(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158376
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】流体殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/10 20060101AFI20241031BHJP
C02F 1/32 20230101ALI20241031BHJP
A61L 2/24 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61L2/10
C02F1/32
A61L2/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073528
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】宇和川 智
(72)【発明者】
【氏名】松友 伸司
(72)【発明者】
【氏名】大崎 和隆
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 正純
【テーマコード(参考)】
4C058
4D037
【Fターム(参考)】
4C058AA20
4C058BB06
4C058CC02
4C058DD01
4C058DD07
4C058KK02
4C058KK32
4C058KK46
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
4D037BB01
4D037BB02
(57)【要約】
【課題】効率的に稼働させることができる流体殺菌装置を提供すること
【解決手段】流体殺菌装置は、処理流体が流れる照射流路部と、照射流路部の上流側および下流側に各々配置され、照射流路部に向けて紫外線を発する光源と、光源の点灯を制御する点灯制御部と、を備え、点灯制御部は、光源に対する出力の要求が低い場合に、上流側の光源から出力を低下させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理流体が流れる照射流路部と、
前記照射流路部の上流側および下流側に各々配置され、前記照射流路部に向けて紫外線を発する光源と、
前記光源の点灯を制御する点灯制御部と、を備え、
前記点灯制御部は、光源に対する出力の要求が低い場合に、前記上流側の光源から出力を低下させる、流体殺菌装置。
【請求項2】
前記点灯制御部は、前記光源に対する出力の要求が低い場合に、前記上流側の光源の出力を停止させたのちに、前記下流側の光源の出力を低下させる、請求項1に記載の流体殺菌装置。
【請求項3】
前記点灯制御部は、前記処理流体の流量、および前記処理流体のUV透過率のうちの少なくとも一方に応じて前記光源に対する出力の要求量を計算し、前記出力を変化させる、請求項1または2に記載の流体殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光源が発する光の殺菌力を用いて処理流体を殺菌する技術が知られている。特許文献1には、流路を流れる処理流体に紫外線を照射して処理流体を殺菌する流体殺菌装置について、流路部材の上流側および下流側に光源が配置された構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流路における上流および下流に殺菌用の光源を設ける場合、各光源の殺菌効率は同じではない場合がある。従来、光源が配置された位置に応じて光源の点灯を制御する技術は提案されていない。そのため、光源が非効率に点灯される場合がある。
【0005】
そこで本発明は、効率的に稼働させることができる流体殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
流体殺菌装置は、処理流体が流れる照射流路部と、前記照射流路部の上流側および下流側に各々配置され、前記照射流路部に向けて紫外線を発する光源と、前記光源の点灯を制御する点灯制御部と、を備え、前記点灯制御部は、光源に対する出力の要求が低い場合に、前記上流側の光源から出力を低下させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、効率的に稼働させることができる流体殺菌装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】流体殺菌装置の内部構造を示す断面図である。
【
図2】光源の制御に関する部分の構成の概略を示すブロック図である。
【
図3】照射流路部などにおける流体の流速の分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態の流体殺菌装置1の内部構造を示す断面図である。
【0010】
各図にXYZ座標系を記載する。X方向は、後に説明する照射流路部10の延びる方向である。Z方向は、後に説明する第2の流路P2の延びる方向である。なお、XYZ座標系は、X方向、Y方向およびZ方向が厳密に直交することを示すために記載するものではない。XYZ座標系は、X方向、Y方向およびZ方向が、おおよそ直交するように交わる関係であることを示すために記載するものである。
【0011】
流体殺菌装置1は、流体を殺菌する装置である。殺菌の対象となる流体を処理流体ということがある。処理流体の例としては、水がある。流体殺菌装置1は、処理流体に紫外線を照射することによって流体を殺菌する。
【0012】
図1に示すように、流体殺菌装置1は、照射流路部10および流出入部20を含む。照射流路部10は、その内部にある処理流体を殺菌する部分である。照射流路部10は、管状の部材によって構成されている。
【0013】
照射流路部10の内部は、流体の流路になっている。照射流路部10の内部の流路を、照射流路P1とする。
【0014】
照射流路部10のX方向における両端には、それぞれ流出入部20が配置されている。2つの流出入部20は、照射流路部10をはさんで、対向して配置されている。流出入部20は、外部から流体が流入し、また外部へ流体が流出する部分である。また、流出入部20は、照射流路部10に流体を流入させ、また、照射流路部10から流体を流出させる部分でもある。
【0015】
流出入部20には、光源50が配置されている。光源50は、紫外線を発光する部品である。光源50は、UV(Ultraviolet)-LED(Light Emitting Diode)とすることができる。光源50は、複数配置されていてもよい。
【0016】
光源50は、光源収容室52の内部に配置されている。光源50を光源収容室52の内部に配置することによって、光源50が流体に接しないようにすることができる。
【0017】
光源50は、光源実装基板51などに実装されていてもよい。光源50と、光源50が実装された光源実装基板51とをあわせた部品を、面光源モジュール53とする。
【0018】
光源50または面光源モジュール53は、光源収容室52の内面に接するように配置されている。光源50または面光源モジュール53を光源収容室52の内面に接するように配置することによって、光源50の熱を流体に効率的に逃がすことができる。
【0019】
光源50は、光源収容室52に、照射流路部10に向かって発光するように配置されている。これにより、光源50からの光は、照射流路部10に照射される。
【0020】
流出入部20には、流出入口22が設けられている。流出入口22は、流出入部20の内部に、流体を流入させるための開口である。また、流出入口22は、流出入部20の内部から、流体を流出させるための開口でもある。
【0021】
流出入部20には、2つの流出入口22が設けられている。
図1において、X方向のマイナス側に配置されている流出入部20Aを例にして説明する。流出入部20Aには、Z方向の両端にそれぞれ流出入口22が設けられている。Z方向のマイナス側に端に設けられている流出入口22を流出入口22Aで示す。Z方向のプラス側の端に設けられている流出入口22を流出入口22Bで示す。
【0022】
流出入部20に2つの流出入口22が設けられている場合、その一方を閉止することによって、1つの流体殺菌装置1を単独で用いることができる。
図1に、流出入口22を閉止して流体殺菌装置1を用いる場合の一例を示す。
【0023】
図1に示す流出入部20Aでは、流出入口22Bが閉止されている。流出入口22の閉止は、流出入口22に閉口部材28を配置することによって行うことができる。閉口部材28は、流出入口22をふさぐための蓋体である。
【0024】
図1に示す例では、X方向のプラス側に流出入部20Aと同様の構造を有する流出入部20が配置されている。X方向のプラス側に配置されている流出入部20を、流出入部20Bとする。
【0025】
流出入部20Bには、流出入部20Aと同様に、Z方向の両端にそれぞれ流出入口22が設けられている。Z方向のマイナス側に端に設けられている流出入口22を流出入口22Cで示す。また、Z方向のプラス側の端に設けられている流出入口22を流出入口22Dで示す。
【0026】
流出入部20Bにおいては、流出入口22Cに閉口部材28が配置されることによって、流出入口22Cが閉止されている。
【0027】
以下、流体殺菌装置1のおける流体の流れを説明する。
図1の矢印は、流体が流れる方向を示している。流体は、照射流路P1を流れる間に紫外線の照射を受けることによって殺菌される。流体は、矢印A1に示すように、照射流路P1を、X方向のマイナス側からプラス側に向かう方向に流れる。
【0028】
照射流路部10の2つの端部に配置されている流出入部20Aおよび流出入部20Bには、それぞれ光源50が配置されている。流出入部20Aに配置されている光源50を第1の光源50Aとする。流出入部20Bに配置されている光源50を第2の光源50Bとする。第1の光源50Aは、照射流路部10の上流側に配置された光源50である。第2の光源50Bは、照射流路部10の下流側に配置された光源50である。第1の光源50Aおよび第2の光源50Bは、いずれも、照射流路P1に向けて紫外線を照射するように配置されている。照射流路P1を流れる流体は、X方向におけるプラス側から、およびマイナス側からの2方向からの照射によって殺菌される。なお、光源50は、流出入部20Aおよび流出入部20Bのうちのいずれか一方に配置されていてもよい。
【0029】
流体は、流出入部20Aの流出入口22Aから、流出入部20の内部に流入する。流出入部20の内部には、Z方向に延びる流路が形成されている。この流路を、第2の流路P2とする。流出入部20に流入した流体は、矢印A2が示すように、第2の流路P2を、Z方向のマイナス側からプラス側に向けて流れる。
【0030】
流出入部20Aの流出入口22Bは閉止されている。そのため、流出入部20に流入した流体は、矢印A2の方向から、矢印A3の方向に流れの向きを変える。
【0031】
その後、流体は、面光源モジュール53を回り込むように、矢印A4に示すようにZ方向に流れたのち、照射流路部10に流入する。
【0032】
照射流路部10のX方向のプラス側の端部には、流出入部20Bが配置されている。流出入部20Bは、流出入部20Aと同様の構造を有している。流出入部20Bにおける流体の流れは、おおよそ、流出入部20Aにおける流体の流れの逆となる。具体的には、流体は、矢印A5、矢印A6、および矢印A7のように流れ、流出入口22Dから排出される。
【0033】
以下、光源50の点灯制御について説明する。本実施形態の流体殺菌装置1では、光源50が効率的に点灯される。それによれによって、少ない電力で適切な殺菌効果を得ることができる。
【0034】
具体的には、光源50が、照射流路部10の上流側および下流側に各々配置されている場合において、光源50は、光源50に対する出力の要求が低い場合に、照射流路部10の上流側に配置されている第1の光源50A、および照射流路部10の下流側に配置されている第2の光源50Bのうち、上流側の第1の光源50Aから出力を低下させる。
【0035】
また、光源50に対する出力の要求が低い場合に、上流側の第1の光源50Aの出力を停止させたのちに、下流側の第2の光源50Bの出力を低下させてもよい。
【0036】
また、処理流体の流量、または、処理流体のUV透過率に応じて、光源50に対する出力の要求量を計算する。そして、計算された要求量に基づいて、光源50に対する出力を変化させてもよい。
【0037】
以下、光源50の具体的な制御について、
図2に基づいて説明する。
図2は、光源50の制御に関する部分の構成の概略を示すブロック図である。
図2に示すように、流体殺菌装置1は、点灯制御部62を含む。点灯制御部62は、光源50の点灯および消灯を制御する部分である。点灯制御部62は、光源50に接続されている。点灯制御部62は、光源50に入力する電力を変更することによって、光源50の点灯などを制御する。光源50に入力する電力は、光源50に入力する電圧、および光源50に入力する電流を含む。光源50に入力する電力とは、光源50に印加する電圧をいう。光源50に入力する電流とは、光源50に流す電流を意味する。点灯制御部62は、光源50に印加する電圧の電圧値、および光源50に流す電流の電圧値のうちの少なくとも一方によって、光源50の点灯および消灯、ならびに点灯する場合の出力などを制御することができる。
【0038】
点灯制御部62は、光源50に要求される出力値に基づいて、光源50の点灯を制御する。例えば、光源50への出力の要求が低い場合には、点灯制御部62は、光源50の出力を低下させる。本実施形態の流体殺菌装置1では、照射流路部10の上流側に配置されている第1の光源50Aの出力を、照射流路部10の下流側に配置されている第2の光源50Bよりも、先に低下させる。これは、点灯制御部62が、処理流体が照射流路部10に導入される側の光源50に入力する電力から低下させることによって、行うことができる。
【0039】
上流側の第1の光源50Aの出力を先に低下させることによって、効率の良い殺菌を行うことができる。これは、照射流路部10の下流側の方が、上流側よりも、処理流体を効率よく殺菌することができるためである。これは、照射流路部10の上流側と下流側とで、処理流体の乱れ方が異なることによる。以下、
図3に基づいて説明する。
【0040】
図3は、照射流路部10などにおける処理流体の流速の分布を示す図である。
図3は、流体殺菌システム5のXZ断面を示している。処理流体は、
図3の矢印INの方向に流体殺菌装置1に流入し、矢印OUTの方向に流体殺菌装置1から流出する。その間、処理流体は、照射流路部10を矢印の方向に流れる。
【0041】
図3の領域R1は、照射流路部10の上流側を示す。
図3の領域R2は、照射流路部10の下流側を示す。
【0042】
図3に示すように、下流側R2の流速の均一さは、上流側R1の流速の均一さよりも高い。これは、下流側R2の方が、上流側R1よりも、処理流体の乱れが少ないことを意味する。処理流体の乱れが少ない方が、処理流体を効率よく殺菌することができる。
【0043】
表1に殺菌効率に関するデータを示す。
【表1】
表1の上流側点灯は、
図3の上流側R1の光源のみ点灯させた場合に対応する。表1の下流側点灯は、
図3の下流側R2の光源のみ点灯させた場合に対応する。同一の処理流量、かつ同一の光源への入力において、上流側点灯と下流側点灯での不活化率を比較すると、下流側点灯の方が不活化率が高い。すなわち、下流側点灯の方が、殺菌効率が高いことが分かる。なお、不活化率は、枯草菌芽胞(ATCC6633)を指標菌として測定した。また、不活化率は、つぎの式で求めた。不活化率=-log10(処理水の菌数/原水の菌数)。菌数の測定は、混釈法及びメンブレンフィルタ法によって測定した。
【0044】
そこで、光源50に対する出力の要求が低い場合には、上流側の光源50から光源50の出力を下げる。具体的には、点灯制御部62は、第1の光源50Aに入力する電力を低下させる。このように、殺菌の効率が低い方の光源50から出力を下げることで、より少ない電力で、適切な殺菌力を得ることができる。
【0045】
以上のように、処理流体が流れる照射流路部10があり、照射流路部10の両端に光源50が配置されている場合において、光源50の出力の要求が低いときには、処理流体が導入される側の光源50に入力する電力から低下させる。これによって、少ない電力で適切な殺菌効果をあげることができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、種々の変更、変形及び組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 流体殺菌装置
5 流体殺菌システム
10 照射流路部
20 流出入部
22 流出入口
30 循環経路
50 光源
50A 第1の光源
50B 第2の光源
51 光源実装基板
52 光源収容室
53 面光源モジュール
60 装置制御部
62 点灯制御部