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特開2024-158464複合型不織布及び複合型不織布の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158464
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】複合型不織布及び複合型不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 5/03 20120101AFI20241031BHJP
   D04H 5/00 20120101ALI20241031BHJP
【FI】
D04H5/03
D04H5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073685
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊弥
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AA14
4L047AB02
4L047AB03
4L047AB04
4L047AB06
4L047CA19
4L047CB01
(57)【要約】
【課題】湿潤時の引張強度を維持しつつ、手触りの柔らかさにも優れる複合型不織布及び複合型不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン製のスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布であって、複合型不織布の坪量が45g/m以上150g/m以下、厚さが0.35mm以上1.00mm以下であり、複合型不織布の坪量に対するスパンボンド不織布の坪量の比率が17%以上26%以下であり、複合型不織布のMD方向におけるカンチレバー値(mm)を、複合型不織布の坪量(g/m)で除した値が0.80未満であることを特徴とする、複合型不織布及び複合型不織布の製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン製のスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布であって、
複合型不織布の坪量が45g/m以上150g/m以下、厚さが0.35mm以上1.00mm以下であり、
複合型不織布の坪量に対する前記スパンボンド不織布の坪量の比率が17%以上26%以下であり、
複合型不織布のMD方向におけるカンチレバー値(mm)を、複合型不織布の坪量(g/m)で除した値が0.80未満であることを特徴とする、複合型不織布。
【請求項2】
前記スパンボンド不織布の単体における、MD方向の破断伸び率が65%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布。
【請求項3】
複合型不織布のJIS P 8135に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDT(gf/25mm)を、複合型不織布の坪量(g/m)で除した値が29以上であることを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布。
【請求項4】
複合型不織布のJIS P 8135に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDTが1900gf/25mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布。
【請求項5】
複合型不織布のMD方向におけるカンチレバー値が75.0mm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の複合型不織布。
【請求項6】
ポリプロピレン製のスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化する、複合型不織布の製造方法であって、
前記スパンボンド不織布の単体におけるMD方向の破断伸び率が65%以上であり、
複合型不織布の坪量が45g/m以上150g/m以下、厚さが0.35mm以上1.00mm以下であり、
複合型不織布の坪量に対する前記スパンボンド不織布の坪量の比率が17%以上26%以下であることを特徴とする、複合型不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合型不織布及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水や汚れを拭き取るためのワイパーとして、紙製のワイパーや不織布製のワイパーがよく知られている。
【0003】
しかし、近年はそれ以外にもパルプ繊維と合成繊維を積層又は混載した、いわゆる複合型不織布のワイパーが販売されている。
【0004】
ワイパーに用いられる複合型不織布の特徴として、吸水性、使用感(拭き心地、手持ちのボリューム感)、丈夫さ(強度)、繊維の脱落の少なさ等が挙げられる。
【0005】
また、複合型不織布の製造方法として、水性、油性の液体の吸液性に富むパルプ繊維と強度に優れる合成繊維を使ったスパンボンド不織布を水流交絡し、強度と吸液性を両立させたシートを製造する技術がある。
このとき、パルプ繊維ウェブは一般的な湿式抄紙法、又は乾式エアレイドにて供給することができる。また、湿式抄紙で抄造したシートとしても供給することができる。
【0006】
そのような複合型不織布の先行技術文献として、例えば、特許文献1には、スパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化してある複合型の不織布ワイパーであって、スパンボンド不織布は、紡糸された樹脂繊維を接続する複数の融着点を含んで形成されており、前記融着点の1個の面積が0.10~0.50mmであり、かつ、当該融着点の面積率が7~20%に設定されており、パルプ繊維ウェブの坪量は30~70g/mである、ことを特徴とする複合型不織布ワイパーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-051010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のパルプとスパンボンド不織布からなる複合型不織布は、対人向けの拭き取り等においてはシートが固いことが多く、柔らかさ(風合い)の改善が望まれている。
【0009】
しかし、スパンボンド不織布の配合比を下げること等でシート柔らかさは向上するが、今度は拭き取り時の強度が低下し、特にシートが湿潤状態における拭き取りに支障が生じることが多かった。また、水流交絡時にパルプ繊維の脱落等が起こりやすくなり、操業性も悪化するという問題もあった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、湿潤時の引張強度を維持しつつ、手触りの柔らかさにも優れる複合型不織布及び複合型不織布の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者は鋭意検討を行い、ポリプロピレン製のスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布において、複合型不織布の坪量及び厚さをいずれも所定の数値範囲内とし、かつ、複合型不織布の坪量に対するスパンボンド不織布の坪量の比率及び複合型不織布のMD方向におけるカンチレバー値を複合型不織布の坪量で除した値を、いずれも所定の数値範囲内とすることで、湿潤時の引張強度を維持しつつ、手触りの柔らかさにも優れる複合型不織布とすることができ、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1)本発明の第1の態様は、ポリプロピレン製のスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化した複合型不織布であって、複合型不織布の坪量が45g/m以上150g/m以下、厚さが0.35mm以上1.00mm以下であり、複合型不織布の坪量に対する前記スパンボンド不織布の坪量の比率が17%以上26%以下であり、複合型不織布のMD方向におけるカンチレバー値(mm)を、複合型不織布の坪量(g/m)で除した値が0.80未満であることを特徴とする、複合型不織布である。
【0013】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載の複合型不織布であって、前記スパンボンド不織布の単体における、MD方向の破断伸び率が65%以上であることを特徴とするものである。
【0014】
(3)本発明の第3の態様は、(1)に記載の複合型不織布であって、複合型織布のJIS P 8135に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDT(gf/25mm)を、複合型不織布の坪量(g/m)で除した値が29以上であることを特徴とするものである。
【0015】
(4)本発明の第4の態様は、(1)に記載の複合型不織布であって、複合型不織布のJIS P 8135に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDTが1900gf/25mm以上であることを特徴とするものである。
【0016】
(5)本発明の第5の態様は、(1)に記載の複合型不織布であって、複合型不織布のMD方向におけるカンチレバー値が75.0mm未満であることを特徴とするものである。
【0017】
(6)本発明の第6の態様は、ポリプロピレン製のスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化する、複合型不織布の製造方法であって、前記スパンボンド不織布の単体におけるMD方向の破断伸び率が65%以上であり、複合型不織布の坪量が45g/m以上150g/m以下、厚さが0.35mm以上1.00mm以下であり、複合型不織布の坪量に対する前記スパンボンド不織布の坪量の比率が17%以上26%以下であることを特徴とする、複合型不織布の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、湿潤時の引張強度を維持しつつ、手触りの柔らかさにも優れる複合型不織布及び複合型不織布の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0020】
<複合型不織布>
本実施形態に係る複合型不織布は、ポリプロピレン製のスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化したものである。
なお、スパンボンド不織布とパルプ繊維ウェブの一体化方法に関しては後述する。
【0021】
スパンボンド不織布は、ポリプロピレン製であり、主としてポリプロピレン繊維を含むが、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリエチレン及びポリスチレンからなる群から選択された1種類以上の合成繊維を更に含んでいてもよい。
【0022】
パルプ繊維ウェブは、ラジアータパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、ロッジポールパイン、スプルース及びダグラスファーからなる群から選択された1種類以上の針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)の繊維を含むことが好ましい。
なお、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)以外に、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等、一般的なパルプ繊維も含んでいてもよいが、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)及び広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)を含むことが好ましい。また、パルプ繊維におけるNBKPとLBKPの含有割合は50:50以上100:0以下が好ましく、70:30以上100:0以下がより好ましく、90:10以上100:0以下が更に好ましく、100:0が最も好ましい。
【0023】
複合型不織布の坪量は、45g/m以上150g/m以下であり、坪量を上記の数値範囲内とすることで、湿潤時の引張強度を維持しつつ、手触りの柔らかさにも優れる複合型不織布とすることができる。
なお、複合型不織布の坪量は50g/m以上130g/m以下であることが好ましく、更には、55g/m以上100g/m以下であることがより好ましい。
坪量はJIS P 8124に準拠して測定される。
【0024】
また、複合型不織布の坪量に対する(一体化前の)スパンボンド不織布の坪量の比率は17%以上26%以下である。比率を上記の数値範囲内とすることで、湿潤時の引張強度を維持しつつ、手触りの柔らかさにも優れる複合型不織布とすることができる。
なお、複合型不織布の坪量に対する(一体化前の)スパンボンド不織布の坪量の比率は18%以上24%以下であることが好ましい。比率は、スパンボンド不織布の坪量÷複合不織布の坪量×100(%)で算出する。
【0025】
また、複合型不織布の厚さは0.35mm以上1.00mm以下である。複合型不織布の厚さを上記の数値範囲内とすることで、湿潤時の引張強度を維持しつつ、手触りの柔らかさにも優れる複合型不織布とすることができる。この場合における厚さとは、1プライの状態の複合型不織布の厚さのことを指す。
なお、複合型不織布の厚さは0.42mm以上0.90mm以下であることが好ましい。厚さの測定は、ピーコック紙厚計にて、37.85gf/cmの圧力下にて測定する。
【0026】
そして、複合型不織布のJIS P 8135に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDTが1900gf/25mm以上であることが好ましい。WMDTが上記の数値範囲内であることにより、湿潤時の引張強度に優れる複合型不織布とすることができる。この場合におけるMD方向とは、複合型不織布の製造時における製造方向(流れ方向、縦方向とも称する)を意味し、CD方向とは、MD方向に直交する方向(幅方向、横方向とも称する)を意味する。
なお、湿潤時のMD方向の引張強度WMDTは2000gf/25mm以上6000gf/25mm以下であることがより好ましい。引張強度は、複合型不織布から切り出した幅25mmの試験片を水に1秒以上浸漬した後、十分な吸水性のあるシート上に3秒程度静置して水を切った後、引張試験機を用いて測定する。測定条件としては、チャック間距離を100mm、引張速度を300mm/min、4回測定の平均値(n=4)とする。
【0027】
また、複合型不織布のJIS P 8135に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDT(gf/25mm)を、複合型不織布の坪量(g/m)で除した値は、29以上であることが好ましい。除した値が29未満であると、複合型不織布が湿潤時の引張強度に劣る。
なお、複合型不織布のJIS P 8135に基づく湿潤時のMD方向の引張強度WMDT(gf/25mm)を、複合型不織布の坪量(g/m)で除した値は、32以上100以下であることがより好ましい。
【0028】
また、複合型不織布のMD方向におけるカンチレバー値は、75.0mm未満であることが好ましい。カンチレバー値が75.0mm以上であると、複合型不織布が手触りの柔らかさに劣る。
なお、複合型不織布のMD方向におけるカンチレバー値は、30.0mm以上60.0mm以下であることがより好ましい。
【0029】
また、複合型不織布のCD方向におけるカンチレバー値は、32.0mm未満であることが好ましい。カンチレバー値が32.0mm以上であると、複合型不織布が手触りの柔らかさに劣る。
なお、複合型不織布のCD方向におけるカンチレバー値は、20.0mm以上30.0mm以下であることがより好ましい。
各方向のカンチレバー値は、JIS L 1096カンチレバー法に従い、複合型不織布から切り出したサンプルの表裏(各n=7)で測定し、平均を算出する。また、測定はMD方向(縦方向)とCD方向(横方向)の両方で行う。
【0030】
さらに、複合型不織布のMD方向におけるカンチレバー値(mm)を、複合型不織布の坪量(g/m)で除した値は0.80未満である。値が0.80以上であると、複合型不織布が湿潤時の引張強度に劣り、かつ、手触りの柔らかさにも劣る。
なお、複合型不織布のMD方向におけるカンチレバー値(mm)を、複合型不織布の坪量(g/m)で除した値は0.20以上0.78以下であることが好ましい。
【0031】
さらに、複合型不織布のCD方向におけるカンチレバー値(mm)を、複合型不織布の坪量(g/m)で除した値は0.80未満であることが好ましい。値が0.80以上であると、複合型不織布が湿潤時の引張強度に劣り、かつ、手触りの柔らかさにも劣る。
なお、複合型不織布のCD方向におけるカンチレバー値(mm)を、複合型不織布の坪量(g/m)で除した値は0.15以上0.50以下であることがより好ましい。
【0032】
また、スパンボンド不織布の単体における、MD方向の破断伸び率が65%以上であることが好ましい。破断伸び率が65%未満であると、複合型不織布が湿潤時の引張強度に劣る。
なお、スパンボンド不織布の単体における、MD方向の破断伸び率は68%以上100%以下であることがより好ましく、72%以上90%以下であることが更に好ましい。破断伸び率が100%を超えると、複合型不織布の強度が低下し、拭き取り性に劣る。破断伸び率は、複合型不織布から切り出した試験片において、試験片幅25mmで、引張試験機を用いて測定する。測定条件として、チャック間距離を100mm、引張速度を300mm/min、n=4とする。
【0033】
<複合型不織布の製造方法>
本実施形態に係る複合型不織布の製造方法としては、特に制限はなく、公知の複合型不織布の製造方法により製造することができる。
そのような複合型不織布の製造方法において、ポリプロピレン製のスパンボンド不織布上にパルプ繊維ウェブを積層し一体化する方式は、スパンレース方式等の一般的な方式であってもよいが、吸水性能及び耐摩耗性の観点から、水流交絡であることが好ましい。水流交絡による一体化の工程に関しては、例えば、特許第6758116号公報に詳細に記載されている。
【実施例0034】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0035】
表1に示す各条件において、実施例1~3及び比較例1~4のそれぞれの複合型不織布を作製し、以下の評価を行った。なお、下記の評価以外の各パラメーターの測定は、上述した基準又は測定方法に従って行った。また、上述した基準又は測定方法による測定は、いずれも温度:23℃、湿度:50%RHの室内で行った。
【0036】
(シート柔らかさ)
複合型不織布のシート柔らかさの評価として、MD方向のカンチレバー値及びMD方向のカンチレバー値/坪量を用いた。測定した複合型不織布の坪量及びMD方向のカンチレバー値の数値について、下記の基準で評価を行った。
1:MD方向のカンチレバー値/坪量が0.80以上
2:MD方向のカンチレバー値/坪量が0.80未満であり、かつ、MD方向のカンチレバー値が75.0mm以上
3:MD方向のカンチレバー値/坪量が0.80未満であり、かつ、MD方向のカンチレバー値が75.0mm未満
【0037】
(湿潤時引張強度)
複合型不織布の湿潤時引張強度の評価として、WMDT及びWMDT/坪量を用いた。測定した複合型不織布の坪量及びWMDTの数値について、下記の基準で評価を行った。
1:WMDT/坪量が31未満
2:WMDT/坪量が31以上であり、かつ、WMDTが2000gf/25mm未満
3:WMDT/坪量が31以上であり、かつ、WMDTが2000gf/25mm以上
【0038】
表1に、各実施例及び各比較例の条件及び評価結果を示す。なお、各評価において全ての評価が「2」以上である場合を合格とした。
【0039】
【表1】
【0040】
以上より、本実施例によれば湿潤時の引張強度を維持しつつ、手触りの柔らかさにも優れる複合型不織布が得られることが確認された。