(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015846
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】基板付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/53 20110101AFI20240130BHJP
【FI】
H01R12/53
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118180
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕希子
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸貴
(72)【発明者】
【氏名】亀山 豪太
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB59
5E223AC23
5E223AC25
5E223BA06
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB21
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD01
5E223DA33
5E223DB09
5E223DB33
5E223EA03
5E223EB04
5E223EB12
(57)【要約】
【課題】少ない動作でコンプレッションコネクタを基板に固定する。
【解決手段】この基板付きコネクタ10は、接続対象物に押し付けて接続するコンプレッションタイプのコネクタ31と基板11とを取り付けるものであって、基板11と接触するコンタクト32と、コンタクト32が固定されたハウジング33と、ハウジング33の上面部を覆うカバーシェル34と、を有するコンプレッションコネクタ31を有し、カバーシェル34は、基板11と平行に配置されるカバーシェル34の天面34aから、基板方向に垂直に曲げられた垂直面34bを有し、垂直面34bの基板側には、基板11に形成された穴12を貫通して基板11に対するコンプレッションコネクタ13の抜け止めとなる固定部位37が少なくとも1つ以上形成される。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物に押し付けて接続するコンプレッションタイプのコネクタと基板とを取り付ける基板付きコネクタであって、
前記基板と接触するコンタクトと、前記コンタクトが固定されたハウジングと、前記ハウジングの上面部を覆うカバーシェルと、を有するコンプレッションコネクタを有し、
前記カバーシェルは、前記基板と平行に配置される前記カバーシェルの天面から、前記基板方向に垂直に曲げられた垂直面を有し、
前記垂直面の前記基板側には、前記基板に形成された穴を貫通して前記基板に対する前記コンプレッションコネクタの抜け止めとなる固定部位が少なくとも1つ以上形成されることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の基板付きコネクタであって、
前記固定部位は、
前記垂直面の前記基板側に接続して形成される平板状の根元部と、
前記根元部の前記基板側に接続するとともに開口孔を有する開口部と、
前記開口部の前記基板側に接続して形成される平板状の先端部と、
を有して形成されることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の基板付きコネクタであって、
前記開口部が、前記根元部および前記先端部よりも大きな幅寸法を有して形成されることで、前記固定部位は、プレスフィットピンとして形成されることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項4】
請求項2に記載の基板付きコネクタであって、
前記開口部が有する前記開口孔に挿入する抜け止めピンを有し、
前記抜け止めピンは、
前記開口孔に挿入された際に折り曲げられるピン先端部と、
前記開口孔に挿入されることで前記基板に対する前記コンプレッションコネクタの抜け止めとなる挿入部と、
前記開口孔の孔径よりも大きい幅寸法を有するフランジ部と、
を有することを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の基板付きコネクタであって、
前記コンプレッションコネクタは、前記ハウジングの下面部を覆うボトムシェルを含むことを特徴とする基板付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板付きコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板等の接続対象物に押し付けて接続するコンプレッションタイプのコネクタが公知である。この種のコネクタの構造が、例えば、下記特許文献1等に開示されている。下記特許文献1に開示された従来のコンプレッションタイプのコネクタは、
図26に示されるように、弾性スプリング部(23)を有するコンタクト(20)を備えた電気コネクタ(1)として構成されている。この電気コネクタ(1)には、複数のコンタクト(20)が整列した状態で配置されている。
【0003】
コンタクト(20)は、第1の回路基板(30)に半田接続される基板接続部(22)と、第2の回路基板(40)に接触する接触部(24)とを有する。基板接続部(22)と接触部(24)との間には、バネ性を有する弾性スプリング部(23)が設けられている。第1の回路基板(30)の上に半田接続によって取り付けられたコンタクト(20)の上方側から第2の回路基板(40)を押し付けることで、コンタクト(20)の弾性スプリング部(23)がバネ性を発揮し、第2の回路基板(40)とコンタクト(20)との間に接触圧力を生じさせる。なお、先行技術文献の説明に関する符号については、括弧を付けることで本願発明の実施形態と区別した。
【0004】
そして、従来のコンプレッションコネクタにおいて、基板との取り付け(固定)には、ねじ留めを用いることが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コンプレッションコネクタを基板に対してねじ留めで固定する際、一般的には、コネクタが搭載されるコネクタ搭載面側とは反対側の基板面からナットを取り付け、コネクタ搭載面側からねじを締める方法が取られる。このような従来技術の場合において、作業者は、ねじを締めている間に手などでコネクタやナットを押さえておく必要があり、コネクタの取り付け(固定)作業がやりづらいという課題が存在していた。すなわち、従来のねじ留めによるコンプレッションコネクタと基板の固定構造には、ねじの他に別部品のナットが必要となるため、ナットが紛失してしまう可能性や作業工数が掛かる等の問題が存在していた。
【0007】
つまり、従来のコンプレッションコネクタにおいては、基板との取り付け(固定)に際して取り付けの作業性を向上させつつ確実な取り付けを行う構成を実現することが求められていた。
【0008】
よって本発明は、コンプレッションコネクタと基板を固定する際に、コネクタの取り付け(固定)作業が簡単であり、少ない動作でコンプレッションコネクタを基板に固定することができる構成を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板付きコネクタは、接続対象物に押し付けて接続するコンプレッションタイプのコネクタと基板とを取り付ける基板付きコネクタであって、前記基板と接触するコンタクトと、前記コンタクトが固定されたハウジングと、前記ハウジングの上面部を覆うカバーシェルと、を有するコンプレッションコネクタを有し、前記カバーシェルは、前記基板と平行に配置される前記カバーシェルの天面から、前記基板方向に垂直に曲げられた垂直面を有し、前記垂直面の前記基板側には、前記基板に形成された穴を貫通して前記基板に対する前記コンプレッションコネクタの抜け止めとなる固定部位が少なくとも1つ以上形成されることを特徴とするものである。
【0010】
すなわち、本発明は、コンプレッションタイプのコネクタと基板とを取り付ける機構を備えるものであり、基板に形成された穴に対して固定部位を差し込むことで、簡単かつ確実な固定状態が得られる。
【0011】
また、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記固定部位は、前記垂直面の前記基板側に接続して形成される平板状の根元部と、前記根元部の前記基板側に接続するとともに開口孔を有する開口部と、前記開口部の前記基板側に接続して形成される平板状の先端部と、を有して形成することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る基板付きコネクタでは、前記開口部が、前記根元部および前記先端部よりも大きな幅寸法を有して形成されることで、前記固定部位は、プレスフィットピンとして形成することができる。
【0013】
すなわち、固定部位がプレスフィットピンとして形成される場合には、基板の穴内で圧迫され、基板の穴との摩擦力によってコンプレッションコネクタが基板に対して垂直方向に抜けないように保持される。
【0014】
さらに、本発明に係る基板付きコネクタは、前記開口部が有する前記開口孔に挿入する抜け止めピンを有し、前記抜け止めピンは、前記開口孔に挿入された際に折り曲げられる先端部と、前記開口孔に挿入されることで前記基板に対する前記コンプレッションコネクタの抜け止めとなる挿入部と、前記開口孔の孔径よりも大きい幅寸法を有するフランジ部と、を有することができる。
【0015】
すなわち、抜け止めピンは、固定部位の開口部が有する開口孔に挿入後、先端を曲げられることで抜け止めされるので、従来のねじやナットのように落下したり紛失したりすることがない。また、抜け止めピンが有するピン形状により固定する機構のため、取り付けに関する作業工数が低減されるとともに、従来のようにねじのトルク管理が不要である。
【0016】
さらに、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記コンプレッションコネクタは、前記ハウジングの下面部を覆うボトムシェルを含むことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コンプレッションコネクタと基板を固定する際に、コネクタの取り付け(固定)作業が簡単であり、少ない動作でコンプレッションコネクタを基板に固定することができる構成を実現することができる。そのため、本発明によれば、基板に対するコンプレッションコネクタの取り付け(固定)の作業性を向上させつつ確実な取り付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施形態に係る基板付きコネクタを前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る基板付きコネクタを後方左上から見た場合の外観斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係る基板付きコネクタを前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図4】第1の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板からコンプレッションコネクタが取り外された状態を前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図5】第1の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板からコンプレッションコネクタが取り外された状態を後方左上から見た場合の外観斜視図である。
【
図6】第1の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板からコンプレッションコネクタが取り外された状態を前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図7】第1の実施形態に係るコンプレッションコネクタを前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図8】第1の実施形態に係るコンプレッションコネクタを前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図9】第1の実施形態に係るコンプレッションコネクタの正面図である。
【
図10】第1の実施形態に係るコンプレッションコネクタの右側面図である。
【
図11】
図9におけるA-A線断面を示す縦断面図である。
【
図12】第1の実施形態に係るコンプレッションコネクタが有するカバーシェルを前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図13】第1の実施形態に係るコンプレッションコネクタが有するカバーシェルの要部を拡大した要部拡大正面図である。
【
図14】第2の実施形態に係る基板付きコネクタを前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図15】第2の実施形態に係る基板付きコネクタを後方左上から見た場合の外観斜視図である。
【
図16】第2の実施形態に係る基板付きコネクタを前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図17】第2の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板からコンプレッションコネクタと抜け止めピンが取り外された状態を前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図18】第2の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板からコンプレッションコネクタと抜け止めピンが取り外された状態を後方左上から見た場合の外観斜視図である。
【
図19】第2の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板からコンプレッションコネクタと抜け止めピンが取り外された状態を前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図20】第2の実施形態に係るコンプレッションコネクタを前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図21】第2の実施形態に係るコンプレッションコネクタを前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図22】第2の実施形態に係るコンプレッションコネクタの正面図である。
【
図23】第2の実施形態に係るコンプレッションコネクタの右側面図である。
【
図25】第2の実施形態に係る基板付きコネクタから、説明の便宜のために基板のみを取り除いた状態を後方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図26】従来のコンプレッションタイプのコネクタが回路基板間に配置された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図では、説明の便宜のために第1方向、第2方向、第3方向を定義した。本明細書において、第1方向は、前後方向である。図において、前後方向はX方向として示される。特に、前方を+X方向、後方を-X方向とする。また、本明細書において、第2方向は、左右方向である。図において、左右方向はY方向として示される。特に、右方を+Y方向、左方を-Y方向とする。さらに、本明細書において、第3方向は、上下方向である。図において、上下方向はZ方向として示される。特に、上方を+Z方向、下方を-Z方向とする。ただし、本明細書で定義された第1方向であるX方向、第2方向であるY方向、第3方向であるZ方向は、各実施形態の基板付きコネクタの使用時の方向を限定するものではない。各実施形態の基板付きコネクタは、あらゆる方向で使用することができる。
【0020】
また、以下の各実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
[第1の実施形態]
図1~
図13を参照して、第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10の構成を説明する。第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10は、
図1~
図3に示されるように、基板11と、基板11の上面に取り付けられるコンプレッションコネクタ31と、を有している。
【0022】
基板11には、不図示のプリント回路等が含まれており、基板11の上面に取り付けられたコンプレッションコネクタ31と電気的に接続することで、電気信号や電源電力等を受け渡すことができるように構成されている。
【0023】
また、基板11には、特に
図3に示されるように、複数の穴12が形成されている。複数(第1の実施形態では8個)の穴12は、後述するコンプレッションコネクタ31が有する複数のプレスフィットピン37が挿し込まれることで、基板11に対するコンプレッションコネクタ31の固定が行われる。なお、複数のプレスフィットピン37は、本発明に係る固定部位として形成された部位である。
【0024】
コンプレッションコネクタ31は、
図7~
図11に示すように、基板11と接触するコンタクト32と、コンタクト32が固定されたハウジング33と、ハウジング33の上面部を覆うカバーシェル34と、ハウジング33の下面部を覆うボトムシェル35を有する。
【0025】
コンタクト32は、特に
図8や
図9に示すように、左右方向で横並びになるように複数個配置されている。
【0026】
また、複数のコンタクト32のそれぞれは、
図11に示すように、ハウジング33に固定された状態となっており、コンタクト32の前方端部32aは湾曲することでバネ弾性を有する形状となっている。つまり、コンタクト32の前方端部32aは、コンプレッションコネクタ31が基板11と接触していないときには、ボトムシェル35の底面から下方に向けて突出するように配置されている(
図11で示す状態)。そのため、コンプレッションコネクタ31を構成するボトムシェル35の底面を基板11の上面に対して-Z方向に向けて押し付けると、ボトムシェル35の底面から下方に向けて突出していた複数のコンタクト32の前方端部32aは、基板11の上面に対してバネ弾性による力を及ぼしながらボトムシェル35の底面の位置まで押し込まれた状態となる。つまり、複数のコンタクト32の前方端部32aは、+Z方向の力を受けることになる。したがって、基板11に対してコンプレッションコネクタ31が取り付けられた際には、バネ弾性による力によって複数のコンタクト32のそれぞれが基板11の上面に対して押し付けられるので、例えば、基板11の上面に配置された不図示のプリント回路等と複数のコンタクト32とが安定かつ確実な接続状態を維持できることとなる。
【0027】
一方、コンタクト32の後方端部32bは真っ直ぐ延びた直線形状となっている。そして、
図11に示すように、コンタクト32の後方端部32bには、電気ケーブル36が半田等で接続される。したがって、外部からの電気信号や電源電力等が、電気ケーブル36とコンタクト32を介して基板11側に伝達されることとなる。
【0028】
なお、第1の実施形態のコンプレッションコネクタ31を構成する部材について、複数のコンタクト32は導電性の金属材料によって構成されており、複数のコンタクト32を固定するハウジング33は非導電性の樹脂材料等で構成されている。また、ハウジング33の上面部を覆うカバーシェル34と、ハウジング33の下面部を覆うボトムシェル35は、互いの間にハウジング33を内包した状態で上下方向に組み合わせられることで、コンプレッションコネクタ31の外郭形状を形成する。カバーシェル34とボトムシェル35は、複数のコンタクト32が埋め込まれたハウジング33の外周を包むように配置されることで、電気ケーブル36からの通電を受ける複数のコンタクト32が埋め込まれたハウジング33を保護している。この保護には、外部環境からの物理的な保護に加えて、電磁シールドなどの電気的および磁気的な保護も含まれる。
【0029】
第1の実施形態のコンプレッションコネクタ31を構成するカバーシェル34は、
図12に示されるように、基板11と平行に配置される天面34aと、カバーシェル34の天面34aから基板11方向に垂直に曲げられた垂直面34bと、を有して構成されている。また、垂直面34bの基板11側、すなわち、垂直面34bの下方側には、基板11に形成された穴12を貫通して基板11に対するコンプレッションコネクタ31の抜け止めとなる固定部位としての8つのプレスフィットピン37が設置されている。
【0030】
第1の実施形態のカバーシェル34において、8つのプレスフィットピン37のうち、6つがカバーシェル34の前方側の位置にほぼ等間隔で配置されており、1つがカバーシェル34の後方側右端寄りの位置に配置されており、1つがカバーシェル34の後方側左端寄りの位置に配置されている。
【0031】
第1の実施形態のプレスフィットピン37の具体的な形状については、
図13に示されるように、垂直面34bの基板11側に接続して形成される平板状の根元部37aと、根元部37aの基板11側に接続するとともに開口孔38を有する開口部37bと、開口部37bの基板11側に接続して形成される平板状の先端部37cと、を有して形成されている。そして、第1の実施形態のプレスフィットピン37では、開口部37bが、根元部37aおよび先端部37cよりも大きな幅寸法を有して形成されており、さらには、開口部37bの幅寸法が、基板11に形成された穴12の内径よりも大きい寸法で形成されている。したがって、プレスフィットピン37を基板11に形成された穴12に挿し込むと、基板11の穴12の内部に幅広の開口部37bが位置することになり、開口部37bが基板11の穴12内で圧迫されることとなる。このとき、開口部37bが有する幅広の寸法と開口孔38の作用によって、開口部37bは金属材料の弾性に基づき元の形状に戻ろうとする力が働くので、プレスフィットピン37の開口部37bと基板11の穴12との間には摩擦力が働く。この摩擦力の総和は、複数のコンタクト32のそれぞれが基板11の上面に対して及ぼすバネ弾性による力の総和よりも大きい力となっているので、当該摩擦力によってコンプレッションコネクタ31が基板11に対して垂直方向に抜けないように保持されることとなる。
【0032】
上述したように、第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10では、基板11に形成された穴12に対してプレスフィットピン37を挿し込むだけで、基板11に対するコンプレッションコネクタ31の接続を簡単に行うことができる。つまり、第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10によれば、コンプレッションコネクタ31と基板11を固定する際に、コネクタの取り付け(固定)作業が簡単であり、少ない動作でコンプレッションコネクタ31を基板11に固定することができる構成が実現されている。そのため、第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10によれば、基板11に対するコンプレッションコネクタ31の取り付け(固定)の作業性を向上させつつ確実な取り付けを行うことができる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記した第1の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記第1の実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0034】
例えば、上述した第1の実施形態では、8つのプレスフィットピン37を用いる場合を例示したが、本発明の固定部位としてのプレスフィットピン37の個数や配置位置については、任意に変更が可能である。例えば、プレスフィットピン37の個数は1個以上であればよく、プレスフィットピン37の配置位置は、コンプレッションコネクタ31や基板11の形状等を考慮してあらゆる場所に対して配置することができる。
【0035】
また例えば、上述した第1の実施形態では、プレスフィットピン37を基板11に形成された穴12に挿し込むと、基板11の穴12の内部に幅広の開口部37bが位置することになり、開口部37bが基板11の穴12内で圧迫されることとなった。しかし、本発明では、プレスフィットピン37を抜け止めピンとして機能させるように使用してもよい。すなわち、プレスフィットピン37を基板11に形成された穴12に挿し込んだ際に、幅広の開口部37bが基板11の穴12を通過して穴12の内部を抜けて下方に位置するようにすることで、幅広の開口部37bが穴12の下方側の入り口に引っ掛かって、抜け止めの作用を及ぼすようにしてもよい。
【0036】
以上、
図1~
図13を参照して、第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10の構成を説明した。次に、本発明に係る基板付きコネクタが取り得る別の形態例である第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100について、
図14~
図25を用いて説明を行う。なお、以下の説明では、上述した第1の実施形態で説明した部材と同一又は類似する部材について、同一符号を付して説明を省略する場合がある。
【0037】
[第2の実施形態]
図14~
図25を参照して、第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100の構成を説明する。第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100は、
図14~
図16に示されるように、基板11と、基板11の上面に取り付けられるコンプレッションコネクタ31と、を有している。
【0038】
基板11には、不図示のプリント回路等が含まれており、基板11の上面に取り付けられたコンプレッションコネクタ31と電気的に接続することで、電気信号や電源電力等を受け渡すことができるように構成されている。
【0039】
また、基板11には、特に
図17~
図19に示されるように、複数の穴12が形成されている。複数(第2の実施形態では6個)の穴12は、後述するコンプレッションコネクタ31が有する複数の固定脚部137が挿し込まれることで、基板11に対するコンプレッションコネクタ31の固定が行われる。なお、複数の固定脚部137は、本発明に係る固定部位として形成された部位である。
【0040】
コンプレッションコネクタ31は、
図20~
図25に示すように、基板11と接触するコンタクト32と、コンタクト32が固定されたハウジング33と、ハウジング33の上面部を覆うカバーシェル34と、ハウジング33の下面部を覆うボトムシェル35を有する。
【0041】
コンタクト32は、特に
図21や
図22に示すように、左右方向で横並びになるように複数個配置されている。
【0042】
また、複数のコンタクト32のそれぞれは、
図24に示すように、ハウジング33に固定された状態となっており、コンタクト32の前方端部32aは湾曲することでバネ弾性を有する形状となっている。つまり、コンタクト32の前方端部32aは、コンプレッションコネクタ31が基板11と接触していないときには、ボトムシェル35の底面から下方に向けて突出するように配置されている(
図24で示す状態)。そのため、コンプレッションコネクタ31を構成するボトムシェル35の底面を基板11の上面に対して-Z方向に向けて押し付けると、ボトムシェル35の底面から下方に向けて突出していた複数のコンタクト32の前方端部32aは、基板11の上面に対してバネ弾性による力を及ぼしながらボトムシェル35の底面の位置まで押し込まれた状態となる。つまり、複数のコンタクト32の前方端部32aは、+Z方向の力を受けることになる。したがって、基板11に対してコンプレッションコネクタ31が取り付けられた際には、バネ弾性による力によって複数のコンタクト32のそれぞれが基板11の上面に対して押し付けられるので、例えば、基板11の上面に配置された不図示のプリント回路等と複数のコンタクト32とが安定かつ確実な接続状態を維持できることとなる。
【0043】
一方、コンタクト32の後方端部32bは真っ直ぐ延びた直線形状となっている。そして、
図24に示すように、コンタクト32の後方端部32bには、電気ケーブル36が半田等で接続される。したがって、外部からの電気信号や電源電力等が、電気ケーブル36とコンタクト32を介して基板11側に伝達されることとなる。
【0044】
なお、第2の実施形態のコンプレッションコネクタ31を構成する部材について、複数のコンタクト32は導電性の金属材料によって構成されており、複数のコンタクト32を固定するハウジング33は非導電性の樹脂材料等で構成されている。また、ハウジング33の上面部を覆うカバーシェル34と、ハウジング33の下面部を覆うボトムシェル35は、互いの間にハウジング33を内包した状態で上下方向に組み合わせられることで、コンプレッションコネクタ31の外郭形状を形成する。カバーシェル34とボトムシェル35は、複数のコンタクト32が埋め込まれたハウジング33の外周を包むように配置されることで、電気ケーブル36からの通電を受ける複数のコンタクト32が埋め込まれたハウジング33を保護している。この保護には、外部環境からの物理的な保護に加えて、電磁シールドなどの電気的および磁気的な保護も含まれる。
【0045】
第2の実施形態のコンプレッションコネクタ31を構成するカバーシェル34は、
図20~
図25に示されるように、基板11と平行に配置される天面34aと、カバーシェル34の天面34aから基板11方向に垂直に曲げられた垂直面34bと、を有して構成されている。また、垂直面34bの基板11側、すなわち、垂直面34bの下方側には、基板11に形成された穴12を貫通して基板11に対するコンプレッションコネクタ31の抜け止めとなる固定部位としての6つの固定脚部137が設置されている。
【0046】
第2の実施形態のカバーシェル34において、6つの固定脚部137のうち、3つがカバーシェル34の前方側の位置にほぼ等間隔で配置されており、3つがカバーシェル34の後方側の位置にほぼ等間隔で配置されている。また、第2の実施形態では、前方側に配置された固定脚部137と後方側に配置された固定脚部137のそれぞれが、正面視で重畳するように配置されており、前後2つの固定脚部137が組をなして、全部で3組の固定脚部137の対を形成するように構成されている。
【0047】
また、第2の実施形態の固定脚部137の具体的な形状については、
図20~
図25に示されるように、垂直面34bの基板11側に接続して形成される平板状の根元部137aと、根元部137aの基板11側に接続するとともに開口孔138を有する開口部137bと、開口部137bの基板11側に接続して形成される平板状の先端部137cと、を有して形成されている。そして、第2の実施形態の基板付きコネクタ100では、固定脚部137に形成された開口部137bの開口孔138に対して挿入できる抜け止めピン140が準備されている。
【0048】
第2の実施形態の抜け止めピン140は、
図17~
図19に示されるように、開口孔138に挿入された際に折り曲げられるピン先端部140aと、開口孔138に挿入されることで基板11に対するコンプレッションコネクタ31の抜け止めとなる挿入部140bと、開口孔138の孔径よりも大きい幅寸法を有するフランジ部140cと、を有して構成されている。なお、
図16~
図19および
図25では、ピン先端部140aが既に折り曲げられた状態が描かれているが、設置前の段階での抜け止めピン140のピン先端部140aについては、挿入部140bと同様に前後方向に真っ直ぐに延びた形状となっている。
【0049】
次に、第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100の設置方法を説明する。
図17~
図19で示す状態から、まずは基板11の穴12に対してコンプレッションコネクタ31が有する固定脚部137を挿し込む。この状態から、3本の抜け止めピン140を固定脚部137が有する開口部137bに形成された開口孔138に挿し込んでいく。なお、上述したように、第2の実施形態のコンプレッションコネクタ31が有する6つの固定脚部137は、前方側に配置された固定脚部137と後方側に配置された固定脚部137のそれぞれが、正面視で重畳するように全部で3組の固定脚部137の対を形成しているので、6つの固定脚部137が有する開口部137bに形成された開口孔138についても、2つで1組の開口孔138が3組存在している。そして、3組存在する対をなす開口孔138のそれぞれに対して、3本の抜け止めピン140を挿入していく。この際、抜け止めピン140は、先端部137cを後方側から前方側に向けて開口孔138に対して挿し込むようにする。後方側に配置された固定脚部137の開口孔138に抜け止めピン140のフランジ部140cが接触するまで挿し込むと、
図25で示すように、抜け止めピン140の挿入部140bが正面視で重畳して配置された1組の開口孔138に掛け渡され、さらに、前方側の固定脚部137に形成された開口部137bの開口孔138から抜け止めピン140のピン先端部140aが前方に向けて貫通した状態となる。この状態で抜け止めピン140のピン先端部140aを下方に向けて折り曲げることで、
図25で示す設置状態が完成する。
【0050】
図25で示す設置状態が完成したとき、複数のコンタクト32のそれぞれが基板11の上面に対して及ぼすバネ弾性による力によって、基板11とコンプレッションコネクタ31との間には互いに離れる方向の力が作用しているが、コンプレッションコネクタ31が有する固定脚部137には、基板11を挟むように抜け止めピン140が設置されているので、この抜け止めピン140がバネ弾性による力を受け止めることで、コンプレッションコネクタ31が基板11に対して垂直方向に抜けないように保持されることとなる。
【0051】
上述したように、第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100では、基板11に形成された穴12に対して固定脚部137を挿し込み、さらに固定脚部137に形成された開口孔138に抜け止めピン140を挿し込んで固定するだけで、基板11に対するコンプレッションコネクタ31の接続を簡単に行うことができる。また、第2の実施形態の抜け止めピン140は、固定脚部137の開口部137bが有する開口孔138に挿入後、ピン先端部140aを曲げることで抜け止めされるので、従来のねじやナットのように落下したり紛失したりすることがない。さらに、抜け止めピン140が有するピン形状により固定する機構のため、取り付けに関する作業工数が低減されるとともに、従来のようにねじのトルク管理が不要となっている。
【0052】
つまり、第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100によれば、コンプレッションコネクタ31と基板11を固定する際に、コネクタの取り付け(固定)作業が簡単であり、少ない動作でコンプレッションコネクタ31を基板11に固定することができる構成が実現されている。そのため、第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100によれば、基板11に対するコンプレッションコネクタ31の取り付け(固定)の作業性を向上させつつ確実な取り付けを行うことができる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記した第2の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記第2の実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0054】
例えば、上述した第2の実施形態では、6つの固定脚部137が有する開口部137bに形成された開口孔138について、2つで1組の開口孔138を3組用意し、これら3組存在する対をなす開口孔138のそれぞれに対して、3本の抜け止めピン140を挿入する構成を採用した。しかしながら、本発明の固定部位としての固定脚部137や抜け止めピン140の個数や配置位置、それぞれの組み合わせ方法については、任意に変更が可能である。
【0055】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0056】
10 (第1の実施形態の)基板付きコネクタ
100 (第2の実施形態の)基板付きコネクタ
11 基板
12 穴
31 コンプレッションコネクタ
32 コンタクト
32a 前方端部
32b 後方端部
33 ハウジング
34 カバーシェル
34a 天面
34b 垂直面
35 ボトムシェル
36 電気ケーブル
37 プレスフィットピン(固定部位)
37a 根元部
37b 開口部
37c 先端部
38 開口孔
137 固定脚部(固定部位)
137a 根元部
137b 開口部
137c 先端部
138 開口孔
140 抜け止めピン
140a ピン先端部
140b 挿入部
140c フランジ部