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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158350
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/36 20180101AFI20241031BHJP
   F21S 41/148 20180101ALI20241031BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20241031BHJP
   F21S 41/26 20180101ALI20241031BHJP
   F21S 41/265 20180101ALI20241031BHJP
   F21S 41/33 20180101ALI20241031BHJP
   F21S 41/663 20180101ALI20241031BHJP
   F21S 41/37 20180101ALI20241031BHJP
   F21W 102/145 20180101ALN20241031BHJP
   F21Y 103/10 20160101ALN20241031BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241031BHJP
【FI】
F21S41/36
F21S41/148
F21S41/151
F21S41/26
F21S41/265
F21S41/33
F21S41/663
F21S41/37
F21W102:145
F21Y103:10
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073482
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野間 慶
(57)【要約】
【課題】投影レンズの寸法を小さくしても各光源からの光の利用効率を確保できるとともに、適切に所定の配光パターンを形成することのできる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具10は、複数の第1光源341と第1リフレクタ35と第1投影レンズ(43)とを有し、複数の第1配光領域A1からなる第1配光パターンP1を形成する第1照射ユニット11と、複数の第2光源342と第2リフレクタ36と第2投影レンズ(44)とを有し、複数の第2配光領域A2からなる第2配光パターンP2を形成する第2照射ユニット12と、を備える。第1照射ユニット11と第2照射ユニット12とは、整列方向で一端側に位置する第1配光領域A1と第2配光領域A2との一部を重ねつつ整列方向にずらした位置関係で、第1配光パターンP1と第2配光パターンP2とを重ねて配光パターン(HB)を形成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1光源から出射された光を第1リフレクタで反射して第1投影レンズで投影することにより複数の第1配光領域を整列方向に並べた第1配光パターンを形成する第1照射ユニットと、
複数の第2光源から出射された光を第2リフレクタで反射して第2投影レンズで投影することにより複数の第2配光領域を前記整列方向に並べた第2配光パターンを形成する第2照射ユニットと、を備え、
前記第1照射ユニットと前記第2照射ユニットとは、前記整列方向で一端側に位置する前記第1配光領域と前記第2配光領域との一部を重ねつつ前記整列方向にずらした位置関係で、前記第1配光パターンと前記第2配光パターンとを重ねて走行用配光パターンを形成することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1照射ユニットと前記第2照射ユニットとは、前記整列方向に対応する幅方向で隣接して設けられ、
前記第1投影レンズと前記第2投影レンズとは、一体とされていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第1投影レンズと前記第2投影レンズとには、少なくとも前記幅方向に交差する上下方向における中間位置よりも下側に、進行する光を前記上下方向に拡散する上下拡散プリズムが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記上下拡散プリズムは、周期的に高低差の異なる面で形成され、前記第1投影レンズと前記第2投影レンズとにおける前記上下方向での中間位置よりも下側で前記高低差を最も大きくするように前記上下方向での位置に応じて漸次的に前記高低差が変化されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第1投影レンズと前記第2投影レンズとは、一体とされて、第1出射面と第2出射面とが滑らかに連続する単一の投影出射面とされ、
前記上下拡散プリズムは、前記投影出射面に設けられていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記第1投影レンズの第1入射面と前記第2投影レンズの第2入射面とには、進行する光を前記幅方向に拡散する幅拡散プリズムが設けられていることを特徴とする請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記幅拡散プリズムは、周期的に高低差の異なる面で形成され、前記第1入射面と前記第2入射面とのそれぞれにおいて、前記幅方向における所定領域の前記高低差を最も大きくするように前記幅方向での位置に応じて漸次的に前記高低差が変化されていることを特徴とする請求項6に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具では、複数の光源を並べて設け、各光源からの光を投影レンズで投影することで、所定の配光パターンを形成するものが考えられている(例えば、特許文献1参照)。この車両用灯具では、各光源からの光が個別に配光領域を形成し、その各配光領域が少なくとも隣接する配光領域と一部が重なるように整列方向に並べることで所定の配光パターンを形成する。これにより、この車両用灯具では、隣接する配光領域の間に隙間が形成されたり各配光領域の縁部が目立ったりすることを抑制でき、適切に所定の配光パターンを形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-195116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の車両用灯具は、各光源からの光を直接投影レンズへと導くものであるので、基本的に各光源からの光のうち投影レンズへと直接進行する光を利用して各配光領域(配光パターン)を形成することとなる。このため、上記の車両用灯具は、投影レンズの寸法を小さくすると各光源からの光の利用効率が低下してしまう。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、投影レンズの寸法を小さくしても各光源からの光の利用効率を確保できるとともに、適切に所定の配光パターンを形成することのできる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両用灯具は、複数の第1光源から出射された光を第1リフレクタで反射して第1投影レンズで投影することにより複数の第1配光領域を整列方向に並べた第1配光パターンを形成する第1照射ユニットと、複数の第2光源から出射された光を第2リフレクタで反射して第2投影レンズで投影することにより複数の第2配光領域を前記整列方向に並べた第2配光パターンを形成する第2照射ユニットと、を備え、前記第1照射ユニットと前記第2照射ユニットとは、前記整列方向で一端側に位置する前記第1配光領域と前記第2配光領域との一部を重ねつつ前記整列方向にずらした位置関係で、前記第1配光パターンと前記第2配光パターンとを重ねて走行用配光パターンを形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の車両用灯具によれば、投影レンズの寸法を小さくしても各光源からの光の利用効率を確保できるとともに、適切に所定の配光パターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示に係る一実施形態としての車両用灯具を示す説明図である。
図2】車両用灯具を正面(前後方向の前側)から見た様子を示す説明図である。
図3】車両用灯具の構成を分解して示す説明図である。
図4図2に示すI-I線に沿って得られた断面で示す説明図である。
図5】車両用灯具におけるリフレクタ部材と投影レンズとの構成を示す説明図である。
図6】投影光軸上の中心位置で水平線と鉛直線とが交差するスクリーン上において、走行用配光パターンを形成した様子を示す説明図である。
図7】スクリーン上において、第1配光パターンを形成した様子を示す説明図である。
図8】スクリーン上において、第1配光領域(第2配光領域)を形成した様子を示す説明図である。
図9】スクリーン上において、第2配光パターンを形成した様子を示す説明図である。
図10】投影レンズの投影出射面における上下拡散プリズムの構成を示す説明図である。
図11】投影レンズの投影入射面における幅拡散プリズムの構成を示す説明図である。
図12】スクリーン上において、第1配光領域(第2配光領域)が上下拡散プリズムや幅拡散プリズムにより上下方向および幅方向に拡散された様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る車両用灯具の一例としての車両用灯具10の実施例1について図面を参照しつつ説明する。なお、各配光パターン、各配光領域を示す図6から図9図12では、車両用灯具10による照射の中心位置O(投影光軸Lp)を原点として水平線Hと鉛直線Vとが交差するスクリーン上で、明るさの分布を中に向かうほど明るさが高くなる等高線のように示している。また、図10図11とでは、上下拡散プリズム51および幅拡散プリズム52における高低差の大きさを色の濃さで示しており、色が濃くなるほど大きいことを示している。その図10図11とでは、部分的に拡大した箇所において、上下拡散プリズム51および幅拡散プリズム52の形状の把握を容易とするために、それらが設けられていない状態の投影出射面41aや投影入射面41bを二点鎖線で示している。
【0010】
以下の説明では、車両用灯具10において、車両が進行する方向を前後方向(図面ではZとする)とし、前後方向を水平面に沿う状態とした際の鉛直方向を上下方向(図面ではYとする)とし、前後方向および上下方向に直交する方向(水平方向)を幅方向(図面ではXとする)とする。その前後方向では、後述する投影レンズ24が設けられる側を前側とし、上下方向では、後述する取付部材21が設けられる側を上側とする。ここで、車両用灯具10は、車両の左側に設けられるものと右側に設けられるものとで基本的に等しい構成とされつつ幅方向(左右)で反転されたものであるので、以下では、左側に設けられる車両用灯具10を用いて説明する。
【実施例0011】
本開示に係る車両用灯具の一実施形態に係る実施例1の車両用灯具10を、図1から図12を用いて説明する。実施例1の車両用灯具10は、自動車等の車両の前照灯装置として用いられるもので、対向車がいないときに用いる走行用配光パターンにおける略左半分の走行用配光パターンHB(図6参照)を形成する。車両用灯具10は、その走行用配光パターンHBをADB(Adaptive Driving Beam)としての機能を有するものとしている。この車両用灯具10は、カットオフラインを有するすれ違い用配光パターンを形成するロービームユニットと合わせて車両に搭載される。車両用灯具10は、ロービームユニットがすれ違い用配光パターンを形成した状態において、そのすれ違い用配光パターンの上部に部分的に重複させつつその上部を照射する走行用配光パターンHBを形成することで、所謂ハイビームとすることができる。
【0012】
この車両用灯具10は、車両の前部の左右両側において、開放された前端がアウターレンズで覆われたランプハウジングにより形成される灯室に設けられる。車両用灯具10は、上下方向用光軸調整機構や左右方向用光軸調整機構を介して灯室に設けられ、車両の前方を適宜照射する。
【0013】
実施例1の車両用灯具10は、図1図3に示すように、投影光軸Lpを中心として第1照射ユニット11と第2照射ユニット12とが幅方向で隣接されて設けられている。第1照射ユニット11は、第1配光パターンP1(図7参照)を形成し、第2照射ユニット12は、第2配光パターンP2(図9参照)を形成する。この第1配光パターンP1と第2配光パターンP2とは、形成される位置が異なることを除くと、互いに略等しいものとされており、その位置関係については後述する。第1配光パターンP1と第2配光パターンP2とは、同時に形成されることで走行用配光パターンHB(図6参照)を形成する。
【0014】
車両用灯具10は、図1から図5に示すように、取付部材21に、光源部22とリフレクタ部材23と投影レンズ24とが取り付けられて、プロジェクタタイプの灯具ユニットとされている。取付部材21は、光源部22が設けられる箇所であり、熱伝導性を有するアルミプレートやアルミダイカストや樹脂で形成されている。この取付部材21では、複数の放熱フィン21aが設けられ、取り付けられた光源部22で発生した熱を主に各放熱フィン21aから外部に放熱することができ、全体として光源部22で発生する熱を外部に逃がすヒートシンクとして機能する。この取付部材21は、図示しないブラケットを介して、ランプハウジングに固定される。取付部材21では、冷却効率を高めるために適宜冷却ファンユニットを設けるものとしてもよい。取付部材21は、図4に示すように、光源取付部31とレンズ取付部32とを有する。
【0015】
光源取付部31は、上下方向に略直交する平板状とされ、所定の位置に光源部22が取り付けられる。レンズ取付部32は、上下方向に略直交する平板状とされ、光源取付部31の前後方向の前側に設けられ、段差をつけて光源取付部31よりも上下方向の上側に位置されている。レンズ取付部32は、投影レンズ24を取り付ける箇所としての機能を有し、光源取付部31に取り付けられた光源部22の前後方向の前側に投影レンズ24を位置させる。このレンズ取付部32には、仕切り板32a(図3参照)が設けられている。仕切り板32aは、レンズ取付部32の幅方向の略中央で、前後方向および上下方向に伸びる板状とされている。この仕切り板32aは、レンズ取付部32の内方の空間、すなわち後述するように光源部22からの光がリフレクタ部材23で反射されて投影レンズ24へと進行する空間を、幅方向で2つに区画している。仕切り板32aは、第1照射ユニット11と第2照射ユニット12との間で互いの光が混ざることを抑えることができ、意図しない方向や態様で投影レンズ24から光が投影されることを抑える。
【0016】
光源部22は、図3から図5に示すように、基板33に12個の光源34が並べて設けられて構成される。各光源34は、配光パターンを形成するための光を出射するものであり、それぞれがLED(Light Emitting Diode)等の発光素子で構成されている。各光源34は、後述するように連続して設けられる12個の反射面(後述する各第1反射面37および各第2反射面38)のそれぞれに上下方向で対向する12箇所に設けられている。この光源34は、幅方向で一方側の6つが第1照射ユニット11における光源として機能し、幅方向で他方側の6つが第2照射ユニット12における光源として機能する(図5参照)。以下では、個別に述べる際には、第1照射ユニット11の光源となるものを第1光源341とし、第2照射ユニット12の光源となるものを第2光源342とする。
【0017】
基板33は、各光源34が実装され、車両に搭載された電力供給源からの電力を各光源34へと供給可能とされている。この基板33は、幅方向に長尺な板状とされ、アルミ基板やガラスエポキシ基板等で形成されている。基板33は、第1照射ユニット11の6つの第1光源341と、第2照射ユニット12の6つの第2光源342と、の双方を同一平面上に配置していることとなり、それぞれの各第1光源341および各第2光源342を個別にまたは同時に適宜点灯させることができる。この基板33は、各光源34が実装された状態で、取付部材21の光源取付部31に取り付けられる。光源部22は、この取り付けられた状態において、各光源34が上下方向の下側に向けている。図3から図5に示すように、この各光源34を第1リフレクタ35と第2リフレクタ36とで覆うように、リフレクタ部材23が設けられる。
【0018】
リフレクタ部材23は、樹脂材料からなる成形品とされ、第1リフレクタ35と第2リフレクタ36とが一体的に設けられている。この第1リフレクタ35は、6つの第1光源341に対応して設けられ、第1照射ユニット11を構成する。第1リフレクタ35は、6つの第1反射面37を有し、それぞれが6つの第1光源341に個別に対応されている。各第1反射面37は、対応する第1光源341を個別に覆うように湾曲された形状とされ、その表面にアルミ蒸着が施されて形成されている。この各第1反射面37は、対応する第1光源341(その近傍)を第1焦点としつつ、投影レンズ24の後述する第1レンズ部43(その近傍)を第2焦点とする楕円を基本とした椀状の自由曲面とされている。この6つの第1反射面37は、幅方向で連続して形成されている。
【0019】
第2リフレクタ36は、6つの第2光源342に対応して設けられ、第2照射ユニット12を構成する。この第2リフレクタ36は、6つの第2反射面38を有し、それぞれが6つの第2光源342に個別に対応されている。各第2反射面38は、対応する第2光源342を個別に覆うように湾曲された形状とされ、その表面にアルミ蒸着が施されて形成されている。この各第2反射面38は、対応する第2光源342(その近傍)を第1焦点としつつ、投影レンズ24の後述する第2レンズ部44(その近傍)を第2焦点とする楕円を基本とした椀状の自由曲面とされている。この6つの第2反射面38は、幅方向で連続しつつ右側(車両の内側)に向かうにしたがって前後方向の前側に位置が変化されて形成されている(図3図5参照)。これに伴って、6つの第2光源342は、幅方向で右側に向かうにしたがって前後方向の前側に位置が変化されて並べられている(図3図5参照)。
【0020】
このリフレクタ部材23は、光源取付部31との間に光源部22を介在させて、その光源取付部31および光源部22に対して位置決めされた状態で、光源取付部31に取り付けられる。これにより、光源部22では、基板33に実装された各第1光源341が第1リフレクタ35のそれぞれが対応する第1反射面37に対向されるとともに、基板33に実装された各第2光源342が第2リフレクタ36のそれぞれが対応する第2反射面38に対向される。このため、各第1反射面37は、対応する第1光源341から出射された光を反射することで、効率よく投影レンズ24の後述する第1レンズ部43へと進行させることができる。また、各第2反射面38は、対応する第2光源342から出射された光を反射することで、効率よく投影レンズ24の後述する第2レンズ部44へと進行させることができる。
【0021】
このリフレクタ部材23では、レンズ取付部32の前端位置で、取付部材21のレンズ取付部32との間に投影レンズ24が設けられる。このため、リフレクタ部材23は、レンズ取付部32と協働して、第1リフレクタ35および第2リフレクタ36から投影レンズ24までで、各第1反射面37や各第2反射面38で反射された光が投影レンズ24へと進行する空間(光路)を形成する。
【0022】
投影レンズ24は、各第1反射面37や各第2反射面38で反射された各光源34からの光を前後方向の前側に投影するもので、レンズ本体部41と一対の取付片部42とを有する。その両取付片部42は、レンズ本体部41(投影レンズ24)を取付部材21(レンズ取付部32)に取り付けるための箇所である。各取付片部42は、レンズ本体部41の幅方向の両端から前後方向の後側に突出する板状とされている。投影レンズ24は、各取付片部42がレンズ取付部32とリフレクタ部材23とに挟み込まれて固定されることで、レンズ取付部32の前端を幅方向に架け渡してレンズ本体部41が設けられる。
【0023】
レンズ本体部41は、投影レンズ24において各光源34からの光を投影するレンズとしての機能を発揮するもので、実施例1では前後方向の前側から見て幅方向に長尺な略四角形状とされている。なお、レンズ本体部41は、前後方向から見た形状は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。レンズ本体部41は、投影光軸Lpを中心として幅方向の左側に設けられた第1レンズ部43と右側に設けられた第2レンズ部44とを有し、それぞれの光学的な設定が為されている。その第1レンズ部43は、各第1光源341から出射されて第1リフレクタ35で反射された光を投影する箇所となり、第1照射ユニット11を構成する。また、第2レンズ部44は、各第2光源342から出射されて第2リフレクタ36で反射された光を投影する箇所となり、第2照射ユニット12を構成する。このため、第1レンズ部43は、第1照射ユニット11を構成する第1投影レンズとして機能し、第2レンズ部44は、第2照射ユニット12を構成する第2投影レンズとして機能する。この車両用灯具10は、上述したように車両の左側に設けられているので、第1照射ユニット11(第1レンズ部43)が車両の外側に位置しているとともに、第2照射ユニット12(第2レンズ部44)が車両の内側に位置している。
【0024】
実施例1のレンズ本体部41では、前後方向の前側が光を出射させる投影出射面41aとなり、その投影出射面41aが滑らかに連続する(屈曲箇所がなく曲率の変化が連続する)単一の面とされている。この投影出射面41aは、幅方向の左側が第1レンズ部43の第1出射面43aとされ、幅方向の右側が第2レンズ部44の第2出射面44aとされている。このため、投影出射面41aでは、外見からは第1出射面43aと第2出射面44aとが一体なものとされており、見分けが困難とされている。
【0025】
また、実施例1のレンズ本体部41では、図5図11に示すように、前後方向の後側が光を入射させる投影入射面41bとされており、その投影入射面41bが投影光軸Lpを中心として幅方向の右側と左側とに区画された構成とされている。この投影入射面41bは、幅方向の左側が第1レンズ部43の第1入射面43bとされ、幅方向の右側が第2レンズ部44の第2入射面44bとされており、それぞれの形状により間に上下方向に伸びる区画線41cが形成されている。この第1入射面43bと第2入射面44bとは、それぞれが対応する各第1光源341および第1リフレクタ35(各第1反射面37)や、各第2光源342および第2リフレクタ36(各第2反射面38)に合わせて光学的な設定が為されている。
【0026】
詳細には、第1レンズ部43は、対応する第1リフレクタ35(各第1反射面37)における幅方向での略中心位置の近傍であって、対応する各第1光源341における幅方向での略中心位置の近傍またはその中心位置よりも車両の外側に焦点(後側焦点)が設定された凸レンズとされている。この第1レンズ部43は、第1出射面43aが第2出射面44aと滑らかに連続する単一の面とされているので、その第1出射面43aに合わせて第1入射面43bの形状を設定することで、光学的な設定が定められている。
【0027】
この第1レンズ部43は、各第1光源341から出射されて対応する各第1反射面37で反射された光を投影することで、図7に示すように、スクリーン上に第1配光パターンP1を形成する。このスクリーンでは、水平線Hの方向(以下では、水平方向ともいう)が、車両用灯具10における幅方向に対応し、鉛直線Vの方向(以下では、鉛直方向ともいう)が、車両用灯具10における上下方向に対応している。
【0028】
第1配光パターンP1は、6つの第1配光領域A1が水平方向に沿って並べられて形成されている。このため、実施例1では、水平方向が、6つの第1配光領域A1が並べられる整列方向となる。その各第1配光領域A1は、対応する第1光源341からの光で照射された第1反射面37が投影されることにより形成され、図8に示すように、実施例1では鉛直方向に長尺な略矩形状とされている。各第1配光領域A1は、鉛直方向の下部が水平線H上に位置するものとされ、その水平線Hの近傍を最も光量を高くしつつ鉛直方向の上側に向かうにしたがって徐々に光量が低くされている。
【0029】
そして、実施例1の第1レンズ部43は、対応する第1光源341と第1反射面37とが6つずつ幅方向に設けられていることから、図7に示すように、6つの第1配光領域A1を水平方向に並べて形成し、それにより第1配光パターンP1を形成する。ここで、6つの第1反射面37は、連続して形成されているので、それぞれに対応する第1配光領域A1が隣接して形成されている。実施例1の第1配光パターンP1では、各第1配光領域A1の水平方向での大きさ寸法が略等しくされている。また、実施例1の第1配光パターンP1では、各第1配光領域A1の鉛直方向での大きさ寸法が異なるものとされており、右側から2つ目の第1配光領域A1が最も大きくされるとともに、そこから離れるにしたがって徐々に小さくされている。
【0030】
そして、第1レンズ部43は、右側から2つ目の第1配光領域A1を、その幅方向の中心が原点(投影光軸Lp)と重なる状態を基準位置として、その基準位置から、第1配光領域A1の水平方向での大きさ寸法の略4分の1の大きさだけ水平方向の右側にシフト(平行移動)させた位置に形成する。これに伴って、第1レンズ部43は、他の5つの第1配光領域A1を、同じ大きさだけ水平方向の右側にシフトさせた位置に形成する。これらの大きさや位置の調整は、6つの第1光源341の位置と、それに対する6つの第1反射面37の位置や面の形状と、第1レンズ部43(主に第1入射面43b)の形状と、を設定することで行うことができる。これにより、第1照射ユニット11は、基準位置から第1配光領域A1の略4分の1の大きさだけ右側にシフトさせた状態で第1配光パターンP1を形成する。
【0031】
また、第2レンズ部44は、対応する第2リフレクタ36(各第2反射面38)における幅方向での略中心位置の近傍であって、対応する各第2光源342における幅方向での略中心位置またはその中心位置よりも車両の外側の近傍に焦点(後側焦点)が設定された凸レンズとされている。この第2レンズ部44は、第2出射面44aが第1出射面43aと滑らかに連続する単一の面とされているので、その第2出射面44aに合わせて第2入射面44bの形状を設定することで、光学的な設定が定められている。
【0032】
ここで、第2照射ユニット12は、基本的に第1照射ユニット11と光学的な設定が同様とされている。そして、第2レンズ部44は、第2光源342からの光で照射された第2反射面38を投影して形成する各第2配光領域A2が各第1配光領域A1と同じ形状および大きさとされている(図8参照)。そして、実施例1の第2レンズ部44は、第2光源342と第2反射面38とが6つずつ設けられていることから、図9に示すように、6つの第2配光領域A2を水平方向に沿って並べることで第2配光パターンP2を形成する。ここで、6つの第2反射面38は、連続して形成されているので、それぞれに対応する第2配光領域A2が隣接して形成されている。実施例1の第2配光パターンP2では、各第2配光領域A2の水平方向での大きさ寸法が略等しくされている。また、実施例1の第2配光パターンP2では、各第2配光領域A2の鉛直方向での大きさ寸法が異なるものとされており、右側から2つ目の第2配光領域A2が最も大きくされるとともに、そこから離れるにしたがって徐々に小さくされている。
【0033】
そして、第2レンズ部44は、右側から2つ目の第2配光領域A2を、その幅方向の中心が原点(投影光軸Lp)と重なる状態を基準位置として、その基準位置から、第2配光領域A2の水平方向での大きさ寸法の略4分の1の大きさだけ水平方向の左側にシフトさせた位置に形成する。これに伴って、第2レンズ部44は、他の5つの第2配光領域A2を、同じ大きさだけ水平方向の左側にシフトさせた位置に形成する。これらの大きさや位置の調整は、6つの第2光源342の位置と、それに対する6つの第2反射面38の位置や面の形状と、に合わせて第2レンズ部44(主に第2入射面44b)の形状を設定することで行うことができる。これにより、第2照射ユニット12は、基準位置から第2配光領域A2の略4分の1の大きさだけ左側にシフトさせた状態で第2配光パターンP2を形成する。ここで、実施例1の第2照射ユニット12は、各第2反射面38および各第2光源342を幅方向で右側に向かうにしたがって前後方向の前側に位置を変化させて並べているので、第1照射ユニット11の第1配光パターンP1よりも左側にシフトさせた第2配光パターンP2を形成することが容易とされている。
【0034】
この車両用灯具10は、第1照射ユニット11で第1配光パターンP1を形成しつつ、第2照射ユニット12で第2配光パターンP2を形成することで、図6に示すように、走行用配光パターンHBを形成する。この走行用配光パターンHBでは、第1配光パターンP1が第1配光領域A1の略4分の1の大きさだけ右側にシフトされているとともに、第2配光パターンP2が第2配光領域A2の略4分の1の大きさだけ左側にシフトされている。このため、走行用配光パターンHBでは、水平方向で見て、隣接する2つの第1配光領域A1の略中心位置に各第2配光領域A2が位置されるとともに、隣接する2つの第2配光領域A2の略中心位置に各第1配光領域A1が位置されている。これにより、走行用配光パターンHBでは、隣接する第1配光領域A1の間や隣接する第2配光領域A2の間に隙間が形成されることを確実に防止することができ、違和感のない見た目とすることができる。
【0035】
なお、第1配光パターンP1および第2配光パターンP2の左右のシフト量は、略4分の1に限定されなく、水平方向で見て、隣接する2つの第1配光領域A1の略中心位置に各第2配光領域A2が位置されるとともに、隣接する2つの第2配光領域A2の略中心位置に各第1配光領域A1が位置されていればよい。この一例として、第1配光パターンP1を上記の基準位置としつつ、第2配光パターンP2を第2配光領域A2の略2分の1の大きさだけ左側にシフトさせてもよい。また、第2配光パターンP2を上記の基準位置としつつ、第1配光パターンP1を第1配光領域A1の略2分の1の大きさだけ右側にシフトさせてもよい。
【0036】
ここで、車両用灯具10は、鉛直線V(原点(投影光軸Lp))に対して左側に偏らせて走行用配光パターンHBを形成しているが、上記したように車両の左側に設けられるものである。そして、車両用灯具10は、車両の右側に設けられるものである場合には、幅方向(左右)で反転された構成とされることにより、鉛直線V(原点(投影光軸Lp))に対して右側に偏らせて走行用配光パターンHBを形成する。このため、車両用灯具10は、車両の両側で2つ設けられた状態でそれぞれが走行用配光パターンHBを形成することにより、鉛直線V(原点(投影光軸Lp))の近傍の鉛直方向での大きさ寸法を最も大きくかつ光量を高くし(あげ)つつ、そこから外側(幅方向の両側)に向かうに連れて徐々に小さくかつに光量が低くなる(さげる)走行用配光パターンを形成することとなる。
【0037】
加えて、車両用灯具10では、図10に示すように、投影レンズ24の投影出射面41a、すなわち第1レンズ部43の第1出射面43aと第2レンズ部44の第2出射面44aとに、上下拡散プリズム51(投影出射面41aにおいてグラデーションで示す箇所参照)が設けられている。この上下拡散プリズム51は、投影レンズ24すなわち第1レンズ部43および第2レンズ部44から出射される光を主に上下方向に拡散する光学的な特性を有し、周期的に高低差の異なる面、すなわち高低差の変化が繰り返す構造とされている。実施例1の上下拡散プリズム51は、上下方向の位置に応じて投影出射面41aの高さ(前後方向での位置)を滑らかに変化させつつその上下方向での高さ位置を維持するように幅方向に投影出射面41aの略全域に亘ってのびる正弦波状の曲面とされている(図10において部分的に拡大して示す箇所参照)。すなわち、実施例1の上下拡散プリズム51は、幅方向に長尺な凸部と凹部とが上下方向で交互に並びつつ滑らかに連続する曲面とされている。この上下拡散プリズム51では、図10の部分的に拡大した箇所に示すように、隣り合う凸部の頂点と凹部の頂点との前後方向での位置(変化量(正弦波における振幅に相当))により高低差が形成されている。なお、上下拡散プリズム51は、出射される光を主に上下方向に拡散するものであって周期的に高低差の異なる面で形成されていれば、幅方向に延びる複数の凸部のみまたは複数の凹部のみで形成されてもよく、異なる形状の面とされていてもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。また、上下拡散プリズム51は、凸部や凹部の上下方向での大きさ(正弦波における周期に相当)や前後方向での位置(変化量)は適宜設定すればよく、図10に示す例に限定されない。
【0038】
上下拡散プリズム51は、少なくとも投影出射面41aにおける上下方向の略中央位置から下半分に設けるものとしており、実施例1では投影出射面41aにおける上下方向で下側の略3分の2までの領域に設けている。このため、投影出射面41aでは、下半分から出射された光における上下方向への拡散量が、上半分から出射された光における上下方向への拡散量よりも多くなり、上側の略3分の1から出射された光は上下方向に殆ど拡散しない。これは、以下のことによる。先ず、上述したように、各第1配光領域A1や各第2配光領域A2では、水平線Hの近傍を最も光量を高くし(あげ)つつ鉛直方向の上側に向かうにしたがって徐々に光量が低くなる(さげる)ものとしている。そして、投影レンズ24は、光で照射された第1反射面37や第2反射面38を投影することで、各第1配光領域A1や各第2配光領域A2を形成している。このため、投影レンズ24は、上部から出射した光で各第1配光領域A1や各第2配光領域A2における光量が低くされた上部を形成している。ここで、各第1配光領域A1や各第2配光領域A2では、上下拡散プリズム51を通した光で光量が低くされた上部を形成すると、その上下拡散プリズム51の形状すなわち幅方向に長尺な凸部と凹部とが上下方向で交互に並ぶ様子が明暗差として反映され、その明暗差が縞模様として視認される。ところで、各第1配光領域A1や各第2配光領域A2では、光量が高くされた水平線Hの近傍でも明暗差が生じていると考えられるが、明るい箇所では明暗差が目立つことはなく、縞模様として視認されない。
【0039】
また、実施例1の上下拡散プリズム51は、図10においてグラデーションの明暗で示すように、投影出射面41aにおける上下方向で下側から略3分の2において、高低差すなわち上下方向で隣り合う凸部と凹部との前後方向での変化量を漸次的に変化させることにより拡散度合いを変化させている。これにより、上下拡散プリズム51は、各第1配光領域A1や各第2配光領域A2における拡散の有無や変化が目立つことを防止できる。また、高低差の大きさの変化は、上下方向において上下拡散プリズム51が設けられた範囲の両端(投影出射面41aの下端、その下端から略3分の2の位置)が最も小さく、下半分における上側から4分の1から3分の1の辺りが最も大きくなるものとしている。これにより、上下拡散プリズム51は、下側から略3分の2の位置での上下拡散プリズム51が設けられていない箇所との境目により各第1配光領域A1や各第2配光領域A2に縞模様が形成されることや、各第1配光領域A1や各第2配光領域A2の下端近傍が大きくぼやけることを防ぐことができる。
【0040】
さらに、車両用灯具10では、図11に示すように、投影レンズ24の投影入射面41b、すなわち第1レンズ部43の第1入射面43bと第2レンズ部44の第2入射面44bとに、幅拡散プリズム52が設けられている。この幅拡散プリズム52は、投影レンズ24すなわち第1レンズ部43および第2レンズ部44から出射される光を主に幅方向に拡散する光学的な特性を有し、周期的に高低差の異なる面、すなわち高低差の変化が繰り返す構造とされている。実施例1の幅拡散プリズム52は、幅方向の位置に応じて第1入射面43bや第2入射面44bの高さ(前後方向での位置)を滑らかに変化させつつその幅方向での高さ位置を維持するように上下方向に投影入射面41bの略全域に亘ってのびる正弦波状の曲面とされている(図11において部分的に拡大して示す箇所参照)。すなわち、実施例1の幅拡散プリズム52は、上下方向に長尺な凸部と凹部とが幅方向で交互に並びつつ滑らかに連続する曲面とされている。この幅拡散プリズム52では、図11の部分的に拡大した箇所に示すように、隣り合う凸部の頂点と凹部の頂点との前後方向での位置(変化量(正弦波における振幅に相当))により高低差が形成されている。なお、幅拡散プリズム52は、出射される光を主に幅方向に拡散するものであって周期的に高低差の異なる面で形成されていれば、上下方向に延びる複数の凸部のみまたは複数の凹部のみで形成されてもよく、異なる形状の面とされていてもよく、他の構成でもよく、実施例1の構成に限定されない。また、幅拡散プリズム52は、凸部や凹部の幅方向での大きさ(正弦波における周期に相当)や前後方向での位置(変化量)は適宜設定すればよく、図11に示す例に限定されない。
【0041】
実施例1の幅拡散プリズム52は、図11においてグラデーションの明暗で示すように、第1入射面43bと第2入射面44bとのそれぞれにおいて、高低差すなわち上下方向で隣り合う凸部と凹部との前後方向での変化量を漸次的に変化させることにより拡散度合いを変化させている。これにより、幅拡散プリズム52は、各第1配光領域A1や各第2配光領域A2における拡散の変化が目立つことを防止できる。また、高低差の大きさの変化は、幅方向において第1入射面43bや第2入射面44bの両端が最も小さく、幅方向における中央近傍が最も大きくなるものとしている。これにより、幅拡散プリズム52は、各第1配光領域A1や各第2配光領域A2に縞模様が形成されることや、各第1配光領域A1や各第2配光領域A2の両側端近傍が大きくぼやけることを防ぐことができる。なお、幅拡散プリズム52は、幅方向における中央近傍の高低差を最も大きくしているが、幅方向での位置に応じて漸次的に高低差を変化させるものであれば、高低差を最も大きくする所定領域を適宜設定することができ、実施例1の構成に限定されない。また、所定領域は、幅方向における任意の位置で所定の大きさをもつもの、すなわち最も高低差が大きい箇所が幅方向で所定の長さに亘って設けられていてもよく、実施例1の構成に限定されない。実施例1の幅拡散プリズム52では、所定領域を幅方向で大きさをもつものとすると、高低差が最も大きくされた凸部や凹部が中央近傍で複数並列されることとなる。
【0042】
このため、投影レンズ24は、形成する各第1配光領域A1や各第2配光領域A2を、上下拡散プリズム51や幅拡散プリズム52が設けられていない場合(図8参照)と比較して、上下方向と幅方向とに広げることができる(図12参照)。詳細には、投影レンズ24では、上下拡散プリズム51を主に下半分に設けているので、上下方向に関しては、図12の各第1配光領域A1や各第2配光領域A2が、図8の各第1配光領域A1や各第2配光領域A2と比較して、上側には大きさの変化は略なく、下側には大きくなっている。これにより、投影レンズ24は、上下拡散プリズム51が設けられていない場合(図8参照)と比較して、下端側を少し大きくした走行用配光パターンHBを形成できる。
【0043】
また、投影レンズ24では、幅拡散プリズム52を全体に設けているので、幅方向に関しては、図12の各第1配光領域A1や各第2配光領域A2が、図8の各第1配光領域A1や各第2配光領域A2と比較して、幅方向の両側に大きくなっている。これにより、投影レンズ24は、幅拡散プリズム52が設けられていない場合(図8参照)と比較して、幅方向での隣接する第1配光領域A1や隣接する第2配光領域A2を確実に重ねることができ、幅方向での隙間をなくすことができ、より滑らかに連続した走行用配光パターンHBを形成できる。
【0044】
このように、車両用灯具10は、第1照射ユニット11の各第1光源341と第2照射ユニット12の各第2光源342とを点灯させることにより、それぞれからの光を各リフレクタ(35、36)で反射した後に、投影レンズ24から出射させる。これにより、車両用灯具10は、図6に示すように、走行用配光パターンHBを形成できる。この走行用配光パターンHBは、その下部が、ロービームユニットが形成したすれ違い用配光パターンの上部に部分的に重複されることにより、所謂ハイビームとすることができる。
【0045】
実施例1の車両用灯具10は、6つの第1配光領域A1が幅方向に並べられた第1配光パターンP1と、6つの第2配光領域A2が幅方向に並べられた第2配光パターンP2と、で走行用配光パターンHBを形成している。そして、車両用灯具10は、走行用配光パターンHBにおいて、対向車両や先行車両等が存在する領域の第1配光領域A1や第2配光領域A2に対応する第1光源341や第2光源342を部分的に消灯することにより、ADBとして機能する。
【0046】
ここで、従来の車両用灯具の技術の課題について説明する。従来の車両用灯具は、基本的に各光源からの光のうち投影レンズへと直接進行する光を利用して各配光領域すなわち配光パターンを形成しており、各光源からの光を直接投影レンズへと導く構成とされている。このため、従来の車両用灯具は、各光源から大きな角度で出射された光が入射できるように投影レンズの寸法を大きくしないと、各光源からの光の利用効率を高めることができない。このことから、従来の車両用灯具は、投影レンズの寸法を小さくすることと、各光源からの光の利用効率を高めることと、を両立させることが困難である。
【0047】
これに対し、本開示の車両用灯具10は、各光源34からの光を各リフレクタ(35、36)で反射し、その反射された光を投影レンズ24から投影することで走行用配光パターンHBを形成する。このため、車両用灯具10は、各光源34から大きな角度で出射された光であっても各リフレクタ(35、36)で集光しつつ投影レンズ24へと導くことができるので、投影レンズ24の寸法を小さくすることと、各光源34からの光の利用効率を高めることと、を両立させることができる。
【0048】
ここで、車両用灯具10は、各光源34に個別に対応させて各リフレクタ(35、36)を設けているので、各反射面(37、38)の形状を投影して各配光領域(A1、A2)を形成することとなる。すると、各反射面(37、38)は、物理的に重複させて形成することが困難であるので、隣接する配光領域(A1、A2)を重ねて形成することが困難となり、隣接する配光領域(A1、A2)の間に隙間が生じて違和感を与えたり品質の低下を招いたりする虞がある。これに対して、車両用灯具10は、第1照射ユニット11で6つの第1配光領域A1を並べて形成した第1配光パターンP1と、第2照射ユニット12で6つの第2配光領域A2を並べて形成した第2配光パターンP2と、を重ねて走行用配光パターンHBを形成する。そして、車両用灯具10は、第1配光パターンP1を第1配光領域A1の略4分の1の大きさだけ右側にシフトさせているとともに、第2配光パターンP2を第2配光領域A2の略4分の1の大きさだけ左側にシフトさせている。これにより、車両用灯具10は、各第1配光領域A1と各第2配光領域A2とを重ねて走行用配光パターンHBを形成することができ、隣接する配光領域(A1、A2)の間に隙間が形成されることを確実に防止できる。このことから、車両用灯具10は、違和感を与えることなく、品質の高い走行用配光パターンHBを形成することができる。
【0049】
本開示に係る車両用灯具の一例としての車両用灯具10は、以下の各作用効果を得ることができる。
【0050】
車両用灯具10では、複数の第1光源341から出射された光を第1リフレクタ35で反射して第1投影レンズとしての第1レンズ部43で投影することにより複数の第1配光領域A1を水平方向(整列方向)に並べた第1配光パターンP1を形成する第1照射ユニット11を備える。また、車両用灯具10では、複数の第2光源342から出射された光を第2リフレクタ36で反射して第2投影レンズとしての第2レンズ部44で投影することにより複数の第2配光領域A2を水平方向に並べた第2配光パターンP2を形成する第2照射ユニット12を備える。さらに、車両用灯具10では、第1照射ユニット11と第2照射ユニット12とが、水平方向で一端側に位置する第1配光領域A1と第2配光領域A2との一部を重ねつつ水平方向にずらした位置関係で、第1配光パターンP1と第2配光パターンP2とを重ねて走行用配光パターンHBを形成する。このため、車両用灯具10は、各照射ユニット(11、12)が、各光源34から大きな角度で出射された光であっても各リフレクタ(35、36)で集光しつつ第1レンズ部43や第2レンズ部44へと導くことができるので、第1レンズ部43や第2レンズ部44の寸法を小さくすることと、各光源34からの光の利用効率を高めることと、を両立できる。また、車両用灯具10は、隣接する配光領域(A1、A2)の間に隙間が形成されることを確実に防止した状態で走行用配光パターンHBを形成することができ、その走行用配光パターンHBの品質を高めて違和感を与えることを防止できる。
【0051】
また、車両用灯具10では、第1照射ユニット11と第2照射ユニット12とが、水平方向に対応する幅方向で隣接して設けられ、第1レンズ部43と第2レンズ部44とが、一体とされている。このため、車両用灯具10は、位置の調節を行うことなく第1照射ユニット11と第2照射ユニット12とを適切な位置関係にできるとともに、部品点数の少なくすることができ、組み付け工程を簡易なものにできる。
【0052】
さらに、車両用灯具10では、第1レンズ部43と第2レンズ部44とに、少なくとも幅方向に交差する上下方向における中間位置よりも下側(実施例1では投影出射面41a)に、進行する光を上下方向に拡散する上下拡散プリズム51を設けている。このため、車両用灯具10は、形成する各第1配光領域A1や各第2配光領域A2において、上部に縞模様が形成されることを防ぐことができるとともに、下側を大きくする(下側に拡げる)ことができる。
【0053】
車両用灯具10では、上下拡散プリズム51が、周期的に高低差の異なる面で形成され、第1レンズ部43と第2レンズ部44とにおける上下方向での中間位置よりも下側で高低差を最も大きくするように上下方向での位置に応じて漸次的に高低差が変化されている。このため、車両用灯具10は、形成する各第1配光領域A1や各第2配光領域A2において、縞模様が形成されることや、下端近傍が大きくぼやけることを防ぐことができる。
【0054】
車両用灯具10では、第1レンズ部43と第2レンズ部44とが一体とされて、第1出射面43aと第2出射面44aとが滑らかに連続する単一の投影出射面41aとされ、上下拡散プリズム51が投影出射面41aに設けられている。このため、車両用灯具10は、外側からの見栄えを向上させることができるとともに、上下拡散プリズム51を有する第1レンズ部43と第2レンズ部44との形成を容易なものにできる。これは、以下のことによる。上下拡散プリズム51は、進行する光を上下方向に拡散するものであるため、幅方向では一定の構造とされつつ上下方向に繰り返しのある構造(周期的な構造)とされる。このため、上下拡散プリズム51は、幅方向で滑らかに連続する単一の投影出射面41aに設けることで、第1出射面43aと第2出射面44aとに亘る連続した構造とすることができるので、形成を容易なものにできる。
【0055】
車両用灯具10では、第1レンズ部43の第1入射面43bと第2レンズ部44の第2入射面44bとに、進行する光を幅方向に拡散する幅拡散プリズム52が設けられている。このため、車両用灯具10は、形成する各第1配光領域A1や各第2配光領域A2において、幅方向の両側に大きくすることができる。
【0056】
車両用灯具10では、幅拡散プリズム52が、周期的に高低差の異なる面で形成され、第1入射面43bと第2入射面44bとのそれぞれにおいて、幅方向における所定領域(実施例1では幅方向における中央近傍)の高低差を最も大きくするように幅方向での位置に応じて漸次的に高低差が変化されている。このため、車両用灯具10は、幅拡散プリズム52を有する第1レンズ部43と第2レンズ部44との形成を容易なものにできる。これは、以下のことによる。幅拡散プリズム52は、進行する光を幅方向に拡散するものであるため、上下方向では一定の構造とされつつ幅方向に繰り返しのある構造(周期的な構造)とされる。また、一体とされた第1レンズ部43と第2レンズ部44とでは、第1出射面43aと第2出射面44aとが滑らかに連続する単一の投影出射面41aとされているので、第1入射面43bと第2入射面44bとで個別に光学的な設定が為されている。このため、第1レンズ部43と第2レンズ部44とでは、互いに異なる曲面とされており、互いの間に上下方向に伸びる区画線41cが形成されている。このことから、幅拡散プリズム52は、第1入射面43bと第2入射面44bとのそれぞれにおいて、幅拡散プリズム52の拡散度合いを変化させて設けることにより、区画線41cで区画されたそれぞれで完結する構造とすることができるので、形成を容易なものにできる。また、幅拡散プリズム52は、上下方向では一定の構造とされることから、上下方向に伸びる区画線41cと馴染むので、区画線41cを目立たなくすることができる。
【0057】
したがって、本開示に係る車両用灯具としての実施例1の車両用灯具10は、投影レンズ24の寸法を小さくしても各光源34からの光の利用効率を確保できるとともに、適切に所定の配光パターン(走行用配光パターンHB)を形成することができる。
【0058】
以上、本開示の車両用灯具を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例1に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0059】
なお、上記した実施例1では、第1照射ユニット11と第2照射ユニット12とを、整列方向(水平方向)に対応する幅方向で隣接して設けていたが、位置関係は適宜設定すればよく、実施例1の構成に限定されない。
【0060】
また、上記した実施例1では、各照射ユニット(11、12)において、6つの光源34および6つのリフレクタ(35、36)(その各反射面(37、38))を設けている。しかしながら、光源の数およびリフレクタ(各反射面)の数は、形成する配光領域の数に応じて適宜設定すればよく、上記した実施例1の構成に限定されない。
【0061】
さらに、上記した実施例1では、ADBとして機能するものとしていたが、ADBとして機能しない、すなわち各配光領域(A1、A2)を部分的に消灯するものでなくてもよく、上記した実施例1の構成に限定されない。
【0062】
上記した実施例1では、投影レンズ24の単一の投影出射面41aに上下拡散プリズム51を設けるとともに、投影レンズ24の投影入射面41bの第1入射面43bと第2入射面44bとに幅拡散プリズム52を設けている。しかしながら、投影出射面41aに幅拡散プリズム52を設けるとともに、投影入射面41bに上下拡散プリズム51を設けるものとしてもよい。この場合、投影入射面41bを滑らかに連続する単一の面とすることで、幅方向では一定の構造とされつつ上下方向に繰り返しのある構造(周期的な構造)である上下拡散プリズム51を、投影入射面41bの幅方向での全域に亘る連続した構造とすることができ、形成を容易なものにできる。また、投影出射面41aにおいて区画線を挟んで第1レンズ部43と第2レンズ部44とに区画した構成とすることで、上下方向では一定の構造とされつつ幅方向に繰り返しのある構造(周期的な構造)である幅拡散プリズム52を、区画線に馴染ませつつ区画されたそれぞれで完結する構造とすることができるので、形成を容易なものにできる。
【符号の説明】
【0063】
10 車両用灯具 11 1照射ユニット 12 2照射ユニット 341 1光源 342 2光源 35 1リフレクタ 36 2リフレクタ 41a 影出射面 43 (第1投影レンズの一例としての)第1レンズ部 43a 1出射面 43b 1入射面 44 (第2投影レンズの一例としての)第2レンズ部 44a 2出射面 44b 2入射面 51 下拡散プリズム 52 拡散プリズム A1 1配光領域 A2 2配光領域 HB (配光パターンの一例としての)走行用配光パターン P1 1配光パターン P2 2配光パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12