IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浜松ホトニクス株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-放射線撮像装置 図1
  • 特開-放射線撮像装置 図2
  • 特開-放射線撮像装置 図3
  • 特開-放射線撮像装置 図4
  • 特開-放射線撮像装置 図5
  • 特開-放射線撮像装置 図6
  • 特開-放射線撮像装置 図7
  • 特開-放射線撮像装置 図8
  • 特開-放射線撮像装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158351
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】放射線撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20241031BHJP
   H04N 25/70 20230101ALI20241031BHJP
   A61B 6/42 20240101ALI20241031BHJP
【FI】
G01T7/00 A
H04N25/70
A61B6/00 300S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073485
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】豊田 賢太
(72)【発明者】
【氏名】岩田 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】難波 秀平
(72)【発明者】
【氏名】深水 聖司
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
5C024
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188BB02
2G188CC22
2G188CC29
2G188CC30
2G188DD05
2G188DD13
2G188DD14
2G188DD30
2G188DD33
2G188DD35
2G188DD42
2G188DD44
2G188DD47
2G188EE07
4C093CA35
4C093EB12
4C093EB17
4C093EB20
5C024AX16
5C024GX02
(57)【要約】
【課題】信頼性を向上させることができる放射線撮像装置を提供する。
【解決手段】放射線撮像装置1は、センサパネル30と、センサパネル30を支持する支持部材20と、支持部材20の裏面21bに対向する位置に配置された制御基板50と、センサパネル30と制御基板50とを接続するように配置されるフレキシブル基板41と、フレキシブル基板41上に搭載されたICチップ42と、支持部材20とICチップ42との間に設けられ、ICチップ42からの熱を吸収する熱吸収部材60と、を備える。熱吸収部材60は、フレキシブル基板41と重なる領域に配置され、ICチップ42の表面と接触する接触面61aを有する吸熱部61と、吸熱部61と接続され、フレキシブル基板41の外縁よりも外側に延びる放熱部62と、を有する。放熱部62の厚さT2は、吸熱部61の厚さT1よりも大きい。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を検出する検出領域が設けられたセンサパネルと、
前記センサパネルを支持する支持面と、前記支持面とは反対側の裏面と、を有する支持部材と、
前記支持部材の前記裏面に対向する位置に配置され、前記センサパネルから読み出される信号を処理する制御基板と、
前記支持面に直交する第1方向から見た場合における前記支持部材の側方を経由して、前記センサパネルと前記制御基板とを接続するように配置されるフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板上に搭載され、前記センサパネルからの前記信号を読み出すための処理を実行するICチップと、
前記支持部材に対して前記センサパネルが位置する側とは反対側において、前記支持部材と前記ICチップとの間に設けられ、前記ICチップからの熱を吸収する熱吸収部材と、を備え、
前記熱吸収部材は、
前記第1方向から見た場合に、前記フレキシブル基板と重なる領域に配置され、前記ICチップの前記フレキシブル基板に対する搭載面とは反対側の表面と接触する側の接触面を有する吸熱部と、
前記吸熱部と接続され、前記第1方向から見た場合に、前記フレキシブル基板の延在方向である第2方向と交差する第3方向において前記フレキシブル基板の外縁よりも外側に延びる放熱部と、を有し、
前記第1方向における前記放熱部の厚さは、前記第1方向における前記吸熱部の厚さよりも大きい、放射線撮像装置。
【請求項2】
前記熱吸収部材は、前記フレキシブル基板及び前記ICチップに接着されていない、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記熱吸収部材は、前記第1方向に積層された複数のシート部材を有する、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記第1方向から見た場合に、前記熱吸収部材は、前記検出領域の外側に配置されている、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記第1方向における前記熱吸収部材の厚さは、自然状態において、前記第3方向における前記熱吸収部材の全域において略均一とされており、
前記吸熱部は、前記フレキシブル基板と前記支持部材とに挟まれて前記第1方向に圧縮された状態とされている、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記フレキシブル基板の一端は、前記制御基板における前記裏面に対向する面とは反対側の面である接続面に設けられた端子に接続されており、
前記フレキシブル基板には、前記一端と前記ICチップが搭載された領域との間にコンデンサが設けられており、
前記熱吸収部材は、前記コンデンサと接触しないように配置されている、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記フレキシブル基板の一端は、前記制御基板における前記裏面に対向する面とは反対側の面である接続面に設けられた端子に接続されており、
前記フレキシブル基板には、前記一端と前記ICチップが搭載された領域との間にコンデンサが設けられており、
前記吸熱部の前記接触面のうち前記制御基板に最も近い内側端部が、前記第1方向において、前記制御基板の前記接続面よりも前記裏面から離れた位置にあることにより、前記コンデンサは、前記制御基板と接触しないように配置されている、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記フレキシブル基板の一端は、前記制御基板における前記裏面に対向する面とは反対側の面である接続面に設けられた端子に接続されており、
前記第3方向から見た場合に、前記吸熱部の前記接触面は、前記第2方向に沿って前記制御基板に近づくにつれて前記第1方向に沿って前記裏面から離れるように傾斜している、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
前記支持部材は、前記支持面及び前記裏面を有するベース基板と、前記第1方向から見た場合における前記ベース基板の縁部に設けられた放射線遮蔽部材と、を有し、
前記熱吸収部材は、前記放射線遮蔽部材と前記ICチップとの間に設けられている、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項10】
前記熱吸収部材の熱容量は、前記放射線遮蔽部材の熱容量よりも大きい、請求項9に記載の放射線撮像装置。
【請求項11】
前記第1方向から見た場合に、前記放射線遮蔽部材は、前記制御基板の外縁部と重なる位置又は前記外縁部よりも外側に配置されており、
前記第2方向において前記熱吸収部材が配置されている範囲は、前記第2方向において前記放射線遮蔽部材が配置されている範囲に含まれている、請求項9に記載の放射線撮像装置。
【請求項12】
前記第3方向に沿って配列され、それぞれ前記ICチップが搭載された複数の前記フレキシブル基板を備え、
1つの前記熱吸収部材は、複数の前記フレキシブル基板に対応するように、前記第3方向に延在している、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
支持部材に支持されたセンサパネル(放射線検出パネル)と、支持部材を挟んでセンサパネルとは反対側に配置された制御基板(信号処理基板)と、支持部材の側方を回り込むように配置されてセンサパネルと制御基板とを接続するフレキシブル基板と、を有する放射線撮像装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1には、フレキシブル基板上に設けられたICチップと支持部材との間に、接着性を有すると共に熱伝導性に優れた固定材(例えば、シリコンゲル、ウレタンゲル、アクリルゲル等)が配置される構成が開示されている。特許文献2には、フレキシブル基板上に設けられたICチップと支持部材(支持基台)とが、放熱性及び接着性を有する固定材(接着剤又は接着テープ)によって密着固定される構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-025846号公報
【特許文献2】特開2002-131437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2に開示された構成によれば、ICチップで発生した熱を、固定材を介して支持部材へと逃がす(伝達させる)ことができる。しかし、支持部材に伝達された熱が支持部材を介してセンサパネルにも伝わってしまい、その結果、センサパネルにおいて熱に起因するノイズが発生し、放射線撮像装置により得られる放射線画像の画質の劣化等が生じ、放射線撮像装置の信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
本開示の一側面は、信頼性を向上させることができる放射線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、[1]~[12]の放射線撮像装置を含む。
【0007】
[1]放射線を検出する検出領域が設けられたセンサパネルと、
前記センサパネルを支持する支持面と、前記支持面とは反対側の裏面と、を有する支持部材と、
前記支持部材の前記裏面に対向する位置に配置され、前記センサパネルから読み出される信号を処理する制御基板と、
前記支持面に直交する第1方向から見た場合における前記支持部材の側方を経由して、前記センサパネルと前記制御基板とを接続するように配置されるフレキシブル基板と、
前記フレキシブル基板上に搭載され、前記センサパネルからの前記信号を読み出すための処理を実行するICチップと、
前記支持部材に対して前記センサパネルが位置する側とは反対側において、前記支持部材と前記ICチップとの間に設けられ、前記ICチップからの熱を吸収する熱吸収部材と、を備え、
前記熱吸収部材は、
前記第1方向から見た場合に、前記フレキシブル基板と重なる領域に配置され、前記ICチップの前記フレキシブル基板に対する搭載面とは反対側の表面と接触する側の接触面を有する吸熱部と、
前記吸熱部と接続され、前記第1方向から見た場合に、前記フレキシブル基板の延在方向である第2方向と交差する第3方向において前記フレキシブル基板の外縁よりも外側に延びる放熱部と、を有し、
前記第1方向における前記放熱部の厚さは、前記第1方向における前記吸熱部の厚さよりも大きい、放射線撮像装置。
【0008】
上記[1]の構成では、熱吸収部材は、フレキシブル基板と重なるように配置されると共に接触面を介してICチップからの熱を効率良く吸収する吸熱部と、吸熱部よりも外側(第3方向)に広がるように形成された放熱部と、を有している。吸熱部に加えて放熱部を設けると共に、第1方向においてフレキシブル基板と重ならない位置に吸熱部よりも厚みのある放熱部を設けることにより、熱吸収部材の全体の体積及び熱容量を効果的に大きくすることができると共に、放熱部において空気に触れる部分の表面積を適切に確保することができる。これにより、ICチップからの熱を効果的に熱吸収部材に吸収させることができると共に、放熱部から空気中へと適切に熱を逃がすことができる。その結果、熱吸収部材から支持部材への熱の移動、すなわち、熱吸収部材から支持部材を介したセンサパネルへの熱の移動を抑制できるため、センサパネルにおける当該熱に起因するノイズの発生を抑制できる。従って、上記[1]の構成によれば、上記ノイズに起因する放射線画像の画質の劣化等が抑制されるため、放射線撮像装置の信頼性を向上させることができる。
【0009】
[2]前記熱吸収部材は、前記フレキシブル基板及び前記ICチップに接着されていない、[1]の放射線撮像装置。
【0010】
上記[2]の構成によれば、フレキシブル基板及びICチップが熱吸収部材を介して支持部材に接着固定されないため、放射線撮像装置のリペア(修理)を行う際等において、フレキシブル基板及びICチップの交換作業を容易に行うことが可能となる。
【0011】
[3]前記熱吸収部材は、前記第1方向に積層された複数のシート部材を有する、[1]又は[2]の放射線撮像装置。
【0012】
上記[3]の構成によれば、熱吸収部材を構成するシート部材の枚数(層数)を調整することにより、例えば、ICチップから熱吸収部材へと熱を効果的に移動させる観点において熱吸収部材が適切な強さでICチップに押し付けられるように、第1方向における熱吸収部材の厚さを容易に調整することが可能となる。
【0013】
[4]前記第1方向から見た場合に、前記熱吸収部材は、前記検出領域の外側に配置されている、[1]~[3]のいずれかの放射線撮像装置。
【0014】
上記[4]の構成によれば、熱吸収部材に吸収された熱が検出領域に及ぼす影響をより一層効果的に低減できるため、センサパネル(検出領域)における熱に起因するノイズの発生をより一層効果的に抑制できる。
【0015】
[5]前記第1方向における前記熱吸収部材の厚さは、自然状態において、前記第3方向における前記熱吸収部材の全域において略均一とされており、
前記吸熱部は、前記フレキシブル基板と前記支持部材とに挟まれて前記第1方向に圧縮された状態とされている、[1]~[4]のいずれかの放射線撮像装置。
【0016】
上記[5]の構成によれば、自然状態において略均一の厚みを有する部材のうちフレキシブル基板と支持部材との間に配置される部分(すなわち、吸熱部)に対して第1方向に圧縮する力が加わるように構成することにより、上記[1]で規定した厚さの大小関係を満たす吸熱部及び放熱部を容易に形成することができる。
【0017】
[6]前記フレキシブル基板の一端は、前記制御基板における前記裏面に対向する面とは反対側の面である接続面に設けられた端子に接続されており、
前記フレキシブル基板には、前記一端と前記ICチップが搭載された領域との間にコンデンサが設けられており、
前記熱吸収部材は、前記コンデンサと接触しないように配置されている、[1]~[5]のいずれかの放射線撮像装置。
【0018】
上記[6]の構成によれば、ICチップで発生した熱が熱吸収部材を介してコンデンサに伝達されることを抑制できる。その結果、熱によるコンデンサの特性の劣化を抑制できる。
【0019】
[7]前記フレキシブル基板の一端は、前記制御基板における前記裏面に対向する面とは反対側の面である接続面に設けられた端子に接続されており、
前記フレキシブル基板には、前記一端と前記ICチップが搭載された領域との間にコンデンサが設けられており、
前記吸熱部の前記接触面のうち前記制御基板に最も近い内側端部が、前記第1方向において、前記制御基板の前記接続面よりも前記裏面から離れた位置にあることにより、前記コンデンサは、前記制御基板と接触しないように配置されている、[1]~[6]のいずれかの放射線撮像装置。
【0020】
上記[7]の構成では、上記のように構成された熱吸収部材(吸熱部)が支持部材とICチップとの間に配置されることにより、フレキシブル基板のうち一端とICチップが搭載された領域との間の部分を制御基板の接続面から離間させることができる。これにより、コンデンサが制御基板と接触して損傷することを防止できる。
【0021】
[8]前記フレキシブル基板の一端は、前記制御基板における前記裏面に対向する面とは反対側の面である接続面に設けられた端子に接続されており、
前記第3方向から見た場合に、前記吸熱部の前記接触面は、前記第2方向に沿って前記制御基板に近づくにつれて前記第1方向に沿って前記裏面から離れるように傾斜している、[1]~[7]のいずれかの放射線撮像装置。
【0022】
上記[8]の構成によれば、フレキシブル基板のうち制御基板に近い側の部分が制御基板の接続面に接触するリスク(或いは、フレキシブル基板の一部が制御基板の接続面の縁部に強い力で押し当てられるリスク)を低減できると共に、フレキシブル基板の全長を短くすることができる。
【0023】
[9]前記支持部材は、前記支持面及び前記裏面を有するベース基板と、前記第1方向から見た場合における前記ベース基板の縁部に設けられた放射線遮蔽部材と、を有し、
前記熱吸収部材は、前記放射線遮蔽部材と前記ICチップとの間に設けられている、[1]~[8]のいずれかの放射線撮像装置。
【0024】
上記[9]の構成によれば、支持部材のうちセンサパネルが支持されるベース基板と熱吸収部材との間に放射線遮蔽部材を介在させることができる。その結果、熱吸収部材からベース基板への熱の伝達、ひいてはセンサパネルへの熱の伝達をより一層効果的に抑制できる。
【0025】
[10]前記熱吸収部材の熱容量は、前記放射線遮蔽部材の熱容量よりも大きい、[9]の放射線撮像装置。
【0026】
上記[10]の構成によれば、熱吸収部材から放射線遮蔽部材への熱の移動を効果的に抑制できるため、熱吸収部材から支持部材(放射線遮蔽部材及びベース基板)を介したセンサパネルへの熱の伝達をより一層効果的に抑制できる。
【0027】
[11]前記第1方向から見た場合に、前記放射線遮蔽部材は、前記制御基板の外縁部と重なる位置又は前記外縁部よりも外側に配置されており、
前記第2方向において前記熱吸収部材が配置されている範囲は、前記第2方向において前記放射線遮蔽部材が配置されている範囲に含まれている、[9]又は[10]の放射線撮像装置。
【0028】
上記[11]の構成によれば、熱吸収部材と制御基板との干渉(接触)を好適に抑制できる。これにより、組立作業(例えば、フレキシブル基板の一端を制御基板の端子に接続する作業等)を容易化できると共に、ICチップで発生した熱が熱吸収部材を介して制御基板に伝達されることを抑制できる。
【0029】
[12]前記第3方向に沿って配列され、それぞれ前記ICチップが搭載された複数の前記フレキシブル基板を備え、
1つの前記熱吸収部材は、複数の前記フレキシブル基板に対応するように、前記第3方向に延在している、[1]~[11]のいずれかの放射線撮像装置。
【0030】
上記[12]の構成によれば、第3方向に並んで配置された複数のICチップ(フレキシブル基板)に対して、第3方向に長尺な1つの熱吸収部材を設けることにより、熱吸収部材の体積及び熱容量をより一層効果的に大きくすることができる。これにより、熱吸収部材から支持部材への熱の移動、すなわち、熱吸収部材から支持部材を介したセンサパネルへの熱の移動をより一層効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0031】
本開示の一側面によれば、信頼性を向上させることができる放射線撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】一実施形態の放射線撮像装置の(A)平面図、(B)底面図、及び(C)側面図である。
図2図1の放射線撮像装置の筐体内部の構造の平面図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4】放射線検出パネルの一部を拡大した平面図である。
図5図4のV-V線に沿った断面図である。
図6】受光部及びICチップの内部構成を示す図である。
図7図1の放射線撮像装置の筐体内部の構造の底面図である。
図8】熱吸収部材とフレキシブル基板との位置関係を示す図である。
図9】熱吸収部材の吸熱部及び放熱部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。また、図面においては、実施形態に係る特徴部分を分かり易く説明するために誇張している部分がある。このため、図面における各部の寸法比率は、実際の寸法比率とは異なる場合がある。
【0034】
[放射線撮像装置の全体構成]
図1図3を参照して、一実施形態に係る放射線撮像装置1の構成について説明する。なお、図2においては、後述する天壁11及び締結部材15の図示が省略されている。放射線撮像装置1は、例えば医療用X線撮像システムに用いられる大面積フラットパネルセンサ(X線撮像装置)である。図1の(A)~(C)に示されるように、放射線撮像装置1は、略直方体状の筐体10と、当該筐体10内に収容される各部材と、によって構成されている。
【0035】
筐体10は、略直方体状の中空容器である。筐体10は、天壁11と、底壁12と、側壁13と、を有する。天壁11及び底壁12は、いずれも矩形板状に形成されており、互いに離間して対向するように配置されている。本明細書では、天壁11と底壁12とが互いに対向する方向をZ軸方向と表す。また、Z軸方向と直交する方向のうち、後述する棒状の熱吸収部材60が延在する方向をX軸方向と表し、Z軸方向及びX軸方向と直交する方向をY軸方向と表す。側壁13は、XZ平面又はYZ平面に沿って延びており、天壁11の外縁部と底壁12の外縁部とを接続するように矩形環状に形成されている。
【0036】
底壁12の外面の略中央部には、底壁12の外面との間に略直方体状の空間を形成するように箱状に設けられた突出壁14が設けられている。底壁12には、天壁11、底壁12、及び側壁13に包囲された空間S1と、底壁12及び突出壁14に包囲された空間S2と、を連通させる一以上(本実施形態では一例として3つ)の挿通孔12aが設けられている。例えば、空間S2には、後述する制御基板50に電力を供給する電源、後述するセンサパネル30(放射線検出パネル)により検出された放射線に対応する電気信号を外部のPC装置(例えば、放射線画像を表示する装置等)に出力するインタフェース(I/F)回路等が配置され得る。また、突出壁14の外面には、空間S2に配置された電源、回路等と接続するための外部接続端子(不図示)等が設けられる。
【0037】
天壁11は、放射線撮像装置1の検出対象である放射線(例えばX線)を筐体10の内部に透過する部材によって構成されている。天壁11は、Z軸方向に沿って入射する放射線を筐体10の内側に導く。すなわち、Z軸方向は、検出対象の放射線の入射方向である。本実施形態では、天壁11は、2層構造を有する。図3に示されるように、天壁11は、放射線が入射する側(外側)に設けられたカーボンファイバプレート111と、カーボンファイバプレート111の内側表面に設けられ、電磁波を遮蔽するためのシールド部材112と、を有する。シールド部材112は、例えば、カーボンファイバプレート111の内側表面にアルミ箔が接着されることにより形成されたアルミシールドである。
【0038】
底壁12及び側壁13は、放射線を遮る金属材料(例えば鉄等)によって形成されている。図3に示されるように、側壁13の上面13aは、シールド部材112と面接触しており、シールド部材112と導通している。これにより、筐体10外から筐体10内へと向かう電磁波の遮蔽が図られている。また、図2及び図3に示されるように、側壁13の上面13aには、複数のネジ孔13bが設けられている。締結部材15が、天壁11に設けられた貫通孔11aに挿通されると共にネジ孔13bに螺合されている。これにより、天壁11は、側壁13に固定されている。
【0039】
図2及び図3に示されるように、放射線撮像装置1は、筐体10内に収容された、支持部材20、センサパネル30、複数(一例として24個)の可撓性回路基板40、複数(一例として6つ)の可撓性回路基板40A、制御基板50、複数(一例として4つ)の熱吸収部材60、及び複数(一例として3つ)の放射線遮蔽基板70を有する。
【0040】
支持部材20は、センサパネル30、制御基板50,及び放射線遮蔽基板70等を筐体10に対して支持(固定)するための部材である。本実施形態では、支持部材20は、ベース基板21と、放射線遮蔽部材22と、支柱23と、を有する。
【0041】
ベース基板21は、センサパネル30を支持する支持面21aと、支持面21aとは反対側の裏面21bと、を有する。ベース基板21は、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス、タングステン合金、銅タングステン等の金属からなる。本実施形態では一例として、ベース基板21は、比較的軽量なアルミニウムによって形成されている。支持面21aは、天壁11に対向する面であり、裏面21bは、底壁12に対向する面である。支持面21aは、センサパネル30のセンサ基板31を支持している。裏面21bには、例えばZ方向に延びる柱状に形成された一以上の支持部材55を介して制御基板50が固定されている。
【0042】
図2に示されるように、ベース基板21は、支持面21aに直交するZ軸方向(第1方向)から見て矩形状に形成された本体部21Aと、本体部21Aの角部(四隅)のそれぞれに形成され、本体部21Aの外側に突出する突出部21Bと、を有する。本実施形態では一例として、本体部21Aと突出部21Bとは一体的に形成されている。
【0043】
図2及び図3に示されるように、本体部21Aの裏面21bには、複数(本実施形態では3つ)に分割された放射線遮蔽基板70を配置するための凹部21dが設けられている。各放射線遮蔽基板70は、例えば、鉛(硬鉛)等の放射線遮蔽材料によって形成されており、互いに同じ厚さ(例えば1mm程度)を有している。本実施形態では、Y軸方向における本体部21Aの中央部及び両側縁部の各々の位置に、X軸方向に延在する矩形板状の放射線遮蔽基板70が設けられている。各放射線遮蔽基板70は、Y軸方向において互いに離間するように配置されている。すなわち、凹部21d内には、放射線遮蔽基板70が設けられていない領域が存在している。一例として、Y軸方向における本体部21Aの中央部に配置される放射線遮蔽基板70の幅(Y軸方向の長さ)は、その両側に配置される放射線遮蔽基板70の幅よりも大きくされている。各放射線遮蔽基板70は、凹部21d内に配置され、両面テープ等の接着部材を介して、本体部21Aの裏面21b(凹部21dの底面)に接着固定されている。図3に示されるように、凹部21dの深さ(Z軸方向の長さ)は、凹部21d内に放射線遮蔽基板70を配置した場合に、本体部21Aのうち凹部21dが設けられていない部分の裏面21bと放射線遮蔽基板70の表面(制御基板50に対向する面)とが略面一となるように設定されている。すなわち、凹部21dの深さは、放射線遮蔽基板70の厚さ(Z軸方向の長さ)と略同一とされている。上記のように、本体部21Aの裏面21bの一部の領域のみをカバーするように複数に分割された放射線遮蔽基板70を設けることにより、制御基板50のうち放射線の遮蔽が必要な電子部品が配置された領域を重点的にカバーしつつ、裏面21bと略同等の面積を有する硬鉛板を設ける場合と比較して、放射線撮像装置1の重量を抑えることができる。また、ベース基板21の裏面21bに放射線遮蔽基板70を収めるための凹部21dを設けることにより、放射線撮像装置1の全体サイズの大型化(Z軸方向における長大化)を抑制し、放射線撮像装置1をコンパクト化できる。
【0044】
放射線遮蔽部材22は、例えば、鉛、タングステン等のX線遮蔽能の高い材料によって形成されている。本実施形態では一例として、放射線遮蔽部材22は、短冊状(板状)に形成されており、ベース基板21の裏面21bの縁部に設けられている。図2及び図3に示されるように、放射線遮蔽部材22の一部は、Z方向から見て、後述するフレキシブル基板41上に搭載されたICチップ42と重なるように、ベース基板21の外側にはみ出している。放射線遮蔽部材22は、ICチップ42毎に設けられてもよいし、互いに隣接する複数のICチップ42に対して1つの放射線遮蔽部材22(すなわち、Z軸方向から見て当該複数のICチップ42と重なる大きさに形成された部材)が設けられてもよい。本実施形態では、後者の構成が採用されている。具体的には、X軸方向に沿ったベース基板21(本体部21A)の各縁部において、4つの放射線遮蔽部材22が、X軸方向に沿って設けられている。すなわち、1つの放射線遮蔽部材22は、X軸方向に連続して並んだ3つのICチップ42と重なるように設けられている。
【0045】
支柱23は、底壁12に対してベース基板21(突出部21B)を支持する部材である。図3に示されるように、支柱23は、突出部21Bと底壁12との間において、Z軸方向に延在するように設けられている。一例として、支柱23は、Z軸方向から見て突出部21Bと略同等の大きさを有する四角柱状に形成されている。支柱23は、例えば、アルミニウム、或いは、鉄等のアルミニウム以外の金属、ポリアセタール(POM)及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアリングプラスチック等によって形成され得る。支柱23は、例えば図示しない固定部材(例えばネジ等)を介して、突出部21B及び底壁12に固定されている。本実施形態では、ベース基板21は、本体部21Aの四隅に設けられた各突出部21Bに対応して設けられた4つの支柱23によって、底壁12に対して支持されている。
【0046】
センサパネル30は、矩形板状に形成されたセンサ基板31を有する。センサ基板31は、受光部32(受光面)が形成された第1面31aと、第1面31aとは反対側の第2面31bと、を有する。第1面31aは、天壁11に対向する面であり、第2面31bは、底壁12に対向する面である。受光部32上には、シンチレータ34が配置されている。シンチレータ34は、例えばCsIを主成分とするシンチレータ材料を受光部32上に蒸着することにより形成されている。シンチレータ34は、天壁11を介して入射した放射線を光に変換する。具体的には、シンチレータ34は、放射線の入射強度に応じた強度のシンチレーション光を受光部32に出力する。これにより、第1面31aにおいて受光部32が形成された領域は、放射線を検出する検出領域Rとして機能する。検出領域Rは、例えば一辺30cm~40cm程度の受光面積(一例として、40cm×30cm)を有する。
【0047】
センサ基板31は、例えば透明なガラス基板である。センサ基板31の第2面31bがベース基板21の支持面21aに固定されることにより、センサ基板31はベース基板21に固定されている。第2面31bは、例えば両面テープ等の接着部材(不図示)を介して、支持面21aに固定されている。Z方向から見て、少なくとも受光部32及びシンチレータ34が配置された領域は、ベース基板21に含まれている。センサ基板31の第1面31aにおいて、検出領域Rの外側には、複数の電極パッド33が形成されている。複数の電極パッド33は、後述する配線(読出用配線及び行選択用配線)等を介して、受光部32に形成された画素Pm,n図4参照)と電気的に接続されている。本実施形態では一例として、Z軸方向から見た場合に、X軸方向に沿ったセンサ基板31の左右の縁部に24個(12個×2辺)の電極パッド33(可撓性回路基板40と接続される電極パッド)が形成されている。また、Y軸方向に沿ったセンサ基板31の一方の縁部(本実施形態では、図2における下側の縁部)に6個の電極パッド33(可撓性回路基板40Aと接続される電極パッド)が形成されている。
【0048】
可撓性回路基板40は、電極パッド33と電気的に接続された回路部材である。可撓性回路基板40は、折り曲げ等の変形が可能なフレキシブル基板41と、フレキシブル基板41上に搭載されたICチップ42と、を有する。図2に示されるように、本実施形態では、Z軸方向から見た場合に、X軸方向に沿ったセンサ基板31の左右の辺部に沿って、複数(本実施形態では、各辺につき12個)の可撓性回路基板40が等間隔に配置されている。各可撓性回路基板40は、それぞれ対応する電極パッド33に接続されている。
【0049】
図3に示されるように、フレキシブル基板41は、Z軸方向から見た場合におけるベース基板21の側方を経由して(すなわち、ベース基板21及び放射線遮蔽部材22と干渉しないように折り曲げられて)、センサパネル30(電極パッド33)と制御基板50(コネクタ51)とを接続するように配置される。フレキシブル基板41は、例えば、薄膜上の絶縁体(例えばポリイミド等)上に導体箔(例えば銅等)による回路パターンが形成された構造を有する。フレキシブル基板41の一方の端部41aは、接続部材Bを介して電極パッド33に接続されている。接続部材Bは、熱圧着によって接着力を生じさせる部材であり、例えばACF(異方性導電フィルム)、ACP(異方性導電ペースト)等の異方性導電材料である。フレキシブル基板41の他方の端部41b(一端)は、制御基板50のコネクタ51(端子)に接続されている。
【0050】
ICチップ42は、センサパネル30からの信号を読み出すための処理を実行する読出回路(ROIC:Readout IC)である。ICチップ42の動作例については後述する。
【0051】
センサ基板31のY軸方向に沿った辺部(図2の下辺)には、複数(本実施形態では6つ)の可撓性回路基板40Aが等間隔に配置されている。各可撓性回路基板40Aは、それぞれ対応する電極パッド33に接続されている。可撓性回路基板40Aは、可撓性回路基板40と異なる形状及び大きさに形成されているが、基本的な構造は可撓性回路基板40と同様である。各可撓性回路基板40Aには、ICチップ42Aが搭載されている。図3に示されるように、各可撓性回路基板40Aの制御基板50側の端部は、制御基板50のY軸方向に沿った辺部(図2の下辺)に沿って設けられたコネクタ51A(図7参照)に接続されている。
【0052】
制御基板50は、ベース基板21の裏面21bに対向する位置に配置され、センサパネル30から読み出される信号を処理する回路基板である。制御基板50は、上述したフレキシブル基板41の端部41bと接続されるコネクタ51が設けられた接続面50aを有する。接続面50aは、底壁12に対向する面であり、制御基板50におけるベース基板21に対向する面(図3における制御基板50の上面)とは反対側の面である。
【0053】
制御基板50は、ICチップ42の動作の制御、及びICチップ42への電源の供給を行うための回路等を含む。本実施形態では、空間S1(図1の(C)参照)に配置された制御基板50は、挿通孔12aに挿通される導電性部材(例えば、配線、リードピン等)等を介して、空間S2(図1の(C)参照)に配置された上述した電源、I/F回路等と電気的に接続される。制御基板50は、上述した一以上の支持部材55を介してベース基板21の裏面21bに固定されている。なお、本実施形態では、ベース基板21の支持安定性を向上させるために、制御基板50に設けられた図示しない貫通孔に挿通されて、底壁12に対してベース基板21を支持するための複数の支持部材56が設けられている。なお、制御基板50は、支持部材56に支持されておらず、上述したように、支持部材55によってベース基板21に対して固定されている。
【0054】
[放射線撮像装置の動作]
次に、放射線撮像装置1の動作(放射線の検出)の一例について説明する。本実施形態では、X軸方向に沿ったセンサ基板31のX軸方向に沿った周縁部に形成された電極パッド33に接続される可撓性回路基板40のICチップ42(ROIC)には、信号読出用のアンプチップ(信号接続部)が形成されている。一例として、図2におけるセンサ基板31の左辺に設けられた可撓性回路基板40のICチップ42によって、信号接続部42aが形成されており、センサ基板31の右辺に設けられた可撓性回路基板40のICチップ42によって、信号接続部42bが形成されている。このように、本実施形態では、信号読出のノイズ低減及び速度向上を図るために、信号読出ライン(データライン)を上下に二分割した構成が採用されている。ただし、信号読出ラインをこのように分割することは必須ではない。他の信号制御に係るデータラインについても同様である。一方、Y軸方向に沿ったセンサ基板31の縁部(図2の下辺)に形成された電極パッド33に接続される可撓性回路基板40AのICチップ42Aには、垂直シフトレジスタ(垂直走査回路)42cが形成されている。
【0055】
図4図6を参照して、放射線撮像装置1の動作の一例について説明する。図4に示されるように、受光部32は、M×N個の画素がM行N列に2次元配列されることにより構成されている。画素Pm,nは、第m行第n列に位置する画素である。ここで、mは1以上M以下の各整数であり、nは1以上N以下の各整数である。なお、図4において、列方向はX軸方向と一致し、行方向はY軸方向と一致する。受光部32に含まれる複数の画素P1,1~PM,Nのそれぞれは、フォトダイオードPD及び読出用スイッチSW1を備えている。フォトダイオードPDのアノード端子にはバイアス電圧が印可されており、フォトダイオードPDのカソード端子には、読出用スイッチSW1の一端(一方の電流端子)が接続されている。また、読出用スイッチSW1の他端(他方の電流端子)は、対応する読出用配線(例えば画素Pm,nの場合、第n列読出用配線LO,n)に接続されている。読出用スイッチSW1の制御端子は、対応する行選択用配線(例えば画素Pm,nの場合、第m行選択用配線LV,m)に接続されている。
【0056】
図5に示されるように、センサ基板31の第1面31aの全面には、シリコン膜35が設けられている。そして、フォトダイオードPD、読出用スイッチSW1、及び第n列読出用配線LO,nは、このシリコン膜35の表面に形成されている。フォトダイオードPD、読出用スイッチSW1、及び第n列読出用配線LO,nは、絶縁層36によって覆われている。絶縁層36の上には、シンチレータ34がセンサ基板31の第1面31aの検出領域Rの全体を覆うように設けられている。フォトダイオードPDは、例えば、アモルファスシリコンを含んで構成されている。
【0057】
本実施形態のフォトダイオードPDは、n型多結晶シリコンからなるn型半導体層91と、n型半導体層91上に設けられたi型アモルファスシリコンからなるi型半導体層92と、i型半導体層92上に設けられたp型アモルファスシリコンからなるp型半導体層93とを有する。また、読出用スイッチSW1は、多結晶シリコンにより形成された薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)であり、電界効果トランジスタ(FET)としての構成を有する。すなわち、読出用スイッチSW1は、チャネル領域94と、チャネル領域94の一方の側面に沿って配置されたソース領域95と、チャネル領域94の他方の側面に沿って配置されたドレイン領域96と、チャネル領域94上に形成されたゲート絶縁膜97及びゲート電極98とを有する。第n列読出用配線LO,nは、金属からなる。シンチレータ34は、入射した放射線に応じてシンチレーション光を発生して放射線像を光像へと変換し、この光像を受光部32へ出力する。
【0058】
図6には、M×N個の画素Pm,n(m=1,…,M、n=1,…,N)を代表して、4×4個の画素100が示されている。画素100のそれぞれは、フォトダイオードPD及び読出用スイッチSW1を含んで構成されている。フォトダイオードPDは、入射光の強度に応じた量の電荷を発生し、発生した電荷を接合容量部に蓄積する。上述した通り、読出用スイッチSW1は、画素100が属する行に対応する行選択用配線Lに接続されている。ここで、第m行の画素Pm,nに対応する行選択用配線Lは、上述した第m行選択用配線LV,mである。M本の行選択用配線Lは、垂直シフトレジスタ42cに接続されている。垂直シフトレジスタ42cのそれぞれは、読出用スイッチSW1の導通状態/非導通状態を各行毎に制御するための行選択信号を生成し、当該行選択信号を、各行の行選択用配線Lに対して順次提供する。
【0059】
垂直シフトレジスタ42cから行選択用配線Lに出力される行選択信号が非有意値(例えばローレベル)であるときに、読出用スイッチSW1が開く。このとき、フォトダイオードPDで発生した電荷は、対応する列読出用配線Lへ出力されることなく、接合容量部に蓄積される。ここで、第n列の画素Pm,nに対応する列読出用配線Lは、上述した第n列読出用配線LO,nである。一方、行選択信号が有意値(例えばハイレベル)であるときに、読出用スイッチSW1が閉じる。このとき、それまでフォトダイオードPDで発生して接合容量部に蓄積されていた電荷は、読出用スイッチSW1を経て、対応する読出用配線Lへ出力される。出力された電荷は、読出用配線Lを介して積分回路101へ送られる。本実施形態では、受光部32に形成された画素100のうち、センサ基板31の上辺側の行に位置する画素100の読出用スイッチSW1は、対応する読出用配線Lを介して、信号接続部42aの積分回路101に接続されている。一方、受光部32に形成された画素100のうち、センサ基板31の下辺側の行に位置する画素100の読出用スイッチSW1は、対応する読出用配線Lを介して、信号接続部42bの積分回路101に接続されている。なお、センサ基板31の上辺側の行と下辺側の行との分割の仕方は任意である。例えば、センサ基板31の上辺側の行の数をN1とし、センサ基板31の下辺側の行の数をN2とした場合、「N1=N2」、「N1>N2」、及び「N1<N2」のいずれの関係が成立してもよい。
【0060】
積分回路101は、アンプ101a、容量素子101b、及び放電用スイッチ101cを含む、いわゆる電荷積分型の構成を備えている。容量素子101b及び放電用スイッチ101cは、互いに並列に接続され、且つアンプ101aの入力端子と出力端子との間に接続されている。アンプ101aの入力端子は、列読出用配線Lに接続されている。放電用スイッチ101cには、リセット用配線Lを介してリセット制御信号REが提供される。
【0061】
リセット制御信号REは、N個の積分回路101それぞれの放電用スイッチ101cの開閉動作を指示する。例えば、リセット制御信号REが非有意値(例えばハイレベル)であるときに、放電用スイッチ101cが閉じて、容量素子101bが放電され、積分回路101の出力電圧値が初期化される。また、リセット制御信号REが有意値(例えばローレベル)であるときに、放電用スイッチ101cが開いて、積分回路101に入力された電荷が容量素子101bに蓄積され、その蓄積電荷量に応じた電圧値が積分回路101から出力される。
【0062】
信号接続部42a及び42bのそれぞれは、N個の保持回路102及び水平シフトレジスタ103を更に有する。各保持回路102は、入力用スイッチ102a、出力用スイッチ102b、及び電圧保持部102cを含む。電圧保持部102cの一端は、入力用スイッチ102aを介して積分回路101の出力端に接続され、電圧保持部102cの他端は、出力用スイッチ102bを介して電圧出力用配線LOUTと接続されている。入力用スイッチ102aには、保持用配線Lを介して保持制御信号Hdが与えられる。保持制御信号Hdは、N個の保持回路102それぞれの入力用スイッチ102aの開閉動作を指示する。保持回路102の出力用スイッチ102bには、水平シフトレジスタ103から列選択信号が与えられる。列選択信号は、対応する列の保持回路102の出力用スイッチ102bの開閉動作を指示する。
【0063】
保持制御信号Hdがハイレベルからローレベルに転じると、入力用スイッチ102aが閉状態から開状態に転じて、そのときに保持回路102に入力されている電圧値が電圧保持部102cに保持される。その後、水平シフトレジスタ103からの列選択信号が列毎にローレベルからハイレベルに順に転じると、出力用スイッチ102bが順次閉じて、電圧保持部102cに保持されている電圧値が列毎に電圧出力用配線LOUTへ順次出力される。
【0064】
[熱吸収部材の構成]
次に、主に図3及び図7図9を参照して、熱吸収部材60の構成についてより詳細に説明する。図7は、筐体10内の構造を制御基板50の下面(接続面50a)に対向する側から見た図である。なお、図7では、Y軸方向における制御基板50の一方側(図7の右側)の縁部においてX軸方向に沿って配置される複数の可撓性回路基板40の図示が省略されている。すなわち、図7の右側部分は、可撓性回路基板40を取り付ける前の状態を示している。図8に図示された左端のフレキシブル基板41については、端部41bがコネクタ51から外されており、Y軸方向における外側に延びている状態を示している。図9は、支持部材20(放射線遮蔽部材22)と各フレキシブル基板41上に搭載されたICチップ42との間に配置された熱吸収部材60を側方(Y軸方向)から見た図である。
【0065】
熱吸収部材60は、支持部材20(ベース基板21及び放射線遮蔽部材22)に対してセンサパネル30が位置する側とは反対側において、支持部材20とICチップ42との間に設けられ、ICチップ42からの熱を吸収する。熱吸収部材60は、X軸方向に延びる棒状に形成されている。熱吸収部材60は、Z軸方向に積層された複数のシート部材によって構成されている。一例として、熱吸収部材60は、それぞれ厚さが1mmの7枚のシート部材を互いに重ねて圧着又は溶着することによって形成されている。熱吸収部材60を構成する材料は、例えば、アクリル、シリコン、セラミック等である。
【0066】
本実施形態では、熱吸収部材60は、各フレキシブル基板41上に搭載されたICチップ42と放射線遮蔽部材22との間に設けられている。なお、図3の例では、熱吸収部材60は、放射線遮蔽部材22のうちベース基板21のY軸方向における端部21cよりも外側に突出する部分と重なるように配置されている。すなわち、Z軸方向において、熱吸収部材60は、ベース基板21と重なっていない。ただし、熱吸収部材60の配置構成は、上記構成に限定されない。例えば、熱吸収部材60の少なくとも一部は、放射線遮蔽部材22及びベース基板21の両方と重なるように配置されてもよい。また、例えばベース基板21それ自体が放射線遮蔽材料によって形成されており、放射線遮蔽部材22が省略される場合等には、熱吸収部材60は、ベース基板21とICチップ42との間に設けられてもよい。
【0067】
図7に示されるように、放射線撮像装置1は、Y軸方向における制御基板50の両側縁部の各々において、X軸方向(第3方向)に沿って配列された複数(本実施形態では12個)のフレキシブル基板41を備えている。また、それぞれの縁部において、2つずつの棒状の熱吸収部材60が、X軸方向に並んで配置されている。すなわち、本実施形態では、1つの熱吸収部材60は、複数(本実施形態では6個)のフレキシブル基板41に対応するように(言い換えれば、複数のフレキシブル基板41上の複数のICチップ42と放射線遮蔽部材22との間に配置される部分を有するように)、X軸方向における制御基板50の長さの略半分程度の長さを有している。上述したとおり、本実施形態では、3つのフレキシブル基板41に対して1つの放射線遮蔽部材22が設けられている。このため、図7の右側部分に示されるように、1つの熱吸収部材60は、X軸方向に並んで配置された2つの放射線遮蔽部材22に跨がるように設けられており、6つのフレキシブル基板41上のICチップ42と上記2つの放射線遮蔽部材22との間に挟まれている。なお、熱吸収部材60は、両面テープ等によって放射線遮蔽部材22に対して固定されてもよいし、固定されなくてもよい。熱吸収部材60を固定しない場合であっても、後述するように熱吸収部材60がフレキシブル基板41と放射線遮蔽部材22とによって挟持されて固定される。熱吸収部材60を放射線遮蔽部材22に固定する構成によれば、熱吸収部材60の位置ずれ等を抑制できる。一方、熱吸収部材60を放射線遮蔽部材22に固定しない構成によれば、熱吸収部材60及び放射線遮蔽部材22等の交換作業が容易となる。
【0068】
図8及び図9に示されるように、熱吸収部材60は、吸熱部61と、放熱部62と、を有する。
【0069】
吸熱部61は、Z軸方向から見た場合に、フレキシブル基板41と重なる領域に配置される部分(すなわち、フレキシブル基板41と放射線遮蔽部材22とに挟まれる部分)である。吸熱部61は、ICチップ42のフレキシブル基板41に対する搭載面421とは反対側の表面422と接触する側の接触面61aを有する。図8に示されるように、一例として、ICチップ42は、フレキシブル基板41の幅方向(X軸方向)中央部に配置され、矩形板状を有する。また、Y軸方向に沿った接触面61aの幅W1は、Y軸方向に沿ったICチップ42の幅W2と同一又はそれ以上に設定されている。これにより、ICチップ42の表面422の全体が接触面61aと接触するように構成されている。
【0070】
放熱部62は、吸熱部61と接続され、Z軸方向から見た場合に、フレキシブル基板41の延在方向(第2方向、Y軸方向)と交差するX軸方向(第3方向)においてフレキシブル基板41の外縁よりも外側に延びる部分である。本実施形態では、上述したとおり、熱吸収部材60は、X軸方向に延在する棒状に形成されているため、放熱部62は、吸熱部61と同じ部材(材料)によって一体的(連続的)に形成されている。なお、本実施形態のように、1つの熱吸収部材60が複数のフレキシブル基板41に跨がって形成される場合、X軸方向に互いに隣接するフレキシブル基板41上に位置する2つの吸熱部61の間に配置される放熱部62は、当該2つの吸熱部61によって共有される。例えば、図9の中央部のフレキシブル基板41に対応して設けられた吸熱部61に着目した場合、当該吸熱部61に対応する放熱部62は、熱吸収部材60のうち当該吸熱部61の両側の領域A1,A2に含まれる部分である。この場合、領域A1に対応する放熱部62は、図9の中央部のフレキシブル基板41に対応して設けられた吸熱部61と図9の左端のフレキシブル基板41に対応して設けられた吸熱部61とによって共有される。同様に、領域A2に対応する放熱部62は、図9の中央部のフレキシブル基板41に対応して設けられた吸熱部61と図9の右端のフレキシブル基板41に対応して設けられた吸熱部61とによって共有される。
【0071】
図9に示されるように、Z軸方向における放熱部62の厚さT2は、Z軸方向における吸熱部61の厚さT1よりも大きい。なお、図9に示されるように、放熱部62の厚さT2は、X軸方向の位置によってばらつきがある。例えば、本実施形態のように、フレキシブル基板41と放射線遮蔽部材22とによって吸熱部61がZ軸方向に圧縮される場合、放熱部62のうちX軸方向において吸熱部61から離れた部分ほど、厚さT2が大きくなる傾向がある。従って、上述した厚さT1,T2の関係「T2>T1」を満たすか否かを判断する際における「放熱部62の厚さT2」は、X軸方向における放熱部62の全域の厚さの平均値を意味する。
【0072】
また、図3に示されるように、吸熱部61の厚さT1は、Y軸方向における位置によって異なり得る。その結果、吸熱部61に隣接する放熱部62の厚さT2も、Y軸方向における位置によって異なり得る。このような場合には、「Z軸方向における放熱部62の厚さT2は、Z軸方向における吸熱部61の厚さT1よりも大きい」とは、Y軸方向における任意の位置において「T2>T1」が成立することを意味する。なお、吸熱部61の厚さT1は、フレキシブル基板41によって押さえ込まれているため、X軸方向における位置によって大きく変化しないと考えられるが、X軸方向における位置によって厚さT1が大きく変化する場合には、上述した厚さT1,T2の関係「T2>T1」を満たすか否かを判断する際における「吸熱部61の厚さT1」は、X軸方向における吸熱部61の全域の厚さの平均値を意味する。
【0073】
なお、放熱部62の厚さT2を十分に確保して放熱部62の放熱性を向上させる観点から、放熱部62の厚さT2は、吸熱部61(すなわち、熱吸収部材60のうちZ軸方向においてフレキシブル基板41と重なる部分)の全域の厚さの平均値よりも大きいことが好ましく、吸熱部61のうちICチップ42と重なる領域(すなわち、ICチップ42に押し当てられることによって他の部分よりも厚さが小さくなるように変形し得る領域)を除いた部分の厚さの平均値よりも大きいことがより好ましく、吸熱部61のうち最も厚い部分の厚さよりも大きいことがさらに好ましい。
【0074】
[作用効果]
以上述べた放射線撮像装置1では、熱吸収部材60は、フレキシブル基板41と重なるように配置されると共に接触面61aを介してICチップ42からの熱を効率良く吸収する吸熱部61と、吸熱部61よりもX軸方向の外側に広がるように形成された放熱部62と、を有している。吸熱部61に加えて放熱部62を設けると共に、Z軸方向においてフレキシブル基板41と重ならない位置に吸熱部61よりも厚みのある放熱部62を設けることにより、熱吸収部材60の全体の体積及び熱容量を効果的に大きくすることができると共に、放熱部62において空気に触れる部分の表面積を適切に確保することができる。これにより、ICチップ42からの熱を効果的に熱吸収部材60に吸収させることができると共に、放熱部62から空気中へと適切に熱を逃がすことができる。すなわち、「ICチップ42→吸熱部61→放熱部62→空気中(筐体10内の空間S1)」の経路で熱を効率的に逃がすことができる。その結果、熱吸収部材60から支持部材20への熱の移動、すなわち、熱吸収部材60から支持部材20(本実施形態では、放射線遮蔽部材22及びベース基板21)を介したセンサパネル30への熱の移動を抑制できるため、センサパネル30(受光部32)における当該熱に起因するノイズの発生を抑制できる。従って、放射線撮像装置1によれば、上記ノイズに起因する放射線画像の画質の劣化等が抑制されるため、信頼性を向上させることができる。
【0075】
また、熱吸収部材60は、それ自体接着性を有しておらず、少なくともフレキシブル基板41及びICチップ42に接着されていない。すなわち、吸熱部61の接触面61aは、ICチップ42の表面422等に接着固定されない。従って、フレキシブル基板41及びICチップ42が熱吸収部材60を介して支持部材20に接着固定されないため、放射線撮像装置1のリペア(修理)を行う際等において、フレキシブル基板41及びICチップ42の交換作業を容易に行うことが可能となる。
【0076】
また、熱吸収部材60は、Z軸方向に積層された複数(本実施形態では、7つ)のシート部材によって構成されている。上記構成によれば、熱吸収部材60を構成するシート部材の枚数(層数)を調整することにより、例えば、ICチップ42から熱吸収部材60へと熱を効果的に移動させる観点において熱吸収部材60(吸熱部61の接触面61a)が適切な強さでICチップ42の表面422に押し付けられるように、Z軸方向における熱吸収部材60の厚さを容易に調整することが可能となる。また、上記構成によれば、熱吸収部材60の側面(X軸方向又はY軸方向に交差する側面)が完全な平坦面とならない(例えば、一部のシート部材が隣接するシート部材よりもX軸方向又はY軸方向に若干突出する)ことにより、熱吸収部材60と空気との接触面積が増大し、放熱性が向上するという効果も得られる。
【0077】
また、図3に示されるように、Z軸方向から見た場合に、熱吸収部材60は、検出領域R(有効受光領域)の外側に配置されている。すなわち、ICチップ42からの熱を吸収する熱吸収部材60は、少なくともZ軸方向において重ならない程度に、検出領域Rから離間している。上記構成によれば、熱吸収部材60に吸収された熱が検出領域Rに及ぼす影響をより一層効果的に低減できるため、センサパネル30(受光部32)における熱に起因するノイズの発生をより一層効果的に抑制できる。
【0078】
また、Z軸方向における熱吸収部材60の厚さは、自然状態において、X軸方向における熱吸収部材60の全域において略均一とされている。ここで、「自然状態」とは、熱吸収部材60がフレキシブル基板41(ICチップ42)と支持部材20(放射線遮蔽部材22)とに挟まれておらず、Z軸方向に圧縮しようとする力が熱吸収部材60に作用していない状態を意味する。また、図3及び図9に示されるように、吸熱部61は、フレキシブル基板41(ICチップ42)と支持部材20(放射線遮蔽部材22)とに挟まれてZ軸方向に圧縮された状態とされている。すなわち、上述した放熱部62の厚さT2と吸熱部61の厚さT1との関係「T2>T1」は、吸熱部61に対してZ軸方向に圧縮する力が作用することによって実現されている。例えば、フレキシブル基板41の端部41aから端部41bまでの長さ、端部41a又は端部41bが対向する部材(電極パッド33、コネクタ51等)と接続される位置、熱吸収部材60の厚さ(例えば、熱吸収部材60を構成するシート部材の厚さ、枚数等)等を調整することにより、上記のように吸熱部61がZ軸方向に圧縮されるように構成することができる。すなわち、自然状態において略均一の厚みを有する熱吸収部材60のうちフレキシブル基板41と支持部材20との間に配置される部分(すなわち、吸熱部61)に対してZ軸方向に圧縮する力が加わるように構成することにより、上記の厚さT1,T2の大小関係「T2>T1」を満たすように、吸熱部61及び放熱部62を容易に形成することができる。また、このように吸熱部61に圧力を加えてICチップ42と吸熱部61とを接触させることにより、例えば、熱吸収部材60に対して外部から衝撃が加わった場合において、吸熱部61とICチップ42との接触が解除され難くなる。また、吸熱部61をICチップ42の表面422に押し付けることにより、ICチップ42の側面に対向する空間に吸熱部61を押し込むことができるため、吸熱部61によるICチップ42からの熱の吸収効率を向上させることができる。
【0079】
また、図3及び図8に示されるように、フレキシブル基板41には、制御基板50のコネクタ51と接続される端部41bとICチップ42が搭載された領域との間にコンデンサC(本実施形態では、複数のコンデンサC)が設けられている。図3に示されるように、熱吸収部材60(吸熱部61)は、コンデンサCと接触しないように配置されている。すなわち、Y軸方向における吸熱部61の幅は、吸熱部61がICチップ42の表面422と重なる一方でコンデンサCと重ならないように設定されている。上記構成によれば、ICチップ42で発生した熱が熱吸収部材60(吸熱部61)を介してコンデンサCに伝達されることを抑制できる。その結果、熱によるコンデンサCの特性の劣化を抑制できる。また、熱吸収部材60がコンデンサCに接触することに起因するコンデンサCの破損又は剥離等の発生を抑制することもできる。
【0080】
また、図3に示されるように、吸熱部61の接触面61aのうち制御基板50に最も近い内側端部61a1は、Z軸方向において、制御基板50の接続面50aよりも裏面21bから離れた位置にある。すなわち、X軸方向から見た場合において、Y軸方向において制御基板50から最も近い位置にある接触面61aの内側端部61a1は、接続面50aよりも底壁12側に位置している。これにより、コンデンサCは、制御基板50(接続面50a)と接触しないように配置されている。すなわち、上記のように構成された熱吸収部材60(吸熱部61)が支持部材20(放射線遮蔽部材22)とICチップ42との間に配置されることにより、フレキシブル基板41のうち端部41bとICチップ42が搭載された領域との間の部分(すなわち、コンデンサCが配置された部分)を制御基板50の接続面50aから離間させることができる。これにより、コンデンサCが制御基板50と接触して損傷することを防止できる。さらに、例えば、ベース基板21に対して制御基板50が上方に位置する状態(すなわち、放射線遮蔽部材22上に熱吸収部材60を載置可能な状態)で、フレキシブル基板41の端部41bをコネクタ51に接続する場合について考える。この場合、内側端部61a1が接続面50aよりも上方に配置されるため、フレキシブル基板41においてコンデンサCが配置された部分は、接続面50aよりも上方に浮いた状態となる。従って、上記構成によれば、放射線撮像装置1の製造時(すなわち、フレキシブル基板41の端部41bをコネクタ51に接続する際)においても、コンデンサCと制御基板50との接触を適切に防止できる。
【0081】
また、図3に示されるように、X軸方向から見た場合に、吸熱部61の接触面61aは、Y軸方向に沿って制御基板50に近づくにつれてZ軸方向に沿って裏面21bから離れるように(すなわち、底壁12に近づくように)傾斜している。このように接触面61aが傾斜する構成は、例えば、以下の理由によって形成されている。フレキシブル基板41と放射線遮蔽部材22とで吸熱部61を圧迫した場合、吸熱部61の接触面61aのうち最も外側の部分(制御基板50から最も離れた部分)ほど、放射線遮蔽部材22側に押し込もうとする力が大きく作用することになる。その結果、上述したような傾斜形状が形成される。上記構成によれば、フレキシブル基板41のうち制御基板50に近い側の部分(内側端部61a1)が制御基板50の接続面50aに接触するリスク(或いは、フレキシブル基板41の一部が制御基板50の接続面50aの縁部に強い力で押し当てられるリスク)を低減できる。また、上述したようなコンデンサCと制御基板50との接触を回避するために、内側端部61a1が接続面50aよりも底壁12側に位置するように構成した場合等において、接触面61aを図3に示すように傾斜させることにより、フレキシブル基板41の全長を短くすることができる。
【0082】
また、本実施形態では、熱吸収部材60は、放射線遮蔽部材22とICチップ42との間に設けられている。上記構成によれば、センサパネル30が支持されるベース基板21と熱吸収部材60との間に放射線遮蔽部材22を介在させることができる。その結果、熱吸収部材60からベース基板21への熱の伝達、ひいてはセンサパネル30(受光部32)への熱の伝達をより一層効果的に抑制できる。
【0083】
また、上記のように熱吸収部材60が放射線遮蔽部材22に接触するように設けられている場合には、熱吸収部材60の熱容量は、放射線遮蔽部材22の熱容量よりも大きくされることが好ましい。上記構成によれば、放射線遮蔽部材22が銅タングステン等の熱伝導率に優れた材料で形成される場合においても、上記のような熱容量差を設けることにより、熱吸収部材60から放射線遮蔽部材22への熱の移動を効果的に抑制できる。これにより、熱吸収部材60から支持部材20(放射線遮蔽部材22及びベース基板21)を介したセンサパネル30への熱の伝達をより一層効果的に抑制できる。
【0084】
また、Z軸方向から見た場合に、放射線遮蔽部材22は、制御基板50の外縁部50bと重なる位置又は外縁部50bよりも外側に配置されている。本実施形態では、図3に示されるように、Z軸方向において、放射線遮蔽部材22の内側端部は、外縁部50bと重なっている。また、図8に示されるように、Y軸方向において熱吸収部材60が配置されている範囲R1は、Y軸方向において放射線遮蔽部材22が配置されている範囲R2に含まれている。上記構成によれば、熱吸収部材60と制御基板50との干渉(接触)を好適に抑制できる。なお、上記効果は、放射線遮蔽部材22の内側端部を外縁部50bよりも外側に配置することにより、より好適に発揮される。これにより、組立作業(例えば、フレキシブル基板41の端部41bを制御基板50のコネクタ51に接続する作業等)を容易化できると共に、ICチップ42で発生した熱が熱吸収部材60を介して制御基板50に伝達されることを抑制できる。
【0085】
また、図2及び図7に示されるように、放射線撮像装置1は、X軸方向に沿って配列され、それぞれICチップ42が搭載された複数のフレキシブル基板41を備えている。また、1つの熱吸収部材60は、複数(本実施形態では6つ)のフレキシブル基板41に対応するように、X軸方向に延在している。すなわち、本実施形態では、図7に示されるように、Y軸方向における制御基板50の両側縁部に、2つずつ(合計4つ)の熱吸収部材60が設けられている。上記構成によれば、X軸方向に並んで配置された複数(一例として6つ)のICチップ42(フレキシブル基板41)に対して、X軸方向に長尺な1つの熱吸収部材60を設けることにより、1つの熱吸収部材60の体積及び熱容量をより一層効果的に大きくすることができる。これにより、熱吸収部材60から支持部材20への熱の移動、すなわち、熱吸収部材60から支持部材20を介したセンサパネル30への熱の移動をより一層効果的に抑制できる。また、熱吸収部材60をICチップ42毎に個別に設ける場合と比較して、熱吸収部材60の部品点数を削減できる共に、熱吸収部材60の取付作業を容易化できる。また、熱吸収部材60を支持部材20(本実施形態では、放射線遮蔽部材22)に接着等によって固定する場合において、熱吸収部材60の固定の安定性を高めることもできる。
【0086】
[変形例]
本開示は、上記実施形態に限られない。上述した各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。また、上記実施形態に係る放射線撮像装置1に含まれる一部の構成は、適宜省略又は変更されてもよい。例えば、上記実施形態では、放射線撮像装置1に含まれるいくつかの特徴的な構成、及び各構成によって発揮されるいくつかの効果について説明したが、本開示に係る放射線撮像装置は、必ずしも、上記実施形態で説明された全ての効果を発揮するように構成される必要はなく、上記実施形態で説明された一部の効果のみを発揮するように構成されてもよい。後者の場合には、放射線撮像装置は、少なくとも当該一部の効果を発揮するために必須の構成を備えていればよく、当該一部の効果を発揮するために必須ではない構成は適宜省略又は変更されてもよい。なお、一の効果に着目した場合において、当該一の効果を発揮するために必須の構成は、当業者を基準として、技術常識及び本明細書の記載に基づいて、合理的に把握されるべきである。以下、本開示の放射線撮像装置について、いくつかの具体的な変形例を例示するが、放射線撮像装置の変形例が以下に例示する具体的な形態のみに限定されないことはいうまでもない。
【0087】
上記実施形態では、熱吸収部材60は、ROIC(ICチップ42)にのみ設けられたが、上記以外のICチップ(例えば上記実施形態において垂直シフトレジスタを構成するICチップ42A)に対して設けられてもよい。また、例えば、熱吸収部材60は、ICチップ42Aに対してのみ設けられてもよい。
【0088】
上記実施形態では、検出領域Rは、シンチレータ34によって放射線像を光像に変換した後に受光部32によって当該光像を撮像して画像を得る間接変換方式が適用された領域であったが、検出領域Rは、放射線像を直接的に撮像して画像を得る直接変換方式が適用された領域であってもよい。例えば、センサ基板31の第1面31aにおいて、受光部32の代わりに、電荷の蓄積及び転送を行うように構成された画素回路が設けられると共に、シンチレータ34の代わりに、放射線を直接的に電荷に変換する固体材料(変換部)(例えば、CdTe、CdZnTe、GaAs、InP、TlBr、HgI2、PbI2、Si、Ge、及びa-Se等)が設けられてもよい。これにより、直接変換方式が適用された検出領域Rが得られる。この場合の検出領域Rは、放射線が入射する領域であって、且つバイアス電圧が印加される領域(すなわち、画像を取得する対象となる領域)である。
【0089】
上記実施形態では、ガラス基板であるセンサ基板31上に多結晶シリコン又はアモルファスシリコン等が成膜されてなるセンサパネル30について説明したが、センサパネル30は、上記構成に限られず、例えば単結晶シリコン基板上に受光部を形成してなる構成を有していてもよい。また、センサ基板31は、ガラス基板に限られず、例えばフィルム状の基板(フレキシブル基板)等であってもよい。
【0090】
また、センサパネル30は、シンチレータ34を覆うカバー部材(例えばアルミニウム等)を備えてもよい。また、センサ基板31は、両面テープ等によってベース基板21に接着されているが、例えば高温高湿環境下においてセンサ基板31の反り応力が両面テープの接着力よりも大きくなると、センサパネル30がベース基板21から浮き上がる(天壁11側に移動する)おそれがある。このようなセンサパネル30の浮き上がりを防止するために、センサパネル30と天壁11との間に、上記浮き上がりが生じた場合に上記浮き上がりを抑える方向にセンサパネル30に力を加えるための部材(例えば、ウレタンスポンジ等)が配置されてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、ICチップ42はフレキシブル基板41におけるベース基板21(天壁11)側の面(図3における上面)に設けられたが、ICチップ42は、フレキシブル基板41におけるベース基板21(天壁11)側とは反対側(底壁12側)の面(図3における下面)に設けられてもよい。この場合、コンデンサCも、ICチップ42と同様に、フレキシブル基板41におけるベース基板21(天壁11)側とは反対側(底壁12側)の面に設けられる。上記変形例では、熱吸収部材60(吸熱部61)は、ICチップ42と直接的に接触しないが、フレキシブル基板41におけるICチップ42が設けられた部分を介して、ICチップ42から発生した熱を吸収することができる。従って、上記変形例によっても、上述した放射線撮像装置1と同様の効果(すなわち、ICチップ42からの熱を効果的に熱吸収部材60に吸収させることができると共に、放熱部62から空気中へと適切に熱を逃がすことができる効果)が奏される。なお、上記変形例においては、吸熱部61は、「Z軸方向(第1方向)から見た場合に、フレキシブル基板41と重なる領域に配置され、Z軸方向においてICチップ42の搭載面421と重なる部分を含む吸熱部」と定義することができる。また、ICチップ42は、フレキシブル基板41に対して吸熱部61が位置する側とは反対側に配置される。また、上記変形例における吸熱部61の厚さT1は、上記実施形態と同様に定義され得る。
【符号の説明】
【0092】
1…放射線撮像装置、20…支持部材、21…ベース基板、21a…支持面、21b…裏面、22…放射線遮蔽部材、30…センサパネル、41…フレキシブル基板、41b…端部(一端)、42,42A…ICチップ、50…制御基板、50a…接続面、50b…外縁部、51…コネクタ(端子)、60…熱吸収部材、61…吸熱部、61a…接触面、61a1…内側端部、62…放熱部、421…搭載面、C…コンデンサ、R…検出領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9