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  • 特開-粒状肥料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158419
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】粒状肥料
(51)【国際特許分類】
   C05F 3/00 20060101AFI20241031BHJP
   C05G 5/12 20200101ALI20241031BHJP
【FI】
C05F3/00
C05G5/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073607
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】520152467
【氏名又は名称】朝日アグリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108947
【弁理士】
【氏名又は名称】涌井 謙一
(74)【代理人】
【識別番号】100117086
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典弘
(74)【代理人】
【識別番号】100124383
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一永
(74)【代理人】
【識別番号】100173392
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 貴宏
(74)【代理人】
【識別番号】100189290
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 直人
(72)【発明者】
【氏名】小林 新
(72)【発明者】
【氏名】見城 貴志
(72)【発明者】
【氏名】石川 伸二
(72)【発明者】
【氏名】堀口 享平
(72)【発明者】
【氏名】松岡 英紀
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃大
(72)【発明者】
【氏名】飯島 克
(72)【発明者】
【氏名】浅野 智孝
(72)【発明者】
【氏名】木村 亨
(72)【発明者】
【氏名】坂下 淳
(72)【発明者】
【氏名】丸山 精一
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 勉
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA01
4H061CC36
4H061CC41
4H061EE61
4H061FF07
4H061FF08
4H061GG07
4H061GG19
4H061GG26
4H061GG41
4H061GG42
4H061GG52
4H061GG56
4H061KK09
4H061LL15
4H061LL25
4H061LL30
(57)【要約】
【課題】牛糞堆肥を原料とし、側条施肥機などによる機械施肥対応可能な粒状肥料。
【解決手段】牛糞堆肥を使用した、粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下の粒状肥料。前記牛糞堆肥の使用割合が10~70質量%である。前記粒状肥料で使用している前記牛糞堆肥の水洗浮遊物割合が乾物値で3%以下である。前記粒状肥料で使用している前記牛糞堆肥のADL(酸性デタージェント可溶性リグニン)含有率が17%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牛糞堆肥を使用した、粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下の粒状肥料。
【請求項2】
前記牛糞堆肥の使用割合が10~70質量%である請求項1記載の粒状肥料。
【請求項3】
前記牛糞の使用割合が30~50質量%である請求項2記載の粒状肥料。
【請求項4】
前記粒状肥料で使用している前記牛糞堆肥の水洗浮遊物割合が乾物値で3%以下である請求項1又は2記載の粒状肥料。
【請求項5】
前記粒状肥料で使用している前記牛糞堆肥のADL(酸性デタージェント可溶性リグニン)含有率が17%以下である請求項1又は2記載の粒状肥料。
【請求項6】
前記粒状肥料で使用している前記牛糞堆肥の水洗浮遊物割合が乾物値で3%以下で、前記牛糞堆肥のADL(酸性デタージェント可溶性リグニン)含有率が17%以下である請求項1又は2記載の粒状肥料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は粒状肥料に関し、特に、土づくり効果が高いが、粒状加工が難しい牛糞堆肥を原料とした粒状肥料及びその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的な人口増に対応する食料及び作物増産の為、肥料需要が増大し、世界的に肥料価格は高騰傾向となっている。我が国は、肥料資源を海外に依存しており、今後の食料安全保障の観点から国内資源活用の機運が高まり、中でも家畜糞堆肥活用が最も期待されている。
【0003】
一方、近年、異常気象が多く、作物の安定生産には有機物還元施用による土づくりが重要とされている中、農家の高齢化によるバラ堆肥の散布労力不足から堆肥等の施用が年々減少傾向となり、耕地の地力低下が大きな問題となっている。
【0004】
この様な状況を改善する為、堆肥の広域流通、機械散布に対応する為、堆肥の粒状化が求められ、各種粒状化方式が提案されている。しかし、発生量も多く、土作り効果の高い牛糞堆肥は畜舎の敷料混入率が高く、木質系副資材が多く含まれ、水分率も高い為、粒状加工は難しいとされている。
【0005】
この為、堆肥の粒状加工技術の主流は、有機系資材の造粒加工に適した押出造粒が主流となっているが形状は円柱状である。円柱状の粒状肥料は、流動性が悪く、ブロードキャスターなどの汎用的施肥機には一定の製品品質を維持できれば対応可能だが、水稲の主流な施肥方法である側条施肥などの精密な機械施肥や、低コストな複合肥料生産に対応する粒状配合向けの粒状肥料に対応する為には、流動性の良い球状が好ましい。
【0006】
堆肥などの有機質資材を原料に使用する粒状肥料として従来から提案されているものには以下のようなものがある。
【0007】
特許文献1には、肥料原料を押し出し造粒機で成型し、得られた成型品に水、有機溶媒又はこれらの混合物のいずれかを加え、次いで球形整粒機で成型する粒状肥料の製造方法及びかかる方法で得られる粒状肥料が提案されている。
【0008】
特許文献2には、畜糞、鶏糞などの堆肥を粒状に成形する造粒装置が提案されている。
【0009】
特許文献3には、有機汚泥、食品残渣、畜糞、等の有機廃棄物のボール状造粒と自然発酵により、木材腐朽菌の繁殖条件を整え、悪臭を抑制し、省エネルギーで効率的であるとする堆肥化処理方法とそれに用いる装置が提案されている。
【0010】
特許文献4には、有機性廃棄物の本来有する肥料としての特徴を活かして、保存性および機械施肥特性に優れるとする堆肥およびその製造方法が提案されている。
【0011】
しかし、上述したように、木質系副資材の混入率が高い牛糞堆肥での安定的な粒状加工の連続生産は困難であり、これが、依然として利用拡大のネック要因になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001-322888号公報
【特許文献2】特開2007-137731号公報
【特許文献3】特開2009-106828号公報
【特許文献4】特開2015-13779号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】畜産環境をめぐる情勢 令和3年3月 農林水産省」p4~6
【非特許文献2】最新農業技術土壌施肥編VOL.15p195~202
【非特許文献3】農文協、最新農業技術土壌施肥VOL15、p233 図2 堆肥化方式とその特徴
【非特許文献4】農文協 最新農業技術土壌施肥VOL15p231 図3 各種造粒方式と堆肥等の有機資材適正
【非特許文献5】全農グリーンレポートNo.514
【非特許文献6】農文協、最新農業技術土壌施肥編VOL.15、p126
【非特許文献7】農文協、最新農業技術土壌施肥編VOL.15、p127
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
堆肥などの有機質資材を原料に使用する粒状肥料については従来から種々の提案が行われているが、堆肥品質について言及している事例はなく、また出来た粒状品質について、機械施肥対応となる粒状品質にまで言及した事例はなかった。
【0015】
この発明は、牛糞堆肥を原料とし、側条施肥機などによる機械施肥対応可能な粒状肥料を提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した目的を達成する本願発明は次のように例示することができる。
[1]
牛糞堆肥を使用した、粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下の粒状肥料。
【0017】
[2]
前記牛糞堆肥の使用割合が10~70質量%である[1]の粒状肥料。
【0018】
[3]
前記牛糞の使用割合が30~50質量%である[2]の粒状肥料。
【0019】
[4]
前記粒状肥料で使用している前記牛糞堆肥の水洗浮遊物割合が乾物値で3%以下である[1]~[3]のいずれかの粒状肥料。
【0020】
[5]
前記粒状肥料で使用している前記牛糞堆肥のADL(酸性デタージェント可溶性リグニン)含有率が17%以下である[1]~[3]のいずれかの粒状肥料。
【0021】
[6]
前記粒状肥料で使用している前記牛糞堆肥の水洗浮遊物割合が乾物値で3%以下で、前記牛糞堆肥のADL(酸性デタージェント可溶性リグニン)含有率が17%以下である[1]~[3]のいずれかの粒状肥料。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、牛糞堆肥を原料とし、側条施肥機などによる機械施肥対応可能な粒状肥料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一般の牛糞堆肥を使用してアグレット造粒(湿式押出造粒+高速整粒)したときの装置を撮影した参考写真であって、(a)はダイス表面の詰まり及び破損の状態を撮影した参考写真、(b)はダイス裏面の木質系副資材の詰まり状態を撮影した参考写真。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願発明者は前記目的を達成するべく、肥料の製造に従来から使用されている有機原料、無機原料に牛糞堆肥を加えて粒状肥料を製造することを検討した。
【0025】
肥料法上の堆肥、有機質肥料、無機質肥料を混合し、粒状化した複合肥料とするもので、肥料法上は、混合堆肥複合肥料、特殊肥料等入り指定混合肥料となる本発明の粒状肥料を製造することにした。
【0026】
<牛糞堆肥の特性>
各畜種別飼育環境及び堆肥化の流れは非特許文献1の記載を参照できるが、牛舎で牛を飼う場合、稲ワラやオガクズ、モミガラなどの敷料を、牛の寝床に敷くのが一般的であることから、牛では敷料が多く使用され、鶏、豚では飼養形態の違いから畜舎での敷料等の使用割合自体が低い。
【0027】
牛糞堆肥の特性については非特許文献2の記載を参照できる。牛などの家畜糞尿には畜舎での上述した敷料に由来する木質系敷料が混入し、また発酵工程では原料家畜糞尿の水分が高い為、発酵前にも水分調整材が混合されることから、牛糞堆肥は、極めて木質系副資材の混入率が高く、粒度も粗い傾向がある。
【0028】
また、牛糞堆肥は、メタン発酵などが行われる以外は、糞尿も固液分離されず、水分調整の上、堆積発酵される事例が多く、木質系資材が多く含まれるので、長期醗酵による熟成を必要とし、出来た堆肥の水分率も高く、物性的にも流動性、凝集性が低く、極めて粒状加工に適さない物性となっている。
【0029】
前記の水分調整材は、堆肥材料の空隙率を高める目的で生糞に添加する資材である。家畜糞を堆肥化処理する場合、生糞のままでは空隙率(材料の気相の割合)が低く、通気性が不良であるために腐熟に長期間を要する。また、生糞は泥状または液状に近い形で排泄されるために堆肥化処理の作業性が悪い。そのため、通常は堆肥化を行なう前に生糞の水分を調整し、あらかじめ堆肥材料の通気性や作業性を改善する工程が必要になる。
【0030】
通気性が発現する目安としては30%以上の空隙率が必要とされており、具体的には、(1)水分調整資材を生糞に添加することで、堆肥材料の水分を相対的に低くして空隙率を高める方法(例えば、豚糞;水分62%以下、牛糞;水分72%以下)、(2)堆肥化前にあらかじめ堆肥材料を乾燥して空隙率を高める予備乾燥法(例えば、鶏糞;水分52%以下、豚糞;水分55%以下、牛糞;水分68%以下)などが採用されている。
【0031】
水分調整資材にはおがくずや籾殻、わらやバークなどの有機質資材や、パーライトなどの無機質資材が利用されるが、日本では有機質資材が用いられる場合が多い。
【0032】
<堆肥化方式>
堆肥化方式には、非特許文献3に記載されている数種の方式があり、牛糞堆肥では、堆積式が主流となっていて、これに攪拌方式であるロータリー式もしくはスクリュー式と組み合わせている事例が多い。
【0033】
牛糞堆肥では、堆積発酵方式が主流の為、ここでも水分調整として木質系副資材の添加が多くなる傾向となっている。堆積方式、攪拌方式いずれに於いても、先ずは発酵に最適な水分に調整する必要がある。
【0034】
牛の生糞は、通常、水分80%以上あり、発酵に最適な水分60~70%に調整するには低水分な水分調整材としてオガコ等の副資材を大量混合して発酵を促進する必要性がある。
【0035】
この様に牛糞では、畜舎での敷料と水分調整材として二重に副資材が混入する場合が多く、副資材としてオガコ等の木質系資材が主流である為、堆肥中の木質系資材混入率が高く、造粒加工上のネック要因となっている。
【0036】
一方、鶏、豚では経営規模も大きく企業型であり、環境対策もしやすい密閉縦型発酵方式の導入が多いこともあり、生糞の投入が可能なことから副資材を必要とせず、堆肥の粒度は細かくまた含水率も低いので粒状加工に適している。牛の場合、発酵エネルギーが低いことから密閉縦型発酵方式には適さず、密閉縦型方式の導入事例は極めて少ない。
【0037】
<堆肥入り複合肥料の造粒加工>
肥料の造粒方式には非特許文献4で紹介されている種々の方式がある。方式により堆肥等の有機資材の造粒加工に対して適性に違いがある。
【0038】
各造粒方式の概要は次のようになっている。
<転動造粒(ドラムor皿形造粒)>
転動するドラム型もしくは皿型の造粒機内に原料を投入し、加水し密度及び粘度を上げることにより粒を成形する。転がして粒にするので形状は丸くなり、流動性が良く、安息角は33度~37度と小さくなり、側条施肥などの精密な機械施肥にも適応する。
【0039】
ただし、原料自体に加水等による凝集性が求められ、無機原料に適するが、比重が軽く凝集性が低い有機原料は適性が低く、加水量が多くなってエネルギー及び環境対策コストが嵩む。また、有機原料の場合、製品硬度なども確保しにくいなど課題が多い。
有機原料の中でも特に牛糞堆肥は、粒度が粗く、比重も低く、適性が低い。
【0040】
<湿式押出造粒+高速整粒(アグレット造粒)>
前処理に加水混練り工程があり、密度を高めた混合原料を強制的に押出成形する為、凝集性の低い有機原料でも成形可能で、豚糞や鶏糞の堆肥でも対応可能となっている。
【0041】
水分の多い状態(湿式)にて薄いダイス(スクリーン)に押出造粒することにより柔らかいペレットを作成し、ペレットを円盤上にて高速整粒することにより、転動造粒同様に丸い粒を成形する。出来た製品は、球状で、安息角は36度~38度、流動性も良く側条施肥などの精密機械施肥にも対応可能な粒状品質となる。
【0042】
このアグレット方式では、押出造粒で高水分造粒するので、練らない様に薄いダイス(スクリーン)を使用する。
【0043】
牛糞堆肥では木質系の副資材が多く、硬い木っ端が含まれる為、連続生産に於いてはこのダイス(スクリーン)に破損が生じるという課題がある。また、牛糞堆肥では副資材の木質系資材の撥水性が高く前処理での水の浸透性が悪く混練り効果が得られない為、粒の凝集性及び通過不良、形状不良となり易いという課題がある。
【0044】
<圧縮造粒方式(ブリケット造粒)>
上述したアグレット造粒同様に加水混練りした原料を3mm程度の丸い凹みが多数ある二本のロールの上部より投入し、粒が浮き出たシートを解砕すると炭団形状の丸い扁平の粒が出来る。混練りで密度及び粘度を上げで造粒するので、牛糞までの堆肥まで造粒対応可能となるが、形状が炭団状で、安息角は38度~42度、流動性にやや難があり、側条施肥までは対応出来ていない。
【0045】
<押出造粒(ペレット造粒)>
円盤状もしくはリング状の厚みのあるダイスに原料をロールで押出て強制的に成形し、ダイスを通過してきた粒状物をカッターでカットし、円柱状の粒状物を得る。
【0046】
丈夫なダイスで強制成形出来るので適性水分はあるが牛糞堆肥でも対応可能となる。但し、製品形状は円柱状で角があるので流動性は悪く、安息角は40度~45度、また粉化しやすいので、側条施肥などの精密施肥には対応出来ない。
【0047】
上記の通り、木質系副資材が多く含まれる牛糞堆肥では、押出造粒もしくは圧縮造粒等の強制的に粒状加工する方式で対応可能であり、特に押出造粒が主流となっている。
【0048】
造粒加工時で問題となるのが粒状形状であり、側条施肥等の精密機械施肥に対応するには、流動性が良く落下安定性が求められるので、球形状であることが求められる。
【0049】
<粒状肥料の品質>
粒状肥料の製品品質(粒状肥料の製品品質に係る主な物理性の測定項目と目標目安値)については非特許文献5に整理されている。
【0050】
従来からの粒状肥料の使用実績と、本願発明者の検討によれば、側条施肥機などによる機械施肥対応可能な粒状肥料とする上で、非特許文献5に整理されている「粒状肥料の製品品質に係る主な物理性の測定項目と目標目安値」の中の、粒度分布、安息角、硬度、粉化率に関して所定の目標目安値になっていることが望ましかった。
【0051】
粒度分布に関しては、非特許文献5では「配合時の均一性・貯蔵性・施用時の均一性など影響する場面は多岐にわたる。粉が多い場合は機械散布精度や粉塵の発生により作業性にも影響する場合がある。」とされている。粒状肥料の使用実績と、本願発明者の検討によれば、粒度分布に関しては、配合時の均一性・貯蔵性・施用時の均一性などの観点及び、機械散布精度、粉塵発生による作業性への影響を考慮した時に、粒度2~4mmで95%以上であることが、側条施肥機などによる機械施肥対応可能な粒状肥料とする上で望ましかった。
【0052】
安息角に関しては、非特許文献5では「流動性の指標。安息角が高い(流動性が悪い)と機械施肥などで肥料が流れず、施肥ができない場合がある。」とされている。粒状肥料の使用実績と、本願発明者の検討によれば、安息角に関しては、機械施肥での流動性を確保する観点から、安息角38度以下であることが、側条施肥機などによる機械施肥対応可能な粒状肥料とする上で望ましかった。
【0053】
硬度に関しては、非特許文献5では「硬度が低いとハンドリングに影響をおよぼし、機械施肥時に粉化を起こしやすい。」とされている。粒状肥料の使用実績と、本願発明者の検討によれば、硬度に関しては、ハンドリングへの影響を少なくし、機械施肥時に粉化発生を防ぐという観点から、硬度2kgf以上であることが、側条施肥機などによる機械施肥対応可能な粒状肥料とする上で望ましかった。
【0054】
粉化率に関しては、非特許文献5では「粉化率が高いと作業性に支障をきたし、機械施肥時の詰まりの原因にもなる。」とされている。粒状肥料の使用実績と、本願発明者の検討によれば、粉化率に関しては、作業性に影響を及ばせず、機械施肥時の詰まり発生を防ぐという観点から、粉化率1%以下であることが、側条施肥機などによる機械施肥対応可能な粒状肥料とする上で望ましかった。
【0055】
<肥料物性と機械施肥適性>
機械施肥に用いられる施肥機には表1に図示されているように、目的に合わせて、いくつかの種類があり、汎用的に露地畑で使用されるブロードキャスター、石灰質肥料散布用でコンパクトなライムソアー、水稲の追肥で使用される動噴散布機、水稲の施肥で主流となっている側条施肥機などがある。
【0056】
表1は、それぞれの施肥機で求められる肥料物性とそれに対応可能な粒状形式についてまとめたものである。
【表1】
【0057】
表1に示されているように、汎用的ブロードキャスターでは、求められる品質基準も緩めであり、上述した4種の造粒形式全てで対応可能となっているが、精密な施肥精度が求められる側条施肥では、品質要求度も厳しく対応可能な粒状形式も限定的となっている。
【0058】
本願発明では、粒状加工する上で難しい、牛糞堆肥入り粒状肥料での肥料品質要求度の高い側条施肥にも対応可能な粒状肥料を提供することを目的にしており、表1でいえば、側条施肥機で求められる肥料物性を満たす粒状肥料を提供することを目的にしている。
【0059】
<精密機械施肥対応可能な牛糞堆肥入り粒状複合肥料の生産技術>
上述したように、牛糞堆肥の利用拡大が求められており、精密機械施肥にも対応な牛糞堆肥入り粒状複合肥料に対応できる生産技術が求められているが、通常の牛糞堆肥では連続安定生産が実現できていない。
【0060】
<一般の牛糞堆肥を使用した時のアグレット造粒での検討>
表1の通り、アグレット造粒(湿式押出造粒+高速整粒)であれば、上述した側条施肥機などによる機械施肥に対応可能な粒状肥料(粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下の粒状肥料)を製造することが可能である。
【0061】
そこで、一般の牛糞堆肥を使用した時のアグレット造粒による粒状堆肥について、以下のように検討を行った。
生産年月:2020年5月20日
生産工場:朝日アグリア株式会社千葉工場 有機アグレットライン
(湿式押出造粒+高速整粒)
原料内容
M牧場から入手した牛糞堆肥を使用した。
その他の原料として、有機原料、尿素、苦土石灰、微量要素複合肥料、造粒促進材を配合した。
当初は、M牧場から入手した牛糞堆肥の配合率を50質量%とし、その後、配合率を30質量%として粒状堆肥を製造した。
【0062】
生産状況:下記状況が発生したことから連続生産を断念した。
・造粒機目詰まりによる度重なる中断の発生
・搬送工程の過負荷による中断の頻発
・牛糞使用割合を30質量%に低減したが、同じく詰まりによる中断が発生し、最終的にダイス破損により生産中止
中断した時の装置の状態を撮影した写真が図1である。図1(a)はダイス表面の詰まり及び破損の状態を撮影した参考写真、図1(b)はダイス裏面の木質系副資材の詰まり状態を撮影した参考写真である。
【0063】
生産中断に至った要因
牛糞堆肥の木質系副資材による目詰まりが主因と考えられた。
【0064】
<牛糞堆肥の造粒性に悪影響する要因解析と対策>
上述した一般の牛糞堆肥を使用した時のアグレット造粒での検討から、牛糞堆肥での造粒性悪化要因として、主に副資材である木質系資材であるとして下記要因を推定した。
【0065】
(1)未熟な木質系副資材は撥水性が大きく、水の浸透性が悪く、原材料の混練りを阻害する。これが、締まり、粘りの不足と、可塑性不良をもたらしている。
(2)未熟な木質系副資材による下記影響による生産性悪化
【0066】
未熟な木質系副資材は、硬く、反発性、可塑性(力を加えて変形させたとき、永久変形を生じる物質の性質)が不良であることからダイス孔への食い込み不良が起こり、ダイスの目詰まりを生じさせる。
【0067】
上記(1)の可塑性不良と(2)の食い込み不良からダイスの目詰まり、通過不良となり、ダイス上で原材料が停滞し、生産性低下につながると考えられる。
ダイスの目詰まり及び通過不良はダイスへの負荷が増大し、ダイスの耐久性低下、ダイス破損につながる。
【0068】
<水洗浮遊物割合についての検討>
上述したように、木質系副資材の造粒性阻害要因として、撥水性による混練り不良が考えられる。これの評価法として、堆肥を水洗し、浮遊してくる木質系で撥水性の高い未熟有機物を評価した。
【0069】
以下の分析方法で水洗浮遊物割合(乾物値)を評価した。
(ア)牛糞堆肥約100mL計量する。(重量及び水分率を測定)
(イ)500mlスチロール棒瓶に(ア)で計量した堆肥を投入し、300ml加水する。
(ウ)(イ)を縦型振盪機にて20分振盪する(振とう速度:300r/min)。
(エ)(ウ)で振盪後15L(リットル)バケツに移し10L(リットル)加水して攪拌。
(オ)(エ)で攪拌後、浮遊する木質系副資材を1mmスクリーンにて回収。
(カ)回収浮遊物を乾燥し、乾物重量を測定。
(キ)上記操作を3~5回実施し、平均値を浮遊物割合とする。
浮遊物割合(%)=浮遊物(乾物)/投入堆肥(乾物)×100
【0070】
<木質系副資材の混入割合の違う牛糞堆肥の品質調査>
異なる地域の複数の牧場からそれぞれ入手した牛糞堆肥(木質系副資材の混入割合がそれぞれ異なっていると見られる牛糞堆肥)について、上述した水洗浮遊物割合の把握を行うと共に、粒度分布を確認した。
【0071】
結果は表2の通りであった。なお、表2における牧場名Mは、上述した「一般の牛糞堆肥を使用した時のアグレット造粒での検討」で原料に使用したM牧場から入手した牛糞堆肥である。
【表2】
【0072】
表2の結果の通り、No.1(K牧場)の牛糞堆肥は木質系副資材の混入率が高く、水洗浮遊物割合も40%超と極めて高かった。
No.2(M牧場)の牛糞堆肥はNo.1(K牧場)の牛糞堆肥に次いで木質系副資材割合が多く、水洗浮遊割合も12.4%と高めであった。
No.3(N牧場)、No.4(I牧場)の牛糞堆肥は、目視でも木質系副資材割合が少なく、浮遊物割合は共に低い値となっていた。
【0073】
<実施例1>
上述した「木質系副資材の混入割合の違う牛糞堆肥の品質調査」に供した木質系副資材の混入程度の異なる4種類の牛糞堆肥(K牧場の牛糞堆肥、M牧場の牛糞堆肥、N牧場の牛糞堆肥、I牧場の牛糞堆肥)を使用し、試験機による造粒試験を実施した。
【0074】
原料に使用した4種の牛糞堆肥:上述した「木質系副資材の混入割合の違う牛糞堆肥の品質調査」に供した木質系副資材の混入程度の異なる4種類の牛糞堆肥(K牧場の牛糞堆肥、M牧場の牛糞堆肥、N牧場の牛糞堆肥、I牧場の牛糞堆肥)。
【0075】
試験方法
朝日アグリア株式会社が保有する造粒試験機にて、原料混合→加水・混練→湿式押出造粒(薄いダイス)→高速整粒→通風棚乾燥→篩別→製品というアグレット造粒工程で粒状堆肥肥料を製造した。
【0076】
原料配合
4種の牛糞堆肥それぞれ7Kgに対して、それぞれ豚糞堆肥、鶏糞堆肥、腐食酸、バインダーを配合して原料混合した。
なお、4種の牛糞堆肥それぞれについて、30質量%配合と、50質量%配合との2種類でアグレット造粒を行った。
【0077】
造粒性評価
造粒試験機での造粒を実施し、造粒機の時間当たり造粒物通過量、乾燥後の製品歩留まり(2~4mm品の回収率)を測定し、通過量×歩留を生産性とした。
製品について、硬度、比重を測定し品質評価を実施した。
【0078】
結果は表3の通りであった。
【表3】
【0079】
表3に示した通り、製品品質は、いずれも基準をクリアしたが、生産性に於いてNo.1(K牧場)、No.2(M牧場)の牛糞堆肥では通過量が著しく低下し、歩留りも80%台ギリギリから70%台とやや低めとなり生産性は低くなり、造粒性評価としてNo.3(N牧場)、No.4(I牧場)の牛糞堆肥のみ使用可と判断した。
【0080】
No.3(N牧場)の牛糞堆肥は、表2に表されているように、バラツキを考慮して3連平均で、水洗浮遊物割合が乾物値で1.6%であった。また、No.4(I牧場)の牛糞堆肥は、表2に表されているように、バラツキを考慮して5連平均で、水洗浮遊物割合が乾物値で1.3%であった。
【0081】
<実施例2>
上述した「木質系副資材の混入割合の違う牛糞堆肥の品質調査」に供した木質系副資材の混入程度の異なる4種類の牛糞堆肥の中のNo.4(I牧場の牛糞堆肥)を使用し、有機原料、泥炭、粒状化促進材を配合して原料混合し、朝日アグリア株式会社の千葉工場の生産実機にて、実施例1の試験方法と同様に、原料混合→加水・混練→造粒→整粒→熱風乾燥→篩別→包装というアグレット造粒工程で粒状堆肥肥料を製造した(実施日は、2022年6月27日)。
【0082】
No.4(I牧場の牛糞堆肥)の配合割合は50質量%とした。
午前9時~午後4時まで中断無く通常通りの連続生産が実施出来た。
【0083】
製品品質は表4の通りで、側条施肥対応粒状肥料品質基準(粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下)を十分満たすものであった。
【表4】
【0084】
<実施例3>
上述した「木質系副資材の混入割合の違う牛糞堆肥の品質調査」に供した木質系副資材の混入程度の異なる4種類の牛糞堆肥の中のNo.3(N牧場の牛糞堆肥)を使用し、有機原料、無機原料、泥炭、粒状化促進材を配合して原料混合し、朝日アグリア株式会社の関西工場の生産実機にて、実施例1の試験方法と同様に、原料混合→加水・混練→造粒→整粒→熱風乾燥→篩別→包装というアグレット造粒工程で粒状堆肥肥料を製造した。
【0085】
No.3(N牧場の牛糞堆肥)の配合割合は40質量%とした(実施日は、2022年7月29日)。
午前9時~午後4時まで中断無く通常通りの連続生産が実施出来た。
【0086】
製品品質は表5の通りで、側条施肥対応粒状肥料品質(粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下)を十分満たすものであった。
【表5】
【0087】
以上の結果から、水洗浮遊物割合が乾物値で1.6%以下である牛糞堆肥を使用することで、側条施肥機などによる機械施肥に対応可能な物理特性である、粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下を備えている粒状肥料を連続的に生産できることを確認できた。
【0088】
引き続き、本願発明者が、木質系副資材の混入程度の異なる複数の牛糞堆肥について同様の検討を進めたところ、水洗浮遊物割合が乾物値で3%以下である牛糞堆肥を使用することで、アグレット造粒(湿式押出造粒+高速整粒)により、側条施肥機などによる機械施肥に対応可能な物理特性である、粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下を備えている粒状肥料を連続的に生産できることを確認できた。
【0089】
<ADL(酸性デタージェント可溶性リグニン)含有率分析>
上述したように、牛糞堆肥中の水洗浮遊物割合を検討、評価することで、側条施肥機などによる機械施肥に対応可能な物理特性である、粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下を備えている粒状肥料を、アグレット造粒(湿式押出造粒+高速整粒)で、連続的に生産することに使用する牛糞堆肥を選択することができた。
【0090】
牛糞堆肥中の水洗浮遊物割合の検討・評価は、木質系副資材の造粒性阻害要因として、木質系で撥水性の高い未熟有機物を評価したものである。
【0091】
試料中の木質割合を評価する方法の一つとして、高等植物の木化に関与する高分子のフェノール性化合物である木質リグニンの含有率分析がある。分析方法としては、試料中の各栄養素消化吸収を見る分析方法で、リグニン含有率を示すADL(酸性デタージェント可溶性リグニン)含有率分析がある。
【0092】
本願発明者は、上述した「木質系副資材の混入割合の違う牛糞堆肥の品質調査」に供した木質系副資材の混入程度の異なる4種類の牛糞堆肥について、ADL含有率分析により堆肥中の木質割合を評価した。
【0093】
<分析方法>
分析は非特許文献6に記載されているところに従って次のように行った。
試料を酸性デタージェント(AD)液(臭化ヘキサデシトリメチルアンモニウム20gを0.5M硫酸1L(リットル)に溶かしたもの:いわば酸性洗剤)で1時間煮沸して溶解する有機物画分が(AD可溶有機物)、溶解しない画分がADF(酸性テ゛ターシ゛ェント繊維)である。ADFをさらに72%硫酸に浸漬した後の不溶解勇気物画分がADL(酸性デタージェントリグニン)であり、リグニンに相当する。
【0094】
分析した結果は表6の通りであった。なお、表6には、上述した表2記載の水洗浮遊物割合についての評価結果も記載している。
【表6】
【0095】
側条施肥機などによる機械施肥に対応可能な物理特性である、粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下を備えている粒状肥料の連続的生産に適している、水洗浮遊物割合が乾物値で3%以下の条件を満たしている牛糞堆肥(No.3(N牧場)、No.4(I牧場))は、ADL含有率(%)が、それぞれ、15.1%、16.8%であった。
【0096】
非特許文献7には、堆肥、他各種有機資材中のADL等の化学分析値が示されている。この資料では、牛糞堆肥中のADL含有率は、各種平均値で25~29%程度の範囲となっている。
【0097】
このことから、No.3(N牧場)、No.4(I牧場)の牛糞堆肥のADL含有率15.1%、16.8%の値は、堆肥、他各種有機資材中のADL等の化学分析値と比較すると、かなり低めの値であった。
【0098】
引き続き、本願発明者が、木質系副資材の混入程度の異なる複数の牛糞堆肥について同様にADL含有率分析を行ったところ、ADL(酸性デタージェント可溶性リグニン)含有率が17%以下の牛糞堆肥を使用することで、側条施肥機などによる機械施肥に対応可能な物理特性である、粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下を備えている粒状肥料を、アグレット造粒(湿式押出造粒+高速整粒)で、連続的に生産できることを確認できた。
【0099】
また、上述した実施例1~実施例3などにおける水洗浮遊物割合についての検討結果と合わせることで、水洗浮遊物割合が乾物値で3%以下であって、なおかつ、ADL含有率が17%以下の牛糞堆肥を使用することで、側条施肥機などによる機械施肥に対応可能な物理特性である、粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下を備えている粒状肥料を、アグレット造粒(湿式押出造粒+高速整粒)で、連続的に生産できることも確認できた。
【0100】
<本発明の粒状肥料>
以上に説明したように、本発明の粒状肥料は、丸い粒状に加工する上での阻害要因となる木質系副資材を含んだ牛糞堆肥を特定の選抜方法で評価し、ある一定の基準を満たした牛糞堆肥を選抜使用することにより、側条施肥などの精密機械施肥にも対応可能な物性(粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下)を具備した球状の牛糞堆肥入り複合肥料の粒状加工を安定的に連続生産することを可能にしたものである。
【0101】
本発明の粒状肥料は、原料として用いる牛糞堆肥及び、有機原料、無機原料、等をそれぞれ計量した上で、混合し、混練、造粒、整粒した後、乾燥、冷却、篩分けして製造することができる。
【0102】
有機原料は、特に限定されず、動物かす粉末類、植物質類、骨粉質類、副産動植物質肥料、混合有機質肥料、菌体肥料、等の有機質肥料、牛以外の家畜糞等の堆肥類、泥炭、腐植酸、木炭、澱粉等多糖類、トビコ等の有機系資材など、従来から採用されている一般的有機質肥料及び有機資材である。
【0103】
無機原料は、窒素質肥料(尿素、硫安等)、燐酸質肥料(過石、重過石等)、加里質肥料(塩加、硫加等)、苦土質肥料、石灰質肥料、けい酸質肥料、マンガン質肥料、ほう素質肥料、微量要素複合肥料、複合肥料、副産肥料、石膏、硫酸、燐酸、シリカ、各種粒状化促進材、固結防止材、等の、従来から採用されている一般的無機質肥料及び無機系資材である。
【0104】
前記における混練工程は、加水して、混合された原料を練り、粘性及び密度を上げる工程で、装置としてはニーダー、ミックスマーラー、等、練り効果が得られる装置を用いて行うことができる。
【0105】
前記において造粒工程には、凝集性が高くない牛糞堆肥に対応する為、湿式押出造粒方式、等が適している。装置としては、ディスクダイ、リングダイ、等各種方式があり、特に限定されない。
【0106】
前記における整粒工程は、造粒工程を経た造粒物を転動させることにより、形状を流動性の良い球状に整粒するものである。装置としては、皿形、ドラム型、マルメライザー、等各種方式のものを用いることができる。
【0107】
前記における乾燥工程により、上述した造粒工程、整粒工程によって、湿式で造粒及び整粒された造粒物を加熱乾燥して水分を低減することにより、粉化やカビ発生、固結性を抑制する。乾燥工程に用いる装置としては、ロータリーキルン方式、他、肥料製造で一般的に導入されている乾燥方式で対応可能であり、特に限定されない。
【0108】
本発明の粒状肥料は、牛糞堆肥を使用した、粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下の粒状肥料であって、肥料法上の堆肥、有機質肥料、無機質肥料を混合し、粒状化した複合肥料である。肥料法上は、混合堆肥複合肥料、特殊肥料等入り指定混合肥料となる。
【0109】
粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、硬度2kgf以上、粉化率1%以下であることは側条施肥などの精密な機械施肥に対応可能となる球状肥料の品質基準である。
【0110】
前記粒状肥料において、牛糞堆肥の使用割合を10~70質量%とすることが好ましい。
【0111】
牛糞堆肥の使用割合が10質量%未満では、製造した粒状肥料が土づくり効果という機能を発揮する上で十分ではなく、70質量%を越えると、側条施肥などの精密機械施肥に対応可能な球状肥料の品質基準を満たすことが難しくなり、また、生産効率が低下することから好ましくない。
【0112】
前記粒状肥料に土づくり効果という機能をより良く発揮させ、また、精密機械施肥に対応可能な球状肥料の品質基準を満たし、生産効率を確保するという観点からは、牛糞堆肥の使用割合を30~50質量%にすることがより好ましい。
【0113】
本発明の粒状肥料は、特殊肥料である堆肥(牛糞堆肥)を10~70質量%配合し、有機原料、無機原料と混合し、造粒、乾燥させ、堆肥による土づくり効果と、肥料による施肥効果を併せ持ち、一度の施肥で複合的効果をもち省力的、側条施肥機などによる機械施肥対応可能な複合肥料である。
【0114】
前記において、原料に使用する牛糞堆肥の水洗浮遊物割合が乾物値で3%以下であるようにすることができる。
【0115】
造粒性阻害要因としての、牛糞堆肥に含まれる木質系副資材の混入率の評価方法として、堆肥洗浄時に浮遊してくる木質系資材の割合を測る堆肥水洗浮遊割合で評価し、実際の造粒試験との相関性から適正の水洗浮遊割合を決定し、その値を基準値としたものである。
【0116】
また、原料に使用する牛糞堆肥のADL(酸性デタージェント可用性リグニン)含有率が17%以下であるようにすることができる。
【0117】
造粒性阻害要因としての、牛糞堆肥に含まれる木質系副資材の混入率の評価方法として、ADL(堆肥中のリグニン)の含有率で評価し、実際の造粒試験との相関性から適正のADL(堆肥中のリグニン)含有率を決定し、その値を基準値としたものである。
【0118】
本発明により、牛糞堆肥を製品(粒状肥料)に対し10~70質量%使用しながら、側条施肥にも対応可能な品質(粒度分布が粒度2~4mmで95%以上、安息角38度以下、製品硬度2kgf以上、粉化率1%以下)の粒状複合肥料を安定的に連続生産することが可能になる。
【0119】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限られることなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲において種々に変更可能である。
図1