(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158417
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 24/14 20060101AFI20241031BHJP
B43K 24/18 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B43K24/14
B43K24/18 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073605
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100196047
【弁理士】
【氏名又は名称】柳本 陽征
(72)【発明者】
【氏名】大池 英郎
【テーマコード(参考)】
2C353
【Fターム(参考)】
2C353HA02
2C353HA09
2C353HE02
2C353HE03
2C353HE05
2C353HE12
(57)【要約】
【課題】複数の筆記体から1つの筆記体を選択して突出させることが可能な筆記具において、筆記体の選択動作が必要ないときに特定の筆記体のみを突出させることが可能な筆記具を提供すること。
【解決手段】筆記具10は、軸筒20と、軸筒20内に配置された複数の筆記体15と、筆記体15を出没させる出没機構30と、複数の筆記体15から選択された1つの筆記体15を出没機構30により突出させることが可能な選択可能状態と、複数の筆記体15のうちの1つの筆記体15のみを出没機構30により突出させることが可能な選択不能状態と、を切り替える切替機構70と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒と、
前記軸筒内に配置された複数の筆記体と、
前記筆記体を出没させる出没機構と、
複数の前記筆記体から選択された1つの前記筆記体を前記出没機構により突出させることが可能な選択可能状態と、複数の前記筆記体のうちの1つの前記筆記体のみを前記出没機構により突出させることが可能な選択不能状態と、を切り替える切替機構と、を備えた、筆記具。
【請求項2】
前記出没機構は、複数の前記筆記体のうちの1つの前記筆記体を前方へ向けて押圧可能な押圧棒を含み、
前記切替機構は、前記選択可能状態において前記押圧棒を揺動可能とし、前記選択不能状態において前記押圧棒を揺動不能とする、請求項1に記載の筆記具。
【請求項3】
前記出没機構は、前記押圧棒の中間部分を保持する保持部材を含む、請求項2に記載の筆記具。
【請求項4】
前記切替機構は、軸方向に移動可能なスライド部材を含み、
前記スライド部材が前進すると前記押圧棒が揺動不能となり、前記スライド部材が後退すると前記押圧棒が揺動可能となる、請求項2に記載の筆記具。
【請求項5】
前記スライド部材の前端に凹部が形成されており、
前記スライド部材が前進すると前記押圧棒の後端部が前記凹部内に位置して、前記押圧棒が揺動不能となる、請求項4に記載の筆記具。
【請求項6】
前記筆記体の数と同数の前記凹部を有する、請求項5に記載の筆記具。
【請求項7】
前記軸筒の後端部に取り付けられた操作部を有し、
前記操作部を周方向に回転させることにより、前記スライド部材が軸方向に移動する、請求項4に記載の筆記具。
【請求項8】
前記軸筒は、前端開口部を有する前軸と、前記前軸の後方に位置する後軸とを含み、
前記出没機構は、前記後軸を前記前軸に向けて前進させることにより、複数の前記筆記体のうちの1つの前記筆記体の先端部を前記前端開口部から突出させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の筆記体を有し、この複数の筆記体から1つの筆記体を選択して突出させることが可能な筆記具(特許文献1参照)が知られている。特許文献1に開示された筆記具は、黒色のボールペン、赤色のボールペン及びシャープペンシルの3つの筆記体を備えている。この筆記具の内部には、振子式押し棒が設けられている。筆記具の軸筒の表面には、黒色のボールペン、赤色のボールペン及びシャープペンシルのそれぞれを示すマークが周方向に並べて配置されている。所望の筆記体を示すマークが鉛直方向の上側に位置するように筆記具を保持すると、当該マークに対応した筆記体が鉛直方向の下側に配置される。この状態で筆記具を傾けると、振子式押し棒の先端部が、鉛直方向の下側に配置された所望の筆記体の後方に位置する。その後、鞘軸を前方へ向けて押圧すると、所望の筆記体が前方へ移動し、当該筆記体の先端部が軸筒の先端開口部から突出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の筆記具では、筆記体を軸筒の先端開口部から突出させるたびに、所望の筆記体を示すマークが鉛直方向の上側に位置するように筆記具を保持する動作が必要であった。使用者によっては、常にこのような動作が必要であることを煩わしく感じるおそれがある。例えば、このような筆記具では、特定の筆記体の使用頻度が他の筆記体の使用頻度と比較して多いことがある。この場合、筆記具が、通常は筆記具の向きに関わらず鞘軸を前方へ向けて押圧すると当該特定の筆記体が突出し、他の筆記体を使用したい場合にのみ選択動作が必要とされるように構成されていると、筆記具の選択操作が簡単になり得る。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、複数の筆記体から1つの筆記体を選択して突出させることが可能な筆記具において、筆記体の選択動作が必要ないときに特定の筆記体のみを突出させることが可能な筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による筆記具は、
[1]軸筒と、
前記軸筒内に配置された複数の筆記体と、
前記筆記体を出没させる出没機構と、
複数の前記筆記体から選択された1つの前記筆記体を前記出没機構により突出させることが可能な選択可能状態と、複数の前記筆記体のうちの1つの前記筆記体のみを前記出没機構により突出させることが可能な選択不能状態と、を切り替える切替機構と、を備えた、筆記具、である。
【0007】
本発明による筆記具は、
[2]前記出没機構は、複数の前記筆記体のうちの1つの前記筆記体を前方へ向けて押圧可能な押圧棒を含み、
前記切替機構は、前記選択可能状態において前記押圧棒を揺動可能とし、前記選択不能状態において前記押圧棒を揺動不能とする、[1]に記載の筆記具、である。
【0008】
本発明による筆記具は、
[3]前記出没機構は、前記押圧棒の中間部分を保持する保持部材を含む、[2]に記載の筆記具、である。
【0009】
本発明による筆記具は、
[4]前記切替機構は、軸方向に移動可能なスライド部材を含み、
前記スライド部材が前進すると前記押圧棒が揺動不能となり、前記スライド部材が後退すると前記押圧棒が揺動可能となる、[2]又は[3]に記載の筆記具、である。
【0010】
本発明による筆記具は、
[5]前記スライド部材の前端に凹部が形成されており、
前記スライド部材が前進すると前記押圧棒の後端部が前記凹部内に位置して、前記押圧棒が揺動不能となる、[4]に記載の筆記具、である。
【0011】
本発明による筆記具は、
[6]前記筆記体の数と同数の前記凹部を有する、[5]に記載の筆記具、である。
【0012】
本発明による筆記具は、
[7]前記軸筒の後端部に取り付けられた操作部を有し、
前記操作部を周方向に回転させることにより、前記スライド部材が軸方向に移動する、[4]~[6]のいずれか1つに記載の筆記具、である。
【0013】
本発明による筆記具は、
[8]前記軸筒は、前端開口部を有する前軸と、前記前軸の後方に位置する後軸とを含み、
前記出没機構は、前記後軸を前記前軸に向けて前進させることにより、複数の前記筆記体のうちの1つの前記筆記体の先端部を前記前端開口部から突出させる、[1]~[7]のいずれか1つに記載の筆記具、である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の筆記体から1つの筆記体を選択して突出させることが可能な筆記具において、筆記体の選択動作が必要ないときに特定の筆記体のみを突出させることが可能な筆記具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態について説明するための図であって、筆記具の一例を示す外観図である。
【
図2】
図2は、選択可能状態且つ没入状態における筆記具の一例を示す縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の筆記具の一部を拡大して示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、筆記具の出没機構の一部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2の筆記具を選択可能状態且つ突出状態で示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図5の筆記具の一部を拡大して示す縦断面図である。
【
図7】
図7は、
図3のVII-VII線に対応する横断面図である。
【
図8】
図8は、筆記具の一部を選択不能状態且つ没入状態で示す縦断面図である。
【
図9】
図9は、筆記具の一部を選択不能状態且つ突出状態で示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0017】
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
【0018】
本明細書では、筆記具10の中心軸線Aが延びる方向(長手方向、縦断面図における上下方向)を軸方向da、軸方向daと直交する方向を径方向、中心軸線A周りの円周に沿った方向を周方向dcとする。また、軸方向daに沿って、ペン先側を前方とし、ペン先と反対側を後方とする。また、径方向に沿って、中心軸線Aに近づく側を内側又は内方、中心軸線Aから遠ざかる側を外側又は外方とする。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態について説明するための図であって、筆記具10の一例を示す外観図である。
図2は、選択可能状態且つ没入状態における筆記具10の一例を示す縦断面図である。
図3は、
図2の筆記具10の一部を拡大して示す縦断面図である。筆記具10は、筆記体15と、軸筒20と、出没機構30と、切替機構70とを備えている。
【0020】
筆記体15は、筆記具10のペン先となる部分を含む部材である。本実施形態の筆記体15としては、ボールペン、シャープペンシル、万年筆、サインペン、マーカーペン等のペン先を含む部材を用いることができる。筆記体15がボールペンのペン先を含む部材を含む場合、筆記体15は、ボールペンチップとインキ収容部とを含むボールペンレフィルであってもよい。また、筆記体15は、タッチパネル等の位置検出機能を有する入力面に対して入力を行うための、静電容量式スタイラスペン、電磁誘導式スタイラスペン、感圧式スタイラスペン等の電子入力用のペン先を含む部材を用いることもできる。
【0021】
筆記具10は、軸筒20内に配置された複数の筆記体15を有している。とりわけ本実施形態の筆記具10は、3つの筆記体15を有している。なお、これに限られず、筆記具10は、2つの筆記体15を有してもよいし、4つ以上の筆記体15を有してもよい。筆記体15は、それぞれ概ね軸方向daに沿って延びている。複数の筆記体15は、周方向dcに沿って並べて配置されている。例えば、複数の筆記体15は、周方向dcに沿って互いに等間隔(等角度間隔)を有して配置されている。
【0022】
軸筒20は、前軸21と後軸27とを含んでいる。軸筒20の中心軸線は、筆記具10の中心軸線Aと一致している。前軸21は、前端に設けられ、筆記体15の先端部が出没可能な前端開口部20aを有している。後軸27は、前軸21の後方に位置している。とりわけ、後軸27は、前軸21に対して軸方向daに移動可能に構成されている。
【0023】
前軸21は、使用者が筆記具10で筆記を行う際に、指でつかむことが意図されている。前軸21は、本体部22と、先端部23と、内筒体25とを含んでいる。先端部23は、本体部22の前方に位置している。本実施形態では、前端開口部20aは、先端部23の前端に形成されている。先端部23は、本体部22に対して直接に又は他の部材を介して連結されている。本実施形態では、先端部23を本体部22から取り外すことにより、筆記体15の交換を行うことが可能である。内筒体25は、本体部22の内部に配置されている。内筒体25は、本体部22に対して固定されている。内筒体25は、内面に係合溝26を有している(
図4参照)。本実施形態では、係合溝26は、内筒体25を径方向に貫通する貫通孔である。係合溝26内には、後述の保持部材50の第1凸部58及び環状部材64の第2凸部66が位置している。
【0024】
図1に示されているように、軸筒20(後軸27)の外周面には、複数の筆記体15にそれぞれ対応した複数のマーク28が設けられている。とりわけ、軸筒20には、筆記体15の数と同数のマーク28が設けられている。複数のマーク28は、周方向dcに沿って並べて配置されている。例えば、複数のマーク28は、周方向dcに沿って互いに等間隔(等角度間隔)を有して配置されている。対応する筆記体15及びマーク28は、中心軸線Aに対して互いに反対側に配置されている。すなわち、対応する筆記体15及びマーク28は、軸方向daから見て中心軸線A周りに互いに180度の角度を有して配置されている。したがって、あるマーク28が鉛直方向の上方に位置するように、使用者が筆記具10を保持すると、当該マーク28に対応する筆記体15は、鉛直方向の下方に位置するようになる。
【0025】
例えば、筆記体15が黒色のボールペンレフィルである場合、この筆記体15に対応するマーク28は、黒色を有するマークや、「黒」、「Black」、「B」等の文字であってもよい。筆記体15が赤色のボールペンレフィルである場合、この筆記体15に対応するマーク28は、赤色を有するマークや、「赤」、「Red」、「R」等の文字であってもよい。筆記体15がシャープペンシルのペン先を含む場合、この筆記体15に対応するマーク28は、シャープペンシルのペン先の形状を模したマーク、筆記芯の直径を表す数値等であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。
【0026】
出没機構30は、筆記具10を、軸筒20の前端開口部20aから筆記体15の先端部が没入する没入状態と、前端開口部20aから筆記体15の先端部が突出する突出状態と、を交互に切り換えるための機構である。筆記体15の出没動作が可能である限りにおいて、出没機構30の具体的構成は特に限られない。本実施形態では、出没機構30は、特開平8-183289号公報に記載された筆記体出没装置と同様に構成されている。
図2及び
図3では、本実施形態の筆記具10が没入状態において示されており、
図5及び
図6では、筆記具10が突出状態において示されている。
図4は、出没機構30の一部を示す斜視図である。
【0027】
本実施形態の出没機構30は、連結部材32と、第1弾発部材34と、押圧棒40と、保持部材50と、環状部材64と、第2弾発部材68と、を含んでいる。
【0028】
連結部材32は、筆記体15と連結される部材である。筆記体15の後端部が連結部材32の前端部に取り付けられることにより、筆記体15と連結部材32とが互いに連結される。出没機構30は、複数の連結部材32を含んでいる。出没機構30は、筆記体15の数と同数の連結部材32を有してもよい。例えば、筆記具10が3つの筆記体15を有している場合、出没機構30は3つの連結部材32を有してもよい。1つの連結部材32に対して、1つの筆記体15が取り付けられる。
【0029】
第1弾発部材34は、連結部材32と軸筒20との間に配置されている。第1弾発部材34は、例えばコイルスプリングである。第1弾発部材34は、連結部材32の外面に形成された段部と、軸筒20(前軸21、本体部22)の内面に形成された段部との間に圧縮状態で配置されている。これにより、第1弾発部材34は、連結部材32を後方へ向けて付勢している。
【0030】
押圧棒40は、概ね軸方向daに延びる棒状部材である。押圧棒40は、複数の筆記体15のうちの1つの筆記体15を前方へ向けて押圧可能に構成されている。本実施の形態では、押圧棒40は、連結部材32を介して筆記体15を前方へ向けて押圧可能である。
図2及び
図3に示された選択可能状態において、押圧棒40は、揺動可能に保持部材50に保持されている。
【0031】
押圧棒40は、押圧棒40の全長の中間部分に位置する大径部42と、大径部42の前方に位置する押圧部材44と、大径部42の後方に位置する後方部材46と、を含んでいる。大径部42、押圧部材44及び後方部材46は、いずれも略円柱状の形状を有している。大径部42の直径は、押圧部材44の直径及び後方部材46の直径よりも大きい。なお、大径部42、押圧部材44及び後方部材46の直径は、押圧棒40の中心軸線に直交する方向に計測した寸法である。押圧棒40は、全体が単一の部材で形成されてもよいし、複数の部材が組み合わされて構成されてもよい。
【0032】
保持部材50は、押圧棒40を保持する部材である。とりわけ、保持部材50は、押圧棒40の中間部分を保持する。保持部材50は、略円筒形状を有している。保持部材50は、後軸27に対して固定されている。保持部材50は、前方凹部52と、後方凹部54と、貫通孔56と、第1凸部58とを有している。前方凹部52は、保持部材50の前面から後方へ向かって形成された略円柱状の凹部である。後方凹部54は、保持部材50の後面から前方へ向かって形成された略円柱状の凹部である。貫通孔56は、軸方向daに沿って延びるとともに、前方凹部52及び後方凹部54を接続している。
【0033】
押圧棒40は、貫通孔56内を軸方向daに貫通している。押圧棒40の押圧部材44の後方側の一部は、前方凹部52内に位置している。押圧棒40の後方部材46は、後方凹部54内に位置している。貫通孔56には、収容凹部57が形成されている。押圧棒40の大径部42が収容凹部57内に収容されることにより、押圧棒40が保持部材50に保持されている。本実施形態では、大径部42は、実質的に押圧棒40の揺動の中心になっている。すなわち、押圧棒40は、大径部42を中心として径方向に揺動する。
【0034】
第1凸部58は、保持部材50の外周面から径方向の外側へ向かって突出している。第1凸部58は、内筒体25の係合溝26内に位置している。
【0035】
前方凹部52内には、押圧棒40の大径部42が収容凹部57から抜け出ることを防止するための抜け止め部材62が配置されている。抜け止め部材62は、前方凹部52内へ前方から圧入されている。これにより、抜け止め部材62は、保持部材50に対して固定されている。なお、抜け止め部材62は、前方凹部52から前方へ抜けることが抑制されていればよく、保持部材50に対して周方向に回転可能に構成されてもよい。
【0036】
保持部材50の前方における抜け止め部材62の外側には、環状部材64が配置されている。環状部材64は、略環状の形状を有する。環状部材64は、抜け止め部材62の前端の外側に形成された段部と、保持部材50の前端との間に配置されている。また、環状部材64は、保持部材50に対して周方向に回転可能に構成されている。抜け止め部材62が保持部材50に対して固定されている場合、環状部材64は、抜け止め部材62に対して周方向に回転可能に構成される。環状部材64は、第2凸部66を有している。第2凸部66は、環状部材64の外周面から径方向の外側へ向かって突出している。第2凸部66は、保持部材50の第1凸部58よりも前方に位置している。第2凸部66は、第1凸部58とともに内筒体25の係合溝26内に位置している。
【0037】
第2弾発部材68は、後軸27を前軸21に対して後方へ付勢する部材である。第2弾発部材68は、例えばコイルスプリングである。第2弾発部材68は、前軸21(本体部22)の外面に形成された段部と、後軸27の内面に形成された段部との間に配置されている。
【0038】
次に、主に
図2、
図3、
図5及び
図6を参照して、出没機構30による出没動作について説明する。
図2及び
図3に示された没入状態において、所望の筆記体15に対応するマーク28が上方に位置するように、使用者が筆記具10を保持すると、当該マーク28に対応する筆記体15が鉛直方向の下方(
図2、
図3、
図5及び
図6における右側)に位置する。
図2、
図3、
図5及び
図6に示された選択可能状態では、押圧棒40は揺動可能に保持部材50に保持されている。したがって、押圧棒40の押圧部材44は、重力の作用により鉛直方向の下方に位置するようになる。このとき、押圧棒40の前端は、下方に位置した筆記体15に連結された連結部材32と、軸方向daに沿って対面する。
【0039】
この状態で使用者が後軸27を前方へ押圧すると、第1弾発部材34及び第2弾発部材68の付勢力に抗して、後軸27、保持部材50及び押圧棒40が前方へ移動する。この過程で、押圧棒40の前端が軸方向daに対面した連結部材32を前方に押圧する。そして、連結部材32及び当該連結部材32に連結された筆記体15が前方へ移動し、筆記体15の先端部が、軸筒20の前端開口部から突出する。その後、前軸21と後軸27とは、互いに軸方向daの相対移動が規制される。すなわち、後軸27の前軸21に対する後退移動が規制される。これにより、筆記具10は、
図5及び
図6に示された突出状態となる。
【0040】
本実施形態では、突出状態において、前軸21に対して後軸27を周方向に回転させることにより、前軸21と後軸27との間の軸方向daの相対移動の規制が解除される。これにより、第1弾発部材34及び第2弾発部材68の付勢力によって、後軸27、保持部材50、押圧棒40、連結部材32及び筆記体15が後方へ向けて移動する。このとき、筆記体15の先端部が、軸筒20の前端開口部から軸筒20の内部へ没入する。これにより、筆記具10は、
図2及び
図3に示された没入状態となる。
【0041】
次に、本実施形態の切替機構70について説明する。
図7は、
図3のVII-VII線に対応する横断面図である。
図8は、筆記具10の一部を選択不能状態且つ没入状態で示す縦断面図である。
図9は、筆記具10の一部を選択不能状態且つ突出状態で示す縦断面図である。
図10は、
図8のX-X線に対応する横断面図である。
【0042】
切替機構70は、筆記具10を、選択可能状態と選択不能状態とに切り替えるための機構である。選択可能状態とは、複数の筆記体15から選択された1つの筆記体15を出没機構30により突出させることが可能な状態を意味する。選択不能状態とは、複数の筆記体15のうちの1つの筆記体15のみを出没機構30により突出させることが可能な状態を意味する。
【0043】
本実施形態の切替機構70は、操作部72と、ネジ部材74と、スライド部材80とを含んでいる。本実施形態の切替機構70は、選択可能状態において押圧棒40を揺動可能とし、選択不能状態において押圧棒40を揺動不能とすることが可能に構成されている。
【0044】
操作部72は、筆記具10を選択可能状態と選択不能状態との間で切り替える際に、使用者が操作することが意図された部分である。操作部72は、後軸27の後端部に取り付けられている。ネジ部材74は、操作部72に対して固定されている。ネジ部材74は、中心軸線Aに沿って延びる貫通孔を有する略円筒状の形状を有している。ネジ部材74の貫通孔の内面には、雌ネジ部76が形成されている。操作部72及びネジ部材74は、後軸27に対して中心軸線A周りに回転可能に構成されている。とりわけ、操作部72及びネジ部材74は、後軸27に対して一体的に中心軸線A周りに回転可能である。
【0045】
スライド部材80は、後軸27に対して軸方向daに移動可能に構成された部材である。スライド部材80は、後方部82と、前方部86とを含んでいる。後方部82は、中心軸線Aに沿って延びる棒状の形状を有している。前方部86は、後方部82の前方に位置している。後方部82の外周面には、雄ネジ部84が形成されている。雄ネジ部84は、ネジ部材74の雌ネジ部76に螺合している。これにより、ネジ部材74が中心軸線A周りに回転すると、スライド部材80は、ネジ部材74に対して軸方向daに移動する。したがって、スライド部材80は、ネジ部材74に対して軸方向daに移動可能に構成されている。これにより、操作部72を中心軸線A周りに(周方向に)回転させることにより、スライド部材80が軸方向daに移動する。
【0046】
前方部86は、保持部材50の後方凹部54内に位置している。前方部86の外周面には、径方向の外側に突出した突出部87が形成されている。本実施形態では、突出部87は、軸方向daに平行に延びている。保持部材50の後方凹部54の内面には、軸方向daに平行に延びる溝部59が形成されている。突出部87は、溝部59内に位置している。これにより、保持部材50に対するスライド部材80の周方向の回転が規制されている。スライド部材80は、保持部材50に対して軸方向daに移動可能且つ周方向に回転不能である。
【0047】
前方部86には、凹部88が形成されている。とりわけ、スライド部材80は、複数の凹部88を有している。とりわけ、スライド部材80は、筆記体15の数と同数の凹部88を有している。
図7に示されているように、本実施形態では、スライド部材80は、3つの凹部88を有している。複数の凹部88は、複数の筆記体15にそれぞれ対応して配置されている。複数の凹部88は、周方向dcに沿って並べて配置されている。例えば、複数の凹部88は、周方向dcに沿って互いに等間隔(等角度間隔)を有して配置されている。対応する筆記体15と凹部88とは、中心軸線Aに対して互いに反対側に配置されている。すなわち、対応する筆記体15と凹部88とは、軸方向daから見て中心軸線A周りに互いに180度の角度を有して配置されている。したがって、ある筆記体15が鉛直方向の下方に位置するように、使用者が筆記具10を保持すると、当該筆記体15に対応する凹部88は、鉛直方向の上方に位置するようになる。
【0048】
凹部88は、前方部86の前端面から後方に向かって延びている。したがって、凹部88は、少なくとも前方部86の前端面に開口している。本実施形態では、凹部88は、前方部86の前端面及び側面の両方に開口している。凹部88は、押圧棒40(後方部材46)の後端部を収容可能な形状及び寸法を有している。例えば、凹部88の幅は、押圧棒40の後端部の直径よりも大きい。
【0049】
押圧棒40の後端部と凹部88とが軸方向daに対面した状態でスライド部材80が前進すると、押圧棒40の後端部が凹部88内に位置するようになる(
図8及び
図10参照)。このとき、押圧棒40は揺動不能になる。また、スライド部材80が後退すると、押圧棒40の後端部が凹部88から抜け出る。このとき、押圧棒40は揺動可能になる。
【0050】
次に、主に
図3及び
図8を参照しながら切替機構70による切替動作について説明する。
図3は、選択可能状態における筆記具10を示しており、
図8は、選択不能状態における筆記具10を示している。
【0051】
図3に示された選択可能状態の筆記具10において、所望の筆記体15に対応するマーク28が上方に位置するように、使用者が筆記具10を保持すると、当該マーク28に対応する筆記体15が鉛直方向の下方(
図3における右側)に位置する。
図3に示された選択可能状態では、押圧棒40は揺動可能に保持部材50に保持されている。したがって、押圧棒40の押圧部材44は、重力の作用により鉛直方向の下方に位置するようになる。このとき、押圧棒40の前端は、下方に位置した筆記体15に連結された連結部材32と、軸方向daに沿って対面する。また、押圧棒40の後端は、下方に位置した筆記体15に対応する凹部88と、軸方向daに沿って対面する。
【0052】
この状態で使用者が操作部72を中心軸線A周りに回転させると、操作部72に固定されたネジ部材74も中心軸線A周りに回転する。スライド部材80の雄ネジ部84は、ネジ部材74の雌ネジ部76に螺合している。したがって、ネジ部材74が中心軸線A周りに回転すると、スライド部材80は、ネジ部材74に対して前方へ移動する。このとき、スライド部材80は、後軸27に対して前方へ移動する。これにより、押圧棒40の後端部が凹部88内に位置するようになる(
図8参照)。このとき、押圧棒40は揺動不能になる。押圧棒40が揺動不能となることにより、筆記具10は、選択不能状態になる。
【0053】
図8に示された選択不能状態では、押圧棒40の後端部が凹部88内に位置するため、押圧棒40は揺動不能になっている。このとき、押圧棒40の前端は、特定の筆記体15の後方に位置している。具体的には、押圧棒40の前端は、特定の筆記体15に連結された連結部材32と、軸方向daに対面している。この状態で他の筆記体15に対応するマーク28が上方に位置するように、使用者が筆記具10を保持しても、押圧棒40は揺動せず、押圧棒40の前端は、前記特定の筆記体15の後方に位置したままである。したがって、この状態では、複数の筆記体15から他の筆記体15を選択することはできない。選択不能状態では、後軸27が前方へ移動すると、必ず前記特定の筆記体15が突出される。具体的には、前記特定の筆記体15の先端部が軸筒20の前端開口部20aから突出される。
【0054】
本実施形態の筆記具10は、軸筒20と、軸筒20内に配置された複数の筆記体15と、筆記体15を出没させる出没機構30と、複数の筆記体15から選択された1つの筆記体15を出没機構30により突出させることが可能な選択可能状態と、複数の筆記体15のうちの1つの筆記体15のみを出没機構30により突出させることが可能な選択不能状態と、を切り替える切替機構70と、を備える。
【0055】
このような筆記具10では、選択可能状態と選択不能状態とを切り替える切替機構70を備えていることにより、選択不能状態において特定の筆記体15のみを突出させることが可能になる。すなわち、複数の筆記体15から1つの筆記体15を選択して突出させることが可能な筆記具10において、筆記体15の選択動作が必要ないときに特定の筆記体15のみを突出させることが可能になる。
【0056】
本実施形態の筆記具10では、出没機構30は、複数の筆記体15のうちの1つの筆記体15を前方へ向けて押圧可能な押圧棒40を含み、切替機構70は、選択可能状態において押圧棒40を揺動可能とし、選択不能状態において押圧棒40を揺動不能とする。
【0057】
このような筆記具10によれば、複数の筆記体15のうちの1つの筆記体15を選択する押圧棒40を、選択不能状態において揺動不能とすることにより、筆記具10を選択不能状態にすることができる。したがって、部品点数の増加を抑制することができる。
【0058】
本実施形態の筆記具10では、出没機構30は、押圧棒40の中間部分を保持する保持部材50を含む。
【0059】
このような筆記具10によれば、選択可能状態においては押圧棒40を容易に揺動させ、選択不能状態においては押圧棒40を揺動不能にすることができる。したがって、選択可能状態と選択不能状態とを適切に切り替えることができるとともに、意図された筆記体15を適切に出没させることができる。
【0060】
本実施形態の筆記具10では、切替機構70は、軸方向daに移動可能なスライド部材80を含み、スライド部材80が前進すると押圧棒40が揺動不能となり、スライド部材80が後退すると押圧棒40が揺動可能となる。
【0061】
このような筆記具10によれば、部品点数が少なく簡単な構成により、押圧棒40の揺動の可否を切り替えることができる。
【0062】
本実施形態の筆記具10では、スライド部材80の前端に凹部88が形成されており、スライド部材80が前進すると押圧棒40の後端部が凹部88内に位置して、押圧棒40が揺動不能となる。
【0063】
このような筆記具10によれば、スライド部材80が前進した際に、押圧棒40の後端部の揺動を凹部88により規制できるので、簡単な構成で押圧棒40の揺動を規制することができる。
【0064】
本実施形態の筆記具10では、筆記体15の数と同数の凹部88を有する。
【0065】
このような筆記具10によれば、簡単な構成で筆記具10の全ての筆記体15に対して、当該筆記体15のみを出没機構30により突出させることが可能な選択不能状態を実現することができる。
【0066】
本実施形態の筆記具10では、軸筒20の後端部に取り付けられた操作部72を有し、操作部72を周方向に回転させることにより、スライド部材80が軸方向daに移動する。
【0067】
このような筆記具10によれば、簡単な操作で選択可能状態と選択不能状態とを切り替えることができる。
【0068】
本実施形態の筆記具10では、軸筒20は、前端開口部20aを有する前軸21と、前軸21の後方に位置する後軸27とを含み、出没機構30は、後軸27を前軸21に向けて前進させることにより、複数の筆記体15のうちの1つの筆記体15の先端部を前端開口部20aから突出させる。
【0069】
このような筆記具10によれば、出没機構30の操作と切替機構70の操作とが互いに異なるので、使用者が出没操作と切替操作とを間違えることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 筆記具
15 筆記体
20 軸筒
20a 前端開口部
21 前軸
22 本体部
23 先端部
25 内筒体
26 係合溝
27 後軸
28 マーク
30 出没機構
32 連結部材
34 第1弾発部材
40 押圧棒
42 大径部
44 押圧部材
46 後方部材
50 保持部材
52 前方凹部
54 後方凹部
56 貫通孔
57 収容凹部
58 第1凸部
59 溝部
62 抜け止め部材
64 環状部材
66 第2凸部
68 第2弾発部材
70 切替機構
72 操作部
74 ネジ部材
76 雌ネジ部
80 スライド部材
82 後方部
84 雄ネジ部
86 前方部
87 突出部
88 凹部
A 中心軸線
da 軸方向
dc 周方向