(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158488
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】火災検出システム、マーカ位置特定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 17/10 20060101AFI20241031BHJP
G08B 17/12 20060101ALI20241031BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20241031BHJP
G08B 29/26 20060101ALI20241031BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241031BHJP
【FI】
G08B17/10 Z
G08B17/12 Z
G08B25/00 510M
G08B29/26
G06T7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073722
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100171446
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉夫
(72)【発明者】
【氏名】久木 祐弥
【テーマコード(参考)】
5C085
5C087
5L096
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085AA12
5C085AB01
5C085AC03
5C085BA36
5C085CA07
5C087AA02
5C087AA03
5C087BB74
5C087DD04
5C087DD20
5C087EE14
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG66
5C087GG84
5L096BA02
5L096CA04
5L096EA03
5L096FA64
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】マーカが配置された位置や撮像条件によらずに、実空間を撮像した画像からその実空間に配置されたマーカが撮像された領域の大きさを容易に特定する。
【解決手段】撮像部によって撮像された撮像画像における所定の領域ごとに拡大縮小率を設定する補正設定部と、第1明るさ条件にて撮像された前記撮像画像を用いて、前記対象領域における火災を検出する火災検出部と、を備え、補正モードにおいて、前記撮像部は、前記第1明るさ条件よりも明るさを低下させた第2明るさ条件にて発光体マーカが配置された前記対象領域を撮像し、前記補正設定部は、前記撮像部によって前記第2明るさ条件にて前記対象領域が撮像された領域補正用画像を用いて、前記拡大縮小率を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象領域が撮像された撮像画像を用いて火災を検出する火災検出システムであって、
特定の明るさ条件にて前記対象領域を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された撮像画像における所定の領域ごとに拡大縮小率を設定する補正設定部と、
前記撮像部によって第1明るさ条件にて撮像された前記撮像画像に対し前記拡大縮小率に基づいて拡大または縮小した画像を用いて、前記対象領域における火災を検出する火災検出部と、
を備え、
前記補正設定部によって前記拡大縮小率が設定される補正モードにおいて、
前記撮像部は、前記第1明るさ条件よりも明るさを低下させた第2明るさ条件にて発光体マーカが配置された前記対象領域を撮像し、
前記補正設定部は、前記撮像部によって前記第2明るさ条件にて前記対象領域が撮像された領域補正用画像における前記発光体マーカの位置座標に基づいて前記所定の領域を設定し、前記領域補正用画像における前記発光体マーカの大きさに基づいて算出される当該所定の領域における前記拡大縮小率を設定する、
ことを特徴とする火災検出システム。
【請求項2】
前記補正モードにおいて、
前記撮像部は、さらに前記第1明るさ条件にて前記対象領域を撮像し、
前記補正設定部は、前記領域補正用画像を用いて前記発光体マーカの位置座標を特定し、前記撮像部によって前記第1明るさ条件にて撮像された前記撮像画像に、前記発光体マーカの位置座標が示された合成画像を生成する、
請求項1に記載の火災検出システム。
【請求項3】
対象領域が撮像された撮像画像を用いて火災を検出する火災検出システムであって、
特定の明るさ条件にて前記対象領域を撮像する撮像部と、
前記撮像部によって撮像された撮像画像における所定の領域ごとに拡大縮小率を設定する補正設定部と、
前記撮像部によって第1明るさ条件にて撮像された前記撮像画像に対し前記拡大縮小率に基づいて拡大または縮小した画像を用いて、前記対象領域における火災を検出する火災検出部と、
を備え、
前記補正設定部によって前記拡大縮小率が算出される補正モードにおいて、
前記対象領域における特定の位置に発光体マーカが配置され、
前記撮像部は、前記発光体マーカによる発光が特定のパターンにて変化する様子を時系列に沿って撮像し、
前記補正設定部は、前記撮像部によって時系列に沿って撮像された複数の領域補正用画像を用いて、前記領域補正用画像における前記発光体マーカの位置座標に基づいて前記所定の領域を設定し、前記領域補正用画像における前記発光体マーカの大きさに基づいて算出される当該所定の領域における前記拡大縮小率を設定する、
ことを特徴とする火災検出システム。
【請求項4】
前記撮像部は、特定の明るさ条件にて前記対象領域を撮像し、前記火災検出部によって火災が検知される火災検出モードにおいて第1明るさ条件にて前記対象領域を撮像し、前記補正モードにおいて、前記第1明るさ条件よりも明るさを低下させた第2明るさ条件にて前記対象領域を撮像する、
請求項3に記載の火災検出システム。
【請求項5】
前記補正設定部は、前記撮像部によって時系列に沿って撮像された複数の領域補正用画像のうちの第1領域補正用画像を用いて、前記発光体マーカにおける位置座標の候補を抽出し、抽出した位置座標の候補に対応する発光画素における画素値の時系列変化に基づく周波数解析を行い、前記発光体マーカの位置座標を特定する、
請求項3に記載の火災検出システム。
【請求項6】
前記発光体マーカは、発光色を変更可能である、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の火災検出システム。
【請求項7】
前記発光体マーカは特定の間隔で離隔して配置された2つの発光体により構成され、
前記補正設定部は、前記領域補正用画像における2つの離間した前記発光体のそれぞれの位置座標を特定し、特定した前記発光体のそれぞれ位置座標間にある画素数と前記間隔との関係に基づいて、前記拡大縮小率を算出する、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の火災検出システム。
【請求項8】
対象領域が撮像された撮像画像を用いて火災を検出する火災検出システムに用いるコンピュータが行うマーカ位置特定方法であって、
撮像部が、特定の明るさ条件にて前記対象領域を撮像し、
補正設定部が、前記撮像部によって撮像された撮像画像における所定の領域ごとに拡大縮小率を設定し、
火災検出部が、前記撮像部によって第1明るさ条件にて撮像された前記撮像画像を用いて、前記対象領域における火災を検出し、
前記補正設定部によって前記拡大縮小率が設定される補正モードにおいて、
前記撮像部は、前記第1明るさ条件よりも明るさを低下させた第2明るさ条件にて発光体マーカが配置された前記対象領域を撮像し、
前記補正設定部は、前記撮像部によって前記第2明るさ条件にて前記対象領域が撮像された領域補正用画像における前記発光体マーカの位置座標に基づいて前記所定の領域を設定し、前記領域補正用画像における前記発光体マーカの大きさに基づいて算出される当該所定の領域における前記拡大縮小率を設定する、
マーカ位置特定方法。
【請求項9】
対象領域が撮像された撮像画像を用いて火災を検出する火災検出システムに用いるコンピュータに、
特定の明るさ条件にて前記対象領域を撮像させ、
前記対象領域が撮像された撮像画像における所定の領域ごとに拡大縮小率を設定させ、
第1明るさ条件にて撮像された前記撮像画像に対し前記拡大縮小率に基づいて拡大または縮小した画像を用いて、前記対象領域における火災を検出させ、
前記拡大縮小率が設定されるが算出される補正モードにおいて、
前記第1明るさ条件よりも明るさを低下させた第2明るさ条件にて発光体マーカが配置された前記対象領域を撮像させ、
前記第2明るさ条件にて前記対象領域が撮像された領域補正用画像を用いて、前記領域補正用画像における前記発光体マーカの位置座標に基づいて前記所定の領域を設定し、前記領域補正用画像における前記発光体マーカの大きさに基づいて算出される当該所定の領域における前記拡大縮小率を設定する、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災検出システム、マーカ位置特定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像を用いて火災を検出する火災検出システムがある。例えば特許文献1には、監視領域を撮像した画像を用いて煙を検出することが開示されている。画像を用いて火災を検出する場合、火災発生場所が、撮像位置から近い場所にあるか遠い場所にあるかによって画像に占める火災を特定する要因となり得る画素の範囲が異なり、火災の規模を正しく判定することが困難となるおそれがある。このため、撮像対象とする監視空間にサイズが既知であるマーカを配置した画像を事前に撮像しておき、そのマーカ入りの画像を用いて画像に占めるマーカに対応する画素数を測定しておく。これにより、画像における特定の画素の範囲から、その範囲に対応する実空間の大きさ(実距離)を算出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マーカが配置された位置や撮像条件によっては、画像におけるマーカが撮像された領域を特定することが困難となる場合があった。例えば、撮像位置から遠方にマーカが配置された場合や、逆光によって画像全体の色味が変化した場合などにおいて、画像におけるマーカが撮像された領域を特定することが困難となる場合があった。このため、マーカが配置された位置や撮像条件によってはマーカが撮像された領域を特定することが困難となるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、マーカが配置された位置や撮像条件によらずに、実空間を撮像した画像からその実空間に配置されたマーカが撮像された領域の大きさを容易に特定することができる火災検出システム、マーカ位置特定方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態は、対象領域が撮像された撮像画像を用いて火災を検出する火災検出システムであって、特定の明るさ条件にて前記対象領域を撮像する撮像部と、前記撮像部によって撮像された撮像画像における所定の領域ごとに拡大縮小率を設定する補正設定部と、前記撮像部によって第1明るさ条件にて撮像された前記撮像画像に対し前記拡大縮小率に基づいて拡大または縮小した画像を用いて、前記対象領域における火災を検出する火災検出部と、を備え、前記補正設定部によって前記拡大縮小率が設定される補正モードにおいて、前記撮像部は、前記第1明るさ条件よりも明るさを低下させた第2明るさ条件にて発光体マーカが配置された前記対象領域を撮像し、前記補正設定部は、前記撮像部によって前記第2明るさ条件にて前記対象領域が撮像された領域補正用画像における前記発光体マーカの位置座標に基づいて前記所定の領域を設定し、前記領域補正用画像における前記発光体マーカの大きさに基づいて算出される当該所定の領域における前記拡大縮小率を設定する、ことを特徴とする火災検出システムである。
【0007】
また、本発明の一実施形態は、対象領域が撮像された撮像画像を用いて火災を検出する火災検出システムに用いるコンピュータが行うマーカ位置特定方法であって、撮像部が、特定の明るさ条件にて前記対象領域を撮像し、補正設定部が、前記撮像部によって撮像された撮像画像における所定の領域ごとに拡大縮小率を設定し、火災検出部が、前記撮像部によって第1明るさ条件にて撮像された前記撮像画像を用いて、前記対象領域における火災を検出し、前記補正設定部によって前記拡大縮小率が設定される補正モードにおいて、前記撮像部は、前記第1明るさ条件よりも明るさを低下させた第2明るさ条件にて発光体マーカが配置された前記対象領域を撮像し、前記補正設定部は、前記撮像部によって前記第2明るさ条件にて前記対象領域が撮像された領域補正用画像における前記発光体マーカの位置座標に基づいて前記所定の領域を設定し、前記領域補正用画像における前記発光体マーカの大きさに基づいて算出される当該所定の領域における前記拡大縮小率を設定する、マーカ位置特定方法である。
【0008】
また、本発明の一実施形態は、対象領域が撮像された撮像画像を用いて火災を検出する火災検出システムに用いるコンピュータに、特定の明るさ条件にて前記対象領域を撮像させ、前記対象領域が撮像された撮像画像における所定の領域ごとに拡大縮小率を設定させ、第1明るさ条件にて撮像された前記撮像画像に対し前記拡大縮小率に基づいて拡大または縮小した画像を用いて、前記対象領域における火災を検出させ、前記拡大縮小率が設定されるが算出される補正モードにおいて、前記第1明るさ条件よりも明るさを低下させた第2明るさ条件にて発光体マーカが配置された前記対象領域を撮像させ、前記第2明るさ条件にて前記対象領域が撮像された領域補正用画像を用いて、前記領域補正用画像における前記発光体マーカの位置座標に基づいて前記所定の領域を設定し、前記領域補正用画像における前記発光体マーカの大きさに基づいて算出される当該所定の領域における前記拡大縮小率を設定する、プログラムである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、マーカが配置された位置や撮像条件によらずに、実空間を撮像した画像からその実空間に配置されたマーカが撮像された領域の大きさを容易に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る火災検出装置10が適用される火災検出システム1の構成例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る撮像画像TGの例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る撮像画像TGの例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る撮像画像TGの例を示す図である。
【
図5A】実施形態に係る補正係数を算出する方法を説明するための図である。
【
図5B】実施形態に係る補正係数を算出する方法を説明するための図である。
【
図6A】実施形態に係る補正係数を算出する方法を説明するための図である。
【
図6B】実施形態に係る補正係数を算出する方法を説明するための図である。
【
図7】実施形態の火災検出装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】実施形態の火災検出装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施形態の変形例2を説明するための図である。
【
図10A】実施形態の変形例3を説明するための図である。
【
図10B】実施形態の変形例3を説明するための図である。
【
図11A】実施形態の変形例3を説明するための図である。
【
図11B】実施形態の変形例3を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(火災検出システム1について)
火災検出システム1は、対象領域Tを監視し、対象領域Tに発生した火災を検出するシステムである。対象領域Tは、火災検出システム1が監視する対象とする領域又は物体である。対象領域Tは任意に設定されてよい。例えば、対象領域Tは、車道、トンネル構内、建物、建物構内等である。
【0013】
図1は、実施形態に係る火災検出装置10が適用される火災検出システム1の構成例を示す図である。火災検出システム1は、例えば、カメラCAと、火災検出装置10を備える。カメラCAと、火災検出装置10とは、通信可能に接続される。カメラCAと火災検出装置10の互いの通信は、例えば、通信ネットワーク、無線LAN(Local Area Network)などを用いた近距離無線通信、或いはUSB(Universal Serial Bus)ケーブルなどを介して行われる。また、カメラCAと火災検出装置10が一体に備えられるものであってもよい。すなわち、カメラCAが火災検出装置10に内蔵されていてもよい。カメラCAは、対象領域Tを撮像する。カメラCAは、動画を撮像してもよいし、静止画を撮像してもよい。カメラCAは、撮像した画像を、撮像画像TGとして火災検出装置10に出力する。火災検出装置10は、撮像画像TGを用いて、対象領域Tに火災が発生しているか否かを判定する。
【0014】
火災検出システム1は、火災検出モードと、補正モードとの2つのモードを有する。火災検出モードは、火災を検出するモードである。火災検出モードでは、対象領域TをカメラCAで撮像した画像(撮像画像TG)を用いて、対象領域Tに火災が発生したか否かを判定することによって、火災を検出する。
【0015】
火災検出モードでは、撮像画像TGに、火災の可能性を示すもの、例えば、煙や炎のようなものが撮像されているか否かを判定し、撮像画像TGに火災の可能性を示すものが撮像されている場合には、その火災の可能性を示すものの大きさが閾値以上である場合に、火災が発生したと判定する。
【0016】
ここで、撮像画像TGでは、遠近法により、撮像位置から近いものが大きく写り、遠いものが小さく写る。このため、火災の可能性を示すものが、撮像位置から近い場所に発生した場合には大きく写り、撮像位置から遠い場所に発生した場合にはその火災の可能性を示すものが小さく写る。画像におけるこのような性質によって、現実の対象領域Tにおいて同じ大きさの煙が発生した場合であっても、撮像位置から近い場所に発生したか、遠い場所で発生したかによって、火災が発生したか否かを判定した判定結果が異なる結果となってしまう可能性がある。
【0017】
この対策として、本実施形態では、火災検出モードにおいて火災を検出する際に、撮像位置から近い場所にあるものと、遠い場所にあるものとが同等な大きさとなるように、撮像画像TGを補正する。具体的には、撮像画像TGを、奥行方向に沿って、奥行が一定の範囲にある領域ごとに分割し、分割した各領域において、各領域に対応づけられた補正係数を用いて、その領域の画像を拡大又は縮小する。これにより、撮像位置から近い場所にあるものと、遠い場所にあるものとが同等な大きさとなるように、撮像画像TGを補正する。
【0018】
補正モードでは、火災検出モードにおいて画像を補正する際に用いられる、各領域の補正係数を算出する。補正モードにおいて、対象領域Tにおける特定の位置にマーカMが配置される。マーカMは、実空間における規定の長さ(例えば、1[m]など)を示す物体である。例えば、マーカMは、規定の距離を離間して配置された2つの物体、或いは規定の長さのポールにおける両方の端部に目印となる物体が設けられた物体等である。
【0019】
ここで、マーカMについて、
図2~
図4を用いて説明する。
図2から
図4は、実施形態に係る撮像画像TGの例を示す図である。
【0020】
図2に示すように、マーカMは、例えば、規定の長さをあけて配置された球体B1、B2である。この図の例に示すように、補正モードでは、撮像画像TGにおいて、マーカMとしての球体B1、B2を通るフレームFを設定し、フレームFで囲まれた領域における補正係数を算出する。例えば、撮像画像TGにおける球体B1からB2までの画素数と、実空間(対象領域T)における球体B1からB2までの実距離(長さ)と、の比率に応じた係数が、補正係数として算出される。
【0021】
一方、
図3には、マーカMが、
図2における設置位置と比較して撮像位置から遠く離れた位置に配置された例が示されている。この場合、遠近法により、撮像画像TGにおけるマーカMの位置を示す球体B1、B2の大きさが
図2の場合と比較して小さくなる。また、逆光か順光かなどの撮像条件などによっては、球体B1、B2の色味が変化する。このような場合、撮像画像TGにおけるマーカMが撮像された位置座標を特定することが困難となる可能性があった。
【0022】
この対策として、本実施形態では、発光するマーカM(発光体マーカM#)を用いる。マーカMを発光させることによって、撮像画像TGにおけるマーカMの大きさに依らず、また、逆光か順光かなどの撮像条件などに依らず、撮像画像TGにおけるマーカMが撮像された位置座標を、容易に、特定できるようにする。
【0023】
さらに、本実施形態では、補正モードにおいて、撮像画像TGにおける画像全体が暗くなるように、例えば撮像画像TGにおける輝度が小さくなるように、カメラCAにおけるカメラパラメータを設定する。これにより、撮像画像TGにおける発光体マーカM#の位置座標を、容易に、特定できるようにする。
【0024】
撮像画像TGにおける画像全体を暗くする方法としては、例えば、レンズの開口部を狭くして、カメラCAに入る光量を小さくする絞り操作(アイリス操作)が行われるようにカメラパラメータを設定することが考えられる。或いは、カメラCAが受光した光量を増幅する増幅器のゲインを小さくするように、カメラパラメータを設定するようにしてもよい。また、カメラCAのシヤッタースビートに相当する、撮像素子にカメラCAが受光した光を蓄積させる蓄積時間(露光時間)が短くなるようにカメラパラメータを設定するようにしてもよい。また、これらの操作、すなわち絞り操作、ゲインを小さくする操作、及び露光時間を短くする操作を組み合わせてもよい。
【0025】
なお、撮像画像TGにおける画像全体を暗くする方法として、対象領域Tにおける照明を暗くする方法が考えられるが、本実施形態ではこれを採用しない。補正モードにおいて撮像する対象領域Tの照明環境は、火災を検知する際の対象領域Tと同じ照明環境であることを前提とするためである。すなわち、本実施形態では、カメラCA側の設定を変更する、具体的には、カメラCAにおけるカメラパラメータの設定を変更することによって、撮像画像TGにおける画像全体が暗くなるようにする。
【0026】
なお、撮像位置及び撮像方向においても、補正モードにおいて対象領域Tを撮像する場合と、火災を検知する際の対象領域Tを撮像する場合とで同一であることを前提とする。すなわち、補正モードにおいて、撮像画像TGにおける画像全体を暗くする方法として、本実施形態では、撮像位置、及び/又は撮像方向を変更する方法を採用しない。
【0027】
図4には、発光体マーカM#が配置された対象領域Tを撮像した撮像画像TGの例が示されている。この図の例に示すように、画像全体が暗くなるように、撮像画像TGを撮像する。これにより、撮像画像TGにおける発光体マーカM#の位置座標である、球体B1及びB2の位置を、容易に、特定できるようにすることが可能となる。
【0028】
(火災検出装置10について)
ここで、
図1の説明に戻り、火災検出装置10について説明する。火災検出装置10は、コンピュータであり、例えば、PC(Personal Computer)、サーバ装置などにより実現される。火災検出装置10は、例えば、画像取得部100と、火災検出部101と、補正係数算出部102と、補正係数記憶部103と、を備える。
【0029】
画像取得部100は、カメラCAにより撮像された撮像画像TGの画像情報を取得する。画像取得部100は、取得した画像情報を出力する。火災検出モードにおいて、画像取得部100は、火災検出部101に撮像画像TGにおける画像情報を出力する。補正モードにおいて、画像取得部100は、補正係数算出部102に撮像画像TGにおける画像情報を出力する。
【0030】
火災検出部101は、火災検出モードにおいて、画像取得部100から撮像画像TGを取得する。火災検出部101は、取得した撮像画像TGを、奥行方向に沿って、奥行が一定の範囲にある領域ごとに分割する。火災検出部101は、分割した各領域において、各領域に対応づけられた補正係数を用いて、その領域の画像を拡大又は縮小することによって、各領域の大きさを、実空間(対象領域T)における実距離に対して同等な大きさとなるように補正する。例えば、火災検出部101は、撮像画像TGにおいて、撮像位置から遠くにある領域を基準とし、撮像位置から近くにある領域をその領域の補正係数を用いて縮小させる。これによって、各領域の大きさが実距離に対して同等な大きさとなるように補正する。
【0031】
火災検出部101は、補正後の各領域において、火災の可能性を示すもの、例えば、煙や炎のようなものが撮像されているか否かを判定する。例えば、火災検出部101は、各領域において輝度が閾値以上である画素が存在する場合、火災の可能性を示すものが撮像されていると判定する。火災検出部101は、撮像画像TGに火災の可能性を示すものが撮像されている場合には、その火災の可能性を示すものの大きさが、実距離に対して設定された閾値(例えば、10[cm])以上である場合に、火災が発生したと判定する。一方、火災検出部101は、撮像画像TGに火災の可能性を示すものが撮像されていない場合、及び、撮像画像TGに火災の可能性を示すものが撮像されているが、閾値未満の大きさである場合には、火災が発生していないと判定する。火災検出部101は、火災が発生しているか否かを判定した判定結果を、対象領域Tにおける火災を検出した検出結果として出力する。
【0032】
補正係数算出部102は、火災検出モードにおいて、画像取得部100から撮像画像TGを取得する。補正係数算出部102は、取得した撮像画像TGに基づいて、撮像画像TGにおける発光体マーカM#が撮像された位置座標を特定する。
【0033】
補正係数算出部102は、画像全体が暗くなるようにカメラCAのカメラパラメータを設定し、発光体マーカM#が設置された対象領域Tを、カメラCAによって撮像させる。補正係数算出部102は、このようにして画像全体が暗くなるように撮像された撮像画像TGの画像情報を、画像取得部100を介して取得する。補正係数算出部102は、撮像画像TGにおいて、発光体マーカM#を示すもの、例えば、輝度が閾値以上である画素を抽出する。補正係数算出部102は、抽出した画素における、撮像画像TGの位置座標に基づいて、補正係数を算出する。
【0034】
ここで、
図5(
図5A、
図5B)、及び
図6(
図6A、
図6B)、を用いて、補正係数算出部102が補正係数を算出する方法について説明する。
図5~
図6は、実施形態に係る補正係数を算出する方法を説明するための図である。
【0035】
図5Aに示すように、例えば、補正モードにおいて、対象領域Tの奥行方向に沿って、複数の発光体マーカM#(発光体マーカM#1~M#5)が配置される。発光体マーカM#は、2つの発光体H1およびH2を特定の距離だけ離間して配置することにより形成される。補正係数算出部102は、撮像画像TGに撮像されている、複数の発光体マーカM#のそれぞれの位置座標を特定する。例えば、補正係数算出部102は、撮像画像TGにおける奥行方向、すなわち画像のy軸方向を特定する。補正係数算出部102は、撮像画像TGにおける奥行方向の位置座標(y座標)が同等で、且つ、水平方向の位置座標(x座標)が異なる2つの発光体H1およびH2を抽出し、抽出した2つの発光体H1およびH2を配置して形成されているものを1つの発光体マーカM#とする。
【0036】
図5Bに示すように、補正係数算出部102は、特定した位置座標を用いて、発光体マーカM#ごとに、撮像画像TGにおける発光体マーカM#における2つの発光体H1と発光体H2との間の距離に対応する画素数(ピクセル数)を算出する。この図の例では、発光体マーカM1#に617[ピクセル]が対応づけられている。また、発光体マーカM#2に323[ピクセル]、発光体マーカM#3に198[ピクセル]、発光体マーカM#4に130[ピクセル]、及び発光体マーカM#5に86[ピクセル]がそれぞれ対応づけられている。
【0037】
図6Aに示すように、補正係数算出部102は、例えば、各発光体マーカM#を通り、各発光体マーカM#の画像における長さ(ピクセル数)を基準とする定数倍の幅を有するフレームFを、撮像画像TGから抽出する。例えば、補正係数算出部102は、発光体マーカM#1の長さ(617[ピクセル])を基準とする定数倍(例えば、1.5倍)のピクセル数の幅を有するフレームF1を、撮像画像TGから抽出する。同様に、補正係数算出部102は、発光体マーカM#2~M#5のそれぞれの長さを基準とする定数倍(例えば、1.5倍)のピクセル数の幅を有するフレームF2~F5のそれぞれを、撮像画像TGから抽出する。補正係数算出部102は、抽出したフレームFで囲まれる領域ごとに補正係数を算出する。
また、補正係数算出部102は、フレームF1~F5のそれぞれを抽出する場合、発光体マーカM#の長さの定数倍(例えば、3倍)の高さを有するフレームFを抽出するようにしてもよい。この場合において、補正係数算出部102は、フレームFにおける幅及び高さを発光体マーカM#の長さの定数倍とした場合において、その幅及び高さが画像の幅を超える場合については、画像幅を上限としてフレームFの幅及び高さを設定する。
【0038】
図6Bに示すように、補正係数算出部102は、撮像画像TGにおける発光体マーカM#1~M#5のそれぞれの距離に対応する画素数(ピクセル数)に基づいて、補正係数としての縮小率(拡大縮小率の一例)を算出する。例えば、補正係数算出部102は、撮像位置から最も遠くに配置された発光体マーカM#5における画像上の長さ(86[ピクセル])を基準として、縮小率を算出する。この場合、補正係数算出部102は、発光体マーカM#kに対応する縮小率を、以下の式(1)を用いて算出する。式(1)におけるSn(k)は、発光体マーカ番号k(k=1~4)の縮小率を示す。P(k)は、発光体マーカ番号k(k=1~4)における、画像上の長さ(ピクセル数)を示す。
【0039】
Su(k)=P(5)/P(k)×100[%] …式(1)
【0040】
図6Bに示すように、補正係数算出部102は、式(1)を用いて、発光体マーカM#1に対応する縮小率が13.9[%]と算出する。同様に、補正係数算出部102は、発光体マーカM#2~M#5のそれぞれに対応する縮小率を、26.6[%]、34.4[%]、66.2[%]、100.0[%]と算出する。
図6Bに示す情報は、補正係数記憶部103に記憶される情報の一例である。
【0041】
火災検出装置10における記憶領域(補正係数記憶部103を含む)は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0042】
また、火災検出装置10が備える機能部(画像取得部100、火災検出部101、及び補正係数算出部102)は、火災検出装置10がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
【0043】
(火災検出装置10が行う処理の流れ)
ここで、火災検出装置10が行う処理の流れを、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7及び
図8は、実施形態に係る火災検出装置10が行う処理の流れを示すフローチャートである。
【0044】
図7には、補正モードにおいて、火災検出装置10が行う処理の流れが示されている。火災検出装置10は、発光体マーカM#が配置された対象領域Tにおける撮像画像TGの画像情報を取得する(ステップS10)。火災検出装置10は、取得した撮像画像TGにおいて発光体マーカM#が撮像された位置座標を特定する(ステップS11)。火災検出装置10は、撮像画像TGにおける発光体マーカM#が示す長さに対応するピクセル数を算出する(ステップS12)。火災検出装置10は、算出したピクセル数を用いて、補正係数(縮小率)を算出する(ステップS13)。火災検出装置10は、算出した補正係数(縮小率)を、補正係数記憶部103に記憶させる(ステップS14)。
【0045】
図8には、火災検出モードにおいて、火災検出装置10が行う処理の流れが示されている。火災検出装置10は、対象領域Tが撮像された撮像画像TGの画像情報を取得する(ステップS20)。火災検出装置10は、取得した撮像画像TGから煙検知領域を抽出する(ステップS21)。火災検出装置10は、撮像画像TGにおける奥行方向に沿って、y座標が特定の範囲にある領域ごとに分割し、分割した領域を、煙検知領域として抽出する。煙検知領域は、煙の候補、つまり、火災の可能性を示すものを検出する領域である。煙検知領域は、例えば、
図6Aに示すフレームF1~F5のそれぞれで囲まれた領域である。火災検出装置10は、煙検知領域のそれぞれについて、火災を検出する処理を実行する。
【0046】
火災検出装置10は、未処理(ここでの処理は、後述する、火災を検出する処理)の煙検知領域の座標を取得する(ステップS22)。ここでの煙検知領域の座標は、煙検知領域にいて基準となる座標、例えば、領域の左下に位置する座標である。火災検出装置10は、取得した座標を用いて、撮像画像TGから、未処理の煙検知領域を抽出する(ステップS23)。火災検出装置10は、抽出した煙検知領域に、その領域に対応する補正係数を用いて、煙検知領域をリサイズ(拡大又は縮小)する(ステップS24)。火災検出装置10は、抽出した煙検知領域の座標に基づいて補正係数記憶部103を参照し、その煙検知領域に対応する補正係数を取得する。火災検出装置10は、取得した補正係数を用いて、煙検知領域をリサイズする。火災検出装置10は、リサイズ後の煙検知領域に対応する画像を、記憶部(不図示)に記憶させる(ステップS25)。火災検出装置10は、リサイズ後の煙検知領域において、火災の可能性を示すものが撮像されているか否かを判定することによって、火災を検出する(ステップS26)。火災検出装置10は、未処理の煙検知領域があるか否かを判定し(ステップS27)、未処理の煙検知領域がある場合にはステップS22に戻り、火災を検出する処理を繰り返し実行する。火災検出装置10は、未処理の煙検知領域がない場合、処理を終了させる。
【0047】
以上説明したように、実施形態の火災検出システム1は、カメラCA(撮像部)と、火災検出部101と、補正係数算出部102とを備える。カメラCAは、特定の明るさ条件にて前記対象領域を撮像する。火災検出部101は、撮像部によって第1明るさ条件にて撮像された撮像画像TGを用いて、対象領域Tにおける火災を検出する。補正係数算出部102は、撮像画像TGから、対象領域Tにおける実空間の範囲(実距離)を算出するための補正係数を算出する。補正係数算出部102によって補正係数が算出される補正モードにおいて、対象領域Tにおける特定の位置に発光体マーカM#が配置される。カメラCAは、第2明るさ条件にて対象領域Tを撮像する。第2明るさ条件は、第1明るさ条件よりも明るさを低下させた条件であり、画像全体が暗くなるようにカメラパラメータを設定する条件である。補正係数算出部102は、カメラCAによって第2明るさ条件にて、対象領域Tが撮像された撮像画像TG(領域補正用画像)を用いて、その領域補正用画像における発光体マーカM#の位置座標を特定する。補正係数算出部102は、特定した発光体マーカM#の位置座標に基づいて、撮像画像TGにおける特定の画素に対応する、実空間(対象領域T)の範囲(実距離)を算出するための係数(例えば、縮小率)を、補正係数として算出する。
【0048】
これにより、実施形態の火災検出システム1では、画像全体が暗くなるようにカメラパラメータを設定するとともに、発光体マーカM#が配置された対象領域Tを撮像した撮像画像TGを用いて、その撮像画像TGにおいて発光体マーカM#が撮像された位置を特定することができる。このため、画像全体が暗くなるように撮像画像TGを撮像することにより、発光体マーカM#が配置された位置を特定することが容易となる。したがってマーカが配置された位置や撮像条件によらずに、実空間を撮像した画像からその実空間に配置されたマーカが撮像された領域の大きさを容易に特定することが可能となる。
【0049】
(実施形態の変形例1)
実施形態の変形例1について説明する。本変形例では、補正モードにおいて、火災検出モードと同じ画像全体を暗くしない通常のカメラパラメータにて撮像した撮像画像TG(第1画像という)と、画像全体が暗くなるようにして撮像した撮像画像TG(第1画像という)と、を用いて合成画像を生成する点において、上述した実施形態と相違する。
【0050】
補正係数算出部102は、第1画像、及び第2画像を撮像する。例えば、補正係数算出部102は、第1画像と第2画像との撮像を、交互に繰り返して行う。補正係数算出部102は、第2画像を用いて発光体マーカM#の位置座標を特定し、特定した位置座標を用いて、第1画像に発光体マーカM#の位置座標を示す印を合成した合成画像を生成する。補正係数算出部102が生成した合成画像は、例えば、対象領域Tに発光体マーカM#を配置した使用者によって、補正係数算出部102が特定した位置座標に誤りがあるか否かを判断するために用いられる。
【0051】
ここで、第1画像では、逆光などの撮像条件によっては発光体マーカM#の位置座標を特定することが困難となる(
図3参照)。また、第2画像では、画像全体が暗くなっているため、発光体マーカM#以外の構造物を視認することが困難となる(
図4参照)。この対策として、本実施形態では、第2画像を用いて特定した発光体マーカM#の位置座標を用いて、第1画像に発光体マーカM#の位置座標を示す印を合成した合成画像を生成する。これにより、対象領域Tに発光体マーカM#を配置した使用者によって、補正係数算出部102が特定した位置座標に誤りがあるか否かを判断し易くすることができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態の変形例1にかかる火災検出システム1では、補正モードにおいて、カメラCAは、さらに、第1明るさ条件にて、対象領域Tを撮像する。補正係数算出部102は、第2画像(領域補正用画像)を用いて、発光体マーカM#の位置座標を特定する。補正係数算出部102は、カメラCAによって撮像された第1画像(第1明るさ条件にて撮像された撮像画像)に、発光体マーカM#の位置座標が示された合成画像を生成する。これにより、本実施形態の変形例1にかかる火災検出システム1では、対象領域Tに発光体マーカM#を配置した使用者によって、補正係数算出部102が特定した位置座標に誤りがあるか否かを判断し易くすることができる。
【0053】
(実施形態の変形例2)
実施形態の変形例2について説明する。本変形例では、発光体マーカM#による発光の明るさを、特定のパターン(周波数)で変動させる点において、上述した実施形態と相違する。
【0054】
図9は、実施形態の変形例2を説明するための図である。
図9には、時系列に沿って、対象領域Tの撮像を繰り返し行うことにより、複数の撮像画像TGを撮像する様子が模式的に示されている。
【0055】
補正係数算出部102は、
図9に示すように、発光体マーカM#による発光のパターン(周波数)に応じて、定期的に、対象領域Tを撮像する。補正係数算出部102は、撮像した撮像画像TGのうち1つの撮像画像TG(第1撮像画像)における、発光体マーカM#の位置座標の候補を抽出する。補正係数算出部102は、残りの撮像画像TGを用いて、第1撮像画像から抽出した位置座標の候補に対応する画素の画素値から算出される時系列に変化するパターン(周波数)が、発光体マーカM#の発光パターン(周波数)と一致するか否かを判定する一致判定を実行する。例えば、補正係数算出部102は、以下に述べる方法で、一致判定を実行する。
【0056】
まず、補正係数算出部102は、第1撮像画像から抽出した位置座標の候補に対応する画素の明るさ(例えば、HSV色空間における明るさV)の値を、所定期間(例えば1秒間)に渡って定期的に取得する。補正係数算出部102は、取得した明るさVの値のそれぞれにおける偏差を算出する。例えば、1秒につき30フレームの画像を取得している場合、1秒間ぶんのフレーム画像に対応する30枚の画像それぞれから抽出した特定の画素における明るさVを取得する。補正係数算出部102は、取得した30点のそれぞれの明るさVの平均値と、30点のそれぞれの値との差分としての各偏差を算出する。補正係数算出部102は、算出した各偏差の時系列変化に対し、発光体マーカM#における発光のパターン(周波数)との相関値Cを、下記の式(1)を用いて算出する。式(1)におけるCは相関値、tは時間、V(t)は時間tにおける明るさVの偏差、ωは発光体マーカM#の発光パターンに対応する周波数、を示す。
【0057】
C=Sqrt(A^2+B^2) …(1)
但し、A=Σ(V(t)×sin(ωt))
B=Σ(V(t)×cos(ωt))
【0058】
式(1)では、画素の明るさVが時系列に変化するパターン(第1周波数)と、発光体マーカM#の発光のパターン(第2周波数)が一致する場合、相関値Cが大きくなる。一方、第1周波数と第2周波数とが一致しない場合、相関値Cは小さくなる。このような性質を利用して、補正係数算出部102は、相関値Cが、しきい値を超える場合、第1周波数と第2周波数とが一致すると判定する。一方、補正係数算出部102は、相関値Cが、しきい値より小さい場合、第1周波数と第2周波数とが一致しないと判定する。第1周波数と第2周波数とが一致する場合、補正係数算出部102は、第1撮像画像から抽出した画素が、発光体マーカM#が撮像された画素であると判定する。
【0059】
ここで、
図9における、cos(ωt)+isin(ωt)は、式(1)のV(t)に乗算する複素数を模式的に示している。V(t)に複素数を乗算した値の絶対値を取ることで周波数ωとの一致の度合いが相関値Cとして算出することができる。
【0060】
なお、式(1)では、V(t)を、時間tにおける明るさVの偏差としている。このため、V(t)が発光体マーカM#である場合と、発光体マーカM#と同じ周波数で点滅するような別物体である場合とで、相関値Cの値は異なる値となる。別物体が、発光体マーカM#と同じ周波数にて点滅した場合であっても、別物体において明るさ変動が発光体マーカM#よりも小さいものであれば、相関値Cがさほど大きい値とはならない。このため、このような別物体を、上述したしきい値を用いた判定により除外することが可能となる。したがって、別物体が、誤って発光体マーカM#と認識されてしまうことを低減させることが可能である。
【0061】
補正係数算出部102は、周波数解析の結果、画素値が変化するパターンと、発光体マーカM#における明るさが変動するパターンと、の両方の周波数が一致する画素を、発光体マーカM#が配置された位置に対応する画素として特定し、特定した画素の位置座標を、発光体マーカM#が撮像された位置座標として特定する。
【0062】
この場合において、補正係数算出部102は、上述した実施形態と同様に、補正モードにおいて、画像全体が暗くなるようにカメラパラメータを設定して撮像をおこなってもよい。或いは、通常のカメラパラメータの設定にて撮像を行うようにしてもよい。また、通常のカメラパラメータの設定にて撮像を行った撮像画像TGを用いて、発光体マーカM#が撮像された位置座標を特定する処理を実行し、位置座標を特定できなかった場合に、画像全体が暗くなるようにカメラパラメータを設定して撮像を行うように構成されてもよい。
【0063】
以上説明したように、実施形態の変形例2に係る火災検出システム1では、補正モードにおいて、カメラCAは、発光体マーカM#による発光が特定のパターンにて変化する様子を時系列に沿って撮像する。補正係数算出部102は、カメラCAによって時系列に沿って撮像された複数の撮像画像TG(領域補正用画像)を用いて、それらの撮像画像TGにおける、発光体マーカM#の位置座標を特定する。補正係数算出部102は、特定した発光体マーカM#の位置座標に基づいて、撮像画像TGにおける特定の画素に対応する前記実空間の範囲(実距離)を算出するための係数を、補正係数として算出する。これにより、実施形態の変形例2に係る火災検出システム1では、発光体マーカM#による発光の明るさを変化させ、その変化に対応して画素値(例えば、輝度)が変化する画素の位置座標を、発光体マーカM#の位置座標として特定することができる。このため、発光体マーカM#の位置座標をより正確に特定することができる。
【0064】
また、実施形態の変形例2に係る火災検出システム1では、カメラCAは、特定の明るさ条件にて前記対象領域を撮像し、火災検出モード(火災検出部101によって火災が検知される火災検出モード)において第1明るさ条件にて、対象領域Tを撮像し、補正モードにおいて、第2明るさ条件にて、対象領域Tを撮像するようにしてもよい。これにより、発光体マーカM#の位置座標をより容易に、より正確に特定することができる。
【0065】
また、実施形態の変形例2に係る火災検出システム1では、補正係数算出部102は、カメラCAによって時系列に沿って撮像された複数の撮像画像TG(領域補正用画像)のうちの第1撮像画像(第1領域補正用画像)を用いて、発光体マーカM#における位置座標の候補を抽出する。補正係数算出部102は、抽出した位置座標の候補に対応する発光画素における画素値の時系列変化に基づく周波数解析を行い、発光体マーカM#の位置座標を特定する。これにより、実施形態の変形例2に係る火災検出システム1では、発光体マーカM#の位置座標をより容易に、より正確に特定することができる。
【0066】
上述した実施形態において、発光体マーカM#は、発光色を変更可能であってもよい。対象領域Tに応じて、発光体マーカM#による発光色を変更する。例えば、白い構造物が多く設置された対象領域Tには、白色とは異なる色、例えば赤色の光を、発光体マーカM#に発光させるようにする。これにより、発光体マーカM#の位置座標を特定し易くすることが可能となる。
【0067】
また、上述した実施形態では、補正モードにおいて、対象領域Tに、特定の間隔をあけて2つの発光体マーカM#が配置されるように構成されてもよい。補正係数算出部102は、補正モードで撮像した撮像画像TG(領域補正用画像)における2つの発光体マーカM#のそれぞれ位置座標を特定する。補正係数算出部102は、特定した発光体マーカM#のそれぞれ位置の関係に基づいて、奥行に応じて分割した複数の領域のそれぞれに対応させる補正係数を算出する。これにより、奥行に応じて分割した複数の領域のそれぞれに対応させる補正係数を算出することが可能となる。
【0068】
(実施形態の変形例3)
実施形態の変形例3について説明する。上述した実施形態では、補正モードにて複数の煙検知領域であるフレームFを設定し、煙検知領域ごとに、拡大縮小率を設定するものとしているが、これに限らない。本変形例では、フレームFを設定する方法とは異なる方法で、縮小率を設定する。
【0069】
【0070】
図10Aには、画像(撮像画像TG)が示されている。この図の例に示すように、画像の奥行方向に沿ってy軸を設定した場合、例えば、発光体マーカM#2の位置座標は、y座標(ya)である。
図10Bには、画像(撮像画像TG)における、発光体マーカM#の位置座標(y座標)と、規定の長さ(ここでは、1[m])に対応する画像上の長さ(ピクセル数)の関係を示すグラフである。補正係数算出部102は、撮像画像TGにおいて、各発光体マーカM#に対応する縮小率を適用させる範囲を決定する。例えば、
図10Aの発光体マーカM#2におけるy座標(ya)に対応する領域おいて、100[ピクセル]が、実空間における1mに対応することが示されている。また、y座標(ya)を中心として、y軸方向に±Lの範囲にある領域Aにおいて、縮小率を算出する場合、100[ピクセル]を、実空間における1[m]に対応させることが示されている。
【0071】
補正係数算出部102は、撮像画像TGを、空間分解能のレンジ比(ここでは縮小率)が一定になるような領域に分割する。撮像画像TGから分割する領域については、火災検出部101が火災を検出する際に計算に用いるウィンドウサイズや、火災の可能性を示すものの大きさを判定するための閾値の大きさなど、に応じて任意に決定されてよい。補正係数算出部102は、同じ縮小率を適用可能な空間ごとに領域を分割する。例えば、補正係数算出部102は、縮小率の実測値の2倍までの空間に、同じ縮小率を適用する場合、規定の長さ(ここでは、1[m])に対応する画像上の長さ(ピクセル数)が200~100[ピクセル/m]である領域に、例えば、200[ピクセル/m]に対応する縮小率を適用する。また、補正係数算出部102は、規定の長さ(ここでは、1[m])に対応する画像上の長さ(ピクセル数)が100~50[ピクセル/m]である領域に、例えば、100[ピクセル/m]に対応する縮小率を適用する。補正係数算出部102は、算出した縮小率を、補正係数記憶部103に記憶させる。補正係数記憶部103は、補正係数を記憶する。
【0072】
図11Aには、画像(撮像画像TG)が示されている。この図には、画像(撮像画像TG)における、領域Aが示されている。領域Aは、
図10Bの領域Aに対応し、発光体マーカM#2のy座標(ya)を中心として、y軸方向に±Lの範囲にある領域である。
【0073】
図11Bには、実施形態の補正係数記憶部103に記憶される情報の例が示されている。
図11Bに示すように、補正係数記憶部103は、画像のy座標、1mに対応するピクセル数(pixel/m)、縮小率(補正係数の一例)、などの項目に対応する情報を記憶する。画像のy座標は、撮像画像TGにおける奥行方向の位置座標を示す。1mに対応するピクセル数(pixel/m)は、画像のy座標に示された領域に適用する1mに対応するピクセル数を示す。縮小率(補正係数の一例)には、画像のy座標に示された領域に適用する縮小率を示す。この図の例では、
図11Aにおける領域Aに対応する、y座標(ya)を中心として±Lの領域、つまり、y座標(ya-L)からy座標(ya+L)に含まれる領域に、100[ピクセル/m]に対応する縮小率を適用することが示されている。
【0074】
本変形例では、火災検出モードにおいて、火災検出装置10は、対象領域Tが撮像された撮像画像TGの画像情報を取得する。火災検出装置10は、取得した画像に、煙など火災の可能性を示すものが撮像されているか否かを判定する。火災検出装置10は、火災の可能性を示すものを含む画像領域を検出した場合、当該画像領域におけるy座標の下端がいずれの縮小率の領域に該当するか判定する。火災検出装置10は、該当する縮小率を用いて、当該画像領域を縮小する。そして、火災検出装置10は、画像に撮像されている火災の可能性を示すものの、実際の大きさを算出する。火災検出装置10は、算出した煙火災の可能性を示すものの大きさに基づいて、火災が発生したか否かを判定する。これによって、火災を検出する。
【0075】
なお、上述した実施形態、及びその変形例では、縮小率に基づいて画像を縮小する場合を例示して説明したが、これに限定されない。拡大率を算出し、算出した拡大率を用いて、画像の奥行方向にある領域を拡大するように構成されてもよい。
【0076】
上述した実施形態における火災検出システム1、及び火災検出装置10の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0077】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0078】
1…火災検出システム
10…火災検出装置
100…画像取得部
101…火災検出部
102…補正係数算出部(補正設定部)
103…補正係数記憶部
CA…カメラ(撮像部)