(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158391
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】横編機
(51)【国際特許分類】
D04B 15/48 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
D04B15/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073548
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】宮本 昌紀
【テーマコード(参考)】
4L054
【Fターム(参考)】
4L054AA01
4L054AB02
4L054AB03
4L054FA05
4L054FA06
4L054NA02
(57)【要約】
【課題】給糸口の上下動に伴い、歯口側にある糸喰いされる位置に給糸可能な領域から給糸口が離れるのを抑制できる横編機を提供する。
【解決手段】針床110と、針床110の上方に架設された糸道レール130と、編針111に編糸を供給するための給糸口23aを有するヤーンフィーダ1と、給糸時の給糸口23aの高さを調整する給糸口位置調整用長孔24a及びねじ40と、を含む横編機100において、ヤーンフィーダ1は、給糸口23aを有するフィーダロッド20と、フィーダロッド20を鉛直方向に対して傾斜した案内方向に案内する上昇付勢部案内溝11と、少なくとも糸喰いされる位置に給糸可能な給糸口23aの高さの範囲において、給糸口23aの高さの変化に応じて給糸口23aの移動方向が前記案内方向よりも鉛直寄りとなる方向に給糸口23aの移動方向を変換する給糸口側案内部31及びキャリア基部側案内部32を具備する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つが歯口を挟んで前後に対向し、長手方向に編針が並設される針床と、
前記針床の上方に架設された糸道レールと、
編糸を前記編針に供給する経路の一部に前記糸道レールに沿って移動可能に設けられるキャリア基部と、
前記編針に編糸を供給するための給糸口と前記キャリア基部とを有するヤーンフィーダと、
給糸時の前記給糸口の高さを調整する給糸口高さ調整手段と、
を含む横編機において、
前記ヤーンフィーダは、
前記給糸口を有するフィーダロッドと、
前記給糸口の移動方向を変換する変換手段と、
前記キャリア基部に支持され、前記変換手段を支持するフィーダロッドガイドと、
前記フィーダロッドを鉛直方向に対して傾斜した案内方向に案内する案内手段と、
を具備し、
前記変換手段は、
前記フィーダロッドと前記フィーダロッドガイドに設けられ、少なくとも糸喰いされる位置に給糸可能な前記給糸口の高さの範囲において、前記給糸口の高さの変化に応じて前記給糸口の移動方向が前記案内方向よりも鉛直寄りとなる方向に前記給糸口の移動方向を変換する、
横編機。
【請求項2】
前記フィーダロッドは、
前記給糸口が設けられた給糸部を具備し、
前記変換手段は、
前記給糸部又は前記フィーダロッドガイドのいずれか一方において前記給糸口側に設けられた給糸口側案内受け部と、
前記給糸部又は前記フィーダロッドガイドのいずれか一方において前記キャリア基部側に設けられたキャリア基部側案内受け部と、
前記給糸部又は前記フィーダロッドガイドのいずれか他方において前記給糸口側に設けられ、前記案内方向と平行な軌跡で前記給糸口側案内受け部を案内する給糸口側案内部と、
前記給糸部又は前記フィーダロッドガイドのいずれか他方において前記キャリア基部側に設けられ、前記給糸部の上端が前記案内方向よりも前後方向において前記歯口から離れる側に傾斜した方向に前記キャリア基部側案内受け部を案内するキャリア基部側案内部と、
を具備する、
請求項1に記載の横編機。
【請求項3】
前記フィーダロッドは、
前記案内手段により前記案内方向に案内され、上下動駆動機構により上下動駆動されるロッド部と、
前記ロッド部と接続され、前記給糸口が設けられた給糸部と、
を具備する、
請求項1に記載の横編機。
【請求項4】
前記給糸部は、
前記ロッド部と別体に形成され、前記給糸口が前記ロッド部に対して前記フィーダロッドの前記案内方向とは異なる方向であって、かつ、前記ロッド部に対して前後の位置が変化する方向に移動可能に前記ロッド部と接続される、
請求項3に記載の横編機。
【請求項5】
前記フィーダロッドは、
前記ロッド部と前記給糸部との間に設けられ、前記ロッド部と前記給糸部とを連結する連結部を具備し、
前記連結部は、
前記糸道レールよりも下方において前記ロッド部に固定され、前記給糸口高さ調整手段によって前記ロッド部に対する上下位置を調整可能に接続される、
請求項3又は請求項4に記載の横編機。
【請求項6】
前記案内手段は、前記キャリア基部に設けられ、
前記糸道レールは、側面視において前後の前記針床の中心に対して放射状に配設される、
請求項3又は請求項4に記載の横編機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤーンフィーダを備える横編機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヤーンフィーダを備える横編機の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、ヤーンキャリア(ヤーンフィーダ)を有する横編機が記載されている。ヤーンキャリアは、上下動可能なフィーダロッドとフィーダロッドの移動を案内するフィーダロッドガイドとを有し、フィーダロッドの下端には編針に糸を供給するための給糸口が設けられている。フィーダロッドは給糸時には下降し、待機時には上昇して給糸部が歯口に対して退避する。フィーダロッドは、下端に給糸口が設けられたロッド部と、ロッド部の上方に設けられた上昇付勢部とを備え、ロッド部と上昇付勢部とはロッド部に設けられた長孔にねじが挿通されて結合されている。
【0004】
このような構成により、長孔におけるねじの固定位置を変えることによって、編成条件に合わせて給糸時の給糸口高さを調整することができる。具体的には、例えば、ミスの区間が続く編成(フローティングジャカード)のような場合に給糸口を低くする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に記載の技術においては、給糸口の上下動に伴い、給糸口の位置が前針床側または後針床側に移動し、歯口側にある糸喰いされる位置に給糸可能な領域から給糸口が離れるおそれがある。
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、給糸口の上下動に伴い、歯口側にある糸喰いされる位置に給糸可能な領域から給糸口が離れるのを抑制できる横編機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、本発明に係る横編機は、少なくとも二つが歯口を挟んで前後に対向し、長手方向に編針が並設される針床と、前記針床の上方に架設された糸道レールと、編糸を前記編針に供給する経路の一部に前記糸道レールに沿って移動可能に設けられるキャリア基部と、前記編針に編糸を供給するための給糸口と前記キャリア基部とを有するヤーンフィーダと、給糸時の前記給糸口の高さを調整する給糸口高さ調整手段と、を含む横編機において、前記ヤーンフィーダは、前記給糸口を有するフィーダロッドと、前記給糸口の移動方向を変換する変換手段と、前記キャリア基部に支持され、前記変換手段を支持するフィーダロッドガイドと、前記フィーダロッドを鉛直方向に対して傾斜した案内方向に案内する案内手段と、を具備し、前記変換手段は、前記フィーダロッドと前記フィーダロッドガイドに設けられ、少なくとも糸喰いされる位置に給糸可能な前記給糸口の高さの範囲において、前記給糸口の高さの変化に応じて前記給糸口の移動方向が前記案内方向よりも鉛直寄りとなる方向に前記給糸口の移動方向を変換するものである。
このように構成することにより、給糸口の上下動に伴い、給糸口は案内手段による案内方向よりも鉛直方向寄りに移動するため、歯口側にある糸喰いされる位置に給糸可能な領域から給糸口が離れるのを抑制することができる。
【0010】
また、前記フィーダロッドは、前記給糸口が設けられた給糸部を具備し、前記変換手段は、前記給糸部又は前記フィーダロッドガイドのいずれか一方において前記給糸口側に設けられた給糸口側案内受け部と、前記給糸部又は前記フィーダロッドガイドのいずれか一方において前記キャリア基部側に設けられたキャリア基部側案内受け部と、前記給糸部又は前記フィーダロッドガイドのいずれか他方において前記給糸口側に設けられ、前記案内方向と平行な軌跡で前記給糸口側案内受け部を案内する給糸口側案内部と、前記給糸部又は前記フィーダロッドガイドのいずれか他方において前記キャリア基部側に設けられ、前記給糸部の上端が前記案内方向よりも前後方向において前記歯口から離れる側に傾斜した方向に前記キャリア基部側案内受け部を案内するキャリア基部側案内部と、を具備するものである。
このように構成することにより、複数のヤーンフィーダが密集する歯口の近傍においてヤーンフィーダの厚さ方向がかさばるのを抑制できるので、省スペース化を図ることができる。
【0011】
また、前記フィーダロッドは、前記案内手段により前記案内方向に案内され、上下動駆動機構により上下動駆動されるロッド部と、前記ロッド部と接続され、前記給糸口が設けられた給糸部と、を具備するようにしてもよい。
このように構成することにより、待機中のヤーンフィーダの給糸部を歯口に対して退避させることで、走行するヤーンフィーダの給糸部が待機中のヤーンフィーダの給糸部と衝突するのを緩和することができる。
【0012】
また、前記給糸部は、前記ロッド部と別体に形成され、前記給糸口が前記ロッド部に対して前記フィーダロッドの前記案内方向とは異なる方向であって、かつ、前記ロッド部に対して前後の位置が変化する方向に移動可能に前記ロッド部と接続されるようにしてもよい。
このように構成することにより、給糸部がロッド部に対して移動する際、フィーダロッドにかかる負荷を低減することができる。
【0013】
また、前記フィーダロッドは、前記ロッド部と前記給糸部との間に設けられ、前記ロッド部と前記給糸部とを連結する連結部を具備し、前記連結部は、前記糸道レールよりも下方において前記ロッド部に固定され、前記給糸口高さ調整手段によって前記ロッド部に対する上下位置を調整可能に接続されるようにしてもよい。
このように構成することにより、糸道レールを避けてロッド部に対する連結部の高さを調整することができるので、給糸時の給糸口の高さを容易に調整することができる。
【0014】
また、前記案内手段は、前記キャリア基部に設けられ、前記糸道レールは、側面視において前後の前記針床の中心に対して放射状に配設されるようにしてもよい。
このように構成することにより、糸道レールが水平配置される場合と比べて前後方向の幅を小さくできるという糸道レールの放射状配置の効果を適用することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、給糸口の上下動に伴い、歯口側にある糸喰いされる位置に給糸可能な領域から給糸口が離れるのを抑制できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る横編機を示した側面図。
【
図2】糸道レール及びヤーンフィーダを示した
図1のA矢視図。
【
図4】(a)給糸部を示した正面図。(b)給糸部を示した側面図。
【
図6】給糸口を上昇させた後のヤーンフィーダを示した拡大側面断面図。
【
図7】本発明の第二実施形態に係る横編機のヤーンフィーダを示した拡大側面断面図。
【
図8】第二実施形態における給糸口を上昇させた後のヤーンフィーダを示した拡大側面断面図。
【
図9】本発明の第三実施形態に係る横編機のヤーンフィーダを示した拡大側面断面図。
【
図10】第三実施形態における給糸口を上昇させた後のヤーンフィーダを示した拡大側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0018】
図1及び
図2に示すように、本発明の第一実施形態に係る横編機100は、主として針床110、キャリッジ120、糸道レール130及び上下動駆動機構140を具備する。
【0019】
針床110は、歯口Sを挟んで前後に互いに対向するように配置されている。前後の針床110は、前後中央側(互いに対向する側)に向かうにつれて上方に向かうように傾斜する側面視逆V字状に配置されている。各針床110には、針床110の長手方向(左右方向)に沿って多数の編針111が並ぶように設けられている。
【0020】
キャリッジ120は、前後の針床110に対して上方から対向するように前後一対配置される。前後のキャリッジ120は、複数の糸道レール130を跨ぐように配置されたゲートアーム120aにより連結されている。キャリッジ120は、サーボモータ(不図示)によって、針床110の長手方向に沿って往復移動することができる。キャリッジ120には、針床110の編針111を選択的に動作させるための選針機構(不図示)やカム機構(不図示)が設けられる。
【0021】
糸道レール130は、針床110の上方に架設され、針床110の長手方向に沿って延びるように複数配置される。糸道レール130は、側面視において前後の針床110の中心に対して放射状に配設される。ここで、「前後の針床110の中心」とは、側面視における給糸位置を意味する。糸道レール130の前後面には、編糸を編針111に供給する経路の一部に、編糸を給糸するヤーンフィーダ1が糸道レール130に沿って移動可能となるように支持されている。糸パッケージ(不図示)からの編糸は、適宜の給糸経路を経て、ヤーンフィーダ1へと給糸される。
【0022】
上下動駆動機構140は、ヤーンフィーダ1の上方に設けられヤーンフィーダ1のフィーダロッド20を押し下げ可能なカムプレート141を有し、カムプレート141を動作させることによってフィーダロッド20を下降させることができる。上下動駆動機構140は、後述する上昇付勢部21に挿着されフィーダロッド20を上方に付勢するスプリング142を有し、スプリング142によってフィーダロッド20を上昇させることができる。
【0023】
次に、
図2から
図6を用いて、ヤーンフィーダ1の構成について説明する。なお、
図2、
図3、
図5及び
図6は、複数のヤーンフィーダ1のうち最も後側のヤーンフィーダ1を示している。
【0024】
ヤーンフィーダ1は、走行ローラ1aを備えることにより、糸道レール130に沿って糸道レール130の長手方向に走行可能に構成される。ヤーンフィーダ1にはベルトが固定され、モータによってベルトを駆動させることによりヤーンフィーダ1を走行させることができる。なお、ヤーンフィーダ1はキャリッジ120に連行され走行するものであってもよい。
【0025】
ヤーンフィーダ1は、キャリア基部10、フィーダロッド20及びフィーダロッドガイド30を具備する。
【0026】
図2及び
図3に示すキャリア基部10は、後述するフィーダロッド20及びフィーダロッドガイド30を支持するものである。キャリア基部10は、ヤーンフィーダ1の上部に設けられる。
図2に示すように、キャリア基部10には、本発明の案内手段の一例である上昇付勢部案内溝11が形成される。上昇付勢部案内溝11は、キャリア基部10の左右中央を上下方向に延びるように形成され、後述するフィーダロッド20の上昇付勢部21を案内可能に構成される。
【0027】
フィーダロッド20は、編針111に編糸を供給するための給糸口23aの衝突を避けるために上下動するものである。フィーダロッド20は、キャリア基部10によって支持され、側面視において前後の針床110の中心に対して放射状に設けられる。フィーダロッド20は、上昇付勢部21、ロッド部22、給糸部23及び連結板24を具備する。
【0028】
図2及び
図3に示す上昇付勢部21は、フィーダロッド20の上部に設けられ、上下動駆動機構140のスプリング142が挿着される。上昇付勢部21は、スプリング142によって上方に付勢されるとともに、上昇付勢部21の上部に設けられた押下部21aが上下動駆動機構140のカムプレート141によって下方に押圧可能に設けられる。上昇付勢部21は、上昇付勢部案内溝11の延伸方向に延びるように形成され、上昇付勢部案内溝11によって案内されて、上下動駆動機構140により上下動駆動される。
【0029】
図2及び
図3に示すロッド部22は、上昇付勢部21の下方に設けられ、上昇付勢部21の延伸方向に直線状に延びるように形成される。ロッド部22は、上昇付勢部21と接続され、上下動駆動機構140によって上昇付勢部21とともに上下動駆動される。ロッド部22の下部には、後方に突出する突出部22aが設けられる。
【0030】
給糸部23は、ロッド部22よりも下方に設けられ、給糸部23の下端には給糸口23aが設けられる。なお、給糸口23aの位置は給糸部23の下端に限定されない。給糸部23は、ロッド部22と別体に形成され、後述する連結板24を介してロッド部22と接続される。給糸部23は、連結板24を介してロッド部22と接続されることにより、ロッド部22に対して移動可能に接続される。ロッド部22に対して給糸部23が移動する際には、給糸口23aは、上下動駆動機構140によって上下動する際の上昇付勢部案内溝11によるフィーダロッド20の案内方向とは異なる方向であって、かつ、ロッド部22に対して前後の位置が変化する方向に移動する。給糸部23は、給糸口側案内受け部23b及びキャリア基部側案内受け部23cを具備する。
【0031】
図2、
図4及び
図5に示す給糸口側案内受け部23bは、後述する給糸口側案内溝31aによって案内されるものである。給糸口側案内受け部23bは、給糸口23aよりも上方の給糸部23の上下中途部において左右に突出するように形成される。給糸口側案内受け部23bは、上昇付勢部案内溝11によるロッド部22の案内方向とは異なる方向への給糸部23の移動を可能とするために、側面視において対角の二隅が面取りされた矩形状または菱形状に形成される。あるいは、給糸口側案内受け部23bは、側面視円形状または楕円形状に形成されてもよい。
【0032】
図2、
図4及び
図5に示すキャリア基部側案内受け部23cは、後述するキャリア基部側案内溝32aによって案内されるものである。キャリア基部側案内受け部23cは、給糸口側案内受け部23bよりも上方の給糸部23の上端において左右に突出するように形成される。キャリア基部側案内受け部23cは、側面視において対角の二隅が面取りされた矩形状または菱形状に形成される。あるいは、キャリア基部側案内受け部23cは、側面視円形状または楕円形状に形成されてもよい。
【0033】
連結板24は、ロッド部22と給糸部23との間に設けられ、ロッド部22と給糸部23とを連結する。連結板24には、給糸口位置調整用長孔24a及び下端接続部24bが形成される。
【0034】
図2に示す給糸口位置調整用長孔24aは、本発明の給糸口高さ調整手段の一例であり、連結板24を厚さ方向に貫通し、連結板24の長手方向に延びるように形成される。給糸口位置調整用長孔24aは、連結板24の上部に形成される。給糸口位置調整用長孔24aには、前方からロッド部22の突出部22aが挿通される。給糸口位置調整用長孔24aに突出部22aが挿通されることにより、ロッド部22に対する連結板24の左右位置が規制される。給糸口位置調整用長孔24aには、糸道レール130よりも下方において後方からねじ40が挿通され、ねじ40はロッド部22の下部に形成された図示せぬ雌ねじ孔にねじ留めされる。こうして、連結板24は、連結板24の上部においてロッド部22と固定される。
【0035】
図2に示す下端接続部24bは、連結板24の下端に形成され、給糸部23に形成された係合孔23d(
図4参照)に係合される。こうして、連結板24は、連結板24の下部において前後の位置が変化する方向に移動可能に給糸部23と接続される。
【0036】
フィーダロッドガイド30は、フィーダロッド20の前方に設けられ、フィーダロッド20をガイドするものである。フィーダロッドガイド30の上端部は、キャリア基部10に支持される。フィーダロッドガイド30は、給糸口側案内部31及びキャリア基部側案内部32を具備する。
【0037】
給糸口側案内部31及び給糸口側案内受け部23bは、本発明の変換手段の一例である。給糸口側案内部31は、フィーダロッドガイド30の下端の左右両端部に設けられる。給糸口側案内部31は、ロッド部22の進退動の軌跡と平行に延びるように形成される。
図5に示すように、給糸口側案内部31には、給糸口側案内溝31aが形成される。給糸口側案内溝31aは、フィーダロッドガイド30の左右外側に凹むように形成され、給糸口側案内部31の上端部及び下端部が開口するように形成される。給糸口側案内部31には、給糸口側案内受け部23bが収容される。
【0038】
キャリア基部側案内部32及びキャリア基部側案内受け部23cは、本発明の変換手段の一例である。キャリア基部側案内部32は、給糸口側案内部31よりも上方に形成される。
【0039】
キャリア基部側案内部32は、上下動駆動機構140によるロッド部22の進退動の軌跡とは異なる方向に延びるように形成される。より詳細には、
図3、
図5及び
図6に示すように、キャリア基部側案内部32は、上昇付勢部案内溝11によるロッド部22の案内方向よりも水平方向寄りとなる方向に延びるように形成される。
【0040】
図5及び
図6に示すように、キャリア基部側案内部32には、キャリア基部側案内溝32aが形成される。キャリア基部側案内溝32aは、キャリア基部側案内部32の下端部が開口し、キャリア基部側案内部32の延伸方向と平行に延びるように形成される。キャリア基部側案内溝32aには、キャリア基部側案内受け部23cが収容される。これにより、キャリア基部側案内部32は、給糸口23aの高さを高くする際、給糸部23の上端がロッド部22の長手方向よりも前後方向において歯口Sから離れる側に傾斜した方向にキャリア基部側案内受け部23cを案内する。
【0041】
このように構成されたヤーンフィーダ1において、給糸部23は、フィーダロッドガイド30の給糸口側案内部31及びキャリア基部側案内部32によって案内されることにより、ロッド部22に対して上昇付勢部案内溝11によるロッド部22の案内方向と異なる方向であって、かつ、ロッド部22に対して前後の位置が変化する方向に移動可能に接続される。
【0042】
より詳細には、給糸口側案内部31及びキャリア基部側案内部32は、少なくとも給糸範囲において、上下動駆動機構140または給糸口位置調整用長孔24aの長手方向におけるねじ40の固定位置の変更による給糸口23aの高さの変化に応じて、給糸口23aの移動方向が上昇付勢部案内溝11によるロッド部22の案内方向よりも鉛直寄りとなる方向に給糸口23aの移動方向を変換する。ここで、「給糸範囲」とは、糸喰いされる位置に給糸可能な給糸口23aの高さの範囲を意味する。
【0043】
以下、
図1及び
図2を用いて、フィーダロッド20の歯口Sに対する進退動の態様について説明する。ヤーンフィーダ1の給糸時には、上昇付勢部21の上部に設けられた押下部21aがカムプレート141によって下方に押圧され、上昇付勢部21は、上昇付勢部案内溝11によって案内され、スプリング142の付勢力に抗して下降する。上昇付勢部21の下降に伴ってロッド部22が下降し、給糸部23の給糸口23aが歯口Sに対して進入する。給糸口23aを歯口Sに進入させることにより、編糸を編針111に供給することができる。
【0044】
一方、ヤーンフィーダ1の待機時には、押下部21aに対するカムプレート141による押圧が解除される。カムプレート141による押圧が解除されると、フィーダロッド20は、スプリング142の付勢力により上昇し、給糸部23が歯口Sに対して退避する。このように、給糸を行っていないヤーンフィーダ1の給糸口23aを歯口Sに対して退避させることで、給糸を行っているヤーンフィーダ1の給糸部23と、給糸を行っていないヤーンフィーダ1の給糸部23との衝突を緩和することができる。
【0045】
以下、給糸口23aの高さの調整の態様について説明する。ヤーンフィーダ1は、編成条件に合わせて給糸時の給糸口23aの高さを調整することができる。給糸口23aの高さを調整する際には、給糸口位置調整用長孔24aの長手方向におけるねじ40の固定位置を変更することにより、ロッド部22に対する連結板24の上下位置を調整する。ロッド部22に対する連結板24の上下位置を調整することにより、給糸口23aの高さを調整することができる。
【0046】
また、ロッド部22と連結板24とは、糸道レール130よりも下方においてねじ40によって固定されている。このため、糸道レール130を避けてロッド部22に対する連結板24の高さを調整することができるので、給糸時の給糸口23aの高さを容易に調整することができる。
【0047】
ここで、編成条件に合わせて給糸時の給糸口23aの高さを調整する場合、給糸部23を上昇付勢部案内溝11によるロッド部22の案内方向と同じ方向に移動させると、給糸口23aの位置が前後の針床110の中心面からずれてしまう。そうすると、給糸口23aの上下動に伴い、歯口S側にある糸喰いされる位置に給糸可能な領域から給糸口23aが離れるおそれがある。
【0048】
また、フィーダロッド20を歯口Sに対して進退動させることで、2つのヤーンフィーダ1の編糸を同時に編み込むプレーティング編成において、通常のヤーンフィーダ1より遅れた状態を維持するプレーティング用のヤーンフィーダ1の給糸口23aの位置を高くすることができ、主糸と添え糸により高低差をつけて編成を行うことができる。このように、フィーダロッド20の進退動によって給糸口23aを上下動させる際にも、歯口S側にある糸喰いされる位置に給糸可能な領域から給糸口23aが離れるおそれがある。
【0049】
そこで、本実施形態に係る横編機100においては、給糸口側案内部31及びキャリア基部側案内部32等の構成により、給糸口23aの上下動に伴う給糸口23aの前後位置のずれが低減されている。以下、主として
図5及び
図6を用いて、給糸時の給糸口23aを上昇させた際の給糸部23の動作について説明する。
図5は、給糸口23aを上昇させる前の状態を示している。
図6は、
図5に示す状態から給糸口23aを上昇させた状態を示している。
【0050】
上下動駆動機構140によってロッド部22を上昇させると、または、給糸口位置調整用長孔24aをねじ40に対して上方にずらすと、ロッド部22に対する連結板24の位置も上方にずれる。連結板24の位置が上方にずれると、給糸部23はフィーダロッドガイド30によって案内されて上方に移動する。
【0051】
より詳細には、給糸部23は、給糸口側案内受け部23bが給糸口側案内部31の給糸口側案内溝31aによって案内され、かつ、給糸部23のキャリア基部側案内受け部23cがキャリア基部側案内部32のキャリア基部側案内溝32aによって案内されて、例えば
図5に示す位置から
図6に示す位置に上昇する。ここで、給糸口側案内部31の給糸口側案内溝31aは、上下動駆動機構140によるロッド部22の軌跡と平行な軌跡で給糸口側案内受け部23bを案内するのに対して、キャリア基部側案内部32のキャリア基部側案内溝32aは、上端がロッド部22の長手方向よりも前後方向において歯口Sから離れる側に傾斜した方向にキャリア基部側案内受け部23cを案内するように形成されている。このため、給糸部23の傾きは、上方に移動すると、水平方向に近い方向に変化する。
【0052】
給糸部23の傾きが水平方向に近い方向に変化することにより、給糸口23aの前後位置が後側の針床110側に変位することなく、給糸口23aが略鉛直方向に移動する。このようにして、前後の針床110の中心面Pからの給糸口23aの前後位置のずれが抑制された状態で、給糸口23aを上昇させることができる。ここで、中心面Pとは、前後の針床110の間の前後中心を通る鉛直面である。同様に、前後の針床110の中心面Pからの給糸口23aの前後位置のずれが抑制された状態で、例えば
図5に示す位置から
図4に示す位置に給糸口23aを下降させることができる。
【0053】
こうして、給糸口23aの上下動に伴う前後の針床110の中心面Pからの給糸口23aのずれを低減することができるため、給糸口23aの上下動に伴い、歯口S側にある糸喰いされる位置に給糸可能な領域から給糸口23aが離れるのを抑制できる。
【0054】
以下、
図7及び
図8を用いて、本発明の第二実施形態に係る横編機100について説明する。以下では、第一実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
第二実施形態に係る横編機100は、フィーダロッドガイド30がキャリア基部側案内部32に代えてキャリア基部側案内部33を具備する点で、第一実施形態に係る横編機100と異なる。
【0056】
キャリア基部側案内部33の下部は、キャリア基部側案内部32と同様に、上昇付勢部案内溝11によるロッド部22の案内方向よりも水平方向寄りとなる方向に延びるように形成される。キャリア基部側案内部33の上部は、給糸口23aの高さが給糸範囲よりも上方となる位置において、キャリア基部側案内部33の下部の延伸方向よりも鉛直寄りとなる方向に延びるように屈折する。キャリア基部側案内部33には、キャリア基部側案内部33と対応する形状にキャリア基部側案内溝33aが形成される。キャリア基部側案内溝33aには、キャリア基部側案内受け部23cが収容される。
【0057】
上下動駆動機構140によってロッド部22を上昇させると、または、給糸口位置調整用長孔24aをねじ40に対して上方にずらすと、給糸口側案内受け部23bが給糸口側案内部31の給糸口側案内溝31aによって案内され、かつ、給糸部23のキャリア基部側案内受け部23cがキャリア基部側案内部33のキャリア基部側案内溝33aによって案内されて、給糸部23が例えば
図7に示す位置から
図8に示す位置に上昇する。キャリア基部側案内部33により、給糸口23aは給糸範囲では鉛直方向に移動する。一方、給糸口23aは、給糸範囲よりも上方、より詳細にはキャリア基部側案内受け部23cがキャリア基部側案内部33の屈折部よりも上方の部分に位置するときには、給糸口23aの上昇に伴い前後方向において歯口Sから離れる側に移動する。これにより、給糸部23同士の衝突が生じるのをより抑制することができる。
【0058】
以下、
図9及び
図10を用いて、本発明の第三実施形態に係る横編機100について説明する。以下では、第一実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0059】
第三実施形態に係る横編機100は、フィーダロッド20が連結板24に代えて弾性変形部24Aを具備する点、給糸部23が突出部23eを具備する点、フィーダロッドガイド30が給糸口側案内部31及びキャリア基部側案内部32に代えて案内用長孔34を具備する点で、第一実施形態に係る横編機100と異なる。
【0060】
ロッド部22と給糸部23との間には、弾性変形可能な弾性変形部24Aが設けられ、ロッド部22、給糸部23及び弾性変形部24Aは一体に形成される。給糸部23の上部には、左右方向に突出する突出部23eが形成される。
【0061】
フィーダロッドガイド30の案内用長孔34は、上昇付勢部案内溝11によるロッド部22の案内方向よりも鉛直寄りとなる方向に延びるように形成される。案内用長孔34には、突出部23eが挿通される。
【0062】
上下動駆動機構140によってロッド部22を上昇させると、または、給糸口位置調整用長孔24aをねじ40に対して上方にずらすと、突出部23eが案内用長孔34によって案内されて案内用長孔34の下端から上端に移動することで、給糸部23が例えば
図9に示す位置から
図10に示す位置に上昇する。案内用長孔34による突出部23eの案内及び弾性変形部24Aの弾性力により、給糸部23の傾きは、上方に移動すると水平方向に近い方向に変化する。突出部23eが案内用長孔34によって案内されることにより、給糸口23aは給糸範囲では鉛直方向に移動する。
【0063】
なお、第三実施形態では連結板24が設けられていないので、給糸口位置調整用長孔24aは、ロッド部22の上部と下部との間に設けられた部材に設けられている。ロッド部22の上部に対するロッド部22の下部の高さを調整することで、給糸口23aの高さを調整できるように構成されている。
【0064】
以上のように、各実施形態においては、前後の針床110の中心面Pからの給糸口23aの前後位置のずれが抑制された状態で、給糸口23aを上下動させることができる。ここで、中心面Pとは、前後の針床110の間の前後中心を通る鉛直面である。このため、給糸口23aの上下動に伴い、歯口S側にある糸喰いされる位置に給糸可能な領域から給糸口23aが離れるのを抑制できる。
【0065】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0066】
例えば、給糸口側案内部31、給糸口側案内受け部23b、キャリア基部側案内部32及びキャリア基部側案内受け部23cを含む変換手段は糸道レール130の配置によらず適用可能である。糸道レール130は側面視において前後の針床110の中心に対して放射状に配設されるものに限らず、例えば欧州特許公開EP3115491A1の
図4(b)及び(c)に記載されたように水平に設けられるものであってもよい。このように糸道レール130が設けられる場合、フィーダロッド20は鉛直方向に上下動するが、各フィーダロッド20の給糸部23によって給糸可能とするため、フィーダロッド20は、歯口Sに向かって屈曲する屈曲部を有するように形成される。屈曲部よりも下方の部分に給糸口位置調整用長孔24a等の給糸口高さ調整手段が設けられている場合にも、給糸口側案内部31、給糸口側案内受け部23b、キャリア基部側案内部32及びキャリア基部側案内受け部23cを含む変換手段を適用可能である。この場合、給糸部23は、案内手段によって、屈曲部よりも下方の部分に沿って進退動する。
【0067】
また、給糸口側案内部31、給糸口側案内受け部23b、キャリア基部側案内部32及びキャリア基部側案内受け部23cを含む変換手段による給糸口23aの移動方向は厳密に鉛直方向でなくてもよく、上昇付勢部案内溝11によるロッド部22の案内方向よりも鉛直寄りとなる方向であればよい。
【0068】
また、上下動駆動機構140は、カムプレート141によってフィーダロッド20を上下動させるものに限らず、例えば特表2012-524842号公報に記載されるように、駆動レバーによってフィーダロッド20を上下動させるものであってもよく、あるいはラックアンドピニオンによってフィーダロッド20を上下動させるものであってもよい。
【0069】
また、給糸時の給糸口23aの高さを調整する給糸口高さ調整手段は、給糸口位置調整用長孔24aの長手方向におけるねじ40の固定位置の変更によって給糸時の給糸口23aの高さを調整するものとしたが、例えば中国特許公開CN210711959Uに記載されるように、カムプレート141の高さをモータによって調整することで給糸時の給糸口23aの高さを調整するものであってもよい。
【0070】
また、横編機100は、必ずしもフィーダロッド20を上下動する上下動駆動機構140を備えていなくてもよい。この場合、給糸部23は、必ずしもロッド部22に接続される必要はなく、フィーダロッドガイド30に接続されていてもよい。
【0071】
また、第一実施形態においては、フィーダロッド20に案内受け部(給糸口側案内受け部23b及びキャリア基部側案内受け部23c)が設けられ、フィーダロッドガイド30に案内溝(給糸口側案内溝31a及びキャリア基部側案内溝33a)が設けられるものとしたが、フィーダロッドガイド30に案内受け部が設けられ、フィーダロッド20に案内溝が設けられてもよい。この場合、案内溝は給糸部23の側面に設けることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 ヤーンフィーダ
10 キャリア基部
20 フィーダロッド
22 ロッド部
23 給糸部
23a 給糸口
23b 給糸口側案内受け部
23c キャリア基部側案内受け部
24 連結部
24a 給糸口位置調整用長孔
30 フィーダロッドガイド
31 給糸口側案内部
32,33 キャリア基部側案内部
34 案内用長孔
40 ねじ
100 横編機
110 針床
111 編針
130 糸道レール