IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トーメーコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-画像処理装置 図1
  • 特開-画像処理装置 図2
  • 特開-画像処理装置 図3
  • 特開-画像処理装置 図4
  • 特開-画像処理装置 図5
  • 特開-画像処理装置 図6
  • 特開-画像処理装置 図7
  • 特開-画像処理装置 図8
  • 特開-画像処理装置 図9
  • 特開-画像処理装置 図10
  • 特開-画像処理装置 図11
  • 特開-画像処理装置 図12
  • 特開-画像処理装置 図13
  • 特開-画像処理装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158467
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073688
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 皇太
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA09
4C316AB04
4C316AB08
4C316AB11
4C316AB16
4C316FB21
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】 被検眼の検査を行う際の被検者の負担を軽減する技術を提供する。
【解決手段】 画像処理装置は、被検眼に設定された所定の範囲を撮影した複数の撮影データそれぞれの画質を評価する評価指標を決定する決定部と、決定した評価指標が最も高い撮影データを選択し、選択した撮影データから所望の検査結果を示す検査レポートを生成する生成部と、検査レポートを出力する出力部と、を備える。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に設定された所定の範囲を撮影した複数の撮影データそれぞれの画質を評価する評価指標を決定する決定部と、
決定した前記評価指標が最も高い前記撮影データを選択し、選択した前記撮影データから所望の検査結果を示す検査レポートを生成する生成部と、
前記検査レポートを出力する出力部と、
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記所定の範囲は、第1の範囲と、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲を含み、
前記撮影データは、前記第1の範囲における第1撮影データと前記第2の範囲における第2撮影データを含み、
前記生成部は、
前記第1撮影データの中で前記評価指標が最も高い特定第1撮影データを選択するとともに、前記第2撮影データの中で前記評価指標が最も高い特定第2撮影データを選択し、
前記特定第1撮影データ及び前記特定第2撮影データから前記検査レポートをそれぞれ生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記評価指標は、前記撮影データに含まれる前記被検眼の断層画像の輝度に基づいて画質を評価する輝度評価指標である、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記生成部は、決定した前記評価指標が所定の閾値未満である場合には、前記検査レポートを生成しない、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成部は、決定した前記評価指標が最も高い前記撮影データが複数存在する場合に、前記評価指標が最も高い全ての前記撮影データから前記検査レポートを生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記被検眼に設定された前記所定の範囲に対して光を走査する撮影処理を実行することで、前記所定の範囲における複数の断層画像を撮影する撮影部と、
前記複数の断層画像に基づいて、前記所定の範囲における前記撮影データを作成する作成部と、
をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の断層画像を取得する眼科装置が開発されている。眼科装置は、光源からの光を被検眼に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源からの光から参照光を生成する参照光学系を備えている。測定の際には、測定光学系により導かれた反射光(測定光)と参照光学系により生成された参照光とを合波した干渉光から、被検眼の断層画像を生成する。被検眼の断層画像が適切に撮影されていない場合には、被検眼の断層画像を再撮影する必要が生じる。このため、眼科装置では、断層画像が適切に撮影されているか否かを示す評価指標を検査者に提示することがある。例えば、特許文献1には、評価指標の一例として、画像の輝度値に関するヒストグラムから求められる画質評価指標であるQI(Quality Index)について開示されている。特許文献1の眼科装置では、評価指標を表示することによって、検査者に断層画像が適切に撮影されているか否かを提示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-9798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような眼科装置では、被検眼に設定された所定の範囲における断層画像を複数回取得し、各回における複数の断層画像に基づく撮影データ(すなわち、複数の撮影データ)を作成する場合がある。従来の眼科装置では、このような場合、評価指標に関わらず作成した全ての撮影データを解析して、検査結果を示す検査レポートを生成していた。このため、撮影データの解析(すなわち、検査レポートの生成)に時間を要するとともに、検査者が複数の検査レポートから適切なものを選別するのに時間を要していた。その結果、被検者を拘束する時間が長くなっていた。本明細書は、被検眼の検査を行う際の被検者の負担を軽減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する画像処理装置は、被検眼に設定された所定の範囲を撮影した複数の撮影データそれぞれの画質を評価する評価指標を決定する決定部と、決定した前記評価指標が最も高い前記撮影データを選択し、選択した前記撮影データから所望の検査結果を示す検査レポートを生成する生成部と、前記検査レポートを出力する出力部と、を備える。
【0006】
なお、本明細書でいう「所定の範囲」は、3次元の空間的に広がる範囲だけでなく、2次元の平面的に広がる範囲も含む。すなわち、「撮影データ」は、被検眼の立体的なデータだけでなく、平面的なデータも含む。
【0007】
上記の画像処理装置では、複数の撮影データそれぞれについて評価指標を決定し、複数の撮影データの中から、決定した評価指標が最も高い撮影データについての検査レポートを生成して出力する。このため、上記の画像処理装置では、短時間で比較的に精度の高い検査レポートを生成することができる。また、検査者に対しては、複数の撮影データのうち、評価指標が最も高い撮影データ(すなわち、適切な撮影データ)についての検査レポートが提示されるため、所望の検査が適切に行われたか否かを短時間で確認することができる。その結果、被検者を拘束する時間が短くなり、被検者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例に係る光断層画像撮影装置の光学系の概略構成を示す図。
図2】実施例に係る光断層画像撮影装置の制御系を示すブロック図。
図3】サンプリングトリガー/クロック発生器の構成を示すブロック図。
図4】被検眼の断層画像を撮影する処理の一例を示すフローチャート。
図5】検査の種類を説明するための図。
図6】被検眼の正面画像において設定された撮影範囲の一例を示す図。
図7】被検眼の検査結果を示す検査レポートを出力する処理の一例を示すフローチャート。
図8】QI(Quality Index)を算出する式を説明するための図。
図9】最大輝度を算出する処理の一例を示すスローチャート。
図10】最大輝度を算出する際に用いるAスキャン情報を間引く処理について説明するための図。
図11】最大輝度を算出する際に用いるAスキャン情報の深さ方向の範囲を限定する処理を説明するための図であり、(a)は被検眼が適切な位置にある状態で撮影された場合を示し、(b)は被検眼がずれた状態で撮影された場合を示す。
図12】被検眼の同一断面において、QIがそれぞれ異なる断層画像の一例を示す図。
図13】複数の撮影データを検査の種類及び撮影範囲別に分類した状態の一例を示す図。
図14】QIの評価結果と固視状態の評価結果を示す図であり、(a)は被検眼が適切な位置にある場合を示し、(b)は被検眼が瞬目した場合を示し、(c)は被検眼がずれた位置にある場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書が開示する画像処理装置では、前記所定の範囲は、第1の範囲と、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲を含んでもよい。前記撮影データは、前記第1の範囲における第1撮影データと前記第2の範囲における第2撮影データを含んでもよい。前記生成部は、前記第1撮影データの中で前記評価指標が最も高い特定第1撮影データを選択するとともに、前記第2撮影データの中で前記評価指標が最も高い特定第2撮影データを選択し、前記特定第1撮影データ及び前記特定第2撮影データから前記検査レポートをそれぞれ生成してもよい。
【0011】
疾患が広範囲に及んでいる場合や疾患部位が複数存在する場合等には、被検眼の異なる複数の範囲の撮影データを解析する必要が生じ得る。上記の構成では、第1の範囲における第1撮影データの中で評価指標が最も高い特定第1撮影データから検査レポートを生成するとともに、第2の範囲における第2撮影データの中で評価指標が最も高い特定第2撮影データから検査レポートを生成する。このため、検査者は、各範囲について、所望の検査が適切に行われたか否かを短時間で確認することができる。
【0012】
本明細書が開示する画像処理装置では、前記評価指標は、前記撮影データに含まれる前記被検眼の断層画像の輝度に基づいて画質を評価する輝度評価指標であってもよい。
【0013】
このような構成では、例えば、アライメントやフォーカスが適切であることや、被検眼の瞬目の有無等を評価できる。したがって、断層画像の画質を適切に評価することができる。
【0014】
本明細書が開示する画像処理装置では、前記生成部は、前記評価指標が所定の閾値未満である場合には、前記検査レポートを生成しなくてもよい。
【0015】
決定した評価指標が所定の閾値未満である場合とは、例えば、被検眼の撮影時に、フォーカスが合っていない場合や、被検眼と装置との位置関係が適切でない場合、被検眼が固視微動や瞬目している場合等が考えられる。これらの状態で撮影された断層画像に基づく撮影データから生成される検査レポートは精度が低い。このため、上記の構成では、精度が低い検査レポートを生成することが抑制される。
【0016】
本明細書が開示する画像処理装置では、前記生成部は、決定した前記評価指標が最も高い前記撮影データが複数存在する場合に、前記評価指標が最も高い全ての前記撮影データから前記検査レポートを生成してもよい。
【0017】
このような構成では、検査者は、精度が高い複数の検査レポートを確認することにより、所望の検査が適切に行われているか否かをより確実に判断することができる。
【0018】
本明細書が開示する画像処理装置は、前記被検眼に設定された前記所定の範囲に対して光を走査する撮影処理を実行することで、前記所定の範囲における複数の断層画像を撮影する撮影部と、前記複数の断層画像に基づいて、前記所定の範囲における前記撮影データを作成する作成部と、をさらに備えてもよい。
【0019】
(実施例)
以下、本実施例に係る光断層画像撮影装置について説明する。本実施例の光断層画像撮影装置は、波長掃引型の光源を用いた波長掃引型のフーリエドメイン方式(swept-source optical coherence tomography:SS-OCT)で、被検物の偏光特性を捉えることが可能な偏光感受型OCT(polarization-sensitive OCT:PS-OCT)の装置である。
【0020】
図1に示すように、本実施例の光断層画像撮影装置は、光源11と、光源11の光から測定光を生成する測定光生成部(21~29、31、32)と、光源11の光から参照光を生成する参照光生成部(41~46、51)と、測定光生成部で生成される被検眼500からの反射光と参照光生成部で生成される参照光とを合波して干渉光を生成する干渉光生成部60、70と、干渉光生成部60、70で生成された干渉光を検出する干渉光検出部80、90を備えている。
【0021】
(光源)
光源11は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長(波数)が所定の周期で変化する。被検眼500に照射される光の波長が変化(掃引)するため、被検眼500からの反射光と参照光との干渉光から得られる信号をフーリエ解析することで、被検眼500の深さ方向の各部位から反射される光の強度分布を得ることができる。
【0022】
なお、光源11には、偏光制御装置12及びファイバカプラ13が接続され、ファイバカプラ13にはPMFC(偏波保持ファイバカプラ)14及びサンプリングトリガー/クロック発生器100が接続されている。したがって、光源11から出力される光は、偏光制御装置12及びファイバカプラ13を介して、PMFC14及びサンプルトリガー/クロック発生器100のそれぞれに入力される。サンプリングトリガー/クロック発生器100は、光源11の光を用いて、後述する信号処理器83、93それぞれのサンプリングトリガー及びサンプリングクロックを生成する。
【0023】
(測定光生成部)
測定光生成部(21~29、31、32)は、PMFC14に接続されたPMFC21と、PMFC21から分岐する2つの測定光路S1、S2と、2つの測定光路S1、S2を接続する偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25と、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に接続されるコリメータレンズ26、ガルバノミラー27、28及びレンズ29を備えている。測定光路S1には、光路長差生成部22とサーキュレータ23が配置されている。測定光路S2には、サーキュレータ24のみが配置されている。したがって、測定光路S1と測定光路S2との光路長差ΔLは、光路長差生成部22によって生成される。光路長差ΔLは、被検眼500の深さ方向の測定範囲よりも長く設定してもよい。これにより、光路長差の異なる干渉光が重なることを防止できる。光路長差生成部22には、例えば、光ファイバが用いられてもよいし、ミラーやプリズム等の光学系が用いられてもよい。本実施例では、光路長差生成部22に、1mのPMファイバを用いている。また、測定光生成部は、PMFC31、32をさらに備えている。PMFC31は、サーキュレータ23に接続されている。PMFC32は、サーキュレータ24に接続されている。
【0024】
上記の測定光生成部(21~29、31、32)には、PMFC14で分岐された一方の光(すなわち、測定光)が入力される。PMFC21は、PMFC14から入力する測定光を、第1測定光と第2測定光に分割する。PMFC21で分割された第1測定光は測定光路S1に導かれ、第2測定光は測定光路S2に導かれる。測定光路S1に導かれた第1測定光は、光路長差生成部22及びサーキュレータ23を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。測定光路S2に導かれた第2測定光は、サーキュレータ24を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。PMファイバ304は、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に、PMファイバ302に対して円周方向に90度回転した状態で接続される。これにより、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される第2測定光は、第1測定光に対して直交する偏光成分を持った光となる。測定光路S1に光路長差生成部22が設けられているため、第1測定光は第2測定光に対して光路長差生成部22の距離だけ遅延している(すなわち、光路長差ΔLが生じている)。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25は、入力される第1測定光と第2測定光を重畳する。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25から出力される光(第1測定光と第2測定光が重畳された光)は、コリメータレンズ26、ガルバノミラー27、28及びレンズ29を介して被検眼500に照射される。被検眼500に照射される光は、ガルバノミラー27、28によってx-y方向に走査される。
【0025】
被検眼500に照射された光は、被検眼500によって反射する。ここで、被検眼500で反射される光は、被検眼500の表面や内部で散乱する。被検眼500からの反射光は、入射経路とは逆に、レンズ29、ガルバノミラー28、27及びコリメータレンズ26を通って、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25は、入力される反射光を、互いに直交する2つの偏光成分に分割する。ここでは便宜上それらを水平偏光反射光(水平偏光成分)と垂直偏光反射光(垂直偏光成分)と呼ぶ。そして、水平偏光反射光は測定光路S1に導かれ、垂直偏光反射光は測定光路S2に導かれる。
【0026】
水平偏光反射光は、サーキュレータ23により光路が変更され、PMFC31に入力される。PMFC31は、入力される水平偏光反射光を分岐して、PMFC61、71のそれぞれに入力する。したがって、PMFC61、71に入力される水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。垂直偏光反射光は、サーキュレータ24により光路が変更され、PMFC32に入力される。PMFC32は、入力される垂直偏光反射光を分岐して、PMFC62、72に入力する。したがって、PMFC62、72に入力される垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。
【0027】
(参照光生成部)
参照光生成部(41~46、51)は、PMFC14に接続されたサーキュレータ41と、サーキュレータ41に接続された参照遅延ライン(42、43)と、サーキュレータ41に接続されたPMFC44と、PMFC44から分岐する2つの参照光路R1、R2と、参照光路R1に接続されるPMFC46と、参照光路R2に接続されるPMFC51を備えている。参照光路R1には、光路長差生成部45が配置されている。参照光路R2には、光路長差生成部は設けられていない。したがって、参照光路R1と参照光路R2との光路長差ΔL’は、光路長差生成部45によって生成される。光路長差生成部45には、例えば、光ファイバが用いられる。光路長差生成部45の光路長ΔL’は、光路長差生成部22の光路長ΔLと同一としてもよい。光路長差ΔLとΔL’を同一にすることで、後述する複数の干渉光の被検眼500に対する深さ位置が同一となる。すなわち、取得される複数の断層像の位置合わせが不要となる。
【0028】
上記の参照光生成部(41~46、51)には、PMFC14で分岐された他方の光(すなわち、参照光)が入力される。PMFC14から入力される参照光は、サーキュレータ41を通って参照遅延ライン(42、43)に入力される。参照遅延ライン(42、43)は、コリメータレンズ42と参照ミラー43によって構成されている。参照遅延ライン(42、43)に入力された参照光は、コリメータレンズ42を介して参照ミラー43に照射される。参照ミラー43で反射された参照光は、コリメータレンズ42を介してサーキュレータ41に入力される。ここで、参照ミラー43は、コリメータレンズ42に対して近接又は離間する方向に移動可能となっている。本実施例では、測定を開始する前に、被検眼500からの信号がOCTの深さ方向の測定範囲内に収まるように、参照ミラー43の位置を調整している。
【0029】
参照ミラー43で反射された参照光は、サーキュレータ41により光路が変更され、PMFC44に入力される。PMFC44は、入力する参照光を、第1参照光と第2参照光に分岐する。第1参照光は参照光路R1に導かれ、第2参照光は参照光路R2に導かれる。第1参照光は、光路長差生成部45を通ってPMFC46に入力される。PMFC46に入力された参照光は、第1分岐参照光と第2分岐参照光に分岐される。第1分岐参照光は、コリメータレンズ47、レンズ48を通ってPMFC61に入力される。第2分岐参照光は、コリメータレンズ49、レンズ50を通って、PMFC62に入力される。第2参照光は、PMFC51に入力され、第3分岐参照光と第4分岐参照光に分割される。第3分岐参照光は、コリメータレンズ52、レンズ53を通って、PMFC71に入力される。第4分岐参照光は、コリメータレンズ54、レンズ55を通って、PMFC72に入力される。
【0030】
(干渉光生成部)
干渉光生成部60、70は、第1干渉光生成部60と、第2干渉光生成部70を備えている。第1干渉光生成部60は、PMFC61、62を有している。上述したように、PMFC61には、測定光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第1分岐参照光(光路長差ΔL’を有する光)が入力される。ここで、水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC61では、水平偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第1分岐参照光とが合波されて第1干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0031】
また、PMFC62には、測定光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第2分岐参照光(光路長差ΔL’を有する光)が入力される。ここで、垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC62では、垂直偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2分岐参照光とが合波されて第2干渉光(垂直偏光成分)が生成される。
【0032】
第2干渉光生成部70は、PMFC71、72を有している。上述したように、PMFC71には、測定光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第3分岐参照光(光路長差ΔL’を有しない光)が入力される。したがって、PMFC71では、水平偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第3分岐参照光とが合波されて第3干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0033】
また、PMFC72には、測定光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第4分岐参照光(光路長差ΔL’を有しない光)が入力される。したがって、PMFC72では、垂直偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第4分岐参照光とが合波されて第4干渉光(垂直偏光成分)が生成される。第1干渉光と第2干渉光は測定光路S1を経由した測定光に対応しており、第3干渉光と第4干渉光は測定光路S2を経由した測定光に対応している。
【0034】
(干渉光検出部)
干渉光検出部80、90は、第1干渉光生成部60で生成された干渉光(第1干渉光及び第2干渉光)を検出する第1干渉光検出部80と、第2干渉光生成部70で生成された干渉光(第3干渉光及び第4干渉光)を検出する第2干渉光検出部90を備えている。
【0035】
第1干渉光検出部80は、バランス型光検出器81、82(以下、単に「検出器81,82」ともいう)と、検出器81、82に接続された信号処理器83を備えている。検出器81にはPMFC61が接続されており、検出器81の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC61は、第1干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器81に入力する。検出器81は、PMFC61から入力する位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第1干渉信号)に変換し、第1干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第1干渉信号は、水平偏光測定光による被検眼500からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号HHである。同様に、検出器82にはPMFC62が接続されており、検出器82の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC62は、第2干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器82に入力する。検出器82は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第2干渉信号)に変換し、第2干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第2干渉信号は、水平偏光測定光による被検眼500からの垂直偏光反射光と参照光の干渉信号HVである。
【0036】
信号処理器83は、第1干渉信号が入力される第1信号処理部84と、第2干渉信号が入力される第2信号処理部85を備えている。第1信号処理部84は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第1干渉信号をサンプリングする。また、第2信号処理部85は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第2干渉信号をサンプリングする。第1信号処理部84及び第2信号処理部85でサンプリングされた第1干渉信号と第2干渉信号は、後述する演算部202に入力される。信号処理器83には、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。
【0037】
第2干渉光検出部90は、第1干渉光検出部80と同様に、バランス型光検出器91、92(以下、単に「検出器91、92」ともいう)と、検出器91、92に接続された信号処理器93を備えている。検出器91にはPMFC71が接続されており、検出器91の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC71は、第3干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器91に入力する。検出器91は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第3干渉信号)に変換し、第3干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第3干渉信号は、垂直偏光測定光による被検眼500からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号VHである。同様に、検出器92にはPMFC72が接続されており、検出器92の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC72は、第4干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器92に入力する。検出器92は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第4干渉信号)に変換し、第4干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第4干渉信号は、垂直偏光測定光からによる被検眼500の垂直偏光反射光と参照光の干渉信号VVである。
【0038】
信号処理器93は、第3干渉信号が入力される第3信号処理部94と、第4干渉信号が入力される第4信号処理部95を備えている。第3信号処理部94は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第3干渉信号をサンプリングする。また、第4信号処理部95は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第4干渉信号をサンプリングする。第3信号処理部94及び第4信号処理部95でサンプリングされた第3干渉信号と第4干渉信号とは、後述する演算部202に入力される。信号処理器93にも、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。このような構成によると、被検眼500の4つの偏光特性を表す干渉信号を取得することができる。なお、本実施例では、2つの信号処理部を備える信号処理器83,93用いているが、このような構成に限定されない。例えば、4つの信号処理部を備える1つの信号処理器を用いてもよいし、1つの信号処理部を備える信号処理器を4つ用いてもよい。
【0039】
次に、本実施例に係る光断層画像撮影装置の制御系の構成を説明する。図2に示すように、光断層画像撮影装置は演算装置200によって制御される。演算装置200は、演算部202と、第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90によって構成されている。第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90と、演算部202は、測定部10に接続されている。演算部202は、測定部10に制御信号を出力し、ガルバノミラー27及び28を駆動することで測定光の被検眼500への入射位置を走査する。第1干渉光検出部80は、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号HHと干渉信号HV)に対して、サンプリングトリガー1をトリガーにして、測定部10から入力されるサンプリングクロック1に基づいて、第1サンプリングデータを取得し、演算部202に第1サンプリングデータを出力する。演算部202は、第1サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、HH断層画像とHV断層画像を生成する。第2干渉光検出部90は、サンプリングトリガー2をトリガーにして、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号VHと干渉信号VV)に対して、測定部10から入力されるサンプリングクロック2に基づいて、第2サンプリングデータを取得し、演算部202に第2サンプリングデータを出力する。演算部202は、第2サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、VH断層画像とVV断層画像を生成する。ここで、HH断層画像と、VH断層画像と、HV断層画像と、VV断層画像とは、同一位置の断層画像である。このため、演算部202は、被検眼500のジョーンズ行列を表す4つの偏光特性(HH、HV、VH、VV)の断層画像を生成することができる。
【0040】
図3に示すように、サンプリングトリガー/クロック発生器100は、ファイバカプラ102と、サンプリングトリガー発生器(140~152)と、サンプリングクロック発生器(160~172)を備えている。光源11からの光は、ファイバカプラ13とファイバカプラ102を介して、サンプリングトリガー発生器140及びサンプリングクロック発生器160にそれぞれ入力される。
【0041】
(サンプリングトリガー発生器)
サンプリングトリガー発生器140は、例えば、FBG(Fiber Bragg Grating)144を用いて、サンプリングトリガーを生成してもよい。図3に示すように、FBG144は、光源11から入射される光の特定の波長のみを反射して、サンプリングトリガーを生成する。生成されたサンプリングトリガーは、分配器150に入力される。分配器150は、サンプリングトリガーを、サンプリングトリガー1とサンプリングトリガー2に分配する。サンプリングトリガー1は、信号遅延回路152を介して、演算部202に入力される。サンプリングトリガー2は、そのまま演算部202に入力される。サンプリングトリガー1は、第1干渉光検出部80から演算部202に入力される干渉信号(第1干渉信号と第2干渉信号)のトリガー信号となる。サンプリングトリガー2は、第2干渉光検出部90から演算部202に入力される干渉信号(第3干渉信号と第4干渉信号)のトリガー信号となる。信号遅延回路152は、サンプリングトリガー1がサンプリングトリガー2に対して、光路長差生成部22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、第1干渉光検出部80から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数と、第2干渉光検出部90から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数を同じにすることができる。ここで、サンプリングトリガー1だけを生成してもよい。光路長差ΔLが既知であるので、第2干渉光検出部90から入力される干渉をサンプリングする際、サンプリングトリガー1から光路長差ΔLの分だけ時間を遅延するようにサンプリングを開始すればよい。
【0042】
(サンプリングクロック発生器)
サンプリングクロック発生器は、例えば、マッハツェンダー干渉計で構成されていてもよい。図3に示すように、サンプリングクロック発生器は、マッハツェンダー干渉計を用いて、等周波数のサンプリングクロックを生成する。マッハツェンダー干渉計で生成されたサンプリングクロックは、分配器172に入力される。分配器172は、サンプリングクロックを、サンプリングクロック1とサンプリングクロック2に分配する。サンプリングクロック1は、信号遅延回路174を通って、第1干渉光検出部80に入力される。サンプリングクロック2は、そのまま第2干渉光検出部90に入力される。信号遅延回路174は、光路長差生成部22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、光路長差生成部22の分だけ遅延している干渉光に対しても、同じタイミングでサンプリングすることができる。これにより、取得する複数の断層画像の位置ずれが防止できる。本実施例では、サンプリングクロックを生成するのに、マッハツェンダー干渉計を用いている。しかしながら、サンプリングクロックを生成するのに、マイケルソン干渉計を用いてもよいし、電気回路を用いてもよい。また、光源に、サンプリングクロック発生器を備えた光源を用いて、サンプリングクロックを生成してもよい。
【0043】
また、本実施例の光断層画像撮影装置は、被検眼500の正面画像を取得するSLO(Scanning Laser Ophthalmoscope)光学系(図示省略)を備えている。なお、SLO光学系には、公知の眼科装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な構成については説明を省略する。
【0044】
次に、図4を参照して、被検眼500の断層画像を撮影する処理について説明する。本実施例で生成される検査レポートは、被検眼500に設定された撮影範囲内における断層画像(撮影データ)を用いて生成された、所望の検査に対応するレポートである。このため、検査レポートの生成に先立って、被検眼500の断層画像が撮影される。図4に示すように、演算部202は、まず、検査の種類が選択されたか否かを判断する(S12)。検査者は、マウス等の入力手段(図示省略)を用いて、モニタ120に表示された複数の検査から所望の検査を複数選択する。検査の種類としては、例えば、キューブ方式、ライン方式、及びクロス方式が挙げられる。
【0045】
図5(a)に示すように、キューブ方式は、被検眼500の正面画像に対する所定の正方領域(例えば12mm×12mm)を撮影範囲Pとして設定し、当該撮影範囲P内におけるx方向に沿う断面(断層画像)C1をy方向の異なる複数の位置(例えば256箇所)において順次撮影して、各y方向位置における撮影範囲P内の断層画像を取得する方式である。キューブ方式では、このようにして得られた複数の断層画像に基づいて、撮影範囲P内の3次元の撮影データが取得される。キューブ方式では、各y方向位置における断面に対して光を1回走査して、当該断面における断層画像を取得する。
【0046】
図5(b)に示すように、ライン方式は、被検眼500の正面画像に対して、所定のy方向位置におけるx方向に沿う断面(断層画像)C2を撮影範囲として設定し、当該y方向位置における被検眼500の断層画像を取得する方式である。ライン方式では、同一のy方向位置における断面C2に対して光を複数回(例えば100回)走査し、当該断面C2における複数枚の断層画像を取得する。そして、取得した同一断面における複数枚の断層画像を加算平均処理することにより、被検眼500の特定の断面C2における1枚の断層画像が取得される。
【0047】
図5(c)に示すように、クロス方式は、被検眼500の正面画像に対して、所定のy方向位置におけるx方向に沿う断面C3と、所定のx方向位置におけるy方向に沿う断面C4を撮影範囲として設定し、交点Nで直交する2枚の断層画像を取得する方式である。クロス方式では、同一のy方向位置における断面C3に対して光を複数回(例えば50回)走査し、当該断面C3における複数枚の断層画像を取得する。そして、取得した同一断面における複数枚の断層画像を加算平均処理することにより、被検眼500の特定の断面C3における1枚の断層画像を取得する。クロス方式では、同一のx方向位置における断面C4に対しても同様の処理が行われる。
【0048】
検査者は、検査の種類の選択作業が終了すると、選択作業の完了を指示する。例えば、検査者は、入力手段を用いてモニタ120に表示される「OK」ボタンを押すことによって、選択作業の完了を指示する。演算部202は、上述した検査者による選択作業の完了が指示されるまで待機する(S12でNO)。以下では、検査の種類として、キューブ方式及びライン方式の2種類の検査が選択された状況を想定して説明を続ける。
【0049】
次いで、演算部202は、S12で選択された複数の検査のうちから、実行する検査の種類を決定する(S14)。実行する検査の種類は、検査者が入力手段を用いて決定してもよいし、演算部202が自動的に決定してもよい。以下では、初めにキューブ方式の検査を実行する場合について説明する。
【0050】
次いで、演算部202は、検査者から撮影範囲が入力されたか否かを判断する(S16)。撮影範囲は、S14において決定された検査について、被検眼500の正面画像内において断層画像を取得すべき領域を示す。S16では、まず、検査者が、図示しないジョイスティック等の操作部材を操作して、被検眼500に対して光断層画像撮影装置の位置合わせを行う。すなわち、演算部202は、検査者の操作部材の操作に応じて、図示しない位置調整機構を駆動する。これによって、被検眼500に対する光断層画像撮影装置のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。光断層画像撮影装置の位置合わせが行われると、調整後の位置における被検眼500の正面画像がモニタ120に表示される。検査者は、モニタ120に表示された正面画像内において、撮影範囲を設定する。図6は、位置合わせが行われた後の被検眼500の正面画像400の模式図である。S16では、例えば、図6(a)に示すように、検査者が正面画像400内においてキューブ方式で断層画像を取得すべき撮影範囲A1を設定する。撮影範囲は、例えば被検眼500の疾患部位の存在位置や範囲等に応じて適宜設定される。検査者は、入力作業が完了すると、例えば、S12と同様に入力作業の完了を指示する。演算部202は、上述した検査者による入力作業の完了が指示されるまで待機する(S16でNO)。
【0051】
次いで、演算部202は、被検眼500の正面画像を撮影する(S18)。演算部202は、SLO光学系により被検眼500の正面画像を撮影する。撮影された正面画像は、演算部202のメモリ(図示省略)に保存される。
【0052】
次いで、演算部202は、S14で決定された検査及びS16で設定された撮影範囲に基づいて、被検眼500の断層画像を撮影する(S20)。すなわち、演算部202は、正面画像400内に設定された撮影範囲A1(図6(a)参照)の断層画像をキューブ方式で撮影する。なお、S18の正面画像とS20の断層画像とは、略同時に取得される。
【0053】
次いで、演算部202は、設定された撮影範囲内における全ての断層画像を取得したか否かを判断する(S22)。すなわち、演算部202は、キューブ方式により、撮影範囲A1内におけるx方向に沿う断面をy方向の異なる256箇所において撮影したか否かを判断する。撮影範囲A1内における全ての断層画像を撮影することにより、撮影範囲A1内における3次元の撮影データを取得することができる。
【0054】
演算部202は、設定された撮影範囲内における全ての断層画像を取得すると(S22でYES)、取得した各断層画像(すなわち、撮影データ)をメモリ(不図示)に保存し(S24)、全ての検査の撮影を完了したか否かを判断する(S26)。すなわち、演算部202は、S12において選択された全ての検査の撮影を完了したか否かを判断する。本実施例では、上述したように、S12においてキューブ方式及びライン方式が選択されている。このため、演算部202は、S26でNOと判断して、S14に戻る。S14に戻った後のS16では、検査者は、例えば、図6(b)に示すように、正面画像400内においてライン方式で断層画像を取得すべき撮影範囲A2(詳細には、y方向の撮影位置)を設定する。その後、演算部202は、S18~S26の処理を実行する。
【0055】
演算部202は、全ての検査の撮影が完了すると(S26でYES)、一連の処理を終了する。図4の処理により、被検眼500に対して設定された撮影範囲内の、選択された検査の種類に対応する断層画像(すなわち、3次元の撮影データ)が取得される。
【0056】
次に、図7を参照して、被検眼500の検査レポートを出力する処理について説明する。被検眼500の断層画像の撮影(図4に示す処理)においては、被検眼500の撮影難易度が高い場合や、撮影の間に、被検眼500が固視微動等により移動したり、瞬目したりした場合に、適切な断層画像を撮影することができない(すなわち、適切な撮影データを取得することができない)ことがある。このため、光断層画像撮影装置では、被検眼500の所望の検査(検査者が選択した検査)に関するデータを取得するために、被検眼500に設定された同一の撮影範囲の断層画像を複数回撮影し、複数の撮影データを取得する場合がある。すなわち、図4に示す処理を複数回実行する場合がある。しかしながら、演算部202のメモリに保存された複数の撮影データのそれぞれを解析して、全ての撮影データについての検査レポートを生成すると、多くの時間を要する。また、上述したように、複数の撮影データの中には、適切でないものが存在することがあり、全ての検査レポートを出力すると、検査者が適切な検査レポートを選別するのにも時間を要することとなる。このため、本実施例では、撮影データから検査レポートを生成する際に、図7に示す処理を実行する。以下では、演算部202のメモリに、複数の撮影データが保存されている状況で図7の処理が開始されるものとして説明を続ける。具体的には、撮影範囲A1をキューブ方式で撮影した撮影データが2つ保存され、撮影範囲A2をライン方式で撮影した撮影データが3つ保存され、撮影範囲A3(図6(c)参照)をキューブ方式で撮影した撮影データが2つ保存されている状態で、図7の処理が実行される場合について説明する。
【0057】
図7に示すように、演算部202は、まず、メモリに保存されている各撮影データについて、QI(Quality Index)を決定する(S30)。QIは、取得した断層画像の輝度に基づいて画質を評価する輝度評価指標である。例えば、フォーカスが合っていなかったり、被検眼500と光断層画像撮影装置との間の位置関係が適切でなかったりすると、断層画像の輝度が低くなり、断層画像が適切に撮影されていないことがある。そこで、輝度に基づいて各断層画像を評価する。本実施例では、演算部202は、3次元の各撮影データを構成する複数の断層画像のうち、所定の数の断層画像のQIを算出し、算出したQIの平均値を撮影データのQIとして決定する。例えば、キューブ方式により取得した撮影データの場合、演算部202は、256枚の断層画像の中から(256枚の半分に該当する)128枚を選択し、当該128枚のQIの平均値を撮影データのQIとして決定する。ここで、撮影データを構成する複数の断層画像の中から選択される所定の数の断層画像は適宜決定されてよく、選択する枚数が多くなるほどQIの信頼性が向上する。例えば、キューブ方式の場合、所定のy方向位置毎に断層画像を選択することができる。また例えば、ライン方式及びクロス方式の場合、演算部202は、取得した同一断面における複数の断層画像の中から取得した枚数の半分に該当する枚数を選択し、選択した各断層画像のQIの平均値を撮影データのQIとして決定する。なお、いずれの方式においても、所定の数の断層画像は、ランダムに選択されてもよい。また、S30では、キューブ方式の場合、撮影データを構成する全ての断層画像のQIを算出し、算出したQIの平均値を撮影データのQIとして決定してもよい。また、ライン方式及びクロス方式の場合、加算平均処理後の断層画像のQIを撮影データのQIとしてもよい。
【0058】
ここで、QIの算出方法の一例について説明する。QIは、以下の数1で表す式を用いて算出される。
【0059】
【数1】
【0060】
図8を参照して、上記の数1で表す式の関数について説明する。「round」は、整数に四捨五入する関数を示す。「max」は、被検眼500の眼底の特定の位置から得られる干渉信号の最大輝度602を示し、図8では、例えば、約65dBとなっている。最大輝度602の算出方法については、後に詳述する。「noise」は、被検眼500の画像がない部分(すなわち、散乱光が発生しない部分)の輝度(ノイズフロア輝度)604を示し、図8では、例えば、約40dB以下に設定されている。「cut」は、画像評価に寄与しない輝度(切り捨て輝度)606を示し、例えば、ノイズフロア輝度604(図8では、約40dB)から約10dBの範囲(図8では、約40~50dB)に設定されている。したがって、切り捨て輝度606の範囲内の輝度を示す信号607は、QIの算出には不要な信号と判定される。「range」は、256階調が割り当てられる輝度レンジ608を示し、例えば、ノイズフロア輝度604(図8では、約40dB)から約35dBの範囲(図8では、約40~75dB)に設定される。また、上記の数1で表す式の「10」は、QIが10段階で評価されることを示す。QIは、輝度レンジ608から切り捨て輝度606を除いた範囲610の輝度を、10段階で評価する指標である。
【0061】
ここで、最大輝度602の算出方法について説明する。本実施例では、最大輝度602の算出時間を短くするために、以下の方法で最大輝度602を算出する。図9に示すように、まず、演算部202は、最大輝度602の算出に用いるAスキャン情報を断層画像を構成する複数のAスキャン情報の中から選択する(S52)。すなわち、被検眼500を測定する際には、干渉光から、測定光軸に沿った深さ方向の位置と信号強度との関係を示す断層情報(いわゆる、Aスキャン情報)を取得する。被検眼500の断層画像を取得するためには、測定光を走査して複数のAスキャン情報を取得し、これら複数のAスキャン情報を用いて被検眼500の断層画像が生成される。S52では、断層画像を構成する複数のAスキャン情報を間引いて、最大輝度602の算出に用いるAスキャン情報を減少させる。
【0062】
図10を参照して、さらに具体的に説明する。図10は、断層画像を模式的に示しており、曲線は、被検眼500の網膜の表面を示しており、矢印は、断層画像を構成するAスキャン情報を示している。図10では、断層画像は、1024本のAスキャン情報によって構成されているとする。S52では、これら1024本のAスキャン情報のうち、4本に1本のAスキャン情報のみを用いるように、Aスキャン情報を間引く。すなわち、連続するAスキャン情報について、4本毎に1本(図10の実線で示す矢印)のAスキャン情報を選択し、その間の3本(図10の破線で示す矢印)のAスキャン情報は選択しない。すると、図10の例では、1024本のAスキャン情報から256本のAスキャン情報が選択される。これにより、最大輝度602の算出に用いるAスキャン情報が4分の1となり、算出コスト(算出負荷)が4分の1に低減される。一方で、連続して走査されたAスキャン情報は、4本毎に1本が規則的に選択されており、全てのAスキャン情報を用いて最大輝度602を算出した場合と比較しても、最大輝度602の算出精度は大きく低下しない。したがって、Aスキャン情報を間引くことによって、最大輝度602の算出精度をほとんど低下させることなく、最大輝度602の算出コストを低減することができる。
【0063】
次いで、演算部202は、最大輝度602の算出に用いるAスキャン情報の深さ方向の範囲を予め設定した範囲に限定する(S54)。具体的には、図11(a)に示すように、最大輝度602の算出に用いるAスキャン情報の深さ方向の範囲を、被検眼500が適切な位置にある場合に、被検眼500が撮影される深さ方向の範囲の中心付近の範囲620のみに限定する。被検眼500が適切な位置にある状態で断層画像が撮影されると、被検眼500の断層画像(散乱光が生じる組織)のほとんどの部分が範囲620内に含まれ、範囲620より深い範囲622や、範囲620より浅い範囲624には、被検眼500の断層画像(散乱光が生じる組織)はあまり含まれない。したがって、Aスキャン情報の深さ方向の範囲を上述したような範囲に限定することによって、被検眼500が適切な位置にある場合の中心付近の深さ方向の範囲620内の最大輝度602が算出されることになる。
【0064】
図11(b)に示すように、被検眼500が適切な位置からずれた状態で撮影されると、被検眼500の撮影範囲(散乱光が生じる部分)は深さ方向に(図11(b)では、範囲620より深い範囲622のほうに)ずれてしまい、範囲620外で撮影される部分が増加する。深さ方向の範囲を被検眼500が適切な位置にある場合の中心付近の範囲620に限定すると、被検眼500が適切な位置からずれた状態で撮影された場合には、範囲620に被検眼500の撮影範囲(散乱光が生じる部分)がほとんど含まれない。このため、被検眼500が適切な位置からずれた状態で撮影された断層画像については、算出される最大輝度が小さくなり、QIの評価が低くなる。また、被検眼500がずれた状態で撮影された断層画像は、適切な位置で撮影された他の断層画像との間で深さ方向の位置ずれが生じるため、不適切な画像となる。このような不適切な断層画像について、QIが低くなっても問題は生じない。したがって、Aスキャン情報の深さ方向の範囲を限定することによって、QIによる評価に問題を生じさせることなく、最大輝度602の算出コスト(算出負荷)をさらに低減することができる。
【0065】
次いで、演算部202は、上記のS52でAスキャン情報の数を間引いた各Aスキャン情報について、S54で深さ方向に限定した範囲内の平均値を算出する(S56)。ここで算出された平均値が、各Aスキャン情報の輝度値とされる。
【0066】
最後に、演算部202は、S56で算出された各Aスキャン情報の輝度値(平均値)から、最大輝度602を特定する(S58)。具体的には、演算部202は、S56で算出された各Aスキャン情報の輝度値(平均値)のうち最大のものを最大輝度602として特定する。演算部202は、このように算出された最大輝度602を上記の数1で表す式に代入して、QIを算出する。これによって、取得した断層画像についてQIを算出することができる。
【0067】
図12は、被検眼500の同一断面における断層画像であり、それぞれQIが異なる断層画像の一例を示している。具体的には、図12(a)がQI=1である断層画像であり、図12(b)がQI=5である断層画像であり、図12(c)がQI=9である断層画像である。図12に示すように、QIが高い断層画像ほど、被検眼500の各組織間の境界が明確に目視可能となる。
【0068】
図7に示すように、演算部202は、各撮影データのQIを決定すると(S30)、検査の種類別に各撮影データを分類する(S32)。上述したように、本実施例では、キューブ方式とライン方式の2種類の検査を実行した撮影データがメモリに保存されている。このため、演算部202は、複数の撮影データを、キューブ方式で撮影された撮影データと、ライン方式で撮影された撮影データとに分類する。
【0069】
次いで、演算部202は、撮影範囲別に各撮影データを分類する(S34)。上述したように、本実施例では、キューブ方式で撮影された撮影データの中に、撮影範囲A1の撮影データと、撮影範囲A3の撮影データが含まれている。このため、演算部202は、キューブ方式で撮影された撮影データを、撮影範囲A1の撮影データと、撮影範囲A3の撮影データと、に分類する。これにより、図13に示すように、メモリに保存された複数の撮影データが、同一の検査の種類及び同一の撮影範囲を撮影した撮影データ別に分類される。なお、或る撮影範囲と別の撮影範囲とが同じ撮影範囲であるか否かは、例えば、設定された2つの撮影範囲の位置情報(例えばxy座標)同士を比較することにより判断することができる。例えば、演算部202は、2つの撮影範囲の位置情報に基づく当該2つの撮影範囲の距離が0.1mm以上である場合には、当該2つの撮影範囲は、異なる撮影範囲であると判断する。
【0070】
次いで、演算部202は、S32及びS34の処理による分類毎(すなわち、検査の種類及び撮影範囲毎)に、最もQIが高い撮影データを選択する(S36)。すなわち、演算部202は、図13に示す分類I(キューブ方式、撮影範囲A1)から最もQIが高い撮影データ(QI=9)を選択し、分類II(ライン方式、撮影範囲A2)から最もQIが高い撮影データ(QI=9)を選択し、分類III(キューブ方式、撮影範囲A3)から最もQIが高い撮影データ(QI=8)を選択する。なお、単一の分類において最もQIが高い撮影データが複数存在する場合には、演算部202は、その全てを選択してもよい。
【0071】
次いで、演算部202は、選択した撮影データのQIが、所定の閾値未満であるか否かを判断する(S40)。演算部202は、S36において選択した撮影データ毎に、QIが所定の閾値未満であるか否かを判断する。所定の閾値は特に限定されないが、例えば10段階中の8である。当該QIが所定の閾値未満である場合(S40でYES)、演算部202は、作成した撮影データの評価指標が基準値に満たなかったことを示す画面とともに再撮影ボタン(不図示)をモニタ120に表示する(S42)。再撮影ボタンは、被検眼500を再撮影するか否かを選択するためのボタンであり、検査者がマウス等の入力手段を用いて押下することができる。演算部202は、再撮影ボタンが押下された場合(S44でYES)、被検眼500を再撮影する。すなわち、演算部202は、図4のS12に戻り、S12~S26の処理を再び実行する。なお、演算部202は、再撮影ボタンとともに、QIが所定の閾値未満である(S40でYES)と判断された撮影データに基づく検査レポートを生成することを選択するための生成ボタン(不図示)をモニタ120に表示してもよい。再撮影ボタンが押下されずに生成ボタンが押下された場合(S44でNO)、演算部202は、S46の処理へ進み、当該撮影データに基づく検査レポートを生成する。
【0072】
演算部202は、選択した撮影データのQIが所定の閾値以上である場合(S40でNO)、当該撮影データに基づいて所望の検査の検査レポートを生成する(S46)。検査レポートは、例えば、正面画像、被検眼500内の組織を散乱強度で示す断層画像(いわゆる、通常の断層画像)、エントロピーを示す断層画像等を含む。そして、演算部202は、生成した検査レポートをモニタ120に表示する(S48)。なお、本実施例では、分類I、II、IIIについての3つの検査レポートが生成され得る。このような場合、演算部202は、生成した全ての検査レポートをモニタ120に表示する。演算部202は、例えば、モニタ120の画面内に全ての検査レポートを並べて表示してもよいし、モニタ120の画面内に、各検査レポートに対応するとともに各検査レポートを切り換えて表示するためのタブを表示してもよい。演算部202は、S48を実行すると、一連の処理を終了する。
【0073】
以上に説明したように、本実施例では、複数の撮影データそれぞれについてQIを決定し(S30)、検査の種類及び撮影範囲毎に(S32、S34)、決定したQIが最も高い撮影データに対して解析処理を行うことにより検査レポートを生成し(S46)、生成した検査レポートを出力する(S48)。このように、本実施例の光断層画像撮影装置では、メモリに保存された複数の撮影データの中から、検査の種類及び撮影範囲(すなわち、分類)毎に、QIが最も高い撮影データのみを用いて検査レポートが生成される(換言すると、QIが低い撮影データは、検査レポートの生成に利用されない)ので、短時間で比較的に精度の高い検査レポートを生成することができる。また、検査者に対しては、複数の撮影データの中から、分類毎にQIが最も高い撮影データ(すなわち、適切に撮影されている断層画像)についての検査レポートが提示されるため、所望の検査のための撮影が適切に行われたか否かを短時間で確認することができる。その結果、撮影開始から検査者による確認完了までの時間が短縮され、被検者を拘束する時間が短くなり、被検者の負担を軽減することができる。
【0074】
また、本実施例では、メモリに保存された複数の撮影データが、3つの撮影範囲A1、A2、A3を撮影した撮影データを含んでいる。演算部202は、撮影範囲毎に(S34)、決定したQIが最も高い撮影データを選択し(S36)、選択した撮影データに基づいて検査レポートが生成される(S46)。このため、本実施例では、各撮影範囲における検査レポートが過不足なく生成され、検査者は、各撮影範囲について、所望の検査のための撮影が適切に行われたか否かを短時間で確認することができる。
【0075】
また、本実施例では、決定したQIが閾値未満である場合(S40でYES)には、検査レポートを生成しない。このため、精度が低い検査レポートが生成されることを抑制することができる。また、検査者は精度が低い検査レポートを確認する必要がない。
【0076】
また、演算部202は、同一の撮影範囲を撮影した複数の撮影データの中に、決定したQIが最も高い撮影データが複数存在する場合には、その全ての撮影データを用いて検査レポートを生成する(S36)。このため、検査者は、精度が高い複数の検査レポートを確認することにより、所望の検査が適切に行われているか否かをより確実に判断することができる。
【0077】
なお、本実施例では、偏光感受型の光断層画像撮影装置が用いられていたが、このような構成に限定されない。光干渉断層法の種類は特に限定されるものではなく、例えば、偏光感受型でない光断層画像撮影装置であってもよい。
【0078】
また、上述した実施例では、図7に示す処理において、メモリに3つの撮影範囲A1、A2、A3を撮影した撮影データが保存されている例について説明したが、図7に示す処理は、メモリに保存されている撮影データが、単一の撮影範囲を撮影した撮影データのみを含んでいる状態で実行されてもよいし、4つ以上の撮影範囲を撮影した撮影データを含んでいる状態で実行されてもよい。
【0079】
また、上述した実施例において、決定したQIが閾値未満であるか否かは判断しなくてもよい。すなわち、図7のS40の処理は省略可能である。この場合、演算部202は、S36において選択された撮影データのQIの値に関わらず、当該撮影データに基づく検査レポートを生成してもよい。
【0080】
また、上述した実施例では、取得済みの撮影データを構成する断層画像に対してQIが算出された(S20)。しかしながら、QIは、例えば、各撮影範囲の断層画像を撮影するタイミングで算出されてもよい。
【0081】
また、上述した実施例において、演算部202は、図4のS18において取得した正面画像を用いて、被検眼500の固視状態を評価してもよい。以下、図14を参照して、固視状態の評価方法を説明する。
【0082】
図14(a)は、被検眼500が固視微動等により移動せず、適切な位置にある場合を示している。被検眼500が適切な位置にある場合には、適切な範囲の正面画像が取得され、演算部202は、固視状態が適切であると判定する。図14(b)に示すように、瞬目していると、正面画像は撮影されない。この場合には、演算部202は、固視状態の評価としては、不適切であると判定する。図14(c)に示すように、固視微動等により被検眼500が移動していると、不適切な範囲の正面画像が取得される。例えば、図14(c)では、被検眼500は、適切な位置にある場合(図14(a)の場合)より下方に撮影されており、このような場合には、演算部202は、固視状態が不適切であると判定する。
【0083】
QIによる評価では、上述したようにS54において最大輝度602を算出する際にAスキャン情報の深さ方向の範囲を限定しているため、被検眼500の撮影位置が大きくずれている場合には、QIが低く判定されることがある。しかしながら、例えば、被検眼500の撮影位置のずれが小さい場合には、最大輝度602が大きく算出される。また、被検眼500が水平方向にのみ移動(すなわち、光軸に直交する平面内で移動)している場合は、最大輝度602が大きく算出される。このような場合には、図14(c)に示すように、QIが高く判定される場合がある。一方で、固視状態の評価は、正面画像に基づいて行われる。このため、図14(c)に示すように、被検眼500がずれた状態で撮影されたことを正確に判定できる。このように、QIによる評価だけでなく固視状態も評価することによって、QIの評価だけでは判定不能な不適切な状態(すなわち、被検眼500が水平方向にずれた状態で撮影されたこと)を特定してもよい。なお、上述した実施例において、評価指標として、輝度評価指標と固視評価指標の両方を用いてもよいし、輝度評価指標に代えて固視評価指標を用いてもよい。
【0084】
また、上述した実施例では、演算部202が、図4に示す断層画像を撮影する処理と、図7に示す検査レポートを出力する処理とを共に実行したが、図4に示す処理は、例えば、演算部202を備える装置とは別個の装置において実行されてもよい。すなわち、演算部202は、図7に示す処理を少なくとも実行すればよく、図4に示す処理は、別個の装置により実行されてもよい。
【0085】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0086】
10:測定部
11:光源
43:参照ミラー
60、70:干渉光生成部
80、90:干渉光検出部
81、82、91、92:バランス型光検出器
83、93:信号処理器
84、85、94、95:信号処理部
100:サンプリングトリガー/クロック発生器
140:サンプリングトリガー発生器
160:サンプリングクロック発生器
200:演算装置
202:演算部
400:正面画像
500:被検眼
A1、A2、A3:撮影範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14