(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158485
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】床センサ
(51)【国際特許分類】
H04Q 9/00 20060101AFI20241031BHJP
G01V 3/02 20060101ALN20241031BHJP
G01V 3/08 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
H04Q9/00 301D
G01V3/02 A
G01V3/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073717
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 元明
(72)【発明者】
【氏名】松本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 雄哉
【テーマコード(参考)】
2G105
5K048
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB03
2G105BB04
2G105EE06
2G105GG03
2G105HH02
2G105KK06
5K048BA07
5K048BA08
5K048BA52
5K048DB01
5K048DC01
5K048EB02
5K048HA01
5K048HA02
5K048HA03
(57)【要約】
【課題】検出範囲を広くでき、かつ、検知した入力に基づいて制御装置に処理を実行させることができ、かつ、入力に対する外乱の影響を除去し易い床センサを実現する。
【解決手段】実施形態の一例である床センサ10は、床上に設けられたシート状のセンサ本体11と、制御装置30とを含む。センサ本体11は、複数の領域での接触の有無を検出する複数のセンサ要素を含む。制御装置30は、複数のセンサ要素から取得した検出情報から得られた、複数の領域の位置と接触の有無との経時的変化から人の足の動作に対応する接触箇所の経時的変化を抽出し、抽出された接触箇所の経時的変化に対応する動作が予め記憶された第1所定動作である場合に、第1所定動作に応じた第1所定処理を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床上に設けられたシート状のセンサ本体と、制御装置とを備える床センサであって、
前記センサ本体は、複数の領域での接触の有無を検出する複数のセンサ要素を含み、
前記制御装置は、前記複数のセンサ要素から取得した検出情報から得られた、前記複数の領域の位置と前記接触の有無との経時的変化から人の足の動作に対応する前記接触箇所の経時的変化を抽出し、抽出された前記接触箇所の経時的変化に対応する前記動作が予め記憶された第1所定動作である場合に、前記第1所定動作に応じた第1所定処理を実行する、
床センサ。
【請求項2】
前記複数のセンサ要素は、互いに直交する縦方向及び横方向にマトリックス状に配置されている、
床センサ。
【請求項3】
前記第1所定処理は、設備機器、または情報機器を制御することである、
請求項1に記載の床センサ。
【請求項4】
前記第1所定処理は、前記動作による制御のための入力の処理の開始を決定することである、
請求項1に記載の床センサ。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1所定動作に対応する前記接触箇所の経時的変化が生じた位置を含む所定範囲内において、前記第1所定処理の実行後に抽出された前記動作が予め記憶された第2所定動作である場合に、前記第2所定動作に応じた第2所定処理を実行する、
請求項4に記載の床センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床上に設けられたシート状のセンサ本体と、制御装置とを備える床センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、床置きタイプのシート状のセンサで人の位置を把握する床センサが知られている。床センサは、例えば病院のベッドや喫茶店の入口などで使用される。床センサにおける人の感知の方法として、接触の有無を検知したり、重量がかかっているかを検知したり、力のかかり方が変化したことを検知する等が考えられる。
【0003】
特許文献1には、エレベーターの乗場床に設けられた床センサであって、台車の重さを検知した場合にエレベーターのかご扉及び乗場扉の開時間を通常より長くすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、床センサにおいて、荷重なし、物理的な接触がない状態を表す「0」、または荷重有り、物理的な接触がある状態を表す「1」を情報として検知する場合には、人が立っているか否かや、その上を歩いているか否か等の、狭い用途にしか用いることができない。このため、床センサの用途の拡大を図る面から改良の余地がある。
【0006】
一方、床センサの用途の拡大を図るために、床センサの検知情報を、建物の設備機器や、コンピュータ等の情報機器を制御するための入力情報として利用することが考えられる。これによれば、人が足を使って機器の制御のための入力を行えるので、手を使って入力する必要がなくなる。しかしながら、床センサでは、その上に机やキャビネットなどの重量物が常時置かれた状態となることがある。また、制御の入力とは無関係の人が床センサの上を歩く等の可能性もある。これにより、入力に対する外乱が生じやすい。特に、床センサの検出範囲を広くする場合に外乱が生じやすい。このため、床センサは、機器の制御の入力手段として利用し難いという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、足の動作により機器を制御する等のための処理を制御装置に実行させることができ、かつ、入力に対する外乱の影響を除去し易い床センサを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一例である床センサは、床上に設けられたシート状のセンサ本体と、制御装置とを備える床センサであって、前記センサ本体は、複数の領域での接触の有無を検出する複数のセンサ要素を含み、前記制御装置は、前記複数のセンサ要素から取得した検出情報から得られた、前記複数の領域の位置と前記接触の有無との経時的変化から人の足の動作に対応する前記接触箇所の経時的変化を抽出し、抽出された前記接触箇所の経時的変化に対応する前記動作が予め記憶された第1所定動作である場合に、前記第1所定動作に応じた第1所定処理を実行する、床センサである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の床センサによれば、足の動作により機器を制御する等のための処理を制御装置に実行させることができ、かつ、入力に対する外乱の影響を除去し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態の一例である床センサを適用した部屋における人及び物の位置の1例を示す平面図である。
【
図2】
図1において、部屋の床上に配置された床センサが複数の単位床センサで構成されていることを示す図である。
【
図3】実施形態の一例である床センサを含む制御システムの構成図である。
【
図4】
図1のA部における単位床センサと、単位床センサを用いて制御装置に処理を指示する人との位置関係を示す斜視図である。
【
図5】単位床センサの上での足の動作の一例を示す図である。
【
図6】単位床センサを構成するセンサ要素の1例を模式化して示す断面図(a)と、(a)において、センサ要素と接触した状態、つまりセンサ要素に上から荷重がかかった状態を示す断面図である。
【
図7A】
図5の足の動作の前半において、単位床センサを構成する複数のセンサ要素の検知状態の変化を示す図である。
【
図7B】
図5の足の動作の後半において、単位床センサを構成する複数のセンサ要素の検知状態の変化を示す図である。
【
図8】実施形態の床センサを用いて処理を指示する場合の足の動作の別例を示す図である。
【
図9】照明システムにおいて、
図8の動作で制御される照明装置の点灯状態の一例を示す図である。
【
図10】単位床センサ上に重量物が置かれている場合における、
図7Aに対応する図である。
【
図11】実施形態の別例である床センサを含む制御システムの構成図である。
【
図12】実施形態の別例である床センサを含む制御システムの構成図である。
【
図13】実施形態の別例である床センサを用いて処理を指示する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る床センサの実施形態について詳細に説明する。以下で説明する各実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態、変形例を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
【0012】
図1は、実施形態の一例である床センサ10を適用した部屋1における人2、3及び物の位置の1例を示す平面図である。
図2は、
図1において、部屋1の床上に配置された床センサ10が複数の単位床センサ14で構成されていることを示す図である。
図3は、床センサ10を含む制御システム100の構成図である。
図4は、
図1のA部における単位床センサ14と、単位床センサ14を用いて制御装置に処理を指示する人2との位置関係を示す斜視図である。
【0013】
図1、
図2に示すように、床センサ10は、建物の部屋1の床上のほぼ全体に敷き詰められて配置される。例えば、部屋1は、扉4で開閉される出入口5と、事務作業や打ち合わせ等を行う空間6とを有するオフィスルームとすることができる。
図3に示すように、床センサ10は、床上に設けられたシート状のセンサ本体11と、センサ本体11からの信号が入力される制御装置30と、無線通信部40とを含んで構成される。
【0014】
図1に示すように、センサ本体11の上には、机50,51、椅子52,53(
図4),54,55、キャビネット56,57,58、鉢植え59、仕切り板60等が配置される。このため、床センサ10は、部屋1の床面に基本的に、常時配置される常設型である。床センサ10は、床面に置かれるだけであり、床面からの移動が容易であるので、修理、点検が容易である。
図1では、部屋1内に複数の人2,3が存在する場合を示している。制御装置30及び無線通信部40(
図3)は、後で詳しく説明する。
【0015】
図2に示すように、センサ本体11は、部屋1全体に敷き詰められ、部屋1の床上に縦方向(
図2の上下方向)及び横方向(
図2の左右方向)にそれぞれ複数ずつ並ぶようにマトリックス状に配置された複数の単位床センサ14を有する。縦方向及び横方向は互いに直交し、単位床センサ14は部屋1内の所定位置に配置される。
図2では、破線の矩形部のそれぞれにより単位床センサ14を示している。
図4に示すように、各単位床センサ14は、全体がシート状である。
【0016】
図5は、単位床センサ14の上での足2aの動作の一例を示している。
図5に示すように、単位床センサ14は、互いに直交する縦方向(
図5の上下方向)及び横方向(
図5の左右方向)にそれぞれ複数ずつ並ぶようにマトリックス状に配置された複数のセンサ要素15を含んでいる。
図5において破線の格子で規定される複数の矩形部分のそれぞれがセンサ要素15を表している。例えば各センサ要素15は、縦方向及び横方向の寸法がそれぞれ略5cmである正方形のシート状であり、正方形状の1つの領域での接触の有無を検出する。
【0017】
図6(a)は、単位床センサ14を構成するセンサ要素15の1例を模式化して示す断面図である。
図6(b)は、
図6(a)において、センサ要素15と接触した状態、つまりセンサ要素15に上から荷重Fがかかった状態を示す断面図である。
図6(a)に示すように、センサ要素15は、基板16の上面に互いに近接して配置された下部電極17,18と、下部電極17,18の上側に配置されたフィルム19と、基板16の上面に設けられ、下部電極17,18より高さが大きいスペーサ20,21とを有する。スペーサ20,21は、2つの下部電極17,18の横方向両側に設けられる。これにより、基板16とフィルム19とが上下方向に離間する。スペーサは、2つの下部電極17,18を取り囲むように設けられた枠筒状であってもよい。下部電極17,18は、銅、アルミニウム等の金属材料や炭素系材料により形成される。2つの下部電極17,18の一方の下部電極17には駆動電圧が供給される。
【0018】
フィルム19の下面には上部電極22が形成される。上部電極22は、2つの下部電極17,18と上下方向に対向する。上部電極22も下部電極17,18と同様の材料により形成される。
【0019】
図6(b)に示すように、センサ要素15に上側から荷重Fが加わった場合には、上部電極22が下部電極17,18に接触することにより、2つの下部電極17,18が導通する。これにより、他方の下部電極18に駆動電圧が印加されたことを検出することにより、センサ要素15に荷重が加わったことが検出される。このため、複数のセンサ要素15は、複数の領域での接触の有無を検出する。なお、センサ要素15の構成は、
図6の構成に限定するものではなく、接触の有無、つまり上側からの荷重の有無を検出できるものであれば、変形に伴う電気抵抗の変化を測定する抵抗膜方式、静電容量方式、圧電素子方式等の圧力センサを用いてセンサ要素が構成されてもよい。
【0020】
複数のセンサ要素15は、接触の有無を表す検出情報を、その検出情報に対応するセンサ要素15の位置と対応付けて、制御装置30(
図3)に送信する。例えば、
図5において、単位床センサ14の横方向をX方向とし、縦方向をY方向とした場合に、各センサ要素15の位置を、単位床センサ14におけるX方向位置及びY方向位置の座標位置として特定することができる。
図5では、
図4に示すように人2が椅子53に座った状態で、右側の足2aを1→2→3→4の順番に滑らせたときの足2aの位置の変化を示している。
【0021】
また、
図2のように床センサ10はマトリックス状に配置された単位床センサ14により構成される。各単位床センサ14は、センサ本体11における単位床センサ14の座標位置と、X,Y座標位置に関係付けた接触の検出情報とを、制御装置30に送信する。これにより、制御装置30は、センサ本体11における複数の領域の位置と接触の有無との関係を取得できる。
【0022】
図3に示す制御装置30は、CPU等の演算処理部31と、メモリ等の記憶部34とを有する。演算処理部31は、動作抽出部32と、処理部33とを有する。床センサ10は、図示しない電源部を有する。電源部は、制御装置30に電力を供給する。例えば、電源部は、交流電力を直流電力に変換する電力変換部を有する。電力変換部は、商用交流電源からの交流電力を直流電力に変換し、その直流電力を制御装置30に供給する。制御装置30にバッテリが接続され、バッテリから制御装置30に電力が供給されてもよい。制御装置30には無線通信部40が接続される。
【0023】
動作抽出部32は、各単位床センサ14からの信号が表す検出情報を取得し、その取得した検出情報から、複数のセンサ要素15に対応する複数の領域の位置とそれぞれの領域の接触の有無との経時的変化を算出する。動作抽出部32は、その算出結果と、記憶部34に予め記憶された、足の動作に対応する接触箇所の移動パターン等の経時的変化パターンとの比較を行い、その比較結果から、足の動作に対応する接触箇所の経時的変化を抽出する。そして、抽出された接触箇所の経時的変化に対応する足の動作が、記憶部34に予め記憶された動作パターンである、所定の指示に対応する第1所定動作である場合には、制御装置30の処理部33が、その第1所定動作に応じた第1所定処理を実行する。
【0024】
例えば、第1所定処理は、設備機器62、または情報機器70の所定の制御を行うことである。設備機器62としては、例えば部屋1内の照明装置、または空調機、または出入口5の扉4に設けられた電気錠等が挙げられる。また、設備機器62は、IOT(Internet of Things)対応のデバイスとしてもよい。情報機器70としては、コンピュータや、スマートフォン等の携帯端末が挙げられる。
【0025】
無線通信部40は、第1所定処理の実行によって、設備機器62または情報機器70と無線通信を行って、設備機器62または情報機器70に制御信号を送信し、その機器62,70の制御を行う。無線通信部40は、無線LAN(Local Area Network)、携帯電話用のセルラー通信(例えばLTE、5G)、近距離無線通信(例えば、赤外線通信またはBluetooth(登録商標)通信)などの無線通信によって、機器62,70と通信する。例えば、第1所定処理の実行によって、設備機器62としての照明装置を点灯または消灯させたり、情報機器70としてのコンピュータの制御を行う。
図3に示す制御システム100は、床センサ10と、設備機器62及び情報機器70とを含んで構成される。
【0026】
例えば、
図5に示すように、椅子53(
図4)に座った人2が一方の足である右側の足2aを左から右に滑らせながら移動させる場合を考える。このとき単位床センサ14の上では、1から4の順番に時間t0、t1、t2、t3と、所定時間であるΔtの時間分ずつ、時間が経過するのにしたがって、足2aの前端が向く方向が斜め左前から、前側、斜め右前のように、徐々に変化する。
【0027】
このとき、単位床センサ14の接触の検出状態は、
図7A、
図7Bのように変化する。
図7A、
図7Bは、それぞれ
図5の足2aの動作の前半及び後半において、単位床センサ14を構成する複数のセンサ要素15の検知状態の変化を示す図である。
図7A(a)(b)、
図7B(a)(b)は、それぞれ
図5の1,2,3,4で示す足2aの位置に対応する。
【0028】
図7A、
図7Bでは、灰色のセンサ要素15が接触ありの検出状態を、白色のセンサ要素15が接触なしの状態を、それぞれ表している。
図7A、
図7Bにおいて、制御装置30の動作抽出部32(
図3)は、センサ要素15と人2(足)の接触箇所と、センサ要素15と椅子53(脚)の接触箇所と、を抽出する。センサ要素15と人2(足)の接触箇所と、センサ要素15と椅子53(脚)の接触箇所と、の抽出は、記憶部34に予め記憶された形状を基にしたり、足の動作に対応する接触箇所の移動パターン等の経時的変化を基にしたり、して行う。このように抽出した、センサ要素15と足の接触箇所、つまり人2と、センサ要素15と脚の接触箇所、つまり椅子53と、の位置関係から、動作抽出部32は人2が前を向く方向を推定する。そして、動作抽出部32は、接触ありの検出状態を示すセンサ要素15の矩形領域が集まった部分の長手方向の向きと、人2が前を向く方向との関係から、足2aの前端の向きを推定する。そして、動作抽出部32は、センサ要素15の検出情報に基づく足2aの前端の向きが、左から右に円弧方向に移動していることから、
図5のように足2aが移動していると判断する。動作抽出部32は、その足2aの動作が、記憶部34に予め記憶された、足の動作に対応する接触の経時的変化パターンと合致または類似すると判定した場合には、その足の動作に対応する、
図7A、
図7Bで示した接触の経時的変化を抽出する。そして、抽出された接触の経時的変化に対応する足2aの動作、すなわち、足2aを左から右に滑らせながら移動させる動作が、記憶部34に予め記憶された第1所定動作である場合には、制御装置30の処理部33が、その第1所定動作に応じた第1所定処理を実行する。
図7A、
図7Bでは足の外形を示しているが、この外形及びその位置は接触の検出状態から推定されたものを示している。
【0029】
図7A、
図7Bでは、右側の足2aを左から右に滑らせながら移動させる場合を説明した。この場合には、左側の足の位置は制限されない。一方、右側の足2aの移動の間中、左側の足は同じ位置に置かれることを条件に、処理部33が第1所定処理を実行する構成としてもよい。
【0030】
図8は、実施形態の床センサ10の単位床センサ14を用いて処理を指示する場合の足2aの動作の別例を示す図である。
図9は、照明システム63において、
図8の動作で制御される照明装置64の点灯状態の一例を示す図である。
【0031】
図8のA1で示すように、左側の足2bを同じ位置に置き続けた状態で、
図8のA2で示すように右側の足2aを足2bより前側に出して右側に向かって滑らせながら移動させている。このときの足2aの動作が第1所定動作に対応する。足2bは、足2aの移動動作が終了するまで単位床センサ14上の同じ位置に置かれ続ける。制御装置30は、足2aの移動動作と、その移動動作中、足2bが所定位置に置かれ続けることを条件に、第1所定処理を実行する。
【0032】
図9は、複数の照明装置64を上から見た状態を模式化して示している。
図9では照明装置64を表す矩形を黒色で塗りつぶした部分が点灯を意味し、照明装置64を表す矩形を白色で示したものが消灯を意味する。照明システム63は、複数の照明装置64を含んでいる。第1所定処理の実行によって、例えば、
図9に示すように部屋の天井に設けられた複数の照明装置64のうち、奥端(
図9の上側)の右側に位置する照明装置64のみの点灯を実行させることができる。
【0033】
また、人が座りながら床センサ10に制御を指示するための足の動作を行うときに、人は足を床センサ10に置いたり、足を組んだりすることが想定される。この場合でも、制御装置30が足の動作を取得しやすいように、例えば、「床センサ10の所定の場所を1回踏むまたは2回踏む」といった簡単な操作により、床センサ10を用いて機器の制御開始及び制御終了を容易に切り替えられる構成としてもよい。
【0034】
上記の床センサ10によれば、足の動作により機器を制御するための処理を制御装置30に実行させることができ、かつ、入力に対する外乱の影響を除去し易くなる。これについて、
図10を用いて説明する。
図10は、単位床センサ14上に重量物が置かれている場合における、
図7Aに対応する図である。
【0035】
図10では、人が椅子に座った状態で足を移動させることが可能な範囲の右斜め前に、鉢植え、置物等の重量物が静止したままで置かれている。これにより、単位床センサ14の一部のセンサ要素15を示す前側の矩形領域αでは、常時、接触した状態、つまり荷重が加わったことを表す灰色部分となっている。このとき、
図10(a)(b)のように所定時間Δt分、時間が変化しても、矩形領域αの検出状態は変化しない。このため、制御装置30の動作抽出部32は、矩形領域αを、足により接触が加わったと判断せず、その矩形領域αでは検出結果の経時的変化を抽出しない。この重量物の静止位置は、足の動作を制御のための入力とするときに、入力に対する外乱となる。実施形態では、そのような外乱がある場合でも、その外乱による接触が発生した部分では検出結果の経時的変化を抽出しない。これにより、この外乱の影響を除去し易くなる。この外乱は、床センサ10の検出範囲が広くなるほど多く発生しやすい。これにより、外乱の影響を除去できる効果は、床センサ10の検出範囲が広くなるほど顕著になる。
【0036】
例えば、
図1のように、室内の床のほぼ全体に床センサ10がある場合には、机50,51、椅子52,54,55、キャビネット56,57,58、鉢植え59、仕切り板60等、静止した重量物は多く生じやすくなる。また、椅子に座って処理を足で指示する人2以外にも多くの人3が床センサ10上を移動する可能性がある。このため、重量物及び人は床センサ10の入力に対する外乱となる可能性があるが、実施形態の床センサ10では、入力に対する外乱の影響を除去し易くなる。これにより、実施形態によれば、検出範囲を広くした場合でも、入力に対する外乱の影響を除去しやすいので、足の動作により機器を制御するための処理を制御装置30に実行させ易い。
【0037】
上記では、足2aの1つの動作が第1所定動作であり、その第1所定動作に応じた第1処理を実行する場合を説明した。一方、制御装置30の記憶部34が、複数の第1所定動作に対応する足の複数の経時的変化パターンを記憶している構成としてもよい。このとき、複数の第1所定動作の中から選択された第1所定動作に相当する足の動作が実行された場合に、制御装置は、その動作に応じた第1処理を実行する構成としてもよい。
【0038】
例えば、複数の第1所定動作が、次の動作の中の2つ以上であってもよい。
椅子に座っている人が足裏全体を床センサ10につけている状態から、
(1)足裏全体で床センサ10の上面をタップ、すなわち瞬間的にたたく動作をする。
(2)かかとや、つま先等の足の一部で床センサ10の上面をタップする。
(3)足裏全体で床センサ10の上面をダブルタップする、すなわち瞬間的にたたく動作を2度連続的に行う。
(4)かかとや、つま先等の足の一部で床センサ10の上面をダブルタップする。
または、
(5)かかとや、つま先等の足の一部を床センサ10の上面に接触させたまま、その足の一部を床センサ10の上面で滑らせる。
または、
(6)足裏の全体を床センサ10の上面に接触させたまま、その足裏全体を床センサ10の上面で滑らせる。
【0039】
上記(1)から(6)の動作のうち、(1)から(4)の動作は、足の移動を伴わない。このため、それらの動作では時間の経過にしたがって、同じ位置のセンサ要素15で接触の有無が変化するだけである。制御装置30は、その同じ位置での接触の経時的変化から足の動作を取得する。
【0040】
また、上記の実施形態では、椅子に座っている人が足を動作させることにより、制御装置に第1所定処理を実行させる場合を説明したが、人が立っている状態で足を動作させることにより、制御装置に第1所定処理を実行させる構成としてもよい。例えば、第1所定動作は、人が立っている状態における上記の(1)から(6)までの動作の1つまたは2つ以上とすることができる。足の動作の後側の近傍に椅子の足の下端に相当する面積で、常時、センサ要素15に接触しているか、すなわち上からセンサ要素15に荷重が加わっているか否かに応じて、制御装置が、人が立って足を動作させているか否かの判断を行う構成としてもよい。
【0041】
また、上記の実施形態では、足の動作によって制御装置30が実行する第1所定処理が、設備機器62、または情報機器70の所定の制御を行うことである場合を説明した。一方、人が設備機器62、または情報機器70の所定の制御を実行させる場合に、足の最初の動作を通信のプリアンブルとして用いてもよい。
【0042】
具体的には、制御装置30は、複数のセンサ要素15から取得した検出情報から得られた、複数の領域の位置と接触の有無との経時的変化から人の足の動作に対応する接触箇所の経時的変化を抽出する。そして、制御装置30は、抽出された接触箇所の経時的変化に対応する動作が第1所定動作である場合に第1所定処理として、足の動作による制御のための入力の処理の開始を決定する。
【0043】
この場合、制御装置30は、第1所定処理の実行後において、複数のセンサ要素15から取得した検出情報から得られた、床センサ10の複数の領域の位置と接触の有無との経時的変化から、足の動作に対応する接触の経時的変化を抽出する。そして、制御装置30は、抽出された接触の経時的変化に対応する足の動作が記憶部34に記憶された第2所定動作である場合には、第2所定動作に応じた第2所定処理を実行する。例えば、第2所定処理は、設備機器62、または情報機器70について所定の制御を行うことである。
【0044】
また、制御装置30は、第1所定動作に対応する足の接触箇所の経時的変化が生じた位置を含む所定範囲内において、第1所定処理の実行後に抽出された足の動作が第2所定動作である場合にのみ、第2所定動作に応じた第2所定処理を実行する構成としてもよい。例えば、上記の所定範囲は、上記の経時的変化の最後に確認された接触位置を中心とした所定半径を有する円領域である。
【0045】
このような構成によれば、足の最初の動作を、通信のプリアンブルとして利用することができる。この場合には、制御装置30が行う計算量を少なくできる。例えば、プリアンブルとなる足の動作を抽出するまでは、制御装置30は、その足の動作に対応して記憶部34に記憶された所定の接触箇所の経時的変化と、検出された接触箇所の経時的変化とだけの比較を行えばよい。これにより、制御装置30の計算量を少なくできる。
【0046】
また、上記では制御装置30が無線通信部40を介して設備機器62、または情報機器70と無線通信可能であるが、制御装置30は、設備機器62、または情報機器70とケーブルを介して有線で接続されてもよい。
【0047】
図11は、実施形態の別例である床センサ10aを含む制御システム100aの構成図である。本例の制御システム100aは、床センサ10aと、床センサ10aからの信号で制御される情報機器であるパーソナルコンピュータ(PC)71、及び設備機器であるクラウド制御設備機器104とを含んでいる。
【0048】
床センサ10aは、小規模な室内の床上に配置される。床センサ10aは、センサ本体11aと、センサ本体11aと通信する制御装置30aを有する制御ユニット35とを含む。
【0049】
例えばセンサ本体11aは折り畳み可能、または筒状に巻回可能であり、人の手で持ち運び可能に構成される。例えば、センサ本体11aの寸法は、縦方向及び横方向の長さでそれぞれ50cm程度とすることができる。
【0050】
制御ユニット35は、筐体35a内に収容された制御装置30a、図示しないバッテリ、及び無線通信部を含んでいる。バッテリは制御装置30aに電力を供給する。無線通信部は制御装置30aに接続される。制御ユニット35は、センサ本体11aから取り外して、商用交流電源からの交流電力を直流電力に変換しながらバッテリに充電するように構成されてもよい。
【0051】
制御装置30aは、人の足の動作に対応する接触箇所の経時的変化を抽出し、抽出された接触箇所の経時的変化に対応する足の動作が第1所定動作である場合に、第1所定処理として、無線通信部を介してPC71と無線通信を行い、PC71の所定の制御を行う。また、制御装置30aは、上記足の動作が第1所定動作である場合に、第1所定処理として、無線通信部及びインターネット上のクラウドサーバ102を介してクラウド制御設備機器104と無線通信を含む通信を行い、クラウド制御設備機器104の所定の制御を行う。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図10で示した構成と同様である。
【0052】
図12は、実施形態の別例である床センサ10aを含む制御システム100bの構成図である。本例の制御システム100bは、床センサ10aと、中央制御コンピュータ80及び連携制御装置81と、情報機器である複数のパーソナルコンピュータ(PC)71a,71b及び携帯端末72と、複数の設備機器用制御装置82,83,84と、複数の設備機器85,86,87とを含んでいる。複数のPC71a,71b及び携帯端末72は、床センサ10aからの信号で、中央制御コンピュータ80及び連携制御装置81を介して制御される。複数の設備機器85,86,87は、床センサ10aからの信号で、中央制御コンピュータ80及び設備機器用制御装置82,83,84を介して制御される。
【0053】
複数の設備機器85,86,87は、例えば照明装置である第1設備機器85と、空調機である第2設備機器86と、照明装置及び空調機以外の設備機器であるエレベーター及び自動ドア装置等の第3設備機器87とを含んでいる。
【0054】
床センサ10aの構成は、
図11の構成で用いられた床センサ10aと同様である。なお、本例の構成において、床センサは、
図1~
図10の構成と同様に、建物の部屋の床面に基本的に常時配置される常設型としてもよい。
【0055】
連携制御装置81は、コンピュータに、PC71a、71bやスマートフォン等の携帯端末72等、異なるオペレーティングシステム(OS)で動作する装置の制御のために、共通の入力方式から各装置のOSに合わせた出力方式に変換する変換用アプリケーションプログラムが実装されている。例えば、変換用アプリケーションプログラムは、異なるOSで動作する装置同士をそれぞれのアプリケーションが連携して所定の機能を実現するように構成されてもよい。複数のPC71a、71bは、床センサ10aを用いて制御を指示する人が所有するノート型のPCと、その人とは別の人が所有するノート型のPCとを含んでもよい。
【0056】
中央制御コンピュータ80は、床センサ10aから送信された信号を連携制御装置81と複数の設備機器用制御装置82,83,84とに分配する機能を有する。中央制御コンピュータ80は、設備機器85,86,87を有する建物内に設けられ、複数の設備機器85,86,87を統合制御したり、または監視する機能を有する構成としてもよい。
【0057】
これにより、制御システム100bは、床センサ10aを用いた人の入力に応じて、設備機器85,86,87及びPC71a、71b及び携帯端末72を制御する。例えば、床センサ10aの入力に応じてPC71a、71b及び携帯端末72から所定内容のメールを送信させることもできる。本例において、その他の構成及び作用は、
図1~
図10の構成、または
図11の構成と同様である。
【0058】
図13は、実施形態の別例である床センサ10bを用いて処理を指示する状態を示す斜視図である。本例の構成では、床センサ10bは、センサ本体11bと制御装置(図示せず)とを含んでいる。センサ本体11bは、縦方向及び横方向にそれぞれ2つずつ並ぶように設けられた4つのセンサ要素23,24,25,26を含んでいる。4つのセンサ要素23,24,25,26の上面には、それぞれ1,2,3,4の数字が表示され、視覚的に区別されるように破線で示す仕切り線が表示される。
【0059】
第1所定動作は、各一部のセンサ要素が足裏の一部のみ、または全体で踏まれることである。例えば、
図13の1,2で表示されるセンサ要素23,24は、足裏全体で踏む、またはつま先で踏むことが想定される。
図13の3,4で表示されるセンサ要素25,26は、足のかかとで踏むことが想定される。
【0060】
上記の第1所定動作は、例えば、
図13の1で表示されるセンサ要素23を1回踏むことであり、その第1所定動作の実行により、制御装置は、第1所定処理として空調機をオンさせる、すなわち起動させる構成としてもよい。また、第1所定動作は、例えば、
図13の1で表示されるセンサ要素23を所定時間内に2回踏むことであり、その第1所定動作の実行により、制御装置は、第1所定処理として空調機をオフさせる、すなわち起動を停止させる構成としてもよい。
【0061】
上記の第1所定動作は、例えば、
図13の2で表示されるセンサ要素24を1回踏むことであり、その第1所定動作の実行により、制御装置は、第1所定処理として照明装置をオンさせる、すなわち点灯させる構成としてもよい。また、第1所定動作は、例えば、
図13の2で表示されるセンサ要素24を所定時間内に2回踏むことであり、その第1所定動作の実行により、制御装置は、第1所定処理として照明装置をオフさせる、すなわち消灯する構成としてもよい。
【0062】
上記の第1所定動作は、所定の順序で1つまたは複数のセンサ要素23,24,25,26を踏むことであり、その第1所定動作の実行により、自分のPCのメール用アプリケーションを制御して予め送信先を設定した人に所定のメッセージを送信する構成としてもよい。例えば、
図13のセンサ要素15を1→1→1と、1のセンサ要素23を所定時間内に3回踏むことにより、「電話してほしい」のメッセージが送信される構成としてもよい。また、
図13の2つのセンサ要素23,25を1→3→1と、1、3のセンサ要素23,25を所定時間内に順に踏むことにより、「寒い」のメッセージが送信される構成としてもよい。また、
図13の2つのセンサ要素24,26を2→2→4と、2、4のセンサ要素24,26を所定時間内に順に踏むことにより、「飲み物が欲しい」のメッセージが送信される構成としてもよい。
【0063】
なお、上記の各実施形態において、床センサ10,10a、10bでの入力によって制御される内容は、制御装置に読み込まれるソフトウェアプログラムの設定変更により自由に変更できる構成としてもよい。
【0064】
なお、本発明は上記の実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1 部屋、2,3 人、2a 足、4 扉、5 出入口、6 空間、10,10a、10b 床センサ、11,11a センサ本体、14 単位床センサ、15 センサ要素、16 基板、17,18 下部電極、19 フィルム、20,21 スペーサ、22 上部電極、23,24,25,26 センサ要素、30,30a 制御装置、31 演算処理部、32 動作抽出部、33 処理部、34 記憶部、35 制御ユニット、35a 筐体、40 無線通信部、50,51 机、52,53,54,55 椅子、56,57,58 キャビネット、59 鉢植え、60 仕切り板、62 設備機器、63 照明システム、64 照明装置、70 情報機器、71、71a、71b パーソナルコンピュータ(PC)、72 携帯端末、80 中央制御コンピュータ、81 連携制御装置、82,83,84 設備機器用制御装置、85,86,87 設備機器、100,100a、100b 制御システム、102 クラウドサーバ、104 クラウド制御設備機器。