方向に撓む。
【0023】
第2薄片部11fは、第2短辺部11dの内縁からX方向-側に突出する。第2薄片部11fは、可撓性を有する板状部位である。図2に示されるように、第2薄片部11fは、第1薄片部11eに対向する位置に設けられる。また、第2薄片部11fは、第2圧電層22の先端側と重なり合う。第2圧電層22の振動に応じて、第2薄片部11fの先端側が、面直方向に撓む。
【0024】
梁部15a,15bのそれぞれは、可撓性を有する長尺薄板状の部材である。梁部15aは、X方向に延び、第1薄片部11e及び第2薄片部11fに架け渡される。梁部15bは、梁部15aと同様、X方向に延びる。また、梁部15bは、梁部15aとは異なる位置で、第1薄片部11e及び第2薄片部11fに架け渡される。梁部15bは、片状部12を挟んで、梁部15aと対向するように配置される。
【0025】
片状部12は、第1薄片部11e、第2薄片部11f、梁部15a,15bに囲まれる領域に配置される。本実施形態の片状部12は、剛性を有し、かつ、可撓性を有する平板状の部材である。本実施形態の片状部12は、矩形の平面形状を有する。ただし、片状部12の形態は、これに限定されない。
【0026】
図2に示すように、片状部12は、メンブレン30の例えば中央部(例えば、別途説明する第3領域313)に接合される。片状部12がメンブレン30に接合されることで、メンブレン30が、第1圧電層21及び第2圧電層22の振動とは異なる位相で独立に振動することを防ぐことができる。これにより、第1圧電層21及び第2圧電層22の共振振動数で、メンブレン30を振動させることができ、所望の音域の音波を適切に生成することができる。
【0027】
次に、第1圧電層21及び第2圧電層22の構成を説明する。第1圧電層21及び第2圧電層22は、印加された電気エネルギーを機械エネルギーに変換する圧電材料を含んで構成される層である。第1圧電層21及び第2圧電層22は、振動デバイス1の振動源として機能する。第1圧電層21及び第2圧電層22は、それぞれ、交流信号の入力に応じて、面直方向に共振振動する。第1圧電層21及び第2圧電層22は、基板10を振動させる。
【0028】
第1圧電層21及び第2圧電層22として、ZnO(酸化亜鉛)、AlN(窒化アルミニウム)、及びPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等を含む圧電薄膜が挙げられる。第1圧電層21及び第2圧電層22のそれぞれは、単層の圧電膜から構成される、いわゆるユニモルフ型の圧電層であってもよい。また、第1圧電層21及び第2圧電層22のそれぞれは、互いに異なる2層の圧電膜から構成される、いわゆるバイモルフ型の圧電層であってもよい。
【0029】
第1圧電層21は、基板10の表面上に配置される。具体的には、第1圧電層21は、フレーム部11の第1長辺部11a上から第1薄片部11e上に亘って配置される。
【0030】
第2圧電層22は、基板10上の、第1圧電層21から離れた位置に配置される。具体的には、第2圧電層22は、フレーム部11の第2長辺部11b上から第2薄片部11f上に亘って配置される。第1圧電層21及び第2圧電層22は、片状部12を挟んで、対向する。
【0031】
第1圧電層21及び第2圧電層22は、互いに異なる電極と電気的に接続される。それぞれの電極からの電気信号が、第1圧電層21及び第2圧電層22に入力されることで、第1圧電層21及び第2圧電層は、所定の共振振動数で振動する。
【0032】
次に、メンブレン30の構成を説明する。メンブレン30は、可撓性の膜状部材である。本実施形態のメンブレン30は、樹脂製である。ただし、メンブレン30の材料は、これに限定にされず、例えば、可撓性を有するゴム、セラミックス、金属であってもよい。
【0033】
図1に示すように、本実施形態のメンブレン30の平面形状は、矩形であるが、これに限定されない。メンブレン30の平面形状は、円形、楕円形、三角形、五角形以上の多角形等の他の形状であってもよい。
【0034】
メンブレン30は、第1圧電層21上から第2圧電層22上に亘って配置される。メンブレン30は、第1圧電層21及び第2圧電層22の振動に応じて振動する。これにより、第1圧電層21及び第2圧電層22の共振振動数に応じた、例えば、可聴域の振動数を有する音波が生成される。
【0035】
メンブレン30は、主部31と、ダンパー部32と、を備える。主部31は、メンブレン30において、面状に広がる部位である。すなわち、主部31は、メンブレン30において面内方向に広がる部位である。また、ダンパー部32は、メンブレン30において、面直方向に突出する部位である。主部31とダンパー部32とは、構成の簡素化や加工の容易性等の観点から、構造上一体であることが好ましいが、互いに異なる部材であってもよい。
【0036】
図1及び図2に示すように、主部31は、第1圧電層21に積み重なる第1領域311と、第2圧電層22に積み重なる第2領域312と、第1領域311と第2領域312の間に配置される第3領域313と、を含む。第1領域311、第2領域312、及び第3領域313のそれぞれは、面状に広がる領域である。
【0037】
図1に示される第1領域311の平面形状及び第2領域312の平面形状は、矩形であるが、これに限定されない。第1領域311の平面形状及び第2領域312の平面形状は、例えば、第1圧電層21及び第2圧電層22の平面形状等に応じて、適宜変更され得る。また、第3領域313の平面形状も、矩形であるが、これに限定されない。第3領域313の平面形状は、例えば、第1領域311又は第2領域312の平面形状等に応じて、適宜変更され得る。
【0038】
第1領域311は、第1圧電層21に固定される。また、第2領域312は、第2圧電層22に固定される。これに対して、第3領域313は、第1圧電層21及び第2圧電層22の振動に応じて振動する。なお、第1領域311及び第2領域312は、「固定部」の一例である。また、第3領域313は、「可動部」の一例である。
【0039】
本実施形態の主部31は、さらに、第4領域314と、第5領域315と、を備える。第4領域314及び第5領域315も、第1領域311、第2領域312、及び第3領域313と同様、面状に広がる領域である。第4領域314の平面形状及び第5領域315の平面形状も、図1に示される形状に限定されず、適宜変更され得る。主部31は、例えば、主部31の平面形状に応じて、第1領域311、第2領域312、第3領域313、第4領域314、及び第5領域315以外の他の領域を含んでいてもよい。
【0040】
第4領域314は、第1領域311、第2領域312、及び第3領域313よりY方向+側に配置される。第4領域314は、開口部13のY方向+側の領域、及びフレーム部11のY方向+側の領域のそれぞれと重なる。本実施形態において、第4領域314と重なるフレーム部11のY方向+側の領域は、第1長辺部11a、第1短辺部11cのY方向+側の領域、及び第2短辺部11dのY方向+側の領域に対応する。
【0041】
第4領域314において、フレーム部11のY方向+側の領域に重なる領域は、「固定部」の一例である。また、第4領域314において、開口部13のY方向+側の領域に重なる領域は、フレーム部11に拘束されず、メンブレン30の振動によって振動し得るため、「可動部」の一例である。
【0042】
第5領域315は、開口部13のY方向-側の領域、及びフレーム部11のY方向-側の領域のそれぞれと重なる。本実施形態において、第5領域315と重なるフレーム部11のY方向-側の領域は、第2長辺部11b、第1短辺部11cのY方向-側の領域、及び第2短辺部11dのY方向-側の領域に対応する。
【0043】
第5領域315において、フレーム部11のY方向-側の領域に重なる領域は、「固定部」の一例である。また、第5領域315において、開口部13のY方向-側の領域に重なる領域は、フレーム部11に拘束されず、メンブレン30の振動によって振動し得るため、「可動部」の一例である。
【0044】
ダンパー部32は、主部31の互いに異なる位置からそれぞれ立ち上がり、頂部でつながる2つの面を含む。本実施形態のダンパー部32は、図2に示すように、略放物線状の断面形状を有する。ただし、ダンパー部32の断面形状は、これに限定されない。
【0045】
ダンパー部32を構成する2つの面のそれぞれは、例えば、頂部側に向かうに従い、互いに近づく傾斜面や湾曲面であってもよい。また、図2に示すように、2つの面に囲まれる内側の領域は、中空であることが好ましい。ただし、メンブレン30が振動する際、2つの面のそれぞれと接合する主部31からの引っ張り力を受けて、ダンパー部32が変形可能であれば、2つの面に囲まれる内側の領域は、中空でなくてもよい。
【0046】
本実施形態のダンパー部32は、メンブレン30の面内の所定範囲に延びて形成された、トンネル状の形態を有する。ダンパー部32は、1つ以上の箇所で屈曲していてもよいし、屈曲箇所等を有さない直線状であってもよい。また、ダンパー部32の幅は、ダンパー部32の全域で同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
図1に示すように、ダンパー部32は、第1部分321と、第2部分322と、を備える。第1部分321は、フレーム部11における第1薄片部11eのX方向+側の端部上に沿って形成される。また、第1部分321は、主部31の第1領域311及び第3領域313をつなぐ。第2部分322は、フレーム部11における第2薄片部11fのX方向-側の端部上に沿って形成される。また、第2部分322は、主部31の第2領域312及び第3領域313をつなぐ。
【0048】
このように、ダンパー部32は、主部31の互いに異なる領域に連なる。そのため、メンブレン30が振動する際、ダンパー部32は、主部31の互いに異なる領域のそれぞれから、例えば逆向きの張力を受け得る。例えば、図2に示される例の場合、ダンパー部32の第1部分321は、主部31の第1領域311からX方向-側に向く張力を受けるとともに、主部31の第3領域313からX方向+側に向く張力を受ける。これにより、ダンパー部32の第1部分321は、X方向+側とX方向-側に、それぞれ引っ張られて変形する。
【0049】
ダンパー部32の第2部分322に関しても、メンブレン30の振動に応じて、主部31の第2領域312からX方向+側に向く張力を受けるとともに、主部31の第3領域313からX方向-側に向く張力を受ける。これにより、ダンパー部32の第2部分322は、X方向+側とX方向-側に、それぞれ引っ張られて変形する。
【0050】
ダンパー部32の第1部分321及び第2部分322のそれぞれが、X方向+側とX方向-側に向かって変形することにより、第3領域313の面直方向への変位が、第1圧電層21に固定された第1領域311からの張力及び第2圧電層22に固定された第2領域312からの張力によって抑制されることを緩和できる。その結果、第3領域313が、所望の振動数で大きく変位し、第3領域313から発せられる音波の音圧を高めることができる。すなわち、第3領域313から発せられる音波の音質を高めることができる。
【0051】
ダンパー部32は、さらに、第3部分323と、第4部分324と、を備える。第3部分323は、主部31における第4領域314の可動部(開口部13のY方向+側の領域に重なる領域)と固定部(フレーム部11のY方向+側の領域と重なる領域)とをつなぐ。
【0052】
ダンパー部32の第3部分323は、メンブレン30の振動に応じて、第4領域314における可動部と固定部のそれぞれから、互いに逆向きの張力を受ける。これにより、ダンパー部32の第3部分323は、それぞれの張力の向きに対応する方向に変形する。その結果、メンブレン30が振動する際、第4領域314における可動部の変位が、固定部からの張力で抑制されることを緩和できる。
【0053】
第4部分324は、主部31における第5領域315の可動部(開口部13のY方向-側の領域に重なる領域)と固定部(フレーム部11のY方向-側の領域と重なる領域)とをつなぐ。
【0054】
ダンパー部32の第4部分324は、メンブレン30の振動に応じて、第5領域315における可動部と固定部のそれぞれから、互いに逆向きの張力を受ける。これにより、ダンパー部32の第4部分324は、それぞれの張力の向きに対応する方向に変形する。その結果、メンブレン30が振動する際、第5領域315における可動部の変位が、固定部からの張力で抑制されることを緩和できる。
【0055】
本実施形態のダンパー部32は、図1に示すように、フレーム部11と開口部13との境界である、開口部13の縁に沿って、周状に形成されることが好ましい。これにより、主部31における可動部全域の変位が、固定部からの張力で抑制されることを緩和できる。
【0056】
ダンパー部32の形態は、周状に限定されない。ダンパー部32の第1部分321及び第2部分322は、主部31から強い張力を受け得る。そのため、ダンパー部32は、少なくとも第1部分321及び第2部分322を備えることが好ましい。ただし、ダンパー部32の形態は、これに限定されない。
【0057】
以上の説明のように、ダンパー部32は、主部31における可動部の変位が固定部からの張力で抑制されることを緩和する機能を有する。ダンパー部32の形態は、同様の機能を有するものであれば、限定されない。また、本実施形態のメンブレン30は、ダンパー部32を1つ備えるが、ダンパー部32の数は、複数であってもよい。さらに、ダンパー部32が複数設けられる場合、それぞれのダンパー部32は、適宜の位置に配置されてよい。
【0058】
本実施形態の振動デバイス1において、基板10上に第1圧電層21(第1駆動源)及び第2圧電層22(第2駆動源)が配置される。また、第1圧電層21上及び第2圧電層22上に亘って、第1圧電層21及び第2圧電層22のそれぞれに接合するよう、メンブレン30が配置されている。これにより、振動デバイス1のサイズ、特に、厚さを低減させることができる。また、基板10上に、第1圧電層21、第2圧電層22、及びメンブレン30を順次積層する簡便な工程によって、振動デバイス1が得られる。そのため、第1圧電層21、第2圧電層22、及びメンブレン30の組付け誤差を低減することができる。
【0059】
<製造方法>
次に、図3図11を参照して、振動デバイス1の製造方法の一例を説明する。実施形態の振動デバイス1の製造方法は、第1圧電層21と第2圧電層22とを形成する工程と、フォトレジスト膜60を形成する工程と、フォトレジスト膜60を露光する工程と、フォトレジスト膜60の感光部を除去する工程と、メンブレン30を形成する工程と、フォトレジスト膜60の非感光部を除去する工程と、を含む。
【0060】
まず、図3図5を参照して、第1圧電層21と第2圧電層22とを形成する工程を説明する。図3は、第1圧電層21と第2圧電層22とを形成する前の積層体2Aの断面図である。図4は、第1圧電層21と第2圧電層22とを形成した後の積層体2Bの断面図である。図5は、基板10に第1凹部131及び第2凹部132を形成した後の積層体2Cの断面図である。
【0061】
図3に示すように、平板状の基板10上に、面状に広がる一連の圧電層20を形成する。これにより、積層体2Aが作製される。圧電層20の形成方法として、例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、化学気相堆積(Chemical Vapor Deposition:CVD)法等のドライプロセスが挙げられる。ただし、圧電層20の形成方法は、これらに限定されない。
【0062】
続いて、図4に示すように、圧電層20の所定領域を除去して、基板10上に互いに離れて配置される第1圧電層21及び第2圧電層22を形成する。これにより、積層体2Bが作製される。第1圧電層21及び第2圧電層22の形成方法として、例えば、ドライエッチングやウェットエッチング等のエッチング法が挙げられる。ただし、第1圧電層21及び第2圧電層22の形成方法は、これらに限定されない。
【0063】
続いて、図5に示すように、例えば、基板10上の、第1圧電層21及び第2圧電層22の間の領域に、基板10の表面から窪む第1凹部131及び第2凹部132を形成する。これにより、積層体2Cが作製される。第1凹部131及び第2凹部132の形成方法として、例えば、ドライエッチングやウェットエッチング等のエッチング法が挙げられる。ただし、第1凹部131及び第2凹部132の形成方法は、これらに限定されない。
【0064】
次に、図6を参照して、フォトレジスト膜60を形成する工程を説明する。図6は、フォトレジスト膜60を形成した後の積層体2Dの断面図である。本実施形態のフォトレジスト膜60は、樹脂と、感光剤と、溶剤と、を含む。図6に示すように、基板10上、第1圧電層21上、第2圧電層22上に、フォトレジスト膜60を形成する。また、フォトレジスト膜60は、基板10の第1凹部131及び第2凹部132内にも充填される。これにより、積層体2Dが作製される。フォトレジスト膜60の形成には、インクジェット法、スピンコート法、ディップ法等のウェットプロセス等が挙げられる。ただし、フォトレジスト膜60の形成方法は、これらに限定されない。
【0065】
フォトレジスト膜60を形成した後、フォトレジスト膜60を硬化させるため、積層体2Dを熱処理することが好ましい。熱処理の温度範囲は、フォトレジスト膜60を硬化できれば限定されないが、一例として、80℃から120℃の範囲が挙げられる。
【0066】
次に、図7を参照して、フォトレジスト膜60を露光する工程を説明する。図7は、露光によって、フォトレジスト膜60に、第1非感光部61、第2非感光部62、及び感光部63が形成された状態の積層体2Eの断面図である。なお、フォトレジスト膜60を露光する工程は、「フォトレジスト膜60に、第1非感光部61、第2非感光部62、及び感光部63を形成する工程」の一例である。
【0067】
フォトマスク71,72を、フォトレジスト膜60と対向するように、それぞれ配置する。このとき、フォトマスク71,72とフォトレジスト膜60との距離70Gは、40μm~500μmとする。
【0068】
このように、フォトマスク71,72をフォトレジスト膜60から比較的離れた位置に配置することで、フォトマスク71,72の近傍を通過する、紫外光70uvの一部を回折させる。以下、露光のための紫外光70uvのうち、フォトマスク71,72の近傍を通過して回折した光を「回折光」という。これに対して、露光のための紫外光70uvのうち、フォトレジスト膜60へ直進する光を「直進光」という。
【0069】
回折光は、フォトレジスト膜60の表面から斜めに入射する。また、直進光は、フォトレジスト膜60の表面から垂直に入射する。回折光の強度は、直進光の強度に比べて低い。すなわち、回折光は、フォトレジスト膜60の奥まで進まない。その結果、例えば、第1非感光部61及び第2非感光部62のように、傾斜面を有する非感光領域が形成される。
【0070】
次に、図8を参照して、フォトレジスト膜60の感光部63を除去する工程を説明する。この工程は、いわゆる現像工程に対応する。図8は、感光部63を除去した後の積層体2Fの断面図である。図8に示すように、露光後のフォトレジスト膜60のうち、第1非感光部61、第2非感光部62、第1凹部131、及び第2凹部132を残しながら、感光部63を除去する。これにより、積層体2Fが作製される。感光部63の除去方法として、例えば、感光部63を溶解させる溶液を用いて、感光部63の領域をエッチングする方法が挙げられる。ただし、感光部63の除去方法は、これに限定されない。
【0071】
フォトレジスト膜60の感光部63を除去した後、積層体2Fを加熱する工程をさらに行うことが好ましい。この工程によって、第1非感光部61及び第2非感光部62を加熱する。第1非感光部61及び第2非感光部62の加熱温度は、図6を参照して説明したフォトレジスト膜60を硬化させるための熱処理の温度に対して、20℃から50℃高いことが好ましい。
【0072】
第1非感光部61及び第2非感光部62のさらなる加熱によって、第1非感光部61及び第2非感光部62の内部に残存している溶剤や水分が揮発する。これにより、第1非感光部61及び第2非感光部62は、それぞれ縮む。このとき、第1非感光部61及び第2非感光部62の基板10に近い部分は、基板10に拘束されていることから、縮む度合いが少ない。これに対して、第1非感光部61及び第2非感光部62において、基板10から遠ざかるに従い、基板10からの拘束力が減るため、縮む度合いが大きくなる。すなわち、第1非感光部61及び第2非感光部62の幅が、基板10から遠ざかるに従って小さくなる。これにより、第1非感光部61及び第2非感光部62における各表面が、さらに基板10側に傾斜する。
【0073】
次に、図9を参照して、メンブレン30を形成する工程を説明する。図9は、メンブレン30を形成した後の積層体2Gの断面図である。図9に示すように、感光部63が除去されたことで露出した、基板10上、第1圧電層21上、第2圧電層22上、第1非感光部61上、及び第2非感光部62上のそれぞれに、メンブレン30を形成する。これにより、積層体2Gが作製される。メンブレン30の形成には、インクジェット法、スピンコート法、ディップ法等のウェットプロセス等が挙げられる。ただし、メンブレン30の形成方法は、これらに限定されない。
【0074】
メンブレン30のうち、第1非感光部61上及び第2非感光部62上にそれぞれ形成された部位は、第1非感光部61上及び第2非感光部62の突状形状に倣って突出する。これにより、ダンパー部32の第1部分321及び第2部分322が形成される。同様に、ダンパー部32の第3部分323及び第4部分324が形成される。これに対して、メンブレン30において、ダンパー部32以外の残余の領域は、面状に広がった平坦な状態となる。メンブレン30において、面状に広がる領域は、主部31に対応する。主部31として、例えば、第1領域311、第2領域312、及び第3領域313が、形成される。なお、メンブレンを形成する工程は、「ダンパー部を形成する工程」の一例である。
【0075】
次に、図10及び図11を参照して、フォトレジスト膜60の非感光部を除去する工程を説明する。図10は、基板10に開口部13を形成した後の積層体2Hの断面図である。また、図11は、フォトレジスト膜60の非感光部を除去した後の積層体2Iの断面図である。
【0076】
まず、図10に示すように、基板10の略中央を除去し、基板10に凹状の領域を形成する。凹状の領域は、開口部13に対応する。これにより、積層体2Iが作製される。開口部13の形成方法として、例えば、ドライエッチングやウェットエッチング等のエッチング法が挙げられる。ただし、開口部13の形成方法は、これらに限定されない。
【0077】
続いて、図11に示すように、フォトレジスト膜60の非感光部である、第1非感光部61上及び第2非感光部62を除去する。これにより、ダンパー部32の第1部分321及び第2部分322の内側が、中空になる。また、第1凹部131に充填された非感光部を除去する。また、第2凹部132に充填された非感光部を除去する。これにより、開口部13が、基板10の面直方向に貫通する。以上より積層体2Iが作製される。積層体2Iは、振動デバイス1に対応する。フォトレジスト膜60の非感光部を除去する方法は、非感光部を溶解させる溶液を用いて、非感光部の領域をエッチングする方法が挙げられる。ただし、非感光部の除去方法は、これに限定されない。
【0078】
以上の各工程を経て、振動デバイス1を製造することができる。ただし、振動デバイス1の製造方法は、他の工程を適宜含んでいてもよい。
【0079】
本実施形態に係る振動デバイス1の製造方法によれば、元々平坦なフォトレジスト膜60への露光及び現像によって、第1非感光部61及び第2非感光部62をそれぞれ形成することができる。また、フォトレジスト膜60の第1非感光部61及び第2非感光部62を型として、ダンパー部32を設けることができる。すなわち、ダンパー部32を設けるために、専用の金型等の高価な設備を別途準備する必要がない。これにより、本実施形態に係る振動デバイス1の製造方法によれば、ダンパー部32が形成されたメンブレン30を、安価かつ簡便に作製することができる。
【0080】
以上、好ましい実施形態等について詳説した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上述した実施形態について、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、種々の変形及び置換を加えることができる。
【0081】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 基板と、
前記基板上に配置されて前記基板を振動させる第1駆動源と、
前記基板上に、前記第1駆動源と離れて配置されて前記基板を振動させる第2駆動源と、
前記第1駆動源上から前記第2駆動源上に亘って配置されるとともに、面内方向に広がる主部と、面直方向に突出するダンパー部と、を備えるメンブレンと、
を備え、
前記主部は、前記第1駆動源に積み重なる第1領域と、前記第2駆動源に積み重なる第2領域と、前記第1領域及び前記第2領域の間に配置される第3領域と、を備え、
前記ダンパー部は、前記第1領域及び前記第3領域をつなぐ第1部分と、前記第2領域及び前記第3領域をつなぐ第2部分と、を備える、
振動デバイス。
<2> 前記ダンパー部は、前記第1部分及び前記第2部分の一端同士をつなぐ第3部分と、前記第1部分及び前記第2部分の他端同士をつなぐ第4部分と、を備え、前記第1部分、前記第2部分、前記第3部分、及び前記第4部分が連なった周状の形態を有する、
前記<1>に記載の振動デバイス。
<3> 前記基板は、枠状のフレーム部と、前記フレーム部の内側に形成された開口部と、を備え、
前記ダンパー部は、前記開口部の縁に沿って周状に設けられる、
前記<2>に記載の振動デバイス。
<4> 前記ダンパー部は、前記面直方向に突出する、放物線状の断面形状を有する、
前記<1>から前記<3>のいずれか1つに記載の振動デバイス。
<5> 振動デバイスを備え、
前記振動デバイスは、
基板と、
前記基板上に配置されて前記基板を振動させる第1駆動源と、
前記基板上に、前記第1駆動源と離れて配置されて前記基板を振動させる第2駆動源と、
前記第1駆動源上から前記第2駆動源上に亘って配置されるとともに、面内方向に広がる主部と、面直方向に突出するダンパー部と、を備えるメンブレンと、
を備え、
前記主部は、前記第1駆動源に積み重なる第1領域と、前記第2駆動源に積み重なる第2領域と、前記第1領域及び前記第2領域の間に配置される第3領域と、を備え、
前記ダンパー部は、前記第1領域及び前記第3領域をつなぐ第1部分と、前記第2領域及び前記第3領域をつなぐ第2部分と、を備える、
スピーカユニット。
<6> 基板上の互いに離れた位置に、第1駆動源と第2駆動源とを形成する工程と、
前記基板上、前記第1駆動源上、前記第2駆動源上に、フォトレジスト膜を形成する工程と、
前記フォトレジスト膜から所定距離離してフォトマスクを配置して、前記フォトレジスト膜を露光し、前記フォトレジスト膜に、感光部と、突状形状の第1非感光部と、突状形状の第2非感光部と、をそれぞれ形成する工程と、
前記フォトレジスト膜の前記感光部を除去する工程と、
前記感光部が除去されて露出した、前記第1非感光部上及び前記第2非感光部上を含む領域にメンブレンを形成し、前記第1非感光部の前記突状形状及び前記第2非感光部の前記突状形状のそれぞれに倣って突出するダンパー部を形成する工程と、
前記第1非感光部及び前記第2非感光部を除去する工程と、
を含む、振動デバイスの製造方法。
<7> 前記感光部を除去する工程より後に、前記第1非感光部及び前記第2非感光部を加熱する工程をさらに含む、
前記<6>に記載の振動デバイスの製造方法。
【符号の説明】
【0082】
1 振動デバイス、10 基板、11 フレーム部、13 開口部、21 第1圧電層、22 第2圧電層、30 メンブレン、31 メンブレンの主部、311 主部の第1領域、312 主部の第2領域、313 主部の第3領域、314 主部の第4領域、315 主部の第5領域、32 メンブレンのダンパー部、321 ダンパー部の第1部分、322 ダンパー部の第2部分、323 ダンパー部の第3部分、324 ダンパー部の第4部分、325 ダンパー部の第5部分、60 フォトレジスト膜、61 第1非感光部、62 第2非感光部、63 感光部、71,72 フォトマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11