(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158382
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】配線構造
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20241031BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241031BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241031BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H05K9/00 L
B60L3/00 H
B60L50/60
B60R16/02 620Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073535
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 太志
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓也
【テーマコード(参考)】
5E321
5H125
【Fターム(参考)】
5E321AA50
5E321GG05
5E321GH10
5H125AA01
5H125AC12
5H125FF01
5H125FF03
5H125FF04
(57)【要約】
【課題】ラジオノイズの発生を防止することが可能な配線構造を提供する。
【解決手段】配線構造は、車両に搭載され、シャーシグランドに接続されたシールドケースをそれぞれ有する2つの電気/電子コンポーネントと、中心導体と、当該中心導体を外周から被覆する外部導体とを有するシールド線と、を備え、シールド線の両端部は、2つのシールドケースのそれぞれに延ばされ、2つのシールドケースの少なくとも一方のシールドケースは、絶縁部を有し、一方のシールドケースに延ばされたシールド線の一端部における外部導体は、絶縁部に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、シャーシグランドに接続されたシールドケースをそれぞれ有する2つの電気/電子コンポーネントと、
中心導体と、当該中心導体を外周から被覆する外部導体とを有するシールド線と、
を備え、
前記シールド線の両端部は、2つのシールドケースのそれぞれに延ばされ、
前記2つのシールドケースの少なくとも一方のシールドケースは、絶縁部を有し、
前記一方のシールドケースに延ばされた前記シールド線の一端部における前記外部導体は、前記絶縁部に接続される、
配線構造。
【請求項2】
前記絶縁部は、前記シールドケースに絶縁塗装された塗装部を有する、
請求項1に記載の配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される電気/電子コンポーネントは、ノイズの発生源になり易い。
【0003】
例えば、自動車に搭載された2つのコンポーネントの一方のコンポーネントがノイズの発生源になる場合、一方のコンポーネントがシールド線を介して他方のコンポーネントに接続され、他方のコンポーネントがシャーシグランドされることにより、ノイズは、シールド線および他方のコンポーネントを介してグランドに落とされる。
【0004】
ノイズを除去する技術としては、例えば、パワーデバイスに直流電力を供給する配線経路に設けられたノイズ除去用のフィルタ回路が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気自動車などの電動車両において、2つのコンポーネント同士が例えば高電圧ハーネスを介して接続される場合、コンポーネントのそれぞれがシャーシグランドされることにより、ノイズ発生源からの電流がシャーシグランドを通ってノイズ発生源に戻るグランドループが形成される。これにより、ラジオノイズ(コモンモードノイズ)が発生する。その結果、EMC耐性が悪化するという問題がある。
【0007】
本開示の目的は、ラジオノイズの発生を防止することが可能な配線構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示における配線構造は、
車両に搭載され、シャーシグランドに接続されたシールドケースをそれぞれ有する2つの電気/電子コンポーネントと、
中心導体と、当該中心導体を外周から被覆する外部導体とを有するシールド線と、
を備え、
前記シールド線の両端部は、2つのシールドケースのそれぞれに延ばされ、
前記2つのシールドケースの少なくとも一方のシールドケースは、絶縁部を有し、
前記一方のシールドケースに延ばされた前記シールド線の一端部における前記外部導体は、前記絶縁部に接続される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、ラジオノイズの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態における配線構造の一例を示す図である。
【
図2】比較例における配線構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。本開示の実施の形態における配線構造の一例について
図1を参照して説明する。
図1は、本開示の実施の形態における配線構造の一例を示す図である。
本開示の実施の形態における自動車は、電動機(モータ)を動力源として走行する電動車両(Electric Vehicle:EV)とする。また、その説明を簡単にするために、EVに2つの電気/電子コンポーネントが搭載される場合について説明する。
【0012】
EVには、コンポーネント1、コンポーネント2、および、コンポーネント3が搭載されている。本実施の形態では、コンポーネント1はバッテリである。コンポーネント1(バッテリ)からの電力はコンポーネント2を介してコンポーネント3に供給される。コンポーネント2がノイズ発生源NS(信号源)となる。ここで、ノイズ発生源NSは、例えば、スイッチ素子である。
【0013】
コンポーネント1(バッテリ)とコンポーネント2との間には、シールド線4が延ばされている。シールド線4は、中心導体4aと、中心導体4aを外周から被覆する外部導体4bとを有している。
【0014】
コンポーネント2とコンポーネント3との間には、シールド線5が延ばされている。シールド線5は、中心導体5aと、中心導体5aを外周から被覆する外部導体5bとを有している。
【0015】
(コンポーネント1)
コンポーネント1は、シャーシグランドSGに接続されたシールドケース11を有している。シールドケース11の内部には、バッテリパック12が設けられている。バッテリパック12のプラス端子は、中心導体4aの一端部に接続されている。バッテリパック12のマイナス端子は、絶縁部6に接続されている。換言すれば、バッテリパック12のマイナス端子は、外部導体4bの一端部に絶縁部6を介して間接的に接続されている。
【0016】
(コンポーネント2)
コンポーネント2は、シャーシグランドSGに接続されたシールドケース21を有している。シールドケース21の内部には、前述したようにノイズ発生源NSが存在する。ノイズ発生源NSの入力側端子は、中心導体4aの他端部に接続されている。ノイズ発生源NSのグランド側端子は、外部導体4bの他端部に接続されている。
【0017】
ノイズ発生源NSの出力側端子は、中心導体5aの一端部に接続されている。ノイズ発生源NSのグランド側端子は、外部導体5bの一端部に接続されている。
【0018】
(コンポーネント3)
コンポーネント3は、シャーシグランドSGに接続されたシールドケース31を有している。シールドケース31の内部には、コンポーネント1(バッテリ)からの電力が供給される負荷32が設けられている。ここで、負荷32は、例えば、電動モータである。負荷32の一端子は、中心導体5aの他端部に接続されている。負荷32の他端部は、絶縁部7接続されている。換言すれば、負荷32の他端部は、外部導体5bの他端部に絶縁部7を介して間接的に接続されている。
【0019】
(配線構造のグランド)
コンポーネント1、コンポーネント2およびシールド線4により構成される配線構造によれば、ノイズ発生源NSのグランド側端子は外部導体4bの他端部に接続されている。しかし、バッテリパック12のマイナス端子は、外部導体4bの一端部に接続されない。これにより、ノイズ発生源NSからの電流はバッテリパック12のマイナス端子からシャーシグランドSGに流れず、シャーシグランドSGを通ってノイズ発生源NSに戻らないため、グランドループGL1が形成されない。つまり、一点アースが構成されている。その結果、ラジオノイズの発生を防止することが可能となる。
図1に、グランドループGL1が形成されないことを「×」で示す。また、
図1に、ラジオノイズの発生を防止することを「×」で示す。
【0020】
コンポーネント2、コンポーネント3およびシールド線5により構成される配線構造によれば、ノイズ発生源NSのグランド側端子は外部導体5bの一端部に接続されている。しかし、負荷32の他端部は外部導体5bの他端部に接続されない。これにより、ノイズ発生源NSからの電流は負荷32の他端部からシャーシグランドSGに流れず、シャーシグランドSGを通ってノイズ発生源NSに戻らないため、グランドループGL2が形成されない。つまり、一点アースが構成されている。その結果、ラジオノイズの発生を防止することが可能となる。
図1に、グランドループGL2が形成されないことを「×」で示す。また、
図1に、ラジオノイズの発生を防止することを「×」で示す。
【0021】
(比較例における配線構造)
次に、比較例における配線構造の一例について
図2を参照して説明する。
図2は、比較例における配線構造の一例を示す図である。なお、比較例における配線構造の説明においては、本実施の形態における配線構造と異なる構成について主に説明し、同じ構成については同一符号を付してその説明を省略する。
【0022】
(コンポーネント2)
本実施の形態においては、バッテリパック12のマイナス端子は、外部導体4bの一端部に絶縁部6を介して間接的に接続されている。これに対して、比較例においては、バッテリパック12のマイナス端子は、外部導体4bの一端部に直接的に接続されている。
【0023】
(コンポーネント3)
本実施の形態においては、負荷32の他端部は、外部導体5bの他端部に絶縁部7を介して間接的に接続されている。
【0024】
これに対して、比較例においては、負荷32の他端部は、外部導体5bの他端部に直接的に接続されている。
【0025】
(比較例における配線構造のグランド)
コンポーネント1(バッテリ)、コンポーネント2およびシールド線4により構成される配線構造によれば、ノイズ発生源NSのグランド側端子は外部導体4bの他端部に接続されている。また、バッテリパック12のマイナス端子は、外部導体4bの一端部に接続されている。これにより、ノイズ発生源NSからの電流はバッテリパック12のマイナス端子からシャーシグランドSGに流れ、シャーシグランドSGを通ってノイズ発生源NSに戻るため、グランドループGL1が形成される。その結果、ラジオノイズの発生を防止することができない。
【0026】
コンポーネント2、コンポーネント3およびシールド線5により構成される配線構造によれば、ノイズ発生源NSのグランド側端子は外部導体5bの一端部に接続されている。また、負荷32の他端部は外部導体5bの他端部に接続されている。これにより、ノイズ発生源NSからの電流は負荷32の他端部からシャーシグランドSGに流れ、シャーシグランドSGを通ってノイズ発生源NSに戻るため、グランドループGL2が形成される。その結果、ラジオノイズの発生を防止することができない。
【0027】
本実施の形態における配線構造は、車両に搭載され、シャーシグランドSGに接続されたシールドケース21、31をそれぞれ有する2つの電気/電子コンポーネント2、3と、中心導体5aと、当該中心導体5aを外周から被覆する外部導体5bとを有するシールド線5と、を備え、シールド線5の両端部は、2つのシールドケース21、31のそれぞれに延ばされ、2つのシールドケース21、31の少なくとも一方のシールドケースは、絶縁部7を有し、一方のシールドケースに延ばされたシールド線5の一端部における外部導体5bは、絶縁部7に接続される。
【0028】
以上の構成よれば、コンポーネント2がノイズ発生源NSを有し、コンポーネント3が負荷32を有する場合、ノイズ発生源NSからの電流は負荷32の他端部からシャーシグランドSGに流れず、シャーシグランドSGを通ってノイズ発生源NSに戻らないため、グランドループGL2が形成されない。これにより、ラジオノイズの発生を防止することが可能となる。
【0029】
また、本実施の形態における配線構造では、絶縁部7は、シールドケース31に絶縁塗装された塗装部を有する。これにより、絶縁部7とシールドケース31とが一体化されるため、製造コストや組立コストを低減することが可能となる。
【0030】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本開示は、ラジオノイズの発生を防止することが要求される配線構造を備えた電動車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0032】
1 コンポーネント
2 コンポーネント
3 コンポーネント
4 シールド線
4a 中心導体
4b 外部導体
5 シールド線
5a 中心導体
5b 外部導体
6 絶縁部
7 絶縁部
11 シールドケース
12 バッテリパック
21 シールドケース
31 シールドケース
32 負荷
【手続補正書】
【提出日】2024-08-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、シャーシグランドに接続されたシールドケースを有する電気/電子コンポーネントであるノイズ発生源と、
車両に搭載され、前記シャーシグランドに接続されたシールドケースを有する電気/電子コンポーネントである電動モータと、
中心導体と、当該中心導体を外周から被覆する外部導体とを有するシールド線と、
を備え、
前記シールド線の両端部は、前記ノイズ発生源のシールドケースおよび前記電動モータのシールドケースのそれぞれに延ばされ、
前記シールド線の一端部における前記外部導体は、前記ノイズ発生源のシールドケースおよび前記ノイズ発生源のグランド側端子に接続され、
前記電動モータのシールドケースは、絶縁部を有し、
前記電動モータの一端子は、前記シールド線の他端部における前記中心導体に接続され、
前記電動モータの他端子は、前記シールド線の他端部における前記外部導体に前記絶縁部を介して間接的に接続される、
配線構造。
【請求項2】
前記絶縁部は、前記シールドケースに絶縁塗装された塗装部を有する、
請求項1に記載の配線構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
上記の目的を達成するため、本開示における配線構造は、
車両に搭載され、シャーシグランドに接続されたシールドケースを有する電気/電子コンポーネントであるノイズ発生源と、
車両に搭載され、前記シャーシグランドに接続されたシールドケースを有する電気/電子コンポーネントである電動モータと、
中心導体と、当該中心導体を外周から被覆する外部導体とを有するシールド線と、
を備え、
前記シールド線の両端部は、前記ノイズ発生源のシールドケースおよび前記電動モータのシールドケースのそれぞれに延ばされ、
前記シールド線の一端部における前記外部導体は、前記ノイズ発生源のシールドケースおよび前記ノイズ発生源のグランド側端子に接続され、
前記電動モータのシールドケースは、絶縁部を有し、
前記電動モータの一端子は、前記シールド線の他端部における前記中心導体に接続され、
前記電動モータの他端子は、前記シールド線の他端部における前記外部導体に前記絶縁部を介して間接的に接続される。