(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158345
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】伸縮ブームの潤滑構造
(51)【国際特許分類】
B66C 13/00 20060101AFI20241031BHJP
B66C 23/693 20060101ALI20241031BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20241031BHJP
B66F 9/06 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
B66C13/00 B
B66C23/693 N
B66F11/04
B66F9/06 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073477
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 輝
【テーマコード(参考)】
3F205
3F333
【Fターム(参考)】
3F205AA05
3F205CA03
3F205CB18
3F333AA11
3F333AB04
(57)【要約】
【課題】主に、間隔保持部および潤滑部の共通化によって、部材または設置スペースの少なくとも一方を削減し得るようにする。
【解決手段】
複数のブーム31,32が入れ子状に伸縮可能に嵌挿され、ブーム31,32に、リテーナ36に保持されたスライドプレート34が介在され、隣接するブーム31,32間に潤滑用のグリスを供給するグリス吐出口35が設けられる。リテーナ36は、シム37を保持する保持ピン41を設ける位置に、グリス吐出口35が形成される。スライドプレート34は、リテーナ36またはシム37と当接する取付面34aから、隣接するブーム31に面する摺接面34cまで貫通した連通孔45が設けられる。連通孔45は、グリス吐出口35と連通して、吐出されたグリスを取付面34aから摺接面34cに導く。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブームが入れ子状に伸縮可能に嵌挿され、
前記ブームに、リテーナに保持されたスライドプレートが介在され、隣接する前記ブーム間に潤滑用のグリスを供給するグリス吐出口が設けられた伸縮ブームの潤滑構造であって、
前記リテーナは、前記リテーナと前記スライドプレートの間に介在して前記スライドプレートの取付調整をするシムを保持する保持ピンを設ける位置に、前記グリス吐出口が形成され、
前記スライドプレートは、前記リテーナまたは前記シムと当接する取付面から、隣接する前記ブームに面する摺接面まで貫通した連通孔が設けられ、
当該連通孔は、前記グリス吐出口と連通して、吐出されたグリスを前記取付面から前記摺接面に導くことを特徴とする伸縮ブームの潤滑構造。
【請求項2】
請求項1に記載の伸縮ブームの潤滑構造であって、
前記ブームに、グリス給脂口が設けられ、
前記グリス給脂口から前記ブームに設けられた複数箇所の前記リテーナへ向けて複数のグリス管が設けられることを特徴とする伸縮ブームの潤滑構造。
【請求項3】
請求項1に記載の伸縮ブームの潤滑構造であって、
前記ブームの少なくとも1つの側面に、グリス給脂口が1箇所設けられ、
1箇所の前記グリス給脂口から、前記ブームの前記側面に設けられた2箇所の前記リテーナへ向けて各々グリス管が設けられ、
各々の前記グリス管は、先端が、前記リテーナから突出されることで、前記グリス吐出口を有する前記保持ピンになっていることを特徴とする伸縮ブームの潤滑構造。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の伸縮ブームの潤滑構造であって、
前記スライドプレートの前記連通孔は、前記グリス管よりも大径とされていることを特徴とする伸縮ブームの潤滑構造。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の伸縮ブームの潤滑構造であって、
前記リテーナは、前記シムを保持するために、前記保持ピンを、複数の位置に有しており、
前記グリス吐出口は、複数の前記保持ピンの位置のうち、前記ブームの先端部に最も近い前記保持ピンの位置に設けられていることを特徴とする伸縮ブームの潤滑構造。
【請求項6】
請求項3に記載の伸縮ブームの潤滑構造であって、
前記ブームの前記側面の1箇所の前記グリス給脂口から、前記ブームの前記側面に設けられた2箇所の前記リテーナへ向けて延びる各々の前記グリス管は、前記グリス給脂口を中心として各々の前記リテーナへ向かって同一長さ、同一内径の対称形状になっていることを特徴とする伸縮ブームの潤滑構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、伸縮ブームの潤滑構造に関する。
【背景技術】
【0002】
伸縮ブームは、複数のブームが入れ子状に伸縮可能に嵌挿され、ブームに、ブーム間の接触を防止するための間隔保持部として、リテーナに保持されたスライドプレートが介在されたものである(例えば、特許文献1参照)。ブームが伸縮する際には、スライドプレートは隣接するブームに対して摺動する。そのため、伸縮ブームには、スライドプレートの摺動を円滑にするための潤滑部として、隣接するブーム間に潤滑用のグリスを供給するグリス吐出口が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、間隔保持部および潤滑部を別々の構成にしていた。そのため、間隔保持部および潤滑部を別々にするのに、多くの部材や、多くの取付けスペースが必要になっていた。そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
伸縮ブームは、複数のブームが入れ子状に嵌挿されて伸縮可能なブームに、リテーナに保持されたスライドプレートが介在され、隣接するブーム間にグリスを供給するグリス吐出口が設けられたものである。
上記課題に対し、本発明の伸縮ブームの潤滑構造では、リテーナは、スライドプレートとの間に介在されるシムを保持する保持ピンの位置にグリス吐出口が形成される。スライドプレートは、リテーナまたはシムへの取付面から、隣接するブームとの摺接面まで連通孔が貫通される。連通孔は、グリス吐出口と連通してグリスを取付面から摺接面に導く。
この場合において、ブームに設けられたグリス給脂口から、ブームに設けられた複数箇所のリテーナへ向けて複数のグリス管が設けられても良い。
または、ブームの少なくとも1つの側面に設けられた1箇所のグリス給脂口から、ブームの側面に設けられた2箇所のリテーナへ向けて、グリス管が各々設けられ、各グリス管は、先端が、リテーナから突出されてグリス吐出口を有する保持ピンになっていても良い。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記構成により、間隔保持部(スライドプレート)および潤滑部(グリス吐出口)が共通化され、部材または設置スペースの少なくとも一方を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例1にかかる伸縮ブームの潤滑構造を適用する建設用車両(橋梁点検車)の、格納時および走行時の状態を示す側面図である。
【
図2】
図1の建設用車両(橋梁点検車)の作業時の状態を示す背面図である。
【
図3】
図2の伸縮ブームを示す図である。このうち、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【
図4】
図3における、ブームの基端部または後端部の斜視図である。
【
図5】
図4のブームのリテーナにシムとスライドプレートとを取付ける状態を示す、一部省略した分解斜視図である。
【
図8A】(a)はシムを取付けずにリテーナにスライドプレートを設置した状態を示す、
図7の部分的な拡大横断面図、(b)は(a)のスライドプレートを図の左側から見た図である。
【
図8B】(a)はシムを介してリテーナにスライドプレーを設置した状態を示す、
図7の部分的な拡大横断面図、(b)は(a)のスライドプレートを図の左側から見た図である。
【
図9】実施例および変形例を示す、
図6と同様の側面図である。このうち、(a)は実施例、(b)は第一変形例、(c)は第二変形例、(d)は第三変形例である。
【
図10】実施例2にかかる伸縮ブームの潤滑構造である。このうち、(a)はブームの端面図、(b)はブームの後端部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態は、
図1~
図10を用いて詳細に説明される。
【実施例0009】
<構成>以下は、この実施例を示す橋梁1(
図2)の点検に用いる橋梁点検車2の構成である。
〔橋梁点検車〕
図1の走行状態を示す側面図、および、
図2の作業状態を示す背面図に示すように、橋梁点検車2は、前側にキャビン4、後側に荷台5を有して車輪3で走行する。荷台5には、複数の伸縮ブーム6~8を介して、作業台9が取付けられている。荷台5は、作業時に車体を安定させるアウトリガー11を、両側部に有する。
【0010】
図2に示すように、荷台5の上には、旋回部13を介して、ブーム支持部14が水平旋回可能に設置されている。なお、各伸縮ブーム6~8は、旋回部13に近い側を基端側または後側とし、作業台9に近い側を先端側または前側とする。また、伸縮ブーム6~8は、ブーム伸縮方向12の、伸長側を前側とし、収縮側を後側とする。
【0011】
ブーム支持部14には、第一の伸縮ブーム6の後端部近傍が水平な第一の軸15を中心に起伏可能に取付けられる。第一の伸縮ブーム6は、ブーム支持部14と第一の伸縮ブーム6の中間部との間に設置された起伏シリンダ16の伸縮によって上下に起伏される。第一の伸縮ブーム6の先端には、第二の伸縮ブーム7が第二の軸17および揺動部18を介して揺動可能に取付けられる。第二の伸縮ブーム7の先端には、第三の伸縮ブーム8の後端部が旋回部19を介して旋回可能に取付けられる。第三の伸縮ブーム8の先端部には、作業台9が旋回部21を介して旋回可能に取付けられる。
【0012】
各伸縮ブーム6~8は、断面の大きさが異なる長尺で筒状のブームを複数入れ子式に挿入した構成を有する。
図2では、第一の伸縮ブーム6は、第一ブーム6a,第二ブーム6bを有し、第二の伸縮ブーム7は、第一ブーム7a~第五ブーム7eを有し(
図3)、第三の伸縮ブーム8は、第一ブーム8a~第三ブーム8cを有するが、伸縮ブーム6~8は、上記の構成に限らない。複数の伸縮ブーム6~8は、各々の長手方向をブーム伸縮方向12として伸縮する。伸縮ブーム6~8の伸縮は、外側のブームに対する内側のブームの突出または収納で行われる。
【0013】
図2に示すように、橋梁点検車2は、伸縮ブーム6~8を適宜、伸縮、起伏、旋回することで橋梁1の点検作業を行う。
【0014】
橋梁1の点検時には、例えば、第一の伸縮ブーム6は、伸縮起伏によってほぼ水平な横向き姿勢とされ、先端が橋梁1の側部を超えるように伸長する。第二の伸縮ブーム7は、第一の伸縮ブーム6によってほぼ垂直な縦向き姿勢とされ、上側から下側へ伸長する。第三の伸縮ブーム8は、第二の伸縮ブーム7に支持され、ほぼ水平な横向き姿勢とされ伸長する。作業台9は、第三の伸縮ブーム8の先端に水平旋回可能に取付けられ、橋梁1の下面などを点検することが可能になる。
〔潤滑構造〕
【0015】
ここで、伸縮ブーム6~8には、隣接する各ブームの間隔を保持し、円滑に伸縮動ができるようスライドプレート34(
図4)が設けられ、グリスを供給することで、ブーム伸縮の潤滑性を向上させることができる。
【0016】
しかし、複数の伸縮ブーム6~8には、複数の箇所にスライドプレート34が取付けられ、グリスを給脂する潤滑部の箇所が多くなっている。そのため、スライドプレート34などの間隔保持部と、潤滑部とが別々の構成になっていると、使用する部材が多くなったり、取付けスペースが多くなったりするなどの問題がより多く発生する。
【0017】
この実施例は、上記のような課題に対する伸縮ブーム潤滑構造に関するものである。なお、この伸縮ブームの潤滑構造は、橋梁点検車2に限らず、高所作業車や、クレーンや、その他の建設用車両の伸縮ブームに対しても適用可能である。
〔潤滑構造の具体例〕
【0018】
以下、伸縮ブーム7の潤滑構造で説明する。なお、伸縮ブーム6,8については、特に説明しないが、伸縮ブーム7と同様の潤滑構造にできる。
【0019】
間隔保持部は、リテーナ36、シム37,38、スライドプレート34などで構成される。また、潤滑部は、グリス給脂口51、グリス管52、グリス吐出口35などで構成される。
【0020】
(1)
図3は、伸縮ブーム7の全体図である。
図4、
図5は、内側に挿通されるブーム32の後端部を示す図である。
図6は隣接するブーム31とブーム32との側面図である。相対的に外側に位置するブーム31の内側に、ブーム32が伸縮可能に嵌挿されている。ブーム32には、ブーム31との接触を防止するためのスライドプレート34が、リテーナ36に保持された状態で介在されている。
【0021】
本実施例の伸縮ブーム7の潤滑構造では、リテーナ36は、シム37,38を保持する保持ピン41,42を設ける位置に、グリス吐出口35(
図5)が形成される。スライドプレート34は、リテーナ36またはシム37,38と当接する取付面34a,34bから、外側に位置するブーム31に面する摺接面34cまで貫通した連通孔45が設けられる。連通孔45は、グリス吐出口35と連通して、吐出されたグリスを取付面34aから摺接面34cに導くように構成される。
【0022】
以下、詳細に説明する。
【0023】
スライドプレート34は、ブーム32の後端外面に設置されて、ブーム31との隙間33を保持する部材であり、間隔保持部の主要部となる。スライドプレート34は、ブーム32の周方向に複数箇所設置される。スライドプレート34は、ブーム伸縮方向12に延びるほぼ均一断面の部材とされ、ブーム32の伸縮時に、ブーム31に対して摺動する。
【0024】
スライドプレート34は、少なくともリテーナ36に保持される取付面34a,34bと、取付面34a,34bとは反対の側に位置して、ブーム31の内面と対向する摺接面34cと、を有している。スライドプレート34は、ブーム伸縮時には、摺接面34cがブーム31の内面に対して、ブーム伸縮方向12にスライド移動される。なお、スライドプレート34は本実施例では内側ブームの後端部に配置されているが、外側ブームである場合もあり、また、内側ブーム、外側ブームの先端部に配置される場合もある。
【0025】
リテーナ36は、スライドプレート34を保持する保持部材であり、スライドプレート34と共に間隔保持部の主要部を構成する。ブーム32にリテーナ36が取付けられ、リテーナ36がブーム31の内面との間でスライドプレート34を挟むことで、スライドプレート34は、隙間33の内部に保持される。
【0026】
リテーナ36は、ブーム伸縮方向12に延びる板状の部材をほぼ直角に屈曲した断面L字状の本体部分(リテーナ本体)を有する。L字状の本体部分は、内側の二面が、それぞれ保持面36a,36bとなり、ブーム31の内面と対向するようブーム32に取付けられる。リテーナ36は、スライドプレート34に対する保持面36a,36bと、スライドプレート34のブーム伸縮方向12への移動を規制する一対のストッパ面36cと、を有する。
【0027】
スライドプレート34は、リテーナ36の保持面36a,36bの内側で一対のストッパ面36cの間に設置される。リテーナ36の保持面36a,36bには、複数の保持ピン41,42が、あらかじめ立設されているか、または別体の個別の保持ピン41,42を挿入する箇所が設けられる。
【0028】
スライドプレート34は、リテーナ36からブーム31の内面へ向けてスライドプレート34が突出する量を調整して取付けられる。スライドプレート34は、リテーナ36の保持面36a,36bの各面に対して、それぞれ取付調整可能とされ、ブーム31の内面に最適に摺接されるよう位置調整される。
【0029】
シム37,38は、リテーナ36の各保持面36a,36bと、スライドプレート34の対向する取付面34a,34bとの間に設置される平板状の調整部材である。シム37は、リテーナ36の保持面36aに設置され、シム38は、リテーナ36の保持面36bに設置される。シム37,38は、後述の保持ピン41,42でリテーナ36に保持されるためのピン通し孔46を有している。
【0030】
保持ピン41,42は、リテーナ36からのシム37,38の脱落を防止するための部材(脱落防止部材)である。本実施例では、保持ピン41,42は、リテーナ36の保持面36a,36bにほぼ面直に軸状または突起状に設置されているが、保持ピン41,42は、別体として個別の部材を用いてもよい。これに対し、シム37,38は、保持ピン41,42の位置に、ピン通し孔46を有しており、保持ピン41,42をピン通し孔46に通すことで、リテーナ36から脱落しないように保持される。なお、シム37,38は、全ての保持ピン41,42と合う位置にピン通し孔46を多数形成しても良い。
【0031】
スライドプレート34の取付面34a,34bは、リテーナ36に保持される面である。このうち、取付面34aは、リテーナ36の保持面36aに対向または当接され、取付面34bは、保持面36bに対向または当接される。ピン受穴43,44は、スライドプレート34の取付面34a,34bに形成された、保持ピン41,42との接触を回避する凹部である。ピン受穴43は、保持ピン41を収容し、ピン受穴44は、保持ピン42を収容する。ピン受穴43,44は、保持ピン41,42の突出量よりも若干深い、有底の凹み(有底穴)とするのが一般的である。
【0032】
ブーム32にリテーナ36が取り付けられ、リテーナ36の保持面36a,36bに、保持ピン41,42がシム37,38のピン通し孔46に挿入されることでシム37,38が取り付けられ、さらにスライドプレート34の取付面34a,34b側が保持され、ピン通し孔46から突出した保持ピン41,42は、スライドプレート34のピン受穴43,44に収容されて、一体的に構成される。
【0033】
すなわち、リテーナ36の保持ピン41,42と、シムのピン通し孔46と、スライドプレート34のピン受穴43,44は、それぞれ当接した位置にある。
【0034】
ここで、本実施例の伸縮ブーム7の潤滑構造は、リテーナ36の保持ピン41,42が設けられる位置のうち、少なくとも一つをグリス吐出口35(
図5)としグリス管52が挿通される。さらにグリス吐出口35に当接する位置からスライドプレート34に連通孔45が設けられる。
【0035】
スライドプレート34の連通孔45は、取付面34a,34bと摺接面34cとの間に、スライドプレート34の内部に貫通形成される。連通孔45は、直線的に延びるのが好ましい。連通孔45の形状は、取付面34a、34b側の径と摺接面34c側の径は同一であるが異なっていてもよい。スライドプレート34の連通孔45と、リテーナ36に設けるグリス吐出口35とシム37のピン通し孔46と、は当接する位置が一致するよう配置される。潤滑油であるグリスは、グリス管52を通ってグリス吐出口35から吐出され、スライドプレート34の連通孔45を通ってブーム31との隙間33に吐出される。グリス吐出口35はグリスを吐出する開口部分となり、スライドプレート34の連通孔45の摺接面34c側は潤滑部の出口部分となる。さらに、グリス吐出口35に連通するグリス管52は、連通孔45側に突出してシム37の保持ピン41としても機能する。
【0036】
なお、
図6に示すように、伸縮ブーム7が三段以上のブームで構成されている場合、ブーム32の内部に、別のブーム47(更に内側のブーム)が設置される。この場合、ブーム32と別のブーム47との関係は、ブーム31とブーム32との関係とほぼ同じになる。ブーム32と別のブーム47との隙間49には、スライドプレート34と同様に、別のスライドプレート48が設置される。例えば、第二の伸縮ブーム7の場合、第三ブーム7cが、別のブーム47に相当する。
【0037】
(2)上記において、伸縮ブーム7の潤滑構造は、ブーム32に、グリス給脂口51が設けられる。グリス給脂口51から、ブーム32に設けられた複数箇所のリテーナ36へ向けて複数のグリス管52が設けられても良い。グリス給脂口51とグリス管52とが1対多数の関係になることで、グリス給脂口51とグリス管52とを、1対1の関係に設けた場合よりも、部材を減らすことができる。
【0038】
ここで、グリス給脂口51は、外部のグリスガンによってグリスを注入するための注入口部分であり、潤滑部の入口部分となる。
【0039】
グリス給脂口51は、グリスガンを接続できるように突起状のニップルなどとされて、ブロック状のグリス給脂用部材53に突設される。グリス管52は、グリス給脂口51に給脂されたグリスを、複数のリテーナ36の各グリス吐出口35へ導く管部材であり、グリス給脂口51と各グリス吐出口35との間を連通する。グリス管52は、全てのリテーナ36の各グリス吐出口35に対して、1本ずつ設けられる。グリス給脂口51を有するグリス給脂用部材53には複数のグリス管52が接続される。グリス給脂用部材53は、内部に、各グリス管52に対してグリスを分配する分配部が設けられてもよい。
【0040】
(3)上記において、伸縮ブーム7の潤滑構造は、
図7に示すように、ブーム32の少なくとも1つの側面61に、グリス給脂口51が1箇所設けられても良い。1箇所のグリス給脂口51から、ブーム32の側面61に設けられた2箇所のリテーナ36へ向けて各々グリス管52が設けられる。各々のグリス管52は、先端がリテーナ36から突出されることで、グリス吐出口35であって、保持ピン41,42となる。
【0041】
ここで、ブーム32の側面61,62は、ほぼ角筒状をしたブーム32の周囲を形成する各面である。グリス給脂口51は、例えば、ほぼ長方形断面とされたブーム32における、平行な一対の長辺側の側面61と、平行な一対の短辺側の側面62とのうちの、いずれに設けても良い。なお、ブーム32は、側面61,62の(ブーム伸縮方向12と直交する)幅方向を、それぞれ長辺方向63および短辺方向64と規定する。この実施例では、グリス給脂口51は、ブーム32の一対の長辺側の側面61の両方に対して1箇所ずつ、それぞれ同じ状態で取付けられる。グリス給脂口51は、ブーム32の一対の長辺側の側面61の内側に取付けられる。
【0042】
グリス給脂口51は、ブーム32の側面61に対し、ほぼ面直に設けている。これにより、グリス給脂口51へのグリスの注入方向は、側面61とほぼ面直になる。伸縮ブーム7の最も外側のブームには、外部からグリス給脂口51へアクセスするためのグリスガンの差込孔65(
図3)が貫通形成される。給脂時には、伸縮ブーム7を適宜伸縮させて、差込孔65に各々のグリス給脂口51の位置を重ね合わせ、差込孔65から給脂を行う。そのため、構成するブームの本数が多く、グリス給脂口51の数が増える程、メンテナンスの手間と時間を要するため、グリス管52の数に対し、グリス給脂口51を少なく構成できることは効果的である。
【0043】
グリス管52は、ブーム32のグリス給脂口51を設けた側面61の内面にほぼ沿って設置される。2本のグリス管52は、1つのグリス給脂口51から、各リテーナ36へ向かって互いに長辺方向63の反対側へ延び、先端が保持面36aを貫通して、保持面36aから他の保持ピン41とほぼ同様に突出される。これにより、グリス管52の先端が保持ピン41の代わりとなり、別の部品による保持ピン41が不要になるので、その分、部材が削減される。保持面36aには、グリス管52が貫通する孔が形成され、この孔は、グリス管52との間をシールされる。
【0044】
リテーナ36およびスライドプレート34は、ほぼ長方形断面とされたブーム32の後端部のコーナー部分にそれぞれ設けられる。これにより、リテーナ36およびスライドプレート34は、ブーム32の各側面61に対し幅方向の両側にそれぞれ設置される。この際、リテーナ36は、各コーナー部分において、ブーム32の外側から内側に凹むように取付けられ、リテーナ36の保持面36a,36bは、ブーム32の内側に設けられたグリス管52と連通が可能となりグリス吐出口35が形成される。なお、伸縮ブーム7を構成するそれぞれのブームは、コーナー部分が、R形状となっており、スライドプレート34の摺接面34cは、相対的に外側となるブーム31の内面のR形状に合った曲面とされて、断面形状がほぼ扇形になる。
【0045】
(4)上記において、伸縮ブーム7の潤滑構造では、
図8A,
図8Bに示すように、スライドプレート34の連通孔45は、グリス管52よりも大径としても良い。
【0046】
ここで、「大径とする」とは、連通孔45の内径73が、グリス管52の外径74より大きいことである(連通孔45の内径73>グリス管52の外径74)。なお、図では、連通孔45は、短辺方向64へ延びる長円形断面とされており、グリス管52は、円形断面となっている。これは、グリス管52が設けられた保持面36aと直交する保持面36bへのシム38の取付けによるスライドプレート34の短辺方向64への横変位を吸収するためである。この場合、連通孔45を含めたピン受穴43,44は、長径および短径の内径73を、共にグリス管52の外径74よりも大きくする(ピン受穴43,44の長径および短径の内径73>グリス管52の外径74)。ピン受穴43,44は、グリス管52に対し、ブーム伸縮方向12に嵌合隙間71a,71bを有する。
【0047】
短辺方向64については、
図8Aのように、保持面36bにシム38を設置しない状態のときに、嵌合隙間76aは、スライドプレート34の摺接面34cとブーム31の内面との隙間75よりも大きくなっている。この場合、嵌合隙間76aは、連通孔45とグリス管52との、保持面36bに近い側の短辺方向64の距離である。また、連通孔45とグリス管52との、保持面36bとは反対側の嵌合隙間76bは、0以上とされる。これにより、
図8Bに示すように、保持面36bにシム38を設置することで、スライドプレート34の摺接面34cを、ブーム31の内面に、短辺方向64に当接させられる。このとき、隙間75は0となり、短辺方向64の両側の嵌合隙間76b、嵌合隙間76bは、0以上に保たれる。
【0048】
(5)上記において、伸縮ブーム7の潤滑構造では、リテーナ36は、シム37,38を保持するために、保持ピン41,42を、複数の位置に有しても良い。グリス吐出口35は、複数の保持ピン41,42を設ける位置のうち、ブーム32の先端部に最も近い保持ピン41の位置に設けられても良い。
【0049】
この実施例では、リテーナ36は、長辺側の側面61に取付けられる保持面36aに2箇所の保持ピン41を有し、短辺側の側面62に取付けられる保持面36bに1箇所の保持ピン42を有している。保持ピン41は、少なくとも伸縮ブーム7の先端側(ブーム伸縮方向12の伸長側、図の下側)と後端側(収縮側、図の上側)との2箇所以上に設けられる。ブーム32の先端部に最も近い保持ピン41は、作業姿勢のときに最も下側に位置するものとなり、グリス吐出口35は、スライドプレート34の前端部よりも若干後寄りとなる。よって、スライドプレート34の前端部の位置よりも後側(図の上側)に、グリス給脂口51、グリス管52、グリス給脂用部材53をまとめて設置できる。なお、スライドプレート34が、内側ブーム、外側ブームの先端部に配置される場合には、グリス吐出口35は、上記とは反対に、複数の保持ピン41,42を設ける位置のうち、ブーム32の後端部に最も近い保持ピン41の位置に設けられる。
【0050】
(6)上記において、伸縮ブーム7の潤滑構造は、
図9(a)に示すように、ブーム32の側面61の1箇所のグリス給脂口51から、ブーム32の側面61に設けられた2箇所のリテーナ36へ向けて延びる各々のグリス管52は、グリス給脂口51を中心として各々のリテーナ36へ向かって同一長さ、同一内径の対称形状になっていても良い。
【0051】
ここで、対称形状は、ブーム32の側面61を幅中心線の位置で反転したときに、2本のグリス管52がほぼ完全に重なる形状のことである。そして、グリス給脂口51は、ブーム32の側面61の幅中央に設置され、2本のグリス管52は、幅中央のグリス給脂口51から両側のリテーナ36へ向けてそれぞれ対称的に延ばされる。この構造は、伸縮ブーム7の給脂時の姿勢(給脂姿勢)が垂直上下に向いている場合に有利である。
【0052】
(7)上記に対し、伸縮ブーム7の潤滑構造では、2本のグリス管52は、例えば、
図9(a)~
図9(d)のいずれかの変形例に示す構成にしても良い。
【0053】
伸縮ブーム7の給脂姿勢が傾斜状態の場合、傾斜したブーム32の上側になるスライドプレート34は、作用する反力が大きくなり、ブーム32の下側になるスライドプレート34は、作用する反力が小さくなる。反力が大きいと、給脂圧が高くなってブーム31とスライドプレート34の摺接面34cとの間へグリスが入り難くなり、反力が小さいと、給脂圧が低くなってブーム31とスライドプレート34の摺接面34cとの間へグリスが入り易くなる。
【0054】
具体的には、
図9(b)では、グリス給脂口51は、ブーム32の側面61の幅方向の中央に設けられている。2本のグリス管52は、側方から見て、同一長さで共に直線状とされ、異なる内径を有することで、非対称形状になる。この構成では、グリス管52は、内径の小さいグリス管52(A)よりも給脂圧が低くて済むためグリスを送り易くなる。そのため、給脂姿勢のときに、作用する反力が大きいスライドプレート34の側を内径の大きいグリス管52にする。グリス管52の内径の差は、給脂のときに、両側のスライドプレート34に作用される反力の差に応じて最適に設定される。
【0055】
図9(c)では、グリス給脂口51は、ブーム32の側面61の幅方向の中央に対して片側にズレた位置に設けられる。2本のグリス管52は、側方から見て、一方が長い直線状、他方が短い直線状とされており、長さが異なることで非対称形状になる。2本のグリス管52は、同一の内径を有している。この構成によれば、短いグリス管52(B)は、長いグリス管52(C)よりも給脂圧が低くて済むためグリスを送り易くなる。そのため、給脂姿勢のときに、作用する反力が大きいスライドプレート34の側を短いグリス管52(B)にする。グリス管52の長さの差は、給脂のときに、両側のスライドプレート34に作用される反力の差に応じて最適化される。
【0056】
図9(d)では、グリス給脂口51は、ブーム32の側面61の幅方向の中央に設けられる。2本のグリス管52は、側方から見て、一方が直線状、他方が屈曲した段差状(非直線状)になっており、異なる長さおよび高さを有することで、非対称形状になる。2本のグリス管52は、同一の内径を有している。右側のグリス管52(D)は、ブーム伸縮方向12に短くして後端側に寄せて設置されたスライドプレート34(D)のリテーナ36(D)に接続されている。この構成では、直線状のグリス管52は、段差状のグリス管52(D)よりも給脂圧が低くて済むためグリスを送り易くなる。そのため、給脂姿勢のときに、作用する反力が大きいスライドプレート34の側を直線状のグリス管52にする。グリス管52(D)の段差量、および、直線状のグリス管52との長さの差は、給脂のときに、両側のスライドプレート34に作用される反力の差に応じて最適に設定される。
【0057】
なお、
図9(a)~
図9(d)の変形例の構成は、適宜組み合わせることができる。
【0058】
<作用>この実施例の作用は、以下の通りである。
【0059】
橋梁点検車2は、複数の伸縮ブーム6~8が連結されることで、複雑で重量の大きなブーム構成になっている。中でも、第二の伸縮ブーム7は、作業台9を、先端側の第三の伸縮ブーム8を介して片持状態で支持し、作業台9は、旋回部19によって第三の伸縮ブーム8ごと旋回される。そのため、第二の伸縮ブーム7は、ブーム32に作用される反力の最も強くなる位置が周方向に変位する。よって、第二の伸縮ブーム7は、断面ほぼ四角形状のブーム32の4箇所全てのコーナー部にスライドプレート34を配置して、反力の最も強く作用される位置が周方向に変位しても、いずれかのスライドプレート34で反力を受けられるようにしている。
【0060】
そして、各伸縮ブーム6~8は、例えば、メンテナンスなどの際に、ブーム間の隙間33に、グリスなどの潤滑剤の給脂を行う。橋梁点検車2は、他の建設用車両と比べてグリスを給脂する潤滑部が多く、スライドプレート34などの間隔保持部と、グリス吐出口35などの潤滑部とが別々だと、使用する部材が多くなったり、取付けスペースが多くなったりするなどの問題がより多くなる。
【0061】
<効果>この実施例の効果は、以下の通りである。
(効果 1)リテーナ36は、保持ピン41を設ける位置にグリス吐出口35を形成し、スライドプレート34は、グリス吐出口35の位置のピン受穴43を、リテーナ36などに対する取付面34aから摺接面34cまで貫通する連通孔45にした。これにより、保持ピン41の位置にあるグリス吐出口35から吐出されたグリスは、スライドプレート34の連通孔45へ入り、連通孔45を通ってスライドプレート34の摺接面34cへと導かれる。
【0062】
上記により、ブーム31とブーム32との隙間33を保持する間隔保持部と、ブーム31とブーム32との隙間33に潤滑用のグリスを給脂する潤滑部とは、少なくとも一部(保持ピン41とグリス管52と)が共通化される。そのため、間隔保持部および潤滑部を別々に設けるのに必要としていた部材の一部が削減される(部品点数削減)。また、設置スペースも削減できる(設置スペース削減による省スペース化)。
【0063】
また、スライドプレート34の摺接面34cに開口された連通孔45は、グリス溜りになる。そのため、連通孔45に溜ったグリスによって、スライドプレート34は、潤滑性を長期間維持できる。そして、連通孔45は、スライドプレート34全体にグリスを行き渡らせるためのグリス溝の代わりにもなるため、スライドプレート34は、摺接面34cに、グリス溝を別に設ける必要をなくすことができる(グリス溝の不要化)。加えて、グリス溝の不要化により、スライドプレート34は、(グリス溝を設けることによる)摺接面34cの面積の減少を抑制、防止できる(接触面積減少抑制)。そして、スライドプレート34は、(グリス溝で)摺接面34cの面積が減少されないので、摺接面34cの摩耗を抑制、防止できる(早期摩耗防止)。
【0064】
また、グリス吐出口35が、スライドプレート34の保持ピン41の位置に形成されることで、グリス吐出口35は、スライドプレート34の前側の端部(ブーム伸縮方向12の先端部、
図6の下側)より僅かに位置が後側(
図6の上側)となる。そのため、潤滑部は、全体をより後側に設置できるようになる。そして、伸縮ブーム7が三段以上のブーム構成の場合、ブーム32は、その内側に別のブーム47(更に内側のブーム)を有し、ブーム32と、別のブーム47との周方向の隙間49に、別のスライドプレート48が設けられる。上記により、グリス吐出口35が、スライドプレート34の前側の端部よりも後側となることで、隙間49に設けられる別のスライドプレート48は、ブーム32に対して、より後側に配置できる。即ち、最大収縮時の、ブーム32のスライドプレート34と、別のブーム47の別のスライドプレート48とは、ブーム伸縮方向12の距離Sを維持したまま、別のスライドプレート48をより上方に位置させることができる。そして、最大伸長時の距離Sをより長く設定できる。これにより、伸縮ブーム7は、ブーム32と、別のブーム47との間のブーム伸縮方向12の重なり量を大きくしたり(ブーム間ラップ代の増大)、別のブーム47をより長くしたり(ブーム長尺化)できる。そのため、伸縮ブーム7は、強度や伸縮長などの面で有利な構造になる。
【0065】
(効果 2)伸縮ブーム7の潤滑構造は、ブーム32に設けられたグリス給脂口51から複数箇所のリテーナ36へ向けて複数のグリス管52を設けても良い。これにより、潤滑部は、グリス給脂口51の数を減らすことができる。その分、伸縮ブーム7は、潤滑部の部品数やグリス給脂口51の設置スペースを削減できる。そして、グリスの給脂箇所が減るため、グリス給脂作業の作業時間を短縮できる。
【0066】
(効果 3)また、潤滑部の構造がシンプルになるため、グリス給脂口51は、側面61に対する配置の自由度が高くなり、例えば、グリス給脂口51は、ブーム32の側面61の中央部などに容易に配置できる。ブーム32の側面61の中央部は、ブーム32にとっては反力が作用され難い部位であるため、グリス給脂口51の配置としては最適である(グリス給脂口51の低反力部配置)。また、例えば、グリス給脂口51は、ブーム32の側面61の中央部以外の位置に配置することも容易になる。
【0067】
(効果 4)スライドプレート34の連通孔45は、グリス管52よりも大径としても良い。そのため、伸縮ブーム7の伸縮に伴って、リテーナ36の内部でスライドプレート34が取付隙間の範囲内でブーム伸縮方向12に動いたとしても、グリス管52が連通孔45の周壁に当たるのを防止でき、グリス吐出口35を有するグリス管52に力が加わって、グリス管52やグリス吐出口35が変形するなどの不具合を防止できる。また、スライドプレート34の連通孔45は、グリス管52よりも大径になることで、連通孔45がより大きなグリス溜りとなるため、大径の連通孔45に溜まった多量のグリスによって、より長期間潤滑性を維持できる。
【0068】
(効果 5)グリス吐出口35は、複数の保持ピン41,42の位置のうちの、ブーム32の先端部に最も近い保持ピン41の位置に設けられても良い。これにより、連通孔45は、スライドプレート34の先端寄りに形成される。そのため、伸縮ブーム7をブーム伸縮方向12に伸長させたときに、スライドプレート34の摺接面34cの後側(後端側)の部分が、連通孔45に溜まったグリスを塗り拡げるヘラとなる。よって、スライドプレート34は、ヘラになる部位を有効に使って、グリスをブーム31の内面のほぼ全域に塗り拡げることができる(グリスの付着効果の向上)。これに対し、グリス吐出口35をリテーナ36の後端寄りの位置に形成した場合には、スライドプレート34は、連通孔45の後側にヘラになる部位が十分に得られず、スライドプレート34は、グリスを十分に塗り拡げられないおそれが生じる。
【0069】
更に、グリス吐出口35が、リテーナ36の最も前側(先端側)の保持ピン41の位置に設けられることで、スライドプレート34は、摺接面34cの後端側から連通孔45(やグリス溝)をなくせる。その分、スライドプレート34は、摺接面34cの後端側の部位の面積減少を抑制、防止できる(接触面積減少抑制効果)。そして、スライドプレート34は、摺接面34cの後端側の、最も強い反力が作用される部位の摩耗を(連通孔45がないことで)抑制、防止できる(早期摩耗防止効果)。
【0070】
(効果 6)2本のグリス管52は、グリス給脂口51を中心として各々のリテーナ36へ向かって同一長さ、同一内径の対称形状にしても良い。これにより、ブーム32の側面61に設けられた2箇所のリテーナ36の各グリス吐出口35に対するグリスの給脂圧を、同一化し易くなり、各グリス吐出口35からのグリスの等量吹出しを容易に図れる。この構造は、例えば、伸縮ブーム7の給脂時の姿勢(給脂姿勢)が垂直上下に向いている場合などに採用できる。この場合、ブーム32の側面61の2箇所のリテーナ36に保持された2箇所のスライドプレート34は、作用する反力がほぼ等しくなる。そのため、2本のグリス管52を対称形状にすることで、両方のスライドプレート34に対してグリスをほぼ等量に吹出させられる。
【0071】
(効果 7)2本のグリス管52は、非対称形状にしても良い。この構造は、例えば、伸縮ブーム7の給脂時の姿勢(給脂姿勢)が傾斜状態や、横に寝る場合などに採用できる。この場合、ブーム32の側面61の両側の2箇所のリテーナ36に保持された2箇所のスライドプレート34は、作用する反力に差が生じる。そのため、2本のグリス管52を反力の差に応じた非対称形状にすることで、両方のスライドプレート34に対してグリスがほぼ等量に吹出されるように設定、調整できる。
更に、グリス給脂口51(A)は、ブーム32の内部の側面61から離れた位置に、1箇所のみ設けている。そして、1箇所のグリス給脂口51(A)と、全てのリテーナ36のグリス吐出口35との間は、多数本のグリス管152を用いて同時に接続している。これにより、1箇所のグリス給脂口51(A)と、多数本のグリス管152とを介して、より多くのリテーナ36のグリス吐出口35に同時にグリスを給脂できる。よって、グリス給脂口51(A)の更なる削減が可能になる。
この実施例では、1箇所のグリス給脂口51(A)は、4本のグリス管152で、4箇所全てのコーナー部のリテーナ36のグリス吐出口35に同時に接続している。1箇所のグリス給脂口51(A)は、例えば、ブーム32の断面の中心に設置されている。そして、4本のグリス管152は、ブーム32の内部に、グリス給脂口51(A)と同じ断面内で、ほぼ対角線方向に延ばすことで点対称形状に設置している。これにより、例えば、伸縮ブーム7を、全てのスライドプレート34に作用される反力が等しくなるような給脂姿勢で給脂する場合などに、全てのスライドプレート34に対してグリスをほぼ等量に吹出させることが可能となる。
ただし、1箇所のグリス給脂口51(A)は、ブーム32の断面の中心以外の位置に設置し、また、4本のグリス管152は、ブーム32の内部に、点対称以外の非対称形状で配置することもできる。これにより、例えば、伸縮ブーム7を、全てのスライドプレート34に作用される反力が異なる給脂姿勢で給脂する場合などに、全てのスライドプレート34に対してグリスをほぼ等量に吹出させることが可能となる。この場合、それぞれのスライドプレート34に作用される反力の大きさに応じて、グリス給脂口51(A)は、ブーム32内の配置を、また、グリス管152は、長さや、太さや、高低差などを、最適に設定、調整する。
なお、上記において、ブーム32の内部に別のブーム47が配置される場合には、別のブーム47に設けられる別のグリス給脂口は、後端側から見て、ブーム32のグリス給脂口51(A)を避けた位置に設けるようにする。これにより、別のグリス給脂口は、伸縮ブーム7の後端側からアクセスできる。または、別のブーム47については、別のグリス給脂口は、実施例1と同様に、グリスの注入方向を、別のブーム47の側面61とほぼ面直な方向にしても良い。なお、上記以外については、上記した実施例1とほぼ同様の構成とされ、実施例1と同様の作用効果が得られる。