(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158348
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】風車ブレード用ダウンコンダクタの断線箇所検知装置及び断線箇所検知方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/08 20200101AFI20241031BHJP
G01R 31/58 20200101ALI20241031BHJP
G01R 31/54 20200101ALI20241031BHJP
F03D 1/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G01R31/08
G01R31/58
G01R31/54
F03D1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073480
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000123354
【氏名又は名称】音羽電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】廣岡 征紀
(72)【発明者】
【氏名】稲崎 弘次
(72)【発明者】
【氏名】阿部 毅人
(72)【発明者】
【氏名】篠村 和磨
【テーマコード(参考)】
2G014
2G033
3H178
【Fターム(参考)】
2G014AA02
2G014AB08
2G014AB33
2G033AA01
2G033AB01
2G033AC01
2G033AD19
2G033AD21
2G033AE06
2G033AF01
3H178AA03
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB56
3H178CC02
3H178DD52X
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】比較的簡単な構成で風車ブレードの外部からダウンコンダクタの断線箇所を精度良く検知することができる断線箇所検知装置及び断線箇所検知方法を提供する。
【解決手段】電圧発生器5で所定周波数の交流電圧を発生させ、その交流電圧をレセプタ3b1を介してダウンコンダクタ3b2に印加する。この状態で、風車ブレード3bの外部に配置した電圧センサ6を風車ブレード3bの長手方向Lに沿って移動させながら、電圧センサ6により風車ブレード3bの外部からダウンコンダクタ3b2の電圧を検出する。ダウンコンダクタ3b2に断線箇所Xがある場合、断線箇所Xよりも先端部側の領域L1では、電圧センサ6により電圧が検出され、断線箇所Xよりも基端部側の領域L2では、電圧センサ6により電流が検出されない。領域L1と領域L2の境界から断線箇所Xを検知することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車ブレードの内部に配置され、前記風車ブレードの長手方向に沿って延びるダウンコンダクタの断線箇所を検知するための断線箇所検知装置であって、
所定の周波数を持った電圧を発生させる電圧発生器と、前記風車ブレードの外部に配置され、前記風車ブレードの長手方向に沿って移動可能な非接触型の電圧センサとを備え、
前記電圧発生器で発生させた電圧を前記ダウンコンダクタの一端部の側又は他端部の側から前記ダウンコンダクタに印加し、前記電圧センサを前記風車ブレードの長手方向に沿って移動させながら、前記電圧センサにより前記風車ブレードの外部から前記ダウンコンダクタの電圧を検出し、前記風車ブレードの長手方向の一の領域で電圧が検出され、他の領域で電圧が検出されないとき、前記一の領域と前記他の領域との境界から前記ダウンコンダクタの断線箇所を検知することを特徴とする風車ブレード用ダウンコンダクタの断線箇所検知装置。
【請求項2】
前記電圧発生器は、前記風車ブレードの先端側に位置する前記ダウンコンダクタの先端部の側から前記ダウンコンダクタに前記電圧を印加する請求項1に記載の風車ブレード用ダウンコンダクタの断線箇所検知装置。
【請求項3】
前記電圧発生器は、前記風車ブレードの基端側に位置する前記ダウンコンダクタの基端部の側から前記ダウンコンダクタに前記電圧を印加する請求項1に記載の風車ブレード用ダウンコンダクタの断線箇所検知装置。
【請求項4】
前記電圧発生器は、周波数が異なる電圧を発生可能であり、前記電圧センサは、前記周波数が異なる電圧を検出可能である請求項1から3の何れか一項に記載の風車ブレード用ダウンコンダクタの断線箇所検知装置。
【請求項5】
風車ブレードの内部に配置され、前記風車ブレードの長手方向に沿って延びるダウンコンダクタの断線箇所を検知するための断線箇所検知方法であって、
前記ダウンコンダクタの一端部の側又は他端部の側から前記ダウンコンダクタに所定の周波数を持った電圧を印加し、
前記風車ブレードの外部に配置した非接触型の電圧センサを前記風車ブレードの長手方向に沿って移動させながら、前記電圧センサにより前記風車ブレードの外部から前記ダウンコンダクタの電圧を検出し、前記風車ブレードの長手方向の一の領域で電圧が検出され、他の領域で電圧が検出されないとき、前記一の領域と前記他の領域との境界から前記ダウンコンダクタの断線箇所を検知することを特徴とする風車ブレード用ダウンコンダクタの断線箇所検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車ブレード用ダウンコンダクタの断線箇所を検知する断線箇所検知装置及び断線箇所検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電装置の風車ブレードには、風車ブレードを落雷から保護するためにレセプタ(受雷部)が設けられている。レセプタは風車ブレードの先端部や中間部に設けられ、風車ブレードの内部に設けられたダウンコンダクタ(引き下げ導線)に電気的に接続されている。ダウンコンダクタは、風車タワーに電気的に接続され(風車タワーの内部に引き下げ導線を配置している場合は、当該引き下げ導線に電気的に接続されることがある。)、レセプタに着雷した際の雷電流は、レセプタ→ダウンコンダクタ→風車タワーという経路で大地へ放出される。
【0003】
経年劣化や落雷等により、風車ブレードのダウンコンダクタに断線が発生すると、落雷時にダウンコンダクタの断線箇所で放電が起こり、風車ブレードの破損に繋がる。このため、風力発電設備の定期点検指針が2017年4月に改訂され、風車ブレードのダウンコンダクタについて導通試験等を行い、健全性(断線の有無)を確認することが義務付けられた。
【0004】
ダウンコンダクタの断線及び断線箇所を検知するために様々な手法が提案されてきた。例えば、特許文献1では、ダウンコンダクタの基端から先端のレセプタに向けてステップ波形状の検査信号を注入し、ダウンコンダクタ側の電圧または電流波形を観測し、この波形を非断線時における波形と比較して断線を検知すると共に、上記の電圧または電流波形が変化する時刻と光速とを用いてダウンコンダクタの断線箇所を検知している。また、特許文献2では、ダウンコンダクタの基端と、ダウンコンダクタに沿って延在するように配置される計測線の基端を、それぞれTDR検査装置に接続し、TDR検査装置から計測線及びダウンコンダクタの間にTDR信号を注入し、TDR信号の反射結果に基づいてダウンコンダクタの断線を検知すると共に、TDR信号の反射結果を示す波形において、TDR信号の注入時からTDR信号の反射波が到達するまでの到達時間に基づいてダウンコンダクタの断線箇所を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-29351号公報
【特許文献2】特開2021-25859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2では、ダウンコンダクタの断線箇所を検知するにあたり、検査信号の発生時刻から、検査信号の電圧波形又は電流波形の変化点(断線箇所に対応)の時刻までの時間に基づいて、検査信号の印加点(検査信号発生装置の信号出力端子)からダウンコンダクタの断線箇所までの距離を算出している。この算出距離は、検査信号発生装置の信号出力端子から、検査信号が注入されるダウンコンダクタの端部に到る距離を含んでいるから、ダウンコンダクタの断線箇所を特定するためには、検査信号発生装置の信号出力端子とダウンコンダクタの端部との間の距離を計測して、上記の算出距離から差し引く必要がある。しかし、地上側に在る検査信号発生装置と高所に在る風車ブレードのダウンコンダクタとの間で正確な距離計測を行うことは難しい。そのため、計測誤差が生じ易く、この計測誤差により、ダウンコンダクタの断線箇所の検知精度が低下する。
【0007】
本発明の課題は、比較的簡単な構成で風車ブレードの外部からダウンコンダクタの断線箇所を精度良く検知することができる断線箇所検知装置及び断線箇所検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、風車ブレードの内部に配置され、前記風車ブレードの長手方向に沿って延びるダウンコンダクタの断線箇所を検知するための断線箇所検知装置であって、所定の周波数を持った電圧を発生させる電圧発生器と、前記風車ブレードの外部に配置され、前記風車ブレードの長手方向に沿って移動可能な非接触型の電圧センサとを備え、前記電圧発生器で発生させた電圧を前記ダウンコンダクタの一端部の側又は他端部の側から前記ダウンコンダクタに印加し、前記電圧センサを前記風車ブレードの長手方向に沿って移動させながら、前記電圧センサにより前記風車ブレードの外部から前記ダウンコンダクタの電圧を検出し、前記風車ブレードの長手方向の一の領域で電圧が検出され、他の領域で電圧が検出されないとき、前記一の領域と前記他の領域との境界から前記ダウンコンダクタの断線箇所を検知することを特徴とする風車ブレード用ダウンコンダクタの断線箇所検知装置を提供する。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明は、風車ブレードの内部に配置され、前記風車ブレードの長手方向に沿って延びるダウンコンダクタの断線箇所を検知するための断線箇所検知方法であって、前記ダウンコンダクタの一端部の側又は他端部の側から前記ダウンコンダクタに所定の周波数を持った電圧を印加し、前記風車ブレードの外部に配置した非接触型の電圧センサを前記風車ブレードの長手方向に沿って移動させながら、前記電圧センサにより前記風車ブレードの外部から前記ダウンコンダクタの電圧を検出し、前記風車ブレードの長手方向の一の領域で電圧が検出され、他の領域で電圧が検出されないとき、前記一の領域と前記他の領域との境界から前記ダウンコンダクタの断線箇所を検知することを特徴とする風車ブレード用ダウンコンダクタの断線箇所検知方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的簡単な構成で風車ブレードの外部からダウンコンダクタの断線箇所を精度良く検知することができる断線検知装置及び断線検知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】第1の実施形態に係る断線箇所検知装置を概念的に示す図である。
【
図3】電圧センサに含まれるLC共振回路を示す図である。
【
図4】電圧発生器の発生電圧の電圧波形と電圧センサの検出電圧の電圧波形を示す図である。
【
図5】電圧発生器の発生電圧の電圧波形と電圧センサの検出電圧の電圧波形を示す図である。
【
図6】第1の実施形態に係る断線箇所検知装置において、ダウンコンダクタに断線があった場合の状態を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係る断線箇所検知装置を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、風力発電装置を模式的に示している。風力発電装置は、大地G上に立設された風車タワー1と、風車タワー1の上部に取り付けられたナセル2と、ナセル2の一端部に回転可能に取り付けられた風車ロータ3とを主要な要素として構成される。ナセル2の内部には、発電機、電気回路、制御盤等の所要の電気機器類が収容される。風車ロータ3は、ハブ3aと、ハブ3aに放射状に取り付けられた複数本、例えば回転方向に等間隔で取り付けられた3本の風車ブレード3bとで構成され、ハブ3aがナセル2内の発電機の回転軸に連結される。風車ロータ3が風力を受けて回転すると、その回転がハブ3aを介してナセル2内の発電機に入力され、これにより発電機が回転して発電が行われる。
【0014】
風車ブレード3bは、繊維強化プラスチック(FRP)等の絶縁材料で中空状に形成される。また、各風車ブレード3bの先端部にレセプタ3b1が設けられ、各風車ブレード3bの内部にダウンコンダクタ3b2が配置される。レセプタ3b1とダウンコンダクタ3b2は金属等の導電材料で形成され、風車ブレード3bの先端側に位置するダウンコンダクタ3b2の先端部はレセプタ3b1に電気的に接続され、風車ブレード3bの基端側に位置するダウンコンダクタ3b2の基端部は風車タワー1に電気的に接続される。風車ブレード3bのレセプタ3b1に着雷した際の雷電流は、レセプタ3b1→ダウンコンダクタ3b2→風車タワー1という経路で大地Gへ放出される。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係る断線箇所検知装置を概念的に示している。この実施形態の断線箇所検知装置は、所定の周波数(例えば数百kHz)を持った電圧、例えば所定周波数の交流電圧を発生させる電圧発生器5と、風車ブレード3bの外部に配置され、風車ブレード3bの長手方向Lに沿って移動可能な非接触型の電圧センサ6とを備えている。電圧発生器5の出力端子はレセプタ3b1に電気的に接続され、電圧発生器5の接地端子は風車タワー1に電気的に接続される。電圧発生器5で発生させた電圧は、レセプタ3b1を介してダウンコンダクタ3b2の先端部の側からダウンコンダクタ3b2に印加される。
【0016】
電圧センサ6は、例えば、
図3に示すようなLC共振回路(インダクタLとコンデンサCを並列接続した回路等)を含んでおり、共振周波数と同じ又は近接した周波数を持つ電圧が印加された電圧印加線の電圧を、電圧印加線と非接触で検出する機能を有している。電圧の検出精度を高める観点から、電圧センサ6の共振周波数(検知周波数)と、電圧発生器5で発生させる電圧(ダウンコンダクタ3b2に印加する電圧)の周波数を同じにするのが望ましい。
【0017】
ダウンコンダクタ3b2の断線および断線箇所の検知は以下の態様で行う。
【0018】
まず、電圧発生器5で所定周波数の交流電圧を発生させ、その交流電圧をレセプタ3b1を介してダウンコンダクタ3b2に印加する。この状態で、風車ブレード3bの外部に配置した電圧センサ6を風車ブレード3bの長手方向Lに沿って移動させながら、電圧センサ6により風車ブレード3bの外部からダウンコンダクタ3b2の電圧を検出する。尚、電圧センサ6は、風車ブレード3bの外面に接触するように配置してもよいし、風車ブレード3bの外面から所定距離だけ離間するように配置してもよい。
【0019】
図4、
図5(a)及び(b)は、電圧発生器5の発生電圧を20V、50kHz、電圧センサ6の検知周波数を50kHzに設定した場合に観測される電圧発生器5の発生電圧の電圧波形W1と電圧センサ6の検出電圧の電圧波形W2を示している。
図4は、
図2に示すように、ダウンコンダクタ3b2に断線がない場合の電圧波形、
図5(a)及び(b)は、
図6に示すように、ダウンコンダクタ3b2に断線箇所Xがある場合の電圧波形である。
【0020】
ダウンコンダクタ3b2に断線がない場合(
図2)、電圧発生器5から出力した電流はダウンコンダクタ3b2を通って風車タワー1に流れ、風車タワー1を経由して大地Gへ放出される。そのため、
図4に示すように、電圧発生器5の発生電圧は電圧降下して、その電圧波形W1はほぼ平坦な形状になる。この電圧波形W1の形状から、ダウンコンダクタ3b2に断線がないことが確認できる。ダウンコンダクタ3b2に断線がないことが確認できれば、電圧センサ6による電圧検出は行わなくてもよい。
【0021】
一方、ダウンコンダクタ3b2に断線箇所Xがある場合(
図6)、電圧発生器5から出力した電流はダウンコンダクタ3b2に流れないため、電圧発生器5の発生電圧の電圧降下は発生しない。そのため、
図5(a)及び(b)に示すように、電圧発生器5の発生電圧の電圧波形W1は交流電圧の波形(正弦波形)になる。また、ダウンコンダクタ3b2の断線箇所Xよりも先端部側の領域L1では、ダウンコンダクタ3b2に電圧が発生するため、
図5(b)に示すように、電圧センサ6の検出電圧の電圧波形W2も交流電圧の波形(正弦波形)になる。これに対して、ダウンコンダクタ3b2の断線箇所Xよりも基端部側の領域L2では、ダウンコンダクタ3b2に電圧が発生しないため、
図5(a)に示すように、電圧センサ6の検出電圧の電圧波形W2はほぼ平坦な形状になる。従って、
図5(a)及び(b)に示す電圧波形から、ダウンコンダクタ3b2に断線があることを検知することができると共に、領域L1と領域L2の境界から断線箇所Xを検知することができる。
【0022】
この実施形態の断線箇所検知は、電圧発生器5で発生させた電圧をダウンコンダクタ3b2に印加し、電圧センサ6を風車ブレード3bの長手方向Lに沿って移動させながら、電圧センサ6により風車ブレード3bの外部からダウンコンダクタ3b2の電圧を検出して、ダウンコンダクタ3b2の断線の有無および断線箇所Xの位置を検知するものである。これにより、ダウンコンダクタ3b2の断線箇所Xを風車ブレード3bの外部から精度良く検知することができる。また、ダウンコンダクタ3b2に電圧を印加するに際し、ダウンコンダクタ3b2の基端部の側を風車タワー1から取り外す必要がないので、検知作業も容易である。
【0023】
図7は、第2の実施形態に係る断線箇所検知装置を概念的に示している。この実施形態の断線箇所検知装置では、ダウンコンダクタ3b2の基端部の側を風車タワー1から一時的に取り外して、電圧発生器5の出力端子に接続し、電圧発生器5の接地端子に接地線を接続している。電圧発生器5で発生させた電圧は、ダウンコンダクタ3b2の基端部の側からダウンコンダクタ3b2に印加される。
【0024】
この実施形態の断線箇所検知装置では、ダウンコンダクタ3b2の断線の有無に係らず、電圧発生器5の発生電圧に電圧降下が発生しないため、電圧発生器5の発生電圧の電圧波形W1は、
図5(a)及び(b)に示すような交流電圧の波形(正弦波形)になる。一方、ダウンコンダクタ3b2に断線箇所Xがある場合、ダウンコンダクタ3b2の断線箇所Xよりも基端部側の領域L3では、ダウンコンダクタ3b2に電圧が発生するため、電圧センサ6の検出電圧の電圧波形W2は、
図5(b)に示すような交流電圧の波形(正弦波形)になる。これに対して、ダウンコンダクタ3b2の断線箇所Xよりも先端部側の領域L4では、ダウンコンダクタ3b2に電圧が発生しないため、電圧センサ6の検出電圧の電圧波形W2は、
図5(a)に示すようなほぼ平坦な形状になる。従って、
図5(a)及び(b)に示すような電圧波形から、ダウンコンダクタ3b2に断線があることを検知することができると共に、領域L3と領域L4の境界から断線箇所Xを検知することができる。その他の事項は第1の実施形態に準じるので、重複する説明を省略する。
【0025】
以上に説明した実施形態の断線箇所検知装置において、周波数が異なる電圧(例えば数百kHzの電圧と数百Hzの電圧)を発生可能な電圧発生器5と、電圧発生器5で発生させた周波数が異なる電圧を検出可能な電圧センサ6とを用いてもよい。ダウンコンダクタ3b2に印加する電圧の周波数を高くすると、電圧を非接触で検出できる距離が大きくなるため、風車ブレード3bの材料厚み等による、ダウンコンダクタ3b2と電圧センサ6との離間距離の影響を小さくすることができる。また、周波数の小さい電圧(例えば数十kHz)を印加する場合に比べて、印加電圧を小さくすることができる。一方、電圧の周波数を高くし過ぎると、静電誘導の影響により、検出距離が広がりすぎて、電圧センサ6の検出精度が粗くなり、ダウンコンダクタ3b2の断線箇所Xの検知精度が低下する。ダウンコンダクタ3b2に印加する電圧の周波数を状況に応じて適宜に選択することにより、ダウンコンダクタ3b2の断線箇所Xを非接触で精度良く検知することができる。
【0026】
また、風車ブレード3bの回転周波数に合わせたロックインアンプを電圧センサ6に取り付けるようにしてもよい。これにより、検出電圧に含まれるノイズを除去して、断線箇所Xの検知精度を高めることができる。
【0027】
電圧センサ6の長手方向Lへの移動は作業者が手動で行ってもよいし、あるいは、電圧センサ6を自動的に移動させる機構を風車ブレード3bに装着して、電圧センサ6を遠隔操作で長手方向Lに移動させるようにしてもよい。
【0028】
また、断線箇所Xの検知を簡易的に行う場合は、電圧センサ6として、市販されている非接触型の検電器を用いてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 風車タワー
2 ナセル
3 風車ロータ
3a ハブ
3b 風車ブレード
3b1 レセプタ
3b2 ダウンコンダクタ
5 電圧発生器
6 電圧センサ
L 風車ブレードの長手方向
X 断線箇所