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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158411
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】携帯デバイス
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/02 20090101AFI20241031BHJP
   H04W 4/40 20180101ALI20241031BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20241031BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20241031BHJP
   E05B 19/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H04W52/02
H04W4/40
H04W84/10 110
E05B49/00 J
E05B19/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073578
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悠太
(72)【発明者】
【氏名】生田 翔
【テーマコード(参考)】
2E250
5K067
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB34
2E250BB36
2E250CC06
2E250FF23
2E250FF36
2E250HH01
5K067AA43
5K067EE02
5K067EE25
(57)【要約】
【課題】待機中における携帯デバイスの消費電力をより低減可能な技術を提供する。
【解決手段】携帯デバイスは、通常モードと、第1省電力モードと、第2省電力モードとを備える。第1省電力モードは、通常モードよりもアドバタイズ信号の送信頻度/送信電力が小さいモードである。第2省電力モードは、第1省電力モードよりもアドバタイズ信号の送信頻度/送信電力が小さいモードである。携帯デバイスは、通常モード/第1省電力モード時、一定時間以内における強振動の検出回数が所定値以上となった場合、又は、一定時間以内におけるスキャン要求の受信回数が所定値以上となった場合に、第2省電力モードに移行する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動を検出する振動検出部(91)と、
車両と所定方式の無線通信を行う無線通信部(92)と、を備える携帯デバイスであって、
前記無線通信部は、動作モードとして、
所定の規則にてアドバタイズ信号の送信を繰り返す通常モードと、
前記アドバタイズ信号の定期送信を実行しない休止モードと、
前記通常モードよりも消費電力を抑制可能な規則にてアドバタイズ信号の送信を繰り返し実施する省電力モードと、を備え、
前記無線通信部は、
前記振動検出部が所定レベルよりも大きい振動を検出したことを受けて前記休止モードから前記通常モードに移行することと、
前記通常モードにおいて、前記振動検出部が検出する振動が所定条件を充足したことを受けて、前記通常モードから前記省電力モードに移行することと、を実行するように構成されている携帯デバイス。
【請求項2】
前記振動検出部は、加速度センサであり、
前記無線通信部は、
振動の大きさを示すデータとして、前記加速度センサが検出する加速度の値を取得し、
前記加速度センサが第1閾値よりも大きい加速度を検出したことを受けて前記休止モードから前記通常モードに移行し、
前記通常モードにおいて、前記第1閾値より大きい第2閾値以上の加速度を、所定時間以内に所定回数以上検出された場合に、前記所定条件が充足したと判定するように構成されている請求項1に記載の携帯デバイス。
【請求項3】
前記無線通信部は、前記省電力モード時、前記所定時間以内における前記第2閾値以上の前記加速度の検出回数が所定値未満に収まったことを受けて、前記省電力モードから前記通常モードに移行するように構成されている、請求項2に記載の携帯デバイス。
【請求項4】
振動を検出する振動検出部(91)と、
車両と所定方式の無線通信を行う無線通信部(92)と、を備える携帯デバイスであって、
前記無線通信部は、動作モードとして、
所定の規則にてアドバタイズ信号の送信を繰り返す通常モードと、
前記アドバタイズ信号の定期送信を実行しない休止モードと、
前記通常モードよりも消費電力を抑制可能な規則にてアドバタイズ信号の送信を繰り返し実施する省電力モードと、を備え、
前記無線通信部は、
前記振動検出部が所定レベルよりも大きい振動を検出したことを受けて前記休止モードから前記通常モードに移行することと、
他車両から送信された無線信号の受信状況を取得することと、
前記通常モードにおいて、前記受信状況が所定条件を充足したことを受けて、前記通常モードから前記省電力モードに移行することと、を実行するように構成されている携帯デバイス。
【請求項5】
前記無線通信部は、前記通常モード時、一定時間以内における前記他車両からの前記無線信号の受信数が所定値未満である場合に前記所定条件が充足したと判定するように構成されている、請求項4に記載の携帯デバイス。
【請求項6】
前記無線通信は、Bluetooth(登録商標) Low Energyに準拠した通信であり、
前記受信状況は、前記他車両からのスキャン要求の受信数である、請求項4又は5に記載の携帯デバイス。
【請求項7】
前記無線通信部は、
他車両から送信された無線信号の受信状況を取得し、
前記無線通信部が前記省電力モードにおいて、一定時間以内における前記他車両からの前記無線信号の受信数が所定値以上であることを受けて、前記省電力モードから前記通常モードに移行するように構成されている請求項1から5の何れか1項に記載の携帯デバイス。
【請求項8】
前記無線通信部は、前記通常モードから前記省電力モードに移行した場合、前記休止モードを次に解除した時の動作モードを前記省電力モードに設定するように構成されている、請求項1から5の何れか1項に記載の携帯デバイス。
【請求項9】
前記無線通信部は、前記振動検出部にて前記所定レベルより大きい振動を検出されない状態が所定時間以上継続したことを受けて、前記休止モードに移行するように構成されている、請求項1から5の何れか1項に記載の携帯デバイス。
【請求項10】
前記省電力モードは、前記通常モードよりも前記アドバタイズ信号の送信頻度が小さく設定されているモードである、請求項1から5の何れか1項に記載の携帯デバイス。
【請求項11】
前記省電力モードは、前記通常モードよりも前記アドバタイズ信号の送信電力が小さく設定されているモードである、請求項1から5の何れか1項に記載の携帯デバイス。
【請求項12】
前記無線通信は、Bluetooth Low Energyに準拠した通信である請求項1から3の何れか1項に記載の携帯デバイス。
【請求項13】
前記無線通信部は、
前記省電力モードである第1省電力モードに加えて、前記第1省電力モードよりもさらに消費電力を抑制可能な規則にてアドバタイズ信号の繰り返し送信を実施する第2省電力モードを備え、
前記通常モードに移行してから所定時間経過した場合に前記第1省電力モードに移行し、
前記通常モード又は前記第1省電力モードにおいて、前記所定条件が充足した場合には前記第2省電力モードに移行するように構成されている、請求項1から5の何れか1項に記載の携帯デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両と無線通信を実施する携帯デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には車載装置と携帯デバイスとがBluetooth(登録商標)にて通信接続するシステムが開示されている。特許文献1に開示の携帯デバイスは車載装置に向けて定期的にアドバタイズ信号を送信する。当該携帯デバイスは、携帯デバイスに設けられている開錠ボタンが押下されたことを受けて、アドバタイズ信号の送信頻度を高める。
【0003】
特許文献2には、ユーザのボタン操作を受けてアドバタイズ信号の定期送信を開始し、且つ、定期送信を開始してから所定時間が経過したことに基づいてアドバタイズ信号の送信間隔を長くする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2021/162014号
【特許文献2】特許第6843630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯デバイスがアドバタイズ信号を定期的に送信する状態を維持する構成では、携帯デバイスの電池の減りが速い。本開示の開発者らは、消費電力低減のため、振動センサが所定の閾値以上の振動を検知したときに休止モードからアクティブモードに移行する携帯デバイスを開発した。ここでの休止モードとは、アドバタイズ信号の定期送信を実行しないモードである。また、アクティブモードは所定間隔でアドバタイズ信号を定期的に送信するモードである。しかしながら、上記の休止モードを導入した携帯デバイスであっても、例えばユーザが携帯デバイスとともにジョギングしている場合などにおいては、無駄にアドバタイズ信号を出力し続ける。
【0006】
特許文献2に開示のように、アクティブモードに移行後、一定時間経過した場合にはアドバタイズ信号の送信間隔を長くする構成(以降、比較構成)であれば、ある程度の節電効果は期待できる。しかしながら比較構成では、一定時間の経過を待たねばならない。
【0007】
本開示は、上記の検討又は着眼点に基づいて成されたものであり、その目的の1つは、待機中における携帯デバイスの消費電力をより低減可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示される第1の携帯デバイスは、振動を検出する振動検出部(91)と、車両と所定方式の無線通信を行う無線通信部(92)と、を備える携帯デバイスであって、無線通信部は、動作モードとして、所定の規則にてアドバタイズ信号の送信を繰り返す通常モードと、アドバタイズ信号の定期送信を実行しない休止モードと、通常モードよりも消費電力を抑制可能な規則にてアドバタイズ信号の送信を繰り返し実施する省電力モードと、を備え、無線通信部は、振動検出部が所定レベルよりも大きい振動を検出したことを受けて休止モードから通常モードに移行することと、通常モードにおいて、振動検出部が検出する振動が所定条件を充足したことを受けて、通常モードから省電力モードに移行することと、を実行するように構成されている。
【0009】
上記構成の携帯デバイスは、通常モードである場合において、所定条件を充足する加速度が検出されたことに基づいて、省電力モードへと移行する。このような構成によれば、一定時間の経過を待たずとも、携帯デバイスは消費電力を抑制可能なモードへと移行可能である。よって、待機中における携帯デバイスの消費電力はより一層低減可能されうる。
【0010】
本開示に含まれる第2の携帯デバイスは、振動を検出する振動検出部(91)と、車両と所定方式の無線通信を行う無線通信部(92)と、を備える携帯デバイスであって、無線通信部は、動作モードとして、所定の規則にてアドバタイズ信号の送信を繰り返す通常モードと、アドバタイズ信号の定期送信を実行しない休止モードと、通常モードよりも消費電力を抑制可能な規則にてアドバタイズ信号の送信を繰り返し実施する省電力モードと、を備え、無線通信部は、振動検出部が所定レベルよりも大きい振動を検出したことを受けて休止モードから通常モードに移行することと、他車両から送信された無線信号の受信状況を取得することと、通常モードにおいて、受信状況が所定条件を充足したことを受けて、通常モードから省電力モードに移行することと、を実行するように構成されている。
【0011】
上記構成の携帯デバイスは、通常モードである場合において、他車両からの無線信号の受信状況が所定条件を充足したことに基づいて、省電力モードへと移行する。このような構成によれば、第1の携帯デバイスと同様に、待機中における携帯デバイスの消費電力はより一層低減可能となる。
【0012】
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両用電子キーシステムの構成を示す図である。
図2】車載システムの構成を示すブロック図である。
図3】携帯機の構成を示すブロック図である。
図4】コントローラの構成を示すブロック図である。
図5】近距離通信の接続シーケンスを示す図である。
図6】携帯機と他車両との通信を説明するための図である。
図7】待機状態における携帯機の動作モードを説明するための図である。
図8】待機状態における携帯機の状態遷移をまとめた図である。
図9】待機状態における携帯機の作動を説明するためのフローチャートである。
図10】再活性化条件の判定手順を示すフローチャートである。
図11】最終モードに応じて次回の初期モードを変更する場合の携帯機の作動を説明するためのフローチャートである。
図12】第1消費電力モードにおけるアドバタイズの流れを示す図である。
図13】第2消費電力モードの一例を示す図である。
図14】第2消費電力モードの他の例を示す図である。
図15】第2消費電力モードの他の例を示す図である。
図16】第2消費電力モードのバリエーションを示す図である。
図17】他の実施形態における携帯機の待機中の状態遷移図である。
図18】振動センサを備える携帯機の作動例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について図を用いて説明する。本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施されてよい。本開示には、複数の変形例を組み合わせた、明示しない構成もまた含まれる。以下の説明においては、同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その具体的説明を省略することがある。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については他の箇所に記載の説明を適用することができる。
【0015】
<全体構成について>
本実施形態の車両用電子キーシステムは、図1に示すように、車載システム10と携帯機9を含む。車載システム10は車両Vaに搭載されたシステムである。車載システム10は、図2に示すように、位置判定装置1と複数のアンカー2を含む。
【0016】
携帯機9は、ユーザが携帯する無線通信端末である。携帯機9は、位置判定装置1と紐付けられている。すなわち、位置判定装置1には携帯機9のデバイス情報が登録されている。デバイス情報は、デバイスの識別番号(以降、デバイスID)を含む。デバイスIDは、デバイスアドレス又はUUID(Universally Unique Identifier)等であってよい。複数の携帯機9が、位置判定装置1と紐付けられていてもよい。
【0017】
位置判定装置1は、車両Vaに対する携帯機9の位置を判定する装置である。位置判定装置1と携帯機9はいずれも近距離通信モジュールを含む。近距離通信モジュールは、近距離通信を実施可能するための通信モジュールである。ここでの近距離通信とは、実質的な通信可能距離が5mから50m、最大でも100m程度となる所定の無線通信規格に準拠した通信を指す。近距離通信は、Bluetooth(登録商標)Low Energy(以降、Bluetooth LE)や、Wi-Fi(登録商標)等であってよい。以下の説明及び図面では近距離通信を、SRC(Short Range Communication)あるいはSRWC(Short Range Wireless Communication)と記載することがある。また、本開示では近距離通信にて送受信される信号を近距離通信信号、SRC信号、又はSRWC信号と記載することがある。
【0018】
以下では近距離通信がBluetooth LEである場合を例にとって、各部の作動を説明する。さらに以下では、携帯機9がBluetooth LEにおけるペリフェラル(スレーブ)として作動し、位置判定装置1がセントラル(マスター)として振る舞うように設定されている。携帯機9と位置判定装置1の役割は入れ替えられてよい。
【0019】
車両Vaに搭載されているアンカー2は、携帯機9と測距通信を実施するための無線通信モジュールである。本開示における測距通信とは、通信装置間の距離を計測するための無線通信を意味する。本実施形態の複数のアンカー2及び携帯機9は何れも、UWB-IR(Ultra Wide Band - Impulse Radio)方式の無線通信であるUWB通信によって測距通信を実施可能に構成されている。つまりアンカー2と携帯機9は、UWB通信で使用されるインパルス状の電波(以降、インパルス信号)を送受信可能に構成されている。UWB通信で用いられるインパルス信号とは、パルス幅が極短時間(例えば2ns)であって、かつ、500MHz(厳密には499.2MHz)以上の帯域幅(つまり超広帯域幅)を有する信号であってよい。以降におけるUWB信号とは、UWB通信でやり取りされる信号と解されて良い。
【0020】
<車載システム>
車載システム10は、図2に示すように、位置判定装置1と複数のアンカー2に加えて、ボディECU3といった他の装置を有してよい。位置判定装置1は複数のアンカー2のそれぞれと専用の通信ケーブルで接続されている。また、位置判定装置1は、車内ネットワークを介して、ボディECU3と接続されている。車内ネットワークは、車両Va内に構築されている通信ネットワークである。車内ネットワークの規格としては、Controller Area Network(CANは登録商標)や、Ethernet(登録商標)、FlexRay(登録商標)等、多様な規格を採用可能である。ここに開示する装置同士の接続形態は一例であって適宜変更されてよい。位置判定装置1と複数のアンカー2は車内ネットワークを介して接続されていても良い。
【0021】
位置判定装置1は、アンカー2との協働により、デバイス位置を判定するECUである。本開示でのデバイス位置とは、車両Vaに対する携帯機9の相対位置を意味する。携帯機9はユーザに対応するものであるため、デバイス位置を判定することはユーザの位置を判定することに相当する。よって、デバイス位置との記載はユーザ位置と読み替えられても良い。位置判定装置1は、アンカー2の動作を制御する。
【0022】
位置判定装置1は、プロセッサ11、メモリ12、ストレージ13、無線通信回路、及び車内通信部15を備える。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)であってよい。メモリ12は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性の記憶媒体であってよい。ストレージ13は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む構成である。
【0023】
ストレージ13には、位置判定プログラムが保存されている。位置判定プログラムは、コンピュータを位置判定装置1として機能させるためのインストラクションを含むプログラムである。また、ストレージ13には、携帯機9のデバイスID及び各アンカー2の車両Vaにおける搭載位置を示すデータ、及び、携帯機9を認証するためのデータ(例えば鍵コード)が格納されていてよい。
【0024】
無線通信回路は、位置判定装置1に内蔵された近距離通信モジュールである。無線通信回路は、近距離通信用のアンテナ、送受信回路、及びSRCコントローラを含む。送受信回路は、変調及び復調にかかる信号処理を行う回路である。SRCコントローラは、近距離通信にかかるデータ処理を実行するマイクロコンピュータである。
【0025】
無線通信回路には、走行用電源がオフに設定されている間も、車載バッテリの電力が供給される。無線通信回路は、車載バッテリから供給される電力を用いて、定期的にスキャンを行い、携帯機9との接続を試行する。スキャンは、近距離通信信号を受信可能な状態となることである。受信待受状態を維持する期間/状態は、受信ウィンドウ、特にスキャンウィンドウとも称される。また、スキャンを行う間隔は、所定のスキャンインターバルとも称される。無線通信回路は、携帯機9からのアドバタイズ信号を受信したことを受けて、携帯機9に向けて接続要求を送信し、携帯機9と通信接続する。
【0026】
車内通信部15は、プロセッサ11が複数のアンカー2のそれぞれと通信するための回路である。また、車内通信部15は、プロセッサ11が車内ネットワークを介しての他の車載装置と通信するための回路を含んでいて良い。車内通信部15は、車内ネットワークの通信規格に準拠したPHYチップ等を含んでいてよい。
【0027】
位置判定装置1は、携帯機9と通信接続したことを受けて各アンカー2に携帯機9と測距通信を実施させる。位置判定装置1は、複数のアンカー2のそれぞれから測距通信の結果を示すデータ(以降、測距結果データ)を取得する。測距結果データは、測距を行った携帯機9のID、及び、アンカー2から携帯機9までの距離を示すデータを含む。測距通信によって定まる、アンカー2から携帯機9までの距離を示す値を、本開示では測距値と記載することがある。
【0028】
位置判定装置1は、各アンカー2から提供される測距結果データに基づいて、車両Vaから携帯機9までの距離(以降、デバイス距離とも記載)を特定する。位置判定装置1は、複数のアンカー2で観測された測距値を組み合わせる/統合することにより、デバイス距離を決定してよい。デバイス距離は、複数のアンカー2で観測される測距値のうちの最小値であってよい。また、位置判定装置1は、各アンカー2から提供される測距結果データに基づいて携帯機9が、車内、近傍エリア、及びその他エリアの何れに存在するかを判定して良い。近傍エリアは、車外において車両Vaから所定の作動距離以内となる領域である。作動距離は1.0m、1.5m、2.0m等に設定されていてよい。
【0029】
位置判定装置1は、デバイス距離と作動距離とを比較することにより、携帯機9が近傍エリアに存在するのかを判定してよい。また、位置判定装置1は、各アンカー2で観測されたデバイス距離をもとに、三辺測量又は三点測量の原理を用いてデバイス位置の座標を判定しても良い。位置判定装置1は、特定した携帯機9の位置情報をボディECU3に提供する。
【0030】
アンカー2は、前述の通り、携帯機9と測距通信を実施するための装置である。アンカー2は、UWB通信を実施可能に構成されている。本実施形態の車載システム10は、複数のアンカー2を備えていてよい。アンカー2は、フロントバンパの左端及び右端、並びに、リアバンパの左端及び右端の4箇所に配置されていてよい。アンカー2は、運転席付近や、車内天井部、トランク等に配置されていてよい。各アンカー2の構成及び性能は実質的に同一であってよい。
【0031】
アンカー2は、UWB通信用のアンテナ、送受信回路、及びUWBコントローラを含む。UWBコントローラは、測距通信にかかる処理を実行するマイクロコンピュータである。UWBコントローラは、携帯機9と測距通信を実施することによって測距結果データを生成し、当該測距結果データを位置判定装置1に送信(報告)する。測距通信の概要については後述する。
【0032】
ボディECU3は、ヘッドライトや、ドアロックモータ、パワーウィンドウモータ、サイドミラーモータといった、ボディ系設備を制御するECU(Electronic Control Unit)である。ボディECU3は、位置判定装置1が判定しているデバイス位置情報をもとに、ドアのアンロック/ロックを制御する。ドアのアンロック/ロックを制御することは、車両Vaの施錠状態を制御することに対応する。ボディECU3は、位置判定装置1との協働により、パッシブエントリ(Passive Entry)機能を提供するECUと解されて良い。パッシブエントリ機能は、ドアハンドルのタッチといった車両Vaへの所定のユーザアクションに反応して車両Vaをアンロックする機能である。なお、ボディECU3は、統合ECU、ゾーンECU、又はドメインECUに置き換えられても良い。また、ボディECU3と位置判定装置1は統合されていても良い。車載システム10内の機能配置は適宜変更されて良い。
【0033】
<携帯機9>
携帯機9は、車両Vaの電子的な鍵として機能する専用デバイスである。携帯機9は、車両Vaの購入時に、車両Vaとともにオーナーに譲渡されるデバイスであってよい。携帯機9は車両Vaの付属物の1つと解されてよい。携帯機9は、扁平な直方体型や、扁平な楕円体型(いわゆるフォブタイプ)、カード型等、多様な形状であってよい。携帯機9は、スマートキー、キーフォブ、キーカード、アクセスキー等と呼ばれうる。携帯機9は、位置判定装置1と近距離通信を用いた無線認証を実施することによって、車両Vaの鍵として機能する。
【0034】
なお、携帯機9は、近距離通信機能を備えた、汎用的な情報処理端末であってよい。携帯機9は、スマートフォンやウェアラブルデバイスといった、多様な通信端末であってよい。携帯機9は、ユーザデバイス又はキーデバイス等と言い換えられて良い。携帯機9が携帯デバイスに相当する。
【0035】
携帯機9は、図3に示すように、加速度センサ91、第1無線モジュール92、第2無線モジュール93、及びデバイスコントローラ94を備える。なお、冒頭に記載の通り、携帯機9は、車両Vaの位置判定装置1とは近距離通信を行う一方、アンカー2とはUWB通信を実施する。以降における携帯機9にとっての近距離通信相手としての車両Vaとの記載は、位置判定装置1と読み替えられて良い。また、携帯機9にとってのUWB通信(測距通信)相手としての車両Vaとの記載は、アンカー2と読み替えられてよい。
【0036】
加速度センサ91は、携帯機9に作用する加速度を検出するセンサである。加速度センサ91は3軸加速度センサであってよい。加速度センサ91は、100ミリ秒毎(10Hz)などの所定間隔で加速度を検出し、その検出結果を示すデータ(以降、加速度データ)を第1無線モジュール92及びデバイスコントローラ94に出力する。加速度センサ91は、軸方向ごとの加速度の検出値を含んでいて良い。加速度センサ91が検出する加速度は、携帯機9に作用する振動の大きさ、換言すれば、ユーザの動きの激しさを表す。本開示のおける加速度、振動、及びモーションといった表現は、相互に置き換えられて良い。
【0037】
なお、他の実施形態において加速度センサ91は、1軸又は2軸加速度センサであってもよい。加速度センサ91が振動検出部に相当する。振動検出部は、振動センサやジャイロセンサ、モーションセンサであってもよい。モーションセンサは加速度センサ91とジャイロセンサと地磁気センサとを組み合わせた多軸センサである。
【0038】
第1無線モジュール92は、携帯機9が備える近距離通信モジュールである。第1無線モジュール92が無線通信部に相当する。第1無線モジュール92は、アンテナ921、RF(Radio Frequency)コア922、及びコントローラ923を含む。アンテナ921は、近距離通信に用いられる周波数帯(ここでは2.4GHz帯)の電波を送受信するためのアンテナエレメントである。
【0039】
RFコア922は、無線信号の送受信にかかる処理を行う回路モジュールである。RFコア922は変調回路や復調回路、周波数変換回路、増幅回路、ローカル発振器などを含みうる。RFコア922は、アンテナ921及びコントローラ923と接続されている。RFコア922は、アンテナ21で受信した信号を復調し、コントローラ923に提供する。また、RFコア922は、コントローラ923から入力された送信データを変調し、アンテナ21から電波として放射させる。RFコア922はICチップ(つまり送受信IC)として実現されていて良い。
【0040】
コントローラ923は、RFコア922ひいては第1無線モジュール92全体の動作を制御するマイクロコンピュータである。コントローラ923は、図4に示すようにプロセッサE1、メモリE2、ストレージE3、及び入出力回路E4を含む。プロセッサE1は、CPUであってよい。メモリE2は、RAM等の揮発性の記憶媒体である。ストレージE3は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体を含む記録装置である。ストレージE3は、ROM(Read Only Memory)とフラッシュメモリ等、複数種類の記憶媒体を含んでいてよい。
【0041】
ストレージE3には、通信制御プログラムが保存されている。通信制御プログラムは、動作モードの制御にかかるインストラクションを含むプログラムである。通信制御プログラムは、通信制御方法に対応するプログラムと解されて良い。
【0042】
また、ストレージE3には、車両Vaと無線通信を実施するための種々のデータが保存されていてよい。車両Vaと無線通信を実施するためのデータは、位置判定装置1のデバイスIDといった、ペアリングによって位置判定装置1から受信したパラメータを含む。また、車両Vaと無線通信を実施するためのデータは、車両Vaの識別番号(以降、車両ID)を含んでいて良い。車両IDは、通信対象とする車両/車載システムの識別情報に相当する。車両IDはシステムIDと言い換えられて良い。車両IDは、VIN(Vehicle Identification Number)であってもよいし、VINとは異なる種類の番号であって良い。車両IDは、所定の規則で割り当てられた、グローバル識別番号であって良い。ストレージE3には車両Vaとの無線認証に使用される鍵コードが保存されていてよい。
【0043】
コントローラ923は、待機状態において、定期的にアドバタイズを実行しうる。ここでの待機状態とは、携帯機9が車両Vaと近距離通信で接続していない状態を意味する。アドバタイズは、所定のチャネルを用いてアドバタイズ信号を送信する処理である。アドバタイズ信号は、自分自身の存在を他のデバイスに通知するための無線信号である。1回のアドバタイズは、Bluetooth LEで利用可能な40個のチャネル(0Ch~39Ch)のうちの、37Ch(2402MHz)、38Ch(2426MHz)、39Ch(2480MHz)の3つのチャネルのそれぞれにおいて1回ずつアドバタイズ信号を送信する処理であってよい。アドバタイズはアドバタイジング又はアドバタイズメントと言い換えられても良い。
【0044】
本実施形態において携帯機9が送信するアドバタイズ信号は、接続要求とスキャン要求の両方を許容するタイプのアドバタイズパケット(ADV_IND)であってよい。つまり、アドバタイズ信号は、PDUタイプが0001に設定されたアドバタイズパケットであってよい。他の態様においてアドバタイズ信号は、接続要求は許容する一方、スキャン要求を受け付けないタイプのアドバタイズパケット(ADV_DIRECT_IND)であってもよい。
【0045】
図5は、携帯機9と車両Vaとの通信接続までの流れを概略的に示す図である。図5に示すシーケンスを開始する時点において携帯機9は車両Vaから十分に離れており、車両Vaと通信接続していない。つまり、携帯機9は待機状態である。
【0046】
ペリフェラルである携帯機9は、待機状態であってかつ後述する休止モードではない場合には、アドバタイズ信号を定期的に送信する(S11)。携帯機9は、アドバタイズ信号を送信した直後の短い時間は、受信待受状態となる。つまり、携帯機9は、アドバタイズ信号の送信直後は受信ウィンドウを開く。アドバタイズ信号送信後に開かれる受信ウィンドウは、消費電力低減のために、スキャンウィンドウに比べて十分に短く(例えば半分以下に)設定されている。
【0047】
ユーザの移動に伴って、車両Vaの近距離通信エリアに携帯機9が入ると、車両Vaは携帯機9からのアドバタイズ信号を受信しうる。車両Vaは、携帯機9からのアドバタイズ信号を受信したことを受けて、携帯機9に向けて接続要求信号を送信する(S12)。これにより、携帯機9と車両Vaは通信接続状態へと移行する。接続要求信号は、通信接続することを要求する信号である。接続要求信号は、CONNECT_IND又はCONNECT_REQに相当するパケットと解されて良い。本開示では、接続要求信号を接続要求とも省略して記載することがある。通信接続状態においては、所定の間隔で疎通確認のための無線信号の送受信、及び、暗号化されたデータ通信を実施する。
【0048】
ところで、携帯機9が送信したアドバタイズ信号は、図6に示すように、他車両Vbで受信されることがある。他車両Vbは、車両Vaとは異なる車両であって、かつ、近距離通信機能を搭載している車両である。他車両Vbは、携帯機9と紐づけられていない車両と解されて良い。他車両Vbは、携帯機9が発した、スキャン要求を許容するタイプのアドバタイズ信号を受信すると、スキャン要求信号を携帯機9に向けて送信することがある。スキャン要求信号は、通信接続のための追加的な情報の送信を要求する信号である。追加的な情報とは、アドバタイズ信号に含まれていない任意の情報と解されて良い。スキャン要求信号は、スキャン応答(SCAN_RES)の返送を要求する信号と解されてよい。スキャン要求信号は、SCAN_REQ(Scan_Request)に相当するパケットであってよい。本開示ではスキャン要求信号をスキャン要求と省略して記載することがある。
【0049】
携帯機9は、待機状態のほとんどの時間は、受信ウィンドウを開いていない。そのため、携帯機9は基本的には他車両Vbからの近距離通信信号は受信しない。しかしながら、アドバタイズ信号を送信した直後においては、僅かな時間、携帯機9は受信ウィンドウを開く。そのため、携帯機9は、アドバタイズ信号を送信した直後においては、スキャン要求などといった、他車両Vbからの近距離通信信号を受信しうる。
【0050】
本実施形態のコントローラ923は、他車両Vbからの近距離通信信号の受信状況を記録する。例えばコントローラ923は、一定時間以内におけるスキャン要求の受信回数を記録する。なお、複数の他車両Vbからのスキャン要求は別々にカウントしてよい。例えば1度のアドバタイズ信号の送信に対して3台の他車両Vbからスキャン要求を受信した場合、コントローラ923は、受信回数を3つカウントアップしてよい。
【0051】
他車両Vbからの信号の受信状況を示すデータは、別途後述するように、携帯機9の周辺環境の判断材料、あるいは、動作モードの切り替えのための判断材料として利用されて良い。
【0052】
第2無線モジュール93は、UWB通信を実施するための通信モジュールである。第2無線モジュール93は、受信データをデバイスコントローラ94に出力する。また、第2無線モジュール93は、デバイスコントローラ94から入力された送信データに対応するUWB信号を送信する。第2無線モジュール93は、デバイスコントローラ94の指示に基づいて起動、測距通信、及び動作停止するように構成されている。
【0053】
測距通信は、アンカー2から携帯機9までの電波の伝搬時間(換言すれば飛行時間)を計測するための通信である。測距通信においては、携帯機9は、車両Vaに向けてポール信号を送信してから、車両Vaからのレスポンス信号を受信するまでの経過時間であるラウンドトリップ時間(以降、RTT)を計測する。RTTはRound Trip Timeの略である。ポール信号は、レスポンダに応答(レスポンス)の返送を要求する信号である。レスポンス信号はアンサー信号と言い換えられて良い。第2無線モジュール93は、測距通信を実行することで計測されたRTTから測距値を算出し、デバイスコントローラ94に提供する。なお、測距通信では、携帯機9がイニシエータとして作動し、かつ、車両Va(実際には各アンカー2)はレスポンダとして作動してよい。イニシエータとは、測距通信を主導する役割を担う装置である。
【0054】
デバイスコントローラ94は、携帯機9の動作を統合的に制御する構成である。デバイスコントローラ94は、プロセッサ、メモリ、ストレージ、入出力回路などを備えていてよい。例えばデバイスコントローラ94は、第1無線モジュール92が車両Vaと通信接続が完了すると、測距通信の準備処理として、近距離通信にて測距通信のためのパラメータ(以降、測距設定)を車両Vaと交換する。そして、デバイスコントローラ94は、測距設定に従った態様にて第2無線モジュール93に各アンカー2と測距通信を実施させる。
【0055】
デバイスコントローラ94は、第1無線モジュール92が車両Vaと近距離通信で接続していない場合には、第2無線モジュール93をスリープさせてよい。第2無線モジュール93のスリープ状態は、消費電力削減のために、一部又は全ての機能を停止した状態であってよい。デバイスコントローラ94は、第1無線モジュール92が車両Vaと近距離通信で接続したことに基づいて、第2無線モジュール93を、UWB信号を送受信可能な状態に移行させてよい。当該制御により、待機状態における消費電力が低減されうる。
【0056】
また、待機状態において、デバイスコントローラ94はハイバーネーション等の節電状態であってよい。待機状態において携帯機9は、加速度センサ91と第1無線モジュール92のみが動作していてよい。なお、後述の通り、待機状態においては、第1無線モジュール92もまた動作を停止することがある。携帯機9は、加速度センサ91のみが駆動するモードを有していてよい。その他、デバイスコントローラ94は、車両Vaとの通信接続が確立したことに基づいて、近距離通信による認証処理(つまり無線認証)を実施してもよい。無線認証はチャレンジ-レスポンス方式によって実施されてよい。
【0057】
<待機状態における第1無線モジュールの動作モード>
本実施形態の第1無線モジュール92は、待機状態における動作モードとして、通常モードと、第1省電力モードと、第2省電力モードと、休止モードと、を備える。待機状態における動作モードは待機モードと言い換えられてよい。各動作モードは、単位時間(例えば1分)当りの消費電力が異なる。
【0058】
通常モードは、所定の第1間隔でアドバタイズを実行するモードである。第1間隔は、30ミリ秒、50ミリ秒、又は60ミリ秒に設定されている。第1間隔の設定値は、数10ミリ秒から数100ミリ秒までの値に設定されていて良い。第1間隔は、通常モードにおけるアドバタイズインターバルである。通常モードは相対的に高頻度にアドバタイズを行うモードである。通常モードはノーマルモード又はアクティブモードと言い換えられて良い。通常モード時のアドバタイズは、ファストアドバタイズと言い換えられて良い。
【0059】
第1省電力モードは、通常モードよりも消費電力が小さくなるように、アドバタイズ信号の送信規則が設定されたモードである。本実施形態の第1省電力モードは、第1間隔よりも長い第2間隔でアドバタイズを実行するモードであってよい。第2間隔は、1.5秒、2秒、又は3秒に設定されていて良い。もちろん、第2間隔は100ミリ秒、500ミリ秒、800ミリ秒などに設定されていて良い。アドバタイズインターバルが長いほど、待機中の消費電力を低減できる。第1省電力モード時のアドバタイズは、スローアドバタイズと言い換えられて良い。第1省電力モードは、LE(Low Energy)モードと言い換えられて良い。
【0060】
第2省電力モードは、第1省電力モードよりもさらに消費電力が小さくなるように、アドバタイズ信号の送信規則が設定されたモードである。第2省電力モードは、第1省電力モードよりもアドバタイズ信号の送信頻度が少ないモードであってよい。具体的には、第2省電力モードは、第2間隔よりもさらに長い第3間隔でアドバタイズを実行するモードであってよい。第3間隔は、6秒、10秒、又は20秒であってよい。第3間隔は、第2間隔よりも長い限り、任意の値に設定されて良い。第2省電力モード時のアドバタイズは、ベリースローアドバタイズと言い換えられて良い。第1、第2省電力モードは、この順に、省電力モード、超省電力(VLE:Very Low Energy)モードと言い換えられても良い。
【0061】
通常モード、第1省電力モード、及び第2省電力モードは、アドバタイズ信号を定期的に送信するモードである。以降では通常モード、第1省電力モード、及び第2省電力モードをまとめて定期送信モードとも記載する。一方、休止モードは、アドバタイズ信号の定期送信を実行しないモードである。休止モードは、コントローラ923がハイバーネーション又はセーフスリープするモードであってよい。
【0062】
図7は、各モードでのアドバタイズ信号の送信頻度の違いを概略的に示した図である。図7の(A)、(B)、(C)、(D)は、通常モード、第1省電力モード、第2省電力モード、及び休止モードのそれぞれにおけるアドバタイズ信号の送信規則(送信間隔)を概略的に示している。図中のInt1は第1間隔を、Int2は第2間隔を、Int3は第3間隔をそれぞれ表している。図7の(D)に示すように、休止モードではアドバタイズ信号は送信されない。
【0063】
通常モードではアドバタイズが頻繁に実施されるため、消費電力は大きいものの、車両Vaが携帯機9(換言すればユーザ)を発見しやすいといった特性を有する。一方、第2省電力モードでは消費電力を極小に抑えられる一方、車両Vaが携帯機9(換言すればユーザ)を発見しにくい。第1省電力モードは、消費電力及び通信接続性の観点において、通常モードと第2省電力モードの中間に位置するモードである。休止モードにおいては、車両Vaとの接続は不可であるものの、消費電力を極限まで低減可能となる。ここでの通信接続性は、通信接続のしやすさと解されて良い。
【0064】
第1無線モジュール92は、加速度センサ91からの入力信号に基づいて、待機モードを変更する。以下の説明における加速度とは、加速度センサ91が出力する検出値の絶対値であってよい。また、以下の説明における加速度は、検出軸毎の加速度(絶対値)のうちの最大値と解されて良い。
【0065】
第1無線モジュール92は、休止モードにおいて第1閾値以上の加速度が検出されたことを受けて、通常モードに移行する。これにより、第1間隔でアドバタイズ信号を送信し始める。便宜上、休止モードから通常モードに移行することをウェイクアップ(起動)と記載する。第1閾値は起動閾値と言い換えられて良い。第1閾値の加速度を生じさせる振動が所定レベルの振動に相当する。つまり、第1閾値は所定レベルに対応する。
【0066】
第1無線モジュール92は、通常モードに移行してから経過時間が所定の切替時間以上となった場合には自動的に第1省電力モードに移行する。つまり、第1無線モジュール92は、ウェイクアップ後、切替時間が経過しても車両Vaからの接続要求を受信しない場合に、自動的に第1省電力モードに移行する。これにより、アドバタイズインターバルが第1間隔から第2間隔になり、消費電力が低減される。切替時間は20秒、30秒、60秒などに設定されていて良い。
【0067】
第1省電力モード中において第1閾値以上の加速度が検出されていない状態が休止時間継続した場合には、第1無線モジュール92は、休止モードに移行する。休止時間は、60秒、90秒、120秒、180秒などに設定されていて良い。本実施形態において休止時間は、切替時間よりも長く設定されている。他の態様において休止時間は、切替時間と同じであってもよいし、切替時間よりも短くとも良い。切替時間は第1切替時間、休止時間は第2切替時間とそれぞれ言い換えられて良い。
【0068】
第1無線モジュール92は、通常モード又は第1省電力モードにおいて、強振動状態であることを検出した場合には、第2省電力モードに移行する。強振動状態は、ジョギングや登山などの運動をユーザがしている状態に対応する。強振動状態か否かは、加速度センサ91の出力に基づいて判断されて良い。本実施形態のコントローラ923は、所定の状態判定時間以内における第2閾値以上の加速度の検出回数が所定の節電開始値以上となった場合に、強振動状態と判定してよい。換言すれば、第1無線モジュール92は、状態判定時間以内における第2閾値以上の加速度の検出回数が節電開始値以上である場合に、通常モード又は第1省電力モードから第2省電力モードに移行する。
【0069】
加速度に対する第2閾値は、第1閾値よりも大きい値に設定されている。第2閾値は、通常の歩行時には観測されにくく、かつ、ジョギングや登山などの運動時に観測されうる値に設定されていてよい。第2閾値は、別の局面においては、ユーザが車両Vaを使用する意思がない状況に対応する値に設定されていてよい。第2閾値は、第1閾値の3倍や4倍、5倍などに設定されていてよい。第2閾値は、移行閾値、運動判定値、又は例外判定値と言い換えられて良い。
【0070】
本開示では、加速度が第2閾値以上となる振動を強振動と記載する。また、以降では、第2閾値以上の加速度の検出回数を強振動検出数とも記載する。強振動状態は、運動状態と言い換えられてよい。
【0071】
状態判定時間は、30秒や45秒、60秒など、休止時間以下の値に設定されている。状態判定時間は、切替時間と同じであってもよい。また、状態判定時間は、切替時間よりも短い値に設定されていても良い。ただし、状態判定時間が短すぎると、自宅の玄関/施設の出入り口から車両Vaまでユーザが走って向かった際に第2省電力モードに移行することが起こりうる。よって、状態判定時間は、例えば15秒や25秒など、ある程度の長さを有していて良い。他の実施形態において状態判定時間は、5分や10分など、休止時間よりも長い値に設定されていてよい。状態判定時間が所定時間に相当する。
【0072】
上記のように第1無線モジュール92は、状態判定時間以内における強振動検出数が所定値以上となった場合に、第2省電力モードに移行する。これにより、より一層の節電が図られる。
【0073】
待機状態における第1無線モジュール92の動作モードの切り替えは、コントローラ923によって実行されてよい。コントローラ923は、動作モードの制御に向けた準備処理として、加速度センサ91の出力データをメモリE2に一定時間保存する。また、コントローラ923は、第2閾値以上の加速度(つまり強振動)が検出されるたびに、その時刻を記録する。当該強振動の検出時刻を示すデータは、検出時刻から状態判定時間が経過したことを受けて削除されて良い。
【0074】
第2省電力モード中に所定の再活性化条件が充足した場合、第1無線モジュール92は、通常モードに復帰(移行)する。再活性化条件は、節電解除条件と言い換えられて良い。コントローラ923は、状態判定時間における強振動検出数が解除値未満である場合に再活性化条件が充足したと判定して良い。解除値は、節電開始値の10%や25%など、節電開始値の50%以下の値に設定されていて良い。節電開始値及び解除値の具体的な値は、状態判定時間の長さ及び第2閾値の大きさを鑑みて設計されて良い。なお、他の実施形態において解除値は節電開始値と同じ値であっても良い。動作モードを変更するための強振動検出数に対する閾値は2つではなく1つであってもよい。
【0075】
図8は、動作モードの遷移条件をまとめたものである。図中の「Tn」は、通常モードに移行してからの経過時間である、通常モード継続時間を表している。「Tsw」は切替時間である。「Na」は状態判定時間以内における強振動検出数を表している。「N_Hi」は節電開始値を表しており、「N_Low」は解除値を表している。「A」は、検出された加速度の値、つまり検出軸ごとの絶対値の最大値を表している。「Th1」は第1閾値を表している。「Tml」は、加速度が第1閾値未満である状態の継続時間を表している。「Thm」は、休止時間を表している。
【0076】
<待機状態における携帯機の作動>
ここでは図9に示すフローチャートを用いて待機状態における携帯機9の作動について説明する。図9に示す一連の処理は、待機モード制御処理と呼ぶことができる。待機モード制御処理は図9に示すようにステップS101~S109を含んで良い。以下の処理の実行主体としてのコントローラ923との記載は、プロセッサE1、第1無線モジュール92、又は携帯機9に置き換えられてよい。
【0077】
ステップS101はコントローラ923が、振動を検知したか否かを判定するステップである。ステップS101は、実態的には、コントローラ923が加速度センサ91からの入力信号に基づき、第1閾値以上の加速度が検出されたか否かを判定するステップであってよい。ステップS101は、休止モード中において定期的に実行されて良い。第1閾値以上の加速度が検出されていない場合(S101 NO)、本フローは終了する。一方、第1閾値以上の加速度が生じたことを示すデータが加速度センサ91から入力された場合(S101 YES)、処理はステップS102に進む。なお、待機モード制御処理は、加速度センサ91にて第1閾値以上の加速度が検知されたことに基づいてステップS102以降の処理を実行する処理と解されて良い。
【0078】
ステップS102はコントローラ923が起動処理を実行するステップである。起動処理は、休止モードから通常モードに移行する処理である。起動処理は、ストレージE3に保存されているデータ/プログラムを読み出してメモリE2に展開する処理を含んでいてもよい。ステップS102が完了すると、処理はステップS103に進む。
【0079】
ステップS103はコントローラ923が、通常モードでのアドバタイズを開始するステップである。これにより、第1無線モジュール92は、第1間隔でアドバタイズ信号を定期送信し始める。ステップS103の次は、ステップS104が実行される。
【0080】
ステップS103以降においては、加速度センサ91の出力をもとに強振動を検出し、かつ、直近状態判定時間以内における強振動検出数を更新する処理が、本フローと並列的に(平行して)実行されてよい。同様に、状態判定時間以内における他車両からの信号(例えばスキャン要求)の受信数を更新する処理も、ステップS103以降の処理と並列的に実行されてよい。本開示では状態判定時間以内における他車両からの信号の受信数のことを、車両信号受信数とも記載する。
【0081】
ステップS104は、状態判定時間以内における強振動検出数(Na)が節電開始値(N_Hi)以上であるか否かをコントローラ923が判定するステップである。強振動検出数が節電開始値以上である場合(S104 YES)、処理はステップS105に進む。一方、強振動検出数が節電開始値未満である場合(S104 NO)、処理はステップS108に進む。
【0082】
ステップS105は第1無線モジュール92が通常モードから第2省電力モードに移行するステップである。ステップS105は、第2省電力モードでのアドバタイズを開始するステップ、換言すればアドバタイズインターバルを第3間隔に設定するステップと解されて良い。ステップS105が完了すると処理はステップS106に進む。
【0083】
ステップS106は、再活性化条件が充足したか否かをコントローラ923が判定するステップである。例えばコントローラ923は、状態判定時間における強振動検出数が解除値未満に収まった場合に再活性化条件が充足したと判定して良い。再活性化条件が充足している場合(S106 YES)、処理はステップS107に進む。一方、再活性化条件が充足していない場合(S106 NO)、定期的にステップS106が実行される。再活性化条件が充足するまでは、第2省電力モードが維持されてよい。他の実施形態において第1無線モジュール92は、第2省電力モードが一定時間継続した場合には、いったん通常モードに移行するように構成されていてもよい。
【0084】
ステップS107は、第1無線モジュール92が第2省電力モードから通常モードに移行するステップである。ステップS107は、アドバタイズ信号の送信間隔(つまりアドバタイズインターバル)を第1間隔に戻すステップと解されて良い。ステップS107が完了すると処理はステップS108が実行される。
【0085】
ステップS108は、休止条件が充足したか否かをコントローラ923が判定するステップである。休止条件は、第1閾値以上の加速度が検出されていない状態が休止時間継続することであってよい。コントローラ923は、加速度センサ91の出力の時系列データに基づき、第1閾値以上の加速度が検出されていない状態が休止時間継続した場合に休止条件が充足したと判定して良い。
【0086】
休止条件が充足した場合(S108 YES)、ステップS109において第1無線モジュール92が休止モードに移行する。一方、休止条件が充足していない場合(S108 NO)、処理はステップS104に戻る。第1無線モジュール92が通常モードである場合、ステップS104、S108が一定時間ごとに実行される。なお、通常モードの継続時間が切替時間以上となった場合には第1無線モジュール92は第1省電力モードに移行して良い。第1省電力モードの間もステップS104、S108が交互に繰り返し実行されて良い。
【0087】
<効果>
上記の携帯機9は、強振動状態であると判定したことに基づいて、アドバタイズ信号の送信間隔を第1間隔から第3間隔へと低減する。以上の処理によれば、ジョギング中など、振動が継続的に続き、且つ、ユーザが車両Vaを使用する意思がないことが想定されるシーンにおいて、携帯機9が高頻度でアドバタイズ信号を送信し続けるおそれを低減できる。また、上記の携帯機9によれば、ウェイクアップ後、休止時間の経過を待たずとも、消費電力を抑制可能なモードへと移行可能である。よって、携帯機9の消費電力はより一層低減可能されうる。
【0088】
さらに上記携帯機9では、第2省電力モード中、一定時間以内における強振動検出数が所定値未満となったことに基づいて、通常モードへと復帰する。当該構成によれば、例えばユーザが運動等を終えて車両Vaに接近するシーンにおける車両Vaと携帯機9の接続性を高めることができる。
【0089】
<変形例>
コントローラ923は、加速度の絶対値の代わりに、加速度の変化幅を用いて強振動状態か否かを判断してもよい。加速度の変化幅は、単位時間(例えば1秒)以内における加速度センサ91の出力値の最小値と最大値の差であってよい。強振動状態と判定する条件は、上記以外であってもよい。コントローラ923は、状態判定時間内における加速度の絶対値の平均値が所定の閾値を超えた場合に、強振動状態と判定してもよい。
【0090】
その他、ユーザがサイクリングしている時など、所定の運動/動きをしている時の加速度の変動パターンが、例外パターンとしてストレージE3に登録されていて良い。コントローラ923は、加速度センサ91の出力値の時系列データを解析し、加速度の変動パターンが例外パターンに該当する場合には、第1無線モジュール92を第2省電力モードに移行させて良い。例外パターンは、試験等によって特定され、事前に登録されていて良い。
【0091】
強振動状態であることは、第2省電力モードへの移行条件の1つであってよい。第2省電力モードへの移行条件を本開示では、節電開始条件とも記載する。第1無線モジュール92は、加速度センサ91からの入力信号及びRFコア922から入力される受信信号情報の少なくとも何れか一方に基づいて、待機モードを変更してよい。ここでの受信信号情報とは、他車両Vbからの信号の受信状況を示すデータを含む。
【0092】
例えばコントローラ923は、状態判定時間内における車両信号受信数が所定の第1受信閾値未満である場合に、第2省電力モードへの移行条件が充足したと判定してよい。ステップS104は、状態判定時間内における車両信号受信数が所定の第1受信閾値未満であるか否かを判定するステップであってもよい。
【0093】
ユーザが、山道、テーマパーク、緑地、又は大型の公園などといった、駐車場から離れた場所を歩いている場合、携帯機9は車両Vaだけでなく、他車両Vbからの信号も受信しにくい。よって、上記例のように周囲に車両が存在しない場所にユーザがいる場合には、車両信号受信数は小さくなる。また、上記の場所にユーザがいる場合、ユーザの歩行によって振動が継続的に続くものの、ユーザが車両Vaを使用する可能性が小さい。一方、ユーザが駐車場近くにいる場合には、他車両Vbからの信号を受信しうる。そして、ユーザが駐車場近くにいる場合には、ユーザが車両Vaを使用する可能性は相対的に高い。
【0094】
このように他車両からの近距離通信信号の受信状況(例えば車両信号受信回数)は、ユーザが車両Vaを利用する可能性が高い状況か否かの判断材料として機能しうる。状態判定時間内における車両信号受信数が第1受信閾値未満である場合に第1無線モジュール92が第2省電力モードに移行する事により、テーマパークや山奥等を散策中においてアドバタイズ信号を高頻度に送信し続けるおそれを低減できる。
【0095】
また、再活性化条件は、状態判定時間内における車両信号受信数が所定の第2受信閾値以上であることであって良い。状態判定時間内における車両信号受信数が第2受信閾値未満である場合に第1無線モジュール92が通常モードに移行する事により、車両Vaと携帯機9との接続性が損なわれるおそれを低減できる。なお、第2受信閾値は、第1受信閾値の2倍や3倍など、第1受信閾値よりも大きい値に設定されていて良い。また、第2受信閾値は、第1受信閾値と同じであってもよい。待機モードを変更するための車両信号受信数に対する閾値は2つではなく1つであってもよい。
【0096】
コントローラ923は、図10に示す手順にて再活性化条件が充足しているか否かを判定して良い。すなわち、再活性化条件が充足しているか否かの判断は、ステップS111~S112の2つのステップを含んでいてよい。ステップS111は、状態判定時間内における強振動検出数(Na)が解除値(N_Low)未満であるか否かを判定するステップである。強振動検出数が解除値未満である場合(S111 YES)、コントローラ923は再活性化条件が充足されたと判定して良い(S113)。一方、強振動検出数が解除値以上である場合(S111 NO)、コントローラ923はステップS112を実行する。
【0097】
ステップS112は、車両信号受信数が第2受信閾値以上であるか否かを判定するステップである。図中の「Nrsv」は車両信号受信数を表している。また図中の「ThRsv2」は第2受信閾値を表している。車両信号受信数が第2受信閾値以上である場合(S112 YES)、コントローラ923は再活性化条件が充足されたと判定して良い(S113)。一方、車両信号受信数が第2受信閾値未満である場合(S112 NO)、コントローラ923は再活性化条件が充足されていないと判定して良い(S114)。
【0098】
つまり、コントローラ923は、強振動検出数が解除値未満であるか、又は、車両信号受信数が第2受信閾値以上である場合に再活性化条件が充足されたと判定して良い。また、強振動検出数が解除値以上であり且つ車両信号受信数が第2受信閾値未満である場合に再活性化条件は充足されていないと判定して良い。
【0099】
なお、車両信号受信数は、他車両Vbからの近距離通信信号の受信状況を示すデータ/パラメータの一例である。コントローラ923は、他車両Vbから送信されてきた信号(例えばスキャン要求)の受信強度である車両信号強度を用いて、第2省電力モードへの移行及び解除を判断してもよい。コントローラ923は、車両信号強度が所定値以上である場合に節電解除条件が充足したと判定して良い。また、車両信号強度が所定値未満である場合に節電開始条件が充足したと判定して良い。
【0100】
また、コントローラ923は、休止条件が充足した時の待機モードに応じて起動直後の待機モードを変更するように構成されていても良い。例えば第1又は第2省電力モード時に休止条件が充足して休止モードに移った場合、初期モードは、通常モードではなく第1省電力モードであってよい。ここでの初期モードとは休止モードが解除された際に(つまり起動後に)最初に適用される動作モードである。休止モードに移る直前の動作モードが通常モードであった場合、初期モードは通常モードであってよい。当該構成によれば、起動直後は必ずしも通常モードで動作しない。よって消費電力をより一層低減可能となる。
【0101】
図11は上記の技術的思想に対応するコントローラ923の作動を示すフローチャートであってステップS201~S210を含む。ステップS201~S202は前述のステップS101~S102と同様である。ステップS202の起動が完了すると処理はステップS203に進む。ステップS203は、後述するステップS206又はS208で記録された初期モードで、アドバタイズを開始するステップである。ステップS203が完了すると処理はステップS204に進む。
【0102】
ステップS204は、車両信号受信数が第1受信閾値未満であるか否かを判定するステップである。図中の「ThRsv1」は第1受信閾値を表している。車両信号受信数が第1受信閾値未満である場合(S204 YES)、処理はステップS207に進む。一方、車両信号受信数が第1受信閾値以上である場合(S204 NO)、処理はステップS205に進む。
【0103】
ステップS205はコントローラ923が、待機モードを通常モードに切り替えるステップである。既に通常モードである場合にはステップS205は省略されて良い。また、通常モードの継続時間が切替時間を超過したことに基づいて現在の待機モードが第1省電力モードである場合にも、ステップS205は省略されて良い。ステップS205の次はステップS206が実行される。ステップS206は、次回の初期モードを通常モードに設定するステップである。ステップS206が完了するとステップS209が実行される。
【0104】
ステップS207は、コントローラ923が待機モードを第2省電力モードに切り替えるステップである。既に第2省電力モードである場合にはステップS207は省略されて良い。ステップS207の次はステップS208が実行される。ステップS208は、次回の初期モードを第1省電力モードに設定するステップである。ステップS208が完了するとステップS209が実行される。
【0105】
ステップS209は休止条件が充足したか否かを判定するステップである。休止条件が充足した場合(S209 YES)、ステップS210において第1無線モジュール92は休止モードに入る。一方、休止条件が充足していない場合(S209 NO)、コントローラ923はステップS204以降の処理を実行する。ステップS204~S209が繰り返されることにより、休止条件が充足した際の待機モード(以降、最終モード)に応じた待機モードが、次回の初期モードに設定される。
【0106】
以上の処理フローによれば、が通常モード又は第1省電力モードである場合には、次回の初期モードは通常モードとなる。これにより、次回起動時に車両Vaの近くに携帯機9が存在した場合の接続性を向上できる。一方、最終モードが第2省電力モードである場合には、次回の初期モードは第1省電力モードとなる。最終モードが第2省電力モードである場合には次回起動時もまだ携帯機9は車両Vaから離れた位置に存在する可能性がある。上記構成によれば、携帯機9は車両Vaから離れた位置で起動した際にアドバタイズ信号を高頻度で送信するおそれを低減できる。
【0107】
なお、ステップS204は、強振動状態か否かを判定するステップであっても良い。またステップS204は、節電開始条件が充足しているか否かを判定するステップであってもよい。ステップS208は、次回の初期モードを第2省電力モードに設定するステップであっても良い。
【0108】
上述した実施形態では、アドバタイズインターバルを長くすることによって消費電力を低減する態様について述べたが、第2省電力モードの実現方法はこれに限定されない。アドバタイズ信号の送信頻度は多様な方法で削減可能である。図12は一般的なアドバタイズの流れを示す図である。一般的なアドバタイズにおいては、Ch37、Ch38、Ch39のそれぞれでアドバタイズ信号を送信する処理をアドバタイズの1セットとして、これを所定周期で繰り返す。図12は、第1省電力モードにおける第1無線モジュール92の作動を示す図と解されて良い。第2省電力モードは、図13図14図15に示すように、1つ又は2つのチャネルでのアドバタイズ信号の送信をスキップ(停止)するモードであって良い。アドバタイズインターバル自体は、第1省電力モードと第2省電力モードとで同じであってよい。
【0109】
すなわち、第2省電力モードは、第1省電力モードと同じ間隔でアドバタイズを実施するものの、38Chにおけるアドバタイズ信号の送信をスキップするモードであってよい。なお、アドバタイズ信号の送信をスキップするチャネルであるスキップチャネルは、37Ch又は39Chであってもよい。
【0110】
スキップチャネルは固定ではなくアドバタイズインターバルごとに変更されて良い。図14図15は、アドバタイズインターバルごとに、アドバタイズ信号を送信するチャネルの組み合わせを変更するパターンを示している。図14は、1つのアドバタイズにおいてアドバタイズ信号の送信を行うチャネルが1つに制限されているパターンを示している。図15は、スキップチャネル数が1つに設定されてあって、かつ、1つのスキップチャネルを順番に変更するパターンを示している。
【0111】
第2省電力モードにおけるアドバタイズの実行規則が上記のように設定されている構成においても、第2省電力モードは第1省電力モードよりもアドバタイズ信号の送信頻度が小さくなる。ひいては、第2省電力モードは第1省電力モードよりも消費電力が小さいモードとなる。
【0112】
ペリフェラルにおける消費電力の低減は、アドバタイズ信号の送信電力の低減によって実現されても良い。第2省電力モードは、第1省電力モードと比較して、アドバタイズ信号の送信電力が所定量低減されたモードであって良い。その場合、第2省電力モードと第1省電力モードとにおいて、アドバタイズインターバルは同じであってよい。当該設定によっても、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0113】
上述したように、待機状態における省電力化は、(A)アドバタイズインターバルの拡張、(B)チャネルの削減、及び、(C)送信電力の低減の少なくとも何れか1つによって実現されて良い。なお、(B)チャネルの削減は、(B1)スキップチャネルを固定とするパターンと、(B2)スキップチャネルを動的に変更するパターンとで区別されて良い。第2省電力モードは、図16に示すように、多様な方法の組み合わせによって実現されていて良い。すなわち、第2省電力モードは、図16に示す13のパターンの何れであってもよい。例えば図16に示す第7のパターンは、(A)アドバタイズインターバルの拡張と、(C)送信電力の低減の両方を採用したモードを表している。
【0114】
なお、第1省電力モードは、通常モードに比べて送信電力が小さく設定されたモードであっても良い。その場合、第1省電力モードのアドバタイズインターバルは、通常モードのアドバタイズインターバルと同じであっても良いし、第1省電力モードのアドバタイズインターバルよりも長くともよい。
【0115】
以上では、第1無線モジュール92が、通常モードに比べて省電力な待機モードとして、第1省電力モードと第2省電力モードのように、複数種類の省電力モードを備える態様について説明した。他の実施形態において、第1無線モジュール92が備える省電力モードは1つであってもよい。その場合の省電力モードは、前述の第1省電力モードに相当するものであってもよいし、第2省電力モードに相当するものであってもよい。実施形態における第2省電力モードは、単なる省電力モードに置き換えられても良い。
【0116】
図17は、第1無線モジュール92が、待機モードとして通常モードと唯一の省電力モードを備える場合の、待機状態におけるモード遷移図である。休止モードから通常モードへの移行条件は、第1閾値以上の加速度(振動)を検出した場合であってよい。第1無線モジュール92は、通常モード時、通常モード継続時間が切替時間以上となるか、又は、上述した節電条件が充足した場合に、省電力モードに移行してよい。ここでの節電条件とは、通常モード継続時間以外のパラメータに対する条件と解されて良い。節電条件は、切替時間の経過を待たずに省電力モードへ移行する条件であることから、即時節電条件と言い換えられて良い。
【0117】
携帯機9に作用する加速度(振動)が所定条件を充足した場合、例えば状態判定時間における強振動検出数が節電開始値以上である場合に、第1無線モジュール92は省電力モードに移行して良い。また、他車両からの近距離通信信号の受信状況が所定条件を充足した場合、例えば状態判定時間における車両信号受信数が第1受信閾値未満である場合に、第1無線モジュール92は省電力モードに移行して良い。第1無線モジュール92は上述した再活性化条件が充足した場合に、省電力モードから通常条件に復帰して良い。第1無線モジュール92は、通常モード時又は省電力モード時において、第1閾値以上の加速度が検出されていない状態が休止時間継続した場合に休止モードに移行してよい。
【0118】
その他、携帯機9は振動センサと加速度センサ91の両方を備えていて良い。ここでの振動センサとは、振動の有る/無しのみを検出可能な簡素なセンサであってよい。例えば振動センサは、ケース内における導電体ボールなどといった可動電極端子が、振動によって固定電極端子と接触/非接触することで、出力レベル(オン/オフ)が変化するセンサであってよい。このような簡素な振動センサは、加速度の大きさを検出可能な加速度センサ91に比べて、暗電流が小さい。携帯機9が振動センサを備える場合、振動センサが振動を検出していない場合には加速度センサ91もまた動作を停止するように構成されていて良い。例えば図18に示すように携帯機9は、振動センサが振動を検知したことに基づいて(S301)、加速度センサ91が駆動開始するとともに、第1無線モジュール92が休止モードから通常モードに移行して良い(S302)。その後、携帯機9は振動センサが振動を検知しない状態が休止時間継続したことに基づいて、加速度センサ91が停止し、かつ、第1無線モジュール92が休止モードに移行するように構成されていてよい(S303)。当該構成によれば、待機状態における消費電力をより一層低減できる。
【0119】
その他、デバイスコントローラ94の機能は、第1無線モジュール92のコントローラ923が備えていても良い。あるいは、コントローラ923の機能は、デバイスコントローラ94が備えていても良い。コントローラ923とデバイスコントローラ94は統合されていて良い。携帯機9内の機能配置は適宜変更されて良い。
【0120】
携帯機9と位置判定装置1との通信方式が所定方式に相当する。所定方式は、Bluetooth LEに限定されず、Bluetooth Classicや、Wi-Fi(登録商標)、EnOcean(登録商標)、Zigbee(登録商標)などであってもよい。
【0121】
<付言>
本開示に示す種々のフローチャートは何れも一例であって、フローチャートを構成するステップの数や、処理の実行順は適宜変更可能である。各フローチャートに示す制御は矛盾のない範囲で組み合わせて/並列的に実行されてよい。取得、判定、検出、生成、及び算出といった表現は相互に言い換えられて良い。或る装置が或るデータを取得することには、当該装置が他の装置/センサから入力された信号を元に当該データを生成することも含まれる。
【0122】
本開示に記載の装置、システム、並びにそれらの手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウェア論理回路を用いて実現されてもよい。本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。
【0123】
コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションを含む。コンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(non- transitory tangible storage medium)に記憶されていてよい。コンピュータプログラムの記録媒体は、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等、多様な媒体であってよい。
【符号の説明】
【0124】
Va 車両、1 位置判定装置、2 アンカー、9 携帯機(携帯デバイス)、10 車載システム、91 加速度センサ(振動検出部)、92 第1無線モジュール(無線通信部)、93 第2無線モジュール、94 デバイスコントローラ、921 アンテナ、922 RFコア、923 コントローラ、E1 プロセッサ、E2 メモリ、E3 ストレージ
図1
図2
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