(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158461
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】制御装置、制御システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
E02D 29/05 20060101AFI20241031BHJP
E02D 13/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E02D29/05 Z
E02D13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073680
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅崎 正吉
(72)【発明者】
【氏名】荒川 真
【テーマコード(参考)】
2D050
2D147
【Fターム(参考)】
2D050AA06
2D050CA05
2D050EE19
2D050FF04
2D050FF05
2D147AB04
(57)【要約】
【課題】逆打ち支柱の傾きの調整に関する作業員の負担を軽減する技術と、作業員の操作間違いによる品質の問題を抑制する技術を提供する。
【解決手段】制御装置30は、逆打ち支柱80の状態を検出する検出手段10、及び前記逆打ち支柱の傾きを調整する調整手段20と通信可能に接続された制御装置であって、前記検出手段で検出された逆打ち支柱の状態に基づいて、鉛直軸線Vに対する前記逆打ち支柱の長手軸線Xのずれを示す変位情報を取得する取得部32aと、前記変位情報に基づいて、前記傾きを調整するように、前記調整手段の動作を制御するための制御情報を生成する生成部32bと、前記制御情報に基づいて、前記調整手段を動作させるための動作情報を生成する動作制御部32cと、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆打ち支柱の状態を検出する検出手段、及び前記逆打ち支柱の傾きを調整する調整手段と通信可能に接続された制御装置であって、
前記検出手段で検出された逆打ち支柱の状態に基づいて、鉛直軸線に対する前記逆打ち支柱の長手軸線のずれを示す変位情報を取得する取得部と、
前記変位情報に基づいて、前記傾きを調整するように、前記調整手段の動作を制御するための制御情報を生成する生成部と、
前記制御情報に基づいて、前記調整手段を動作させるための動作情報を生成する動作制御部と、
を有する制御装置。
【請求項2】
逆打ち支柱の状態を検出する検出手段と、
前記逆打ち支柱の傾きを調整する調整手段と、
前記検出手段及び前記調整手段と通信可能に接続された制御装置と、
を有し、
前記制御装置は、
前記検出手段で検出された逆打ち支柱の状態に基づいて、鉛直軸線に対する前記逆打ち支柱の長手軸線のずれを示す変位情報を取得し、
前記変位情報に基づいて、前記傾きを調整するように、前記調整手段の動作を制御するための制御情報を生成し、
前記制御情報に基づいて、前記調整手段を動作させるための動作情報を生成する、
制御システム。
【請求項3】
前記調整手段は、前記逆打ち支柱の外面に取付けられ、前記逆打ち支柱が建て込まれる杭孔と当該逆打ち支柱との間に位置するジャッキであり、
前記制御装置は、前記ジャッキの伸縮量を前記制御情報として、生成する、
請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記ジャッキは、前記杭孔内に打設されるコンクリートの設計天端面の上方近傍に配置される、
請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記調整手段は、前記逆打ち支柱が建て込まれる杭孔内において前記逆打ち支柱の周囲に配置される複数の配管に、コンクリートを供給するための少なくとも一つの打設機械であり、
前記制御装置は、前記コンクリートを供給すべき配管に対するコンクリートの供給量を前記制御情報として、生成する、
請求項2に記載の制御システム。
【請求項6】
逆打ち支柱の状態を検出する検出手段、及び前記逆打ち支柱の傾きを調整する調整手段と通信可能に接続された制御装置に実行させるためのプログラムであって、
前記制御装置に、
前記検出手段で検出された逆打ち支柱の状態に基づいて、鉛直軸線に対する前記逆打ち支柱の長手軸線のずれを示す変位情報を取得させ、
前記変位情報に基づいて、前記傾きを調整するように、前記調整手段の動作を制御するための制御情報を生成させ、
前記制御情報に基づいて、前記調整手段を動作させるための動作情報を生成させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御システム、及びプログラムに関し、特に、逆打ち支柱の傾きを調整する制御装置、制御システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の地上部分と地下部分とを並行して構築する逆打ち工法が知られている。逆打ち工法では、建築物の地上部分を支持するための逆打ち支柱を、地盤に設けた杭孔に建て込んでおくことにより、地盤を掘削して地下部分の構築を行いつつ、逆打ち支柱上への地上部分の構築を並行して行うことができる。逆打ち支柱が鉛直方向に対して傾斜した姿勢で建て込まれると、地上部分の施工などに影響を及ぼすため、逆打ち支柱の鉛直度を精度良く維持することが求められる。
【0003】
特許文献1には、逆打ち支柱の外面に取り付けた傾斜計を用いて、逆打ち支柱の鉛直度を測定し、左右のパンタグラフ式のジャッキの開き加減を調整し、逆打ち支柱の鉛直度を所定範囲内に調整することが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、傾斜計の測定結果の確認、及びジャッキの操作を、作業員が人力で行っていた。このため、作業員の負担が大きくなるおそれがあった。また、ジャッキの操作間違い等のヒューマンエラーが発生することもあり、逆打ち支柱の鉛直精度等の品質に問題が発生する可能性もあった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、逆打ち支柱の傾きの調整に関する作業員の負担を軽減する技術を提供することと、作業員の操作間違いによる品質の問題を抑制する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る制御装置は、逆打ち支柱の状態を検出する検出手段、及び前記逆打ち支柱の傾きを調整する調整手段と通信可能に接続された制御装置であって、前記検出手段で検出された逆打ち支柱の状態に基づいて、鉛直軸線に対する前記逆打ち支柱の長手軸線のずれを示す変位情報を取得する取得部と、前記変位情報に基づいて、前記傾きを調整するように、前記調整手段の動作を制御するための制御情報を生成する生成部と、前記制御情報に基づいて、前記調整手段を動作させるための動作情報を生成する動作制御部と、を有する。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明に係る制御システムは、逆打ち支柱の状態を検出する検出手段と、前記逆打ち支柱の傾きを調整する調整手段と、前記検出手段及び前記調整手段と通信可能に接続された制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記検出手段で検出された逆打ち支柱の状態に基づいて、鉛直軸線に対する前記逆打ち支柱の長手軸線のずれを示す変位情報を取得し、前記変位情報に基づいて、前記傾きを調整するように、前記調整手段の動作を制御するための制御情報を生成し、前記制御情報に基づいて、前記調整手段を動作させるための動作情報を生成する。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るプログラムは、逆打ち支柱の状態を検出する検出手段、及び前記逆打ち支柱の傾きを調整する調整手段と通信可能に接続された制御装置に実行させるためのプログラムであって、前記制御装置に、前記検出手段で検出された逆打ち支柱の状態に基づいて、鉛直軸線に対する前記逆打ち支柱の長手軸線のずれを示す変位情報を取得させ、前記変位情報に基づいて、前記傾きを調整するように、前記調整手段の動作を制御するための制御情報を生成させ、前記制御情報に基づいて、前記調整手段を動作させるための動作情報を生成させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、逆打ち支柱の傾きの調整に関する作業員の負担を軽減することができ、作業員の操作間違いによる品質の問題の抑制につながる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る制御システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】実施形態に係る制御装置の構成を概略的に示す図である。
【
図3】実施形態に係る制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態に係る制御装置を用いて、逆打ち支柱の傾きを調整する様子を概略的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る制御システム1、制御装置30について説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0013】
<制御システム>
図1は、実施形態に係る制御システム1の構成を概略的に示す図である。本実施形態に係る制御システム1は、逆打ち工法で建て込む逆打ち支柱80の傾きを調整するためのものである。
【0014】
逆打ち工法では、概略的に、掘削工程と、挿入工程と、支持工程と、打設工程とが実施される。掘削工程は、建設現場の地盤において、逆打ち支柱の立設予定位置に、ドリルなどの掘削装置を用いて所定深さの杭孔を掘削する。挿入工程は、クレーン等で吊り下げた逆打ち支柱を杭孔に挿入する。支持工程は、逆打ち支柱の下端を杭孔の所定深さで支持する。打設工程は、杭孔に建て込まれたトレミー管を通して杭孔の内部にコンクリートを打設する。ここで、打設工程において、硬化前のコンクリートの高さが、逆打ち支柱の周囲で異なることがある。この場合、硬化前のコンクリートから逆打ち支柱の外面に加えられる圧力によって、逆打ち支柱が傾くことがある。本実施形態に係る制御システム1は、打設工程で生じた逆打ち支柱の傾きを調整する。
【0015】
図1に示すように、制御システム1は、検出手段10、調整手段20、及び制御装置30を有する。
【0016】
(検出手段)
検出手段10は、逆打ち支柱80の状態を検出する。検出手段10の例として、逆打ち支柱80の傾き角度を計測する傾斜センサ、カメラを用いて逆打ち支柱80の変位量を計測する計測装置、光ファイバセンサを用いて逆打ち支柱80の周囲のコンクリートの高さを検出し、検出した値から逆打ち支柱80の変位量を推定する推定装置などが挙げられる。
【0017】
検出手段10が傾斜センサである場合、検出手段10は、鉛直軸線に対する逆打ち支柱80の長手軸線の傾き角度を、逆打ち支柱80の状態として検出する。例えば、傾斜センサは、重力方向に吊るした錘に対するケースの傾きを回転角センサ(磁気抵抗素子、エンコーダ等)にて検出し、これを傾き角度とする振り子式であってよい。また、傾斜センサは、ケースに対する油面の傾きを静電容量の変化として検出し、当該静電容量の変化を傾き角度として捉えるフロート式であってもよい。
【0018】
検出手段10が、計測装置である場合、検出手段10は、鉛直軸線に対する逆打ち支柱80の長手軸線の水平方向における変位量を、逆打ち支柱80の状態として検出する。例えば、計測装置としては、ストレートキーパー(登録商標)を用いることができる。この場合、計測装置は、逆打ち支柱80に沿って設置した仮設のガイド管の上方にカメラ式の鉛直器を設置し、ガイド管最下部に設置したターゲットを撮影して、その画像から算出される鉛直軸線とターゲットとの変位量を、逆打ち支柱80の状態として検出する。
【0019】
検出手段10が、推定装置である場合、検出手段10は、逆打ち支柱80の周囲のコンクリートの高さを検出し、検出された値から推定される鉛直軸線に対する逆打ち支柱80の長手軸線の水平方向における変位量を、逆打ち支柱80の状態として検出する。例えば、当該装置は、特開2019-15084号公報に記載の光ファイバセンシングシステムであってよい。この場合、推定装置は、光ファイバセンサに接触する安定液の温度を初期温度として設定する。このとき、複数の光ファイバセンサを、杭孔の深さ方向に延在させ、光ファイバセンサの長さ全体を安定液に接触させる。光ファイバセンサは、杭孔から一定距離を確保しつつ、杭孔の周方向に一定間隔を設けて配置される。推定装置は、杭孔内にコンクリートを打設した後、全長が安定液に接触している状態(即ち初期温度を設定した時点)の光ファイバセンサに対する、コンクリートを打設した後の光ファイバセンサの伸縮量を計測する。推定装置は、計測した伸縮量から、光ファイバセンサの長さ方向に沿って連続して初期温度に対する温度変化を算出する。ここで、安定液と比較してコンクリートは高温を示すことが知られている。従って、推定装置は、算出された温度変化から一定以上の温度上昇が確認された場合には、杭孔の深さ方向に延在する光ファイバセンサの温度上昇が確認された計測位置において、安定液が接触した状態からコンクリートが接触した状態に置き換わったもの、つまりコンクリートが充填されたものと判定する。推定装置は、複数の光ファイバセンサにおいて温度上昇が確認された計測位置、つまり光ファイバセンサ上でコンクリートが接触したと判定された計測位置を集約することにより、コンクリートが硬化する前の段階で、逆打ち支柱80の周囲のコンクリートの大まかな高さを把握することができる。推定装置は、逆打ち支柱80の周囲のコンクリートの高さを、予め実験等で求めたコンクリート高さと当該コンクリートが逆打ち支柱の外面に加える圧力との関係に当てはめることで、逆打ち支柱80の外面にかかる圧力を求める。推定装置は、この圧力を、予め実験等で求めた逆打ち支柱の外面にかかる圧力と鉛直軸線に対する逆打ち支柱の長手軸線の水平方向の変位量との関係に当てはめることで、鉛直軸線に対する逆打ち支柱80の長手軸線の水平方向の変位量を、逆打ち支柱80の状態として検出する。
【0020】
(調整手段)
調整手段20は、逆打ち支柱80の傾きを調整する。調整手段20の例として、パンタグラフ式の油圧ジャッキ(ジャッキの一例)や、アジテータ車から供給される硬化前のコンクリートをトレミー管へ供給するポンプ車(打設機の一例)などが挙げられる。
【0021】
調整手段20が、パンタグラフ式の油圧ジャッキである場合、調整手段20は、逆打ち支柱80の外面に少なくとも1つ取付けられ、逆打ち支柱80が建て込まれる杭孔と逆打ち支柱80との間に位置する。一例として、油圧ジャッキは、逆打ち支柱80における直交する外面、即ち4つの外面にそれぞれ取付けられる。油圧ジャッキは、杭孔内に打設されるコンクリートの天端面の上方近傍に配置されることが好ましい。コンクリートの天端面は、設計上のコンクリート高さに、余分に打設するコンクリート高さ(余盛り)を加えることにより、設定される。
【0022】
調整手段20が、ポンプ車である場合、調整手段20は、逆打ち支柱80が建て込まれる杭孔内において逆打ち支柱80の周囲に配置される複数のトレミー管(配管の一例)に、コンクリートを供給する。一例として、トレミー管は、逆打ち支柱80における直交する外面、即ち4つの外面それぞれと杭孔との間に配置される。ポンプ車は、少なくとも1台が配置される。
【0023】
(制御装置)
制御装置30は、検出手段10及び調整手段20と無線または有線により通信可能に接続されている。
図2は、制御装置30の構成を概略的に示す図である。制御装置30は、逆打ち支柱80の傾きを調整する。制御装置30は、制御手段32、入力手段34、表示手段36、通信手段38、記憶手段40を有する。
【0024】
=制御手段=
制御手段32は、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)のプロセッサにより構成されている。本実施形態において、制御手段32は、記憶手段40に予め記憶された所定のプログラムを読み出し、当該プログラムを実行することで、取得部32a、生成部32b、動作制御部32cとして機能する。当該プログラムは、制御手段32によって読み取られるソフトウェアである。
【0025】
==取得部==
取得部32aは、検出手段10で検出された逆打ち支柱80の状態に基づいて、変位情報を取得する。変位情報とは、鉛直軸線に対する逆打ち支柱80の長手軸線のずれを示す情報である。
【0026】
例えば、検出手段10が傾斜センサの場合、取得部32aは、傾斜センサにより検出された傾き角度の正接に、予め設定されている逆打ち支柱80の長さを乗ずることで、鉛直軸線に対する逆打ち支柱80の長手軸線の水平方向のずれを示す情報を取得する。たとえば、逆打ち支柱80の直交する外面のそれぞれに傾斜センサを取付けることで、取得部32aは、直交する2軸の方向におけるプラス又はマイナスの値を、変位情報として取得する。
【0027】
例えば、検出手段10が計測装置又は推定装置の場合、取得部32aは、計測装置又は推定装置で検出した鉛直軸線とターゲットとの変位量に基づいて、逆打ち支柱80の直交する外面、即ち直交する2軸の方向におけるプラス又はマイナスの値を、変位情報として取得する。
【0028】
==生成部==
生成部32bは、取得部32aが取得した変位情報に基づいて、制御情報を生成する。制御情報とは、逆打ち支柱80の傾きを調整するように、調整手段20の動作を制御するための情報である。
【0029】
例えば、調整手段20が油圧ジャッキの場合、生成部32bは、変位情報から油圧ジャッキの伸縮量を求め、それを制御情報とする。例えば、変位情報が+2の場合、生成部32bは、当該変位情報が0となるように、油圧ジャッキの伸縮量を求め、これを制御情報とする。油圧ジャッキが複数ある場合、生成部32bは、変位情報から各油圧ジャッキの伸縮量を求めて、これらを制御情報とする。
【0030】
例えば、調整手段20がポンプ車の場合、生成部32bは、変位情報から、コンクリートを供給すべきトレミー管を特定し、このトレミー管に対するコンクリートの供給量を求め、それを制御情報とする。たとえば、変位情報が+2の場合、生成部32bは、当該変位情報が0となるように、コンクリートを供給すべきトレミー管を特定し、このトレミー管に対するコンクリートの供給量を求め、それを制御情報とする。
【0031】
==動作制御部==
動作制御部32cは、制御情報に基づいて、動作情報を生成する。動作情報とは、調整手段20を動作させるための情報である。
【0032】
例えば、調整手段20が油圧ジャッキの場合、動作制御部32cは、制御情報から油圧ジャッキに必要とされる油圧を求め、これを動作情報とする。動作情報に応じて油圧ポンプが駆動することで、油圧ジャッキが、逆打ち支柱80の傾きを調整する。
【0033】
例えば、調整手段20がポンプ車の場合、動作制御部32cは、制御情報からポンプ車の回転数及び供給時間を求め、これを動作情報とする。動作情報に応じてポンプ車が駆動することで、特定されたトレミー管にコンクリートが、逆打ち支柱80の傾きを調整する。
【0034】
=入力手段=
入力手段34は、例えばマウス、キーボード、又はマイクロフォン等を含んで構成される。入力手段34は、表示手段36としてのディスプレイの表面に設けられたタッチパネルであってもよい。例えば、入力手段34は、作業者による操作内容に応じた信号を、無線又は有線回線を通じて、制御手段32に送信する。
【0035】
=表示手段=
表示手段36は、例えば、液晶ディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置、又はプロジェクタ等である。表示手段36は、制御手段32における演算処理によって生成された映像信号や文字信号を、有線又は無線回線を通じて受信する。表示手段36は、受信した映像信号や文字信号に基づいて、所定の映像や文字を表示させる。例えば、表示手段36は、取得部32aにおいて取得された、直交する2軸の方向におけるプラス又はマイナスの値を表示してもよい。また、表示手段36は、油圧ジャッキの動作状態を表示してもよい。また、表示手段36は、逆打ち支柱80の傾斜状態を表示してもよい。表示手段36は、制御装置30と一体に構成されてもよいし、別体に構成されてもよい。
【0036】
=通信手段=
通信手段38は、制御装置30を、検出手段10及び調整手段20に、有線(例えばLAN)又は無線(例えばインターネット)を介して電気通信可能に接続する接続ポートである。
【0037】
=記憶手段40=
記憶手段40は、制御手段32により読み取り可能な非一過性の記録媒体であり、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等である。記憶手段40は、制御手段32とは別に設けられたものでもよいし、制御手段32に内蔵されたものでもよい。記憶手段40は、制御手段32における各種処理に用いられる種々の情報を格納する。本実施形態において、記憶手段40は、所定のプログラムを記憶する。記憶手段40は、取得部32aにおいて取得された、変位情報を一時的に記憶してもよい。
【0038】
[制御装置の動作]
次いで、
図3及び
図4を用いて制御装置30の動作について説明する。
図3は、制御装置30の動作の一例を示すフローチャートである。
図4は、制御装置30を用いて、逆打ち支柱80の傾きを調整する様子を概略的に説明する図である。なお、
図4に示す制御装置30の構成は、
図2に示すものと同じである。
【0039】
この例では、検出手段10として傾斜センサ12、調整手段20として油圧ジャッキ22を用いる場合を説明する。逆打ち支柱80は、所定の長さを有する柱である。逆打ち支柱80は、矩形断面の鋼管により形成されたボックス型である。このため、逆打ち支柱80は、直交する4つの外面82を有する。以下、説明の便宜上、4つの外面82が向く方向を、東西南北と記載する。この例では、紙面右方向を東、紙面左方向を西、紙面奥方向を北、紙面手前方向を南とする。
【0040】
図4に示すように、杭孔Hの開口部の上方に架台120を設置し、架台120に設けたガイドローラで逆打ち支柱80を案内しながら、垂直姿勢で逆打ち支柱80を杭孔Hに挿入する(挿入工程)。また、逆打ち支柱80の外面82全てに、パンタグラフ式の油圧ジャッキ22を装着する。油圧ジャッキ22は、杭孔H内に打設されるコンクリートCの天端面CAの直上に配置される。傾斜センサ12は、逆打ち支柱80の直交する外面82に1つずつ設けられる。この例では、傾斜センサ12は、東を向く外面82と、南を向く外面82とに配置される。傾斜センサ12は、架台120と油圧ジャッキ22の間に配置される。
【0041】
逆打ち支柱80が所定の深さまで挿入されると、逆打ち支柱80は、ストッパ(図示せず)によって架台120に支持される。次に、複数の油圧ジャッキ22を開いて杭孔Hの壁面に油圧ジャッキ22を当接させる。これにより、逆打ち支柱80は、架台120に設けたガイドローラと油圧ジャッキ22とによって鉛直姿勢に支持される(支持工程)。
【0042】
その後、杭孔Hに建て込まれたトレミー管(図示せず)を通して杭孔HにコンクリートCを打設する。そして、逆打ち支柱80の下部を、硬化したコンクリートCすなわち鉄筋が埋設された場所打ちのコンクリート杭に固定する(打設工程)。この打設工程では、硬化前のコンクリートから逆打ち支柱80の外面82に加えられる圧力差によって、逆打ち支柱80が傾くことがある。制御装置30は、パンタグラフ式の油圧ジャッキ22の伸縮量を調整することで、逆打ち支柱80の傾きを調整する。
【0043】
作業者は、入力手段34を操作し、「自動調整モード」を選択する。自動調整モードが選択された後、制御装置30は、各傾斜センサ12に対して、角度の検出を開始するよう信号を送る。傾斜センサ12は、鉛直軸線Vに対する逆打ち支柱80の長手軸線Xの傾き角度を逆打ち支柱80の状態として検出する。傾斜センサ12は、連続的に角度の検出を行ってもよいし、予め設定した時間毎に角度の検出を行ってもよい。
【0044】
取得部32aは、傾斜センサ12から、鉛直軸線Vに対する逆打ち支柱80の長手軸線Xの傾き角度を受信する。取得部32aは、傾き角度の情報に基づいて、変位情報を取得する(S10)。ここで、取得部32aが、傾斜センサから傾き角度10°を受信したとする。また、架台120のガイドローラから傾斜センサ12の取付位置までの長さは30mであるとする。この場合、取得部32aは、傾き角度10°の正接に、ガイドローラから傾斜センサ12の取付位置までの長さ30mを乗ずる処理をすることで、鉛直軸線Vに対する逆打ち支柱80の長手軸線Xの水平方向のずれを示す情報(変位情報)を取得する。この例では、取得部32aが、変位情報として、東方向に2(+2)、南方向に1(-1)を取得したとする。
【0045】
次いで、生成部32bは、変位情報から油圧ジャッキの伸縮量を求め、それを制御情報とする(S20)。この例では、生成部32bは、東方向に2(+2)、南方向に1(-1)という変位情報から、油圧ジャッキ22の伸縮量を決める。具体的には生成部32bは、変位情報が東方向に0且つ南方向に0となるように、油圧ジャッキの伸縮量を求め、これを制御情報とする。
【0046】
次いで、動作制御部32cは、制御情報から、油圧ジャッキ22に必要とされる油圧を求め、これを動作情報とする(S30)。この動作情報に応じて油圧ポンプが駆動することで、油圧ジャッキ22が、逆打ち支柱80の傾きを調整する。その結果、逆打ち支柱80の傾き角度10°が0°になるように調整され、逆打ち支柱80の長手軸線Xと鉛直軸線Vが一致する。
【0047】
上記各実施形態においては、以下のような態様が開示される。
(態様1)
制御装置30は、逆打ち支柱80の状態を検出する検出手段10、及び逆打ち支柱80の傾きを調整する調整手段20と通信可能に接続された制御装置30であって、検出手段10で検出された逆打ち支柱80の状態に基づいて、鉛直軸線Vに対する逆打ち支柱80の長手軸線Xのずれを示す変位情報を取得する取得部32aと、変位情報に基づいて、傾きを調整するように、調整手段20の動作を制御するための制御情報を生成する生成部32bと、制御情報に基づいて、調整手段20を動作させるための動作情報を生成する動作制御部32cと、を有する。
【0048】
態様1の制御装置30によれば、逆打ち支柱80の傾きが検出された場合、自動で傾きを調整するよう調整手段20を動作させることができる。このため、これまで人力により行っていた、変位情報の確認及び調整手段20の操作を省力化でき、逆打ち支柱80の傾きの調整に関する作業員の負担を軽減することができる。また、作業員の操作間違いによるヒューマンエラーを抑制することができる。
【0049】
(態様2)
制御システム1は、逆打ち支柱80の状態を検出する検出手段10と、逆打ち支柱80の傾きを調整する調整手段20と、検出手段10及び調整手段20と通信可能に接続された制御装置30と、を有し、制御装置30は、検出手段10で検出された逆打ち支柱80の状態に基づいて、鉛直軸線Vに対する逆打ち支柱80の長手軸線Xのずれを示す変位情報を取得し、変位情報に基づいて、傾きを調整するように、調整手段20の動作を制御するための制御情報を生成し、制御情報に基づいて、調整手段20を動作させるための動作情報を生成する。
【0050】
態様2の制御システム1によれば、逆打ち支柱80の傾きが検出された場合、自動で傾きを調整するよう調整手段20を動作することができる。このため、これまで人力により行っていた、変位情報の確認及び調整手段20の操作を省力化でき、逆打ち支柱80の傾きの調整に関する作業員の負担を軽減することができる。また、作業員の操作間違いによるヒューマンエラーを抑制することができる。
【0051】
(態様3)
態様2において、調整手段20は、逆打ち支柱80の外面82に取付けられ、逆打ち支柱80が建て込まれる杭孔Hと当該逆打ち支柱80との間に位置するパンタグラフ式の油圧ジャッキ22であり、制御装置30は、油圧ジャッキ22の伸縮量を制御情報として、生成する。
【0052】
態様3の制御システム1によれば、逆打ち支柱80の傾きの調整手段として油圧ジャッキ22が設けられる。油圧ジャッキ22は、杭孔Hと逆打ち支柱80の外面82との間に位置することから、油圧ジャッキ22を伸縮させることで、逆打ち支柱80の傾きを高精度で調整することができる。
【0053】
(態様4)
態様3において、油圧ジャッキ22は、杭孔H内に打設されるコンクリートCの天端面CAの上方近傍に配置される。
【0054】
態様4の制御システム1によれば、油圧ジャッキ22が逆打ち支柱80の外面82に圧力を加える位置を、硬化前のコンクリートが逆打ち支柱80の外面82に圧力を加える位置の近くに配置できる。このため、逆打ち支柱80の傾きを高精度で調整することができる。
【0055】
(態様5)
態様2から4において、調整手段20は、逆打ち支柱80が建て込まれる杭孔H内において逆打ち支柱80の周囲に配置される複数の配管に、コンクリートCを供給するための少なくとも一つのポンプ車であり、制御装置30は、コンクリートCを供給するべき配管に対するコンクリートの供給量を制御情報として、生成する。
【0056】
態様5の制御システム1によれば、通常、逆打ち支柱80の周囲に配置される配管にコンクリートCを供給するためのポンプ車を、逆打ち支柱80の傾きを調整するためにも使用する。このため、逆打ち支柱80の傾きを調整するための設備を別途用意する必要がないので、設備コストを低減することができる。また、当該設備を、設置するための時間を短縮できるので、工期短縮を実現できる。
【0057】
(態様6)
プログラムは、逆打ち支柱80の状態を検出する検出手段10、及び逆打ち支柱80の傾きを調整する調整手段20と通信可能に接続された制御装置30に実行させるためのプログラムであって、制御装置30に、検出手段10で検出された逆打ち支柱80の状態に基づいて、鉛直軸線Vに対する逆打ち支柱80の長手軸線Xのずれを示す変位情報を取得させ、変位情報に基づいて、逆打ち支柱80の傾きを調整するように、調整手段20の動作を制御するための制御情報を生成させ、制御情報に基づいて、調整手段20を動作させるための動作情報を生成させる。
【0058】
態様6のプログラムによれば、逆打ち支柱80の傾きが検出された場合、自動で傾きを調整するよう調整手段20を動作させることができる。このため、これまで人力により行っていた、変位情報の確認及び調整手段20の操作を省力化でき、逆打ち支柱80の傾きの調整に関する作業員の負担を軽減することができる。また、自動制御のため作業員の操作間違いによるヒューマンエラーを抑制することができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に係る制御システム1、制御装置30に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【0060】
上記実施形態では、制御装置30を取得部32aとして機能させる構成について説明したが、取得部は、制御装置30とは別に設けてもよい。この場合、制御装置30、別体の取得部から、有線又は無線による電気通信回線を介して、変位情報を取得してもよい。
【0061】
上記実施形態では、制御装置30が、リアルタイムで、逆打ち支柱80の傾きを調整する例を説明した。しかし、制御装置30は、予め設定した時間(例えば10分など)で、逆打ち支柱80の傾きを調整してもよい。
【0062】
上記実施形態では、制御装置30が、取得した変位情報に基づいて、逆打ち支柱80の傾きを調整する場合を説明した。しかし、制御装置30は、取得した変位情報が予め設定した閾値を超えた場合に、逆打ち支柱80の傾きを調整するよう、調整手段20を駆動させてもよい。また、制御装置30は、取得した変位情報を過去データとして記憶しておき、過去データに基づいて閾値を設定してもよい。
【0063】
上記実施形態では、調整手段20としてパンタグラフ式の油圧ジャッキを挙げたが、調整手段20としては、機械式のジャッキやエア式のジャッキであってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 制御システム、10 検出手段、20 調整手段、30 制御装置、32a 取得部、32b 生成部、32c 動作制御部、80 逆打ち支柱、82 外面、C コンクリート、CA 天端面、H 杭孔、V 鉛直軸線、X 長手軸線