(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015848
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】基板付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/639 20060101AFI20240130BHJP
H01R 12/75 20110101ALI20240130BHJP
【FI】
H01R13/639 Z
H01R12/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118182
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕希子
(72)【発明者】
【氏名】田中 幸貴
(72)【発明者】
【氏名】亀山 豪太
【テーマコード(参考)】
5E021
5E223
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA11
5E021FA14
5E021FB01
5E021FB07
5E021FC21
5E021FC36
5E021HB11
5E021HC12
5E021HC20
5E223AB59
5E223AC23
5E223BA06
5E223BA07
5E223BB01
5E223BB21
5E223CB22
5E223CB31
5E223CB38
5E223CD01
5E223DA33
5E223DB09
5E223DB33
5E223DB34
5E223DB35
5E223EA03
5E223EB04
5E223EB12
(57)【要約】
【課題】基板に対するコンプレッションコネクタの取り付け(固定)の作業性を向上させつつ確実な取り付けを行う。
【解決手段】基板付きコネクタ10は、接続対象物に押し付けて接続するコンプレッションタイプのコネクタ31と基板11とを取り付けるものであり、基板11と接触するコンタクト32と、コンタクト32が固定されたハウジング33と、ハウジング33の上面部を覆うカバーシェル34と、を有するコンプレッションコネクタ31を有し、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持する仮保持機構37a,23と、仮保持機構27a,23によって基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した後、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を本接続する本接続機構38を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続対象物に押し付けて接続するコンプレッションタイプのコネクタと基板とを取り付ける基板付きコネクタであって、
前記基板と接触するコンタクトと、前記コンタクトが固定されたハウジングと、前記ハウジングの上面部を覆うカバーシェルと、を有するコンプレッションコネクタを有し、
前記基板に対して前記コンプレッションコネクタを仮保持する仮保持機構と、
前記仮保持機構によって前記基板に対して前記コンプレッションコネクタを仮保持した後、前記基板に対して前記コンプレッションコネクタを本接続する本接続機構を備えることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の基板付きコネクタであって、
前記仮保持機構は、
前記コンプレッションコネクタの前記カバーシェルに形成されたロック片のロック爪と、
前記基板に固定されたケージと、
で構成され、
前記ケージには、前記ロック爪を収めるロック孔が1個以上あり、
前記コンプレッションコネクタは、前記基板に固定された前記ケージに挿入されたときに、前記ロック爪と前記ロック孔との係合によって仮保持され、また、
仮保持の後に前記基板と前記コンプレッションコネクタとを本接続する前記本接続機構が、ねじを用いたねじ留めであることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の基板付きコネクタであって、
前記カバーシェルには、変形強化のための凸部が形成されることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項4】
請求項2に記載の基板付きコネクタであって、
前記カバーシェルには、変形強化のための補強板が取り付けられていることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項5】
請求項2に記載の基板付きコネクタであって、
前記ロック片は、前記コンプレッションコネクタの正面側又は側面側を固定するものであることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項6】
請求項2に記載の基板付きコネクタであって、
前記ねじは1個以上あり、前記コンプレッションコネクタの任意の位置に配置されることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項7】
請求項1に記載の基板付きコネクタであって、
前記仮保持機構は、
前記基板と垂直方向に位置を制御する保持片が少なくとも1個以上形成される前記カバーシェルと、
前記保持片を挿入できる前記基板に形成された保持孔と、
で構成され、
仮保持の後に前記基板と前記コンプレッションコネクタとを本接続する本接続機構が、ねじを用いたねじ留めであることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項8】
請求項7に記載の基板付きコネクタであって、
前記保持片は、前記カバーシェルからU字形又はL字形を有して突出するとともに、U字形又はL字形の突出側の先端に保持爪が形成されており、
前記保持爪は、前記基板に形成された前記保持孔に引っかかることで前記基板に対して垂直方向のコンタクト反力を受けることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項9】
請求項7に記載の基板付きコネクタであって、
前記保持片は、前記カバーシェルの天面から前記基板とは逆側の垂直方向に突出してから逆Uの字曲げされて先端が前記基板側に延びて形成され、当該先端に保持爪が形成されており、
前記保持爪は、前記基板に形成された前記保持孔に引っかかることで前記基板に対して垂直方向のコンタクト反力を受けることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項10】
請求項7に記載の基板付きコネクタであって、
前記カバーシェルには、変形強化のための凸部が形成されることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項11】
請求項7に記載の基板付きコネクタであって、
前記カバーシェルには、変形強化のための補強板が取り付けられていることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項12】
請求項7に記載の基板付きコネクタであって、
前記保持片は、前記カバーシェルの天面から基板方向にLの字曲げされて先端が前記基板側に延びて形成され、当該先端に湾曲形状部が形成されており、
前記湾曲形状部が前記基板の前記保持孔に嵌め込まれることで前記基板に対して垂直方向のコンタクト反力を受けることを特徴とする基板付きコネクタ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の基板付きコネクタであって、
前記コンプレッションコネクタは、前記ハウジングの下面部を覆うボトムシェルを含むことを特徴とする基板付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板付きコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基板等の接続対象物に押し付けて接続するコンプレッションタイプのコネクタが公知である。この種のコネクタの構造が、例えば、下記特許文献1等に開示されている。下記特許文献1に開示された従来のコンプレッションタイプのコネクタは、
図31に示されるように、弾性スプリング部(23)を有するコンタクト(20)を備えた電気コネクタ(1)として構成されている。この電気コネクタ(1)には、複数のコンタクト(20)が整列した状態で配置されている。
【0003】
コンタクト(20)は、第1の回路基板(30)に半田接続される基板接続部(22)と、第2の回路基板(40)に接触する接触部(24)とを有する。基板接続部(22)と接触部(24)との間には、バネ性を有する弾性スプリング部(23)が設けられている。第1の回路基板(30)の上に半田接続によって取り付けられたコンタクト(20)の上方側から第2の回路基板(40)を押し付けることで、コンタクト(20)の弾性スプリング部(23)がバネ性を発揮し、第2の回路基板(40)とコンタクト(20)との間に接触圧力を生じさせる。なお、先行技術文献の説明に関する符号については、括弧を付けることで本願発明の実施形態と区別した。
【0004】
そして、従来のコンプレッションコネクタにおいて、基板との取り付け(固定)には、ねじ留めを用いることが行われていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コンプレッションコネクタを基板に対してねじ留めで固定する際、一般的には、コネクタが搭載されるコネクタ搭載面側とは反対側の基板面からナットを取り付け、コネクタ搭載面側からねじを締める方法が取られるが、従来技術の場合にはコネクタの基板への仮保持機構がないので、作業者は、ねじを締めている間に手などでコネクタやナットを押さえておく必要があり、コネクタの取り付け(固定)作業がやりづらいという課題が存在していた。すなわち、従来のねじ留めによるコンプレッションコネクタと基板の固定構造には、ねじの他に別部品のナットが必要となるため、ナットが紛失してしまう可能性や作業工数が掛かる等の問題が存在していた。
【0007】
また、従来技術では、ねじ留めを行う際にコンプレッションコネクタと基板は仮保持されていないため、コンタクトによる基板との反発により位置が決まらず、ねじ締め付け時に手や治具でコンプレッションコネクタを基板側へ押し付ける必要があった。換言すれば、従来のコンプレッションコネクタにおいては、基板との取り付け(固定)に際して取り付けの作業性を向上させつつ確実な取り付けを行う構成を実現することが求められていた。
【0008】
よって本発明は、コンプレッションコネクタと基板を固定する際に、コンプレッションコネクタが基板に対して仮保持された状態を実現しておき、その後にねじ留め等の本接続を行うことができる構成を提案することで、基板に対するコンプレッションコネクタの取り付け(固定)の作業性を向上させつつ確実な取り付けを行う構成を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る基板付きコネクタは、接続対象物に押し付けて接続するコンプレッションタイプのコネクタと基板とを取り付ける基板付きコネクタであって、前記基板と接触するコンタクトと、前記コンタクトが固定されたハウジングと、前記ハウジングの上面部を覆うカバーシェルと、を有するコンプレッションコネクタを有し、前記基板に対して前記コンプレッションコネクタを仮保持する仮保持機構と、前記仮保持機構によって前記基板に対して前記コンプレッションコネクタを仮保持した後、前記基板に対して前記コンプレッションコネクタを本接続する本接続機構を備えることを特徴とするものである。
【0010】
すなわち、本発明に係る基板付きコネクタは、コンプレッションタイプのコネクタと基板とをねじを用いて取り付ける本接続機構を備えるものであり、さらに、ねじを締める前の段階でコネクタを基板に対して仮保持することができる仮保持機構を備えているため、簡単かつ確実な固定状態が得られる。また、本発明に係る基板付きコネクタでは、ねじを締める本接続の前に仮保持が行われるので、ねじ締め作業が簡単にできる。そのため、従来のねじやナットのように落下したり紛失したりすることがない。
【0011】
また、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記仮保持機構は、前記コンプレッションコネクタの前記カバーシェルに形成されたロック片のロック爪と、前記基板に固定されたケージと、で構成され、前記ケージには、前記ロック爪を収めるロック孔が1個以上あり、前記コンプレッションコネクタは、前記基板に固定された前記ケージに挿入されたときに、前記ロック爪と前記ロック孔との係合によって仮保持され、また、仮保持の後に前記基板と前記コンプレッションコネクタとを本接続する前記本接続機構が、ねじを用いたねじ留めであることとすることができる。
【0012】
また、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記カバーシェルには、変形強化のための凸部を形成することができる。
【0013】
また、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記カバーシェルには、変形強化のための補強板を取り付けることができる。
【0014】
また、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記ロック片は、前記コンプレッションコネクタの正面側又は側面側を固定することができる。
【0015】
また、本発明に係る基板付きコネクタでは、前記ねじは1個以上あり、前記コンプレッションコネクタの任意の位置に配置することができる。
【0016】
さらに、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記仮保持機構は、前記基板と垂直方向に位置を制御する保持片が少なくとも1個以上形成される前記カバーシェルと、前記保持片を挿入できる前記基板に形成された保持孔と、で構成され、仮保持の後に前記基板と前記コンプレッションコネクタとを本接続する本接続機構が、ねじを用いたねじ留めであることとすることができる。
【0017】
また、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記保持片は、前記カバーシェルからU字形又はL字形を有して突出するとともに、U字形又はL字形の突出側の先端に保持爪が形成されており、前記保持爪は、前記基板に形成された前記保持孔に引っかかることで前記基板に対して垂直方向のコンタクト反力を受けることとすることができる。
【0018】
また、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記保持片は、前記カバーシェルの天面から前記基板とは逆側の垂直方向に突出してから逆Uの字曲げされて先端が前記基板側に延びて形成され、当該先端に保持爪が形成されており、前記保持爪は、前記基板に形成された前記保持孔に引っかかることで前記基板に対して垂直方向のコンタクト反力を受けることとすることができる。
【0019】
また、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記カバーシェルには、変形強化のための凸部を形成することができる。
【0020】
また、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記カバーシェルには、変形強化のための補強板を取り付けることができる。
【0021】
また、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記保持片は、前記カバーシェルの天面から基板方向にLの字曲げされて先端が前記基板側に延びて形成され、当該先端に湾曲形状部が形成されており、前記湾曲形状部が前記基板の前記保持孔に嵌め込まれることで前記基板に対して垂直方向のコンタクト反力を受けることとすることができる。
【0022】
さらに、本発明に係る基板付きコネクタにおいて、前記コンプレッションコネクタは、前記ハウジングの下面部を覆うボトムシェルを含むこととすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、コンプレッションコネクタと基板を固定する際に、コンプレッションコネクタが基板に対して仮保持された状態を実現しておき、その後にねじ留め等による本接続を行うことができる構成を提案できる。そのため、本発明によれば、基板に対するコンプレッションコネクタの取り付け(固定)の作業性を向上させつつ確実な取り付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態に係る基板付きコネクタを前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図2】第1の実施形態に係る基板付きコネクタを後方左上から見た場合の外観斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係る基板付きコネクタを前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図4】第1の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板に固定されたケージからコンプレッションコネクタが取り外された状態を前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図5】第1の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板に固定されたケージからコンプレッションコネクタが取り外された状態を後方左上から見た場合の外観斜視図である。
【
図6】第1の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板に固定されたケージからコンプレッションコネクタが取り外された状態を前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図7】第1の実施形態に係るコンプレッションコネクタを前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図8】第1の実施形態に係るコンプレッションコネクタを前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図9】第1の実施形態に係るコンプレッションコネクタの正面図である。
【
図10】第1の実施形態に係るコンプレッションコネクタの右側面図である。
【
図11】
図9におけるA-A線断面を示す縦断面図である。
【
図12】
図9におけるB-B線断面を示す縦断面図である。
【
図13】第1の実施形態に係るケージを前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図14】第1の実施形態に係るケージを後方左下から見た場合の外観斜視図である。
【
図15】第2の実施形態に係る基板付きコネクタを前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図16】第2の実施形態に係る基板付きコネクタを後方左上から見た場合の外観斜視図である。
【
図17】第2の実施形態に係る基板付きコネクタを前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図18】第2の実施形態に係る基板付きコネクタの正面図である。
【
図19】第2の実施形態に係る基板付きコネクタの右側面図である。
【
図20】第2の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板からコンプレッションコネクタが取り外された状態を前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図21】第2の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板からコンプレッションコネクタが取り外された状態を後方左下から見た場合の外観斜視図である。
【
図22】第3の実施形態に係る基板付きコネクタを前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図23】第3の実施形態に係る基板付きコネクタの正面図である。
【
図24】第3の実施形態に係る基板付きコネクタの右側面図である。
【
図25】第3の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板からコンプレッションコネクタが取り外された状態を前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図26】第4の実施形態に係る基板付きコネクタを前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図27】第4の実施形態に係る基板付きコネクタの正面図である。
【
図28】第4の実施形態に係る基板付きコネクタの右側面図である。
【
図29】第4の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板からコンプレッションコネクタが取り外された状態を前方右上から見た場合の外観斜視図である。
【
図30】第4の実施形態に係る基板付きコネクタにおいて、基板からコンプレッションコネクタが取り外された状態を前方右下から見た場合の外観斜視図である。
【
図31】従来のコンプレッションタイプのコネクタが回路基板間に配置された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、図では、説明の便宜のために第1方向、第2方向、第3方向を定義した。本明細書において、第1方向は、前後方向である。図において、前後方向はX方向として示される。特に、前方を+X方向、後方を-X方向とする。また、本明細書において、第2方向は、左右方向である。図において、左右方向はY方向として示される。特に、右方を+Y方向、左方を-Y方向とする。さらに、本明細書において、第3方向は、上下方向である。図において、上下方向はZ方向として示される。特に、上方を+Z方向、下方を-Z方向とする。ただし、本明細書で定義された第1方向であるX方向、第2方向であるY方向、第3方向であるZ方向は、各実施形態の基板付きコネクタの使用時の方向を限定するものではない。各実施形態の基板付きコネクタは、あらゆる方向で使用することができる。
【0026】
また、以下の各実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0027】
[第1の実施形態]
図1~
図14を参照して、第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10の構成を説明する。第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10は、
図1~
図3に示されるように、基板11と、基板11の上面に設置されるケージ21と、ケージ21を介して基板11に取り付けられるコンプレッションコネクタ31と、を有している。
【0028】
基板11には、不図示のプリント回路等が含まれており、基板11の上面に取り付けられたコンプレッションコネクタ31と電気的に接続することで、電気信号や電源電力等を受け渡すことができるように構成されている。
【0029】
また、基板11には、特に
図3に示されるように、複数の取付孔12や開口部13が形成されている。複数(第1の実施形態では12個)の取付孔12は、後述するケージ21が有する複数の脚部22が挿し込まれることで、基板11に対するケージ21の固定が行われる。また、複数(第1の実施形態では3個)の開口部13は、後述するコンプレッションコネクタ31が基板11に固定された際に、コンプレッションコネクタ31が有するロック片37の下方側の端部が入り込むように形成されているので、開口部13の存在によって、基板11とコンプレッションコネクタ31との固定接続が阻害されることが無いようになっている。
【0030】
ケージ21は、
図13および
図14に示すように、平板状の金属板材を略コ字形状となるように折り曲げた部材である。ケージ21の底面側には、下方に延びるように12本の脚部22が形成されている。12本の脚部22は、上述したように、基板11に対して複数形成された取付孔12に挿し込むことで、基板11に対するケージ21の固定が行われる。
【0031】
また、ケージ21には、前方に1個所、左右方向のそれぞれに各1個所ずつ、合計3個のロック孔23が形成されている。これら3つのロック孔23は、コンプレッションコネクタ31を仮保持するために用いられることで、本発明の仮保持機構として機能する構成である。
【0032】
コンプレッションコネクタ31は、
図7~
図12に示すように、基板11と接触するコンタクト32と、コンタクト32が固定されたハウジング33と、ハウジング33の上面部を覆うカバーシェル34と、ハウジング33の下面部を覆うボトムシェル35を有する。
【0033】
コンタクト32は、特に
図8や
図9に示すように、左右方向で横並びになるように複数個配置されている。
【0034】
また、複数のコンタクト32のそれぞれは、
図12に示すように、ハウジング33に固定された状態となっており、コンタクト32の前方端部32aは湾曲することでバネ弾性を有する形状となっている。つまり、コンタクト32の前方端部32aは、コンプレッションコネクタ31が基板11と接触していないときには、ボトムシェル35の底面から下方に向けて突出するように配置されている(
図12で示す状態)。そのため、コンプレッションコネクタ31を構成するボトムシェル35の底面を基板11の上面に対して-Z方向に向けて押し付けると、ボトムシェル35の底面から下方に向けて突出していた複数のコンタクト32の前方端部32aは、基板11の上面に対してバネ弾性による力を及ぼしながらボトムシェル35の底面の位置まで押し込まれた状態となる。つまり、複数のコンタクト32の前方端部32aは、+Z方向の力を受けることになる。したがって、基板11に対してコンプレッションコネクタ31が取り付けられた際には、バネ弾性による力によって複数のコンタクト32のそれぞれが基板11の上面に対して押し付けられるので、例えば、基板11の上面に配置された不図示のプリント回路等と複数のコンタクト32とが安定かつ確実な接続状態を維持できることとなる。
【0035】
一方、コンタクト32の後方端部32bは真っ直ぐ延びた直線形状となっている。そして、
図12に示すように、コンタクト32の後方端部32bには、電気ケーブル36が半田等で接続される。したがって、外部からの電気信号や電源電力等が、電気ケーブル36とコンタクト32を介して基板11側に伝達されることとなる。
【0036】
なお、第1の実施形態のコンプレッションコネクタ31を構成する部材について、複数のコンタクト32は導電性の金属材料によって構成されており、複数のコンタクト32を固定するハウジング33は非導電性の樹脂材料等で構成されている。また、ハウジング33の上面部を覆うカバーシェル34と、ハウジング33の下面部を覆うボトムシェル35は、互いの間にハウジング33を内包した状態で上下方向に組み合わせられることで、コンプレッションコネクタ31の外郭形状を形成する。カバーシェル34とボトムシェル35は、複数のコンタクト32が埋め込まれたハウジング33の外周を包むように配置されることで、電気ケーブル36からの通電を受ける複数のコンタクト32が埋め込まれたハウジング33を保護している。この保護には、外部環境からの物理的な保護に加えて、電磁シールドなどの電気的および磁気的な保護も含まれる。
【0037】
第1の実施形態のカバーシェル34には、
図7~
図12に示されるように、3つのロック片37が設置されている。第1の実施形態のカバーシェル34において、3つのロック片37のうち、1つがカバーシェル34の前方中央の位置に配置されており、1つがカバーシェル34の右側後方寄りの位置に配置されており、1つがカバーシェル34の左側後方寄りの位置に配置されている。
【0038】
3つのロック片37は、特に
図9や
図10で示されるように、カバーシェル34の前面や左右側面から下方に向けて延びた個所で略U字形に折れ曲がった後に上方に向けて立ち上がった形状を有しており、その立ち上がった形状部位の中央位置には、それぞれの外方に向けて突出したロック爪37aが形成されている。このロック爪37aは、下方側が斜面になっており、上方側が立方体形状になっている。つまり、ロック爪37aは、最下部の位置から上方に向けてロック片37の表面から徐々に突出するように形成されている。これら3つのロック爪37aは、上述したケージ21に形成された3個のロック孔23の形成位置に対応した位置に配置されている。したがって、基板11の上面に配置されたケージ21に向けてコンプレッションコネクタ31を-Z方向に移動させて押し付けると、ロック片37が有する略U字形に折れ曲がった形状によるバネ弾性による力と、ロック爪37aの下方側の斜面の形状による作用によって、ロック片37がカバーシェル34側に押されながらロック孔23に対してロック爪37aが徐々に入り込み、最終的にはロック片37が発揮するバネ弾性による外方に向けた押付力が作用して、ロック孔23に対してロック爪37aが完全に嵌め込まれた状態になって、ケージ21に対するカバーシェル34の係合が実現する。この状態は、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態となっている。つまり、3つのロック片37のそれぞれが有するロック爪37aと、ケージ21に形成された3個のロック孔23とが、本発明の仮保持機構を構成する。
【0039】
第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10では、上述したように、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態を実現した上で、コンプレッションコネクタ31が有する1つのねじ38を用いて基板11に対するコンプレッションコネクタ31の本接続を実行する。具体的には、コンプレッションコネクタ31を構成するカバーシェル34の上面側中央位置には、1つのねじ38のねじ頭部が配置されており、ねじ先端部は基板11の底面側に抜けた状態となっているので、基板11の底面側に抜けたねじ先端部に対して不図示のナットを締結することで、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を本接続することができる。つまり、1つのねじ38と不図示のナットを用いたねじ留めが、本発明の本接続機構として機能する。
【0040】
なお、第1の実施形態では、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態と、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を本接続した状態のいずれについても、カバーシェル34に対して接続の際の力が加わることになる。また、カバーシェル34は、左右方向に長い形状を有する薄い金属の板によって形成されているので、接続固定のための力を受けた際にカバーシェル34自体の変形を防止する構造を有することが好ましい。そこで、第1の実施形態に係るカバーシェル34については、上面に対して左右方向に延びる複数条の凸部34aを形成することとした。これら複数条の凸部34aの形状の作用によって、カバーシェル34自体の変形強化を図ることができる。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記した第1の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記第1の実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0042】
例えば、上述した第1の実施形態では、カバーシェル34の上面に対して左右方向に延びる複数条の凸部34aを形成することで、カバーシェル34自体の変形強化を図ったが、本発明では、同様の作用効果を有する構成であれば、凸部34aを形成すること以外の手段を採用してもよい。例えば、カバーシェル34の上面に対して補強板を取り付けることでも、カバーシェル34自体の変形強化を図ることができる。
【0043】
また例えば、上述した第1の実施形態では、本発明の仮保持機構として機能するロック片37が有するロック爪37aと、ケージ21に形成されたロック孔23について、それぞれ3つずつ形成するとともに、3組のロック爪37aとロック孔23が、コンプレッションコネクタ31の正面と左右側面に対して配置されたものであった。ただし、本発明では、仮保持機構として機能する部材の個数や配置位置については、後に実施される本接続を補助できるものであれば、任意に変更が可能である。
【0044】
また例えば、上述した第1の実施形態では、本発明の本接続機構として機能するねじ38と不図示のナットについて、それぞれ1つずつ設置した場合を説明したが、ねじは複数個であってもよく、ねじの設置位置についてもコンプレッションコネクタの任意の位置に配置することができる。すなわち、本発明では、本接続機構として機能する部材の個数や配置位置については、任意に変更が可能である。
【0045】
以上説明したように、第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10は、接続対象物に押し付けて接続するコンプレッションコネクタ31と基板11とを取り付ける基板付きコネクタ10であって、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持する仮保持機構と、仮保持機構によって基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した後、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を本接続する本接続機構を備えるものである。したがって、第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10によれば、基板11に対するコンプレッションコネクタ31の取り付け(固定)の作業性を向上させつつ確実な取り付けを行う構成を実現することができる。
【0046】
以上、
図1~
図14を参照して、第1の実施形態に係る基板付きコネクタ10の構成を説明した。次に、本発明に係る基板付きコネクタが取り得る別の形態例である第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100について、
図15~
図21を用いて説明を行う。なお、以下の説明では、上述した第1の実施形態で説明した部材と同一又は類似する部材について、同一符号を付して説明を省略する場合がある。
【0047】
[第2の実施形態]
第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100は、
図15~
図19に示されるように、基板11と、基板11の上面に取り付けられるコンプレッションコネクタ31と、を有している。
【0048】
基板11には、不図示のプリント回路等が含まれており、基板11の上面に取り付けられたコンプレッションコネクタ31と電気的に接続することで、電気信号や電源電力等を受け渡すことができるように構成されている。
【0049】
また、基板11には、特に
図17に示されるように、複数の保持孔15が形成されている。複数(第2の実施形態では2個)の保持孔15は、後述するコンプレッションコネクタ31が有する2本の保持片137が挿し込まれることで、基板11に対するコンプレッションコネクタ31の仮保持が行われる。
【0050】
コンプレッションコネクタ31は、
図15~
図21に示すように、基板11と接触するコンタクト32と、コンタクト32が固定されたハウジング33と、ハウジング33の上面部を覆うカバーシェル34と、ハウジング33の下面部を覆うボトムシェル35を有する。
【0051】
コンタクト32は、特に
図21に示すように、左右方向で横並びになるように複数個配置されている。
【0052】
第2の実施形態のカバーシェル34には、
図15~
図21に示されるように、2つの保持片137が設置されている。第2の実施形態のカバーシェル34において、2つの保持片137のうち、1つがカバーシェル34の右側後方寄りの位置に配置されており、1つがカバーシェル34の左側後方寄りの位置に配置されている。
【0053】
2つの保持片137は、特に
図18や
図20および
図21で示されるように、カバーシェル34の左右側面側の天面から基板11とは逆側の垂直方向、つまり上方に向けて突出してから正面視で逆Uの字曲げされて先端が基板11側に延びて形成された形状を有しており、その先端には、保持爪137aが形成されている。この保持爪137aは、下方に向かって幅が狭くなる斜面形状を有しており、上方側になるにつれて幅が広がった楔形状として形成されている。つまり、保持爪137aは、最下部の位置から上方に向けて保持片137の表面から外方に向けて徐々に突出するように形成されている。これら2つの保持爪137aは、上述した基板11に形成された2個の保持孔15の形成位置に対応した位置に配置されている。したがって、基板11の上面に向けてコンプレッションコネクタ31を-Z方向に移動させて押し付けると、保持片137が有する略逆U字形に折れ曲がった形状によるバネ弾性による力と、保持爪137aの下方側の斜面の形状による作用によって、保持片137がカバーシェル34側に押されながら保持孔15に対して保持爪137aが徐々に入り込み、最終的には保持片137が発揮するバネ弾性による外方に向けた押付力が作用して、保持孔15に対して保持爪137aが完全に嵌め込まれた状態になる(
図15~
図19の状態参照)。またこのとき、保持爪137aが有する楔形状の作用によって、保持爪137aは、基板11に形成された保持孔15に引っかかることで、基板11に対して複数のコンタクト32が及ぼす垂直方向のコンタクト反力を受ける。この状態は、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態となっている。つまり、2つの保持片137のそれぞれが有する保持爪137aと、基板11に形成された2個の保持孔15とが、本発明の仮保持機構を構成する。
【0054】
第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100では、上述したように、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態を実現した上で、コンプレッションコネクタ31が有する3つのねじ38を用いて基板11に対するコンプレッションコネクタ31の本接続を実行する。具体的には、コンプレッションコネクタ31を構成するカバーシェル34の上面側には、3つのねじ38のねじ頭部が配置されており、ねじ先端部は基板11の底面側に抜けた状態となっているので、基板11の底面側に抜けたねじ先端部に対して不図示のナットを締結することで、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を本接続することができる。つまり、3つのねじ38と不図示のナットを用いたねじ留めが、本発明の本接続機構として機能する。
【0055】
なお、第2の実施形態では、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態と、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を本接続した状態のいずれについても、カバーシェル34に対して接続の際の力が加わることになる。また、カバーシェル34は、左右方向に長い形状を有する薄い金属の板によって形成されているので、接続固定のための力を受けた際にカバーシェル34自体の変形を防止する構造を有することが好ましい。そこで、第2の実施形態に係るカバーシェル34については、上面に対して左右方向に延びる複数条の凸部34aを形成することとした。これら複数条の凸部34aの形成作用によって、カバーシェル34自体の変形強化を図ることができる。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記した第2の実施形態に記載の範囲には限定されない。上記第2の実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0057】
例えば、上述した第2の実施形態では、カバーシェル34の上面に対して左右方向に延びる複数条の凸部34aを形成することで、カバーシェル34自体の変形強化を図ったが、本発明では、同様の作用効果を有する構成であれば、凸部34aを形成すること以外の手段を採用してもよい。例えば、カバーシェル34の上面に対して補強板を取り付けることでも、カバーシェル34自体の変形強化を図ることができる。
【0058】
また例えば、上述した第2の実施形態では、本発明の仮保持機構として機能する保持片137が有する保持爪137aと、基板11に形成された保持孔15について、それぞれ2つずつ形成するとともに、2組の保持爪137aと保持孔15が、コンプレッションコネクタ31の左右側面に対して配置されたものであった。ただし、本発明では、仮保持機構として機能する部材の個数や配置位置については、後に実施される本接続を補助できるものであれば、任意に変更が可能である。
【0059】
また例えば、上述した第2の実施形態では、本発明の本接続機構として機能するねじ38と不図示のナットについて、それぞれ3つずつ形成した場合を説明したが、ねじは1個以上あればよく、ねじの設置位置についてもコンプレッションコネクタの任意の位置に配置することができる。すなわち、本発明では、本接続機構として機能する部材の個数や配置位置については、任意に変更が可能である。
【0060】
以上説明したように、第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100は、接続対象物に押し付けて接続するコンプレッションコネクタ31と基板11とを取り付ける基板付きコネクタ100であって、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持する仮保持機構と、仮保持機構によって基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した後、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を本接続する本接続機構を備えるものである。したがって、第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100によれば、基板11に対するコンプレッションコネクタ31の取り付け(固定)の作業性を向上させつつ確実な取り付けを行う構成を実現することができる。
【0061】
以上、
図15~
図21を参照して、第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100の構成を説明した。次に、本発明に係る基板付きコネクタが取り得る更に別の形態例である第3の実施形態に係る基板付きコネクタ200について、
図22~
図25を用いて説明を行う。なお、以下の説明では、上述した第1および第2の実施形態で説明した部材と同一又は類似する部材について、同一符号を付して説明を省略する場合がある。
【0062】
[第3の実施形態]
第3の実施形態に係る基板付きコネクタ200は、上述した第2の実施形態に係る基板付きコネクタ100で仮保持機構として機能した保持片137と保持爪137aの変形形態例を示すものである。上述した第2の実施形態では、保持片137は、カバーシェル34からU字形(略逆U字形)を有して突出するとともに、U字形(略逆U字形)の突出側の先端に保持爪137aが形成されていた。しかし、本発明の保持片に採用できる形状については、U字形(略逆U字形)に限られるものではなく、例えば、L字形とすることもできる。そのような実施形態例を、
図22~
図25に示す。
【0063】
第3の実施形態に係る基板付きコネクタ200は、
図22~
図24に示されるように、基板11と、基板11の上面に取り付けられるコンプレッションコネクタ31と、を有している。
【0064】
基板11には、不図示のプリント回路等が含まれており、基板11の上面に取り付けられたコンプレッションコネクタ31と電気的に接続することで、電気信号や電源電力等を受け渡すことができるように構成されている。
【0065】
また、基板11には、特に
図25に示されるように、複数の保持孔15が形成されている。複数(第3の実施形態では2個)の保持孔15は、後述するコンプレッションコネクタ31が有する2本の保持片237が挿し込まれることで、基板11に対するコンプレッションコネクタ31の仮保持が行われる。
【0066】
コンプレッションコネクタ31は、上述した第2の実施形態と同様に、基板11と接触するコンタクト32と、コンタクト32が固定されたハウジング33と、ハウジング33の上面部を覆うカバーシェル34と、ハウジング33の下面部を覆うボトムシェル35を有する。コンタクト32は、左右方向で横並びになるように複数個配置されている。
【0067】
第3の実施形態のカバーシェル34には、
図22~
図25に示されるように、2つの保持片237が設置されている。第3の実施形態のカバーシェル34において、2つの保持片237のうち、1つがカバーシェル34の右側後方寄りの位置に配置されており、1つがカバーシェル34の左側後方寄りの位置に配置されている。
【0068】
2つの保持片237は、特に
図23や
図25で示されるように、カバーシェル34の左右側面側の天面から基板11に対して平行方向、つまり左右外方に向けて突出してからLの字曲げされて先端が基板11側に延びて形成された形状(すなわち、正面視で略倒L字形)を有しており、その先端には、保持爪237aが形成されている。この保持爪237aは、下方に向かって幅が狭くなる斜面形状を有しており、上方側になるにつれて幅が広がった楔形状として形成されている。つまり、保持爪237aは、最下部の位置から上方に向けて保持片237の表面から外方に向けて徐々に突出するように形成されている。これら2つの保持爪237aは、上述した基板11に形成された2個の保持孔15の形成位置に対応した位置に配置されている。したがって、基板11の上面に向けてコンプレッションコネクタ31を-Z方向に移動させて押し付けると、保持片237が有する略倒L字形に折れ曲がった形状によるバネ弾性による力と、保持爪237aの下方側の斜面の形状による作用によって、保持片237がカバーシェル34側に押されながら保持孔15に対して保持爪237aが徐々に入り込み、最終的には保持片237が発揮するバネ弾性による外方に向けた押付力が作用して、保持孔15に対して保持爪237aが完全に嵌め込まれた状態になる(
図23および
図24の状態参照)。またこのとき、保持爪237aが有する楔形状の作用によって、保持爪237aは、基板11に形成された保持孔15に引っかかることで、基板11に対して複数のコンタクト32が及ぼす垂直方向のコンタクト反力を受ける。この状態は、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態となっている。つまり、2つの保持片237のそれぞれが有する保持爪237aと、基板11に形成された2個の保持孔15とが、本発明の仮保持機構を構成する。
【0069】
第3の実施形態に係る基板付きコネクタ200では、上述したように、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態を実現した上で、コンプレッションコネクタ31が有する3つのねじ38を用いて基板11に対するコンプレッションコネクタ31の本接続を実行する。具体的には、コンプレッションコネクタ31を構成するカバーシェル34の上面側には、3つのねじ38のねじ頭部が配置されており、ねじ先端部は基板11の底面側に抜けた状態となっているので、基板11の底面側に抜けたねじ先端部に対して不図示のナットを締結することで、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を本接続することができる。つまり、3つのねじ38と不図示のナットを用いたねじ留めが、本発明の本接続機構として機能する。
【0070】
なお、第3の実施形態では、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態と、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を本接続した状態のいずれについても、カバーシェル34に対して接続の際の力が加わることになる。また、カバーシェル34は、左右方向に長い形状を有する薄い金属の板によって形成されているので、接続固定のための力を受けた際にカバーシェル34自体の変形を防止する構造を有することが好ましい。そこで、第3の実施形態に係るカバーシェル34については、上面に対して左右方向に延びる複数条の凸部34aを形成することとした。これら複数条の凸部34aの形成作用によって、カバーシェル34自体の変形強化を図ることができる。
【0071】
以上、
図22~
図25を参照して、第3の実施形態に係る基板付きコネクタ200の構成を説明した。次に、本発明に係る基板付きコネクタが取り得る更に別の形態例である第4の実施形態に係る基板付きコネクタ300について、
図26~
図30を用いて説明を行う。なお、以下の説明では、上述した第1~第3の実施形態で説明した部材と同一又は類似する部材について、同一符号を付して説明を省略する場合がある。
【0072】
[第4の実施形態]
第4の実施形態に係る基板付きコネクタ300は、上述した第3の実施形態に係る基板付きコネクタ200で仮保持機構として機能した保持片237が有する保持爪237aの変形形態例を示すものである。上述した第3の実施形態では、保持爪237aは楔形状で形成されたものであった。しかし、本発明の仮保持機構に採用できる形状については、楔形状をした保持爪237aに限られるものではなく、例えば、湾曲形状部とすることもできる。そのような実施形態例を、
図26~
図30に示す。
【0073】
第4の実施形態に係る基板付きコネクタ300は、
図26~
図28に示されるように、基板11と、基板11の上面に取り付けられるコンプレッションコネクタ31と、を有している。
【0074】
基板11には、不図示のプリント回路等が含まれており、基板11の上面に取り付けられたコンプレッションコネクタ31と電気的に接続することで、電気信号や電源電力等を受け渡すことができるように構成されている。
【0075】
また、基板11には、特に
図29および
図30に示されるように、複数の保持孔15が形成されている。複数(第4の実施形態では2個)の保持孔15は、後述するコンプレッションコネクタ31が有する2本の保持片337が挿し込まれることで、基板11に対するコンプレッションコネクタ31の仮保持が行われる。
【0076】
コンプレッションコネクタ31は、上述した第1~第3の実施形態と同様に、基板11と接触するコンタクト32と、コンタクト32が固定されたハウジング33と、ハウジング33の上面部を覆うカバーシェル34と、ハウジング33の下面部を覆うボトムシェル35を有する。コンタクト32は、左右方向で横並びになるように複数個配置されている。
【0077】
第4の実施形態のカバーシェル34には、
図26~
図30に示されるように、2つの保持片337が設置されている。第4の実施形態のカバーシェル34において、2つの保持片337のうち、1つがカバーシェル34の右側後方寄りの位置に配置されており、1つがカバーシェル34の左側後方寄りの位置に配置されている。
【0078】
2つの保持片337は、特に
図26や
図27、
図29で示されるように、カバーシェル34の左右側面側の天面から基板11に対して平行方向、つまり左右外方に向けて突出してからLの字曲げされて先端が基板11側に延びて形成された形状を有しており、その先端には、湾曲形状部337aが形成されている。この湾曲形状部337aは、Lの字曲げされて正面視で略倒L字形を有する保持片337の先端に2本の縦方向の切れ込みを入れ、2本の縦方向の切れ込みの中央に位置する板部材を左右外方に向けて突出するように湾曲させて形成された部位である。つまり、湾曲形状部337aは、最下部の位置から上方に向けて保持片337の表面から外方に向けて徐々に突出し、その後、徐々に後退するように形成されている。これら2つの湾曲形状部337aは、上述した基板11に形成された2個の保持孔15の形成位置に対応した位置に配置されている。したがって、基板11の上面に向けてコンプレッションコネクタ31を-Z方向に移動させて押し付けると、保持片337が有する正面視で略倒L字形に折れ曲がった形状によるバネ弾性による力と、湾曲形状部337aの形状による作用によって、保持片337がカバーシェル34側に押されながら保持孔15に対して湾曲形状部337aが徐々に入り込み、湾曲形状部337aの湾曲形状を乗り越えた段階で保持片337が発揮するバネ弾性による外方に向けた押付力が作用して、保持孔15に対して湾曲形状部337aが完全に嵌め込まれた状態になる(
図27および
図28の状態参照)。またこのとき、湾曲形状部337aが有する湾曲形状は保持孔15を通過して基板11の下面側に位置しているので、湾曲形状部337aは基板11に形成された保持孔15に引っかかることで、基板11に対して複数のコンタクト32が及ぼす垂直方向のコンタクト反力を受ける。この状態は、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態となっている。つまり、2つの保持片337のそれぞれが有する湾曲形状部337aと、基板11に形成された2個の保持孔15とが、本発明の仮保持機構を構成する。
【0079】
第4の実施形態に係る基板付きコネクタ300では、上述したように、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態を実現した上で、コンプレッションコネクタ31が有する3つのねじ38を用いて基板11に対するコンプレッションコネクタ31の本接続を実行する。具体的には、コンプレッションコネクタ31を構成するカバーシェル34の上面側には、3つのねじ38のねじ頭部が配置されており、ねじ先端部は基板11の底面側に抜けた状態となっているので、基板11の底面側に抜けたねじ先端部に対して不図示のナットを締結することで、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を本接続することができる。つまり、3つのねじ38と不図示のナットを用いたねじ留めが、本発明の本接続機構として機能する。
【0080】
なお、第4の実施形態では、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を仮保持した状態と、基板11に対してコンプレッションコネクタ31を本接続した状態のいずれについても、カバーシェル34に対して接続の際の力が加わることになる。また、カバーシェル34は、左右方向に長い形状を有する薄い金属の板によって形成されているので、接続固定のための力を受けた際にカバーシェル34自体の変形を防止する構造を有することが好ましい。そこで、第4の実施形態に係るカバーシェル34については、上面に対して左右方向に延びる複数条の凸部34aを形成することとした。これら複数条の凸部34aの形成作用によって、カバーシェル34自体の変形強化を図ることができる。
【0081】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0082】
10 (第1の実施形態の)基板付きコネクタ
100 (第2の実施形態の)基板付きコネクタ
200 (第3の実施形態の)基板付きコネクタ
300 (第4の実施形態の)基板付きコネクタ
11 基板
12 取付孔
13 開口部
15 保持孔(仮保持機構)
21 ケージ
22 脚部
23 ロック孔(仮保持機構)
31 コンプレッションコネクタ
32 コンタクト
32a 前方端部
32b 後方端部
33 ハウジング
34 カバーシェル
34a 凸部
35 ボトムシェル
36 電気ケーブル
37 ロック片
37a ロック爪(仮保持機構)
38 ねじ(本接続機構)
137 保持片
137a 保持爪(仮保持機構)
237 保持片
237a 保持爪(仮保持機構)
337 保持片
337a 湾曲形状部(仮保持機構)