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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158438
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】情報処理装置および情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
E21D9/00 Z
E21D9/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073642
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】角丸 吉浩
(72)【発明者】
【氏名】仲 哲路
(72)【発明者】
【氏名】小出 孝明
(72)【発明者】
【氏名】星 遼介
(57)【要約】
【課題】
発破精度をより向上させるための情報処理装置および情報処理方法を提供する。
【解決手段】
油圧削岩機10により地山を穿孔したときの油圧データを取得し(S1)、油圧削岩機10による発破孔3aの穿孔位置を含む穿孔データを取得し(S2)、発破孔3aに装填した火薬の装薬量を取得し(S3)、発破後の掘削面3の掘削面データを取得し(S8)、油圧データ、穿孔データおよび装薬量に対する掘削面データに応じて発破結果を分析する(S9)。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧削岩機により地山を穿孔したときの油圧データを取得する油圧データ取得手段と、
前記油圧削岩機による発破孔の穿孔位置を含む穿孔データを取得する穿孔データ取得手段と、
前記発破孔に装填した火薬の装薬量を取得する装薬量取得手段と、
発破後の掘削面の掘削面データを取得する掘削面データ取得手段と、
前記油圧データ、前記穿孔データおよび前記装薬量に対する前記掘削面データに応じて発破結果を分析する分析手段と、
を備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記油圧データが、回転圧、フィード圧、および、打撃圧のデータであり、前記穿孔データが、穿孔位置および穿孔角度のデータであることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記油圧データと前記穿孔データとから地山の硬軟分布を解析する硬軟分布解析手段を更に備え、
前記分析手段が、前記硬軟分布および前記装薬量に対する前記掘削面データに応じて発破結果を分析することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記発破結果を分析した分析結果に基づき、次に行う発破のための穿孔位置および装薬量の発破パターンを算出する発破パターン算出手段を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
油圧データ取得手段が、油圧削岩機により地山を穿孔したときの油圧データを取得する油圧データ取得ステップと、
穿孔データ取得手段が、前記油圧削岩機による発破孔の穿孔位置を含む穿孔データを取得する穿孔データ取得ステップと、
装薬量取得手段が、前記発破孔に装填した火薬の装薬量を取得する装薬量取得ステップと、
掘削面データ取得手段が、発破後の掘削面の掘削面データを取得する掘削面データ取得ステップと、
分析手段が、前記油圧データ、前記穿孔データおよび前記装薬量に対する前記掘削面データに応じて発破結果を分析する分析ステップと、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル等における穿孔のための情報処理装置および情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル等における発破現場において、作業員の経験と勘で行われている発破パターンを、作業員によるばらつきを少なく設計する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、発破工程で採用された穿孔パターンおよび炸薬量と、3次元トンネル形状データと、騒音・振動データと、湧水量データとを入力し、3次元トンネル形状データから取得したトンネル形状変化と、騒音・振動データから取得された地質状況と、前記湧水量データから取得した水量変化と、第1の穿孔パターンおよび炸薬量とに基づいて、次の発破工程で採用される穿孔パターンおよび炸薬量を予想するトンネル施工管理システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-3192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、作業員によるばらつきを抑えても、発破による余掘りや掘削不足ができるだけ少ない、より精度が高い発破パターンを設計することが難しいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題点等に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、発破の精度をより向上させるための情報処理装置および情報処理方法を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、油圧削岩機により地山を穿孔したときの油圧データを取得する油圧データ取得手段と、前記油圧削岩機による発破孔の穿孔位置を含む穿孔データを取得する穿孔データ取得手段と、前記発破孔に装填した火薬の装薬量を取得する装薬量取得手段と、発破後の掘削面の掘削面データを取得する掘削面データ取得手段と、前記油圧データ、前記穿孔データおよび前記装薬量に対する前記掘削面データに応じて発破結果を分析する分析手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記油圧データが、回転圧、フィード圧、および、打撃圧のデータであり、前記穿孔データが、穿孔位置および穿孔角度のデータであることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、前記油圧データと前記穿孔データとから地山の硬軟分布を解析する硬軟分布解析手段を更に備え、前記分析手段が、前記硬軟分布および前記装薬量に対する前記掘削面データに応じて発破結果を分析することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、前記発破結果を分析した分析結果に基づき、次に行う発破のための穿孔位置および装薬量の発破パターンを算出する発破パターン算出手段を更に備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、油圧データ取得手段が、油圧削岩機により地山を穿孔したときの油圧データを取得する油圧データ取得ステップと、穿孔データ取得手段が、前記油圧削岩機による発破孔の穿孔位置を含む穿孔データを取得する穿孔データ取得ステップと、装薬量取得手段が、前記発破孔に装填した火薬の装薬量を取得する装薬量取得ステップと、掘削面データ取得手段が、発破後の掘削面の掘削面データを取得する掘削面データ取得ステップと、分析手段が、前記油圧データ、前記穿孔データおよび前記装薬量に対する前記掘削面データに応じて発破結果を分析する分析ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、油圧削岩機により地山を穿孔したときの油圧データと、油圧削岩機による発破孔の穿孔位置を含む穿孔データと、装薬量とに対する掘削面データに応じて発破結果を分析するので、分析精度が向上し、分析結果を利用して発破パターンを生成すると、発破精度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るトンネル穿孔システムの概略構成の一例を示す模式図である。
図2】発破後の掘削面の一例を示す模式図である。
図3図1の情報処理装置の概要構成の一例を示すブロック図である。
図4】本実施形態に係る動作の一例を示すフロー図である。
図5】発破孔のブロックの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、トンネル穿孔システムに対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0014】
[1.トンネル穿孔システムの構成および機能概要]
(1.1 構造体の構成および機能概要)
【0015】
まず、本発明の一実施形態に係る構造体の構成および概要機能について、図1から図3を用いて説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るトンネル穿孔システムの概略構成の一例を示す模式図である。図2は、発破後の掘削面の一例を示す模式図である。
【0017】
図1および図2に示すように、本実施形態に係るトンネル穿孔システムSは、トンネル1の掘削面3に、火薬を装填する発破孔3aを穿孔する油圧削岩機10と、発破後の掘削面3を測定する3Dスキャナ20と、油圧削岩機10および3Dスキャナ20からのデータから発破結果を分析する情報処理装置30と、を備える。ここで、トンネル1は、岩盤に対して発破が必要な山岳地帯のトンネルである。
【0018】
図2に示すように、掘削面3は、火薬を装填した発破孔3aと、トンネル1の壁面5が発破によって余分に掘られた余掘り箇所3bと、アタリと呼ばれる、壁面5が発破によって掘削が不足した掘削不足箇所3cと、を有する。
【0019】
油圧削岩機10は、掘削面3に火薬の装填するための孔を穿孔する穿孔ロッド・ビット11、穿孔ロッド・ビット11が取り付けられた複数のブーム12、トンネル1内を移動するためのクローラ13、穿孔ロッド・ビット11を駆動する油圧ドリフタ、穿孔ロッド・ビット11の位置を検出する位置センサ、穿孔ロッド・ビット11の打撃圧等を検出する油圧センサ、情報処理装置30と通信機能等を有する。
【0020】
穿孔ロッド・ビット11は、油圧ドリフタからの打撃力、回転力、推進力で掘削面3に発破孔3aを開けていく。油圧センサは、発破孔の穿孔作業中の回転圧、フィード圧、打撃圧等の油圧データおよびフィード長さを測定する。位置センサは、穿孔ロッド・ビット11のドリルの位置・方向の座標を検出する。
【0021】
なお、油圧削岩機10の操作は、人が行ってもよいし、AIに基づき自動運転でもよい。
【0022】
3Dスキャナ20は、掘削面3等の計測対象にレーザ光を照射して、レーザの反射時間を測定して得られる距離と照射角度とにより、3次元座標の情報を有する点群データである3Dスキャンデータを生成する。3Dスキャナ20は、3Dスキャンデータを情報処理装置30に出力する。なお、3Dスキャナ20は、油圧削岩機10が搭載してもよいし、発破後に掘削面3の近くに設置されてもよい。トンネル1の設計情報と3Dスキャンデータとから、余掘り箇所3bと、掘削不足箇所3cと、掘削面3の奥行きの過不足部分等の発破結果が求められる。
【0023】
情報処理装置30は、油圧削岩機10および3Dスキャナ20等と、無線通信または有線通信を行う。油圧削岩機10、3Dスキャナ20等からのデータに基づき、発破結果を分析する。
【0024】
なお、トンネル穿孔システムSは、切羽観察を行うためのカメラを備えてもよい。カメラが切羽面を撮影して、カメラが撮影した画像データから、情報処理装置30が、亀裂、節理を抽出したり、走向や傾斜を判別したりする。
【0025】
次に、情報処理装置30の構成および機能について、図3を用いて説明する。図3は、情報処理装置30の概要構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
図3に示すように、コンピュータとして機能する情報処理装置30は、例えば、パーソナルコンピュータである。情報処理装置30は、通信部31と、表示部32と、記憶部33と、操作部34と、入出力インターフェース部35と、制御部36とを備えている。そして、制御部36と入出力インターフェース部35とは、システムバス37を介して接続されている。なお、情報処理装置30は、スマートフォンおよびタブレット等のコンピュータでもよい。
【0027】
通信部31は、無線または有線を通して、油圧削岩機10および3Dスキャナ20等と通信を制御する。
【0028】
表示部32は、例えば、液晶表示素子または有機EL(Electro Luminescence)素子等によって構成されている。
【0029】
記憶部33は、例えば、ハードディスクドライブ等からなり、オペレーティングシステム、アプリ等のプログラム等を記憶する。記憶部32には、トンネル1の設計情報、発破のための穿孔位置および装薬量等の発破パターンの発破計画等が記憶されている。また、記憶部33には、過去の発破作業結果のデータベースが構築されている。ここで、発破パターンは、発破孔3aの穿孔数、発破孔3aの穿孔位置および間隔、穿孔長さ、穿孔方向(角度)および装薬数等を含む。記憶部33には、切羽観察の結果が記録される。
【0030】
また、記憶部33には、人工知能(AI)のための機械学習のデータベースが構築されている。機械学習として、多層ニューラルネットワーク構造を有する深層学習、が挙げられる。例えば、記憶部33には、発破孔3aを穿孔した際の油圧データ、発破孔3aの位置、発破パターン、発破結果等に対して学習された学習済みのモデル等が記憶される。
【0031】
操作部34は、例えば、キーボードおよびマウス等によって構成されている。
【0032】
入出力インターフェース部35は、通信部31および記憶部33と制御部36とのインターフェースである。
【0033】
制御部36は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成されている。制御部36は、GPU(Graphics Processing Unit)等のAIの演算を専用に行う演算チップを有してもよい。制御部36は、CPUがROMや記憶部33に記憶された各種プログラムを読み出し実行することにより、地山の硬軟の分布を算出したり、発破結果を分析したり、発破パターンを生成したりする。
【0034】
[2.トンネル穿孔システムSの動作例]
次に、トンネル穿孔システムSの動作例について、図を用いて説明する。
【0035】
図4は、本実施形態に係る動作の一例を示すフロー図である。
【0036】
穿孔を開始する前に、油圧削岩機10は、発破のための穿孔位置および装薬量の発破パターンの情報を、情報処理装置30から取得する。油圧削岩機10の穿孔ロッド・ビット11は、発破計画の発破パターンに従い所定の穿孔位置に、各発破孔3aを開けていく。油圧削岩機10の油圧センサは、発破孔3aの穿孔作業中の回転圧、フィード圧、打撃圧等の油圧データを検出する。油圧削岩機10の位置センサは、穿孔ロッド・ビット11のドリルの位置座標を検出する。油圧削岩機10は、発破孔3a毎の検出した油圧データおよびドリルの位置座標データを情報処理装置30に送信する。油圧削岩機10は、油圧削岩機10の機体座標の情報も、情報処理装置30に送信する。油圧データおよびドリルの位置座標データは、発破孔3aの穿孔作業中における穿孔中の時系列データでもよい。
【0037】
次に、図4に示すように、トンネル穿孔システムSは、地山穿孔時の油圧データを取得する(ステップS1)。具体的には、情報処理装置30が、油圧削岩機10から各発破孔3aの油圧データを取得する。このように情報処理装置30は、油圧削岩機により地山を穿孔したときの油圧データを取得する油圧データ取得手段の一例として機能する。
【0038】
次に、トンネル穿孔システムSは、ドリルの位置座標を取得する(ステップS2)。具体的には、情報処理装置30が、油圧削岩機10から、各発破孔3aに対応したドリルの位置座標を取得する。このように情報処理装置30は、前記油圧削岩機による発破孔の穿孔位置データを取得する穿孔位置データ取得手段の一例として機能する。
【0039】
次に、トンネル穿孔システムSは、各孔の装薬量を取得する(ステップS3)。具体的には、情報処理装置30が、各発破孔3aに装填した火薬数の情報を取得する。例えば、情報処理装置30が、火薬帳簿から読み取られたデータの入力を受け付けてもよいし、電子化された火薬帳簿もデータベースから取得してもよい。このように情報処理装置30は、前記発破孔に装填した火薬の装薬量を取得する装薬量取得手段の一例として機能する。
【0040】
次に、トンネル穿孔システムSは、穿孔位置の地山の硬軟を分析する(ステップS4)。具体的には、情報処理装置30が、各発破孔3aの硬軟の度合いを、発破孔3aの穿孔時における回転圧、フィード圧、および、打撃圧のデータから地山の硬軟の度合いを算出する。例えば、平均回転圧、平均フィード圧、および、平均打撃圧に所定の係数を掛けて足し合わせた値を、地山の硬軟の度合いとする。なお、ドリルの位置座標の情報を合わせて、発破孔3aを掘り進めていく深さに応じて、地山の硬軟の度合いが計算されてもよい。例えば、穿孔ロッド・ビット11がその深さに達している時の回転圧、フィード圧、および、打撃圧から地山の硬軟の度合いが算出される。このように情報処理装置30は、前記油圧データと前記穿孔位置データとから地山の硬軟分布を解析する硬軟分布解析手段の一例として機能する。
【0041】
次に、トンネル穿孔システムSは、穿孔位置を算出する(ステップS5)。具体的には、情報処理装置30が、油圧削岩機10の機体座標とドリルの位置座標とから、穿孔位置として、各発破孔3aの位置、方向、長さを算出する。このように情報処理装置30は、前記油圧削岩機による発破孔の穿孔位置データを取得する穿孔位置データ取得手段の一例として機能する。
【0042】
次に、トンネル穿孔システムSは、地山の硬軟の分布を算出する(ステップS6)。具体的には、情報処理装置30が、算出した穿孔位置と、地山の硬軟の度合いとから、地山の硬軟の分布を算出する。
【0043】
次に、トンネル穿孔システムSは、発破を実行する(ステップS7)。具体的には、穿孔された各発破孔3aに、発破計画に従い所定の数の火薬が装填され、発破が行われる。
【0044】
次に、トンネル穿孔システムSは、3Dスキャナ20による掘削面3の点群データを取得する(ステップS8)。具体的には、3Dスキャナ20は、発破後の掘削面3を計測して、3Dスキャンデータの掘削面3の点群データを情報処理装置30に出力する。情報処理装置30は、3Dスキャナ20から点群データを取得する。このように情報処理装置30は、発破後の掘削面のデータを取得する掘削面データ取得手段の一例として機能する。
【0045】
なお、カメラ等により撮影した、発破後の掘削面3の画像データを、情報処理装置30は、切羽観察用にカメラから取得してもよい。
【0046】
次に、トンネル穿孔システムSは、発破結果を分析する(ステップS9)。具体的には、情報処理装置30は、取得した点群データとトンネル1の設計情報とから、余掘り箇所3bと、掘削不足箇所3cと、掘削面3の奥行きの過不足部分と、を算出する。情報処理装置30は、算出された余掘り箇所3bと、掘削不足箇所3cと、掘削面3の奥行きの過不足部分とから、発破を評価する。例えば、余掘り箇所3bと、掘削不足箇所3cと、掘削面3の奥行きの過不足部分の各面積、体積等を算出し、それぞれに所定の係数を掛けて加えた値を、発破の評価値とする。このように情報処理装置30は、前記油圧データ、前記穿孔位置データおよび前記装薬量に対する前記掘削面データに応じて発破結果を分析する分析手段の一例として機能する。また、情報処理装置30は、前記硬軟分布および前記装薬量に対する前記掘削面データに応じて発破結果を分析する分析手段の一例として機能する。
【0047】
なお、情報処理装置30は、切羽観察結果として、カメラから取得した掘削面3の画像データから、亀裂、節理を抽出したり、走向や傾斜を判別したりした切羽観察のデータを生成する。また、情報処理装置30は、人が行った切羽観察のデータの入力を受け付けてもよい。
【0048】
次に、トンネル穿孔システムSは、次に行う発破パターンを生成する(ステップS10)。具体的には、情報処理装置30は、算出された地山の硬軟の分布、発破が行われた発破パターン、および、3Dスキャナ20からの掘削面3の点群データに基づき、次の発破パターンを生成する。より具体的には、情報処理装置30は、算出された地山の硬軟の分布、掘削面3の点群データの発破結果に基づき、発破が行われた発破パターンから、所定の評価関数の値が最小となる、最適解の次の発破パターンを生成する。このように情報処理装置30は、前記発破結果を分析した分析結果に基づき、次に行う発破のための穿孔位置および装薬量の発破パターンを算出する発破パターン算出手段の一例として機能する。なお、発破結果に、切羽観察のデータが加えられてもよい。
【0049】
なお、情報処理装置30は、算出された地山の硬軟の分布、各発破孔3aの装薬量、掘削面3の点群データを入力データとして、予め学習された所定の機械学習モデルのAIにより、最適解の次の発破パターンを生成してもよい。また、情報処理装置30は、地山穿孔時の油圧データ、ドリルの位置座標、各発破孔3aの装薬量、掘削面3の点群データを入力データとして、予め学習された所定の機械学習モデルにより、最適解の次の発破パターンを生成してもよい。
【0050】
また、機械学習モデルのAIへのデータとして、発破パターンにおける各発破孔3aの装薬量の他に、発破孔3aをブロック毎にまとめた、ブロック毎の装薬量でもよい。図5に示すように、発破孔3aのブロックとして、掘削面3に対して、中央の天井部分の天井ブロックB1、左上ブロックB2、右上ブロックB2、掘削面3のアーチの中心当たりの中央ブロックB3、中央ブロックからアーチに沿って左隣の左中央ブロックB4、中央ブロックからアーチに沿って右隣の右中央ブロックB4、掘削面3の下側の左底面ブロックB5、右底面ブロックB5、掘削面3の下側の左隅ブロックB6、右隅ブロックB6等が挙げられてる。
【0051】
機械学習モデルのAIへのデータとして、ブロック毎に、各発破孔3aの間隔の変動、発破孔当たりの装薬量の変動等の情報でもよい。例えば、ブロック毎に、ブロック内の各発破孔3aの間隔が前回の発破に比べて広くなったか、狭くなったか、発破孔3aの間隔を広くしたブロックか否か、発破孔3aの間隔を狭くしたブロックか否か、発破孔当たりの装薬量を多くしたブロックか否か、発破孔当たりの装薬量を少なくしたブロックか否か等の情報である。特に、中央ブロックB3、左上ブロックB2、右上ブロックB2は、余掘り、アタリに関係するブロックであり、ブロック毎に発破孔3aを扱うことに意義がある。このように、各発破孔3aを、掘削面3のブロック単位で情報をまとめることで、学習の速度や、精度が向上する。また、発破孔3a毎に装薬量を把握できない場合も、ブロック毎での装薬量を把握しブロックに含まれる発破孔の数から、発破孔ごとの装薬量を推定することも可能になる。
【0052】
また、機械学習モデルのAIに、切羽観察のデータも、入力データに加えてもよい。また、穿孔回転圧、穿孔フィード圧、穿孔打撃圧、穿孔数、穿孔の位置、穿孔角度、装薬量、切羽観察データ、発破後掘削面スキャナデータと言った定量データの他に、熟練坑夫の経験値等の定性データを、AIの学習用の入力データに加えてもよい。例えば、熟練坑夫に対して行った、発破孔3aのブロックに対して、行ったヒアリング調査である。ヒアリング項目は、各ブロックにおいて、発破孔3aの間隔を広くしたり、狭くしたりした箇所や、その理由(硬い、切羽形状)、中央ブロックB3、左上ブロックB2、右上ブロックB2における、余掘り、アタリの評価点等である。なお、このような評価は、情報処理装置30が、掘削面3の点群データおよび切羽観察のため画像データから行ってもよい。
【0053】
生成された発破パターンに基づき、油圧削岩機10は、発破後の掘削面3に対して、次の各発破孔3aを穿孔して、油圧データおよびドリルの位置座標を検出する。トンネル穿孔システムSは、ステップS1およびステップS2に戻り、トンネル1を所定の位置まで掘り進めるまで、処理を繰り返す。
【0054】
実施形態に係るトンネル穿孔システムSによれば、油圧削岩機10により地山を穿孔したときの油圧データと、油圧削岩機による発破孔の穿孔位置データと、装薬量とに対する掘削面データに応じて発破結果を分析するので、分析精度が向上し、分析結果を利用して発破パターンを生成すると、発破精度をより向上させることができる。
【0055】
油圧データが、回転圧、フィード圧、および、打撃圧のデータである場合、穿孔ロッド・ビット11から直接得られる発破孔3aのデータにより、地山の硬軟がより正確に測定できる。
【0056】
油圧データと穿孔位置データとから地山の硬軟分布を解析し、硬軟分布および装薬量に対する前記掘削面データに応じて発破結果を分析する場合、発破孔3aの穿孔位置データと合わせて、地山の硬軟がより正確に分かる。
【0057】
発破結果を分析した分析結果に基づき、次に行う発破のための穿孔位置および装薬量の発破パターンを算出する場合、発破精度をより向上させることができる。また、作業員の経験値による作業結果の差が無くなり、効率的な発破作業が継続的、安定的に実現することができる。
【0058】
また、発破精度が向上することにより、火薬使用量、コンクリートで埋める必要がある余掘り量、掘削不足箇所の追加掘削量を減少させることができ、資材のコストを削減したり、工期を短くしたりすることができる。
【0059】
油圧削岩機10の操作を、算出された発破パターンにより、AI等により自動で行った場合、油圧削岩機10の操作が必要無くなり、作業員数が低減できる。このように、地質条件等により柔軟に対応して、自動運転で穿孔できる。
【0060】
三次元トンネル形状データと油圧データ・穿孔データを分析・評価、加えて、これまで熟練坑夫が習得した定性的な穿孔技術(暗黙知)を定量的に分析・評価したデータを、AIの学習用に使用する場合、形式知化して情報処理装置30に反映させることができる。
【符号の説明】
【0061】
3:掘削面
3a:発破孔
10:油圧削岩機
20:3Dスキャナ
30:情報処理装置
S:トンネル穿孔システム
図1
図2
図3
図4
図5