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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015837
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】外壁用パネルの留付金具
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20240130BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
E02D29/02 309
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118170
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】390036722
【氏名又は名称】神島化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】渡部 充隆
(72)【発明者】
【氏名】廣田 浩佑
【テーマコード(参考)】
2D044
2D048
【Fターム(参考)】
2D044CA00
2D044CA08
2D048AA92
(57)【要約】
【課題】 支柱の固定面が右側面か左側面によって使い分ける必要がない、盛土材料の擁壁を構築する際に好適な外壁用パネルの留付金具を提供する。
【解決手段】 外壁用パネル1の上端面の雄実部1Aに係合する係合部材21と、支柱3の側面に固定するL字形部材22とからなり、前記係合部材21は、外壁用パネル1の裏面側に対面し、外壁用パネル1の上端面の雄実部1Aに上方から係合する係合片21bを有する基板部21aを備え、前記L字形部材22は、係合部材21の基板部21aに対面する前面板22aと、この前面板22aの一側縁から背面側に向かって直角に折れ曲がる側面板22bとを備え、前記L字形部材22の前面板22aと係合部材21の基板部21aとを水平回転軸23によって回転可能に連結した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端面に雄実部、下端面に雌実部が形成されている外壁用パネルを、外壁用パネルの裏面側に立設された支柱に対して留め付ける留付金具であって、
外壁用パネルの上端面の雄実部に係合する係合部材と、支柱の側面に固定するL字形部材とからなり、前記係合部材は、外壁用パネルの裏面側に対面し、外壁用パネルの上端面の雄実部に上方から係合する係合片を有する基板部を備え、前記L字形部材は、係合部材の基板部に対面する前面板と、この前面板の一側縁から背面側に向かって直角に折れ曲がる側面板とを備え、前記L字形部材の前面板と係合部材の基板部とを水平回転軸によって回転可能に連結したことを特徴とする留付金具。
【請求項2】
上端面に雄実部、下端面に雌実部が形成されている外壁用パネルを、外壁用パネルの裏面側に立設された支柱に対して留め付ける留付金具であって、
外壁用パネルの上端面の雄実部に係合する係合部材と、支柱の側面に固定するL字形部材と、係合部材とL字形部材とを連結するジョイント金具とからなり、
前記係合部材は、外壁用パネルの裏面側に対面し、外壁用パネルの上端面の雄実部に上方から係合する係合片を有する基板部を備え、
前記L字形部材は、係合部材の基板部に対面する前面板と、この前面板の一側縁から背面側に向かって直角に折れ曲がる側面板とを備え、
前記ジョイント金具は、係合部材の基板部とL字形部材の前面板との間に位置する垂直板と、この垂直板の上下縁から背面側に向かって延び、L字形部材の前面板を上下から挟む水平板とからなるコ字形の部材であり、
前記ジョイント金具の垂直板と係合部材の基板部とを水平回転軸によって回転可能に連結し、前記ジョイント金具の水平板とL字形部材の前面板とを垂直揺動軸によって揺動可能に連結したことを特徴とする留付金具。
【請求項3】
前記ジョイント金具の垂直板と係合部材の基板部との間に、一側縁に外壁用パネルの側面に当接する当接片を備える横ずれ防止板を左右方向にスライド可能、かつ、前記係合部材の基板部及びジョイント金具の垂直板に対して水平回転軸を回転軸にして回転可能に設けている請求項2記載の留付金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押出成形セメント板などの外壁用パネルを使用して、例えば、盛土材料の擁壁といった壁面を構築する際に、外壁用パネルを、裏面側から基礎に立設された支柱に対して留め付ける留付金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤や急傾斜地などの地山における道路の路盤構築や拡幅に、荷重軽減および土圧軽減をはかる必要のあるところ発泡スチロール(EPS)の大型ブロックを盛土材料として積み重ねて行うEPS工法と呼ばれている盛土工法がある。
【0003】
このようなEPS工法では、盛土材料として軽量の発泡スチロール(EPS)を使用することにより、荷重軽減および土圧軽減をはかることができるため、盛土材料の擁壁を、押出成形セメント板などの外壁用パネルを使用して構築する場合がある(特許文献1)。
【0004】
ところで、図36及び図37に示すように、上端面に雄実部1A、下端面に雌実部1Bが形成されている外壁用パネル1をその裏面側から留付金具2を使用して支柱3に留め付け、外壁用パネル1を上下方向に積み重ねることにより、外壁の施工を行う裏止め工法という工法が従来から知られている。このような裏止め工法では、図38に示すような留付金具2が用いられている(非特許文献1)。
【0005】
この留付金具2は、下地胴縁などの支柱3に、ビス4等によって留め付けるL字形部材によって構成されている。留付金具2のL字形部材は、外壁用パネル1の裏面側に位置する前面板2Aと、支柱3の側面にビス4等によって留め付けられる、前面板2Aに対して直交する側面板2Bとを備え、前面板2Aの前面に、外壁用パネル1の上端面の雄実部1Aに上方から係合する係合片2Cを設けている。
【0006】
このような留付金具2を使用すると、図36に示すように、外壁用パネル1の裏面側からL字形部材の前面板2Aに設けられた係合片2Cを、外壁用パネル1の上端面の雄実部1Aに上方から係合させ、その状態でL字形部材の側面板2Bを支柱3の側面にビス4等によって留め付けることにより、外壁用パネル1を上下方向に順次積み重ねながら外壁の施工を行うことができる。この図36及び図37に示す例は、外壁用パネル1の裏面側から見て右側面にL字形部材の側面板2Bを設け、この側面板2Bを外壁用パネル1の裏面側から見て支柱3の右側面に固定する右側面固定用の留付金具2を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-60141号公報
【非特許文献1】2022年1月発行の神島化学工業カタログ(ラムダ125-2R)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、従来の裏止め工法の留付金具2を用いて盛土材料の擁壁を構築しようとした場合には、次のような課題がある。
【0009】
まず、従来の裏止め工法の留付金具2は、L字形部材の側面板2Bが、支柱3の右側面か左側面のいずれか一方に位置するため、外壁用パネル1の裏面側から見て側面板2Bが支柱3の右側面に位置する右側面固定用のものと、側面板2Bが支柱3の左側面に位置する左側面固定用のものとの2種類が必要となり、支柱3の固定面が支柱3の右側面か左側面かによって2種類の留付金具2を使い分ける必要がある。因みに、図37及び図38の留付金具2は、外壁用パネルの裏面側からみて側面板2Bが支柱3の右側面に位置する右側面固定用のものであり、図36の留付金具2は、外壁用パネル1の裏面側からみて側面板2Bが支柱の左側面に位置する左側面固定用のものである。
【0010】
そこで、この発明が解決しようとする第1の課題は、支柱の固定面が右側面か左側面によって使い分ける必要がない、盛土材料の擁壁を構築する際に好適な外壁用パネルの留付金具を提供することにある。
【0011】
次に、盛土材料の擁壁は、住宅等の外壁と異なり、地山の状況に応じて外壁用パネル1を地山の曲面に応じて曲面の擁壁を構築するなどの対応が必要になることがある。
【0012】
従来の裏止め工法の留付金具2を構成するL字形部材は、前面板2Aと、前面板2Aに対して直交する側面板2Bとを備え、前面板2Aと側面板2Bの角度が直角に固定されている。
【0013】
したがって、従来の裏止め工法の留付金具2では、外壁用パネル1を支柱3に対して直角、かつ水平にしか留め付けることができない。
【0014】
このため、従来の裏止め工法の留付金具2では、平面からみて外壁用パネル1を曲面の角度に応じて支柱3に対して所定の角度で留め付けたりすることができない。即ち、従来の裏止め工法の留付金具2は、曲面に対応した外壁を構築することができない。
【0015】
そこで、この発明が解決しようとする第2の課題は、支柱の固定面が右側面か左側面によって使い分ける必要がなく、さらに、従来の裏止め工法の留付金具では対応できなかった曲面に対応することができる、盛土材料の擁壁を構築する際により好適な外壁用パネルの留付金具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記第1の課題を解決するために、この発明は、上端面に雄実部、下端面に雌実部が形成されている外壁用軽量パネルを、外壁用パネルの裏面側に立設された支柱に対して留め付ける第1の留付金具を、次のような構成としたものである。
【0017】
即ち、この発明に係る第1の留付金具は、外壁用パネルの上端面の雄実部に係合する係合部材と、支柱の側面に固定するL字形部材とからなり、前記係合部材は、外壁用パネルの裏面側に対面し、外壁用パネルの上端面の雄実部に上方から係合する係合片を有する基板部を備え、前記L字形部材は、係合部材の基板部に対面する前面板と、この前面板の一側縁から背面側に向かって直角に折れ曲がる側面板とを備え、前記L字形部材の前面板と係合部材の基板部とを水平回転軸によって回転可能に連結したことを特徴とする。
【0018】
また、前記第2の課題を解決するために、上端面に雄実部、下端面に雌実部が形成されている外壁用軽量パネルを、外壁用パネルの裏面側に立設された支柱に対して留め付ける第2の留付金具を、次のような構成としたものである。
【0019】
即ち、この発明に係る第2の留付金具は、外壁用パネルの上端面の雄実部に係合する係合部材と、支柱の側面に固定するL字形部材と、係合部材とL字形部材とを連結するジョイント金具とからなり、前記係合部材は、外壁用パネルの裏面側に対面し、外壁用パネルの上端面の雄実部に上方から係合する係合片を有する基板部を備え、前記L字形部材は、係合部材の基板部に対面する前面板と、この前面板の一側縁から背面側に向かって直角に折れ曲がる側面板とを備え、前記ジョイント金具は、係合部材の基板部とL字形部材の前面板との間に位置する垂直板と、この垂直板の上下縁から背面側に向かって延び、L字形部材の前面板を上下から挟む水平板と、を備えるコ字形の部材であり、前記ジョイント金具の垂直板と係合部材の基板部とを水平回転軸によって回転可能に連結し、前記ジョイント金具の水平板とL字形部材の前面板とを垂直揺動軸によって揺動可能に連結したことを特徴とする。
【0020】
前記ジョイント金具の垂直板と係合部材の基板部との間に、一側縁に外壁用パネルの側面に当接する当接片を備える横ずれ防止板を左右方向にスライド可能、かつ、前記係合部材の基板部及びジョイント金具の垂直板に対して水平回転軸を回転軸にして回転可能に設けるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、この発明に係る第1の留付金具は、L字形部材の前面板と係合部材の基板部とを水平回転軸によって回転可能に連結しているので、L字形部材を係合部材に対して回転させることにより、右側面固定用、左側面固定用に兼用することができる。
【0022】
次に、この発明に係る第2の留付金具は、外壁用パネルの上端面の雄実部に係合する係合部材に対し、支柱の側面に固定するL字形部材が、ジョイント金具によって水平回転軸を中心にして回転可能に取付けられているので、L字形部材を係合部材に対して回転させることにより、右側面固定用、左側面固定用に兼用することができる。
【0023】
また、この発明に係る第2の留付金具は、外壁用パネルの上端面の雄実部に係合する係合部材に対し、支柱の側面に固定するL字形部材が、ジョイント金具によって垂直揺動軸を中心にして揺動可能に取付けられているので、外壁用軽量パネルを曲面に沿って設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明に係る第1の留付金具を表面側の左斜め上から見た斜視図である。
図2】この発明に係る第1の留付金具を表面側の右斜め上から見た斜視図である。
図3】この発明に係る第1の留付金具を裏面側の左斜め上から見た斜視図である。
図4】この発明に係る第1の留付金具を裏面側の右斜め上から見た斜視図である。
図5】この発明に係る第1の留付金具を図1の状態からL字形部材を180度回転させた状態を示す斜視図である。
図6】この発明に係る第1の留付金具を図2の状態からL字形部材を180度回転させた状態を示す斜視図である。
図7】この発明に係る第1の留付金具を図3の状態からL字形部材を180度回転させた状態を示す斜視図である。
図8】この発明に係る第1の留付金具を図4の状態からL字形部材を180度回転させた状態を示す斜視図である。
図9】この発明に係る第1の留付金具の平面図である。
図10】この発明に係る第1の留付金具の底面図である。
図11】この発明に係る第1の留付金具の正面図である。
図12】この発明に係る第1の留付金具の背面図である。
図13】この発明に係る第1の留付金具の左側面図である。
図14】この発明に係る第1の留付金具の右側面図である。
図15】この発明に係る第2の留付金具を表面側の左斜め上から見た斜視図である。
図16】この発明に係る第2の留付金具を表面側の右斜め上から見た斜視図である。
図17】この発明に係る第2の留付金具を裏面側の左斜め上から見た斜視図である。
図18】この発明に係る第2の留付金具を裏面側の右斜め上から見た斜視図である。
図19】この発明に係る第2の留付金具を図15の状態からL字形部材及び横ずれ防止板を180度回転させた状態を示す斜視図である。
図20】この発明に係る第2の留付金具を図16の状態からL字形部材及び横ずれ防止板を180度回転させた状態を示す斜視図である。
図21】この発明に係る第2の留付金具を図17の状態からL字形部材及び横ずれ防止板を180度回転させた状態を示す斜視図である。
図22】この発明に係る第2の留付金具を図18の状態からL字形部材及び横ずれ防止板を180度回転させた状態を示す斜視図である。
図23】この発明に係る第2の留付金具の平面図である。
図24】この発明に係る第2の留付金具を図23の状態からL字形部材及び横ずれ防止板を180度回転させた状態を示す平面図である。
図25図23に示す状態からL字形部材に対し係合部材を時計方向に揺動させた状態を示すこの発明に係る第2の留付金具の平面図である。
図26図23に示す状態からL字形部材に対し係合部材を反時計方向に揺動させた状態を示すこの発明に係る第2の留付金具の平面図である。
図27】この発明に係る第2の留付金具の正面図である。
図28図27の状態から横ずれ防止板を左方向にスライドさせた状態を示す正面図である。
図29】この発明に係る第2の留付金具の背面図である。
図30図29の状態から横ずれ防止板を右方向にスライドさせた状態を示す背面図である。
図31】この発明に係る第2の留付金具の右側面図である。
図32】この発明に係る第2の留付金具を図31の状態からL字形部材のみを180度回転させた状態を示す右側面図である。
図33】この発明に係る第2の留付金具を使用して盛土材料の擁壁を構築した例を示す部分概略側面図である。
図34】この発明に係る第2の留付金具を使用して盛土材料の擁壁を構築した例を示す部分拡大平面図である。
図35】この発明に係る第2の留付金具を使用して盛土材料の擁壁を曲面に構築した例を示す部分拡大平面図である。
図36】従来の留付金具を使用して外壁を構築した例を示す側面図である。
図37】従来の留付金具を使用して外壁を構築した例を示す斜視図である。
図38】従来の留付金具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明に係る第1の留付金具20Aの実施形態を図1図15に基づき、また、この発明に係る第2の留付金具20Bの実施形態を図15図35に基づき具体的に説明する。
【0026】
この発明に係る第1の留付金具20Aは、外壁用軽量パネル1の上端面の雄実部1Aに係合する係合部材21と、支柱3の側面に固定するL字形部材22とからなる。
【0027】
係合部材21は、外壁用パネル1の裏面側に対面するように設けられる基板部21aを有し、この基板部21aの下縁に、外壁用軽量パネル1の上端面の雄実部1Aに上方から係合する係合片21bを設けている。
【0028】
前記基板部21aの両側縁と上縁には、外壁用パネル1の裏面側に向かって折れ曲がる補強片21cをそれぞれ設けている。
【0029】
また、基板部21aには、円弧状の補強リブ21dを板面中央部に設けている。
【0030】
一方、L字形部材22は、係合部材21の基板部21aに対面する前面板22aと、この前面板22aの一側縁から背面側に向かって前面板22aに対して直角に折れ曲がる側面板22bとを備える。ここで、背面側とは外壁用パネル1の裏面、即ち、前記基板部21aから離れる方向をいう。
【0031】
L字形部材22の前面板22a及び側面板22bの上下縁には、内向きに直角に折れ曲がる補強片22cが形成されている。また、L字形部材22の側面板22bには、L字形部材22を支柱3の側面にビス4等によって留め付ける際に使用するビス孔22dを設けている。ビス孔22dは、前後方向に延びる長孔に形成されている。
【0032】
L字形部材22の前面板22aと係合部材21の基板部21aとは、両者を水平方向に貫通する水平回転軸23によって連結され、水平回転軸23を中心にして係合部材21の基板部21aがL字形部材22の前面板22aに対して回転可能である。水平回転軸23は、L字形部材22の前面板22aと係合部材21の基板部21aとに設けられた貫通孔に挿通され、両端に抜け止め頭部が設けられている。
【0033】
この発明に係る第1の留付金具20Aは、前記のように、外壁用パネル1の上端面の雄実部1Aに係合する係合部材21に対し、支柱3の側面に固定するL字形部材22の前面板22aを、水平回転軸23を中心にして係合部材21に対し回転可能に取付けているので、L字形部材22を係合部材21に対して回転させることにより、留付金具20Aを、右側面固定用、左側面固定用に兼用することができる。
また、ビス孔22dを前後方向に延びる長孔に形成することにより、前後への不陸調整が可能であり、下地に前後の不陸があっても外壁用パネル1を面一に設置することができる。
【0034】
図1図4は、外壁用パネル1の裏面側から見て支柱3の右側面固定用にした状態の留付金具20Aを示し、図5図8は、L字形部材22を図1図4に示す状態から水平回転軸23を中心にしてL字形部材22を180度回転させて左側面固定用にした留付金具20を示している。また、図9図14は、外壁用パネル1の裏面側から見て支柱3の右側面固定用にした状態の留付金具20Aを示している。
【0035】
次に、この発明に係る第2の留付金具20Bは、外壁用軽量パネル1の上端面の雄実部1Aに係合する係合部材21と、支柱3の側面に固定するL字形部材22と、係合部材21とL字形部材22とを連結するジョイント金具25とからなる。
【0036】
前記L字形部材22は、ジョイント金具25によって水平回転軸23を中心にして係合部材21に対し回転可能に取付けられているので、L字形部材22を係合部材21に対して回転させることにより、留付金具20を、右側面固定用、左側面固定用に兼用することができる。
【0037】
また、この発明に係る第2の留付金具20Bは、外壁用パネル1の上端面の雄実部1Aに係合する係合部材21に対し、支柱3の側面に固定するL字形部材22を、ジョイント金具25によって垂直揺動軸24を中心にして揺動可能に取付けている。ジョイント金具25によって垂直揺動軸24を中心にして係合部材21をL字形部材22に対して角度を持たせることができるので、外壁用パネル1を曲面に沿って設置することも可能である。
【0038】
図15図18は、外壁用パネル1の裏面側から見て支柱3の右側面固定用にした状態の留付金具20Bを示し、図19図22は、L字形部材22及び横ずれ防止板26を図15図18に示す状態から水平回転軸23を中心にしてL字形部材22を180度回転させて左側面固定用にした留付金具20Bを示している。図23は、右側面固定用にした状態の留付金具20Bの平面図であり、図24は、左側面固定用にした状態の留付金具20Bの平面図である。
【0039】
また、この発明に係る第2の留付金具20Bは、図25及び図26に示すように、L字形部材22に対し、係合部材21を垂直揺動軸24によって揺動可能に取付けることにより、外壁用パネル1を曲面に沿って配置できるようにしている。
【0040】
以下、留付金具20Bを構成する係合部材21、L字形部材22及びジョイント金具25の詳細を説明する。
【0041】
係合部材21は、外壁用パネル1の裏面側に対面するように設けられる基板部21aを有し、この基板部21aの下縁に、外壁用軽量パネル1の上端面の雄実部1Aに上方から係合する係合片21bを設けている。
【0042】
前記基板部21aの両側縁と上縁には、外壁用パネル1の裏面側に向かって折れ曲がる補強片21cをそれぞれ設けている。
【0043】
また、基板部21aには、円弧状の補強リブ21dを板面中央部に設けている。
【0044】
一方、L字形部材22は、係合部材21の基板部21aに対面する前面板22aと、この前面板22aの一側縁から背面側に向かって前面板22aに対して直角に折れ曲がる側面板22bとを備える。ここで、背面側とは外壁用パネル1の裏面、即ち、前記基板部21aから離れる方向をいう。
【0045】
L字形部材22の前面板22a及び側面板22bの上下縁には、内向きに直角に折れ曲がる補強片22cが形成されている。
【0046】
L字形部材22の側面板22bには、L字形部材22を支柱3の側面にビス4等によって留め付ける際に使用するビス孔22dを設けている。ビス孔22dは、前後方向に延びる長孔に形成されている。
【0047】
係合部材21の基板部21aは、L字形部材22の前面板22aに対してジョイント金具25を介して取付けられている。
【0048】
ジョイント金具25は、係合部材21の基板部21aとL字形部材22の前面板22aとの間に位置する垂直板25aと、この垂直板25aの上下縁から背面側に向かって延び、L字形部材22の前面板22aの上下縁に設けられた補強片22cを上下から挟む水平板25bとからなるコ字形の部材である。
【0049】
ジョイント金具25の垂直板25aと係合部材21の基板部21aとは、両者を水平方向に貫通する水平回転軸23によって連結され、水平回転軸23を中心にして係合部材21の基板部21aがジョイント金具25の垂直板25aに対して回転可能である。水平回転軸23は、ジョイント金具25の垂直板25aと係合部材21の基板部21aとに設けられた貫通孔に挿通され、両端に抜け止め頭部が設けられている。
【0050】
ジョイント金具25とL字形部材22とは、L字形部材22の前面板22aの上下縁に設けられた補強片22cと、この補強片22cを上下から挟むジョイント金具25の水平板25bとの間を貫通する垂直揺動軸24によって連結されている。垂直揺動軸24は、補強片22cと水平板25bとに設けられた貫通孔に挿通され、両端に抜け止め頭部が設けられている。
【0051】
また、ジョイント金具25の垂直板25aと係合部材21の基板部21aとの間には、左右方向にスライド可能に横ずれ防止板26が設置されている。横ずれ防止板26の左右方向の一側縁には、後述する図21及び図22の設置状態において外壁用パネル1の側面に当接して横ずれを防止する当接片26aが設けられている。また、当接片26aと反対方向に位置する横ずれ防止板26の他側縁には、背面側に屈曲する屈曲片26bが設けられている。
【0052】
横ずれ防止板26には、ジョイント金具25の垂直板25aと係合部材21の基板部21aとを連結する水平回転軸23が貫通する左右方向の長孔(図示省略)が設けられ、係合部材21の基板部2及びジョイント金具25の垂直板25aに対して水平回転軸23を回転軸にして回転可能に設けられている。
【0053】
また、横ずれ防止板26には、左右方向に延び、内面に鋸刃部27aを備える係合孔27が設けられ、この係合孔27の鋸刃部27aに弾性係合する弾性爪21eを、係合部材21の基板部21aを切り起こして形成し、図27図30に示すように、横ずれ防止板26を、カチ・カチと、係合部材21の基板部21aに対して位置決めしながら左右方向にスライドさせることができる。
【0054】
次に、図33は、この発明に係る留付金具20を用いて外壁用軽量パネル1を積み上げ、EPS工法における盛土材料の擁壁30を構築した例を示している。
【0055】
EPS工法は、盛土材料として軽量の発泡スチロールの大型軽量ブロック31(EPS)を使用するものであり、積み上げた大型軽量ブロック31と大型軽量ブロック31の間には、適宜、コンクリート床板32を設置している。
【0056】
擁壁30の支柱3は、角型鋼管が用いられ、コンクリート基礎(図示省略)に所定間隔で垂直に立設されている。支柱3の中間部は、コンクリート床板32のアンカーボルト33によって支持されている。
【0057】
擁壁30を構成する外壁用パネル1は、上端面に雄実部1A、下端面に雌実部1Bが形成されている。
【0058】
まず、留付金具20を用いて、外壁用パネル1を支柱3に留め付けるには、留付金具20の係合部材21の係合片21bを外壁用パネル1の雄実部1Aに被せた後、L字形部材22の側面板22bを、支柱3の側面にビス4等によって留め付けることにより、下段の外壁用パネル1を自立させる。
【0059】
次いで、上段の外壁用パネル1の下端面の雌実部1Bを、下段の外壁用パネル1の上端面の雄実部1Aに嵌め入れる。そして、上段の外壁用パネル1の雄実部1Aに、留付金具20の係合部材21の係合片21bを被せて、留付金具20BのL字形部材22の側面板22bを、支柱3の側面にビス4等によって留め付けるという作業を繰り返すことにより、外壁用パネル1を上下方向に積み上げて擁壁30を構築することができる。
【0060】
留付金具20Bは、支柱3との位置関係において、図33に示すように、外壁用パネル1を裏面側からみて、L字形部材22の側面板22bを支柱3の右側側面に留め付ける場合と、左側面に留め付ける場合とがあるが、この留付金具20BのL字形部材22は、係合部材21に対して水平回転軸23を中心にして回転可能であるため、一つの留付金具20Bを支柱3の右側面固定用、支柱3の左側面固定用として兼用することができる。
【0061】
また、この発明に係る留付金具20Bは、図25及び図26に示すように、L字形部材22に対し、係合部材21を垂直揺動軸24によって揺動可能に取付けられているため、図35に示すように、外壁用パネル1を曲面に沿って配置することができる。
また、この発明に係る留付金具20Bは、ビス孔22dを前後方向に延びる長孔に形成することにより、前後への不陸調整が可能であり、下地に不陸があっても外壁用パネル1を面一に設置することができる。さらに、この発明に係る留付金具20Bでは、垂直揺動軸24によりL字形部材22に対して係合部材21の基板部21aが首振り可能に設けられているため、この首振りによっても不陸調整が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 外壁用パネル
1A 雄実部
1B 雌実部
3 支柱
20A、20B 留付金具
21 係合部材
21a 基板部
21b 係合片
21c 補強片
21d 補強リブ
22 L字形部材
22a 前面板
22b 側面板
23 水平回転軸
24 垂直揺動軸
25 ジョイント金具
25a 垂直板
25b 水平板
26 横ずれ防止板
図1
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