IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158396
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ペダル装置
(51)【国際特許分類】
   G05G 1/30 20080401AFI20241031BHJP
   G05G 1/44 20080401ALI20241031BHJP
【FI】
G05G1/30 E
G05G1/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073557
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 玄軌
(72)【発明者】
【氏名】柳田 悦豪
(72)【発明者】
【氏名】松永 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健悟
【テーマコード(参考)】
3J070
【Fターム(参考)】
3J070AA32
3J070BA41
3J070BA67
3J070CB01
3J070CC71
3J070DA01
(57)【要約】
【課題】異物の侵入によりペダルアームがロックすることを防ぐことの可能なペダル装置を提供する。
【解決手段】ハウジング10は、車両に固定される。ペダルアーム20は、ハウジング10に対し所定の軸心CLを中心として所定の角度範囲で回転可能に設けられ、軸心CLよりも車両上方側に運転者に踏まれる部位としてのペダル操作部21を有する。被覆部40は、ペダルアーム20に設けられ、ペダルアーム20が回転動作する領域のうちハウジング10より外側のペダル作動領域23に対し車両前方側と車幅方向右側と車幅方向左側の全部または一部を覆う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるオルガン式のペダル装置であって、
車両に固定されるハウジング(10)と、
前記ハウジングに対し所定の軸心(CL)を中心として所定の角度範囲で回転可能に設けられ、前記軸心よりも車両上方側に運転者に踏まれる部位としてのペダル操作部(21)を有するペダルアーム(20)と、
前記ペダルアームに設けられ、前記ペダルアームが回転動作する領域のうち前記ハウジングより外側のペダル作動領域(23)に対し車両前方側と車幅方向右側と車幅方向左側の全部または一部を覆う被覆部(40)と、を備えるペダル装置。
【請求項2】
前記被覆部は、車両後方且つ車両上方を向く上被覆部(44)を有する、請求項1に記載のペダル装置。
【請求項3】
前記被覆部は、前記ペダルアームから前記ハウジング側に延び、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位の少なくとも一部が前記ハウジングの外側に被さっている、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項4】
前記被覆部は、前記ペダル作動領域に対し車両前方側と車幅方向右側と車幅方向左側の全部を覆う、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、車両上側を向く上壁(12)に開口部(18)を有しており、
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態において、前記被覆部のうち車両後方側の部位(441)は、前記開口部より車両下方側に位置している、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項6】
前記ハウジングは、車両上側を向く上壁(12)に開口部(18)を有しており、
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されて前記ペダル操作部が前記ハウジングに最も近づいたフルストローク状態において、前記被覆部のうち車両後方側の部位(441)は、前記開口部より車両下方側に位置している、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項7】
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態において、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記ハウジングとの隙間(S1-S4、S8)は、前記ハウジング内に設けられる構成のうち前記ペダルアームの回転動作に応じて隙間が変わらず一定である摺動部位の隙間(S5)よりも小さい、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項8】
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態において、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記ハウジングとの隙間(S1-S4、S8)は、前記ハウジング内に設けられる構成のうち前記ペダルアームの回転動作に応じて隙間が変化する部位の前記初期状態の隙間(S6)よりも小さい、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項9】
前記ハウジングは、車両上側を向く上壁(12)に開口部(18)を有しており、
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態において、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記ハウジングとの隙間(S1-S4、S8)は、前記開口部の内壁と前記ペダルアームとの隙間(S7)よりも小さい、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項10】
前記被覆部は、車両前方且つ車両上方を向く前被覆部(41)と、車幅方向右側を向く右被覆部(42)と、車幅方向左側を向く左被覆部(43)と、車両後方且つ車両上方を向く上被覆部(44)を有し、
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態において、前記上被覆部のうち車両後方側の部位(441)と前記ハウジングとの隙間(S4)は、前記前被覆部、前記右被覆部および前記左被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記ハウジングとの隙間(S1、S2、S3)より大きく、前記ハウジング内に設けられる構成のうち前記ペダルアームの回転動作に応じて隙間が変化する部位の前記初期状態の隙間(S6)または前記ハウジング内に設けられる構成のうち前記ペダルアームの回転動作に応じて隙間が変わらず一定である摺動部位の隙間(S5)よりも小さい、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項11】
前記ハウジングは、ハウジング本体(52)と、前記ハウジング本体の外壁から車幅方向右側または車幅方向左側に突出するリブ形状部(53)とを有し、
前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記ハウジングとの隙間(S1-S4、S8)は、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記リブ形状部との隙間(S9)を含んでいる、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項12】
前記被覆部は、前記リブ形状部よりも車両下方側へ延びる箇所に前記ハウジング本体側に突出する被覆部側リブ形状部(45)を有しており、
前記ハウジングの前記リブ形状部と前記被覆部側リブ形状部とが車両上下方向に重なり、迷路構造が形成されている、請求項11に記載のペダル装置。
【請求項13】
前記ハウジングのうち車両前方を向く前壁(14)は、車両前方に凸の湾曲形状であり、
前記被覆部のうち車両前方を向く前被覆部(41)も、車両前方に凸の湾曲形状である、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項14】
前記ハウジングのうち車両前方を向く前壁(14)は、中央部よりも車幅方向左右の部位が車両後方に位置する傾斜形状であり、
前記被覆部のうち車両前方を向く前被覆部(41)も、中央部よりも車幅方向左右の部位が車両後方に位置する傾斜形状である、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項15】
前記ペダルアームの回転角度を検知するセンサ(55)と、
前記ハウジングの外側に設けられ、前記センサを保護するセンサカバー(56)をさらに備え、
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態から、運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されて前記ペダル操作部が前記ハウジングに最も近づいたフルストローク状態に亘り、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位の外側に前記センサカバーが被さっている、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項16】
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態から、運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されて前記ペダル操作部が前記ハウジングに最も近づいたフルストローク状態に亘り、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位は、車両のフロア(2)に設けられた溝(3)に入っている、請求項1または2に記載のペダル装置。
【請求項17】
前記被覆部の材質の一部または全ては、運転者の踏力により弾性変形可能な樹脂、ゴムまたはエラストマーである、請求項1または2に記載のペダル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されるペダル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるオルガン式のペダル装置が知られている。
特許文献1に記載のペダル装置は、車両のフロアに固定される支持板と、その支持板に設けられたピンを軸として回転可能に設けられるペダル本体と、ペダル本体のうち車両後方側の部位を包囲する被覆部材を備えている。その被覆部材は、ペダル本体のうち車両後方側の部位と車両のフロアとの間にカーペット、マット、小石などの異物が挟み込むことを防ぐものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭64-50131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のペダル装置は、ペダル本体のうち車両前方側の部位と車両のフロアとの間に、被覆部材に覆われていない領域が存在する。そのため、例えば空き缶などの異物が、ペダル本体のうち車両前方側の部位とフロアとの間に挟まると、ペダル本体が回転動作できない状態となる、即ち、ペダル本体がロックするといった問題がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、異物の侵入によりペダルアームがロックすることを防ぐことの可能なペダル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、車両に搭載されるオルガン式のペダル装置であって、
車両に固定されるハウジング(10)と、
前記ハウジングに対し所定の軸心(CL)を中心として所定の角度範囲で回転可能に設けられ、前記軸心よりも車両上方側に運転者に踏まれる部位としてのペダル操作部(21)を有するペダルアーム(20)と、
前記ペダルアームに設けられ、前記ペダルアームが回転動作する領域のうち前記ハウジングより外側のペダル作動領域(23)に対し車両前方側と車幅方向右側と車幅方向左側の全部または一部を覆う被覆部(40)と、を備える。
【0007】
これによれば、ペダルアームの作動が困難になる大きさの異物がペダル装置に対し車両前方側、車幅方向右側または車幅方向左側から近づいた場合、被覆部は、その異物がペダル作動領域へ侵入することを防ぐことが可能である。したがって、このペダル装置は、ペダル作動領域への異物の侵入によりペダルアームがロックすることを防ぐことができる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るペダル装置の側面図である。
図2図1のII方向の矢視図である。
図3図2のIII―III線の断面図である。
図4】第1実施形態に係るペダル装置においてフルストローク状態を示す断面図である。
図5】第2実施形態に係るペダル装置の断面図である。
図6】第3実施形態に係るペダル装置の断面図である。
図7】第3実施形態に係るペダル装置においてフルストローク状態を示す断面図である。
図8】第4実施形態に係るペダル装置の断面図である
図9】第5実施形態に係るペダル装置の断面図である
図10図9のX方向の矢視図である。
図11図9のXI部分の拡大図である。
図12図9のXII―XII線の断面図である。
図13】第6実施形態に係るペダル装置において図11に相当する箇所の図である。
図14】第7実施形態に係るペダル装置の断面図である。
図15図14のXV―XV線の断面図である。
図16図14のXVI方向の矢視図である。
図17】第8実施形態に係るペダル装置において図15に相当する箇所の断面図である。
図18】第9実施形態に係るペダル装置の側面図である。
図19図18のXIX方向の矢視図である。
図20】第10実施形態に係るペダル装置において図19に相当する箇所の図である。
図21】第11実施形態に係るペダル装置の側面図である。
図22図21のXXII-XXII線の断面図である。
図23】第12実施形態に係るペダル装置の側面図である。
図24図23のXXIV-XXIV線の断面図である。
図25】第13実施形態に係るペダル装置において図24に相当する箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。なお、各図には、ペダル装置が車両に搭載された状態における車両前方、車両後方、車両上方、車両下方、車幅方向右側、車幅方向左側を矢印で示している。なお、車両上方は、車両搭載時における天方向ということがある。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態について図1図4を参照しつつ説明する。第1実施形態では、車両に搭載されるペダル装置の一例として、ブレーキペダル装置について説明する。ブレーキペダル装置は、例えば、ブレーキバイワイヤシステムに用いることが可能である。ブレーキバイワイヤシステムとは、ブレーキペダル装置が備える不図示のセンサから出力される電気信号に基づき、車両に搭載される電子制御装置がブレーキ回路を駆動制御して各車輪の制動を行うシステムである。
【0012】
図1図4に示すように、ペダル装置は、オルガン式のペダル装置であり、ハウジング10、ペダルアーム20、反力発生機構30および被覆部40などを備えている。オルガン式のペダル装置とは、ペダルアーム20のうち運転者に踏まれる部位としてのペダル操作部21が、ペダルアーム20の回転の軸心CLに対して車両搭載時における天方向、即ち、車両上方に配置される構成のものをいう。そして、オルガン式のペダル装置では、ペダル操作部21に印加される運転者の踏力の増加に応じてペダルアーム20のうち軸心CLよりも車両上方の部位が車両のフロア側またはダッシュパネル側に回転動作する。
【0013】
ハウジング10は、車両のフロアまたはダッシュパネルに対し不図示のボルトなどによって固定される。ハウジング10は、その内側に内部空間11を有している。ハウジング10の内部空間11には、ペダルアーム20の一部、軸部材22、および反力発生機構30などが収容される。
【0014】
ハウジング10は、上壁12、底壁13、前壁14、後壁15、右側壁16および左側壁17を有している。上壁12は、ハウジング10のうち車両上方且つ車両後方を向く壁であり、底壁13は、ハウジング10のうち車両下方、即ち、フロア側またはダッシュパネル側を向く壁である。前壁14は、ハウジング10のうち車両前方且つ車両上方を向く壁であり、後壁15は、ハウジング10のうち車両後方を向く壁である。右側壁16は、ハウジング10のうち車幅方向右側を向く壁であり、左側壁17は、ハウジング10のうち車幅方向左側を向く壁である。
【0015】
ハウジング10は、上壁12の一部に開口部18を有している。ペダル装置は、ハウジング10の開口部18を経由して、ペダルアーム20と反力発生機構30を着脱可能な構成となっている。
【0016】
ペダルアーム20は、車両後方側且つ車両下方側の部位がハウジング10の内部空間11に挿入され、中間の部位が開口部18を通り、車両前方側且つ車両上方側の部位がハウジング10の外側に配置される。ペダルアーム20は、車両後方側且つ車両下方側の部位が、ハウジング10に対し軸部材22によって回転可能に接続されている。ペダルアーム20は、軸心CLよりも車両上方側に、運転者に踏まれる部位としてのペダル操作部21を有している。
【0017】
図1は、運転者の踏力がペダル操作部21に印加されていない状態を示している。以下の説明では、この状態を「初期状態」という。一方、図4は、運転者の踏力がペダル操作部21に印加されてペダル操作部21がハウジング10に最も近づいた状態を示している。以下の説明では、この状態を「フルストローク状態」という。フルストローク状態において、ペダルアーム20は、ハウジング10に設けられたストッパ19に当接する。
【0018】
なお、図4では、初期状態におけるペダルアーム20と被覆部40の位置を一点鎖線で示している。図4に示したように、ペダルアーム20は、ハウジング10に対し所定の軸心CLを中心として所定の角度範囲で回転動作する。なお、第1実施形態では、所定の軸心CLは、軸部材22の軸心CLと一致している。以下の説明では、ペダルアーム20が回転動作する領域のうちハウジング10より外側の領域を「ペダル作動領域23」という。図4では、ペダル作動領域23を、破線のハッチングで示している。
【0019】
ハウジング10の内部空間11おいて、ペダルアーム20のうちペダル操作部21とは反対側の部位には反力発生機構30が設けられている。反力発生機構30は、運転者がペダルアーム20に印加する踏力に対する反力を発生するものである。ペダル装置は、反力発生機構30を備えることにより、ペダルアーム20とマスターシリンダとの機械的な接続を廃止した場合でも、ペダルアーム20とマスターシリンダとが接続している場合と同様の反力を得ることが可能である。
【0020】
第1実施形態の反力発生機構30は、所望の踏力特性を得るため複数の弾性部材を含んで構成されている。例えば、反力発生機構30は、第1コイルばね31、第2コイルばね32、第3コイルばね33、第1ホルダ34、第2ホルダ35、第3ホルダ36および中央ロッド37等を有している。中央ロッド37は、その一端がハウジング10の底壁13に固定され、ペダルアーム20側に延びている。第1ホルダ34は、中央ロッド37が挿通される挿通孔38を有している。第1ホルダ34の挿通孔38の内壁と中央ロッド37とが摺接し、第1ホルダ34は中央ロッド37が延びる方向に往復移動可能である。第2ホルダ35の外壁と第1ホルダ34の内壁とが摺接し、第2ホルダ35も中央ロッド37が延びる方向に往復移動可能である。第3ホルダ36は、ペダルアーム20のうちペダル操作部21とは反対側の部位に固定されている。第1コイルばね31は、ハウジング10の底壁13と第1ホルダ34との間に設けられている。第2コイルばね32は、第1ホルダ34と第2ホルダ35との間に設けられている。第3コイルばね33は、第2ホルダ35と第3ホルダ36との間に設けられている。第1コイルばね31、第2コイルばね32および第3コイルばね33はいずれも、圧縮コイルスプリングである。
【0021】
被覆部40は、ペダルアーム20に設けられ、ペダル作動領域23に対し車両前方側と車幅方向右側と車幅方向左側の全部または一部を覆う部材である。なお、第1実施形態では、被覆部40は、ペダル作動領域23に対し車両前方側と車幅方向右側と車幅方向左側の一部を覆っている。そのため、ペダルアームのペダル作動領域23のうち車両前方側と車幅方向右側と車幅方向左側には、被覆部40に覆われてない領域A、Bが存在する。
【0022】
被覆部40は、ペダルアーム20側の部位がペダルアーム20に接続されている。なお、被覆部40は、ペダルアーム20と別部材で構成され、ペダルアーム20またはペダル操作部21に接合されていてもよい。或いは、被覆部40は、ペダルアーム20またはペダル操作部21と一体に設けられていてもよい。
【0023】
被覆部40の材質の一部または全ては、樹脂、ゴムまたはエラストマーにより形成されている。なお、被覆部40として採用される樹脂は、運転者の踏力により弾性変形可能な材料であり、例えばポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)などである。また、被覆部40として採用されるゴムまたはエラストマーも、通常の運転者の踏力により変形する材料である。
【0024】
被覆部40は、前被覆部41、右被覆部42および左被覆部43を有している。前被覆部41は、被覆部40のうち車両前方且つ車両上方を向く部位である。右被覆部42は、被覆部40のうち車幅方向右側を向く部位であり、左被覆部43は、被覆部40のうち車幅方向左側を向く部位である。
【0025】
初期状態において、被覆部40のうちハウジング10側の部位の少なくとも一部は、ハウジング10の上壁12よりも車両下方側に位置している。すなわち、被覆部40は、ペダルアーム20からハウジング10側に延び、被覆部40のうちハウジング10側の部位の少なくとも一部がハウジング10の外側に被さっている。具体的には、前被覆部41のうちハウジング10側の部位の一部は、ハウジング10の前壁14の外側に被さっている。右被覆部42のうちハウジング10側の部位の一部は、ハウジング10の右側壁16の外側に被さっており、左被覆部43のうちハウジング10側の部位の一部も、ハウジング10の左側壁17の外側に被さっている。被覆部40は、例えば、空き缶など、ペダルアーム20の作動が困難になる大きさの異物がペダル作動領域23へ侵入することを防ぐことが可能である。
【0026】
以上説明した第1実施形態のペダル装置は、次の作用効果を奏するものである。
(1)第1実施形態では、ペダル装置が備える被覆部40は、ペダル作動領域23に対し車両前方側の一部と車幅方向右側の一部と車幅方向左側の一部を覆う。
これによれば、ペダルアーム20の作動が困難になる大きさの異物がペダル装置に対し車両前方側、車幅方向右側または車幅方向左側から近づいた場合、被覆部40は、その異物がペダル作動領域23へ侵入することを防ぐことが可能である。したがって、このペダル装置は、ペダル作動領域23への異物の侵入によりペダルアーム20がロックすることを防ぐことができる。
【0027】
(2)第1実施形態では、被覆部40は、ペダルアーム20からハウジング10側に延び、被覆部40のうちハウジング10側の部位の少なくとも一部がハウジング10の外側に被さっている
ところで、上記特許文献1記載のペダル装置は、被覆部材のうち車両下方側の部位と、フロア側に配置される部材とをねじで固定する構成であるので、被覆部40の組み付け工数が増加するといった問題がある。それに対し、第1実施形態では、被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10またはフロアとを固定することなく、被覆部40の少なくとも一部をハウジング10の外側に被せることで、ペダル作動領域23への異物の侵入を防ぐことが可能である。したがって、第1実施形態のペダル装置は、特許文献1記載の構成に対し、被覆部40の組み付け工数を低減できる。
【0028】
(3)第1実施形態では、被覆部40の材質の一部または全ては、運転者の踏力により弾性変形可能な樹脂、ゴムまたはエラストマーである。
これによれば、ペダルアーム20が初期状態からフルストローク状態に回転動作するときに、車両のフロアと被覆部40との間に異物が挟まった場合でも、運転者の踏力により被覆部40を変形させることが可能である。したがって、このペダル装置は、異物の侵入によりペダルアーム20がロックすることを防ぐことができる。
【0029】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対してハウジング10の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0030】
図5に示すように、第2実施形態では、ハウジング10の有する開口部18は、第1実施形態で説明したものと比べて、車両後方側に大きくあけられている。具体的には、開口部18のうち車両後方側の内縁部181は、軸部材22よりも車両後方に位置している。これにより、ペダル装置の組立時において、ハウジング10の開口部18を経由してペダルアーム20と反力発生機構30をハウジング10の内部空間11に容易に挿入し、それらをハウジング10に対し容易に組み付けることができる。
【0031】
第2実施形態のペダル装置は、ハウジング10の開口部18のうち車両後方側の部位を塞ぐ遮蔽部材50を備えている。遮蔽部材50は、ペダルアーム20と反力発生機構30をハウジング10の内部空間11に組み付けた後、ハウジング10の上壁12または後壁15に取り付けられる。これにより、遮蔽部材50は、開口部18のうち車両後方側の部位を塞ぎ、開口部18から内部空間11に異物が侵入することを抑制する。
【0032】
以上説明した第2実施形態のペダル装置も、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0033】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第1および第2実施形態に対して被覆部40の構成の一部を変更したものであり、その他については第1および第2実施形態と同様であるため、第1および第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0034】
図6および図7に示すように、第3実施形態では、被覆部40は、前被覆部41、右被覆部42および左被覆部43に加えて、上被覆部44を有している。上被覆部44は、被覆部40のうち車両後方且つ車両上方を向く部位である。上被覆部44のうちペダルアーム20と重なる部位は、運転者に踏まれる部位であり、ペダル操作部21と一体に結合されている。すなわち、被覆部40とペダル操作部21とは一体に結合されている。
【0035】
被覆部40は、ペダル作動領域23に対し車両前方側と車幅方向右側と車幅方向左側の全部を覆っている。初期状態において、被覆部40のうちハウジング10側の部位は、ハウジング10の上壁12より車両下方側に位置している。すなわち、被覆部40は、ペダルアーム20からハウジング10側に延び、被覆部40のうちハウジング10側の部位が、ハウジング10の右側壁16、左側壁17および前壁14の外側に被さっている。具体的には、前被覆部41のうちハウジング10側の部位は、ハウジング10の前壁14の外側に被さっている。右被覆部42のうちハウジング10側の部位は、ハウジング10の右側壁16の外側に被さっており、左被覆部43のうちハウジング10側の部位も、ハウジング10の左側壁17の外側に被さっている。
【0036】
さらに、第3実施形態では、被覆部40は、ハウジング10の開口部18よりも車両後方側に延びている。具体的には、被覆部40の有する上被覆部44と右被覆部42と左被覆部43は、ハウジング10の開口部18よりも車両後方側に延びている。図6に示すように、初期状態において、被覆部40のうち車両後方側の部位441と、ハウジング10の開口部18のうち車両後方側の内縁部181との間の車両上下方向の距離D1は、0より大きい。したがって、初期状態において、被覆部40のうち車両後方側の部位441は、開口部18よりも車両下方側に位置している。なお、被覆部40のうち車両後方側の部位441は、上被覆部44のうち車両後方側の部位441である。
【0037】
また、図7に示すように、フルストローク状態において、被覆部40のうち車両後方側の部位441と、ハウジング10の開口部18のうち車両後方側の内縁部181との間の車両上下方向の距離D2も、0より大きい。したがって、フルストローク状態において、被覆部40のうち車両後方側の部位441は、開口部18よりも車両下方側に位置している。これにより、被覆部40は、例えば、運転者の靴底に付着していた異物が靴底から取れた場合でも、その異物が開口部18からハウジング10の内部空間11に侵入することを防ぐことが可能である。また、被覆部40は、ペダル装置に対し車両後方側から異物が近づいた場合、その異物がペダル作動領域23および開口部18に侵入することを防ぐことが可能である。
【0038】
以上説明した第3実施形態のペダル装置は、第1実施形態で説明した作用効果に加え、次の作用効果を奏することができる。
(1)第3実施形態では、被覆部40は、ペダル作動領域23に対し車両前方側と車幅方向右側と車幅方向左側の全部を覆う。
これによれば、ペダル装置に対し車両前方側、車幅方向右側または車幅方向左側から異物が近づいた場合、被覆部40は、ペダル作動領域23への異物の侵入をより確実に防ぐことができる。
【0039】
(2)第3実施形態では、初期状態およびフルストローク状態において、被覆部40のうち車両後方側の部位441は、開口部18よりも車両下方側に位置している。
これによれば、被覆部40は、例えば、運転者の靴底に付着していた異物が靴底から取れた場合でも、その異物が開口部18からハウジング10の内部空間11に侵入することを防ぐことが可能である。また、被覆部40は、ペダル装置に対し車両後方側から異物が近づいた場合、その異物がペダル作動領域23および開口部18に侵入することを防ぐことが可能である。
【0040】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第3実施形態に対してハウジング10の構成の一部を変更したものであり、その他については第3実施形態と同様であるため、第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
図8に示すように、第4実施形態では、第2実施形態と同様に、ハウジング10の有する開口部18は、第3実施形態で説明したものと比べて、車両後方側に大きくあけられている。具体的には、開口部18のうち車両後方側の内縁部181は、軸部材22よりも車両後方に位置している。これにより、ペダル装置の組立時において、ハウジング10の開口部18を経由してペダルアーム20と反力発生機構30をハウジング10の内部空間11に容易に挿入し、それらをハウジング10に対し容易に組み付けることができる。なお、第4実施形態のペダル装置は、第2実施形態で説明した遮蔽部材50を備えていない。
【0042】
第4実施形態も、第3実施形態と同様に、被覆部40は、ハウジング10の開口部18よりも車両後方側に延びている。具体的には、被覆部40の有する上被覆部44と右被覆部42と左被覆部43は、ハウジング10の開口部18よりも車両後方側に延びている。図8に示すように、初期状態において、被覆部40のうち車両後方側の部位441と、ハウジング10の開口部18のうち車両後方側の内縁部181との間の車両上下方向の距離D3は、0より大きい。したがって、初期状態において、被覆部40のうち車両後方側の部位441は、開口部18よりも車両下方側に位置している。
【0043】
なお、図示は省略するが、フルストローク状態において、被覆部40のうち車両後方側の部位441と、ハウジング10の開口部18のうち車両後方側の内縁部181との間の車両上下方向の距離も、0より大きい。したがって、フルストローク状態において、被覆部40のうち車両後方側の部位441は、開口部18よりも車両下方側に位置している。これにより、被覆部40は、例えば、運転者の靴底に付着していた異物が靴底から取れた場合でも、その異物が開口部18からハウジング10の内部空間11に侵入することを防ぐことが可能である。また、被覆部40は、ペダル装置に対し車両後方側から異物が近づいた場合、その異物がペダル作動領域23および開口部18に侵入することを防ぐことが可能である。
【0044】
以上説明した第4実施形態のペダル装置も、第1~第3実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態は、第3実施形態に対して被覆部40の構成の一部を変更したものであり、その他については第3実施形態と同様であるため、第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。なお、本明細書において、隙間とは、「隙間の幅」を意味することがある。
【0046】
図9および図10に示すように、第5実施形態では、初期状態において、前被覆部41のうちハウジング10側の部位とハウジング10の前壁14との隙間を「前被覆部41とハウジング10の隙間S1」と呼ぶ。初期状態において、右被覆部42のうちハウジング10側の部位とハウジング10の右側壁16との隙間を「右被覆部42とハウジング10の隙間S2」と呼ぶ。初期状態において、左被覆部43のうちハウジング10側の部位とハウジング10の左側壁17との隙間を「左被覆部43とハウジング10の隙間S3」と呼ぶ。図9および図11に示すように、初期状態において、上被覆部44のうち車両後方側の部位441とハウジング10の上壁12との隙間を「上被覆部44とハウジング10の隙間S4」と呼ぶ。
【0047】
以下の説明では、「前被覆部41とハウジング10の隙間S1」と「右被覆部42とハウジング10の隙間S2」と「左被覆部43とハウジング10の隙間S3」と「上被覆部44とハウジング10の隙間S4」を纏めて、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10との隙間S1-S4」ということがある。
【0048】
図9に示すように、ハウジング10内に設けられる構成のうちペダルアーム20の回転動作に応じて隙間が変わらず一定である摺動部位の隙間を「ハウジング10内の一定隙間S5」と呼ぶ。図9では、「ハウジング10内の一定隙間S5」の一例として、第1ホルダ34の挿通孔38の内壁と中央ロッド37との隙間S5が例示されている。
【0049】
第5実施形態では、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10との隙間S1-S4」は、「ハウジング10内の一定隙間S5」より小さい。これにより、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10との隙間S1-S4」からハウジング10の内部空間11に侵入可能な異物の大きさは、「ハウジング10内の一定隙間S5」よりも小さいものに限られる。そのため、「ハウジング10内の一定隙間S5」を構成する部材が異物の噛み込みによりロックすることを防ぐことができる。
【0050】
また、図9に示すように、ハウジング10内に設けられる構成のうちペダルアーム20の回転動作に応じて隙間が変化する部位の初期状態の隙間を「ハウジング10内の可変隙間S6」と呼ぶ。図9では、「ハウジング10内の可変隙間S6」の一例として、第2ホルダ35と第3ホルダ36との隙間S6が例示されている。
第5実施形態では、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10との隙間S1-S4」は、「ハウジング10内の可変隙間S6」より小さい。これにより、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10との隙間S1-S4」からハウジング10の内部空間11に侵入可能な異物の大きさは、「ハウジング10内の可変隙間S6」よりも小さいものに限られる。そのため、「ハウジング10内の可変隙間S6」を構成する部材が異物の噛み込みによりロックすることを防ぐことができる。
【0051】
また、図9および図12に示すように、ハウジング10の開口部18の内壁とペダルアーム20との隙間を「開口部内壁とペダルアーム20の隙間S7」と呼ぶ。
第5実施形態では、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10との隙間S1-S4」は、「開口部内壁とペダルアーム20の隙間S7」より小さい。これにより、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10との隙間S1-S4」からペダル作動領域23に侵入可能な異物の大きさは、「開口部内壁とペダルアーム20の隙間S7」よりも小さいものに限られる。そのため、「開口部内壁とペダルアーム20の隙間S7」への異物の噛み込みによりペダルアーム20がロックすることを防ぐことができる。
【0052】
さらに、図10および図11に示したように、第5実施形態では、「上被覆部44とハウジング10の隙間S4」は、「前被覆部41とハウジング10の隙間S1」、「右被覆部42とハウジング10の隙間S2」および「左被覆部43とハウジング10の隙間S3」より大きい。これにより、「前被覆部41とハウジング10の隙間S1」、「右被覆部42とハウジング10の隙間S2」または「左被覆部43とハウジング10の隙間S3」からペダル作動領域23に異物が侵入した場合でも、その異物を「上被覆部44とハウジング10の隙間S4」から排出できる。
【0053】
なお、上述したように、「上被覆部44とハウジング10の隙間S4」は、「ハウジング10内の一定隙間S5」または「ハウジング10内の可変隙間S6」より小さい。そのため、「ハウジング10内の一定隙間S5」または「ハウジング10内の可変隙間S6」を構成する部材が異物の噛み込みによりロックすることを防ぐことができる。
【0054】
なお、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10との隙間S1-S4」は、0であってもよい。すなわち、ペダル装置は、被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10とが摺動する構成としてもよい。
【0055】
(第6実施形態)
第6実施形態は第5実施形態の変形例である。第6実施形態の説明で参照する図13は、第5実施形態の説明で参照した図10に相当する箇所の図である。図13に示すように、第6実施形態では、ハウジング10の前壁14と右側壁16とが傾斜面51で接続されている。また、ハウジング10の前壁14と左側壁17も傾斜面51で接続されている。この場合、上述した「被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10との隙間S1-S4」は、「被覆部40のうちハウジング10側の部位と傾斜面51との隙間S8」を含んでいる。以下の説明では、「被覆部40のうちハウジング10側の部位と傾斜面51との隙間S8」を「被覆部40と傾斜面51の隙間S8」と呼ぶ。
【0056】
「被覆部40と傾斜面51の隙間S8」は、「ハウジング10内の一定隙間S5」より小さい。また、「被覆部40と傾斜面51の隙間S8」は、「ハウジング10内の可変隙間S6」より小さい。「被覆部40と傾斜面51の隙間S8」は、「開口部内壁とペダルアーム20の隙間S7」より小さい。「被覆部40と傾斜面51の隙間S8」は、「上被覆部44とハウジング10の隙間S4」より小さい。これにより、第6実施形態も、第5実施形態と同一の作用効果を奏することができる。
【0057】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。第7実施形態は、第1~第6実施形態に対してハウジング10の構成の一部を変更したものであり、その他については第1~第6実施形態と同様であるため、第1~第6実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0058】
図14図16に示すように、第7実施形態では、ハウジング10は、ハウジング本体52と、ハウジング本体52の外壁から車幅方向右側および車幅方向左側に突出するリブ形状部53を有している。なお、ハウジング本体52は、底壁13、前壁14、後壁15、右側壁16および左側壁17を含んでいる。リブ形状部53は、上壁12を含んでいる。
【0059】
図16に示すように、ハウジング本体52は、内部空間11に反力発生機構30が配置される箇所における左側壁17と右側壁16との距離D4が、内部空間11に反力発生機構30が配置されない箇所における左側壁17と右側壁16との距離D5よりも大きい。そのため、ハウジング10の左側壁17および右側壁16には、内部空間11に反力発生機構30が配置される箇所と、内部空間11に反力発生機構30が配置されない箇所とを接続する部位に段差54が設けられている。
【0060】
図15および図16に示すように、リブ形状部53は、ハウジング10の右側壁16のうち上壁12側の部位から車幅方向右側に突出する部位と、ハウジング10の左側壁17のうち上壁12側の部位から車幅方向左側に突出する部位である。なお、リブ形状部53は、上壁12がハウジング本体52よりも車幅方向右側および車幅方向左側に突出する部位、とも言える。リブ形状部53の外形が車両前後方向に直線的に延びる形状となっている。したがって、リブ形状部53は、ハウジング10の左側壁17および右側壁16に設けられた段差54を吸収し、ハウジング10の上壁12側の外形を簡素な形状としている。被覆部40の有する前被覆部41と右被覆部42と左被覆部43は、この簡素な形状のリブ形状部53の外側を覆っている。
【0061】
以上説明した第7実施形態では、ハウジング10は、ハウジング本体52の外壁から車幅方向右側および車幅方向左側に突出するリブ形状部53を有している。「被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング10との隙間S1-S4」は、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とリブ形状部53との隙間S9」を含んでいる。
これによれば、ハウジング本体52を複雑な形状にしても、リブ形状部53を設けることで、被覆部40を簡素な形状としつつ、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とリブ形状部53との隙間S9」を小さくできる。
【0062】
また、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とハウジング本体52との隙間S10」は、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とリブ形状部53との隙間S9」よりも大きい。そのため、「被覆部40のうちハウジング10側の部位とリブ形状部53との隙間S9」に異物が挟まることを防ぐことができる。
【0063】
(第8実施形態)
第8実施形態について説明する。第8実施形態は、第7実施形態に対して被覆部40の構成の一部を変更したものであり、その他については第7実施形態と同様であるため、第7実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0064】
図17に示すように、第8実施形態でも、ハウジング10は、リブ形状部53を有している。一方、被覆部40は、リブ形状部53よりも車両下方側へ延びる箇所にハウジング本体52側に突出する被覆部側リブ形状部45を有している。そして、ハウジング10のリブ形状部53と被覆部側リブ形状部45とは車両上下方向に重なり、迷路構造を形成している。
これにより、第8実施形態では、ペダル作動領域23に異物が侵入することをより確実に防ぐことができる。
【0065】
(第9実施形態)
第9実施形態について説明する。第9実施形態は、第1~第8実施形態に対してハウジング10および被覆部40の構成の一部を変更したものであり、その他については第1~第8実施形態と同様であるため、第1~第8実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0066】
図18および図19に示すように、第9実施形態では、ハウジング10の前壁14は、中央部よりも車幅方向左右の部位が車両後方に位置する傾斜形状とされている。また、前被覆部41も、中央部よりも車幅方向左右の部位が車両後方に位置する傾斜形状とされている。
【0067】
これにより、図19の矢印M1、M2、M3に示したように、ペダル装置に対し車両前方側から異物FMが近づいた場合、その異物FMは、ハウジング10の前壁14または前被覆部41で止まることなく、車幅方向の左または右に転がる方向を変える。そのため、このペダル装置は、ペダル作動領域23への異物の侵入を防ぐことができる。
【0068】
(第10実施形態)
第10実施形態について説明する。第10実施形態は、第9実施形態の変形例である。
【0069】
図20に示すように、第9実施形態では、ハウジング10の前壁14は、車両前方に凸の湾曲形状とされている。また、前被覆部41も、車両前方に凸の湾曲形状とされている。
【0070】
これにより、図20の矢印M1、M2、M3に示したように、ペダル装置に対し車両前方側から異物FMが近づいた場合、その異物FMは、ハウジング10の前壁14または前被覆部41で止まることなく、車幅方向の左または右に転がる方向を変える。そのため、第10実施形態のペダル装置も、第9実施形態と同一の作用効果を奏することができる。
【0071】
(第11実施形態)
第11実施形態について説明する。第11実施形態は、第1~第10実施形態に対してセンサ55とセンサカバー56を追加したものであり、その他については第1~第10実施形態と同様であるため、第1~第10実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0072】
図21および図22に示すように、第11実施形態のペダル装置は、センサ55とセンサカバー56を備えている。センサ55は、ペダルアーム20の回転角度を検知する角度センサまたはストロークセンサである。第1実施形態で説明したように、センサ55から出力される電気信号は、車両に搭載される電子制御装置に伝送される。
【0073】
センサカバー56は、ハウジング10の外側に設けられ、センサ55を保護する部材である。このセンサカバー56は、センサ55が設けられた位置からさらに車両上方に延び、被覆部40のうちハウジング10側の部位の外側に被さっている。なお、センサカバー56は、初期状態からフルストローク状態に亘り、被覆部40のうちハウジング10側の部位の外側に被さっている。具体的には、センサカバー56は、右被覆部42のうちハウジング10側の部位の外側に被さっている。
これにより、車両のフロアと被覆部40(具体的には、右被覆部42)との間に異物が挟まることを防ぐことができる。したがって、ペダルアーム20が異物の侵入によりロックすることを防ぐことができる。なお、センサカバー56は、ペダル装置に対し、車幅方向左側に設けてもよい。
【0074】
(第12実施形態)
第12実施形態について説明する。第12実施形態は、第1~第11実施形態に対して車両のフロアの形状を変更したものであり、その他については第1~第11実施形態と同様であるため、第1~第11実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0075】
図23および図24に示すように、第12実施形態のペダル装置のハウジング10は、車両のフロア2に設けられた溝3の内側に固定されている。被覆部40のうちハウジング10側の部位は、初期状態からフルストローク状態に亘り、車両のフロア2に設けられた溝3に入っている。
これにより、車両のフロア2と被覆部40との間に異物が挟まることを防ぐことができる。したがって、ペダルアーム20が異物の侵入によりロックすることを防ぐことができる。
【0076】
(第13実施形態)
第13実施形態について説明する。第13実施形態は、第13実施形態の変形例である。
図25に示すように、第13実施形態でも、ペダル装置のハウジング10は、車両のフロア2に設けられた溝3の内側に固定されている。被覆部40のうちハウジング10側の部位は、初期状態からフルストローク状態に亘り、車両のフロア2に設けられた溝3に入っている。第13実施形態では、車両のフロア2に設けられた溝3は、フロア2に設けられた2つの突起4の間に形成されるものである。
以上説明した第13実施形態のペダル装置も、第12実施形態と同一の作用効果を奏することができる。
【0077】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、ペダル装置の一例として、ブレーキペダル装置について説明したが、それに限らず、ペダル装置はアクセルペダル装置であってもよい。
【0078】
(2)上記各実施形態では、ペダル装置の一例としてのブレーキペダル装置は、ブレーキバイワイヤシステムに用いられるものとして説明したが、それに限らず、例えば、マスターシリンダとブレーキペダル装置とが機械的に接続されたブレーキシステムに用いられるものであってもよい。この場合、ペダル装置は、反力発生機構30を備えない構成とすることができる。
【0079】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態およびその一部は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0080】
本発明の特徴は次のとおりである。
[請求項1]
車両に搭載されるオルガン式のペダル装置であって、
車両に固定されるハウジング(10)と、
前記ハウジングに対し所定の軸心(CL)を中心として所定の角度範囲で回転可能に設けられ、前記軸心よりも車両上方側に運転者に踏まれる部位としてのペダル操作部(21)を有するペダルアーム(20)と、
前記ペダルアームに設けられ、前記ペダルアームが回転動作する領域のうち前記ハウジングより外側のペダル作動領域(23)に対し車両前方側と車幅方向右側と車幅方向左側の全部または一部を覆う被覆部(40)と、を備えるペダル装置。
[請求項2]
前記被覆部は、車両後方且つ車両上方を向く上被覆部(44)を有する、請求項1に記載のペダル装置。
[請求項3]
前記被覆部は、前記ペダルアームから前記ハウジング側に延び、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位の少なくとも一部が前記ハウジングの外側に被さっている、請求項1または2に記載のペダル装置。
[請求項4]
前記被覆部は、前記ペダル作動領域に対し車両前方側と車幅方向右側と車幅方向左側の全部を覆う、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項5]
前記ハウジングは、車両上側を向く上壁(12)に開口部(18)を有しており、
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態において、前記被覆部のうち車両後方側の部位(441)は、前記開口部より車両下方側に位置している、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項6]
前記ハウジングは、車両上側を向く上壁(12)に開口部(18)を有しており、
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されて前記ペダル操作部が前記ハウジングに最も近づいたフルストローク状態において、前記被覆部のうち車両後方側の部位(441)は、前記開口部より車両下方側に位置している、請求項1ないし5のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項7]
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態において、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記ハウジングとの隙間(S1-S4、S8)は、前記ハウジング内に設けられる構成のうち前記ペダルアームの回転動作に応じて隙間が変わらず一定である摺動部位の隙間(S5)よりも小さい、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項8]
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態において、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記ハウジングとの隙間(S1-S4、S8)は、前記ハウジング内に設けられる構成のうち前記ペダルアームの回転動作に応じて隙間が変化する部位の前記初期状態の隙間(S6)よりも小さい、請求項1ないし7のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項9]
前記ハウジングは、車両上側を向く上壁(12)に開口部(18)を有しており、
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態において、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記ハウジングとの隙間(S1-S4、S8)は、前記開口部の内壁と前記ペダルアームとの隙間(S7)よりも小さい、請求項1ないし8のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項10]
前記被覆部は、車両前方且つ車両上方を向く前被覆部(41)と、車幅方向右側を向く右被覆部(42)と、車幅方向左側を向く左被覆部(43)と、車両後方且つ車両上方を向く上被覆部(44)を有し、
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態において、前記上被覆部のうち車両後方側の部位(441)と前記ハウジングとの隙間(S4)は、前記前被覆部、前記右被覆部および前記左被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記ハウジングとの隙間(S1、S2、S3)より大きく、前記ハウジング内に設けられる構成のうち前記ペダルアームの回転動作に応じて隙間が変化する部位の前記初期状態の隙間(S6)または前記ハウジング内に設けられる構成のうち前記ペダルアームの回転動作に応じて隙間が変わらず一定である摺動部位の隙間(S5)よりも小さい、請求項1ないし9のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項11]
前記ハウジングは、ハウジング本体(52)と、前記ハウジング本体の外壁から車幅方向右側または車幅方向左側に突出するリブ形状部(53)とを有し、
前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記ハウジングとの隙間(S1-S4、S8)は、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位と前記リブ形状部との隙間(S9)を含んでいる、請求項1ないし10のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項12]
前記被覆部は、前記リブ形状部よりも車両下方側へ延びる箇所に前記ハウジング本体側に突出する被覆部側リブ形状部(45)を有しており、
前記ハウジングの前記リブ形状部と前記被覆部側リブ形状部とが車両上下方向に重なり、迷路構造が形成されている、請求項11に記載のペダル装置。
[請求項13]
前記ハウジングのうち車両前方を向く前壁(14)は、車両前方に凸の湾曲形状であり、
前記被覆部のうち車両前方を向く前被覆部(41)も、車両前方に凸の湾曲形状である、請求項1ないし12のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項14]
前記ハウジングのうち車両前方を向く前壁(14)は、中央部よりも車幅方向左右の部位が車両後方に位置する傾斜形状であり、
前記被覆部のうち車両前方を向く前被覆部(41)も、中央部よりも車幅方向左右の部位が車両後方に位置する傾斜形状である、請求項1ないし12のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項15]
前記ペダルアームの回転角度を検知するセンサ(55)と、
前記ハウジングの外側に設けられ、前記センサを保護するセンサカバー(56)をさらに備え、
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態から、運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されて前記ペダル操作部が前記ハウジングに最も近づいたフルストローク状態に亘り、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位の外側に前記センサカバーが被さっている、請求項1ないし14のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項16]
運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されていない初期状態から、運転者の踏力が前記ペダル操作部に印加されて前記ペダル操作部が前記ハウジングに最も近づいたフルストローク状態に亘り、前記被覆部のうち前記ハウジング側の部位は、車両のフロア(2)に設けられた溝(3)に入っている、請求項1ないし15のいずれか1つに記載のペダル装置。
[請求項17]
前記被覆部の材質の一部または全ては、運転者の踏力により弾性変形可能な樹脂、ゴムまたはエラストマーである、請求項1ないし16のいずれか1つに記載のペダル装置。
【符号の説明】
【0081】
10 ハウジング
20 ペダルアーム
21 ペダル操作部
23 ペダル作動領域
40 被覆部
CL 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25