(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158395
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/085 20060101AFI20241031BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02K15/085
H02K15/04 A
H02K15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073556
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】山内 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】中川 修
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 圭祐
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP14
5H615QQ03
5H615QQ12
5H615SS04
5H615SS16
5H615TT14
5H615TT15
(57)【要約】
【課題】コイルエンド部の軸方向における長さを比較的小さくすることが可能なステータの製造方法を提供する。
【解決手段】このステータ100の製造方法は、互いにC方向(周方向)に隣り合うコイルエンド用部分32Aのうちの一方である一方側コイルエンド用部分32Bが互いにC方向に隣り合うコイルエンド用部分32Aのうちの他方である他方側コイルエンド用部分32Cを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向に沿った方向に相対移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する曲げ成形工程(S50)を備える。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルエンド部となるコイルエンド用部分がステータコアの軸方向の端面から前記軸方向に沿って前記軸方向の外側に突出するように、前記ステータコアの複数のスロットの各々に前記コイルエンド用部分を含むセグメントコイルを挿入するセグメントコイル挿入工程と、
前記セグメントコイル挿入工程の後に、複数の前記コイルエンド用部分の各々が前記コイルエンド用部分に沿って延びるように形成された曲げ成形用治具の凹部に挿入された状態で、前記曲げ成形用治具を前記ステータコアに対して前記ステータコアの周方向に沿った方向に相対移動させることによって、前記複数のコイルエンド用部分の各々を前記周方向に折り曲げ成形する曲げ成形工程と、を備え、
前記曲げ成形工程は、互いに前記周方向に隣り合う前記コイルエンド用部分のうちの一方である一方側コイルエンド用部分が互いに前記周方向に隣り合う前記コイルエンド用部分のうちの他方である他方側コイルエンド用部分を押圧するように前記曲げ成形用治具を前記ステータコアに対して前記周方向に沿った方向に相対移動させながら、前記複数のコイルエンド用部分の各々を前記周方向に折り曲げ成形する工程である、ステータの製造方法。
【請求項2】
前記曲げ成形工程は、前記一方側コイルエンド用部分が前記他方側コイルエンド用部分における前記ステータコア側の湾曲部のうちの前記一方側コイルエンド用部分側の面を押圧するように前記曲げ成形用治具を前記ステータコアに対して前記周方向に沿った方向に相対移動させながら、前記複数のコイルエンド用部分の各々を前記周方向に折り曲げ成形する工程である、請求項1に記載のステータの製造方法。
【請求項3】
前記曲げ成形工程は、前記一方側コイルエンド用部分における前記曲げ成形用治具側の湾曲部のうちの前記他方側コイルエンド用部分の面が前記他方側コイルエンド用部分における前記ステータコア側の前記湾曲部のうちの前記一方側コイルエンド用部分側の面を押圧するように前記曲げ成形用治具を前記ステータコアに対して前記周方向に沿った方向に相対移動させながら、前記複数のコイルエンド用部分の各々を前記周方向に折り曲げ成形する工程である、請求項2に記載のステータの製造方法。
【請求項4】
前記曲げ成形工程の前に、前記曲げ成形工程において前記曲げ成形用治具を前記ステータコアに対して前記周方向に沿った方向に相対移動させながら前記複数のコイルエンド用部分の各々を前記周方向に折り曲げ成形する際に、前記一方側コイルエンド用部分における前記曲げ成形用治具側の前記湾曲部のうちの前記他方側コイルエンド用部分の面が前記他方側コイルエンド用部分における前記ステータコア側の前記湾曲部のうちの前記一方側コイルエンド用部分側の面を押圧するように、前記曲げ成形用治具の前記ステータコアに対する前記軸方向の位置を調整する軸方向位置調整工程をさらに備える、請求項3に記載のステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、曲げ成形用治具をステータコアに対してステータコアの周方向に沿った方向に相対移動させることによって、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形するステータの製造方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数のコイルセグメントの開放端部(コイルエンド用部分)の各々の先端部がリングベルト(曲げ成形用治具)の保持溝に拘束(固定)された状態で、リングベルトをステータコアに対してステータコアの周方向に沿った方向に移動させることによって、複数のコイルセグメントの開放端部の各々を周方向に折り曲げ成形するコイルセグメント端部の曲げ方法(ステータの製造方法)が開示されている。なお、上記特許文献1に記載されているコイルセグメント端部の曲げ方法(ステータの製造方法)では、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、互いに周方向に隣り合う開放端部同士が接触していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている従来のコイルセグメント端部の曲げ方法(ステータの製造方法)では、複数のコイルセグメントの開放端部(コイルエンド用部分)の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、複数のコイルセグメントの開放端部の先端部の各々がリングベルト(曲げ成形用治具)の保持溝に拘束(固定)された状態であるとともに、互いに周方向に隣り合う開放端部同士が接触していないので、複数のコイルセグメントの開放端部の各々を周方向に折り曲げ成形する際の、リングベルトによる開放端部への荷重が、常に、開放端部のうちのリングベルト側の端部のみに作用する。すなわち、複数のコイルセグメントの開放端部の各々を周方向に折り曲げ成形する際の、リングベルトによる開放端部への荷重が、常に、開放端部のうちのステータコア側の端部から比較的遠い位置におけるリングベルトによる開放端部への荷重のみとなる。この場合、周方向に折り曲げ成形した後の複数のコイルセグメントの開放端部の各々のステータコア側の湾曲部の曲率半径が比較的大きくなりやすい。これに伴って、コイルエンド部の軸方向における長さが比較的大きくなりやすい。このため、コイルエンド部の軸方向における長さ(高さ)を比較的小さくすることが可能なステータの製造方法が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、コイルエンド部の軸方向における長さ(高さ)を比較的小さくすることが可能なステータの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるステータの製造方法は、コイルエンド部となるコイルエンド用部分がステータコアの軸方向の端面から軸方向に沿って軸方向の外側に突出するように、ステータコアの複数のスロットの各々にコイルエンド用部分を含むセグメントコイルを挿入するセグメントコイル挿入工程と、セグメントコイル挿入工程の後に、複数のコイルエンド用部分の各々がコイルエンド用部分に沿って延びるように形成された曲げ成形用治具の凹部に挿入された状態で、曲げ成形用治具をステータコアに対してステータコアの周方向に沿った方向に相対移動させることによって、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する曲げ成形工程と、を備え、曲げ成形工程は、互いに周方向に隣り合うコイルエンド用部分のうちの一方である一方側コイルエンド用部分が互いに周方向に隣り合うコイルエンド用部分のうちの他方である他方側コイルエンド用部分を押圧するように曲げ成形用治具をステータコアに対して周方向に沿った方向に相対移動させながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する工程である。なお、本願明細書では、「凹部」は、スリット状の凹部、溝状の凹部、孔状の凹部、等を含む広い概念である。また、本願明細書では、「…方向」は、…方向そのものと、…方向に比較的近い方向との両方を含む広い概念である。
【0008】
この発明の一の局面におけるステータの製造方法では、上記のように、曲げ成形工程は、互いに周方向に隣り合うコイルエンド用部分のうちの一方である一方側コイルエンド用部分が互いに周方向に隣り合うコイルエンド用部分のうちの他方である他方側コイルエンド用部分を押圧するように曲げ成形用治具をステータコアに対して周方向に沿った方向に相対移動させながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する工程である。これにより、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分が他方側コイルエンド用部分を押圧することによって、曲げ成形用治具によるコイルエンド用部分への荷重に加えて、コイルエンド用部分のうちのステータコア側の端部から比較的近い位置において隣り合うコイルエンド用部分によるコイルエンド用部分への荷重を作用させることができる。これにより、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分が他方側コイルエンド用部分を押圧しない場合と比較して、周方向に折り曲げ成形した後の複数のコイルエンド用部分の各々のステータコア側の湾曲部の曲率半径を小さくすることができる。その結果、コイルエンド部の軸方向における長さ(高さ)を比較的小さくすることができる。
【0009】
上記一の局面によるステータの製造方法において、好ましくは、曲げ成形工程は、一方側コイルエンド用部分が他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部のうちの一方側コイルエンド用部分側の面を押圧するように曲げ成形用治具をステータコアに対して周方向に沿った方向に相対移動させながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する工程である。
【0010】
このように構成すれば、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分が他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部のうちの一方側コイルエンド用部分側の面を押圧するので、複数のコイルエンド用部分の各々のステータコア側の湾曲部を効果的に曲げることができる。その結果、周方向に折り曲げ成形した後の複数のコイルエンド用部分の各々のステータコア側の湾曲部の曲率半径をより小さくすることができる。
【0011】
上記一の局面によるステータの製造方法において、好ましくは、曲げ成形工程は、一方側コイルエンド用部分における曲げ成形用治具側の湾曲部のうちの他方側コイルエンド用部分側の面が他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部のうちの一方側コイルエンド用部分側の面を押圧するように曲げ成形用治具を前記ステータコアに対して周方向に沿った方向に相対移動させながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する工程である。
【0012】
このように構成すれば、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分における曲げ成形用治具側の湾曲部のうちの他方側コイルエンド用部分に対して凸状の部分で、他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部のうちの一方側コイルエンド用部分に対して凸状の部分を押圧するので、複数のコイルエンド用部分の各々のステータコア側の湾曲部をより効果的に曲げることができる。その結果、周方向に折り曲げ成形した後の複数のコイルエンド用部分の各々のステータコア側の湾曲部の曲率半径をより一層小さくすることができる。
【0013】
上記一の局面によるステータの製造方法は、好ましくは、曲げ成形工程の前に、曲げ成形工程において曲げ成形用治具をステータコアに対して周方向に沿った方向に相対移動させながら複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分における曲げ成形用治具側の湾曲部のうちの他方側コイルエンド用部分側の面が他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部のうちの一方側コイルエンド用部分側の面を押圧するように、曲げ成形用治具のステータコアに対する軸方向の位置を調整する軸方向位置調整工程をさらに備える。
【0014】
このように構成すれば、軸方向位置調整工程を行うことによって、曲げ成形工程において複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分における曲げ成形用治具側の湾曲部のうちの他方側コイルエンド用部分側の面によって、他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部のうちの一方側コイルエンド用部分側の面を確実に押圧させることができる。
【0015】
なお、本出願では、上記一の局面によるステータの製造方法において、以下のような構成も考えられる。
【0016】
(付記項1)
上記一の局面によるステータの製造方法において、好ましくは、曲げ成形工程は、複数のコイルエンド用部分の各々の曲げ成形用治具の凹部に挿入されている部分の長さが徐々に小さくなるように曲げ成形用治具をステータコアに対して周方向に沿った方向に相対移動させながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する工程である。
【0017】
このように構成すれば、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、複数のコイルエンド用部分の各々の曲げ成形用治具の凹部に挿入されている部分の長さが徐々に小さくなるので、曲げ成形用治具によるコイルエンド用部分への荷重作用点を、コイルエンド用部分のうちのステータコア側から曲げ成形用治具側に移動させることができる。すなわち、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、曲げ成形用治具によるコイルエンド用部分への荷重作用点が、コイルエンド用部分のステータコア側の端部から比較的近い位置から比較的遠い位置に変化する。これにより、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、曲げ成形用治具によるコイルエンド用部分への荷重作用点が、常に、コイルエンド用部分のステータコア側の端部から比較的遠い位置にある場合と比較して、周方向に折り曲げ成形した後の複数のコイルエンド用部分の各々のステータコア側の湾曲部の曲率半径を小さくすることができる。その結果、コイルエンド部の軸方向の長さ(高さ)を比較的小さくすることができる。また、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、複数のコイルエンド用部分の各々の曲げ成形用治具の凹部に挿入されている部分の長さが徐々に小さくなるので、複数のコイルエンド用部分の各々が曲げ成形用治具の凹部に拘束されずに、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形することができる。これにより、コイルエンド用部分に対して曲げ成形用治具による過度な引張力が作用するのを抑制しながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形することができる。その結果、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、コイルエンド用部分の被膜が摩耗または剥離したりコイルエンド用部分が引き延ばされたりするのを抑制しながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形することができる。
【0018】
(付記項2)
上記ステータの製造方法が軸方向位置調整工程を備える構成において、好ましくは、曲げ成形工程は、一方側コイルエンド用部分が他方側コイルエンド用部分を押圧するように曲げ成形用治具をステータコアの端面と平行な方向に沿った方向で、かつ、周方向に沿った方向に相対移動させながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する工程である。
【0019】
このように構成すれば、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、曲げ成形用治具をステータコアに対して相対移動させる方向がステータコアの端面と平行な方向に沿っているので、曲げ成形用治具のステータコアに対する軸方向の位置が過度に変化しない。これにより、軸方向位置調整工程における曲げ成形用治具のステータコアに対する軸方向の位置の調整が複雑化するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるステータを示した平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるステータのコイルを示した模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるステータの製造フローを示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるステータの製造フローにおけるステータコア形成工程を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるステータの製造フローにおけるセグメントコイル形成工程を説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるステータの製造フローにおけるセグメントコイル挿入工程を説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるステータの製造フローにおける曲げ成形工程を説明するための第1の図である。
【
図8】本発明の一実施形態によるステータの製造フローにおける曲げ成形工程に用いられる曲げ成形治具を示した図である。
【
図9】本発明の一実施形態によるステータの製造フローにおける曲げ成形工程を説明するための第2の図である。
【
図10】本発明の変形例によるステータの製造フローにおける曲げ成形工程を説明するための第3の図である。
【
図11】本発明の一実施形態によるステータの製造フローにおける曲げ成形工程を説明するための第4の図である。
【
図12】本発明の一実施形態によるステータの製造フローにおける曲げ成形工程を説明するための第5の図である。
【
図13】本発明の一実施形態によるステータの製造フローにおけるセグメントコイル接合工程を説明するための図である。
【
図14】本発明の変形例によるステータの製造フローにおける曲げ成形工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
[ステータの構成]
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態によるステータ100の構成について説明する。
【0023】
以下の説明では、ステータ100が備えるステータコア10(
図1参照)の軸方向、径方向および周方向を、それぞれ、Z方向、R方向およびC方向とする。また、軸方向(Z方向)の一方側および他方側を、それぞれ、Z1側およびZ2側とする。また、径方向(R方向)の内側および外側を、それぞれ、R1側およびR2側とする。また、周方向(C方向)の一方側および他方側を、それぞれ、C1側およびC2側とする。
【0024】
(ステータの全体構成)
図1に示すように、ステータ100は、ステータ100に対向するようにステータ100のR1側に配置されるロータ101と共に、インナーロータ型の回転電機102の一部を構成する。回転電機102は、たとえば、モータ、ジェネレータ、または、モータ兼ジェネレータである。
【0025】
ステータ100は、ステータコア10と、コイル20と、を備える。
【0026】
(ステータコアの構成)
ステータコア10は、Z方向に沿った中心軸線Aを中心軸とした円筒形状を有する。ステータコア10は、複数の電磁鋼板(たとえば、珪素鋼板)がZ方向に積層されることにより形成されている。
【0027】
ステータコア10は、円環状のバックヨーク11と、バックヨーク11からR1側に突出するとともにC方向に並ぶ複数のティース12と、を含む。そして、C方向に隣接するティース12同士の間には、各々、スロット13が形成されている。すなわち、ステータコア10は、C方向に並ぶ複数のスロット13を含む。複数のティース12および複数のスロット13の各々は、ステータコア10のZ1側の端面10a(
図2参照)からZ2側の端面10aに亘って、Z方向に延びるように形成されている。
【0028】
(コイルの構成)
コイル20は、銅、銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金のうちのいずれかを主成分とする導線と、導線を覆う絶縁被膜とから構成されている。コイル20は、3相交流の電力が供給されることにより、磁束を発生させるように構成されている。なお、
図1では、コイル20のうちのスロット収容部31(
図2参照)以外の部分の図示を省略している。
【0029】
図2に示すように、コイル20は、複数のセグメントコイル30が接合されることにより構成されている。複数のセグメントコイル30の各々は、スロット13に収容された一対のスロット収容部31と、ステータコア10のZ2側の端面10aからZ1側に突出する一対の一方側コイルエンド部32と、ステータコア10のZ2側の端面10aからZ2側に突出する他方側コイルエンド部33と、を含む。なお、一方側コイルエンド部32は、特許請求の範囲の「コイルエンド部」の一例である。
【0030】
一対のスロット収容部31の各々は、互いに異なるスロット13に収容(挿入)されている。一対の一方側コイルエンド部32の先端部32aの各々は、ステータコア10のZ1側において、他のセグメントコイル30の一方側コイルエンド部32の先端部32aと溶接により接合(接続)されている。他方側コイルエンド部33は、ステータコア10のZ2側において、一対のスロット収容部31同士を接続している。
【0031】
図1に示すように、複数のスロット13の各々には、R方向に並ぶように複数のセグメントコイル30(のうちのスロット収容部31(
図2参照))が収容されている。なお、
図1では、複数のスロット13の各々に、R方向に並ぶように8つのセグメントコイル30が収容されている例を示している。
【0032】
図2に示すように、n≧1、k≧0として、第(n+2k)ターンのセグメントコイル30の一方側コイルエンド部32の先端部32aと、第(n+2k+1)ターンのセグメントコイル30の一方側コイルエンド部32の先端部32aとが、溶接により接合(接続)されている。なお、「第…ターンのセグメントコイル30」は、R1側から…列目のセグメントコイル30を意味する。
【0033】
第(n+2k)ターンのセグメントコイル30の一方側コイルエンド部32は、Z方向に沿って延びる先端部32aと、Z1側からZ2側に向かうにしたがってC1側からC2側に向かうように、ステータコア10のZ方向の端面10aに対して傾斜する斜行部32bと、スロット収容部31のZ1側の端部と斜行部32bのZ2側の端部とを接続するように湾曲するステータコア側湾曲部32cと、斜行部32bのZ1側の端部と先端部32aのZ2側の端部とを接続するように湾曲する先端側湾曲部32dと、を含む。
【0034】
第(n+2k+1)ターンのセグメントコイル30の一方側コイルエンド部32は、Z方向に沿って延びる先端部32aと、Z1側からZ2側に向かうにしたがってC2側からC1側に向かうように、ステータコア10のZ方向の端面10aに対して傾斜する斜行部32bと、スロット収容部31のZ1側の端部と斜行部32bのZ2側の端部とを接続するように湾曲するステータコア側湾曲部32cと、斜行部32bのZ1側の端部と先端部32aのZ2側の端部とを接続するように湾曲する先端側湾曲部32dと、を含む。
【0035】
[ステータの製造方法]
図3~
図13を参照して、本発明の一実施形態によるステータ100の製造方法について説明する。
【0036】
(ステータコア形成工程)
図3に示すように、ステップS10において、ステータコア形成工程が行われる。
図4に示すように、ステータコア形成工程(S10)は、C方向に並ぶ複数のスロット13を含むステータコア10を形成する工程である。
【0037】
(セグメントコイル形成工程)
図3に示すように、ステップS20において、セグメントコイル形成工程が行われる。
図6に示すように、セグメントコイル形成工程(S20)は、略U字形状のセグメントコイル30Aを形成する工程である。なお、セグメントコイル30Aは、特許請求の範囲の「(コイルエンド用部分を含む)セグメントコイル」の一例である。
【0038】
(セグメントコイル挿入工程)
図3に示すように、ステップS30において、セグメントコイル挿入工程が行われる。
図6に示すように、セグメントコイル挿入工程(S30)は、一方側コイルエンド部32となるコイルエンド用部分32Aがステータコア10のZ1側(軸方向の一方側)の端面10aからZ方向に沿ってZ方向の外側に突出するように、ステータコア10の複数のスロット13の各々にコイルエンド用部分32Aを含むセグメントコイル30Aを挿入する工程である。なお、ステータコア10の複数のスロット13の各々にコイルエンド用部分32Aを含むセグメントコイル30Aを挿入した状態において、セグメントコイル30(
図2参照)の一対のスロット収容部31および他方側コイルエンド部33が形成される。
【0039】
(軸方向位置調整工程)
図3に示すように、ステップS40において、軸方向位置調整工程が行われる。
図7に示すように、軸方向位置調整工程(S40)は、後述する曲げ成形工程(S50)において曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させながら複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分32B(
図12参照)における曲げ成形用治具200側の湾曲部32Ba(
図12参照)のうちの他方側コイルエンド用部分32C側の面32Bb(
図12参照)が他方側コイルエンド用部分32C(
図12参照)におけるステータコア10側の湾曲部32Ca(
図12参照)のうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cb(
図12参照)を押圧するように、曲げ成形用治具200のステータコア10に対するZ方向(軸方向)の位置を調整する工程である。
【0040】
(曲げ成形工程)
図3に示すように、ステップS50において、曲げ成形工程が行われる。
図9および
図10に示すように、曲げ成形工程(S50)は、複数のコイルエンド用部分32Aの各々がコイルエンド用部分32Aに沿って延びるように形成された曲げ成形用治具200の凹部201に挿入された状態で、曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させることによって、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である。具体的には、まず、
図7に示すように、複数のコイルエンド用部分32Aの各々がコイルエンド用部分32Aに沿って延びるように形成された曲げ成形用治具200の凹部201に挿入される。
図8に示すように、曲げ成形用治具200は、環状に形成されている。曲げ成形用治具200は、C方向に並ぶ複数の凹部201を含む。複数の凹部201の各々は、Z方向に延びるように形成されている。複数の凹部201の各々は、Z2側が開口するスリット状に形成されている。複数の凹部201の各々は、ステータコア10の複数のスロット13の各々に対応する位置に形成されている。そして、
図9および
図10に示すように、複数のコイルエンド用部分32Aの各々が曲げ成形用治具200の凹部201に挿入された状態で、曲げ成形用治具200がステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動されることによって、複数のコイルエンド用部分32Aの各々がC方向に折り曲げ成形される。そして、
図11に示すように、一方側コイルエンド部32が形成される。
【0041】
図7、
図9、
図10および
図11に示すように、曲げ成形工程(S50)は、複数のコイルエンド用部分32Aの各々が曲げ成形用治具200の凹部201に半分以上挿入された状態から、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLが徐々に小さくなるように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である。具体的には、複数のコイルエンド用部分32Aの各々がZ方向に沿って延びる状態からC1側またはC2側に折り曲げられるにしたがって、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の先端部が徐々にZ2側に移動する。また、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、曲げ成形用治具200がステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動される。したがって、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLが徐々に小さくなる。すなわち、
図7に示すように、複数のコイルエンド用部分32Aの各々のC方向への折り曲げ成形を開始する時点の、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLは、L1である。また、
図9に示すように、複数のコイルエンド用部分32Aの各々のC方向への折り曲げ成形を行っている途中のうちの前半の、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLは、L1よりも小さいL2である。また、
図10に示すように、複数のコイルエンド用部分32Aの各々のC方向への折り曲げ成形を行っている途中のうちの後半の、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLは、L2よりも小さいL3である。また、
図11に示すように、複数のコイルエンド用部分32Aの各々のC方向への折り曲げ成形を終了する時点の、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLは、L3よりも小さいL4である。なお、複数のコイルエンド用部分32Aの各々は、曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されているものの、曲げ成形用治具200の凹部201に拘束されていない。
【0042】
図7、
図9、
図10および
図11に示すように、曲げ成形工程(S50)は、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLが徐々に小さくなるように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させることにより、曲げ成形用治具200によるコイルエンド用部分32Aへの荷重作用点をコイルエンド用部分32Aのステータコア10側から曲げ成形用治具200側に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である。具体的には、
図9および
図10に示すように、曲げ成形用治具200によるコイルエンド用部分32Aへの荷重は、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分(のうちの主にZ2側の端部)に作用する。したがって、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLが徐々に小さくなるにしたがって、曲げ成形用治具200によるコイルエンド用部分32Aへの荷重作用点がコイルエンド用部分32Aのステータコア10側から曲げ成形用治具200側に徐々に移動する。
【0043】
図9に示すように、曲げ成形工程(S50)は、互いにC方向(周方向)に隣り合うコイルエンド用部分32Aのうちの一方である一方側コイルエンド用部分32Bが互いにC方向に隣り合うコイルエンド用部分32Aのうちの他方である他方側コイルエンド用部分32Cを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である。詳細には、
図12に示すように、曲げ成形工程(S50)は、一方側コイルエンド用部分32Bにおける曲げ成形用治具200側の湾曲部32Baのうちの他方側コイルエンド用部分32C側の面32Bbが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に相動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である。具体的には、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分32Bにおける曲げ成形用治具200側の湾曲部32Baのうちの他方側コイルエンド用部分32C側の面32Bbは、他方側コイルエンド用部分32Cに対して凸状の部分である。また、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbは、一方側コイルエンド用部分32Bに対して凸状の部分である。すなわち、一方側コイルエンド用部分32Bにおける曲げ成形用治具200側の湾曲部32Baのうちの他方側コイルエンド用部分32Cに対して凸状の部分により、他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32Bに対して凸状の部分が押圧される。
【0044】
曲げ成形工程(S50)は、一方側コイルエンド用部分32Bが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10の端面10aと平行な方向(平行な方向に沿った方向)で、かつ、C方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である。したがって、
図7、
図9、
図10および
図11に示すように、複数のコイルエンド用部分32Aを各々のC方向に折り曲げ成形する際に、R方向から見て、ステータコア10の端面10aのZ方向における位置P10に対して、曲げ成形用治具200のZ方向における位置(たとえば、曲げ成形用治具200のZ2側の端部のZ方向における位置P20)が変化しない。
【0045】
(セグメントコイル接合工程)
図3に示すように、ステップS50において、セグメントコイル接合が行われる。
図13に示すように、セグメントコイル接合工程(S60)は、複数のセグメントコイル30を接合することによりコイル20を形成する工程である。具体的には、第(n+2k)ターンのセグメントコイル30の一方側コイルエンド部32の先端部32aと、第(n+2k+1)ターンのセグメントコイル30の一方側コイルエンド部32の先端部32aとが、溶接により接合(接続)される。
【0046】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0047】
本実施形態では、上記のように、曲げ成形工程(S50)は、互いにC方向(周方向)に隣り合うコイルエンド用部分32Aのうちの一方である一方側コイルエンド用部分32Bが互いにC方向に隣り合うコイルエンド用部分32Aのうちの他方である他方側コイルエンド用部分32Cを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である。これにより、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分32Bが他方側コイルエンド用部分32Cを押圧することによって、曲げ成形用治具200によるコイルエンド用部分32Aへの荷重に加えて、コイルエンド用部分32Aのうちのステータコア10側の端部から比較的近い位置において隣り合うコイルエンド用部分32Aによるコイルエンド用部分32Aへの荷重を作用させることができる。これにより、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分32Bが他方側コイルエンド用部分32Cを押圧しない場合と比較して、C方向に折り曲げ成形した後の複数のコイルエンド用部分32Aの各々のステータコア10側の湾曲部の曲率半径を小さくすることができる。その結果、一方側コイルエンド部32(コイルエンド部)のZ方向(軸方向)における長さ(高さ)を比較的小さくすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、曲げ成形工程(S50)は、一方側コイルエンド用部分32Bが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である。これにより、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分32Bが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するので、複数のコイルエンド用部分32Aの各々のステータコア10側の湾曲部を効果的に曲げることができる。その結果、C方向に折り曲げ成形した後の複数のコイルエンド用部分32Aの各々のステータコア10側の湾曲部の曲率半径をより小さくすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、曲げ成形工程(S50)は、一方側コイルエンド用部分32Bにおける曲げ成形用治具200側の湾曲部32Baのうちの他方側コイルエンド用部分32C側の面32Bbが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である。これにより、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分32Bにおける曲げ成形用治具200側の湾曲部32Baのうちの他方側コイルエンド用部分32Cに対して凸状の部分で、他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32Bに対して凸状の部分を押圧するので、複数のコイルエンド用部分32Aの各々のステータコア10側の湾曲部をより効果的に曲げることができる。その結果、C方向に折り曲げ成形した後の複数のコイルエンド用部分32Aの各々のステータコア10側の湾曲部の曲率半径をより一層小さくすることができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、ステータ100の製造方法は、曲げ成形工程(S50)の前に、曲げ成形工程(S50)において曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させながら複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分32Bにおける曲げ成形用治具200側の湾曲部32Baのうちの他方側コイルエンド用部分32C側の面32Bbが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように、曲げ成形用治具200のステータコア10に対するZ方向(軸方向)の位置を調整する軸方向位置調整工程(S40)を備える。これにより、軸方向位置調整工程(S40)を行うことによって、曲げ成形工程(S50)において複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分32Bにおける曲げ成形用治具200側の湾曲部32Baのうちの他方側コイルエンド用部分32C側の面32Bbによって、他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを確実に押圧させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、曲げ成形工程(S50)は、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLが徐々に小さくなるように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である。これにより、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLが徐々に小さくなるので、曲げ成形用治具200によるコイルエンド用部分32Aへの荷重作用点を、コイルエンド用部分32Aのうちのステータコア10側から曲げ成形用治具200側に移動させることができる。すなわち、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、曲げ成形用治具200によるコイルエンド用部分32Aへの荷重作用点が、コイルエンド用部分32Aのステータコア10側の端部から比較的近い位置から比較的遠い位置に変化する。これにより、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、曲げ成形用治具200によるコイルエンド用部分32Aへの荷重作用点が、常に、コイルエンド用部分32Aのステータコア10側の端部から比較的遠い位置にある場合と比較して、C方向に折り曲げ成形した後の複数のコイルエンド用部分32Aの各々のステータコア10側の湾曲部の曲率半径を小さくすることができる。その結果、一方側コイルエンド部32(コイルエンド部)のZ方向(軸方向)の長さ(高さ)を比較的小さくすることができる。また、本実施形態では、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLが徐々に小さくなるので、複数のコイルエンド用部分32Aの各々が曲げ成形用治具200の凹部201に拘束されずに、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形することができる。これにより、コイルエンド用部分32Aに対して曲げ成形用治具200による過度な引張力が作用するのを抑制しながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形することができる。その結果、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、コイルエンド用部分32Aの被膜が摩耗または剥離したりコイルエンド用部分32Aが引き延ばされたりするのを抑制しながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、曲げ成形工程(S50)は、一方側コイルエンド用部分32Bが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10の端面10aと平行な方向に沿った方向で、かつ、C方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である。これにより、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、曲げ成形用治具200をステータコア10に対して移動させる方向がステータコア10の端面10aと平行な方向に沿っているので、曲げ成形用治具200のステータコア10に対するZ方向(軸方向)の位置が過度に変化しない。これにより、軸方向位置調整工程(S40)における曲げ成形用治具200のステータコア10に対するZ方向の位置の調整が複雑化するのを抑制することができる。
【0053】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0054】
たとえば、上記実施形態では、曲げ成形工程(S50)が、一方側コイルエンド用部分32Bが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10の端面10aと平行な方向で、かつ、C方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図14に示す変形例によるステータの製造方法のように、曲げ成形工程が、一方側コイルエンド用部分32Bが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10の端面10aと平行な方向に対してステータコア10の端面10aから離間する側に傾斜する方向で、かつ、C方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程であってもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、曲げ成形工程(S50)が、一方側コイルエンド用部分32Bが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10の端面10aと平行な方向に沿った方向で、かつ、C方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、曲げ成形工程が、一方側コイルエンド用部分が他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部のうちの一方側コイルエンド用部分側の面を押圧するように曲げ成形用治具をステータコアの端面と平行な方向に沿わない方向で、かつ、周方向に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する工程であってもよい。
【0056】
たとえば、上記実施形態では、曲げ成形工程(S50)が、複数のコイルエンド用部分32Aの各々の曲げ成形用治具200の凹部201に挿入されている部分の長さLが徐々に小さくなるように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、一方側コイルエンド用部分が他方側コイルエンド用部分を押圧可能であれば、曲げ成形工程が、複数のコイルエンド用部分の各々の曲げ成形用治具の凹部に挿入されている部分の長さが徐々に小さくならないように曲げ成形用治具をステータコアに対して周方向に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する工程であってもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、ステータ100の製造方法が、曲げ成形工程(S50)の前に、曲げ成形工程(S50)において曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させながら複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分32Bにおける曲げ成形用治具200側の湾曲部32Baのうちの他方側コイルエンド用部分32C側の面32Bbが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように、ステータコア10に対するZ方向(軸方向)の位置を調整する軸方向位置調整工程(S40)を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ステータの製造方法が、曲げ成形工程の前に、曲げ成形工程において曲げ成形用治具をステータコアに対して周方向に沿った方向に移動させながら複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する際に、一方側コイルエンド用部分における曲げ成形用治具側の湾曲部のうちの他方側コイルエンド用部分側の面が他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部のうちの一方側コイルエンド用部分側の面を押圧するように、ステータコアに対する軸方向の位置を調整する軸方向位置調整工程を備えなくてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、曲げ成形工程(S50)が、一方側コイルエンド用部分32Bにおける曲げ成形用治具200側の湾曲部32Baのうちの他方側コイルエンド用部分32C側の面32Bbが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、曲げ成形工程が、一方側コイルエンド用部分における曲げ成形用治具側の湾曲部のうちの他方側コイルエンド用部分側の面以外の面、または、一方側コイルエンド用部分における曲げ成形用治具側の湾曲部以外の部分が他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部の一方側コイルエンド用部分側の面を押圧するように曲げ成形用治具をステータコアに対して周方向に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する工程であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、曲げ成形工程(S50)が、一方側コイルエンド用部分32Bが他方側コイルエンド用部分32Cにおけるステータコア10側の湾曲部32Caのうちの一方側コイルエンド用部分32B側の面32Cbを押圧するように曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、曲げ成形工程が、一方側コイルエンド用部分が他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部のうちの一方側コイルエンド用部分側の面以外の面、または、他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部以外の部分を押圧するように曲げ成形用治具をステータコアに対して周方向に沿った方向に移動させながら、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する工程であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、曲げ成形工程(S50)が、複数のコイルエンド用部分32Aの各々がコイルエンド用部分32Aに沿って延びるように形成された曲げ成形用治具200の凹部201に挿入された状態で、曲げ成形用治具200をステータコア10に対してC方向(周方向)に沿った方向に移動させることによって、複数のコイルエンド用部分32Aの各々をC方向に折り曲げ成形する工程である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、曲げ成形工程が、複数のコイルエンド用部分の各々がコイルエンド用部分に沿って延びるように形成された曲げ成形用治具の凹部に挿入された状態で、ステータコアを曲げ成形用治具に対して周方向に沿った方向に移動させることによって、複数のコイルエンド用部分の各々を周方向に折り曲げ成形する工程であってもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、曲げ成形用治具200の複数の凹部201の各々が、スリット状に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、曲げ成形用治具の複数の凹部の各々が、溝状に形成されていてもよいし、孔状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…ステータコア、10a…(ステータコアの)軸方向の端面、13…スロット、30A…(コイルエンド用部分を含む)セグメントコイル、32…コイルエンド部、32A…コイルエンド用部分、32B…一方側コイルエンド用部分、32Ba…(一方側コイルエンド用部分における)曲げ成形用治具側の湾曲部、32Bb…(一方側コイルエンド用部分における曲げ成形用治具側の湾曲部)の他方側コイルエンド用部分側の面、32C…他方側コイルエンド用部分、32Ca…(他方側コイルエンド用部分における)ステータコア側の湾曲部、32Cb…(他方側コイルエンド用部分におけるステータコア側の湾曲部)の一方側コイルエンド用部分側の面、100…ステータ、200…曲げ成形用治具、201…(曲げ成形用治具の)凹部