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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158372
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】充電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20241031BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241031BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02J7/10 A
H02J7/00 P
H02J7/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073524
(22)【出願日】2023-04-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 太志
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓也
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BB01
5G503CA03
5G503CA14
5G503CA16
5G503CC02
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】充電分極の発生を抑制しつつ、満充電することが可能な充電システムを提供する。
【解決手段】充電システムは、電気自動車の駆動用のバッテリに、電気自動車の駆動用のバッテリに、電気自動車の外部に設置された急速充電器から電力を供給する充電システムであって、一定の充電電流値に基づいて、急速充電器からバッテリに電力を供給する定電流充電制御を実行する定電流充電制御部と、バッテリの電圧値が予め定められた目標電圧値に到達し、定電流充電制御が停止された場合、一定の充電電圧値に基づいて、急速充電器からバッテリに電力を供給する定電圧充電制御を2回以上実行する定電圧充電制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車の駆動用のバッテリに、電気自動車の外部に設置された急速充電器から電力を供給する充電システムであって、
一定の充電電流値に基づいて、前記急速充電器から前記バッテリに電力を供給する定電流充電制御を実行する定電流充電制御部と、
前記バッテリの電圧値が予め定められた目標電圧値に到達し、前記定電流充電制御が停止された場合、一定の充電電圧値に基づいて、前記急速充電器から前記バッテリに電力を供給する定電圧充電制御を2回以上実行する定電圧充電制御部と、
を備える、
充電システム。
【請求項2】
前記定電流充電制御が停止された停止時の前記バッテリの電圧値である第1電圧値、および、前記停止時から所定時間経過後における前記バッテリの電圧値である第2電圧値を取得する取得部と、
取得された前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分が所定範囲内であるか否かを判定する判定部と、
をさらに備え、
前記定電圧充電制御部は、前記差分が所定範囲内であると判定された場合、所定の充電電流値に基づいて前記定電圧充電制御を実行する、
請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
前記2回以上実行される定電圧充電制御における充電電流値は、当該定電圧充電制御が実行される回よりも前に実行された前回の定電圧充電制御における充電電流値から所定の電流値を減算した数値である、
請求項2に記載の充電システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリを充電する方法として、例えば、バッテリの充電時間を減少させる急速充電方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電動車両に搭載された駆動用バッテリを、車両外部に設置された急速充電器からの電力で急速充電する電動車両の充放電システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-122866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、バッテリを急速充電器にて急速充電した場合、バッテリに充電分極が発生する。これにより、バッテリの見かけの電圧が実際の電圧よりも高くなる。バッテリマネジメントシステム(BMS)は見かけの電圧を検出し、検出した見かけの電圧に基づいてバッテリが満充電であるか否かを判定する。そして、満充電であると判定された場合、急速充電が停止される。
【0006】
つまり、急速充電においては、バッテリに充電分極が発生する結果、満充電になる前に急速充電が停止されるため、バッテリを満充電することができないという問題がある。
【0007】
本開示の目的は、充電分極の発生を抑制しつつ、満充電することが可能な充電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示における充電システムは、
電気自動車の駆動用のバッテリに、電気自動車の外部に設置された急速充電器から電力を供給する充電システムであって、
一定の充電電流値に基づいて、前記急速充電器から前記バッテリに電力を供給する定電流充電制御を実行する定電流充電制御部と、
前記バッテリの電圧値が予め定められた目標電圧値に到達し、前記定電流充電制御が停止された場合、一定の充電電圧値に基づいて、前記急速充電器から前記バッテリに電力を供給する定電圧充電制御を2回以上実行する定電圧充電制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、充電分極の発生を抑制しつつ、満充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施の形態における充電システムの一例を示す図である。
図2図2は、本開示の実施の形態における充電システムの一例を機能的に示す図である。
図3図3は、本実施の形態における充電システムの制御の一例を示すタイムチャートである。
図4図4は、比較例における充電システムの制御の一例を示すタイムチャートである。
図5図5は、本実施の形態における充電システムの制御の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、本実施の形態における充電システムの定電圧充電制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施の形態における電動車両(EV)の充電システム1の一例を示す図である。なお、以下の説明では、本開示をトラックや、バスなどの商用車に適用する場合について説明するが、本開示は、これに限らず、乗用車などの車両に適用してもよい。
【0012】
図1に示すように、充電システム1には、外部負荷2と、複数のバッテリパック6と、ジャンクションボックス7(Junction Box:JB)と、車両制御部8(Vehicle Control Unit:VCU)と、が配置されている。また、図1に、EVの外部に配置された急速充電器BCを示す。なお、一または複数のバッテリパック6が本開示の「バッテリ」に対応する。急速充電器BCが充電システム1に接続されることで、ジャンクションボックス7を介してバッテリに電力が供給される。また、急速充電器BCが充電システム1から取り外されることで、バッテリの充電が解除される。以下の説明で、バッテリパック6を単に「バッテリ」という場合がある。
【0013】
(外部負荷2)
外部負荷2にはモータ、ヒータおよび架装などが含まれる。モータは、バッテリパック6から電力が供給されることで駆動する走行用のモータである。ヒータは、バッテリパック6から電力が供給されることでバッテリパック6自身を加温するヒータである。架装は、EVに搭載され、バッテリパック6から電力が供給されることで動作する装置である。架装には、例えば、荷受台昇降装置や、冷蔵・冷凍庫が含まれる。
【0014】
(バッテリパック6)
複数のバッテリパック6のそれぞれは、同じ構成をしているため、複数のバッテリパック6の中の1つのバッテリパック6を代表して説明する。バッテリパック6は、複数のセル6a、バッテリリレー(+)6b、バッテリリレー(-)6c、および、バッテリ管理部10(バッテリマネジメントシステム:BMS)を有している。
【0015】
バッテリリレー(+)6bの一端子は、高電圧ライン6L(+)を介してセル6aのプラス端子に接続されている。バッテリリレー(+)6bの他端子は、高電圧ライン7L(+)に接続されている。バッテリリレー(-)6cの一端子は、高電圧ライン6L(-)を介してセル6aのマイナス端子に接続されている。バッテリリレー(-)6cの他端子は、高電圧ライン7L(-)に接続されている。
【0016】
セル6aは、温度センサ6eおよび電圧センサ6fを有している。温度センサ6eは、セル温度を検出する。温度センサ6eは、検出結果(セル温度)をバッテリ管理部10(BMS)に出力する。電圧センサ6fは、セル電圧を検出する。電圧センサ6fは、検出結果(セル電圧)をバッテリ管理部10に出力する。
【0017】
(バッテリ管理部10)
バッテリ管理部10は、入力されたセル温度およびセル電圧のそれぞれに基づいて、高電圧ライン6L(+)と高電圧ライン7L(+)との間の接続/切断を行うようにバッテリリレー(+)6bを制御するとともに、高電圧ライン6L(-)と高電圧ライン7L(-)との間の接続/切断を行うようにバッテリリレー(-)6cを制御する。
【0018】
バッテリ管理部10(BMS)は、例えば、バッテリパック6の開放電圧(Open Circuit Voltage:OCV)およびセル温度に基づいて、セル温度毎に設定されたSOC(State Of Charge:残容量)とOCVとの関係を表す曲線を参照して、SOCを算出する。
【0019】
(ジャンクションボックス7)
ジャンクションボックス7(JB)は、バッテリパック6と外部負荷2および充電器BCとの間に配置されている。JB7は、高電圧ライン7L(+)および高電圧ライン7L(-)を有している。高電圧ライン7L(+)および高電圧ライン7L(-)のそれぞれは、充電器BCに接続されている。
【0020】
バッテリ管理部10(BMS)は通信ライン(CAN)を介して車両制御部8(VCU)に接続されている。バッテリ管理部10は、バッテリパック6の状態である例えば、電圧値(セル電圧)、セル温度、およびSOCを一定時間経過する毎に取得し、取得した電圧値、セル温度およびSOCのそれぞれを車両制御部8に送信する。
【0021】
バッテリ管理部10(BMS)は、バッテリパック6の状態(電圧値、電流値、セル温度およびSOCなど)を監視するとともに、バッテリパック6を安全かつ有効に使うための制御を行う。バッテリ管理部10は、バッテリパック6の状態(電圧値など)を車両制御部8(VCU)に送信する。
【0022】
(車両制御部8)
車両制御部8(VCU)は、EVの状態を判断し、EVを最適な状態に維持する制御を実行する。具体的には、車両制御部8は、EVの異常を検知した場合、EVを停止するようにモータを制御する。また、車両制御部8は、バッテリパック6とモータとの間の電圧を変化させることで、バッテリパック6からモータへの供給電力を制御する。
【0023】
次に、充電システム1の具体例について図2を参照して説明する。図2は、充電システム1の一例を機能的に示す図である。
【0024】
車両制御部8(VCU)は、通信部8aと、取得部8bと、判定部8cと、定電流充電制御部8dと、定電圧充電制御部8eと、記憶部8fとを備える。図2において、矢印は主なデータの流れを示しており、図2に示していないデータの流れがあってもよい。図2において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、図2に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、コントローラエリアネットワーク(CANバス)等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0025】
(通信部8a)
通信部8aは、バッテリ管理部10からバッテリの状態(電圧値など)を受信する。
【0026】
(取得部8b)
取得部8bは、バッテリ管理部10から通信部8aを介してバッテリの電圧値を取得する。
【0027】
急速充電器BCにてバッテリを急速充電する場合、バッテリに充電分極が発生する。これにより、バッテリの見かけの電圧が実際の電圧よりも高くなる。その結果、取得部8bは、充電分極の発生により実際の電圧よりも高くなった見かけの電圧値を取得することになる。そこで、本実施の形態では、取得部8bは、定電流充電制御の停止時におけるバッテリの電圧値である第1電圧値を取得する。また、取得部8bは、定電流充電制御の停止時から所定時間経過後におけるバッテリの電圧値である第2電圧値を取得する。なお、第1電圧値と第2電圧値との差分が所定範囲内になることは、バッテリに充電分極が発生していないことを意味する。
【0028】
(記憶部8f)
記憶部8fは、車両制御部8を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や車両制御部8の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。
【0029】
また、記憶部8fは、予め定められた目標電圧値を記憶している。なお、目標電圧値は、バッテリパック6の性能や、バッテリパック6を構成する材料等に応じており、実験やシミュレーションにより設定される。また、記憶部8fは、所定の充電電流値を記憶している。なお、所定の充電電流値は、バッテリパック6の性能や、バッテリパック6を構成する材料等に応じており、実験やシミュレーションにより設定される。
【0030】
(判定部8c)
判定部8cは、取得部8bにより取得されたバッテリの電圧値が目標電圧値に到達したか否かを判定する。
【0031】
また、判定部8cは、取得部8bにより取得された第1電圧値と第2電圧値との差分が所定範囲内であるか否かを判定する。
【0032】
車両制御部8は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部8fに記憶されたプログラムを実行することによって定電流充電制御部8d及び定電圧充電制御部8eとして機能する。
【0033】
(定電流充電制御部8d)
定電流充電制御部8dは、一定の充電電流値に基づいて、急速充電器BCからバッテリに電力を供給する定電流充電制御を実行する。定電流充電制御部8dは、バッテリの電圧値が目標電圧値に到達した場合、定電流充電制御を停止する。なお、本実施の形態において、定電流充電制御とは、一定の電流値で、セル電圧を上げていく充電制御をいう。以下の説明で、定電流充電を「CC充電」という場合がある。
【0034】
図3は、本実施の形態における充電システムの制御の一例を示すタイムチャートである。図3の上段は、充電電流およびSOCのそれぞれと時間(t)との関係を示す図である。図3の上段に示す縦軸は、充電電流およびSOCのそれぞれを表し、横軸は時間(t)を表す。図3の上段では、充電電流が細線で示され、SOCが太線で示されている。また、図3の上段に、定電流制御の期間を「CC充電」で示す。図3の上段には、定電流制御の期間(CC充電)において充電電流が一定であることが示されている。また、定電流制御によって、SOCが約80%に上昇することが示されている。
【0035】
図3の下段は、セル電圧と時間(t)との関係を示す図である。図3の下段に示す縦軸は、セル電圧(V)を表し、横軸は時間(t)を表す。図3の下段には、定電流制御の期間(CC充電)においてセル電圧が徐々に上げられることが示されている。
【0036】
(定電圧充電制御部8e)
定電圧充電制御部8eは、定電流充電制御が停止された場合、かつ、判定部8cにより第1電圧値と第2電圧値との差分が所定範囲内であると判定された場合に、定電圧充電制御実行する。なお、以下の説明で、定電圧充電を「CV充電」という場合がある。
【0037】
定電圧充電制御部8eは、一定の充電電圧値に基づいて、急速充電器BCからバッテリに電力を供給する定電圧充電制御を2回以上実行する。本実施の形態では、定電圧充電制御部8eは、定電圧充電制御を規定回数繰り返し実行する。定電圧充電制御部8eは、定電圧充電制御を繰り返し実行する中で、充電電流を下げていく充電制御である。繰り返し実行される定電圧充電制御における充電電流値は、当該定電圧充電制御が実行される回よりも前に実行された前回の定電圧充電制御における充電電流値から所定の電流値を減算した数値である。なお、充電電流値から減算する所定の電流値は、バッテリパック6の性能や、バッテリパック6を構成する材料等に応じており、実験やシミュレーションにより設定される。
【0038】
図3の上段に、定電圧充電制御を「疑似-CV充電」として示す。また、前回の定電圧充電制御における充電電流値から減算する所定の電流値を「ΔC」で示す。定電圧充電制御部8eは、定電圧充電制御が規定回数(図3の上段では、5回)繰り返された場合、定電圧充電制御を停止する。
【0039】
図4は、比較例における充電システムの制御の一例を示すタイムチャートである。図4の上段は、充電電流およびSOCのそれぞれと時間(t)との関係を示す図である。図4の上段に示す縦軸は、充電電流およびSOCのそれぞれを表し、横軸は時間(t)を表す。図4の上段では、充電電流が細線で示され、SOCが太線で示されている。また、図4の上段に、定電流制御の期間を「CC充電」で示す。図4の上段には、定電流制御の期間(CC充電)においては、充電電流が一定であることが示されている。
【0040】
図4の下段は、セル電圧と時間(t)との関係を示す図である。図4の下段に示す縦軸は、セル電圧(V)を表し、横軸は時間(t)を表す。図4の下段には、定電流制御の期間(CC充電)においては、セル電圧が徐々に上げられることが示されている。
【0041】
CC充電においては、充電分極が発生する。これにより、バッテリの見かけの電圧が実際の電圧よりも高くなる。バッテリ管理部(BMS)は見かけの電圧を検出し、検出した見かけの電圧に基づいてバッテリが満充電であるか否かを判定し、満充電前に満充電であると判定する場合があるため、バッテリを満充電することができない。なお、図4の上段に示すように、比較例において、CC充電後に1回の押し込み充電が行われるが、バッテリを満充電することができない。
【0042】
これに対し、出願人は、実験データを分析、考察した結果、定電流充電制御の停止後に見かけの電圧が実際の電圧とほぼ同じ電圧まで下がることの知見を得た。これにより、本実施の形態では、定電流充電制御の停止時から所定時間経過するまでの待機時間を設けた。さらに、出願人は、定電圧充電制御の停止後においても、見かけの電圧が実際の電圧とほぼ同じ電圧まで下がるとの知見を得た。そこで、本実施の形態では、定電圧充電制御においては、充電電流値を徐々に下げていくことにより定電圧充電制御を2回以上実行する。以上により、充電分極の発生を抑制しつつ、バッテリを満充電することを可能とした。
【0043】
バッテリ管理部10および車両制御部8を構成する各装置は、単一の装置で構成されてもよく、別々の装置として構成されてもよい。また、各装置を組み合わせたものと、他の一つの装置で構成されてもよい。図2に示すバッテリ管理部10および車両制御部8を構成する各装置は、複数の異なるプロセッサの中の少なくともいずれかのプロセッサがプログラムを実行することによって実現される。なお、バッテリ管理部10および車両制御部8は、例えば複数のプロセッサやメモリ等の計算リソースによって実現されてもよい。
【0044】
次に、本実施の形態における車両制御部8(VCU)の動作の一例について図5および図6を参照して説明する。図5は、本実施の形態における充電システムの制御の一例を示すフローチャートである。図5に示すフローは、充電システム1に充電器BCが接続された場合に開始される。
【0045】
先ず、ステップS110において、車両制御部8は、目標電圧をセットする。
【0046】
次に、ステップS120において、定電流充電制御部8dは、定電流充電制御(CC充電)を開始する。
【0047】
次に、ステップS130において、判定部8cは、バッテリの電圧値が目標電圧に到達したか否かについて判定する。バッテリの電圧値が目標電圧に到達した場合(ステップS130:YES)、処理は、定電圧充電制御に遷移する。バッテリの電圧値が目標電圧に到達しない場合(ステップS130:NO)、処理は、ステップS130の前に戻る。
【0048】
ステップS140において、定電圧充電制御(擬似CV充電)が実行される(図6を参照)。
【0049】
次に、ステップS150において、定電圧充電制御部8eは規定条件を満たしたか否かについて判定する。具体的には、定電圧充電制御部8eは充電電流が所定電流以下であり、かつ、定電圧充電制御が規定回数実行されたか否について判定する。規定条件を満たした場合(ステップS150:YES)、処理は、ステップS160に遷移する。規定条件を満たしていない場合(ステップS150:NO)、処理は、ステップS140の前に戻る。
【0050】
ステップS160において、定電圧充電制御部8eは、満充電判定をし、定電圧充電制御を終了する。その後、本フローも終了する。
【0051】
図6は、本実施の形態における充電システムの定電圧充電制御の一例を示すフローチャートである。図6に示すフローは、定電流充電制御においてバッテリの電圧値が目標電圧に到達した場合(図5に示すステップS150:YES)に擬似CV充電が開始される。
【0052】
先ず、ステップS210において、定電流充電制御が停止される。
【0053】
次に、ステップS220において、定電圧充電制御部8eは、所定時間だけ待機する(図6に示す「Wait」)。
【0054】
次に、ステップS230において、判定部8cは、第1電圧値と第2電圧値との差分が所定範囲内であるか否かを判定する。差分が所定範囲内である場合(ステップS230:YES)、処理はステップS240に遷移する。差分が所定範囲内でない場合(ステップS230:NO)、処理はステップS230の前に戻る。図6に、見かけの電圧である第1電圧値を「CCV」、実際の電圧である第2電圧値を「OCV」で示す。また、図6に、差分が所定範囲内であることを「CCV≒OCV」で示し、差分が所定範囲外であることを「CCV≠OCV」で示す。
【0055】
ステップS240において、定電圧充電制御部8eは、定電圧充電制御を再開する。なお、再開時の定電圧充電制御における充電指示値(充電電流値)は、前回の定電圧充電制御における前回値(充電電流値)から所定の充電値を減算し数値である。図6に、充電指示値に基づく充電を「CC充電」で示す。また、前回値から所定の充電値を減算し数値を「前回値-**A」で示す。
【0056】
次に、ステップS250において、判定部8cは、バッテリの電圧値が目標電圧に到達したか否かを判定する。バッテリの電圧値が目標電圧に到達した場合(ステップS250:YES)、本フローは終了する。バッテリの電圧値が目標電圧に到達しない場合(ステップS250:NO)、処理は、ステップS250の前に戻る。
【0057】
上記実施の形態における充電システム1は、EVの駆動用のバッテリに、EVの外部に設置された急速充電器BCから電力を供給する充電システムであって、一定の充電電流値に基づいて、急速充電器BCからバッテリに電力を供給する定電流充電制御を実行する定電流充電制御部8dと、バッテリの電圧値が予め定められた目標電圧値に到達し、定電流充電制御が停止された場合、一定の充電電圧値に基づいて、急速充電器BCからバッテリに電力を供給する定電圧充電制御を2回以上実行する定電圧充電制御部8eと、を備える。
【0058】
上記構成により、定電流充電制御を実行した後に、定電圧充電制御を2回以上実行することにより、充電分極の発生を抑制しつつ、バッテリを満充電することが可能となる。
【0059】
また、上記実施の形態における充電システム1では、定電流充電制御が停止された停止時のバッテリの電圧値である第1電圧値、および、停止時から所定時間経過後におけるバッテリの電圧値である第2電圧値を取得する取得部8bと、取得された第1電圧値と第2電圧値との差分が所定範囲内であるか否かを判定する判定部8cと、をさらに備え、定電圧充電制御部8eは、差分が所定範囲内であると判定された場合、所定の充電電流値に基づいて定電圧充電制御を実行する。これにより、バッテリの見かけの電圧が実際の電圧とほぼ同じ電圧まで下がってから、定電圧充電制御が実行されるため、充電分極の発生を抑制することが可能となる。
【0060】
また、上記実施の形態における充電システム1では、2回以上実行される定電圧充電制御における充電電流値は、当該定電圧充電制御が実行される回よりも前に実行された前回の定電圧充電制御における充電電流値から所定の電流値を減算した数値である。充電電流値を徐々に下げていくことにより定電圧充電制御を2回以上実行することができるため、バッテリを満充電することが可能となる。
【0061】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示は、充電分極の発生を抑制しつつ、満充電することが要求される充電システムを備えた電気自動車に好適に利用される。
【符号の説明】
【0063】
1 充電システム
2 外部負荷
6 バッテリパック
6a セル
6b バッテリリレー(+)
6c バッテリリレー(-)
7 ジャンクションボックス(JB)
7L 高電圧ライン
8 車両制御部(VCU)
8a 通信部
8b 取得部
8c 判定部
8d 定電流充電制御部
8e 定電圧充電制御部
8f 記憶部
10 バッテリ管理部(BMS)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車の駆動用のバッテリに、電気自動車の外部に設置された急速充電器から電力を供給する充電システムであって、
一定の充電電流値に基づいて、前記急速充電器から前記バッテリに電力を供給する定電流充電制御を実行する定電流充電制御部と、
前記バッテリの電圧値が予め定められた目標電圧値に到達し、前記定電流充電制御が停止された場合、一定の充電電圧値に基づいて、前記急速充電器から前記バッテリに電力を供給する定電圧充電制御を2回以上実行する定電圧充電制御部と、
を備え
前記定電圧充電制御部は、前記定電圧充電制御を繰り返し実行する毎に、実行される回よりも前に実行された前回の前記定電圧充電制御における充電電流値から所定の電流値を減算し、減算した数値が所定電流以下であり、かつ、前記定電圧充電制御が規定回数実行された場合、前記定電圧充電制御を停止する、
充電システム。
【請求項2】
前記定電流充電制御が停止された停止時の前記バッテリの電圧値である第1電圧値、および、前記停止時から所定時間経過後における前記バッテリの電圧値である第2電圧値を取得する取得部と、
取得された前記第1電圧値と前記第2電圧値との差分が所定範囲内であるか否かを判定する判定部と、
をさらに備え、
前記定電圧充電制御部は、前記差分が所定範囲内であると判定された場合、前記定電圧充電制御を実行する、
請求項1に記載の充電システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示における充電システムは、
電気自動車の駆動用のバッテリに、電気自動車の外部に設置された急速充電器から電力を供給する充電システムであって、
一定の充電電流値に基づいて、前記急速充電器から前記バッテリに電力を供給する定電流充電制御を実行する定電流充電制御部と、
前記バッテリの電圧値が予め定められた目標電圧値に到達し、前記定電流充電制御が停止された場合、一定の充電電圧値に基づいて、前記急速充電器から前記バッテリに電力を供給する定電圧充電制御を2回以上実行する定電圧充電制御部と、
を備え
前記定電圧充電制御部は、前記定電圧充電制御を繰り返し実行する毎に、実行される回よりも前に実行された前回の前記定電圧充電制御における充電電流値から所定の電流値を減算し、減算した数値が所定電流以下であり、かつ、前記定電圧充電制御が規定回数実行された場合、前記定電圧充電制御を停止する。