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  • 特開-ガス供給システム 図1
  • 特開-ガス供給システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158346
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/02 20060101AFI20241031BHJP
   F17C 5/06 20060101ALI20241031BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20241031BHJP
【FI】
F17C13/02 301A
F17C5/06
H01M8/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073478
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】里屋 大輔
【テーマコード(参考)】
3E172
5H127
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB13
3E172BB17
3E172EA02
3E172EA22
3E172EB02
3E172EB21
3E172JA08
3E172KA03
3E172KA22
5H127BA02
5H127BA22
5H127EE13
(57)【要約】
【課題】燃料ガスの使い切り量を向上することができるガス供給システムを提供する。
【解決手段】燃料ガスを貯留する複数の燃料ガスタンクと、複数の燃料ガスタンクから供給される燃料ガスを合流させる合流部と、合流部に接続された通常流路と、通常流路に接続され、通常流路の一部を迂回する中圧流路と、制御部と、を備え、合流部は高圧センサを有し、中圧流路は開閉弁と、開閉弁よりも下流側に配置された逆止弁と、開閉弁及び逆止弁の間に配置された中圧センサと、を有し、逆止弁は上流側からの燃料ガスの流通を許容し、かつ、下流側からの燃料ガスの流通を禁止するものであり、制御部は、高圧センサの指示値が中圧センサの耐圧上限を超えているとき開閉弁を閉じるように制御し、高圧センサの指示値が中圧センサの耐圧上限以下であるとき開閉弁を開くように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを貯留する複数の燃料ガスタンクと、
複数の前記燃料ガスタンクから供給される前記燃料ガスを合流させる合流部と、
前記合流部に接続された通常流路と、
前記通常流路に接続され、前記通常流路の一部を迂回する中圧流路と、
制御部と、を備え、
前記合流部は高圧センサを有し、
前記中圧流路は開閉弁と、前記開閉弁よりも下流側に配置された逆止弁と、前記開閉弁及び前記逆止弁の間に配置された中圧センサと、を有し、
前記逆止弁は上流側からの前記燃料ガスの流通を許容し、かつ、下流側からの前記燃料ガスの流通を禁止するものであり、
前記制御部は、前記高圧センサの指示値が前記中圧センサの耐圧上限を超えているとき前記開閉弁を閉じるように制御し、前記高圧センサの指示値が前記中圧センサの耐圧上限以下であるとき前記開閉弁を開くように制御する、
ガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願はガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、調圧弁の下流側にある圧力センサの検出値に異常があった場合に、適切なフェールセーフを実施するのに適した燃料電池システムを開示している。また、同文献には、燃料ガス供給源から燃料電池までの間において、調圧弁及びインジェクタを用いた燃料ガスの圧力を調整している。また、燃料ガス供給源及び調圧弁の間には高圧圧力センサが、調圧弁及びインジェクタの間には中圧圧力センサが、インジェクタ及び燃料電池の間には低圧圧力センサが備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-152313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料ガスの圧力センサには適用される圧力に範囲に応じて、圧力センサの種類を選択する必要がある。例えば高圧センサは高い圧力を測定するのに適しているが、中圧以下では測定精度が低い。これに対し、中圧センサは、耐久性の観点から高圧を測定することができないが、中圧において精度よく圧力を測定することができる。
【0005】
ところで、燃料電池システムに備えられた水素タンクへの水素の充填には、複数の水素タンクを備えたガス供給システムが使用される場合がある。このようなガス供給システムには、従来、耐圧性の問題から中圧センサを設けることが難しいため、高圧センサのみが設けられていた。そのため、中圧において、燃料ガス圧力を精度よく測定することができず、燃料ガスを適切に使い切ることができなかった。
【0006】
そこで、本開示の主な目的は、上記実情を鑑み、燃料ガスの使い切り量を向上することができるガス供給システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様は、燃料ガスを貯留する複数の燃料ガスタンクと、複数の燃料ガスタンクから供給される燃料ガスを合流させる合流部と、合流部に接続された通常流路と、通常流路に接続され、通常流路の一部を迂回する中圧流路と、制御部と、を備え、合流部は高圧センサを有し、中圧流路は開閉弁と、開閉弁よりも下流側に配置された逆止弁と、開閉弁及び逆止弁の間に配置された中圧センサと、を有し、逆止弁は上流側からの燃料ガスの流通を許容し、かつ、下流側からの燃料ガスの流通を禁止するものであり、制御部は、高圧センサの指示値が中圧センサの耐圧上限を超えているとき開閉弁を閉じるように制御し、高圧センサの指示値が中圧センサの耐圧上限以下であるとき開閉弁を開くように制御する、ガス供給システムである。
【発明の効果】
【0008】
本開示のガス供給システムによれば、燃料ガスの使い切り量を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ガス供給システム100のブロック図である。
図2】圧力センサ誤差による使用下限圧力の違いについて説明する図である。
図3】ガス供給システム100における圧力監視のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のガス供給システムについて、一実施形態であるガス供給システム100を用いて説明する。
【0011】
図1にガス供給システム100のブロック図を示した。図1に示した通り、燃料ガスを貯留する複数の燃料ガスタンク11~14と、複数の燃料ガスタンク11~14から供給される燃料ガスを合流させる合流部21、22と、合流部21に接続された通常流路30と、通常流路30に接続され、通常流路30の一部を迂回する中圧流路40と、制御部50と、を備えている。また、ガス供給システム100は各燃料ガスタンク10と合流部20とを接続する配管である流路1~4を備えている。
【0012】
<燃料ガスタンク11~14>
燃料ガスタンク11~14は燃料ガスが充填されている。燃料ガスとしては、例えば水素や改質ガスが挙げられる。図1に示した通り、ガス供給システム100は4つの燃料ガスタンク11~14を備えている。ただし、本開示のガス供給システムにおいて、燃料ガスタンクの数は特に限定されない。また、燃料ガスタンクの容量等も特に限定されない。燃料ガスタンクの数及び容量等は目的に応じて適宜設定してよい。
【0013】
<合流部21、22>
合流部21、22は複数の燃料ガスタンク10から供給される燃料ガスを合流させる部材である。図1に示した通り、ガス供給システム100は2つの合流部21、22を備えている。ただし、本開示のガス供給システムにおいて、合流部の数は特に限定されない。合流部の数は1つでもよく、複数でもよい。合流部の数が複数ある場合、それらの合流部同士を流路で接続してもよい。図1に示した通り、合流部21、22は流路5(配管)によって接続されている。
【0014】
合流部21は、流路1、2を介して、燃料ガスタンク11、12と接続されている。合流部22は、流路3、4を介して、燃料ガスタンク13、14と接続されている。流路1~4は、燃料ガスタンクから合流部への燃料ガスの流通を制御する開閉弁や逆止弁、減圧弁等の部材が備えられていてもよい。
【0015】
合流部21は高圧センサP1を有している。高圧センサP1とは高圧であっても圧力を測定可能な装置である。すなわち、高圧センサP1は高圧における耐久性を有する。具体的には、高圧センサP1は中圧センサP2の耐圧上限を超える圧力において耐久性を有する。高圧センサP1は、通常、通常流路30に接続されている合流部21に備えられている。ただし、本開示のガス供給システムにおいて、高圧センサはいずれの合流部に設けられていれもよい。高圧センサP1によって測定された燃料ガス圧力は制御部50に送信される。
【0016】
<通常流路30>
通常流路30は合流部21に接続され、燃料ガスを外部に流通させるための配管である。すなわち、通常流路30の一端は合流部21に接続され、他端は外部又は出口部材に接続されている。図1に示した通り、ガス供給システム100において、典型的には、通常流路30は高圧センサP1が備えられている合流部21に接続されている。通常流路30は第1開閉弁31が備えらており、燃料ガスの流通を制御している。第1開閉弁31は、例えば電磁弁であり、制御部50によってその開閉が制御されている。
【0017】
<中圧流路40>
中圧流路40は通常流路30に接続された配管であり、通常流路30の一部を迂回するものである。図1に示した通り、中圧流路40は、通常流路30において第1開閉弁31の上流側及び下流側に接続される。
【0018】
中圧流路40は第2開閉弁41と、第2開閉弁41よりも下流側に配置された逆止弁42と、第2開閉弁41及び逆止弁42の間に配置された中圧センサP2と、を有している。第2開閉弁41は、例えば電磁弁であり、制御部50によってその開閉が制御されている。逆止弁42は上流側からの燃料ガスの流通を許容し、かつ、下流側からの燃料ガスの流通を禁止するものである。逆止弁42は高圧の燃料ガスが中圧センサP2に流れ込むことを防止するために設けられている。中圧センサP2は、耐久性の観点から高圧の測定には適さないが、中圧において精度よく燃料ガス圧力を測定可能な装置である。中圧センサP2の耐圧上限は、例えば1MPa以上3MPa以下である。中圧センサP2によって測定された燃料ガス圧力は制御部50に送信される。
【0019】
ガス供給システム100は中圧流路40を有することに1つの特徴を有する。典型的なガス供給システムは通常流路30のみを有しており、燃料ガス圧力は高圧センサP1のみで測定されていた。しかし、高圧センサP1は高圧において燃料ガスの測定が可能である利点を有する一方で、中圧以下において測定精度が低いという問題がある。そのため、高圧センサP1のみで燃料ガス圧力を監視すると、燃料ガスの使い切り量が低下する問題ある。
【0020】
図2を用いて、圧力センサ誤差による使用下限圧力の違いについて説明する。図2では、一例として、所定の中圧センサ(図2の左)と高圧センサ(図2の右)とを使用した。図2の左側に示した通り、燃料ガスタンクの使い切り圧力が0.56MPa.Gであるとき、温度変化及び中圧圧力センサ誤差を考慮すると、中圧センサの使用下限圧力は0.99MPaとなる。これは、燃料ガスタンクにおける充填率SOCの2.3%相当に該当する。一方で、図2の右側に示した通り、燃料ガスタンクの使い切り圧力が1MPa.Gであるとき、温度変化及び高圧圧力センサ誤差を考慮すると、高圧センサの使用下限圧力は4.3MPaとなる。これは、燃料ガスタンクにおけるSOCの9%相当に該当する。典型的には、減圧弁における調圧値下限は1MPaである。そのため、調圧値下限付近では、高圧センサよりも中圧センサの誤差が小さい。このことから、高圧センサに加えて、中圧センサで燃料ガス圧力の監視を行うことで、燃料ガスの使い切り量を向上することができる。
【0021】
一方で、中圧センサには上述した通り、耐圧上限がある。この耐圧上限よりも高い圧力で中圧センサP2を使用した場合、中圧センサP2が破損する虞がある。そこで、ガス供給システム100では、通常流路30の一部を迂回する中圧流路40を設け、燃料ガス圧力が中圧センサP2の耐圧上限以下となった場合に、中圧流路40を使用して中圧センサP2による圧力監視を行うこととした。
【0022】
図3にガス供給システム100における圧力監視のイメージ図を示した。図3では、70MPaの燃料ガスタンクを用いている。図3に示した通り、燃料ガス圧力が中圧センサの耐圧上限(図3では、約2MPa)に至るまで高圧センサによる圧力監視を実施し、高圧センサにおける指示値が中圧センサの耐圧上限に至ったとき、中圧流路40を使用して、使用下限圧力まで中圧センサによる監視を実施する。このように、高圧では測定誤差の大きい高圧センサP1で圧力監視を実施し、中圧では測定誤差の小さい中圧センサP2で圧力監視を実施する。これにより、中圧において燃料ガス圧力を精度よく測定することができるため、燃料ガスの使い切り判定を向上することができる、燃料ガス使い切り量を向上することができる。
【0023】
<制御部50>
制御部50はガス供給システム100全体を管理するコンピュータ(ECU:Electronic Control Unit)である。ガス供給システム100において、制御部50は高圧センサP1、中圧センサP2の指示値に基づいて、第1開閉弁31、第2開閉弁41の開閉を制御し、通常流路30及び中圧流路40の切替を実施する。具体的には、制御部50は、高圧センサP1の指示値が中圧センサP2の耐圧上限を超えているとき第2開閉弁41を閉じるように制御し、高圧センサP1の指示値が中圧センサP2の耐圧上限以下であるとき第2開閉弁41を開くように制御する。これにより、高圧センサP1の指示値が中圧センサP2の耐圧上限を超えているとき、通常流路30のみを用いて高圧センサP1による圧力監視を実施でき、高圧センサP1の指示値が中圧センサP2の耐圧上限以下であるとき、中圧流路40を用いて中圧センサP2による圧力監視を実施できる。
【0024】
また、制御部50は、高圧センサP1の指示値が中圧センサP2の耐圧上限を超えているとき、第1開閉弁31を開くように制御し、高圧センサP1の指示値が中圧センサP2の耐圧上限以下であるとき第1開閉弁31を閉じるように制御してもよい。これにより、高圧センサP1の指示値が中圧センサP2の耐圧上限以下であるとき、燃料ガスの全部が中圧流路40に迂回されるため、中圧センサP2による圧力監視精度を向上することができる。
【0025】
<ガス供給システム100>
ガス供給システム100は単独で用いてもよく、燃料ガスシステム等に組み込まれていてもよい。ガス供給システム100を単独で用いる場合、ガス供給システム100は可搬式の形態でもよく、固定式の形態でもよい。
【0026】
以上、一実施形態であるガス供給システム100を用いて、本開示のガス供給システムについて説明した。本開示のガス供給システムによれば、燃料ガスの使い切り量を向上することができる。
【符号の説明】
【0027】
1~5 流路
11~14 燃料ガスタンク
21、22 合流部
30 通常流路
31 第1開閉弁
40 中圧流路
41 第2開閉弁
42 逆止弁
P1 高圧センサ
P2 中圧センサ
図1
図2
図3