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特開2024-158494スタッカークレーンの建て起こし装置、及びスタッカークレーンの建て起こし方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158494
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】スタッカークレーンの建て起こし装置、及びスタッカークレーンの建て起こし方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/04 20060101AFI20241031BHJP
   B66F 9/07 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B65G1/04 527
B66F9/07 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073732
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤原 淳史
(72)【発明者】
【氏名】益井 和輝
(72)【発明者】
【氏名】池田 将司
(72)【発明者】
【氏名】鯰江 一也
(72)【発明者】
【氏名】川崎 翔悟
【テーマコード(参考)】
3F022
3F333
【Fターム(参考)】
3F022FF01
3F022JJ07
3F022MM00
3F022MM51
3F333AA04
3F333AB13
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でスタッカークレーンを建て起こすことが可能なスタッカークレーンの建て起こし装置を提供する。
【解決手段】建て起こし装置(1)は、支持部(2)と、支持部(2)を回動可能に支持する支柱(3)と、を備えている。建て起こし装置(1)は、横倒しにされたスタッカークレーン(100)の天面側から底面側へ、昇降体(40)をマスト(20)に沿って移動させると、スタッカークレーン(100)の自重により支持部(2)が回動して、スタッカークレーン(100)が建て起こされるように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車部と、前記台車部から垂直方向に延びるマストと、前記マストに沿って移動する昇降体と、を有するスタッカークレーンの建て起こし装置であって、
前記マストが横倒しにされた状態における前記スタッカークレーンの一側面と底面とにおいて前記スタッカークレーンを支持する支持部と、
前記支持部を回動可能に支持する支柱と、
を備え、
前記昇降体を、横倒しにされた前記スタッカークレーンの天面側から底面側へ前記マストに沿って移動させると、前記スタッカークレーンの自重により前記支持部が回動して、前記スタッカークレーンが建て起こされるように構成されていることを特徴とするスタッカークレーンの建て起こし装置。
【請求項2】
前記昇降体の位置を制御する制御部を更に備え、
前記制御部は、
前記スタッカークレーンが前記横倒しにされた状態において、前記昇降体を前記マストに沿って前記スタッカークレーンの天面側から底面側へ移動させることにより、前記支持部を回動させることを特徴とする請求項1に記載のスタッカークレーンの建て起こし装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記支持部の回動速度が所定値以上にならないように、前記昇降体の移動速度を制御することを特徴とする請求項2に記載のスタッカークレーンの建て起こし装置。
【請求項4】
前記スタッカークレーンを支持した前記支持部の回動を停止させる時の衝撃を吸収するためのダンパが配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスタッカークレーンの建て起こし装置。
【請求項5】
前記スタッカークレーンを支持した前記支持部の回動を停止させる時の衝撃を吸収するためのダンパが配置され、
前記ダンパは、減衰力が可変であり、
前記制御部は、
前記支持部の回動速度が大きくなるほど、前記ダンパに印加する電圧値を大きくすることにより、前記減衰力を大きくすることを特徴とする請求項2に記載のスタッカークレーンの建て起こし装置。
【請求項6】
台車部と、前記台車部から垂直方向に延びるマストと、前記マストに沿って移動する昇降体と、を有するスタッカークレーンの建て起こし装置を用いたスタッカークレーンの建て起こし方法であって、
前記建て起こし装置は、
前記マストが横倒しにされた状態における前記スタッカークレーンの一側面と底面とにおいて前記スタッカークレーンを支持する支持部と、
前記支持部を回動可能に支持する支柱と、
を備え、
前記昇降体を、横倒しにされた前記スタッカークレーンの天面側から底面側へ前記マストに沿って移動させると、前記スタッカークレーンの自重により前記支持部が回動して、前記スタッカークレーンが建て起こされるように構成され、
前記マストが横倒しにされた状態の前記スタッカークレーンを前記支持部に配置する配置工程と、
前記昇降体を前記マストに沿って、前記横倒しにされた状態の前記スタッカークレーンの天面側から底面側へ移動させる移動工程と、
前記スタッカークレーンの自重により前記支持部が回動して、前記スタッカークレーンを垂直な状態に建て起こす回動工程と、
を含むことを特徴とするスタッカークレーンの建て起こし方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタッカークレーンの建て起こし装置、及びスタッカークレーンの建て起こし方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱等の構造物を建て起こすための装置がある。例えば、特許文献1には、L字状のポジショニング架台の上に分割ユニットを配置し、ポジショニング架台をジャッキによって上方へ回動させることにより、分割ユニットを起立させるポジショニング装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-279433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のポジショニング装置では、ヒンジを支点としてポジショニング架台を回動できるようにジャッキを配置する必要があり、ポジショニング装置の構造が複雑化するという課題がある。
【0005】
本発明の一態様は、簡易な構成でスタッカークレーンを建て起こすことが可能なスタッカークレーンの建て起こし装置、及びスタッカークレーンの建て起こし方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るスタッカークレーンの建て起こし装置は、台車部と、前記台車部から垂直方向に延びるマストと、前記マストに沿って移動する昇降体と、を有するスタッカークレーンの建て起こし装置であって、前記マストが横倒しにされた状態における前記スタッカークレーンの一側面と底面とにおいて前記スタッカークレーンを支持する支持部と、前記支持部を回動可能に支持する支柱と、を備えている。そして、前記昇降体を、横倒しにされた前記スタッカークレーンの天面側から底面側へ前記マストに沿って移動させると、前記スタッカークレーンの自重により前記支持部が回動して、前記スタッカークレーンが建て起こされるように構成されている。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るスタッカークレーンの建て起こし方法は、台車部と、前記台車部から垂直方向に延びるマストと、前記マストに沿って移動する昇降体と、を有するスタッカークレーンの建て起こし装置を用いたスタッカークレーンの建て起こし方法である。前記建て起こし装置は、前記マストが横倒しにされた状態における前記スタッカークレーンの一側面と底面とにおいて前記スタッカークレーンを支持する支持部と、前記支持部を回動可能に支持する支柱と、を備え、前記昇降体を、横倒しにされた前記スタッカークレーンの天面側から底面側へ前記マストに沿って移動させると、前記スタッカークレーンの自重により前記支持部が回動して、前記スタッカークレーンが建て起こされるように構成されている。
【0008】
前記スタッカークレーンの建て起こし方法は、前記マストが横倒しにされた状態の前記スタッカークレーンを前記支持部に配置する配置工程と、前記昇降体を前記マストに沿って、前記横倒しにされた状態の前記スタッカークレーンの天面側から底面側へ移動させる移動工程と、前記スタッカークレーンの自重により前記支持部が回動して、前記スタッカークレーンを垂直な状態に建て起こす回動工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、簡易な構成でスタッカークレーンを建て起こすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る建て起こし装置の全体構成を示す図である。
図2】実施形態に係るスタッカークレーンの全体構成を示す図である。
図3】実施形態に係る制御部による昇降体の位置制御の様子を示す図である。
図4】実施形態に係る建て起こし装置によるスタッカークレーンの建て起こしの様子を示す図である。
図5】実施形態に係る建て起こし装置及びスタッカークレーンの電気的構成を示すブロック図である。
図6】実施形態に係る建て起こし装置によるスタッカークレーンの建て起こし方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図6の移動工程における制御部による制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る建て起こし装置1について、図1図7を参照して説明する。
【0012】
[建て起こし装置]
図1は、建て起こし装置1の全体構成を示す図である。図1に示すように、建て起こし装置1は、支持部2と、支柱3と、ダンパ4と、ベースプレート5と、制御部10(図5参照)とを備えている。建て起こし装置1は、マスト20が横倒しにされた状態におけるスタッカークレーン100を垂直な状態に建て起こすための装置である。
【0013】
支持部2は、断面がL字形状の板部材である。支持部2は、第1支持部21と、第2支持部22と、第1接続部23と、第2接続部24と、回転軸25とを有している。第1支持部21は、第1接続部23を介して、載置部材60に接続されている。第1接続部23は、ボルト及びネジ等を含む。載置部材60には、マスト20が横倒しにされた状態のスタッカークレーン100が載置されている。
【0014】
第1支持部21は、板状の部材からなり、回転軸25を中心として、支柱3の上部に回動可能に取り付けられている。第1支持部21は、載置部材60を間に挟んだ状態で、マスト20が横倒しにされた状態のスタッカークレーン100の一側面を支持する。
【0015】
第2支持部22は、板状の部材からなり、第1支持部21の右側端部から上方へ垂直に延設されている。第2支持部22は、第2接続部24を介して、載置部材60に接続されている。第2支持部22は、載置部材60を間に挟んだ状態で、マスト20が横倒しにされた状態のスタッカークレーン100の底面を支持する。
【0016】
支柱3は、支持部2を回動可能に支持している。支柱3は、板状又は柱状等の部材であり、ベースプレート5の上面に立設されている。なお、支柱3に、支柱3を補強するための部材を設けてもよい。
【0017】
支柱3は、床面200に対して凹んだ凹部201におけるベースプレート5の上面に配置されている。凹部201の深さ、即ち上下方向の長さは、例えば600mm程度である。なお、凹部201はなくてもよい。この場合、建て起こし装置1を床面200に直接配置すればよい。
【0018】
ベースプレート5は、支柱3を安定して凹部201に配置するための部材である。ベースプレート5の厚さ、即ち上下方向の長さは、例えば20mm程度である。なお、ベースプレート5はなくてもよい。この場合、支柱3を凹部201に直接配置すればよい。
【0019】
ここで、支持部2の動作について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、制御部10による昇降体40の位置制御の様子を示す図である。図4は、建て起こし装置1によるスタッカークレーン100の建て起こしの様子を示す図である。
【0020】
図3に示すように、横倒しにされた状態のスタッカークレーン100の天面側から底面側へ昇降体40が移動すると、支持部2はスタッカークレーン100の自重により、図4の上図に示すように時計回りに回動する。建て起こし装置1では、支持部2の回動と共にスタッカークレーン100が回動することにより、図4の下図に示すように、スタッカークレーン100が建て起こされるように構成されている。
【0021】
第1支持部21とベースプレート5との間には、ダンパ4が配置されている。ダンパ4としては、減衰力が可変であるダンパを用いる。このダンパ4は、例えば、磁気粘性流体(Magneto Rheologial Fluid:ERF)が充填されたシリンダと、シリンダ内に摺動可能に挿入されたピストンと、ピストンに連結されたピストンロッドと、シリンダ内に設けられたコイルとを有して構成される。
【0022】
ダンパ4は、コイルに電流が供給されてERFに電圧が印加されることで、ERFの粘度が上昇することに伴って、減衰力が増大する。ダンパ4は、シリンダの側面がベースプレート5に接続されると共に、ピストンロッドの端部が支持部2の第1支持部21に連結されている。ダンパ4は、スタッカークレーン100を支持した支持部2の回動を停止させる時の衝撃を吸収する機能を果たす。なお、ダンパ4は、減衰力が可変のダンパでなくてもよい。
【0023】
[スタッカークレーン]
次に、建て起こし装置1による建て起こしの対象物であるスタッカークレーン100について、図2を参照して説明する。図2は、スタッカークレーン100の全体構成を示す図である。なお、説明の便宜上、図2の矢印に示されるように、スタッカークレーン100の上下方向、及び左右方向を定義する。
【0024】
図2に示すように、スタッカークレーン100は、4本のマスト20と、連結部30と、昇降体40と、台車部50と、クレーン制御部70(図5参照)と、昇降用モータM1と、走行用モータM2とを備えている。
【0025】
各マスト20は、台車部50から垂直方向、即ち上方向に延びて設けられている。各マスト20は、上下に長尺な中空部材により形成されている。連結部30は、各マスト20の上端部同士を連結する。昇降体40は、各マスト20に支持され、マスト20に沿って移動する。
【0026】
昇降体40は、物品を把持し得るように構成されている。昇降体40は、昇降用モータM1の駆動力により、チェーンCが巻き取り、又は繰り出しされることで、マスト20に沿って昇降する。なお、チェーンCの代わりに、ベルトを用いてもよい。
【0027】
台車部50は、走行レールRに沿って走行する。台車部50は、走行レールR上を転動する走行輪W1,W2を支持する。走行輪W1は、台車部50の左端部に設けられ、走行用モータM2により駆動される。走行輪W2は、台車部50の右端部に遊転自在に設けられている。
【0028】
[建て起こし装置及びスタッカークレーンの電気的構成]
次に、建て起こし装置1及びスタッカークレーン100の電気的構成について、図5を参照して説明する。図5は、建て起こし装置1とスタッカークレーン100の電気的構成を示すブロック図である。
【0029】
図5に示すように、建て起こし装置1は、回転センサ8と、制御部10とを更に備えている。回転センサ8は、例えば支持部2に設けられ、支持部2の回転速度に応じた信号を制御部10へ出力する。
【0030】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有している。ROMには、制御部10が各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAMは、制御部10が上記プログラムを実行する際に用いるデータや信号等を一時的に記録する記憶領域、又はデータ処理の作業領域として使用される。
【0031】
制御部10は、図示しない通信装置を介して、クレーン制御部70と通信可能に構成されている。制御部10は、ROMから読み出した制御プログラム、及び回転センサ8等の各種センサの検出結果に基づいて、クレーン制御部70を介して、昇降用モータM1、走行用モータM2、及び移載装置41等を制御する。移載装置41は、昇降体40に設けられ、物品収納棚等との間で搬送対象の物品を移載する。
【0032】
クレーン制御部70は、昇降制御部71と、走行制御部72と、移載制御部73とを有している。昇降制御部71は、昇降用センサ91の検出結果に基づいて、昇降用モータM1を駆動させることにより、昇降体40の昇降動作を制御する。走行制御部72は、走行用センサ92の検出結果に基づいて、走行用モータM2を駆動させることにより、台車部50の走行動作を制御する。移載制御部73は、移載装置41の移載動作を制御する。
【0033】
昇降用センサ91は、昇降体40の上下方向の位置を検出する。昇降用センサ91は、例えば、台車部50の土台部(図示省略)から上方へレーザ光を出射し、昇降体40の底面に配置された反射鏡により反射された光を受けることに基づいて、昇降体40の上下方向の位置を検出する。昇降用センサ91は、検出結果を昇降制御部71へ出力する。
【0034】
走行用センサ92は、走行レールR上における台車部50の走行方向、即ち左右方向の位置を検出する。走行用センサ92は、例えば、台車部50から水平にレーザ光を出射し、走行レールRの一端部に配置された反射鏡により反射された光を受けることに基づいて、台車部50の左右方向の位置を検出する。走行用センサ92は、検出結果を走行制御部へ出力する。
【0035】
なお、制御部10は、一体のコンピュータで構成されていなくてもよく、制御部10の全ての機能を、クレーン制御部70によって実行してもよいし、クレーン制御部70と外部のPCによって実行してもよい。また、制御部10の一部の機能が、クラウド上に配置されていてもよい。
【0036】
[建て起こし装置による建て起こし方法]
次に、本実施形態の建て起こし装置1によるスタッカークレーン100の建て起こし方法について、図6及び図7を参照して説明する。
【0037】
図6は、建て起こし装置1によるスタッカークレーン100の建て起こし方法の流れの一例を示すフローチャートである。図6に示すように、建て起こし装置1によるスタッカークレーン100の建て起こし方法では、配置工程(S1)と、移動工程(S2)と、回動工程(S3)とが順に行われる。
【0038】
配置工程S1は、スタッカークレーン100が使用される自動倉庫等が配置された現場内において、作業員により実施される。配置工程S1では、作業員は、図3の上図に示すように、載置部材60に載置されたマスト20が横倒しにされた状態のスタッカークレーン100を、建て起こし装置1の支持部2に配置する。
【0039】
このとき、支持部2は、第1支持部21が水平な状態となっており、第2支持部22が垂直な状態になっているものとする。また、昇降体40は、横倒しにされた状態のスタッカークレーン100の天面側に配置されている。このため、スタッカークレーン100の重心Gは、回転軸25よりも左側に位置している。
【0040】
次に、移動工程S2では、制御部10は、図3の下図に示すように、横倒しにされた状態のスタッカークレーン100の天面側から底面側へ、昇降体40を移動させる。以下、移動工程S2における制御部10による制御の流れについて、図7を参照して、詳しく説明する。
【0041】
図7は、図6の移動工程S2における制御部10による制御の流れの一例を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートにおいて、まず、制御部10は、昇降制御部71を制御して、昇降用モータM1の駆動を開始させる(S21)。
【0042】
S21の後、制御部10は、昇降制御部71を介して昇降用モータM1を制御することにより、図3に示すように、横倒しにされた状態のスタッカークレーン100の天面側から底面側へ、昇降体40を移動させる(S22)。これにより、支持部2に対して、図3の下図に示すように、時計回りのモーメントが働くことで、スタッカークレーン100を支持した状態で、図4の上図に示すように、支持部2が時計回りに徐々に回動し始める。
【0043】
S22の後、制御部10は、回転センサ8の検出結果に基づいて、支持部2の回動速度が所定値以上か否かを判定する(S23)。制御部10は、回転センサ8により検出された支持部2の回動速度が所定値以上である場合(S23:YES)、昇降制御部71を制御して、昇降用モータM1の回転数を下げる(S24)ことで、昇降体40の移動速度を遅くして、S25へ進む。
【0044】
昇降体40の移動速度を遅くすると、重心Gの位置の移動速度が遅くなることによって、支持部2の回動速度が低下する。このようにして、制御部10は、昇降制御部71を制御して、支持部2の回動速度が所定値以上にならないように、昇降体40の移動速度を制御する。
【0045】
一方、支持部2の回動速度が所定値未満である場合(S23:NO)、制御部10は、S24の処理を実行せず、S25へ進む。S25において、制御部10は、昇降用センサ91の検出結果に基づいて、昇降体40が所定位置へ到達したか否かを判定する(S25)。
【0046】
ここで、「所定位置」とは、図3の下図の白抜き矢印に示すように、支持部2に対して、スタッカークレーン100を垂直な状態に建て起こすのに十分な大きさの時計回りのモーメントが働く位置をいう。所定位置は、例えば、スタッカークレーン100の底部に設定されている。
【0047】
支持部2に対して、スタッカークレーン100を垂直な状態に建て起こすのに十分な大きさの時計回りのモーメントが働くと、図4に示すように、スタッカークレーン100を垂直な状態に建て起こすことが可能となる。なお、上記した所定位置、第1支持部21の長手方向の長さ及び回転軸25の位置等は、マスト20の重量及び昇降体40の重量等を考慮して設定されるものとする。
【0048】
制御部10は、昇降体40が所定位置へ到達していない場合(S25:NO)、昇降制御部71を制御して、昇降体40が所定位置へ到達するまで、昇降用モータM1の駆動を継続させる。一方、制御部10は、昇降体40が所定位置へ到達した場合(S25:YES)、昇降制御部71を制御して、昇降用モータM1の駆動を停止せる(S26)。以上により、図7に示す移動工程S2における制御部10による制御が終了する。
【0049】
図6に戻り、S2の後、回動工程(S3)が行われる。回動工程S3においては、昇降体40がスタッカークレーン100の底部に移動したことにより、スタッカークレーン100の重心Gの位置が、図3の下図に示すように、支柱3よりもスタッカークレーン100の底面側へ移動する。
【0050】
そして、図4に示すように、スタッカークレーン100の自重により、スタッカークレーン100を支持した支持部2が回動することによって、スタッカークレーン100が垂直な状態に建て起こされる。
【0051】
このとき、支持部2とベースプレート5との間にダンパ4が配置されているので、スタッカークレーン100を支持した支持部2の回動を停止させる際の衝撃が、確実に吸収されるようなっている。このため、スタッカークレーン100を緩やかに建て起こすことができる。
【0052】
また、載置部材60に着脱可能に設けられた複数の車輪Wがベースプレート5と接触することにより、スタッカークレーン100とベースプレート5との間の摩擦力が低減されるので、スタッカークレーン100を滑らかに建て起こすことが可能である。
【0053】
建て起こし装置1によるスタッカークレーン100の建て起こしが完了すると、作業員は、支持部2と載置部材60とを接続している第1接続部23及び第2接続部24の接続を解除する。そして、作業員は、支持部2から、載置部材60に載置されたスタッカークレーン100を取り外した後、載置部材60からスタッカークレーン100を降ろして、スタッカークレーン100を所定の位置に配置する。このようにして、スタッカークレーン100の配置が完了する。
【0054】
以上説明した本実施形態の建て起こし装置1による建て起こし方法によれば、配置工程(S1)にて、マスト20が横倒しにされた状態のスタッカークレーン100を支持部2に配置して、移動工程(S2)にて、制御部10により、昇降体40をマスト20に沿ってスタッカークレーン100の天面側から底面側へ移動させる。これにより、スタッカークレーン100の重心Gの位置を、支柱3に対して左側の位置から右側の位置へ移動させて、図3の下図に示すように、支持部2に時計回りのモーメントを作用させることができる。
【0055】
そして、回動工程(S3)において、図4の上図に示すように、スタッカークレーン100の自重を利用して支持部2を時計回りに回動させる。このようにして、ジャッキ等を用いることなく、簡易な構成で、図4の下図に示すように、支持部2に支持されたスタッカークレーン100を垂直な状態に建て起こすことができる。
【0056】
また、本実施形態の建て起こし装置1によれば、制御部10により、支持部2の回動速度が所定値以上にならないように、昇降体40の移動速度を制御する(S24)ので、スタッカークレーン100が急激に回動することを防止できる。
【0057】
また、建て起こし装置1の支柱3が凹部201に配置されているので、支持部2の回動半径を大きくすることができる。これにより、第1支持部21が水平な状態から垂直な状態になるまで、支持部2を回動させるためのスペースを十分確保することができ、スタッカークレーン100を確実に建て起こすことが可能となる。
【0058】
また、従来のように、スタッカークレーン100の頂部を吊り上げて建て起こしを行う場合、例えば高所作業車を使用して天井を開け、天井の裏に設けられた鉄骨からチェーンブロック等によりスタッカークレーン100の頂部を吊り上げる必要があった。これに対して、本実施形態の建て起こし装置1によれば、天井を開けて高所作業を行うことなく、地上での作業だけで、スタッカークレーン100を建て起こすことができる。
【0059】
〔その他の実施形態〕
上記した実施形態の建て起こし装置1では、載置部材60を介して、スタッカークレーン100を支持部2に配置するものとしたが、これに限定されない。例えば、スタッカークレーン100を、建て起こし装置1の支持部2に直接配置してもよい。この場合、スタッカークレーン100における床面200との接触箇所に、複数の車輪Wを直接取り付ければよい。
【0060】
上記した実施形態では、スタッカークレーン100は、一対のマスト20を備えているものとしたが、これに限定されない。スタッカークレーン100は、少なくとも1つのマスト20を備えていればよく、1つのマスト20だけを備えていてもよい。
【0061】
また、上記した実施形態では、制御部10は、図7のS23において、支持部2の回動速度が所定値以上である場合(S23:YES)、昇降用モータM1の回転数を下げる(S24)ものとしたが、これに限定されない。
【0062】
例えば、制御部10は、回転センサ8の検出結果に基づいて、支持部2の回動速度が大きくなるほど、ダンパ4に印加する電圧値を大きくすることにより、ダンパ4の減衰力を大きくしてもよい。これにより、スタッカークレーン100を緩やかに建て起こすことが可能となる。
【0063】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 建て起こし装置
2 支持部
3 支柱
4 ダンパ
10 制御部
20 マスト
40 昇降体
50 台車部
100 スタッカークレーン
S1 配置工程
S2 移動工程
S3 回動工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7