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特開2024-158392繊維強化樹脂成形品、人工木材、及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158392
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂成形品、人工木材、及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20241031BHJP
   C08G 18/09 20060101ALI20241031BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20241031BHJP
   C08G 101/00 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
C08J5/24
C08G18/09 020
C08G18/08 038
C08G101:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073550
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000113517
【氏名又は名称】BASF INOACポリウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 栄作
(72)【発明者】
【氏名】大島 悠生
【テーマコード(参考)】
4F072
4J034
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA04
4F072AA07
4F072AB03
4F072AB04
4F072AB09
4F072AB11
4F072AB22
4F072AB28
4F072AB29
4F072AB30
4F072AD43
4F072AE14
4F072AF25
4F072AF28
4F072AF31
4F072AH04
4F072AH21
4F072AH23
4F072AJ04
4F072AJ22
4F072AK16
4F072AK20
4F072AL17
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB04
4J034DB05
4J034DC25
4J034DF01
4J034DF02
4J034DF11
4J034DF12
4J034DF16
4J034DF20
4J034DF21
4J034DF22
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG05
4J034DG06
4J034DG08
4J034DG09
4J034DG15
4J034DG16
4J034DG18
4J034DG23
4J034DG29
4J034DP18
4J034DP19
4J034DQ05
4J034DQ15
4J034DQ16
4J034DQ18
4J034EA11
4J034GA05
4J034GA06
4J034GA23
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HA08
4J034HB06
4J034HB07
4J034HB08
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC12
4J034HC17
4J034HC22
4J034HC35
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC65
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034KA01
4J034KB02
4J034KB03
4J034KB05
4J034KC02
4J034KD02
4J034KD03
4J034KD11
4J034KD12
4J034KE02
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB01
4J034QB14
4J034QC01
4J034QC03
4J034RA05
4J034RA10
4J034RA12
(57)【要約】
【課題】ポリウレタンフォームの表面が荒れること、繊維やフィラーを用いた場合に、ポリウレタンフォーム用組成物の繊維等への濡れ性が悪くなること、脱型時間が長いこと、脱型時に変形することに関する課題の少なくとも一部を解決する。
【解決手段】繊維強化樹脂成形品10は、繊維11にポリウレタンフォーム用組成物を含浸し硬化させてなる。ポリウレタンフォーム用組成物は、ポリオールと、環式構造を有する3級アミン化合物と、三量化触媒と、イソシアネートと、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維にポリウレタンフォーム用組成物を含浸し硬化させてなる繊維強化樹脂成形品であって、
前記ポリウレタンフォーム用組成物は、
ポリオールと、
環式構造を有する3級アミン化合物と、
三量化触媒と、
イソシアネートと、を含む、繊維強化樹脂成形品。
【請求項2】
ポリオールと、
環式構造を有する3級アミン化合物と、
三量化触媒と、
イソシアネートと、を含む組成物から得られるポリウレタンフォームを備える人工木材。
【請求項3】
ポリオールと、
環式構造を有する3級アミン化合物と、
三量化触媒と、
イソシアネートと、を含む組成物から得られるポリウレタンフォームを備える物品であって、
前記ポリウレタンフォームの外面が意匠面を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、繊維強化樹脂成形品、人工木材、及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、繊維強化樹脂成形品、人工木材、物品等に幅広く用いられている。ポリウレタンフォームは、ポリウレタンフォーム用組成物から得られる。ポリウレタンフォーム用組成物には、種々の組成が開示されている。例えば、特許文献1では、ジブチル錫ジラウレートを含んだポリウレタンフォーム用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭48-030137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリウレタンフォーム用組成物の反応性が高い場合には、以下の課題があった。すなわち、ポリウレタンフォームの表面ボイドや、表面が荒れる等の外観上の問題を引き起こすおそれがあった。また、繊維やフィラーを用いると、ポリウレタンフォーム用組成物の繊維等への含浸性が悪くなるおそれがあった。
他方、ポリウレタンフォーム用組成物の後半の反応性評価に用いられる、例えば、ライズタイムを過度に低下させた場合には、以下の課題があった。すなわち、硬化が遅くなるため、脱型時間の延長や、脱型時の変形等が懸念される。
本開示は、上記課題の少なくとも一部を解決するためのものであり、以下の形態として実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]
繊維にポリウレタンフォーム用組成物を含浸し硬化させてなる繊維強化樹脂成形品であって、
前記ポリウレタンフォーム用組成物は、
ポリオールと、
環式構造を有する3級アミン化合物と、
三量化触媒と、
イソシアネートと、を含む、繊維強化樹脂成形品。
[2]
ポリオールと、
環式構造を有する3級アミン化合物と、
三量化触媒と、
イソシアネートと、を含む組成物から得られるポリウレタンフォームを備える人工木材。
[3]
ポリオールと、
環式構造を有する3級アミン化合物と、
三量化触媒と、
イソシアネートと、を含む組成物から得られるポリウレタンフォームを備える物品であって、
前記ポリウレタンフォームの外面が意匠面を有する物品。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、上記課題の少なくとも一部が解決される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る繊維強化樹脂成形品を示す斜視図である。
図2図1のA-A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。また、本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0009】
1.繊維強化樹脂成形品10
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る繊維強化樹脂成形品を説明する。
図1及び図2に示されるように、繊維強化樹脂成形品10は、繊維11にポリウレタンフォーム用組成物を含浸し硬化させてなる。ポリウレタンフォーム用組成物は、ポリオールと、環式構造を有する3級アミン化合物と、三量化触媒と、イソシアネートと、を含む。
【0010】
1.1 繊維11
繊維11の種類は、繊維強化樹脂成形品10を補強できれば特に限定されない。繊維11としては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の無機繊維、天然繊維、ビニロン繊維やセルロース繊維等の合成繊維等の有機繊維のいずれであってもよい。繊維11は、強度向上の観点から、無機繊維が好ましく、ガラス繊維がより好ましい。繊維は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0011】
ガラス繊維は、ガラス長繊維であることが好ましい。ガラス長繊維の繊維長は、例えば、50mm以上である。ガラス長繊維の繊維長の上限は特に限定されない。例えば、ガラス長繊維の繊維長の上限は、繊維強化樹脂成形品10の長手寸法と同じであってもよい。なお、ガラス長繊維の繊維長は、上記の範囲に限定されない。例えば、後述のチョップドストランド注入成形法等の場合においては、ガラス長繊維の繊維長は、12mm以上1000mm以下が好適である。
ガラス長繊維は、モノフィラメントを引き揃えてロービングしたガラスロービングであってもよい。モノフィラメントの繊維径は、特に限定されず、例えば、5μm以上50μm以下とすることができる。ガラスロービングの番手(g/1000m)は、特に限定されず、例えば、500以上5000以下とすることができる。
【0012】
ガラス繊維とポリウレタンフォーム用組成物との質量比は、特に限定されない。ガラス繊維とポリウレタンフォーム用組成物との質量比は、好ましくは10:90-90:10であり、より好ましくは25:75-75:25であり、更に好ましくは40:60-60:40である。
【0013】
1.2 ポリウレタンフォーム用組成物
ポリウレタンフォーム用組成物は、ポリオールと、環式構造を有する3級アミン化合物と、三量化触媒と、イソシアネートと、を含む。
【0014】
(1)ポリオール
ポリオールは、特に限定されない。各種のポリオールは単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0015】
ポリオールの官能基数及び水酸基価は特に限定されない。ポリオールの官能基数は、2-8であることが好ましく、2.5-6であることがより好ましく、3-5の範囲であることが更に好ましい。ポリオールの水酸基価は、200mgKOH/g-600mgKOH/gであることが好ましく、300mgKOH/g-550mgKOH/gであることがより好ましく、350mgKOH/g-550mgKOH/gであることが更に好ましい。なお、官能基数又は水酸基価の異なる複数のポリオールを用いる場合には、平均官能基数又は平均水酸基価が上記の範囲にあることが好ましい。平均官能基数又は平均水酸基価は、各ポリオールの官能基数又は水酸基価を配合割合に応じて平均した値である。
【0016】
ポリオールの数平均分子量は特に限定されない。ポリオールの数平均分子量は、例えば、200-3000である。なお、数平均分子量の異なる複数のポリオールを用いる場合には、すべてのポリオールの数平均分子量が上記の範囲内であることが好ましい。ポリオールの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定できる。ポリオールが市販品である場合には、カタログ値をポリオールの数平均分子量として採用してもよい。
【0017】
ポリオールの粘度は特に限定されない。ポリオールの粘度は、繊維に液を十分に含浸させるために、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましく、2500mPa・s以下が更に好ましい。ポリオールの粘度は、通常、200mPa・s以上である。なお、ポリオールの粘度は、B型回転式粘度計における25℃、60rpmでの粘度として測定できる。
【0018】
ポリオールの種類は特に限定されない。ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートジオール、主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールが例示される。これらの中でも、耐加水分解性の観点から、ポリエーテルポリオールが用いられることが好ましい。
ポリエーテルポリオールは、例えば、ポリオキシプロピレン・ポリオキシエチレンポリオール、ポリマーポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコールが挙げられる。
ポリエステルポリオールは、例えば、脂肪族系又は芳香族系の重縮合系ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオールが挙げられる。
主鎖が炭素-炭素結合系ポリオールは、例えば、ポリブタジエンポリオール、イソプレンポリオール等のポリオレフィン系ポリオール、植物由来ポリオール、アクリルポリオールが挙げられる。
【0019】
(1.1)ポリエーテルポリオール
ポリエーテルポリオールとして、以下の開始剤(化合物)の1種又は2種以上に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、エピクロロヒドリン、スチレンオキシド等の1種又は2種以上を付加せしめて得られるポリエーテルポリオール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコールが例示される。以下の開始剤の中でも、ポリウレタンフォームに適度な硬さを付与し、耐久性を向上する観点から、開始剤の少なくとも1種として4官能以上8官能以下のアルコールが用いられることが好ましい。
【0020】
(1.1.1)開始剤
(1.1.1.1)多価アルコール、及び多価アルコールのアルキレンオキシド付加物
多価アルコールの例:
〔2官能アルコール〕エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール
〔3官能アルコール〕グリセリン、トリメチロールプロパン
〔4官能アルコール〕ペンタエリスリトール
〔6官能アルコール〕ソルビトール
〔8官能アルコール〕ショ糖
(1.1.1.2)多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物
多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物の例:ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物
(1.1.1.3)多価ヒドロキシ化合物
多価ヒドロキシ化合物の例:りん酸、ベンゼンりん酸、ポリりん酸(例えばトリポリりん酸およびテトラポリりん酸)等
(1.1.1.4)フェノール-アニリン-ホルムアルデヒド三元縮合生成物
(1.1.1.5)アニリン-ホルムアルデヒド縮合生成物
(1.1.1.6)ポリアミン類
ポリアミン類の例:エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メチレンビスオルソクロルアニリン、4,4-および2,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン等
(1.1.1.7)アルカノールアミン類
アルカノールアミン類の例:トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等
【0021】
(1.1.2)ポリマーポリオール
ポリマーポリオールは、既述のポリエーテルポリオールに、アクリロニトリル、スチレン、アルキルメタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させたポリオールである。
【0022】
(1.2)ポリエステルポリオール
ポリエステルポリオールは、少なくとも2個のヒドロキシ基を有する化合物の1種又は2種以上と、少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物の1種又は2種以上との縮合により得られるポリエステルポリオール、又はカプロラクトン、メチルバレロラクトン等の環状エステルの開環重合体類である。
【0023】
(1.2.1)少なくとも2個のヒドロキシ基を有する化合物の例
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール1,3-および1,4-ブタンジオール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール
【0024】
(1.2.2)少なくとも2個のカルボキシル基を有する化合物の例
マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、酒石酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ヘメリット酸
【0025】
(1.3)ポリカーボネートポリオール
ポリカーボネートポリオールとしては、例えばブタンジオールやヘキサンジオール等の低分子ポリオールと、プロピレンカーボネートやジエチルカーボネート等の低分子カーボネートとのエステル交換反応よって得られるもの等が挙げられる。
【0026】
(1.4)ポリオレフィン系ポリオール
ポリオレフィン系ポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリブタジエンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオールが例示される。
【0027】
(1.5)植物由来ポリオール
ポリオールとして、上記のポリオールに加え、植物由来ポリオールを含んでもよい。植物由来ポリオールとしては、例えば、ひまし油系ポリオール、大豆油系ポリオール、パーム油系ポリオール、パーム核油系ポリオール、ヤシ油系ポリオール、カシュー油系ポリオール、オリーブ油系ポリオール、綿実油系ポリオール、サフラワー油系ポリオール、ごま油系ポリオール、ひまわり油系ポリオール、アマニ油系ポリオール等が挙げられる。植物由来のポリオール類は、1分子中の水酸基の官能基数が通常2~3である。
ひまし油系ポリオールとしては、ひまし油、ひまし油とポリオールとの反応物、ひまし油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物等を挙げることができる。ひまし油又はひまし油脂肪酸と反応させるポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロプレングリコールなどの2価のポリオール、あるいはグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ソルビトール等の3価以上のポリオールなどを挙げることができる。
大豆油系ポリオールとしては、大豆油に由来するポリオール、例えば、大豆油とポリオールとの反応物、大豆油脂肪酸とポリオールとのエステル化反応物等が挙げられる。大豆油又は大豆油脂肪酸と反応させるポリオールとしては、上記ひまし油の場合と同様のものを用いることができる。パーム油系ポリオール、カシュー油系ポリオール等についても、大豆油系ポリオールの場合と同様である。なお、植物由来ポリオールとして例示した各種のポリオールは、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0028】
(2)環式構造を有する3級アミン化合物
3級アミン化合物とは、一つの窒素原子が異なる3つの炭素原子と結合した化合物を指す。3級アミン化合物は、ウレタン触媒(樹脂化触媒、泡化触媒)として用いられる。環式構造を有する3級アミン化合物は、例えば、直鎖状構造を有する3級アミン化合物に比して、泡化活性が低い傾向にある。よって、環式構造を有する3級アミン化合物を用いることで、ポリウレタンフォーム用組成物の初期の反応性を抑えることが可能となる。例えば、環式構造を有する3級アミン化合物を用いた場合に、ポリウレタンフォーム用組成物のクリームタイムを、好ましくは70秒以上、より好ましくは2分30秒以上3分20秒以下(150秒以上200秒以下)とすることができる。
【0029】
環式構造としては、窒素を含有する環式構造、及び/又は窒素に結合する炭素が含まれる環式構造が例示される。環式構造は、ベンゼン環、モルホリン環、イミダゾール環、ピペラジン環、及びシクロヘキサン環から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。環式構造を有する3級アミン化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0030】
ベンゼン環を有する3級アミン化合物は、例えば、ベンゼン環を有する1つの置換基と、同一又は異なる炭素数1-8の2つのアルキル基が、窒素原子に結合した構造を有する。ベンゼン環を有する3級アミン化合物としては、DMBA(N,N-dimethylbenzylamine)を例示できる。
【0031】
モルホリン環を有する3級アミン化合物は、例えば、モルホリン環を構成する窒素原子に炭素数1-8のアルキル基が結合した構造を有する。モルホリン環を有する3級アミン化合物としては、N-methyl morpholine、N-ethylmorpholine、N-(N’,N’-dimethylaminoethyl)morpholineを例示できる。
【0032】
イミダゾール環を有する3級アミン化合物は、例えば、イミダゾール環を構成する窒素原子に炭素数1-8のアルキル基が結合した構造を有する。イミダゾール環を有する3級アミン化合物としては、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾールを例示できる。
【0033】
ピペラジン環を有する3級アミン化合物は、例えば、ピペラジン環を構成する窒素原子の少なくとも1つに炭素数1-8のアルキル基が結合した構造を有する。ピペラジン環を有する3級アミン化合物としては、N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N’-ジメチルアミノエチルピペラジン、bis(N,N-dimethylaminoethyl-piperazinyl)ethaneを例示できる。
【0034】
シクロヘキサン環を有する3級アミン化合物は、例えば、シクロヘキサン環を有する置換基と、同一又は異なる炭素数1-8の2つのアルキル基と、が窒素原子に結合した構造を有する。シクロヘキサン環を有する3級アミン化合物としては、DMCHA(N,N-Dimethylcyclohexylamine)、MDCHA(N,N-Dicyclohexylmethylamine)を例示できる。
【0035】
環式構造を有する3級アミン化合物の含有量は、特に限定されない。環式構造を有する3級アミン化合物の含有量は、ポリオール100質量部に対して、ポリウレタンの生成反応を十分に促進させる観点から、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.15質量部以上が更に好ましい。他方、ポリウレタンフォーム用組成物の初期の反応性を抑える観点から、3.0質量部以下が好ましく、2.0質量部以下がより好ましく、1.0質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、上記の環式構造を有する3級アミン化合物の含有量は、0.05質量部以上3.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上2.0質量部以下がより好ましく、0.15質量部以上1.0質量部以下が更に好ましい。
【0036】
環式構造を有する3級アミン化合物は、DMBA(N,N-dimethylbenzylamine)、N-methyl morpholine、及びN-ethylmorpholineからなる群より選ばれる1種以上(以下、3級アミン化合物Aとも称する)であることが好ましい。
【0037】
3級アミン化合物Aの含有量は、特に限定されない。3級アミン化合物Aの含有量は、ポリオール100質量部に対して、ポリウレタンの生成反応を十分に促進させる観点から、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.15質量部以上が更に好ましい。他方、ポリウレタンフォーム用組成物の初期の反応性を抑える観点から、3.0質量部以下が好ましく、2.0質量部以下がより好ましく、1.0質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、上記の3級アミン化合物Aの含有量は、0.05質量部以上3.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上2.0質量部以下がより好ましく、0.15質量部以上1.0質量部以下が更に好ましい。
【0038】
(3)三量化触媒
三量化触媒は、イソシアネートに含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進する触媒である。本願発明者らは、環式構造を有する3級アミン化合物と三量化触媒を併用することによって、ポリウレタンフォーム用組成物の初期の反応性を抑えつつ、ポリウレタンフォーム用組成物の後半の反応性を向上できることを新たに見出し、本開示の技術を開発した。例えば、環式構造を有する3級アミン化合物と三量化触媒を併用した場合に、ポリウレタンフォーム用組成物のクリームタイムを、70秒以上としつつ、ライズタイムを3分20秒から8分までの範囲とすることができる。好ましくはライズタイムを、5分30秒から7分10秒(330秒以上430秒以下)とすることができる。
【0039】
三量化触媒としては、酢酸カリウム、2-エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩;トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4-ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン等の窒素含有芳香族化合物;トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリフェニルアンモニウム塩等の3級アンモニウム塩;テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム、テトラフェニルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩等などが挙げられる。これらの中でも、カルボン酸アルカリ金属塩が好ましく、カルボン酸カリウムがより好ましい。三量化触媒は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
三量化触媒の含有量は、特に限定されない。三量化触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、ポリウレタンフォーム用組成物の後半の反応性を向上する観点から、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.08質量部以上が更に好ましい。他方、ポリウレタンフォーム用組成物の初期の反応性を抑える観点から、1.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましく、0.3質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、上記の三量化触媒の含有量は、0.01質量部以上1.0質量部以下が好ましく、0.05質量部以上0.5質量部以下がより好ましく、0.08質量部以上0.3質量部以下が更に好ましい。
【0041】
(4)発泡剤(任意成分)
ポリオール組成物には、発泡剤が含まれていることが好ましい。発泡剤は、水、ハイドロハロオレフィン、炭素数4-8のアルカンからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。これらの中でも、水であることが好ましい。発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
水の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上が更に好ましい。他方、水の含有量は、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましく、2質量部以下が更に好ましい。これらの観点から、水の含有量は、ポリオール100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.3質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上2質量部以下が更に好ましい。
【0043】
(5)イソシアネート
イソシアネートは、特に限定されない。イソシアネートとしては、芳香族系イソシアネート、脂環式イソシアネート、及び脂肪族系イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種以上が好適に採用される。脂肪族系イソシアネートの1種類以上と、芳香族系イソシアネートの1種類以上を併用してもよい。
また、イソシアネートは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネート、1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートのいずれであってもよく、単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
例えば、2官能のイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート等の芳香族系イソシアネート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート等の脂肪族系イソシアネートを挙げることができる。
また、3官能以上のイソシアネートとしては、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4"-トリイソシアネート、ポリメリックMDI等を挙げることができる。
なお、その他ウレタンプレポリマーやカルボジイミド変性イソシアネート、イソシアヌレート変性イソシアネート、ビュレット変性イソシアネートも使用することができる。
【0044】
ポリオールとイソシアネートとの配合割合は特に限定されない。ポリオールとイソシアネートとの配合割合は、イソシアネートインデックスに応じて規定できる。イソシアネートインデックスは80以上200以下が好ましく、90以上150以下がより好ましく、100以上130以下が更に好ましい。イソシアネートインデックス(INDEX)は、ポリオール組成物中に含まれる活性水素基1モルに対するイソシアネート成分のモル数を100倍した値であり、[(イソシアネート成分のイソシアネート当量/ポリオール組成物中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0045】
(6)その他の成分(任意成分)
ポリオール組成物には、その他の成分として、整泡剤、難燃剤、溶剤、界面活性剤、着色剤、酸化防止剤等の添加剤が含まれていてもよい。
これらの添加剤の含有量は、ポリウレタンフォームの泡化反応及び樹脂化反応に影響を及ぼさない範囲内において、得られるポリウレタンフォームの所望の物性に応じて適宜調整することができる。添加剤の合計の配合量は、例えば、ポリオール100質量部に対して1質量部以上30質量部以下とすることができる。
【0046】
(7)ポリウレタンフォームの物性
ポリウレタンフォーム用組成物から得られるポリウレタンフォームの物性は、用途等に応じて適宜設定できる。ポリウレタンフォームは、以下の物性を備えることが好ましい。
(7.1)密度(見かけ全体密度)
見かけ全体密度(JIS K7222:2005準拠)は、70kg/m-300kg/mが好ましく、90kg/m-250kg/mがより好ましく、110kg/m-200kg/mが更に好ましい。なお、上記の見掛け密度は、例えばフリー発泡時の密度である。
(7.2)圧縮強さ
圧縮強さ(JIS K7220:2006準拠)は、50N/cm以上が好ましく、80N/cm以上がより好ましく、100N/cm以上が更に好ましい。圧縮強さの上限値は特に限定されない。圧縮強さの上限値は、通常、300N/cm以下である。
【0047】
2.繊維強化樹脂成形品の製造方法
繊維強化樹脂成形品は、成形可能である。繊維強化樹脂成形品の製造方法は特に限定されない。繊維強化樹脂成形品の製造方法は、例えば、繊維にポリウレタンフォーム用組成物を含浸し硬化させる。繊維強化樹脂成形品の製造方法としては、チョップドストランド注入成形法、ガラス不織布への含浸方法、引き揃えられた繊維11への含浸方法等が挙げられる。
【0048】
2.1 チョップドストランド注入成形法
チョップドストランド注入成形法は、ウレタン原料と、ガラス長繊維を同時吐出する繊維強化樹脂成形品の製造方法である。例えば、イソシアネートとポリオールとを混合し、好ましくは混合ヘッドにおいて、切断した繊維を混合物に滴らせ、次いで、材料を型および/または支持体に噴霧し、続いてそこで硬化させる。
【0049】
チョップドストランド注入成形法によれば、例えば次のような物性の繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
繊維強化樹脂成形品の密度は、例えば、500kg/m以上1500kg/m以下、650kg/m以上1350kg/m以下、800kg/m以上1200kg/m以下とすることができる。
繊維強化樹脂成形品のガラス含有量は、例えば、繊維強化樹脂成形品全体を100質量%とした場合に3質量%以上50質量%以下、5質量%以上40質量%以下、8質量%以上35質量%以下とすることができる。
繊維強化樹脂成形品の曲げ強さ(JIS K7017準拠)は、例えば、50N/mm以上200N/mm以下、60N/mm以上160N/mm以下、70N/mm以上120N/mm以下とすることができる。
繊維強化樹脂成形品の曲げ弾性率(JIS K7017準拠)は、例えば、1000N/mm以上10000N/mm以下、1500N/mm以上8000N/mm以下、2000N/mm以上5000N/mm以下とすることができる。
【0050】
2.2 ガラス不織布への含浸方法
ガラス不織布への含浸方法は、例えば、ガラス繊維マットを敷き、敷かれたガラス繊維マットに原料を含浸させる方法である。このような方法は、いわゆるバッチ方式とも称される。
【0051】
2.3 引き揃えられた繊維11への含浸方法
図1及び図2の繊維強化樹脂成形品10の製造方法では、複数の繊維11を所定間隔に引き揃える。一方向に長い繊維強化樹脂成形品10を連続的に製造する場合には、複数の繊維11を引き揃えながら、繊維11の長さ方向に進行させるとよい。
【0052】
続いて、引き揃えられた複数の繊維11にポリウレタンフォーム用組成物を付着させる。例えば、引き揃えられた複数の繊維11に上方から液状のポリウレタンフォーム用組成物をかけたり、引き揃えられた複数の繊維11をポリウレタンフォーム用組成物に浸漬させたりして、ポリウレタンフォーム用組成物を付着させる。複数の繊維11間にポリウレタンフォーム用組成物を行き渡らせるために、ポリウレタンフォーム用組成物が付着した複数の繊維11を部材の間で挟んだり、揺動させたりしてもよい。
【0053】
続いて、ポリウレタンフォーム用組成物が付着した複数の繊維11を成形しつつ、加熱する。例えば、一方向に長い繊維強化樹脂成形品10を連続的に製造する場合には、ポリウレタンフォーム用組成物が付着した複数の繊維11の束を、所定の断面形状を有する成形通路に通して成形しつつ、加熱するとよい。すると、加熱されたポリウレタンフォーム用組成物が発泡、硬化して、繊維強化樹脂成形品10が得られる。
【0054】
このようにして作製された繊維強化品の密度は、例えば、例えば、500kg/m以上1500kg/m以下、600kg/m以上1350kg/m以下、700kg/m以上900kg/m以下とすることができる。
繊維強化樹脂成形品のガラス含有量は、例えば、繊維強化樹脂成形品全体を100質量%とした場合に10質量%以上80質量%以下、20質量%以上70質量%以下、30質量%以上60質量%以下とすることができる。
繊維強化樹脂成形品の曲げ強さ(JIS K7017準拠)は、例えば、50N/mm以上300N/mm以下、100N/mm以上250N/mm以下、150N/mm以上200N/mm以下とすることができる。
繊維強化樹脂成形品の曲げ弾性率(JIS K7017準拠)は、例えば、5000N/mm以上15000N/mm以下、6000N/mm以上13000N/mm以下、7000N/mm以上11000N/mm以下とすることができる。
【0055】
繊維強化樹脂成形品10の用途は特に限定されない。繊維強化樹脂成形品10は、機械的強度、耐久性、軽量性等の諸物性に優れ、枕木、建築材、簡易橋等として好適である。
【0056】
3.人工木材
本開示の人工木材は、ポリオールと、環式構造を有する3級アミン化合物と、三量化触媒と、イソシアネートと、を含む組成物(ポリウレタンフォーム用組成物)から得られるポリウレタンフォームを備える。人工木材は、例えば、表面に木目模様を有するポリウレタンフォームの成形体である。
【0057】
人工木材において、「ポリオール」「環式構造を有する3級アミン化合物」「三量化触媒」「イソシアネート」「ポリウレタンフォームの物性」については、「繊維強化樹脂成形品10」の欄における説明をそのまま適用し、その記載は省略する。すなわち、「繊維強化樹脂成形品10」の項目で説明した「ポリオール」「環式構造を有する3級アミン化合物」「三量化触媒」「イソシアネート」「ポリウレタンフォームの物性」をそのまま適用する。
組成物は、繊維、木くず等の充填剤を更に含んでいてもよい。組成物は、「繊維強化樹脂成形品10」の欄における「発泡剤(任意成分)」「その他の成分(任意成分)」に記載の成分を含んでいてもよい。
【0058】
4.人工木材の製造方法
人工木材の製造方法の一例について説明する。人工木材の製造方法は、例えば、ポリウレタンフォームの成形体の表面に凹凸を付与し、木目模様を形成する。このような人工木材は、例えば、成形型を用いて製造できる。この成形型の型面は、天然木の木目の凹凸形状が反転した形状をなす。人工木材の製造方法は、組成物を、型面に接触させた状態で発泡、硬化させる。ポリウレタンフォームの成形体の表面に、型面の凹凸形状を転写して凹凸を付与する。本開示のポリウレタンフォーム用組成物は、初期の反応性が抑制されているから、組成物が硬化する前に型面に十分に接触させることができ、型面の凹凸形状を好適に転写できる。
【0059】
人工木材の用途は特に限定されない。人工木材は、例えば、ウッドデッキ等の建築材として好適である。
【0060】
5.ポリウレタンフォームの外面が意匠面を有する物品
本開示の物品は、ポリオールと、環式構造を有する3級アミン化合物と、三量化触媒と、イソシアネートと、を含む組成物(ポリウレタンフォーム用組成物)から得られるポリウレタンフォームを備える。物品は、ポリウレタンフォームの外面が意匠面を有する。物品は、例えば、ポリウレタンフォームの成形体からなる。すなわち、ポリウレタンフォームの成形体における、成形型の成形面に接触していた面が意匠面となるとよい。意匠面の形状は、特に限定されない。意匠面は、シボ模様、木目模様、幾何学模様等の凹凸形状を有していてもよく、また、滑らかな面であってもよい。
【0061】
物品において、「ポリオール」「環式構造を有する3級アミン化合物」「三量化触媒」「イソシアネート」「ポリウレタンフォームの物性」については、「繊維強化樹脂成形品10」の欄における説明をそのまま適用し、その記載は省略する。すなわち、「繊維強化樹脂成形品10」の項目で説明した「ポリオール」「環式構造を有する3級アミン化合物」「三量化触媒」「イソシアネート」「ポリウレタンフォームの物性」をそのまま適用する。
組成物は、繊維等の充填剤を更に含んでいてもよい。組成物は、「繊維強化樹脂成形品10」の欄における「発泡剤(任意成分)」「その他の成分(任意成分)」に記載の成分を含んでいてもよい。
【0062】
6.上記の物品の製造方法
上記の物品の製造方法の一例について説明する。上記の物品は、例えば、成形型を用いて製造できる。この成形型の型面は、意匠面に対応した形状を有する。具体的には、意匠面が凹凸形状の場合には、成形型の型面は、意匠面の凹凸形状が反転した形状をなす。意匠面が滑らかな面の場合には、成形型の型面は、滑らかな面とされる。上記の物品の製造方法は、組成物を、型面に接触させた状態で発泡、硬化させる。ポリウレタンフォームの成形体の表面に、型面の形状を転写して意匠面を成形する。本開示のポリウレタンフォーム用組成物は、初期の反応性が抑制されているから、組成物が硬化する前に型面に十分に接触させることができ、型面の形状を好適に転写できる。
【0063】
上記の物品の用途は特に限定されない。上記の物品は、例えば、エクステリアパーツ等の建築材、車両用外装材、車両用内装材、木材の代用品等として好適である。
【実施例0064】
1.ポリウレタンフォーム用組成物のポリオール組成物(A液)の作製
表1-4の実験例1-23のポリウレタンフォーム用組成物のポリオール組成物(A液)を作製した。実験例1-6,10-13,17-23は、実施例である。実験例7-9,14-16は、比較例である。表1-4において、「7*」のように、「*」が付されている場合には、比較例であることを示している。
【0065】
下記のポリオール1と、ポリオール2を40/60(質量部)にて混合した。このポリオールの合計量を100質量%とした場合に、発泡剤(水)0.75質量%、整泡剤3質量%を加えた。この混合液に、表1-4の各サンプルに記載の環式3級アミン化合物1-7、直鎖状3級アミン化合物1-3、三量化触媒1,2を表1-4の配合割合で追加し、ポリオール組成物(A液を)得た。表1-4中、環式3級アミン化合物1-7は、環状構造を有する3級アミン化合物を表す。表1-4の配合割合は、ポリオール全体を100質量部とした場合の各化合物の配合量(質量部)である。「-」は当該成分を加えていないことを表す。
【0066】
各原料の詳細は以下の通りである。
・ポリオール1:ペンタエリスリトールを開始剤としたポリエーテルポリオール、水酸基価400mgKOH/g
・ポリオール2:グリセリンを開始剤としたポリエーテルポリオール、水酸基価400mgKOH/g
・発泡剤:水
・整泡剤:シリコーン界面活性剤、ダウ・東レ社製、SF2945
・環式3級アミン化合物1:DMBA(N,N-dimethylbenzylamine)
・環式3級アミン化合物2:N-methyl morpholine
・環式3級アミン化合物3:N-ethylmorpholine
・環式3級アミン化合物4:1-イソブチル-2-メチルイミダゾール
・環式3級アミン化合物5:1-メチルイミダゾール
・環式3級アミン化合物6:N,N’,N’-トリメチルアミノエチルピペラジン
・環式3級アミン化合物7:DMCHA(N,N-Dimethylcyclohexylamine)
・直鎖状3級アミン化合物1:TMHMDA(N,N,N’,N’-Tetramethyl-1,6-hexanediamine)
・直鎖状3級アミン化合物2:PMDETA(N,N,N’,N’’,N’’-Pentamethyldiethylenetriamine)
・直鎖状3級アミン化合物3:70%ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル,30%DPG
・三量化触媒1:酢酸カリウム
・三量化触媒2:オクチル酸カリウム
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
2.ポリウレタンフォームの作製
イソシアネート(B液)として、以下の原料を用いた。
・イソシアネート:ポリメリックMDI、フォームライト200B、BASF INOAC ポリウレタン社製
【0072】
上記のポリオール組成物(A液)と、上記のイソシアネート(B液)とを混合してポリウレタンフォーム用組成物を作製した。A液とB液は、100/165の比率(A液/B液、質量比)で混合した。ポリウレタンフォーム用組成物から、フリー発泡によってポリウレタンフォームを得た。
【0073】
フリー発泡は次の手順により行った。
ポリオール組成物(A液)と、イソシアネート(B液)とを25℃の液温に調整した。フリー発泡用の型として、サイズ100mm×100mm×200mmのプラスチックボックスを用いた。
上記の型内で上記のポリウレタンフォーム用組成物をフリー発泡させ、ポリウレタンフォームを得た。
【0074】
ポリウレタンフォーム用組成物の反応性(クリームタイム、ゲルタイム、ライズタイム)を以下の手法により測定した。
クリームタイム:上記混合液において、クリーム状には白濁して立ち上がってくるまでの時間をクリームタイム(秒)として測定した。
ゲルタイム:上記混合液において、増粘しゲル化が始まるまでの時間をゲルタイム(秒)として測定した。
ライズタイム:上記混合液において、発泡によるフォームの上昇が停止するまでの時間をライズタイム(秒)として測定した。
なお、上記測定においては、ポリオール組成物(A液)と、イソシアネート(B液)との混合を開始した時間をゼロ秒として測定した。判定は、目視により行った。
【0075】
3. 評価方法
(1)密度(見かけ全体密度)
得られたポリウレタンフォームの見かけ全体密度は、JIS K7222:2005に準拠して測定した。
(2)圧縮強さ
得られたポリウレタンフォームの圧縮強さは、JIS K7220:2006に準拠して測定した。
(3)表面の最高温度、表面の最高温度到達時間、タック(表面のべたつき)の有無
実験例1,2,17-23と、実験例7,8について、ポリウレタンフォーム用組成物の反応時における表面の最高温度(℃)と、表面の最高温度に到達するまでの時間を測定した。また、得られた実験例1,2,17-23のポリウレタンフォームと、実験例7,8のポリウレタンフォームの表面を手で触って、タックの有無を確認した。
【0076】
4. 結果
結果を表1-4に併記する。表1-4の密度、圧縮強さ、表面の最高温度、表面の最高温度到達時間、タック(表面のべたつき)の有無の欄において、「-」は評価を行っていないことを表す。
【0077】
実験例1-6,10-13,17-23は、下記の要件(a)、(b)を満たす。
要件(a):ポリウレタンフォーム用組成物は、環式構造を有する3級アミン化合物を含む。
要件(b):ポリウレタンフォーム用組成物は、三量化触媒を含む。
【0078】
これに対して、実験例7-9は、要件(b)を満たしていない。実験例14-16は、要件(a)を満たしていない。
要件(a)、(b)を満たす実験例1-6,10-13,17-23は、要件(a)を満たしていない実験例14-16よりもクリームタイムが長かった。また、要件(a)、(b)を満たす実験例1-6,10-13,17-23は、ライズタイムが3分23秒から7分49秒までであった。よって、要件(a)、(b)を満たすことによって、ポリウレタンフォーム用組成物の反応性を適度に抑制しつつ、後半の反応性(例えば、ライズタイム)を向上できることが示唆された。
【0079】
なお、ポリウレタンフォーム用組成物の反応性を抑制できれば、ポリウレタンフォームの表面が荒れ改善に寄与できると考えられる。また、ポリウレタンフォーム用組成物の反応性を抑制できれば、繊維やフィラーを用いた場合に、ポリウレタンフォーム用組成物の繊維等への濡れ性の改善に寄与できると考えられる。
後半の反応性(例えば、ライズタイム)を向上できれば、脱型時間の短縮に寄与できると考えられる。また、後半の反応性(例えば、ライズタイム)を向上できれば、脱型時の変形の抑制に寄与できると考えられる。
【0080】
要件(a)、(b)を満たす実験例1,2,17-23は、要件(b)を満たしていない実験例7,8よりも表面の最高温度が高く、また、表面の最高温度に到達する時間も早かった。要件(a)、(b)を満たす実験例1,2,17-23は、タックがなかった。他方、要件(b)を満たしていない実験例7,8は、タックがあった。よって、要件(a)、(b)を満たすことによって、ポリウレタンフォーム用組成物の反応性を調整しつつ、タックを低減できることが示唆された。
【0081】
なお、タックを低減できれば、ポリウレタンフォームの意匠性向上に寄与できると考えられる。また、生産サイクルの向上も期待される。
【0082】
以上の実施例によれば、ポリウレタンフォームの表面性が悪くなること、繊維やフィラーを用いた場合に、ポリウレタンフォーム用組成物の繊維等への含浸性が悪くなること、脱型時間が長いこと、脱型時に変形することに関する課題の少なくとも一部を解決できた。
【0083】
本開示は上記で詳述した実施例に限定されず、本開示の範囲で様々な変形又は変更が可能である。
【符号の説明】
【0084】
10…繊維強化樹脂成形品
11…繊維
図1
図2