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特開2024-158375流体殺菌装置および流体殺菌システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158375
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】流体殺菌装置および流体殺菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20241031BHJP
   A61L 2/24 20060101ALI20241031BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20241031BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L2/24
C02F1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073527
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】宇和川 智
(72)【発明者】
【氏名】松友 伸司
(72)【発明者】
【氏名】大崎 和隆
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 正純
【テーマコード(参考)】
4C058
4D037
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058DD02
4C058DD04
4C058DD05
4C058DD07
4C058DD13
4C058KK02
4C058KK14
4C058KK46
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
(57)【要約】
【課題】光源の冷却を殺菌の対象である流体で行う流体殺菌装置において、流体の流通の再開時に、菌が繁殖した水が流体殺菌装置から流出することを抑制することができる流体殺菌装置を提供すること。
【解決手段】流体殺菌装置は、紫外線を発する光源を、当該紫外線による殺菌の対象である流体によって冷却する流体殺菌装置において、光源と、光源の点灯を制御する点灯制御部と、備え、点灯制御部は、流体が流通していないときに、前記流体が流通していない時間のうちの一部分の時間だけ、前記光源の全部または前記光源の少なくとも一部を点灯させる制御、および、光源の発光量が、流体が流通しているときの光源の発光量未満の発光量になるように、光源に印可する電圧値および光源に印可する電流値のうちの少なくとも一方を変更して点灯させる制御、のうちの少なくとも一方の制御をおこなう。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線を発する光源を、当該紫外線による殺菌の対象である流体によって冷却する流体殺菌装置において、
光源と、
前記光源の点灯を制御する点灯制御部と、備え、
前記点灯制御部は、流体が流通していないときに、
前記流体が流通していない時間のうちの一部分の時間だけ、前記光源の全部または前記光源の少なくとも一部を点灯させる制御、
および、
前記光源の発光量が、前記流体が流通しているときの前記光源の発光量未満の発光量になるように、前記光源に印可する電圧値および前記光源に印可する電流値のうちの少なくとも一方を変更して点灯させる制御、のうちの少なくとも一方の制御をおこなう、流体殺菌装置。
【請求項2】
前記光源は光源実装基板に取り付けられ、
前記光源実装基板には温度センサが取り付けられ、
前記点灯制御部は、前記温度センサの検出値が設定温度以下になるように、前記光源の点灯時間、点灯パルス幅、前記光源に印可する電圧、および前記光源に印可する電流値のうちの少なくとも1つを決定する、請求項1に記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
紫外線を発する光源を、当該紫外線による殺菌の対象である流体によって冷却する流体殺菌装置を含む流体殺菌システムであって、前記流体を、前記流体殺菌装置の下流側から前記流体殺菌装置の上流側に戻す循環経路を有する、流体殺菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体殺菌装置および流体殺菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光源が発する光の殺菌力を用いて流体を殺菌する技術が知られている。特許文献1には、流路を流れる流体に紫外線を照射して流体を殺菌する流体殺菌装置について、光源の背面に対して垂直に流体が流入する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6458779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光源は、光を発するときに発熱する。特に、光源として紫外線を発するUV-LEDを用いる場合には、UV-LEDは発熱量が多く、自身が発した熱によってUV-LEDの急激な劣化や出力の低下が生じる。そのため、UV-LEDを光源として用いる流体殺菌装置では、光源を冷却する必要がある。光源の冷却を殺菌の対象である流体で行う技術がある。ただし、この技術では、流体殺菌装置において流体が流通していないときに、光源を冷却する能力が低下する。そのため、光源を消灯する必要がある。その結果、流路内に滞留する流体に菌が繁殖しやすくなる。そして、流体の流通を再開したときに、繁殖した菌を含む流体が流体殺菌装置から流出する。
【0005】
UV-LEDを光源として用いる従来の流体殺菌装置には、流体の流通を再開したときに、繁殖した菌を含む流体が流出しやすいとの課題がある。そこで本発明は、光源の冷却を殺菌の対象である流体で行う流体殺菌装置において、流体の流通の再開時に、繁殖した菌を含む流体が流体殺菌装置から流出することを抑制することができる流体殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流体殺菌装置は、紫外線を発する光源を、当該紫外線による殺菌の対象である流体によって冷却する流体殺菌装置において、光源と、光源の点灯を制御する点灯制御部と、備え、点灯制御部は、流体が流通していないときに、光源が複数配置されているときには、前記流体が流通していない時間のうちの一部分の時間だけ、前記光源の全部または前記光源の少なくとも一部を点灯させる制御、および、光源の発光量が、流体が流通しているときの光源の発光量未満の発光量になるように、光源に印可する電圧値および光源に印可する電流値のうちの少なくとも一方を変更して点灯させる制御、のうちの少なくとも一方の制御をおこなう。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光源の冷却を殺菌の対象である流体で行う流体殺菌装置において、流体の流通の再開時に、菌が繁殖した水が流体殺菌装置から流出することを抑制することができる流体殺菌装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】流体殺菌装置の内部構造を示す断面図である。
図2】光源の制御に関する部分の構成の概略を示すブロック図である。
図3】流体殺菌システムの構成の概略を示す図である。
図4】流体殺菌システムの他の例の構成の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態の流体殺菌装置1の内部構造を示す断面図である。
【0010】
各図にXYZ座標系を記載する。X方向は、後に説明する照射流路部10の延びる方向である。Z方向は、後に説明する第2の流路P2の延びる方向である。なお、XYZ座標系は、X方向、Y方向およびZ方向が厳密に直交することを示すために記載するものではない。XYZ座標系は、X方向、Y方向およびZ方向が、おおよそ直交するように交わる関係であることを示すために記載するものである。
【0011】
流体殺菌装置1は、流体を殺菌する装置である。殺菌の対象となる流体を処理流体ということがある。処理流体の例としては、水がある。流体殺菌装置1は、処理流体に紫外線を照射することによって流体を殺菌する。
【0012】
図1に示すように、流体殺菌装置1は、照射流路部10および流出入部20を含む。照射流路部10は、その内部にある処理流体を殺菌する部分である。照射流路部10は、管状の部材によって構成されている。
【0013】
照射流路部10の内部は、流体の流路になっている。照射流路部10の内部の流路を、照射流路P1とする。
【0014】
照射流路部10のX方向における両端には、それぞれ流出入部20が配置されている。2つの流出入部20は、照射流路部10をはさんで、対向して配置されている。流出入部20は、外部から流体が流入し、また外部へ流体が流出する部分である。また、流出入部20は、照射流路部10に流体を流入させ、また、照射流路部10から流体を流出させる部分でもある。
【0015】
流出入部20には、光源50が配置されている。光源50は、紫外線を発光する部品である。光源50は、UV(Ultraviolet)-LED(Light Emitting Diode)とすることができる。光源50は、複数配置されていてもよい。
【0016】
光源50は、光源収容室52の内部に配置されている。光源50を光源収容室52の内部に配置することによって、光源50が流体に接しないようにすることができる。
【0017】
光源50は、光源実装基板51などに実装されていてもよい。光源50と、光源50が実装された光源実装基板51とをあわせた部品を、面光源モジュール53とする。
【0018】
光源50または面光源モジュール53は、光源収容室52の内面に接するように配置されている。光源50または面光源モジュール53を光源収容室52の内面に接するように配置することによって、光源50の熱を流体に効率的に逃がすことができる。
【0019】
光源50は、光源収容室52に、照射流路部10に向かって発光するように配置されている。これにより、光源50からの光は、照射流路部10に照射される。
【0020】
流出入部20には、流出入口22が設けられている。流出入口22は、流出入部20の内部に、流体を流入させるための開口である。また、流出入口22は、流出入部20の内部から、流体を流出させるための開口でもある。
【0021】
流出入部20には、2つの流出入口22が設けられている。図1において、X方向のマイナス側に配置されている流出入部20Aを例にして説明する。流出入部20Aには、Z方向の両端にそれぞれ流出入口22が設けられている。Z方向のマイナス側に端に設けられている流出入口22を流出入口22Aで示す。Z方向のプラス側の端に設けられている流出入口22を流出入口22Bで示す。
【0022】
流出入部20に2つの流出入口22が設けられている場合、その一方を閉止することによって、1つの流体殺菌装置1を単独で用いることができる。図1に、流出入口22を閉止して流体殺菌装置1を用いる場合の一例を示す。
【0023】
図1に示す流出入部20Aでは、流出入口22Bが閉止されている。流出入口22の閉止は、流出入口22に閉口部材28を配置することによって行うことができる。閉口部材28は、流出入口22をふさぐための蓋体である。
【0024】
図1に示す例では、X方向のプラス側に流出入部20Aと同様の構造を有する流出入部20が配置されている。X方向のプラス側に配置されている流出入部20を、流出入部20Bとする。
【0025】
流出入部20Bには、流出入部20Aと同様に、Z方向の両端にそれぞれ流出入口22が設けられている。Z方向のマイナス側に端に設けられている流出入口22を流出入口22Cで示す。また、Z方向のプラス側の端に設けられている流出入口22を流出入口22Dで示す。
【0026】
流出入部20Bにおいては、流出入口22Cに閉口部材28が配置されることによって、流出入口22Cが閉止されている。
【0027】
以下、流体殺菌装置1のおける流体の流れを説明する。図1の矢印は、流体が流れる方向を示している。流体は、照射流路P1を流れる間に紫外線の照射を受けることによって殺菌される。流体は、矢印A1に示すように、照射流路P1を、X方向のマイナス側からプラス側に向かう方向に流れる。
【0028】
照射流路部10の2つの端部に配置されている流出入部20Aおよび流出入部20Bには、それぞれ光源50が配置されている。流出入部20Aに配置されている光源50を第1の光源50Aとする。流出入部20Bに配置されている光源50を第2の光源50Bとする。第1の光源50Aは、照射流路部10の上流側に配置された光源50である。第2の光源50Bは、照射流路部10の下流側に配置された光源50である。第1の光源50Aおよび第2の光源50Bは、いずれも、照射流路P1に向けて紫外線を照射するように配置されている。照射流路P1を流れる流体は、X方向におけるプラス側から、およびマイナス側からの2方向からの照射によって殺菌される。なお、光源50は、流出入部20Aおよび流出入部20Bのうちのいずれか一方に配置されていてもよい。
【0029】
流体は、流出入部20Aの流出入口22Aから、流出入部20の内部に流入する。流出入部20の内部には、Z方向に延びる流路が形成されている。この流路を、第2の流路P2とする。流出入部20に流入した流体は、矢印A2が示すように、第2の流路P2を、Z方向のマイナス側からプラス側に向けて流れる。
【0030】
流出入部20Aの流出入口22Bは閉止されている。そのため、流出入部20に流入した流体は、矢印A2の方向から、矢印A3の方向に流れの向きを変える。
【0031】
その後、流体は、面光源モジュール53を回り込むように、矢印A4に示すようにZ方向に流れたのち、照射流路部10に流入する。
【0032】
照射流路部10のX方向のプラス側の端部には、流出入部20Bが配置されている。流出入部20Bは、流出入部20Aと同様の構造を有している。流出入部20Bにおける流体の流れは、おおよそ、流出入部20Aにおける流体の流れの逆となる。具体的には、流体は、矢印A5、矢印A6、および矢印A7のように流れ、流出入口22Dから排出される。
【0033】
以下、光源50の点灯制御について説明する。殺菌の対象である流体を用いて光源50のLEDを冷却する、UV-LEDを光源とする流体殺菌装置1では、流体が流通していないときには、光源50を十分に冷却することができない。そのため、流体が流通していないときは、流体が流通しているときと同じ出力で流体にUVを常時照射することができない。流通せずに滞留している流体にUVを照射しないと、流体の中に菌が繁殖する。そのため、流体が再び流通し始めたときに、繁殖した菌を含む流体が流体殺菌装置1から流出する。
【0034】
流体が再び流通し始めたときに、繁殖した菌を含む流体が流体殺菌装置1から流出することを抑制する方法として、例えばつぎの4つの方法がある。第1の方法は、流体を再び流通させる直前に光源50を点灯する方法である。第2の方法は、流体殺菌装置1に流体が流通していないときに、流体が流通しているときよりも低い出力で光源を常時点灯させる方法である。第3の方法は、流体殺菌装置1に流体が流通していないときに、光源50を間欠点灯させる方法である。第4の方法は、流体殺菌システムにおいて、循環経路を用いる方法である。以下、順に説明する。
【0035】
第1の方法を説明する。第1の方法は、流体を再び流通させる直前に光源50を点灯する方法である。この方法では、流通せず滞留している流体に対して光源50の熱を放熱する。流体は流通していないが、光源50の点灯時間を短くすることによって、光源50の温度を、光源50の劣化が進まない温度に保つことができる。
【0036】
流体が流通していないときに流体にUVを照射することによって、流体が再び流通し始めたときに流出する流体が、多くの菌を含むことを防止することができる。
【0037】
光源50の制御を、図2に基づいて説明する。図2は、光源50の制御に関する部分の構成の概略を示すブロック図である。図2に示すように流体殺菌装置1は、装置制御部60を含む。装置制御部60は、流体殺菌装置1の全体を制御する部分である。
【0038】
装置制御部60には、点灯制御部62が接続されている。点灯制御部62は、光源50の点灯および消灯を制御する部分である。点灯制御部62は、光源50に接続されている。点灯制御部62は、点灯時間、点灯パルス幅、印可する電圧、および印可する電流のうちの少なくとも一つによって光源50の点灯などを制御する。
【0039】
装置制御部60は、流体が流通していない状態から、流体の流通を再開させる際に、流通再開信号を点灯制御部62に送信する。点灯制御部62は、流通再開信号を受信すると、光源50が通常の発光量で発光するように、光源50を制御する。
【0040】
本実施形態の流体殺菌装置1では、装置制御部60は、流通再開信号を点灯制御部62に送信する前に、再開前殺菌信号を点灯制御部62に送信する。点灯制御部62は、再開前殺菌信号を受信すると、光源50が通常の発光に先立って発光するように、光源50を制御する。流通再開信号の送信と、再開前殺菌信号の送信との間隔は、流通再開前に光源50を発光させる時間の長さに応じて決めることができる。
【0041】
光源50を発光させる時間の長さを、既定の照射量を確保するように決定してもよい。既定の照射量とは、例えば、UV耐性の強い枯草菌芽胞を99.9%殺菌できる照射量である、36mJ/cmとすることができる。そして、このような既定の照射量が確保されるように、点灯時間などを決定する。
【0042】
2つ目の方法を説明する。流体殺菌装置1に流体が流通していないときに、流体が流通しているときよりも低い出力で光源を常時点灯させる方法である。流体が流通していない時は、UVを流体に照射する時間が長くなるため、光源の出力は、流体が流通している場合と比べて低くてもよい。光源の出力を低くすると、光源の温度上昇を抑制することができる。
【0043】
流体が流通しているときと比べて低い出力で光源50を点灯させることによって、流体が流通していないときであっても、光源50を点灯させることができる。流通せず流体殺菌装置1の内部に滞留している流体を殺菌することによって、流体が再び流通し始めたときに流出する流体の中の菌の数を抑制することができる。
【0044】
光源50の点灯について行う制御の例を説明する。
【0045】
1つの制御は、光源50が面光源モジュール53に複数個配置されている場合に、点灯制御部62が、複数の光源50のうちの一部のみを点灯させる制御である。
【0046】
もう1つの制御は、点灯制御部62が、流体が流通しているときの光源50の発光量未満の発光量で光源50が発光するように、光源50を点灯させる制御である。光源50の発光量の調整は、光源に印可する電圧値および前記光源に印可する電流値のうちの少なくとも一方を変更することで、行うことができる。
【0047】
第2の方法において、既定の照度を確保するように決定してもよい。例えば、UV耐性の強い枯草菌芽胞の増殖を抑制することができる4μW/cmを確保することが可能な時間とすることができる。
【0048】
第3の方法を説明する。第2の方法は、流体殺菌装置1に流体が流通していないときに、光源50を間欠点灯させる方法である。間欠点灯では、光源50を連続して点灯させる場合に比べて、光源50の温度が上昇しにくい。そのため、流体が流通していないときであっても、光源50の温度を、光源50の劣化が進まない範囲に保つことができる。
【0049】
光源50を間欠点灯させることによって、流体が流通していないときであっても、光源50を点灯させることができる。流通せず流体殺菌装置1の内部に滞留している流体を殺菌することによって、流体が再び流通し始めたときに流出する流体の中の菌の数を抑制することができる。
【0050】
間欠点灯における点灯時間は、流体殺菌装置1の内部、特には、照射流路部10の内部にある流体の量に応じて決定してもよい。点灯時間を、流体殺菌装置1の内部の流体の量に応じて決定することによって、間欠点灯における単位時間当たりの点灯時間をより適切に決定することができる。なお、間欠点灯は、パルス点灯であってもよい。
【0051】
第2の方法および第3の方法における光源50の点灯時間、点灯パルス幅、光源50への入力値などを決定する方法の例を説明する。
【0052】
温度センサを用いる方法を説明する。図2に示すように、光源50には温度センサ64を配置することができる。光源50への温度センサ64の配置は、温度センサ64を光源実装基板51に配置することなどによって行うことができる。温度センサ64が検出した温度を検出値とする。検出値は、点灯制御部62に入力される。点灯制御部62は、検出値が設定温度以下になるように点灯時間、点灯パルス幅、光源50への入力値などを決定する。
【0053】
つぎに、流体殺菌装置1の中に残留する流体の量に基づいて、点灯時間などを決定する方法を説明する。流体が吸収することができる熱量は、流体の量に比例する。そこで、流体殺菌装置1の中に残留する流体の量から、光源50の温度が規定の温度に上がるまでに必要な熱量を計算する。そして、計算された熱量および流体の流通が停止している間の時間に基づいて、光源50の温度が設定値を越えないように点灯時間などを決定する。
【0054】
また、単位時間当たりの既定の照射量を確保するように、点灯時間などを決定してもよい。
【0055】
また、温度センサ64が取り付けられている場合には、流体が流通していないときに、光源50を点灯させたのちに、光源50が許容される温度まで上昇したとき点灯を停止するようにしてもよい。
【0056】
また、光源50の点灯時間および非点灯時間は、外気温または流体の温度に応じて、増減させてもよい。
【0057】
第4の方法を説明する。第4の方法は、流体殺菌システムにおいて、循環経路を用いる方法である。図3および図4を参照して説明する。図3および図4は、流体殺菌システム5の構成の概略を示す図である。流体殺菌システム5は、流体の貯蔵、殺菌、および供給を含む流体殺菌の全体の仕組みをいう。流体殺菌システム5は、流体殺菌装置1、タンク32、およびユースポイント34などを含む。タンク32は、流体を貯蔵する容器である。ユースポイント34は、流体の使用箇所である。
【0058】
図3に示す流体殺菌システム5について説明する。タンク32とユースポイント34とは、第1の経路36を介して接続されている。第1の経路36の矢印は、流体が流れる方向を示す。流体は、タンク32からユースポイント34の方向に流れる。
【0059】
第1の経路36には、流体殺菌装置1が配置されている。ユースポイント34には、流体殺菌装置1で殺菌された流体が流入する。これにより、ユースポイント34において、殺菌された流体を使用することができる。
【0060】
第1の経路36におけるタンク32と流体殺菌装置1との間には、タンク32側から順に、第1のポンプ42および第1のバルブ46が配置されている。また、流体殺菌装置1とユースポイント34との間には、第2のバルブ48が配置されている。
【0061】
図3に示す流体殺菌システム5は、循環経路30を含む。循環経路30は、その経路の途中に流体殺菌装置1を含む環状の経路である。流体は、循環経路30を循環することによって、ユースポイント34に流入することなく、流体殺菌装置1を流れることができる。
【0062】
図3に示す循環経路30は、第2の経路38を含む。第2の経路38は、流体殺菌装置1の下流の分岐点B1において第1の経路36から分岐する。第2の経路38は、流体殺菌装置1の上流の合流点C1において第1の経路36に合流する。循環経路30は、第2の経路38、および合流点C1から分岐点B1までの第1の経路36によって形成されている。
【0063】
第2の経路38には、第2のポンプ44が配置されている。また、第2のポンプの上流側と下流側の両方に、それぞれ第3のバルブ56および第4のバルブ58が配置されている。第2の経路38の矢印は、流体が流れる方向を示す。流体は、分岐点B1から合流点C1の方向に第2の経路38を流れる。
【0064】
流体が流通しているときの流体の流れ、および流体が流通していないときの流体の流れについて説明する。
【0065】
流体が流通しているとき、第1のバルブ46および第2のバルブ48はいずれも開いている。また、第1のポンプ42は駆動しており、第2のポンプ44は駆動していない。流体は、タンク32から、第1のポンプ42、第1のバルブ46、流体殺菌装置1、および第2のバルブ48を順に経て、ユースポイント34に流入する。第3のバルブ56および第4のバルブ58はいずれも閉じられている。そのため、流体は、第2の経路38には流入しない。すなわち、流体は、循環経路30を循環しない。
【0066】
流体が流通していないとき、第1のバルブ46および第2のバルブ48はいずれも閉じている。また、第1のポンプ42は駆動していない。これにより、流体は、タンク32からユースポイント34には流入しない。
【0067】
一方、第2のポンプ44は駆動しており、第3のバルブ56および第4のバルブ58はいずれも開いている。そのため、流体は、循環経路30を循環する。
【0068】
流体が循環経路30を循環することによって、流体が流体殺菌システム5を流通していないときであっても、流体が流体殺菌装置1を通過するようにすることができる。これによって、光源50の温度上昇を抑制することができる。そのため、流体が流体殺菌システム5を流通していないときであっても、光源50を点灯させることができる。
【0069】
流体が流通していないときに流体にUVを照射することによって、流体殺菌装置1内の流体に、菌が繁殖することを抑制することができる。
【0070】
図4に基づいて、循環経路30の他の構成について説明する。図4は、流体殺菌システム5の他の例の概要を示す図である。以下、図3に示した流体殺菌システム5と異なる点を中心に説明する。
【0071】
図4に示す循環経路30は、第3の経路40を含む。第3の経路40は、図3に示した第2の経路38と、合流点の位置が異なる。第2の経路38では、合流点C1は、第1の経路36における流体殺菌装置1の上流位置に配置されていた。これに対して、第3の経路40の合流点C2は、タンク32に配置されている。そのため、循環経路30は、第3の経路40、タンク32、およびタンク32から分岐点B1までの第1の経路36によって形成されている。
【0072】
図4に示す流体殺菌システムにおける流体の流れについて説明する。図4に示す流体殺菌システムでは、常に第1のポンプ42が駆動している。流体殺菌装置1の下流の分岐点B1から、第3の経路40が分岐している。
【0073】
ユースポイントに流体を供給しない場合は、第2のバルブ48は閉じられており、流体は、タンク32から、第1のポンプ42、流体殺菌装置1、第3の経路40を流れ、タンク32に流入する。これにより、流体は、循環経路30をタンク32、第1の経路36、流体殺菌装置1、第3の経路40、およびタンク32の順に循環する。
【0074】
ユースポイント34に水を供給する場合は、第2のバルブ48を開くことで、ユースポイント34に水を供給する。ユースポイント34に水を供給する場合においても、ユースポイント34に供給されない一部の流体は、循環経路30をタンク32、第1の経路36、流体殺菌装置1、第3の経路40、およびタンク32の順に循環する。
【0075】
流体が循環経路30を循環することによって、流体が流体殺菌システム5を流通していないときであっても、流体が流体殺菌装置1を通過するようにすることができる。これによって、光源50の温度上昇を抑制することができる。そのため、流体が流体殺菌システム5を流通していないときであっても、光源50を点灯させることができる。
【0076】
流体が流通していないときに流体にUVを照射することによって、流体殺菌装置1内の流体に、菌が繁殖することを抑制することができる。
【0077】
以上のように、図3および図4に示す流体殺菌システム5においては、流体殺菌システム5の全体の流体の流通が停止しているときに、流体殺菌装置1を含む循環経路を流体が循環する。循環する流体によって光源50が冷却されるため、流体殺菌システム5の全体の流体の流通が停止したときであっても、光源50を点灯させることができる。これにより、流体が再び流通し始めたときに流出する流体が、多くの菌を含むことを抑制することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、種々の変更、変形及び組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 流体殺菌装置
5 流体殺菌システム
10 照射流路部
20 流出入部
22 流出入口
30 循環経路
32 タンク
34 ユースポイント
36 第1の経路
38 第2の経路
40 第3の経路
42 第1のポンプ
44 第2のポンプ
46 第1のバルブ
48 第2のバルブ
50 光源
50A 第1の光源
50B 第2の光源
51 光源実装基板
52 光源収容室
53 面光源モジュール
60 装置制御部
62 点灯制御部
64 温度センサ
図1
図2
図3
図4