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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158410
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】二酸化炭素供給装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 4/00 20060101AFI20241031BHJP
   B01D 53/32 20060101ALI20241031BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241031BHJP
   B01D 53/96 20060101ALI20241031BHJP
   B01D 53/74 20060101ALI20241031BHJP
   A01G 7/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B01J4/00 102
B01D53/32 ZAB
B01D53/62
B01D53/96
B01D53/74
A01G7/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073577
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】青島 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 陽介
(72)【発明者】
【氏名】滝川 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】穂塚 稔
【テーマコード(参考)】
2B022
4D002
4G068
【Fターム(参考)】
2B022DA12
2B022DA15
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA08
4D002GA03
4D002GB20
4G068AA01
4G068AB01
4G068AC20
4G068AD21
4G068AF40
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素の供給を早期に開始することができるとともに、目標とする二酸化炭素濃度への到達時間を短縮すること
【解決手段】二酸化炭素供給装置10の制御装置20は、電気化学セル12bから脱離された二酸化炭素を含む第1のガスの二酸化炭素供給対象19への供給と、貯蔵タンク14に貯蔵されていた第2のガスの二酸化炭素供給対象19への供給を制御するように構成される。このため、例えば、制御装置20が、二酸化炭素供給対象19への二酸化炭素の供給開始時に、貯蔵タンク14に貯蔵されていた第2のガスを供給するように制御することで、二酸化炭素供給対象19への二酸化炭素の供給を早期に開始することができるとともに、目標とする二酸化炭素濃度への到達時間を短縮することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に配置され、吸着電位の印加により二酸化炭素を吸着し、脱離電位の印加により吸着した二酸化炭素を脱離する電気化学セル(12a)を有し、前記電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる吸着モードと、前記電気化学セルから二酸化炭素を脱離させる脱離モードとを交互に実施することにより、前記電気化学セルから脱離された二酸化炭素を含む第1のガスを二酸化炭素供給対象(19)に供給する二酸化炭素供給装置であって、
少なくとも大気中の二酸化炭素濃度よりも二酸化炭素濃度の高い第2のガスを貯蔵する貯蔵タンク(14)と、
前記貯蔵タンクへの前記第2のガスの貯蔵を制御する貯蔵制御部(20)と、
前記電気化学セルから脱離された二酸化炭素を含む前記第1のガスの前記二酸化炭素供給対象への供給を制御するとともに、前記貯蔵タンクに貯蔵されていた前記第2のガスの前記二酸化炭素供給対象への供給を制御する供給制御部(20)と、を備える二酸化炭素供給装置。
【請求項2】
前記貯蔵制御部は、前記二酸化炭素供給対象に設けられた、稼働時に二酸化炭素を含む排気ガスを出力する排気ガス出力装置(19b)からの排気ガスを前記第2のガスとして前記貯蔵タンクに貯蔵する、請求項1に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項3】
前記貯蔵制御部は、前記二酸化炭素供給対象に設けられた、稼働時に二酸化炭素を含む排気ガスを出力する排気ガス出力装置(19b)からの排気ガスを前記筐体内に導入するとともに、前記吸着モードと前記脱離モードとを交互に実施することにより、前記排気ガスから回収した二酸化炭素を含むガスを前記第2のガスとして前記貯蔵タンクに貯蔵する、請求項1に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項4】
前記貯蔵制御部は、大気ガスを前記筐体内に導入するとともに、前記吸着モードと前記脱離モードとを交互に実施することにより、前記大気ガスから回収した二酸化炭素を含むガスを前記第2のガスとして前記貯蔵タンクに貯蔵する、請求項1に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項5】
前記二酸化炭素供給対象は、閉じられた空間内で農作物を育成する農業用設備であり、
前記貯蔵制御部は、夜間又は悪天候の間に前記貯蔵タンクに前記第2のガスを貯蔵する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項6】
前記二酸化炭素供給対象は、閉じられた空間内で農作物を育成する農業用設備であり、
前記貯蔵制御部は、予想される天気及び/又は季節に応じて、前記貯蔵タンクに貯蔵する前記第2のガスの二酸化炭素濃度を変化させる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項7】
前記二酸化炭素供給対象は、閉じられた空間内で農作物を育成する農業用設備であり、
前記供給制御部は、日中に、前記二酸化炭素供給対象に対して二酸化炭素を含むガスを供給するものであり、
前記供給制御部が前記二酸化炭素供給対象への二酸化炭素を含むガスの供給を開始する時に、前記供給制御部は、前記貯蔵タンクに貯蔵されていた前記第2のガスを前記二酸化炭素供給対象へ供給する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項8】
前記供給制御部は、前記二酸化炭素供給対象の二酸化炭素濃度が目標二酸化炭素濃度に達するか、もしくは、前記貯蔵タンク内の前記第2のガスの供給が完了すると、前記第2のガスの供給を停止する、請求項7に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項9】
前記供給制御部は、前記第2のガスの前記二酸化炭素供給対象への供給に応じて、前記第1のガスの前記二酸化炭素供給対象への供給を開始する、請求項7に記載の二酸化炭素供給装置。
【請求項10】
前記第1のガスの前記二酸化炭素供給対象への供給は、前記二酸化炭素供給対象における二酸化炭素濃度が目標濃度に達するまで繰り返し実施される、請求項9に記載の二酸化炭素供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる吸着モードと、電気化学セルから二酸化炭素を脱離させる脱離モードとを交互に実施することにより、電気化学セルから脱離された二酸化炭素を二酸化炭素供給対象に供給する二酸化炭素供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1や特許文献2には、電気化学デバイスや水酸化ナトリウム水溶液を用いて、屋内の空気中から二酸化炭素を回収して、二酸化炭素濃度を減少させる二酸化炭素回収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-144024号公報
【特許文献2】特開2022-8288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような二酸化炭素回収装置を用いて、農作物の収穫量を増加させることが試みられている。この場合、二酸化炭素の回収及び供給を行う装置が、大気中の二酸化炭素を回収するとともに、回収した二酸化炭素をビニールハウスなどの農業用設備内に供給するように用いられる。これにより、農業用設備内の二酸化濃度を、例えば通常の約3倍程度まで高めることができ、その結果、農作物の収穫量を最大で3割程度増加させることが可能となる。
【0005】
しかしながら、上述したような二酸化炭素の回収及び供給を行う装置は、二酸化炭素を回収後、回収した二酸化炭素を供給するものであるため、二酸化炭素の供給を開始するまでに時間がかかる。さらに、二酸化炭素の回収と供給の1つのサイクルによって供給され得る二酸化炭素量が少ない場合、農業用設備内の二酸化炭素濃度を目標とする二酸化炭素濃度とするまでには、さらに長い時間を要することになる。
【0006】
本開示は、上述した点に鑑みてなされたものであり、二酸化炭素の供給を早期に開始することができるとともに、目標とする二酸化炭素濃度への到達時間を短縮することが可能な二酸化炭素供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の二酸化炭素供給装置は、筐体内に配置され、吸着電位の印加により二酸化炭素を吸着し、脱離電位の印加により吸着した二酸化炭素を脱離する電気化学セル(12a)を有し、電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる吸着モードと、電気化学セルから二酸化炭素を脱離させる脱離モードとを交互に実施することにより、電気化学セルから脱離された二酸化炭素を含む第1のガスを二酸化炭素供給対象(19)に供給する二酸化炭素供給装置であって、
少なくとも大気中の二酸化炭素濃度よりも二酸化炭素濃度の高い第2のガスを貯蔵する貯蔵タンク(14)と、
貯蔵タンクへの第2のガスの貯蔵を制御する貯蔵制御部(20)と、
電気化学セルから脱離された二酸化炭素を含む第1のガスの二酸化炭素供給対象への供給を制御するとともに、貯蔵タンクに貯蔵されていた第2のガスの二酸化炭素供給対象への供給を制御する供給制御部(20)と、を備えるように構成される。
【0008】
上述した二酸化炭素供給装置では、供給制御部は、電気化学セルから脱離された二酸化炭素を含む第1のガスの二酸化炭素供給対象への供給と、貯蔵タンクに貯蔵されていた第2のガスの二酸化炭素供給対象への供給を制御するように構成される。このため、例えば、供給制御部は、貯蔵タンクに貯蔵されていた第2のガスを供給することで、貯蔵タンク内の第2のガスに含有される二酸化炭素を一気に二酸化炭素供給対象に供給することができる。これにより、二酸化炭素の供給を早期に開始することができるとともに、二酸化炭素供給対象において素早く二酸化炭素濃度を上昇させることができる。また、例えば、第2のガスの供給と併せて、第1のガスの供給も開始することで、二酸化炭素供給対象の二酸化炭素濃度の上昇を促進することができる。従って、本開示の二酸化炭素供給装置によれば、二酸化炭素の供給を早期に開始することができるとともに、目標とする二酸化炭素濃度への到達時間を短縮することが可能となる。
【0009】
上記括弧内の参照番号は、本開示の理解を容易にすべく、後述する実施形態における具体的な構成との対応関係の一例を示すものにすぎず、なんら本開示の範囲を制限することを意図したものではない。
【0010】
また、上記した本開示の特徴以外の、特許請求の範囲の各請求項に記載した技術的特徴に関しては、後述する実施形態の説明及び添付図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る二酸化炭素供給装置の構成を概略的に示す構成図である。
図2】二酸化炭素供給装置の制御装置によって実行される、貯蔵モード、貯蔵ガス放出モード、学習モード、二酸化炭素供給モードを含む、二酸化炭素供給先へ二酸化炭素を供給するための処理を示すフローチャートである。
図3】学習モード処理の実行条件及び実行タイミングの例を示す表である。
図4】学習モード処理の詳細を示すフローチャートである。
図5】脱離学習データ作成処理の詳細を示すフローチャートである。
図6】学習用脱離モードにおいて、二酸化炭素センサを用いて測定された、時間経過に伴う回収器内の二酸化炭素濃度の変化の一例を示すグラフである。
図7】時間経過に伴う回収器内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて作成される、経過時間と電気化学セルからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データの一例を示すグラフである。
図8】吸着学習データ作成処理の詳細を示すフローチャートである。
図9】学習用吸着モードにおいて、二酸化炭素センサを用いて測定された、時間経過に伴う回収器内の二酸化炭素濃度の変化の一例を示すグラフである。
図10】時間経過に伴う回収器内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて作成される、経過時間と電気化学セルへの二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データの一例を示すグラフである。
図11】事前準備吸着時間と学習用吸着モード実施時間との相違に応じた、吸着学習データの更新について説明するための説明図である。
図12】貯蔵モード処理の詳細を示すフローチャートである。
図13】二酸化炭素供給装置が貯蔵モードで動作するときの各部の作動状態を示す図である。
図14】貯蔵ガス放出モード処理の詳細を示すフローチャートである。
図15】二酸化炭素供給装置が貯蔵ガス放出モードで動作するときの各部の作動状態を示す図である。
図16】二酸化炭素供給モードにおける吸着モード処理の詳細を示すフローチャートである。
図17】二酸化炭素供給装置が二酸化炭素供給モードにおける吸着モードで動作するときの各部の作動状態を示す図である。
図18】二酸化炭素供給モードにおける脱離モード処理の詳細を示すフローチャートである。
図19】二酸化炭素供給装置が二酸化炭素供給モードにおける脱離モードで動作するときの各部の作動状態を示す図である。
図20】第2実施形態に係る二酸化炭素供給装置の制御装置によって実施される、貯蔵モード処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の複数の実施形態に係る二酸化炭素供給装置が、図面を参照して、詳細に説明される。なお、複数の図面にわたって、互いに同一もしくは均等である部分には、同一又は対応する符号が付されている。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る二酸化炭素供給装置10の構成を概略的に示している。本実施形態に係る二酸化炭素供給装置10は、大気から回収した二酸化炭素を含む二酸化炭素含有ガス(第1のガス)、及び/又は、貯蔵タンク14に貯蔵された、少なくとも大気中の二酸化炭素濃度よりも二酸化炭素濃度の高い二酸化炭素含有ガス(第2のガス)を、例えばビニールハウスなどの閉じられた空間内で農作物を育成する農業用設備のような二酸化炭素供給先19に供給するものである。
【0014】
図1に示す二酸化炭素供給装置10は、第1切替弁11、回収器12、第1開閉弁13、貯蔵タンク14、第2開閉弁15、第3開閉弁16、送風機17、第2切替弁18、二酸化炭素供給先19に設けられた二酸化炭素センサ19a、二酸化炭素供給先19に設けられた暖房機19b、及び、制御装置20などを備えている。
【0015】
第1切替弁11は、大気が導入される流路配管及び暖房機19bの排気ガスが導入される流路配管と、回収器12内に繋がる流路配管との間に設けられる。第1切替弁11は、制御装置20によって、流路の切り替えが制御される。第1切替弁11が、大気が導入される流路配管と回収器12内に繋がる流路配管とを連通するように切り替えられると、二酸化炭素を含有した大気が回収器12内に導入される。一方、第1切替弁11が、暖房機19bの排気ガスが導入される流路配管と回収器12内に繋がる流路配管とを連通するように切り替えられると、暖房機19bの排気ガスが、回収器12内を流動する。なお、第1切替弁11は、回収器12内に繋がる流路配管を、大気が導入される流路配管及び暖房機19bの排気ガスが導入される流路配管のいずれにも連通せず、回収器12内を外部から遮断することが可能な切替位置を有するように構成されている。
【0016】
回収器12は、例えば金属製の筐体の内部に配置された電気化学セル12aを備える。さらに、回収器12は、回収器12内の二酸化炭素濃度を測定することが可能な二酸化炭素センサ12bを備える。二酸化炭素センサ12bは、例えば、二酸化炭素を含む大気が回収器12内を流動するとき、電気化学セル12aによって二酸化炭素が除去された後の大気中の二酸化炭素濃度を測定可能な位置に設けられる。
【0017】
回収器12は、2つの開口部を有している。開口部の1つは、外部から二酸化炭素を含む大気などを回収器12の筐体内部に導入するための導入口である。開口部のもう1つは、二酸化炭素が除去された大気や、電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素を多く含む大気などを排出するための排出口である。上述した第1切替弁11が設けられた流路配管が導入口に接続され、第3開閉弁16が設けられた流路配管が排出口に接続される。なお、回収器12内とは、筐体の内部と同意である。
【0018】
電気化学セル12aは、電気化学反応によって、二酸化炭素を吸着して、大気から二酸化炭素を分離(回収)したり、吸着した二酸化炭素を脱離したりすることが可能なものである。二酸化炭素が分離された大気は、送風機17及び第2切替弁18を介して外部に放出される。また、電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素は、二酸化炭素を多く含む大気として、送風機17によって二酸化炭素供給先19へ供給される。
【0019】
回収器12の筐体内部には、複数の電気化学セル12aが積層して配置されている。複数の電気化学セル12aの積層方向は、大気の流れ方向に直交する方向となっている。個々の電気化学セル12aは板状に構成されており、板面がセル積層方向と交差するように配置されている。隣接する電気化学セル12aの間には、所定の隙間が設けられている。隣接する電気化学セル12aの間に設けられた隙間は、大気が流れる流路となる。
【0020】
各電気化学セル12aは、例えば、作用極集電層、作用極、セパレータ、対極、及び対極集電層などが、記載された順序で積層されて構成されている。なお、作用極は負極であり、作用極と対をなす対極は正極である。これら作用極と対極との間に印加する電位差を変化させることにより、作用極に電子を与えて、作用極の二酸化炭素吸着材に二酸化炭素を吸着させたり、作用極から電子を放出させて、吸着した二酸化炭素を脱離させたりすることができる。すなわち、電気化学セル12aの作用極と対極との間に吸着電位を印加することにより、電気化学セル12a(作用極の二酸化炭素吸着材)に二酸化炭素を吸着させることができる。また、電気化学セル12aの作用極と対極との間に、吸着電位とは異なる脱離電位を印加することにより、電気化学セル12aから二酸化炭素を脱離させることができる。
【0021】
作用極集電層は、二酸化炭素を含んだ大気が通過可能な孔を有する多孔質の導電性材料からなる。作用極集電層は、ガス透過性と導電性を有していればよく、作用極集電層の形成材料として、例えば金属材料や炭素質材料を用いることができる。
【0022】
作用極は、二酸化炭素吸着材、導電性物質、バインダなどを混合した材料から形成される。二酸化炭素吸着材は、電子を受け取ることで二酸化炭素を吸着し、電子を放出することで吸着していた二酸化炭素を脱離する性質を有する。二酸化炭素吸着材としては、例えばポリアントラキノンを用いることができる。導電性物質は、二酸化炭素吸着材への導電路を形成する。導電性物質としては、例えばカーボンナノチューブ、カーボンブラック、グラフェン等の炭素材料を用いることができる。バインダは、二酸化炭素吸着材や導電性物質を保持するためのものである。バインダとしては、例えば導電性樹脂を用いることができる。導電性樹脂は、例えば、導電性フィラーとしてAg等を含有するエポキシ樹脂やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂等を用いることができる。
【0023】
対極は、電気活性補助材、導電性物質、バインダなどを混合した材料から形成される。対極の導電性物質、バインダは、作用極の導電性物質、バインダと同様であるため説明を省略する。対極の電気活性補助剤は、電子供与剤となる活物質を有する材質で構成される。対極の電気活性補助材は、作用極の二酸化炭素吸着材との間で電子の授受を行う補助的な電気活性種である。電気活性補助材としては、例えば金属イオンの価数が変化することで、電子の授受を可能とする金属錯体を用いることができる。このような金属錯体としては、フェロセン、ニッケロセン、コバルトセン等のシクロペンタジエニル金属錯体、あるいはポルフィリン金属錯体等を挙げることができる。これらの金属錯体は、ポリマーでもモノマーでもよい。対極集電層は、作用極集電層と同様に、金属材料や炭素質材料などの導電性材料にて形成される。
【0024】
セパレータは、作用極と対極との間に配置され、作用極と対極とを分離する。セパレータは、作用極と対極との物理的な接触を防いで電気的短絡を抑制するとともに、イオンを透過させる絶縁性イオン透過膜である。セパレータとして、セルロース膜やポリマー、ポリマーとセラミックの複合材料等を用いることができる。
【0025】
なお、電気化学セル12aには、電解質が作用極及び対極にまたがるように設けられている。電解質は、例えばイオン液体を用いることができる。イオン液体は、常温常圧下で不揮発性を有する液体の塩である。
【0026】
第1開閉弁13は、回収器12の排出口と貯蔵タンク14の導入口とを連通する流路配管に設けられる。第1開閉弁13は、制御装置20によって開閉状態が制御される。第1開閉弁13が開かれると、回収器12と貯蔵タンク14とを連通する流路配管を介して、回収器12から流出するガスが貯蔵タンク14内に流入することが可能となる。一方、第1開閉弁13が閉じられると、回収器12と貯蔵タンク14とを連通する流路配管が遮断される。
【0027】
第2開閉弁15は、貯蔵タンク14の排出口と送風機17とを連通する流路配管に設けられる。第2開閉弁15は、制御装置20によって開閉状態が制御される。第2開閉弁13が開かれると、回収器12と送風機17とを連通する流路配管を介して、貯蔵タンク14内の二酸化炭素を多く含むガスが流出し、送風機17を介して流動することが可能となる。一方、第2開閉弁15が閉じられると、回収器12と送風機17とを連通する流路配管が遮断される。
【0028】
貯蔵タンク14は、回収器12と送風機17とを直接的に連通する流路配管に対して、並列に接続されている。貯蔵タンク14は、二酸化炭素供給先19に設けられた暖房機19bの排気ガス、つまり、暖房機19bにおいて燃油(重油など)や薪などの燃料の燃焼によって生じた、大気中の二酸化炭素よりも二酸化炭素を多く含むガス(第2のガス)を貯蔵する。後述する貯蔵モードにおいて、暖房機19bの排気ガスが貯蔵タンク14に貯蔵される。より具体的には、貯蔵モードでは、第1開閉弁13及び第2開閉弁15がともに開かれるとともに、送風機17が稼働される。これにより、暖房機19bの排気ガスは、第1切替弁11及び回収器12を介して、貯蔵タンク14に流入し、貯蔵タンク14内には排気ガスが充満する。貯蔵タンク14に所望の濃度の二酸化炭素を含有したガスが充填されると、第1及び第2開閉弁13、15が閉じられる。貯蔵モードに関しては、後に詳細に説明される。
【0029】
なお、貯蔵タンク14の接続位置や設置場所は、上述した例に限られない。例えば、貯蔵タンク14は、回収器12の筐体内など、筐体と一体的に設けても良い。また、貯蔵タンク14は、第1切替弁11や回収器12を介して排気ガスを導入するのではなく、例えば、暖房機19bの排気ガスを導入する流路配管から直接的に二酸化炭素を導入し、回収器12と送風機17とを連通する流路配管に、貯蔵した二酸化炭素を多く含むガスを放出するように構成しても良い。さらに、貯蔵タンク14の導入口と排出口は共通化しても良い。
【0030】
二酸化炭素センサ14aは、貯蔵モード及び貯蔵ガス放出モードにおいて、貯蔵タンク14内の二酸化炭素濃度を所定の時間間隔で検出する。制御装置20は、貯蔵モードにおいて、二酸化炭素センサ14aによって検出された二酸化炭素濃度が所望の濃度に達すると、貯蔵モードを終了、すなわち、第1開閉弁13及び第2開閉弁15を閉じて、排気ガスの貯蔵を終了する。また、制御装置20は、貯蔵ガス放出モードにおいて、二酸化炭素センサ14aによって検出された二酸化炭素濃度が、貯蔵していた第2のガスの放出完了を示す濃度(例えば、大気中の二酸化炭素濃度に相当する基準濃度)に達すると、貯蔵ガス放出モードを終了する。貯蔵ガス放出モードの終了時には、第1開閉弁13及び第2開閉弁15は、閉じられても良いし、開かれたままでも良い。
【0031】
第3開閉弁16は、第1開閉弁13が設けられた流路配管への分岐点と、第2開閉弁15が設けられた流路配管との結合点との間において、回収器12内と送風機17とを直接的に連通する流路配管に設けられる。第3開閉弁16は、制御装置20によって開閉状態が制御される。第3開閉弁16が開かれると、回収器12内と送風機17とを連通する流路配管を介して、回収器12から送風機17へのガス(二酸化炭素が除去された大気、電気化学セル12aから脱離した二酸化炭素を含む大気など)の流動が可能となる。一方、第3開閉弁16が閉じられると、回収器12内と送風機17とを連通する流路配管が遮断される。従って、第1切替弁11が連通を遮断し、第1~第3開閉弁13、15、16がすべて閉じられると、回収器12は外部と連通するための流路配管が遮断され、回収器12内はほぼ密閉された状態となる。
【0032】
送風機17は、いずれも図示は省略されているが、モータによって回転される送風ファンを有する。送風機17は、制御装置20によってオン、オフや、回転数が制御される。送風機17は、暖房機19bからの排気ガスを貯蔵タンク14に貯蔵するとき、貯蔵タンク14に貯蔵された二酸化炭素を多く含むガスを二酸化炭素供給先19に供給するとき、回収器12内の電気化学セル12aに二酸化炭素を吸着させるとき、及び、吸着された二酸化炭素を電気化学セル12aから脱離させ、脱離された二酸化炭素を含む大気を二酸化炭素供給先19へ供給するときに、制御装置20によってオンされる。なお、送風機17として、大気を流動させることが可能なポンプを用いても良い。
【0033】
第2切替弁18は、送風機17の下流側の流路配管を流れるガス(暖房機19bからの排気ガス、貯蔵タンク14に貯蔵された二酸化炭素を多く含むガス、二酸化炭素が除去された大気、電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素を含む大気など)の流路を切り替える三方弁である。第2切替弁18の流路の切り替えは、制御装置20によって制御される。具体的には、制御装置20は、暖房機19bからの排気ガスを貯蔵タンク14に貯蔵するとき、及び回収器12内の電気化学セル12aに二酸化炭素を吸着させるとき、送風機17の下流側の流路配管を外部(大気)に連通するように第2切替弁18を制御する。これにより、貯蔵タンク14に貯蔵されなかった排気ガス、及び二酸化炭素が除去された大気は、外部へ放出される。一方、制御装置20は、貯蔵タンク14に貯蔵された二酸化炭素を多く含むガス、及び電気化学セル12aが吸着した二酸化炭素を脱離するとき、送風機17の下流側の流路配管を二酸化炭素供給先19に連通するように第2切替弁18を制御する。これにより、貯蔵タンク14から放出された二酸化炭素を多く含むガス、及び電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素を含む大気、すなわち、通常よりも二酸化炭素を多く含む大気(例えば、通常の3倍程度の二酸化炭素濃度の大気)が二酸化炭素供給先19に供給される。
【0034】
二酸化炭素センサ19aは、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度を所定の時間間隔で検出する。制御装置20は、二酸化炭素センサ19aによって検出された二酸化炭素濃度が所定の目標上限濃度に達すると、二酸化炭素供給装置10による二酸化炭素の供給を停止する。また、例えば、二酸化炭素供給先19が農業用設備である場合に、農作物の光合成によって二酸化炭素濃度が低下し、所定の目標下限濃度に達すると、制御装置20は、二酸化炭素供給装置10による二酸化炭素の供給を再開する。
【0035】
暖房機19bは、二酸化炭素供給先19の内部を暖めるためのものであり、二酸化炭素供給先19の内部に設置される。暖房機19bは燃油や薪などの燃料を燃焼することによって、二酸化炭素供給先19の内部を暖める。燃料の燃焼によって生じた、二酸化炭素を多く含む排気ガスは、上述したように、第1切替弁11に接続された流路配管に導入される。
【0036】
制御装置20は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺装置から構成されている。周辺装置には、センサ12b、14a、19a、電気化学セル12a、送風機17などとの信号のやり取りを行うためのI/O回路などが含まれる。
【0037】
制御装置20は、ROM等の記憶媒体に記憶された制御プログラムに基づいて各種の演算処理を行い、第1切替弁11、回収器12内の電気化学セル12a、第1開閉弁13、第2開閉弁15、第3開閉弁16、送風機17、第2切替弁18、などの各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、制御装置20は、二酸化炭素供給先19へ二酸化炭素の供給を行う場合、二酸化炭素供給装置10において、貯蔵タンク14に貯蔵された二酸化炭素を多く含むガスが供給されるように、各種の制御対象機器の作動を制御したり、吸着モードと脱離モードとを交互に実施する二酸化炭素供給モードが実行されるように、各種制御対象機器の作動を制御したりする。さらに、制御装置20は、吸着モードにおける吸着電位の印加時間(吸着モードの実行時間とも言える)を設定するための吸着学習データや、脱離モードにおける脱離電位の印加時間(脱離モードの実行時間とも言える)を設定するための脱離学習データを作成する学習モード処理を実行する。学習モード処理は、後に詳細に説明される。
【0038】
ここで、二酸化炭素供給先19がビニールハウスなどの農業用設備である場合、日中に農作物の光合成が活発に行われる。一方、夜間には、農作物の光合成が行われないため、二酸化炭素供給装置10は、その間、二酸化炭素の供給を停止する。そのため、日中に二酸化炭素供給装置10が二酸化炭素の供給を開始した直後は、通常、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が大気中の二酸化炭素濃度程度まで低下している。従って、二酸化炭素供給装置10による二酸化炭素の供給開始直後に、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素を一気に高めて、農作物の光合成の促進を図ることが望まれる。さらに、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が、農作物の育成に適した濃度(例えば、大気中の二酸化炭素濃度の約3倍程度)まで、極力、短時間で上昇することが望まれる。
【0039】
そこで、本実施形態に係る二酸化炭素供給装置10は、電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素を含む第1のガスと、貯蔵タンク14に貯蔵されていた第2のガスとの一方又は両方を、二酸化炭素供給先19に供給可能に構成される。このような構成により、例えば、二酸化炭素供給装置10による二酸化炭素の供給開始直後に、貯蔵タンク14に貯蔵されていた第2のガスを二酸化炭素供給先19に供給することで、貯蔵タンク内の第2のガスに含有される二酸化炭素を一気に二酸化炭素供給先19に供給することができる。これにより、二酸化炭素供給先19への二酸化炭素の供給を早期に開始することができるとともに、二酸化炭素供給先19において素早く二酸化炭素濃度を上昇させることができる。また、例えば、第2のガスの供給に応じて、第1のガスの供給も開始することで、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度の上昇を促進することができる。従って、本開示の二酸化炭素供給装置10によれば、二酸化炭素の供給を早期に開始することができるとともに、目標とする二酸化炭素濃度への到達時間を短縮することが可能となる。
【0040】
以下、本実施形態に係る二酸化炭素供給装置10の制御装置20によって実行される、貯蔵モード、貯蔵ガス放出モード、学習モード、二酸化炭素供給モードを含む、二酸化炭素供給先19へ二酸化炭素を供給するための処理を、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
図2のフローチャートに示すように、制御装置20は、まず、ステップS100において、電気化学セル12aの吸着時間や脱離時間に関する学習データを得るための学習モードを実行するか否かを判定する。制御装置20は、後述する吸着モードや脱離モードを実行する際に、吸着時間学習データ及び脱離時間学習データに基づいて、それぞれ、吸着モードの実行時間及び脱離モードの実行時間を設定する。これにより、例えば、電気化学セル12aが吸着可能な二酸化炭素を吸着したにも係らず吸着電位の印加を継続したり、あるいは、電気化学セル12aが吸着していた二酸化炭素をすべて脱離したにも係らず、脱離電位の印加を継続したりすることを回避することが可能になる。制御装置20は、例えば、図3に示す学習モード実行条件に従って、学習モードを実行するか否かを判定することができる。具体的には、学習モード実行条件は、ユーザによる学習モード実行要求の発生、二酸化炭素供給装置10の電源オンによる稼働開始、夜間(二酸化炭素供給装置10が二酸化炭素を供給していないとき)、電気化学セル12aの洗浄等のメンテナンスや電気化学セル12aの交換直後などを含むことができる。
【0042】
また、二酸化炭素供給装置10が農業用途に適用される場合、天気、地域、季節、供給先の規模に応じて、学習モードの実行回数を変更しても良い。例えば、天気が晴れている場合、日照時間が長い地域や季節の場合、農作物による光合成が促進されるので、二酸化炭素の供給時間が相対的に長くなる。また、二酸化炭素の供給先の規模が大きい場合にも、二酸化炭素の供給時間は相対的に長くなる。長時間に渡る二酸化炭素の供給中に、外部環境の二酸化炭素濃度が変化した場合、二酸化炭素濃度の変化前の吸着時間に関する学習データや脱離時間に関する学習データをそのまま使用して、吸着モードの実行時間や脱離モードの実行時間を設定しても、適切な実行時間を設定し得ない虞があるためである。
【0043】
ステップS100において、制御装置20は、学習モード実行条件が成立し、学習モードを実行すると判定すると、ステップS110に進む。一方、制御装置20は、学習モードを実行しないと判定すると、ステップS120に進む。
【0044】
ステップS110では、制御装置20は、学習モード処理を実行する。学習モード処理は、後に詳細に説明する。学習モード処理の終了後、制御装置20は、ステップS120に進む。
【0045】
ステップS120では、制御装置20は、貯蔵モードを実行するか否かを判定する。例えば、制御装置20は、夜間又は悪天候の間など、二酸化炭素供給装置10によって二酸化炭素供給先19に二酸化炭素を供給する必要がなく、かつ暖房機19bが稼働されている場合に、貯蔵モードを実行すると判定することができる。貯蔵モードを実行すると判定した場合、制御装置20は、ステップS130に進んで、貯蔵モードを実行する。なお、貯蔵モードについては、後に詳細に説明する。一方、制御装置20は、貯蔵モードを実行しないと判定した場合、ステップS140に進む。
【0046】
ステップS140では、制御装置20は、貯蔵ガス放出モードを実行するか否かを判定する。例えば、制御装置20は、二酸化炭素供給装置10が二酸化炭素供給先19へ二酸化炭素を含むガスの供給を開始する時に、貯蔵ガス放出モードを実行すると判定することができる。貯蔵ガス放出モードを実行すると判定した場合、制御装置20は、ステップS150に進んで、貯蔵ガス放出モードを実行する。これにより、二酸化炭素供給装置10による二酸化炭素の供給開始直後に、貯蔵タンク14に貯蔵されている二酸化炭素を多く含むガス(第2のガス)を二酸化炭素供給先19へ供給することができる。その結果、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度を一気に上昇させることができる。なお、貯蔵ガス放出モードについては、後に詳細に説明する。一方、制御装置20は、貯蔵ガス放出モードを実行しないと判定した場合、ステップS160に進む。
【0047】
ステップS160では、制御装置20は、二酸化炭素供給モードを実行するか否かを判定する。例えば、制御装置20は、貯蔵ガス放出モードの終了後、もしくは、貯蔵ガス放出モードの実行に併せて、二酸化炭素供給モードを実行すると判定することができる。二酸化炭素供給モードは、電気化学セル12aを用いて大気中から二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を電気化学セル12aから脱離させることにより、二酸化炭素を多く含むガス(第1のガス)を二酸化炭素供給先19に供給するための動作モードである。二酸化炭素供給モードを実行すると判定した場合、制御装置20は、ステップS170に進む。一方、制御装置20は、二酸化炭素供給モードを実行しないと判定した場合、ステップS100に戻る。
【0048】
ステップS170では、制御装置20は、電気化学セル12aが二酸化炭素の吸着を完了している状態であるか否かを判定する。上述した学習モードが終了した後、又は後述するステップS190の吸着モードの実行が終了した後、電気化学セル12aは二酸化炭素の吸着を完了した状態となる。制御装置20は、電気化学セル12aが二酸化炭素の吸着を完了した状態であると判定すると、ステップS180に進み、脱離モードを実行する。一方、制御装置20は、電気化学セル12aが二酸化炭素の吸着を完了した状態ではないと判定すると、ステップS190に進み、吸着モードを実行する。このように、二酸化炭素供給モードにおいては、吸着モードと脱離モードとが交互に実行される。吸着モード及び脱離モードに関しては、後に詳細に説明される。
【0049】
ステップS150の貯蔵ガス放出モードの実行の後、又はステップS180の脱離モードの実行後、制御装置20は、ステップS200の処理を実行する。ステップS200では、貯蔵ガス放出モード又は脱離モードの実行により、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達したか否かを判定する。二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達したと判定すると、制御装置20は、ステップS210に進む。一方、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達していないと判定すると、制御装置20は、ステップS100に戻る。この場合、二酸化炭素供給モードによる二酸化炭素供給先19への二酸化炭素の供給が、二酸化炭素供給先19における二酸化炭素濃度が目標上限濃度に達するまで繰り返し実施される。
【0050】
例えば、二酸化炭素供給先19が農業用設備であるような場合、農作物の光合成によって二酸化炭素濃度が低下する。ステップS210では、制御装置20は、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が低下して目標下限濃度に到達したか否かを判定する。二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が目標下限濃度に達したと判定すると、制御装置20は、ステップS100に戻り、二酸化炭素供給装置10による二酸化炭素の供給を再開する。一方、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が目標下限濃度に達していないと判定すると、制御装置20は、二酸化炭素濃度が目標下限濃度に到達するまで、ステップS210の判定処理を繰り返し実行する。
【0051】
次に、学習モード処理について説明する。学習モード処理の詳細が、図4のフローチャートに示されている。図4のフローチャートのステップS300では、電気化学セル12aの最大吸着量に相当する量の二酸化炭素が電気化学セル12aに吸着されることが推定される所定の推定時間が、事前準備吸着時間として設定される。
【0052】
続くステップS310では、制御装置20は、学習を行うための事前準備として、上記の事前準備吸着時間だけ二酸化炭素を電気化学セル12aに吸着させる事前準備吸着モードを開始する。この事前準備吸着モードでは、二酸化炭素を含有する大気を回収器12内に導入可能とするため、第1切替弁11が、大気が導入される流路配管と回収器12内に繋がる流路配管とを連通する。また、二酸化炭素が除去された大気を回収器12内から導出可能とするため、第3開閉弁16が開かれる。なお、第1及び第2開閉弁13、15は、二酸化炭素が除去された大気の貯蔵タンク14内への流入を阻止するため、閉じられる。送風機17は、定められた量の大気が回収器12内に引き込まれるように、予め定められた一定の回転速度で駆動される。第2切替弁18は、送風機17の下流側の流路配管を外部に連通する。さらに、事前準備吸着モードでは、回収器12の電気化学セル12aの作用極と対極との間に、作用極の二酸化炭素吸着材が二酸化炭素を吸着可能となる事前準備用の吸着電位が印加される。事前準備用の吸着電位は、予め定められた一定の電位である。
【0053】
このような第1切替弁11、第1~第3開閉弁13、15、16、回収器12の電気化学セル12a、送風機17、及び第2切替弁18などの制御により、事前準備吸着モードでは、二酸化炭素を含有した大気が、第1切替弁11を通過して、回収器12内に進入する。回収器12内に進入した大気に含まれる二酸化炭素は、複数の電気化学セル12aに吸着される。その結果、大気から二酸化炭素が除去される。二酸化炭素が除去された大気は、第3開閉弁16及び送風機17を通過し、第2切替弁18にて外部へ向かう流路配管に導かれ、その流路配管を介して、外部に放出される。
【0054】
ステップS320では、制御装置20が、事前準備吸着時間が経過したか否かを判定する。この判定処理において、制御装置20は、事前準備吸着時間が経過したと判定すると、ステップS330に進む。一方、制御装置20は、事前準備吸着時間が経過していないと判定すると、事前準備吸着時間が経過するまで、ステップS320の判定処理を繰り返し実行する。
【0055】
ステップS330では、事前準備吸着モードの終了処理が実行される。具体的には、制御装置20は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への事前準備用の吸着電位の印加を終了する。また、制御装置20は、第1切替弁11を、回収器12内を外部から遮断することが可能な切替位置に切り替えるとともに、第3開閉弁16を閉じる。これにより、制御装置20は、外部から回収器12内への二酸化炭素を含む大気の流入及び回収器12内からの二酸化炭素が除去された大気の流出を遮断する。さらに、制御装置20は、送風機17の駆動を停止する。また、制御装置20は、事前準備吸着時間をカウントするカウンタのカウント値のリセットなども行なう。
【0056】
なお、上記のように、事前準備吸着時間の設定や、設定した事前準備吸着時間の経過を判定せずに、回収器12内の電気化学セル12aに最大吸着量に相当する量の二酸化炭素が吸着したことを判定して、事前準備吸着モードを終了させることも可能である。具体的には、電気化学セル12aによって二酸化炭素が除去された後の、すなわち、電気化学セル12aの下流側の大気の二酸化炭素濃度を二酸化炭素センサ12bによって測定する。そして、電気化学セル12aの下流側の二酸化炭素濃度の変化が電気化学セル12aの最大吸着量の吸着を示すと、つまり、二酸化炭素が電気化学セル12aによって除去されて、二酸化炭素濃度が低下した状態から、電気化学セル12aに最大吸着量に相当する二酸化炭素が吸着されて、それ以上、二酸化炭素を吸着することができず、二酸化炭素濃度が上昇したことをもって、電気化学セル12aに最大吸着量に相当する量の二酸化炭素が吸着されたことを判定することができる。この場合、事前準備吸着モードが開始されてから、事前準備吸着モードが終了されるまでの事前準備吸着モード実行時間がカウンタ等によって計測される。
【0057】
ステップS340では、制御装置20は、脱離学習データを作成する脱離学習データ作成処理を実行する。ステップS350では、制御装置20は、吸着学習データを作成する吸着学習データ作成処理を実行する。図5は、脱離学習データ作成処理の詳細を示すフローチャートである。図8は、吸着学習データ作成処理の詳細を示すフローチャートである。以下、それぞれのフローチャートを参照して、脱離学習データ作成処理及び吸着学習データ作成処理について詳しく説明する。
【0058】
脱離学習データ作成処理では、まず、図5のフローチャートのステップS400に示すように、制御装置20が、学習用脱離モードを開始する。この学習用脱離モードにおいては、制御装置20は、電気化学セル12aの作用極と対極との間に、上述した事前準備吸着モードによって作用極の二酸化炭素吸着材に吸着された二酸化炭素を脱離させることが可能な脱離電位を印加する。また、学習用脱離モードでは、第1切替弁11が、回収器12内を外部から遮断することが可能な切替位置に切り替えたままとされ、第3開閉弁16が、閉じた状態に維持される。送風機17も停止された状態のままとされる。
【0059】
ステップS410では、制御装置20は、二酸化炭素センサ12bを用いて、回収器12内の二酸化炭素濃度のモニターを開始する。例えば、制御装置20は、二酸化炭素センサ12bによって測定される回収器12内の二酸化炭素濃度を所定時間間隔でサンプリングする。このようにして、制御装置20は、回収器12を密閉した状態としつつ、二酸化炭素を吸着している電気化学セル12aに脱離電位を印加したときの、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化を二酸化炭素センサ12bを用いて測定する。
【0060】
ステップS420では、制御装置20は、二酸化炭素センサ12bによって測定される二酸化炭素の濃度の変化が所定値以下となったか否かを判定する。電気化学セル12aに吸着されていた二酸化炭素の脱離が完了すると、回収器12内の二酸化炭素濃度の上昇がほぼ止まり、二酸化炭素濃度の変化は所定値以下となる。従って、二酸化炭素の濃度の変化が所定値以下となった場合、電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離が実質的に終了したとみなすことができる。
【0061】
電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離が実質的に終了したか否かは、別の手法によっても判断することができる。例えば、電気化学セル12aによる二酸化炭素の最大吸着量と回収器12などの容積とから、電気化学セル12aから二酸化炭素の脱離がすべて完了したときの回収器12内の二酸化炭素濃度を求めることができる。さらに、求めた脱離完了時の二酸化炭素濃度に基づいて、電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離がほぼ終了したとみなし得る脱離濃度閾値を定めることができる。そして、二酸化炭素センサ12bによって測定された二酸化炭素の濃度が脱離濃度閾値に達したことにより、電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離が実質的に終了したことを判定することができる。
【0062】
ステップS420で肯定的な判定がなされた場合、制御装置20は、ステップS430に進む。一方、否定的な判定がなされた場合、制御装置20は、肯定的な判定がなされるまで、ステップS420の判定を繰り返し実施する。ステップS430では、制御装置20は、二酸化炭素センサ12bを用いた回収器12内の二酸化炭素濃度のモニターを終了する。続くステップS440では、制御装置20は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への脱離電位の印加を停止して、学習用脱離モードを終了する。
【0063】
図6は、学習用脱離モードにおいて、二酸化炭素センサ12bを用いて測定された、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化の一例を示すグラフである。図6のグラフに示すように、モニター開始時点では、比較的低い二酸化炭素濃度が検出される。しかし、電気化学セル12aに脱離電位を印加することにより、電気化学セル12aから二酸化炭素が脱離され、回収器12内に放出されるので、回収器12内の二酸化炭素濃度は時間の経過とともに上昇する。そして、二酸化炭素濃度の上昇がほぼ停止したときに、二酸化炭素濃度のモニターを終了する。これにより、図6のグラフに示すような、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化を測定することができる。
【0064】
ステップS450では、制御装置20は、図6に示すような、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを作成する。図7は、脱離学習データの一例を示すグラフである。回収器12内の容積は既知であるので、制御装置20は、図6に示すような、時関経過に伴う二酸化炭素の濃度変化から、図7に示すような、経過時間と二酸化炭素の脱離量との関係を表す脱離学習データを算出することができる。ステップS460では、制御装置20は、作成した脱離学習データを、RAM、ディスク、フラッシュメモリ等の記憶媒体に記憶する。以上により、脱離学習データ作成処理が終了する。
【0065】
次に、吸着学習データ作成処理について説明する。吸着学習データ作成処理では、まず、図8のフローチャートのステップS500に示すように、制御装置20は、学習用吸着モードを開始する。この学習用吸着モードにおいては、制御装置20は、電気化学セル12aの作用極と対極との間に、上述した学習用脱離モードによって回収器12内に放出された二酸化炭素を作用極の二酸化炭素吸着材に吸着させることが可能な吸着電位を印加する。なお、学習用吸着モードでも、第1切替弁11は、回収器12内を外部から遮断することが可能な切替位置に切り替えたままとされ、第3開閉弁16は、閉じた状態に維持される。送風機17も停止された状態のままとされる。
【0066】
ステップS510では、制御装置20は、二酸化炭素センサ12bを用いて、回収器12内の二酸化炭素濃度のモニターを開始する。例えば、制御装置20は、二酸化炭素センサ12bによって測定される回収器12内の二酸化炭素濃度を所定時間間隔でサンプリングする。このようにして、制御装置20は、回収器12を密閉した状態としつつ、回収器12内に放出された二酸化炭素が存在している中で、電気化学セル12aに吸着電位を印加したときの、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化を二酸化炭素センサ12bを用いて測定する。
【0067】
ステップS520では、制御装置20は、二酸化炭素センサ12bによって測定される二酸化炭素の濃度の変化が所定値以下となったか否かを判定する。電気化学セル12aにより回収器12内の二酸化炭素の吸着が完了すると、回収器12内の二酸化炭素濃度の低下がほぼ止まり、二酸化炭素濃度の変化は所定値以下となる。従って、二酸化炭素の濃度の変化が所定値以下となった場合、電気化学セル12aによる二酸化炭素の吸着が実質的に終了したとみなすことができる。
【0068】
電気化学セル12aによる二酸化炭素の吸着が実質的に終了したか否かは、別の手法によっても判断することができる。例えば、吸着学習データ作成処理は、脱離学習データ作成処理に続いて実行されるので、脱離学習データ作成処理を開始したときの回収器12内の二酸化炭素濃度を基準として、電気化学セル12aによる二酸化炭素の吸着が実質的に終了したとみなし得る吸着濃度閾値を定めることができる。回収器12内の二酸化炭素濃度が、脱離学習データ作成処理開始時の二酸化炭素濃度を基準とする吸着濃度閾値まで低下すれば、学習用脱離モードにおいて電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素は、再び、電気化学セル12aによって吸着されたとみなすことができるためである。従って、二酸化炭素センサ12bによって測定された二酸化炭素濃度が吸着濃度閾値に達したことにより、電気化学セル12aによる二酸化炭素の吸着が実質的に終了したとみなすことができる。
【0069】
ステップS520で肯定的な判定がなされた場合、制御装置20は、ステップS530に進む。一方、否定的な判定がなされた場合、制御装置20は、肯定的な判定がなされるまで、ステップS520の判定を繰り返し実施する。ステップS530では、制御装置20は、二酸化炭素センサ12bを用いた回収器12内の二酸化炭素濃度のモニターを終了する。続くステップS540では、制御装置20は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への吸着電位の印加を停止して、学習用吸着モードを終了する。なお、このとき、制御装置20は、学習用吸着モードの開始から終了までの学習用吸着モードの実施時間を計測して記憶しておく。
【0070】
図9は、学習用吸着モードにおいて、二酸化炭素センサ12bを用いて測定された、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化の一例を示すグラフである。図9のグラフに示すように、モニター開始時点では、比較的高い二酸化炭素濃度が検出される。しかし、電気化学セル12aに吸着電位を印加することにより、回収器12内の二酸化炭素が電気化学セル12aに吸着されるので、回収器12内の二酸化炭素濃度は時間の経過とともに低下する。そして、二酸化炭素濃度の低下がほぼ停止したときに、二酸化炭素濃度のモニターを終了する。これにより、図9のグラフに示すような、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化を測定することができる。
【0071】
ステップS550では、制御装置20は、図9に示すような、時間経過に伴う回収器12内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて、経過時間と電気化学セル12aへの二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データを作成する。図10は、吸着学習データの一例を示すグラフである。回収器12内の容積は既知であるので、制御装置20は、図9に示すような、時関経過に伴う二酸化炭素の濃度変化から、図10に示すような、経過時間と二酸化炭素の吸着量との関係を表す吸着学習データを算出することができる。
【0072】
ステップS560では、図4のフローチャートのステップS300で設定された事前準備吸着時間と、学習用吸着モードの実施時間が一致するか否かを判定する。一致しないと判定した場合、制御装置20は、ステップS570に進む。一致すると判定した場合、制御装置20は、ステップS580に進む。
【0073】
ステップS570では、制御装置20は、事前準備吸着時間と学習用吸着モード実施時間との相違に応じて、ステップS550で作成した吸着学習データを更新する。例えば、学習用吸着モード実施時間に対する事前準備吸着時間の比率に応じて、二酸化炭素の吸着量に対する経過時間を変化させて、吸着学習データを更新する。具体的には、事前準備吸着時間が学習用吸着モード実施時間よりも長い場合、学習用吸着モード実施時間に対する事前準備吸着時間の比率に応じて、図11に示すように、吸着学習データを時間軸方向に拡大させる。逆に、事前準備吸着時間が学習用吸着モード実施時間よりも短い場合、学習用吸着モード実施時間に対する事前準備吸着時間の比率に応じて、図11に示すように、吸着学習データを時間軸方向に縮小させる。なお、学習用吸着モード実施時間に対する事前準備吸着時間の比率以外に、例えば、事前準備吸着時間と学習用吸着モード実施時間との差分に所定の係数を乗じて、吸着学習データを時間軸方向に拡大、縮小させる割合を算出することも可能である。
【0074】
吸着学習データは、上述したように、回収器12が密閉された状態で、回収器12内の二酸化炭素を電気化学セル12aに吸着させたときの回収器12内の二酸化炭素濃度の変化に基づいて作成される。それに対して、二酸化炭素供給先19へ二酸化炭素の供給を行うために、二酸化炭素供給装置10において実行される吸着モードでは、回収器12は密閉されておらず、送風機17によって二酸化炭素を含む大気が回収器12内を流動する。このようなシチュエーションの相違を補償するために、本実施形態では、事前準備吸着時間と学習用吸着モード実施時間との相違を利用する。つまり、事前準備吸着時間は、上述した吸着モードと同様に、回収器12内に二酸化炭素を含む大気を流動させながら、電気化学セル12aに二酸化炭素を吸着させた時間である。従って、事前準備吸着時間と学習用吸着モード実施時間との相違に応じて、吸着学習データを時間軸方向に拡大、縮小させることにより、上述した吸着モードに適合するように、吸着学習データを更新することができる。
【0075】
ステップS580では、制御装置20は、作成又は更新した吸着学習データを、RAM、ディスク、フラッシュメモリ等の記憶媒体に記憶する。以上により、吸着学習データ作成処理が終了する。
【0076】
次に、貯蔵モード処理について、図12のフローチャートを参照して説明する。貯蔵モード処理では、まず、図12のフローチャートのステップS600に示すように、制御装置20は、貯蔵タンク14に貯蔵するガスの二酸化炭素の濃度を設定する。
【0077】
二酸化炭素供給先19が、ビニールハウスなどの閉じられた空間内で農作物を育成する農業用設備である場合、予想される天気及び/又は季節に応じて、必要とされる二酸化炭素の量は変化する。例えば、日中に晴天が予想される場合や、農作物の育成に適した季節であれば、農作物の光合成がより活発に行われるので、必要とされる二酸化炭素の量は増加する。一方、悪天候が予想される場合や、農作物の育成に適さない季節であれば、農作物の光合成もそれほど活発に行われないので、必要とされる二酸化炭素の量は減少する。このような、必要とされる二酸化炭素の量の変化に対応するため、制御装置20は、予想される天気及び/又は季節に応じて、貯蔵タンク14に貯蔵するガスの二酸化炭素濃度を設定する。
【0078】
ステップS610では、制御装置20は、貯蔵モードを開始する。この貯蔵モードにおいては、制御装置20は、電気化学セル12aの作用極と対極との間に、吸着電位も脱離電位も印加しない。第1切替弁11は、暖房機19bの排気ガスが導入される流路配管と回収器12内に繋がる流路配管とを連通するように切り替えられる。第1及び第2開閉弁13、15はともに開かれる。第3開閉弁16は閉じられる。送風機17は、予め定められた一定の回転速度で駆動される。第2切替弁18は、送風機17の下流側の流路配管を外部(大気)に連通するように切り替えられる。
【0079】
制御装置20が、上記のように、第1切替弁11、第1~第3開閉弁13、15、16、送風機17、及び第2切替弁18を制御することにより、貯蔵モードでは、図13に点線矢印で示すように、送風機17の駆動により、暖房機19bからの排気ガスが、第1切替弁11、回収器12、及び第1開閉弁13を介して、貯蔵タンク14内に流入する。これにより、図13に点線矢印で示すように、貯蔵タンク14内の二酸化炭素濃度の低いガスが押し出され、第2開閉弁15、送風機17、及び第2切替弁18を介して外部に放出される。その結果、貯蔵タンク14内の二酸化炭素濃度が上昇する。
【0080】
ステップS620では、制御装置20は、貯蔵タンク14内の二酸化炭素濃度が、ステップS600にて設定された設定濃度に達したか否かを判定する。制御装置20は、貯蔵タンク14内の二酸化炭素濃度が、設定濃度に達したと判定すると、ステップS630に進む。一方、制御装置20は、設定濃度に達していないと判定すると、設定濃度に到達するまで、ステップS620の処理を繰り返す。
【0081】
ステップS630では、制御装置20は、貯蔵モードを終了する。すなわち、制御装置20は、第1開閉弁13及び第2開閉弁15を閉じて、設定濃度に対応する二酸化炭素濃度のガスを貯蔵タンク14内に保持する。さらに、制御装置20は、送風機17の駆動を停止する。なお、第1及び第2切替弁11、18の切替位置は、そのままであっても良いし、所望の位置に切り替えられても良い。
【0082】
次に、貯蔵ガス放出モード処理について、図14のフローチャートを参照して説明する。貯蔵ガス放出モード処理では、図14のフローチャートのステップS700にて、制御装置20は、貯蔵ガス放出モードを開始する。この貯蔵ガス放出モードにおいては、制御装置20は、電気化学セル12aの作用極と対極との間に、吸着電位も脱離電位も印加しない。第1切替弁11は、大気が導入される流路配管と回収器12内に繋がる流路配管を連通するように切り替えられる。第1及び第2開閉弁13、15はともに開かれる。第3開閉弁16は閉じられる。送風機17は、予め定められた一定の回転速度で駆動される。第2切替弁18は、送風機17の下流側の流路配管を二酸化炭素供給先19に連通するように切り替えられる。
【0083】
制御装置20が、上記のように、第1切替弁11、第1~第3開閉弁13、15、16、送風機17、及び第2切替弁18を制御することにより、貯蔵ガス放出モードでは、図15に点線矢印で示すように、送風機17の駆動により、二酸化炭素を含む大気が、第1切替弁11、回収器12、及び第1開閉弁13を介して、貯蔵タンク14内に流入する。さらに、貯蔵タンク14内に貯蔵されていた二酸化炭素を多く含むガスが、図15に点線矢印で示すように、貯蔵タンク14内から吸い出され、第2開閉弁15、送風機17及び第2切替弁18を介して、二酸化炭素供給先19に供給される。
【0084】
ステップS710では、制御装置20は、二酸化炭素センサ14aによって検出された二酸化炭素濃度が、貯蔵タンク14に貯蔵していたガス(第2のガス)の放出完了を示す濃度(例えば、大気中の二酸化炭素濃度に相当する基準濃度)に達したか、又は、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に達したか否かを判定する。制御装置20は、ステップS710において肯定的な判定を行った場合、ステップS720に進む。一方、制御装置20は、ステップS710において否定的な判定を行った場合、肯定的な判定がなされるまで、ステップS710の処理を繰り返す。
【0085】
ステップS720では、制御装置20は、貯蔵ガス放出モードを終了する。具体的には、制御装置20は、第1開閉弁13及び第2開閉弁15を閉じた位置に切り替える。また、制御装置20は、第3開閉弁16を閉じた位置から開いた位置に切り替える。なお、通常は、貯蔵ガス放出モードの終了後に、引き続き、二酸化炭素供給モードが実行される。このため、貯蔵ガス放出モードが終了しても、第1切替弁11は、大気が導入される流路配管を回収器12内に繋がる流路配管に連通したままであり、送風機17は継続して駆動され、第2切替弁18も、送風機17の下流側の流路配管を二酸化炭素供給先19に連通したままとされる。
【0086】
上述した実施形態では、貯蔵ガス放出モードの終了後に、二酸化炭素供給モードを実行する例について説明した。しかしながら、二酸化炭素供給モードは、貯蔵ガス放出モードの実行と併せて、より具体的には、貯蔵ガス放出モードの実行と一部重複するように、実行されても良い。この場合、貯蔵ガス放出モードが終了する前に、電気化学セル12aに吸着電位を印加する吸着モードを実行して、大気中から二酸化炭素を回収する。この時、二酸化炭素が除去された大気は、貯蔵タンク14に貯蔵されたガスとともに、二酸化炭素供給先19に供給される。そして、二酸化炭素の回収後、電気化学セル12aに脱離電位を印加する脱離モードを実行して、二酸化炭素を多く含む大気を二酸化炭素供給先19に供給する。この二酸化炭素供給モードによる二酸化炭素を多く含む大気(第1のガス)の供給は、貯蔵タンク14に貯蔵されたガスの供給と併せて行い得る。このように、貯蔵ガス放出モードが終了する以前から二酸化炭素供給モードを開始することにより、二酸化炭素供給モードによる二酸化炭素の供給開始時期を早めることができ、目標上限濃度への到達時間の短縮を図ることができる。
【0087】
次に、二酸化炭素供給モードの吸着モード及び脱離モードについて説明する。図16は、吸着モードの処理の詳細を示すフローチャートである。図18は、脱離モードの処理の詳細を示すフローチャートである。まず、図16のフローチャートを参照して、吸着モードについて説明する。
【0088】
ステップS800では、制御装置20は、吸着学習データに基づいて、吸着モード実行時間を設定する。この際、制御装置20は、吸着学習データにおける最大吸着時間以下の範囲で吸着モード実行時間を設定する。これにより、例えば、電気化学セル12aによって吸着可能な二酸化炭素が既に吸着されているにも係らず、吸着電位の印加を継続するなど、無駄に吸着電位を印加することを防ぐことができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0089】
ステップS810では、制御装置20は、吸着モードを開始する。この吸着モードでは、第1切替弁11が、大気が導入される流路配管を回収器12内に繋がる流路配管に連通する。回収器12の電気化学セル12aの作用極と対極との間に、作用極の二酸化炭素吸着材が二酸化炭素を吸着可能となる吸着電位が印加される。二酸化炭素を含む大気が回収器12内に流入し、二酸化炭素が除去された大気が回収器12から流出されるように、第3開閉弁16は開かれ、送風機17は所定の回転速度で駆動される。第2切替弁18は、送風機17の下流側の流路配管を外部に連通する。
【0090】
このような第1切替弁11、回収器12の電気化学セル12a、第3開閉弁16、送風機17、及び第2切替弁18などの制御により、吸着モードでは、図17に点線矢印で示すように、二酸化炭素を含有した大気が、第1切替弁11を通過して、回収器12内に進入する。回収器12内に進入した大気に含まれる二酸化炭素は、複数の電気化学セル12aに吸着される。その結果、大気から二酸化炭素が除去される。二酸化炭素が除去された大気は、第3開閉弁16及び送風機17を通過し、第2切替弁18にて外部へ向かう流路配管に導かれ、その流路配管を介して、外部に放出される。
【0091】
ステップS820では、制御装置20が、ステップS800で設定された吸着モード実行時間が経過したか否かを判定する。この判定処理において、制御装置20は、吸着モード実行時間が経過したと判定すると、ステップS830に進む。一方、制御装置20は、吸着モード実行時間が経過していないと判定すると、吸着モード実行時間が経過するまで、ステップS820の判定処理を繰り返し実行する。
【0092】
ステップS830では、制御装置20は、吸着モードの終了処理を実行する。具体的には、制御装置20は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への吸着電位の印加を終了する。また、制御装置20は、吸着モード実行時間をカウントするカウンタのカウント値のリセットなども行なう。
【0093】
次に、図18のフローチャートを参照して、脱離モードについて説明する。図18のフローチャートに示すように、制御装置20は、まず、ステップS900において、脱離学習データに基づいて、脱離モード実行時間を設定する。この際、制御装置20は、脱離学習データにおける最大脱離時間以下の範囲で脱離モード実行時間を設定する。これにより、例えば、電気化学セル12aに吸着された二酸化炭素の脱離が実質的に終了しているにも係らず、脱離電位の印加を継続するなど、無駄に脱離電位を印加することを防ぐことができ、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0094】
ステップS910では、制御装置20は、脱離モードを開始する。この脱離モードでは、第1切替弁11が、大気が導入される流路配管を回収器12内に繋がる流路配管に連通する。回収器12の電気化学セル12aの作用極と対極との間に、作用極の二酸化炭素吸着材が吸着した二酸化炭素を脱離可能となる脱離電位が印加される。二酸化炭素を含む大気が回収器12内に流入し、電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素とともに回収器12から流出されるように、第3開閉弁16は開かれ、送風機17は所定の回転速度で駆動される。第2切替弁18は、送風機17の下流側の流路配管を二酸化炭素供給先19に連通する。
【0095】
このような第1切替弁11、回収器12の電気化学セル12a、第3開閉弁16、送風機17、及び第2切替弁18などの制御により、脱離モードでは、図19に点線矢印で示すように、二酸化炭素を含有した大気が、第1切替弁11を通過して、回収器12内に進入する。回収器12内に進入した大気は、複数の電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素と混合され、二酸化炭素を多く含む大気となる。この二酸化炭素を多く含む大気は、第3開閉弁16及び送風機17を通過し、第2切替弁18にて二酸化炭素供給先19へ向かう流路配管に導かれ、その流路配管を介して、二酸化炭素供給先19へ供給される。
【0096】
ステップS920では、制御装置20が、ステップS900で設定された脱離モード実行時間が経過したか否か、又は二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達したか否かを判定する。この判定処理において、制御装置20は、脱離モード実行時間が経過した、又は二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達したと判定すると、ステップS930に進む。一方、制御装置20は、脱離モード実行時間が経過しておらず、及び二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達していないと判定すると、脱離モード実行時間が経過するまで、もしくは、二酸化炭素供給先19の二酸化炭素濃度が目標上限濃度に到達するまで、ステップS920の判定処理を繰り返し実行する。
【0097】
ステップS930では、制御装置20は、脱離モードの終了処理を実行する。具体的には、制御装置20は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への脱離電位の印加を終了する。また、制御装置20は、脱離モード実行時間をカウントするカウンタのカウント値のリセットなども行なう。
【0098】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に係る二酸化炭素供給装置10について説明する。本実施形態に係る二酸化炭素供給装置10は、第1実施形態に係る二酸化炭素供給装置10と同様の構成を有する。従って、構成に関する説明は省略する。
【0099】
上述した第1実施形態に係る二酸化炭素供給装置10では、制御装置20が、貯蔵モードにおいて、回収器12の電気化学セル12aに吸着電位も脱離電位も印加せず、暖房機19bからの排気ガスをそのまま通過させて、貯蔵タンク14に貯蔵した。しかしながら、排気ガスには燃焼時の臭いが残っている可能性があり、そのような排気ガスを二酸化炭素供給先19へ供給することは好ましくない場合もあり得る。
【0100】
そこで、第2実施形態に係る二酸化炭素供給装置10は、回収器12を利用して、暖房機19bの排気ガスから二酸化炭素を回収し、二酸化炭素を回収した排気ガスは、外部に放出する。そして、回収した二酸化炭素を含む大気を貯蔵タンク14に貯蔵する。これにより、貯蔵タンク14には、燃焼時の臭いの無い、二酸化炭素を多く含むガス(第2のガス)を貯蔵することが可能になる。
【0101】
本実施形態に係る二酸化炭素供給装置10の制御装置20によって実行される、貯蔵モードの詳細な処理が図20のフローチャートに示される。以下、図20のフローチャートを参照して、本実施形態における貯蔵モードの処理内容を説明する。
【0102】
最初のステップS1000では、制御装置20は、貯蔵タンク14に貯蔵するガスの二酸化炭素の濃度を設定する。このステップS1000における処理は、図12のフローチャートのステップS600と同様に行われる。
【0103】
ステップS1010では、制御装置20は、吸着時間学習データに基づいて、吸着モードの実行時間を設定する。この処理も、図16のフローチャートのステップS800と同様に行われる。ただし、大気と排気ガスとでは、含有される二酸化炭素の量、すなわち二酸化炭素濃度が異なる。このため、例えば、制御装置20が、排気ガスを対象として学習モードを実行し、別途、排気ガスを対象とした吸着時間学習データを作成したり、排気ガスと大気との濃度の相違に応じて、大気を対象とした吸着時間学習データを修正したりする必要がある。
【0104】
ステップS1020では、制御装置20は吸着モードを開始する。この場合、二酸化炭素供給モードにおける吸着モードとは異なり、制御装置20は、第1切替弁11が、排気ガスが導入される流路配管と回収器12内に繋がる流路配管とを連通するように切り替える。その他は、二酸化炭素供給モードにおける吸着モードと同様である。すなわち、回収器12の電気化学セル12aの作用極と対極との間に、作用極の二酸化炭素吸着材が二酸化炭素を吸着可能となる吸着電位が印加される。排気ガスが回収器12内に流入し、二酸化炭素が除去された大気が回収器12から流出されるように、第3開閉弁16は開かれ、送風機17は所定の回転速度で駆動される。第1及び第2開閉弁13、15は、排気ガスが入り込まないように、また、貯蔵タンク14に保持されている二酸化炭素を多く含むガスが流出しないように、閉じられる。第2切替弁18は、送風機17の下流側の流路配管を外部に連通する。
【0105】
このような第1切替弁11、回収器12の電気化学セル12a、第1~第3開閉弁13、15、16、送風機17、及び第2切替弁18などの制御により、吸着モードでは、暖房機19bからの排気ガスが、第1切替弁11を通過して、回収器12内に進入する。回収器12内に進入した排気ガスに含まれる二酸化炭素は、複数の電気化学セル12aに吸着される。この際、排気ガスには多量の二酸化炭素が含まれているので、吸着モード実行時間は短くて済む。二酸化炭素の吸着によって、排気ガスから二酸化炭素が除去される。二酸化炭素が除去された排気ガスは、第3開閉弁16及び送風機17を通過し、第2切替弁18にて外部へ向かう流路配管に導かれ、その流路配管を介して、外部に放出される。
【0106】
ステップS1030では、制御装置20が、ステップS1010で設定された吸着モード実行時間が経過したか否かを判定する。この判定処理において、制御装置20は、設定された吸着モード実行時間が経過したと判定すると、ステップS1040に進む。一方、制御装置20は、設定された吸着モード実行時間が経過していないと判定すると、設定された吸着モード実行時間が経過するまで、ステップS1030の判定処理を繰り返し実行する。
【0107】
ステップS1040では、制御装置20は、吸着モードの終了処理を実行する。具体的には、制御装置20は、吸着モードにて回収器12内に導入されていた排気ガスを回収器12から排出するため、第1切替弁11を、大気が導入される流路配管と回収器12内に繋がる流路配管とを連通する位置に切り替えて、所定時間、回収器12内に大気を流動させる。その後、制御装置20は、送風機17を停止するとともに、第1切替弁11を、回収器12内を外部から遮断することが可能な切替位置に切り替える。さらに、制御装置20は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への吸着電位の印加を終了する。また、制御装置20は、吸着モード実行時間をカウントするカウンタのカウント値のリセットなども行なう。
【0108】
ステップS1050では、制御装置20は、脱離時間学習データに基づいて、脱離モードの実行時間を設定する。この処理は、図18のフローチャートのステップS900と同様に行われる。なお、脱離時間学習データについては、電気化学セル12aに印加する脱離電位が同じであれば、時間経過に伴う電気化学セル12aからの二酸化炭素の脱離量に違いはないため、吸着時間学習データのように、あらためて作成したり、修正したりする必要はない。
【0109】
ステップS1060では、制御装置20は、脱離モードを開始する。この場合、二酸化炭素供給モードにおける脱離モードとは異なり、制御装置20は、第1開閉弁13を開き、第2及び第3開閉弁15、16を閉じる。なお、上述したように、吸着モードの終了処理において、送風機17は停止され、第1切替弁11は、回収器12内を外部から遮断することが可能な切替位置に切り替えられている。送風機17の停止や、第1切替弁11の位置の切り替えは、脱離モードの開始処理において実施されても良い。そして、回収器12の電気化学セル12aの作用極と対極との間に、作用極の二酸化炭素吸着材が二酸化炭素を脱離可能となる脱離電位が印加される。
【0110】
これにより、ステップS1060の脱離モードでは、回収器12は、貯蔵タンク14と第1開閉弁13を介して連通するが、外部との連通が遮断された状態となる。この状態で、電気化学セル12aに脱離電位を印加することにより、電気化学セル12aから脱離された二酸化炭素は、回収器12から貯蔵タンク14へと拡散する。このようにして、貯蔵タンク14に、二酸化炭素を多く含むガスが貯蔵される。
【0111】
ステップS1070では、制御装置20が、ステップS1050で設定された脱離モード実行時間が経過したか否か、又は貯蔵タンク14内の二酸化炭素濃度がステップS1000で設定された設定濃度に到達したか否かを判定する。この判定処理において、制御装置20は、脱離モード実行時間が経過した、又は貯蔵タンク14内の二酸化炭素濃度が設定濃度に到達したと判定すると、ステップS1080に進む。一方、制御装置20は、脱離モード実行時間が経過しておらず、及び貯蔵タンク14内の二酸化炭素濃度が設定濃度に到達していないと判定すると、脱離モード実行時間が経過するまで、もしくは、貯蔵タンク14の二酸化炭素濃度が設定濃度に到達するまで、ステップS1070の判定処理を繰り返し実行する。
【0112】
ステップS1080では、制御装置20は、脱離モードの終了処理を実行する。具体的には、制御装置20は、電気化学セル12aの作用極と対極との間への脱離電位の印加を終了する。また、制御装置20は、第1開閉弁13を閉じて、貯蔵タンク14内に貯蔵した二酸化炭素を含むガスを保持する。なお、制御装置20は、ステップS1070において、脱離モード実行時間が経過したと判定して、ステップS1080に進んだ場合、電気化学セル12aの脱離電位の印加を終了した後、所定の待機時間が経過した後に、第1開閉弁13を閉じるようにしても良い。これにより、回収器12から貯蔵タンク14への二酸化炭素の拡散を促進することができる。
【0113】
ステップS1090では、制御装置20は、貯蔵タンク14内の二酸化炭素濃度が、設定濃度に達したか否かを判定する。制御装置20は、貯蔵タンク14内の二酸化炭素濃度が設定濃度に達したと判定すると、図20のフローチャートに示す貯蔵モード処理を終了する。一方、制御装置20は、貯蔵タンク14内の二酸化炭素濃度が設定濃度に達していないと判定すると、ステップS1010に戻り、上述した吸着モードと脱離モードとを繰り返す。
【0114】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態になんら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することができる。
【0115】
例えば、上述した第1及び第2実施形態に係る二酸化炭素供給装置10は、二酸化炭素供給先19に暖房機19bが設けられていることを前提とし、暖房機19bから排出される排気ガスを利用して、貯蔵タンク14に二酸化炭素を多く含むガスを貯蔵するものであった。しかしながら、二酸化炭素供給先19に暖房機19b以外に二酸化炭素を多く含むガスを排気する機器が設けられている場合、その設備からの排気ガスを利用して、貯蔵タンク14に二酸化炭素を多く含むガスを貯蔵しても良い。
【0116】
さらには、二酸化炭素供給先19が、二酸化炭素を多く含むガスを排出する設備を有していない場合、二酸化炭素供給先19以外の設備の二酸化炭素を多く含むガスを排気する機器からの排気ガスを利用して、貯蔵タンク14に二酸化炭素を多く含むガスを貯蔵するようにしても良い。あるいは、二酸化炭素を多く含む排気ガスではなく、大気から二酸化炭素を回収して、その回収した二酸化炭素を用いて、第2実施形態に係る二酸化炭素供給装置10と同様の手法で、貯蔵タンク14に二酸化炭素を多く含むガスを貯蔵するようにしても良い。さらに、大気から二酸化炭素を回収して、その回収した二酸化炭素を含むガスを貯蔵タンク14に貯蔵する手法は、例えば、二酸化炭素供給先19の暖房機19bや二酸化炭素供給先19以外の設備の二酸化炭素を多く含むガスを排気する機器が稼働していない場合に、用いられても良い。
【0117】
また、上述した実施形態では、制御装置20が、二酸化炭素を供給するためのすべての演算処理を行うように構成されていた。しかしながら、制御装置20の少なくとも一部の処理が、制御装置20以外の処理装置、例えば制御装置20と通信可能な外部サーバによって実行されても良い。
【0118】
最後に、この明細書には、以下に列挙する複数の技術的思想と、それらの複数の組み合わせが開示されている。
【0119】
(技術的思想1)
筐体内に配置され、吸着電位の印加により二酸化炭素を吸着し、脱離電位の印加により吸着した二酸化炭素を脱離する電気化学セル(12a)を有し、前記電気化学セルに二酸化炭素を吸着させる吸着モードと、前記電気化学セルから二酸化炭素を脱離させる脱離モードとを交互に実施することにより、前記電気化学セルから脱離された二酸化炭素を含む第1のガスを二酸化炭素供給対象(19)に供給する二酸化炭素供給装置であって、
少なくとも大気中の二酸化炭素濃度よりも二酸化炭素濃度の高い第2のガスを貯蔵する貯蔵タンク(14)と、
前記貯蔵タンクへの前記第2のガスの貯蔵を制御する貯蔵制御部(20)と、
前記電気化学セルから脱離された二酸化炭素を含む前記第1のガスの前記二酸化炭素供給対象への供給を制御するとともに、前記貯蔵タンクに貯蔵されていた前記第2のガスの前記二酸化炭素供給対象への供給を制御する供給制御部(20)と、を備える二酸化炭素供給装置。
【0120】
(技術的思想2)
前記貯蔵制御部は、前記二酸化炭素供給対象に設けられた、稼働時に二酸化炭素を含む排気ガスを出力する排気ガス出力装置(19b)からの排気ガスを前記第2のガスとして前記貯蔵タンクに貯蔵する、技術的思想1に記載の二酸化炭素供給装置。
【0121】
(技術的思想3)
前記貯蔵制御部は、前記二酸化炭素供給対象に設けられた、稼働時に二酸化炭素を含む排気ガスを出力する排気ガス出力装置(19b)からの排気ガスを前記筐体内に導入するとともに、前記吸着モードと前記脱離モードとを交互に実施することにより、前記排気ガスから回収した二酸化炭素を含むガスを前記第2のガスとして前記貯蔵タンクに貯蔵する、技術的思想1に記載の二酸化炭素供給装置。
【0122】
(技術的思想4)
前記貯蔵制御部は、大気ガスを前記筐体内に導入するとともに、前記吸着モードと前記脱離モードとを交互に実施することにより、前記大気ガスから回収した二酸化炭素を含むガスを前記第2のガスとして前記貯蔵タンクに貯蔵する、技術的思想1に記載の二酸化炭素供給装置。
【0123】
(技術的思想5)
前記二酸化炭素供給対象は、閉じられた空間内で農作物を育成する農業用設備であり、
前記貯蔵制御部は、夜間又は悪天候の間に前記貯蔵タンクに前記第2のガスを貯蔵する、技術的思想1乃至4のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【0124】
(技術的思想6)
前記二酸化炭素供給対象は、閉じられた空間内で農作物を育成する農業用設備であり、
前記貯蔵制御部は、予想される天気及び/又は季節に応じて、前記貯蔵タンクに貯蔵する前記第2のガスの二酸化炭素濃度を変化させる、技術的思想1乃至5のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【0125】
(技術的思想7)
前記二酸化炭素供給対象は、閉じられた空間内で農作物を育成する農業用設備であり、
前記供給制御部は、日中に、前記二酸化炭素供給対象に対して二酸化炭素を含むガスを供給するものであり、
前記供給制御部が前記二酸化炭素供給対象への二酸化炭素を含むガスの供給を開始する時に、前記供給制御部は、前記貯蔵タンクに貯蔵されていた前記第2のガスを前記二酸化炭素供給対象へ供給する、技術的思想1乃至6のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給装置。
【0126】
(技術的思想8)
前記供給制御部は、前記二酸化炭素供給対象の二酸化炭素濃度が目標二酸化炭素濃度に達するか、もしくは、貯蔵タンク内の第2のガスの供給が完了すると、第2のガスの供給を停止する、技術的思想7に記載の二酸化炭素供給装置。
【0127】
(技術的思想9)
前記供給制御部は、前記第2のガスの前記二酸化炭素供給対象への供給に応じて、前記第1のガスの前記二酸化炭素供給対象への供給を開始する、技術的思想7又は8に記載の二酸化炭素供給装置。
【0128】
(技術的思想10)
前記第1のガスの前記二酸化炭素供給対象への供給は、前記二酸化炭素供給対象における二酸化炭素濃度が目標濃度に達するまで繰り返し実施される、技術的思想9に記載の二酸化炭素供給装置。
【符号の説明】
【0129】
10:二酸化炭素供給装置、11:第1切替弁、12:回収器、12a:電気化学セル、12b:二酸化炭素センサ、13:第1開閉弁、14:貯蔵タンク、15:第2開閉弁、16:第3開閉弁、17:送風機、18:第2切替弁、19a:二酸化炭素センサ、19b:暖房機、20:制御装置
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