(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158501
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】配列用マスク
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241031BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L21/92 604H
H01L21/92 604Z
H05K3/34 505A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073746
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】中島 貴士
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 強
(72)【発明者】
【氏名】原 正吉
(72)【発明者】
【氏名】林田 真幸
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319BB04
5E319CD26
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】半田ボールをボール挿入孔内へスムーズに落下させつつ、ボール挿入孔内に落下した半田ボールを収まり良く電極上に搭載することができるようにして、ボール搭載率をより向上させることができるボール挿入孔を備える半田ボールの配列用マスクを提供する。
【解決手段】平面視で角丸正多角形に形成されるボール挿入孔12の上開口縁16に対して、ボール挿入孔12の下開口縁19を、平面視で上開口縁16の形状とは異なる形状に形成する。これによれば、下開口縁19を円形状とするなど、半田ボール2との接触機会が増すような形状として、落下した半田ボール2が電極6上で動くことを抑え、スキージ26により半田ボール2がボール挿入孔12から掻き出されることを防いで、半田ボール2を収まり良く電極6上に搭載させることができる。したがって、ボール搭載率に優れた配列用マスクを得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面がワーク(3)と正対するマスク本体(10)に、当該マスク本体(10)を上下に貫通する、所定の配列パターンに対応したボール挿入孔(12)を備える配列用マスクであって、
マスク本体(10)の上面に形成されるボール挿入孔(12)の上開口縁(16)は、平面視で正多角形のコーナー部に位置するアール部(18)と、当該正多角形の辺部を画成して、当該アール部(18)に接続する直線部(17)とで構成される角丸正多角形に形成されており、
マスク本体(10)の下面に形成されるボール挿入孔(12)の下開口縁(19)が、平面視で上開口縁(16)の形状とは異なる形状に形成されていることを特徴とする配列用マスク。
【請求項2】
下開口縁(19)は、平面視で正多角形のコーナー部に位置するアール部(21)と、当該正多角形の辺部を画成して、当該アール部(21)に接続する直線部(20)とで構成される、上開口縁(16)と同じ角数の角丸正多角形に形成されており、
上開口縁(16)及び下開口縁(19)は、平面視で上開口縁(16)の直線部(17)と下開口縁(19)の直線部(20)とが重畳する状態で形成されており、
下開口縁(19)を画成する角丸正多角形のアール部(21)の曲率(C2)が、上開口縁(16)を画成する角丸正多角形のアール部(18)の曲率(C1)よりも小さく形成されている請求項1に記載の配列用マスク。
【請求項3】
下開口縁(19)が、平面視で上開口縁(16)を画成する角丸正多角形に内接する円形に形成されている請求項1に記載の配列用マスク。
【請求項4】
下開口縁(19)は、平面視で上開口縁(16)と相似状に形成されており、
下開口縁(19)を画成する角丸正多角形よりも上開口縁(16)を画成する角丸正多角形が大形に形成されている請求項1に記載の配列用マスク。
【請求項5】
下開口縁(19)は、平面視で正多角形のコーナー部に位置するアール部(21)と、当該正多角形の辺部を画成して、当該アール部(21)に接続する直線部(20)とで構成される、上開口縁(16)と同じ角数の角丸正多角形に形成されており、
上開口縁(16)及び下開口縁(19)は、平面視で上開口縁(16)の直線部(17)と下開口縁(19)の直線部(20)とが重畳する状態で形成されており、
下開口縁(19)を画成する角丸正多角形のアール部(21)の曲率(C2)が、上開口縁(16)を画成する角丸正多角形のアール部(18)の曲率(C1)よりも大きく形成されている請求項1に記載の配列用マスク。
【請求項6】
下開口縁(19)は、平面視で上開口縁(16)と相似状に形成されており、
上開口縁(16)を画成する角丸正多角形よりも下開口縁(19)を画成する角丸正多角形が大形に形成されている請求項1に記載の配列用マスク。
【請求項7】
上開口縁(16)を画成する角丸正多角形が、角丸正四角形で構成されており、
ボール挿入孔(12)が、上開口縁(16)を画成する角丸正四角形の一対の向かい合う辺部である2つの直線部(17・17)の伸び方向と、配列用マスクの上面を移動してボール挿入孔(12)内に半田ボール(2)を落とし込むためのスキージ(26)の移動方向とが一致する姿勢で設けられている請求項1から6のいずれかひとつに記載の配列用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばBGA(Ball Grid Array)方式の半田バンプの作成に使用される、半田ボールの配列用マスクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に半田バンプは、ワークに形成された電極上にフラックスを塗布する工程と、電極上に半田ボールを搭載させる工程と、搭載された半田ボールを加熱溶解させる工程を経て形成される。電極上に半田ボールを搭載させる工程において、電極の配列パターンに対応した開口パターンを有する配列用マスクを用いることは公知であり、例えば特許文献1には、四角形開口や三角形開口などの多角形状のボール挿入孔を有する配列用マスクが開示されている。特許文献2には、正多角形のコーナー部が丸められた角丸正多角形状のボール挿入孔を有する配列用マスクが開示されている。特許文献1、2におけるボール挿入孔は、マスク本体を上下に貫通するストレート孔で形成されており、マスク本体の上面及び下面に形成されるボール挿入孔の上下の開口縁は同一形状に形成されている。半田ボールの搭載工程においては、ワーク上に配列用マスクを固定したうえでマスク本体上に多数個の半田ボールを載置し、スキージをマスク本体の上面を撫でるように動かす。これにより、各ボール挿入孔内に1個ずつ半田ボールを挿入させて、電極(フラックス)上に半田ボールを搭載させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-227466号公報
【特許文献2】特開2020-27831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボール挿入孔の上下の開口縁の形状は、半田ボールの搭載率に多大な影響を与える。より詳しくは、ボール挿入孔の上開口縁の形状は、ボール挿入孔に対する半田ボールの落ち込みやすさに影響を与え、ボール挿入孔の下開口縁の形状は、半田ボールの収まりに影響を与える。なお、「半田ボールの収まり」とは、ボール挿入孔内に落下した半田ボールが、当該ボール挿入孔からスキージにより掻き出され難いことを意味する。
【0005】
特許文献1、2のように、ボール挿入孔が、上下の開口縁が多角形状或いは正多角形状であるとともに、上下にわたって開口寸法が均一なストレート孔で形成されていると、ボール挿入孔内へ半田ボールをスムーズに落下させることはできるものの、落下した半田ボールのボール挿入孔内での収まりは不良となる。つまり、上開口縁と半田ボールとの接触機会を少なくすることができるため、半田ボールをボール挿入孔内へスムーズに落下させることができるものの、落下した半田ボールの下開口縁との接触機会も少なくなるため、落下した半田ボールが電極上で動きやすく、スキージにより半田ボールがボール挿入孔から掻き出されるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、半田ボールをボール挿入孔内へスムーズに落下させつつ、ボール挿入孔内に落下した半田ボールを収まり良く電極上に搭載することができるようにして、ボール搭載率をより向上させることができるボール挿入孔を備える半田ボールの配列用マスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下面がワーク3と正対するマスク本体10に、当該マスク本体10を上下に貫通する、所定の配列パターンに対応したボール挿入孔12を備える配列用マスクを対象とする。マスク本体10の上面に形成されるボール挿入孔12の上開口縁16は、平面視で正多角形のコーナー部に位置するアール部18と、当該正多角形の辺部を画成して、当該アール部18に接続する直線部17とで構成される角丸正多角形に形成されている。そして、マスク本体10の下面に形成されるボール挿入孔12の下開口縁19が、平面視で上開口縁16の形状とは異なる形状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
下開口縁19は、平面視で正多角形のコーナー部に位置するアール部21と、当該正多角形の辺部を画成して、当該アール部21に接続する直線部20とで構成される、上開口縁16と同じ角数の角丸正多角形に形成されている。上開口縁16及び下開口縁19は、平面視で上開口縁16の直線部17と下開口縁19の直線部20とが重畳する状態で形成されている。下開口縁19を画成する角丸正多角形のアール部21の曲率C2が、上開口縁16を画成する角丸正多角形のアール部18の曲率C1よりも小さく形成されている。
【0009】
下開口縁19は、平面視で上開口縁16を画成する角丸正多角形に内接する円形に形成されている。
【0010】
下開口縁19は、平面視で上開口縁16と相似状に形成されている。下開口縁19を画成する角丸正多角形よりも上開口縁16を画成する角丸正多角形は大形に形成されている。
【0011】
下開口縁19は、平面視で正多角形のコーナー部に位置するアール部21と、当該正多角形の辺部を画成して、当該アール部21に接続する直線部20とで構成される、上開口縁16と同じ角数の角丸正多角形に形成されている。上開口縁16及び下開口縁19は、平面視で上開口縁16の直線部17と下開口縁19の直線部20とが重畳する状態で形成されている。下開口縁19を画成する角丸正多角形のアール部21の曲率C2が、上開口縁16を画成する角丸正多角形のアール部18の曲率C1よりも大きく形成されている。
【0012】
下開口縁19は、平面視で上開口縁16と相似状に形成されている。上開口縁16を画成する角丸正多角形よりも下開口縁19を画成する角丸正多角形は大形に形成されている。
【0013】
上開口縁16を画成する角丸正多角形が、角丸正四角形で構成されている。ボール挿入孔12が、上開口縁16を画成する角丸正四角形の一対の向かい合う辺部である2つの直線部17・17の伸び方向と、配列用マスクの上面を移動してボール挿入孔12内に半田ボール2を落とし込むためのスキージ26の移動方向とが一致する姿勢で設けられている。
【発明の効果】
【0014】
本発明のように、マスク本体10の上面に形成されるボール挿入孔12の上開口縁16が、平面視で正多角形のコーナー部に位置するアール部18と、当該正多角形の辺部を画成して、当該アール部18に接続する直線部17とで構成される角丸正多角形に形成されていると、上開口縁16と半田ボール2との接触機会を少なくすることができるため、半田ボール2をボール挿入孔12内へスムーズに落下させることができる。そのうえで、ボール挿入孔12の下開口縁19が、角丸正多角形に形成された上開口縁16の形状とは異なる形状に形成されていると、例えば下開口縁19を円形状とするなど、半田ボール2との接触機会が増すような形状とすることで、落下した半田ボール2が電極6上で動くことを抑え、スキージ26により半田ボール2がボール挿入孔12から掻き出されることを防いで、半田ボール2を収まり良く電極6上に搭載させることができる。以上より、本発明によれば、ボール搭載率に優れた配列用マスクを得ることができる。
【0015】
具体的には、下開口縁19は、平面視で正多角形のコーナー部に位置するアール部21と、当該正多角形の辺部を画成して、当該アール部21に接続する直線部20とで構成される、上開口縁16と同じ角数の角丸正多角形に形成されており、上開口縁16及び下開口縁19は、平面視で上開口縁16の直線部17と下開口縁19の直線部20とが重畳する状態で形成されている。そのうえで、下開口縁19を画成する角丸正多角形のアール部21の曲率C2が、上開口縁16を画成する角丸正多角形のアール部18の曲率C1よりも小さく形成されていると、下開口縁19のうちアール部21が占める割合を、上開口縁16のうちアール部18が占める割合よりも大きくすることができるので、下開口縁19のうち円弧部分が占める割合を上開口縁16よりも相対的に大きくして、下開口縁19と半田ボール2との接触機会を、上開口縁16と半田ボール2との接触機会よりも増やすことができる。
【0016】
下開口縁19が、平面視で上開口縁16を画成する角丸正多角形に内接する円形に形成されていると、下開口縁19の全体が円弧状に形成されるので、下開口縁19と球状の半田ボール2との接触機会を、上開口縁16と半田ボール2との接触機会よりも増やすことができる。
【0017】
半田ボール2は平面視においてその重心位置がボール挿入孔12上に位置したとき、該ボール挿入孔12に落ち込もうとする。そこで本発明では、下開口縁19は、平面視で上開口縁16と相似状に形成し、下開口縁19を画成する角丸正多角形よりも上開口縁16を画成する角丸正多角形を大形に形成した。これによれば、ボール挿入孔12を下窄まり状の孔として形成することができるので、例えば、上開口縁16を大型化することで、より確実に半田ボール2の重心位置をボール挿入孔12上に位置させることができる。これに対して、下開口縁19は、半田ボール2の直径寸法よりも僅かに大きな角丸正多角形に形成して、ボール挿入孔12の下側の開口面積を相対的に小さくすることができるので、下開口縁19と半田ボール2との接触機会を増やすことができる。
【0018】
下開口縁19は、平面視で正多角形のコーナー部に位置するアール部21と、当該正多角形の辺部を画成して、当該アール部21に接続する直線部20とで構成される、上開口縁16と同じ角数の角丸正多角形に形成されており、上開口縁16及び下開口縁19は、平面視で上開口縁16の直線部17と下開口縁19の直線部20とが重畳する状態で形成されている。そのうえで、下開口縁19を画成する角丸正多角形のアール部21の曲率C2は、上開口縁16を画成する角丸正多角形のアール部18の曲率C1よりも大きく形成する。一般的に、平面視における電極6の直径に対して選定される半田ボール2の直径は、電極6の直径と略同一径に設定され、半田ボール2が落下するボール挿入孔12は、その形状に内接する円の直径が、半田ボール2の直径よりも僅かに大きく設定される。また、フラックス25は円形の電極6上の略全面に塗布される。そこで本発明のように、下開口縁19を画成する角丸正多角形のアール部21の曲率C2が、上開口縁16を画成する角丸正多角形のアール部18の曲率C1よりも大きく形成されていると、ボール挿入孔12の下側の開口面積を、ボール挿入孔12の上側の開口面積に対して大きく形成することができるので、下開口縁19が電極6上に塗布されたフラックス25に接触することをより確実に防ぐことができる。したがって、フラックス25の付着によって半田ボール2がボール挿入孔12内へ落下できなくなることを防ぐことができる。
【0019】
下開口縁19は、平面視で上開口縁16と相似状に形成されており、上開口縁16を画成する角丸正多角形よりも下開口縁19を画成する角丸正多角形が大形に形成されていると、ボール挿入孔12を下拡がり状の孔として形成することができるので、下開口縁19が電極6上に塗布されたフラックス25に接触することをより確実に防ぐことができる。
【0020】
上開口縁16を画成する角丸正多角形が、角丸正四角形で構成されており、ボール挿入孔12が、上開口縁16を画成する角丸正四角形の一対の向かい合う辺部である2つの直線部17・17の伸び方向と、配列用マスクの上面を移動してボール挿入孔12内に半田ボール2を落とし込むためのスキージ26の移動方向とが一致する姿勢で設けられていると、スキージ26の移動方向にスキージ26の移動方向の上流側に位置する上開口縁16の直線部17を直交させることができる。先に述べたように、半田ボール2は平面視においてその重心位置がボール挿入孔12上に位置したとき、該ボール挿入孔12に落ち込もうとするため、スキージ26の移動方向にスキージ26の移動方向の上流側に位置する上開口縁16の直線部17を直交させることにより、ボール挿入孔12に半田ボール2を誘い込みやすくすることができ、半田ボール2の搭載率の向上を図ることができる。また、上開口縁16を形成する一対の向かい合う直線部17・17の伸び方向と、スキージ26の移動方向とを平行に配することができるので、ボール挿入孔12内に半田ボール2を落とし込むためのスキージ26がマスク本体10の上面を摺動移動するとき、該スキージ26が上開口縁16に引っ掛かることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る配列用マスクの要部の平面図である。
【
図2】配列用マスク及びワークの全体を示す斜視図である。
【
図6】配列用マスクの製造工程を示す説明図である。
【
図7】配列用マスクの製造工程を示す説明図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る配列用マスクの要部の平面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る配列用マスクの要部の平面図である。
【
図10】本発明の第4実施形態に係る配列用マスクの要部の平面図である。
【
図11】本発明の第5実施形態に係る配列用マスクの要部の平面図である。
【
図12】(a)~(c)は本発明に係る第1実施形態に係る配列用マスクのボール挿入孔の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1から
図7に、本発明に係る半田ボールの配列用マスクの第1実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、
図1から
図3に示す交差矢印と、交差矢印の近傍の前後・左右・上下の表記に従う。なお、各図における厚みや幅などの寸法は、実際の様子を示したものではなく、それぞれ模式的に示したものである。
【0023】
この配列用マスク(以下「マスク」と記す。)1は、BGA方式の半田バンプ作成における半田ボール2の搭載工程において使用されるものである。
図2及び
図3において、符号3は、マスク1による半田ボール2の搭載対象となるワークを示す。このワーク3は、例えばガラスエポキシ基板のベース4に複数個の半導体チップ5を搭載し、ワイヤボンドで配線したのち、トランスファモールド封止してなるものであり、半導体チップ5を囲むように、ワーク3の上面には、入出力端子である電極6が所定の配列パターンで形成されている。当該ワーク3は、半田バンプの作成後に個片に切断され、個々のLSIチップとされる。各電極6は円形に形成されており、その直径は半田ボール2の直径と略同一径に設定されている。なお、各電極6は矩形状に形成されることもあり、この場合には、半田ボール2の直径は、矩形状の長辺の長さ寸法と略同一寸法に設定される。
【0024】
図2に示すように、マスク1は、ニッケルやニッケルコバルト等のニッケル合金、銅、その他の電着金属を素材として電鋳法(めっき法)によって形成されたマスク本体10を備えており、このマスク本体10を囲むように枠体11が接合される。マスク本体10の盤面中央部には、各半導体チップ5に対応して、半田ボール2を投入するための多数独立のボール挿入孔(以下「挿入孔」と記す。)12を有するパターン領域13が多数形成されている。パターン領域13の挿入孔12は、ワーク3における各半導体チップ5の電極6の配列パターンに対応している。
【0025】
図1及び
図3に示すように、挿入孔12は、マスク本体10を上下に貫通する貫通孔からなる。半田ボール2は、100μm以下の直径寸法を有するものであり、これに合わせて各挿入孔12の前後及び左右の寸法は、半田ボール2の直径寸法よりも僅かに大きな寸法を有している。マスク本体10の上面に形成される挿入孔12の上開口縁16は、平面視で角丸正四角形状(角丸正多角形状)に形成されている。より詳しくは、挿入孔12の上開口縁16は、前後及び左右方向に走る計4本の直線部17と、4つのコーナー部に形成された四分円弧状(部分円弧状)のアール部18とを有する、平面視で角丸正四角形状に形成されている。本実施形態のマスク1では、4つのアール部18の曲率(半径寸法の逆数)C1は同一に設定されている。また、四分円弧状に形成されたアール部18に対して、隣り合う直線部17・17は接線接続となるように構成されており、アール部18と直線部17とは滑らかに繋がっている。
【0026】
マスク本体10の下面に形成される挿入孔12の下開口縁19は、平面視で角丸正四角形状(角丸正多角形状)に形成されている。より詳しくは、挿入孔12の下開口縁19は、前後及び左右方向に走る計4本の直線部20と、4つのコーナー部に形成された四分円弧状(部分円弧状)のアール部21とを有する、平面視で角丸正四角形状に形成されている。本実施形態のマスク1では、4つのアール部21の曲率(半径寸法の逆数)C2は同一に設定されている。また、四分円弧状に形成されたアール部21に対して、隣り合う直線部20・20は接線接続となるように構成されており、アール部21と直線部20とは滑らかに繋がっている。
【0027】
挿入孔12は、平面視で上開口縁16の直線部17と、下開口縁19の直線部20とが重畳する状態で形成されている。
図1において二点鎖線は、上開口縁16の直線部17を延長することで形成される仮想正四角形(仮想正多角形)、及び下開口縁19の直線部20を延長することで形成される仮想正四角形(仮想正多角形)を示しており、このように上開口縁16を画成する角丸正四角形の基準形状となる正四角形と、下開口縁19を画成する角丸正四角形の基準形状となる正四角形とは、辺寸法が同一の正四角形で構成されている。上下の開口縁16・19の角丸正四角形の基準形状となる正四角形の一辺の辺寸法は、半田ボール2の直径寸法の1.05~1.15倍に設定することが望ましい。また、挿入孔12は、角丸正四角形の前後辺である上開口縁16の2つの直線部17・17の伸び方向が、後述するスキージ26の移動方向(左右方向)と一致するように、マスク本体10に配置されていることが望ましい。
【0028】
挿入孔12の上開口縁16と下開口縁19とは異なる形状に形成されている。より詳しくは、挿入孔12の上下の開口縁16・19は、ともに角丸正四角形に形成される点で一致するが、上開口縁16のアール部18と下開口縁19のアール部21とはその曲率が異なり、下開口縁19のアール部21の曲率C2は、上開口縁16のアール部18の曲率C1よりも小さく形成される(C1>C2)。換言すれば、下開口縁19のアール部21は、上開口縁16のアール部18よりも曲率半径の大きい四分円弧状に形成される。このように構成される挿入孔12によれば、挿入孔12の上側の開口面積が相対的に大きく、挿入孔12の下側の開口面積が相対的に小さく形成される(上開口縁16で囲まれる面の面積>下開口縁19で囲まれる面の面積)。また、下開口縁19のうちアール部21が占める割合は、上開口縁16のうちアール部18が占める割合よりも大きく形成される。
【0029】
図1及び
図4に示すように、上下の開口縁16・19の直線部17・20どうしを接続する挿入孔12の内周面は垂直面で構成されている。一方、
図1及び
図5に示すように、上下の開口縁16・19のアール部18・21どうしを接続する挿入孔12の内周面は、下開口縁19から上開口縁16に向かって上り傾斜する円弧面で構成されている。円弧面の上り傾斜は、各アール部18・21の中央部分が最も緩く、各アール部18・21の端部に行くにしたがって垂直に近づく。これら直線部17・20どうしを接続する垂直面とアール部18・21どうしを接続する円弧面とは滑らかに繋がっており、挿入孔12は内周面に屈曲部のない貫通孔として形成されている。
【0030】
図2に示すように、マスク本体10には、該マスク本体10を支持する四角枠状の枠体11が接合されている。マスク本体10と枠体11との接合は、両者10・11を接着剤等により直貼りした形態、あるいはテトロン(登録商標)などの紗を介して両者10・11を一体的に接合した形態などがある。該枠体11は、マスク本体10の補強用部材を兼ねており、アルミニウムやステンレス鋼の他、42アロイ、インバー材、スーパーインバー材、SUS430等の低熱線膨張係数の材質で形成される。枠体11の厚み寸法は、マスク本体10の厚み寸法よりも十分に肉厚に形成されており、マスク本体10の外周縁と不離一体的に接合される。枠体11の厚み寸法は、例えば0.05~3mm程度である。なお、マスク1の全体厚みは、使用する半田ボール2の直径に合わせて設計することができ、特にマスク本体10の厚み(支持突起24を設ける場合は当該突起24の厚みも含む)は半田ボール2の直径と同程度とすることが好ましい。
【0031】
マスク本体10の下面側、すなわちワーク3に正対する側には、ワーク3との対向間隔を確保する支持突起24が、下方向に突出状に設けられている。支持突起24は逆円錐台状に形成されており、半田ボール2の配列作業時においてその下端面がワーク3の表面に常に当接してマスク1とワーク3との対向間隔を確保する。支持突起24は、パターン領域13を囲むように格子枠状に設けることができる。支持突起24の下端面をワーク3の表面に当接させたとき、マスク本体10の下面とワーク3の表面との対向間隔が、半田ボール2の直径の略半分になるように、支持突起24の突出寸法を設定するとよい。
【0032】
マスク1を用いた半田ボール2の配列作業は、例えば以下のような手順で行われる。まず、ワーク3の電極6上に、印刷用メタルマスク等を使用してフラックス25を印刷塗布する(
図3参照)。次に、ボール挿入孔12と電極6とが一致するように、ワーク3上にマスク1を位置合わせしたうえで、マスク1を固定する。この位置合わせ作業は、例えば枠体11とワーク3との外周縁を位置合わせすることで行われる。なお、ワーク3の下方に磁石を配置することができ、位置合わせ作業が終了した後、該磁石の磁力吸引力によりマスク1をワーク3に不離一体的に固定することが可能である。この固定状態において、支持突起24の下端面がワーク3の表面に当接することで、マスク1は、
図3に示すようなワーク3との対向間隔が確保された離間姿勢に姿勢が保持される。
【0033】
次に、枠体11の開口部分、すなわちマスク本体10の上面に多数個の半田ボール2を供給し、先端がブラシ状のスキージ(スキージブラシ)26を用いてマスク本体10上で半田ボール2を分散させて、挿入孔12内に1つずつ半田ボール2を落下させる。本実施形態は、左方向を上流側、右方向を下流側として、左から右に向ってスキージ26を動かして半田ボール2を挿入孔12内に落下させ、電極6上に半田ボール2を搭載する。挿入孔12内に落下した半田ボール2はフラックス25で仮止め状に粘着保持される。最後に残余の半田ボール2をマスク1の上面から除去したのちに、マスク1を取り外し、半田ボール2を加熱溶解させることで、ワーク3の電極6上に半田バンプを作成することができる。
【0034】
図6および
図7は本実施形態に係る配列用マスク1の製造方法を示す。まず、
図6(a)に示すように、導電性を有する例えばステンレス鋼製や真ちゅう製の母型28の表面にフォトレジスト層29を形成する。このフォトレジスト層29は、ネガタイプの感光性ドライフォトレジストを、所定の高さに合わせて一枚ないし数枚ラミネートして熱圧着により形成することができる。次いで、フォトレジスト層29の上に、逆円錐台状の支持突起24に対応する透光孔30aを有するパターンフィルム30(ガラスマスク)を密着させたのち、紫外線光ランプ31で紫外線光を照射して露光を行う。当該露光は、紫外線光ランプ31の照射角度や母型28の傾斜角度を変更しながら行うことができる。紫外線光ランプ31による露光後は、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、
図6(b)に示すように、支持突起24に対応するレジスト体32aを有する一次パターンレジスト32を母型28上に形成した。
【0035】
続いて、上記母型28を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、
図6(c)に示すようにレジスト体32aの高さの範囲内で、母型28のレジスト体32aで覆われていない表面にニッケル等の電着金属を電鋳して、一次電鋳層33を形成した。ここでは、母型28の略全面にわたって一次電鋳層33を形成した。次に、
図6(d)に示すように、一次パターンレジスト32を除去する。後段の剥離工程の作業性を向上させるため、一次電鋳層33の表面は一次パターンレジスト32の除去後に研磨処理や剥離処理を施しておくことが望ましい。
【0036】
続いて、
図7(a)に示すように、一次電鋳層33および母型28の表面の全体に、フォトレジスト層36を形成したうえで、当該フォトレジスト層36の表面に、挿入孔12に対応する透光孔37aを有するパターンフィルム37(ガラスマスク)を密着させたのち、紫外線光ランプ31で紫外線光を照射して露光を行う。当該露光は、紫外線光ランプ31の照射角度や母型28の傾斜角度を変更しながら行うことができる。紫外線光ランプ31による露光後は、現像、乾燥の各処理を行って、未露光部分を溶解除去することにより、
図7(b)に示すような挿入孔12に対応するレジスト体38aを有する二次パターンレジスト38を一次電鋳層33の表面に形成した。
【0037】
続いて、上記母型28を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、先のレジスト体38aの高さの範囲内で、母型28、及びレジスト体38aで覆われていない一次電鋳層33の表面にニッケル等の電着金属を電鋳して、
図7(c)に示すような二次電鋳層39を形成した。次に、二次パターンレジスト38を溶解除去するとともに、母型28及び一次電鋳層33を二次電鋳層39から剥離(除去)することにより、
図7(d)及び
図3に示すようなマスク本体10を得た。最後にマスク本体10に枠体11を接合することで、
図2に示すようなマスク1を得ることができる。
【0038】
二次電鋳層39、すなわちマスク本体10は、それ自体に内方に収縮する方向の応力が作用するようなテンションを加えた状態で枠体11に支持した形態を採ることができる。換言すれば、マスク本体10に張力を付与した状態で、該マスク本体10を枠体11で支持することができる。マスク本体10への張力の付与は、母型28から二次電鋳層39を剥離する前に、二次電鋳層39(マスク本体10)と枠体11とを接合することで実現できる。これによれば、周囲温度の変化に伴うマスク本体10の膨張分を、当該収縮方向へのテンションで吸収することができるので、ワーク3に対するマスク本体10の位置ズレを防ぐことができる。また、マスク本体10の全体に均一なテンションを与えることができるので、ワーク3に対して半田ボール2を位置精度良く搭載させることができる。
【0039】
以上のように、本実施形態の配列用マスク1では、マスク本体10の上面に形成される挿入孔12の上開口縁16を、平面視で正四角形のコーナー部に位置するアール部18と、当該正四角形の辺部を画成して、当該アール部18に接続する直線部17とで構成される角丸正四角形に形成したので、上開口縁16と半田ボール2との接触機会を少なくすることができるため、半田ボール2を挿入孔12内へスムーズに落下させることができる。
【0040】
そのうえで、挿入孔12の下開口縁19を、角丸正四角形に形成された上開口縁16の形状とは異なる形状に形成した。具体的には、下開口縁19は、平面視で正四角形のコーナー部に位置するアール部21と、当該正四角形の辺部を画成して、当該アール部21に接続する直線部20とで構成される、上開口縁16と同じ角数の角丸正多角形、すなわち角丸正四角形に形成し、下開口縁19を画成する角丸正四角形のアール部21の曲率C2を、上開口縁16を画成する角丸正四角形のアール部18の曲率C1よりも小さく形成した。これによれば、下開口縁19のうちアール部21が占める割合を、上開口縁16のうちアール部18が占める割合よりも大きくすることができるので、下開口縁19のうち円弧部分が占める割合を上開口縁16よりも相対的に大きくして、下開口縁19と半田ボール2との接触機会を、上開口縁16と半田ボール2との接触機会よりも増やすことができる。したがって、落下した半田ボール2が電極6上で動くことを抑え、スキージ26により半田ボール2が挿入孔12から掻き出されることを防いで、半田ボール2を収まり良く電極6上に搭載させることができる。以上より、本実施形態によれば、半田ボール2を挿入孔12内へスムーズに落下させつつ、挿入孔12内に落下した半田ボール2を収まり良く電極6上に搭載することができるので、ボール搭載率に優れた配列用マスク1を得ることができる。
【0041】
上開口縁16を角丸正四角形で構成し、挿入孔12を、上開口縁16を画成する角丸正四角形の一対の向かい合う辺部である2つの直線部17・17の伸び方向と、配列用マスク1の上面を移動して挿入孔12内に半田ボール2を落とし込むためのスキージ26の移動方向とが一致する姿勢で設けたので、スキージ26の移動方向にスキージ26の移動方向の上流側に位置する上開口縁16の直線部17を直交させることができる。半田ボール2は平面視においてその重心位置が挿入孔12上に位置したとき、該挿入孔12に落ち込もうとするため、スキージ26の移動方向にスキージ26の移動方向の上流側に位置する上開口縁16の直線部17を直交させることにより、挿入孔12に半田ボール2を誘い込みやすくすることができ、半田ボール2の搭載率の向上を図ることができる。また、上開口縁16を形成する一対の向かい合う直線部17・17の伸び方向と、スキージ26の移動方向とを平行に配することができるので、挿入孔12内に半田ボール2を落とし込むためのスキージ26がマスク本体10の上面を摺動移動するとき、該スキージ26が上開口縁16、特に前後の直線部17・17に引っ掛かるのを抑制して、スキージ26がスムーズに挿入孔12上を通過できるようにすることができる。
【0042】
上記の実施形態では、上開口縁16の向かい合う2つの直線部17・17の伸び方向と、スキージ26の移動方向とが一致する姿勢でボール挿入孔12を設けたが、ボール挿入孔12は、上開口縁16の向かい合う2つの直線部17・17の伸び方向と、スキージ26の移動方向とが交差する姿勢で設けることもできる。例えば、上開口縁16の各直線部17の伸び方向をスキージ26の移動方向に対して45°傾斜させて、対角位置にある2つのアール部18がスキージ26の移動方向に並ぶ形態を採ることができる。
【0043】
上記の実施形態におけるマスク本体10と支持突起24とは、同じ金属の層(二次電鋳層39)で形成されているが、平板状のマスク本体10に支持突起24を接合することもできる。或いは支持突起24は省略することもできる。支持突起24を省略する場合のマスク本体10の製造は、
図6(a)~(d)の工程を配して、まず母型28上に
図7(b)に示すようなレジスト体38aに相当する(挿入孔12に対応する)レジスト体を有するパターンレジストを形成する。こののち、前記パターンレジストの高さの範囲内で、母型28の表面にニッケル等の電着金属を電鋳して一次電鋳層を形成する。次に、母型28及び前記パターンレジストを一次電鋳層から剥離(除去)することにより、平板状の一次電鋳層を得る。支持突起24を省略する場合には、得られた一次電鋳層をマスク本体10とする。支持突起24を設ける場合には、別途支持突起24に相当する部材を、例えば金属或いは樹脂を素材として機械加工等により作成し、この部材を一次電鋳層からなるマスク本体10の裏面に不離一体的に接合する。
【0044】
マスク本体10の製造工程において、フォトレジスト層36の露光によるレジスト体38aの形成方法は、上記製造方法に記載の方法以外に、光の波長が異なる光源を複数用意し、これら複数の光源でフォトレジスト層36を露光して、所望の形状のレジスト体38aを形成する方法、或いは、感度の異なるネガタイプの感光性ドライフォトレジストを複数積層したフォトレジスト層36を形成し、これを紫外線光ランプ31で露光して、所望の形状のレジスト体38aを形成する方法などがある。
【0045】
また別の方法として、二次パターンレジスト38に替えて、成形品を用いる方法がある。この場合には、まずレジスト体38aに対応する形状の成形品を機械加工等により作成し、これを
図6(d)に示す母型28上に形成された一次電鋳層33の所定の位置に固定する。続いて、この母型28を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、母型28、及び成形品で覆われていない一次電鋳層33の表面にニッケル等の電着金属を電鋳して、二次電鋳層39を形成する。
【0046】
上記の各製造方法では、二次電鋳層39の形成時に挿入孔12を形成したが、挿入孔12は二次電鋳層39の形成後に形成することができる。この場合には、まず
図6(a)~(d)の工程を行ったのち、
図6(d)に示す母型28を所定の条件に建浴した電鋳槽に入れ、母型28及び一次電鋳層33の表面にニッケル等の電着金属を電鋳して、二次電鋳層39を形成する。次に、母型28及び一次電鋳層33を二次電鋳層39から剥離(除去)することにより、無孔板に支持突起24が設けられた二次電鋳層39からなるマスク本体10を得る。この二次電鋳層39に機械加工、レーザー加工或いはエッチング処理を施して、所望の挿入孔12を形成することにより、挿入孔12を備えるマスク本体10を得ることができる。レーザー加工或いはエッチング処理による挿入孔12の形成は、母型28及び一次電鋳層33を二次電鋳層39から剥離(除去)する前に行うこともできる。支持突起24を省略した形態のマスク本体10においても、レーザー加工或いはエッチング処理によって挿入孔12を形成することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図8に、本発明に係る半田ボールの配列用マスクの第2実施形態を示す。本実施形態においては、挿入孔12の上開口縁16が角丸正多角形で形成され、挿入孔12の下開口縁19が平面視で円形に形成されている点が、第一実施形態と相違する。より詳しくは、挿入孔12の上開口縁16は角丸正四角形(角丸正多角形)で形成されており、挿入孔12の下開口縁19は、平面視で上開口縁16を画成する角丸正四角形に内接する円形に形成されている。下開口縁19を画成する円形の直径は、半田ボール2の直径寸法よりも僅かに大きな寸法を有している。
【0048】
上下の開口縁16・19どうしを接続する挿入孔12の内周面は、下開口縁19を画成する円形が上開口縁16を画成する角丸正四角形と内接する挿入孔12の上下左右の4点において垂直であり、当該垂直部分の中間位置において下開口縁19から上開口縁16に向かう上り傾斜が最も緩くなる、傾斜が滑らかに変化する円弧面で形成されている。このように、挿入孔12は内周面に屈曲部のない貫通孔として形成されている。その他の点は、先の第1実施形態と同じであるので、同一の構成、構造、および部材には同じ符号を付してその説明を省略する。以下の各実施形態においても同じとする。
【0049】
以上のように、本実施形態の配列用マスクでは、下開口縁19を、平面視で上開口縁16を画成する角丸正四角形に内接する円形に形成したので、下開口縁19の全体を円弧状に形成することができ、下開口縁19と球状の半田ボール2との接触機会を、上開口縁16と半田ボール2との接触機会よりも大きく増やすことができる。なお、下開口縁19は、平面視で上開口縁16を画成する角丸正四角形(角丸正多角形)に収まる円形或いは楕円形に形成することもできる。このように、下開口縁19を、平面視で上開口縁16を画成する角丸正四角形(角丸正多角形)に収まる円形或いは楕円形に形成した場合においても、下開口縁19の全体を円弧状に形成することができ、下開口縁19と球状の半田ボール2との接触機会を、上開口縁16と半田ボール2との接触機会よりも大きく増やすことができる。
【0050】
(第3実施形態)
図9に、本発明に係る半田ボールの配列用マスクの第3実施形態を示す。本実施形態においては、上下の開口縁16・19が相似状の角丸正四角形(角丸正多角形)で形成されている点が、第1実施形態と相違する。より詳しくは、
図9において二点鎖線で示す、上開口縁16の仮想正四角形(外側)と下開口縁19の仮想正四角形(内側)とを比較したとき、上開口縁16の仮想正四角形が相対的に大きく、下開口縁19の仮想正四角形が相対的に小さく形成されている。つまり、上開口縁16を画成する角丸正四角形は、下開口縁19を画成する角丸正四角形よりも大形に形成されている。下開口縁19の角丸正四角形の基準形状となる正四角形の一辺の辺寸法は、半田ボール2の直径寸法の1.05~1.15倍に設定することが望ましく、下開口縁19を画成する角丸正四角形に対して上開口縁16を画成する角丸正四角形が大きく形成されている。上下の開口縁16・19は、上開口縁16を画成する角丸正四角形の中心と下開口縁19を画成する角丸正四角形の中心が一致するように形成されており、上開口縁16のアール部18と下開口縁19のアール部21との円弧中心も一致するように形成されている。
【0051】
上下の開口縁16・19の直線部17・20どうしを接続する挿入孔12の内周面は、下開口縁19から上開口縁16に向かって上り傾斜する平滑な傾斜面で構成されている。一方、上下の開口縁16・19のアール部18・21どうしを接続する挿入孔12の内周面は、下開口縁19から上開口縁16に向かって上り傾斜する円弧面で構成されている。これら直線部17・20どうしを接続する傾斜面とアール部18・21どうしを接続する円弧面とは滑らかに繋がっており、挿入孔12は内周面に屈曲部のない下窄まりテーパー状の貫通孔として形成されている。
【0052】
以上のように、本実施形態の配列用マスクでは、下開口縁19を、平面視で上開口縁16と相似状に形成し、下開口縁19を画成する角丸正四角形よりも上開口縁16を画成する角丸正四角形を大形に形成した。これによれば、挿入孔12を下窄まり状の孔として形成できるので、上開口縁16を大形化して、より確実に半田ボール2の重心位置を挿入孔12上に位置させることができる。これに対して、下開口縁19は、半田ボール2の直径寸法よりも僅かに大きな角丸正四角形に形成して、挿入孔12の下側の開口面積を相対的に小さくすることができるので、下開口縁19と半田ボール2との接触機会を増やすことができる。
【0053】
(第4実施形態)
図10に、本発明に係る半田ボールの配列用マスクの第4実施形態を示す。本実施形態においては、挿入孔12の上開口縁16のアール部18の曲率C1と、下開口縁19のアール部21の曲率C2との大小関係が逆である点が、第一実施形態と相違する。より詳しくは、挿入孔12の上下の開口縁16・19は、ともに角丸正四角形に形成される点で一致するが、上開口縁16のアール部18と下開口縁19のアール部21とは、その曲率が異なり、下開口縁19のアール部21の曲率C2は、上開口縁16のアール部18の曲率C1よりも大きく形成される(C1<C2)。換言すれば、下開口縁19のアール部21は、上開口縁16のアール部18よりも曲率半径の小さい四分円弧状に形成される。このように構成される挿入孔12によれば、挿入孔12の上側の開口面積が相対的に小さく、挿入孔12の下側の開口面積が相対的に大きく形成される。
【0054】
上下の開口縁16・19の直線部17・20どうしを接続する挿入孔12の内周面は垂直面で構成されている。一方、上下の開口縁16・19のアール部18・21どうしを接続する挿入孔12の内周面は、下開口縁19から上開口縁16に向かってオーバーハングする円弧面で構成されている。円弧面のオーバーハングは、各アール部18・21の中央部分が最もきつく、各アール部18・21の端部に行くにしたがって垂直に近づく。これら直線部17・20どうしを接続する垂直面とアール部18・21どうしを接続する円弧面とは滑らかに繋がっており、挿入孔12は内周面に屈曲部のない貫通孔として形成されている。
【0055】
以上のように、本実施形態の配列用マスクでは、下開口縁19は、平面視で正四角形のコーナー部に位置するアール部21と、当該正四角形の辺部を画成して、当該アール部21に接続する直線部20とで構成される、上開口縁16と同じ角数の角丸正多角形、すなわち角丸正四角形に形成し、下開口縁19を画成する角丸正四角形のアール部21の曲率C2は、上開口縁16を画成する角丸正四角形のアール部18の曲率C1よりも大きく形成した。一般的に、平面視における電極6の直径に対して選定される半田ボール2の直径は、電極6の直径と略同一径に設定され、半田ボール2が落下するボール挿入孔12は、その形状に内接する円の直径が、半田ボール2の直径よりも僅かに大きく設定される。また、フラックス25は円形の電極6上の略全面に塗布される。そこで本実施形態のように、下開口縁19を画成する角丸正四角形のアール部21の曲率C2が、上開口縁16を画成する角丸四角角形のアール部18の曲率C1よりも大きく形成されていると、挿入孔12の下側の開口面積を、挿入孔12の上側の開口面積に対して大きく形成することができるので、下開口縁19が電極6上に塗布されたフラックス25に接触することをより確実に防ぐことができる。したがって、フラックス25の付着によって半田ボール2が挿入孔12内へ落下できなくなることを防ぐことができる。
【0056】
(第5実施形態)
図11に、本発明に係る半田ボールの配列用マスクの第5実施形態を示す。本実施形態においては、上下の開口縁16・19を画成する角丸正四角形の大小関係が逆である点が、第3実施形態と相違する。より詳しくは、
図11において二点鎖線で示す、上開口縁16の仮想正四角形と下開口縁19の仮想正四角形とを比較したとき、上開口縁16の仮想正四角形(内側)が相対的に小さく、下開口縁19の仮想正四角形(外側)が相対的に大きく形成されている。つまり、下開口縁19を画成する角丸正四角形は、上開口縁16を画成する角丸正四角形よりも大形に形成されている。上開口縁16の角丸正四角形の基準形状となる正四角形の一辺の辺寸法は、半田ボール2の直径寸法の1.05~1.15倍に設定することが望ましく、上開口縁16を画成する角丸正四角形に対して下開口縁19を画成する角丸正四角形が大きく形成されている。上下の開口縁16・19は、上開口縁16を画成する角丸正四角形の中心と下開口縁19を画成する角丸正四角形の中心が一致するように形成されており、上開口縁16のアール部18と下開口縁19のアール部21との円弧中心も一致するように形成されている。
【0057】
上下の開口縁16・19の直線部17・20どうしを接続する挿入孔12の内周面は、下開口縁19から上開口縁16に向かってオーバーハングする平滑な傾斜面で構成されている。一方、上下の開口縁16・19のアール部18・21どうしを接続する挿入孔12の内周面は、下開口縁19から上開口縁16に向かってオーバーハングする円弧面で構成されている。これら直線部17・20どうしを接続する傾斜面とアール部18・21どうしを接続する円弧面とは滑らかに繋がっており、挿入孔12は内周面に屈曲部のない上窄まりテーパー状の貫通孔として形成されている。
【0058】
以上のように、本実施形態の配列用マスクでは、下開口縁19を、平面視で上開口縁16と相似状に形成し、上開口縁16を画成する角丸正四角形に対して下開口縁19を画成する角丸正四角形を大形に形成したので、挿入孔12を下拡がり状の孔として形成して、下開口縁19が電極6上に塗布されたフラックス25に接触することをより確実に防ぐことができる。
【0059】
図12は、第1実施形態の挿入孔12の変形例を示している。
図12(a)は、挿入孔12の上下の開口縁16・19を、平面視で角丸正三角形(角丸正多角形)としたものであり、
図12(b)は、挿入孔12の上下の開口縁16・19を、平面視で角丸正五角形(角丸正多角形)としたものであり、
図12(c)は、挿入孔12の上下の開口縁16・19を、平面視で角丸正六角形(角丸正多角形)としたものである。これらの変形例においても、下開口縁19のアール部21の曲率C2は上開口縁16のアール部18の曲率C1よりも小さく形成されている(C1>C2)。このように挿入孔12の上下の開口縁16・19を形成する角丸正多角形は角丸正四角形に限られない。第3、第4、及び第5実施形態においても、挿入孔12の上下の開口縁16・19を形成する角丸正多角形は角丸正四角形に限られない。第2実施形態においても、挿入孔12の上開口縁16を形成する角丸正多角形は角丸正四角形に限られない。
【0060】
(参考例) 上記各実施形態における挿入孔12は、正多角形を上開口縁16の基準形状として構成したが、上開口縁16の基準形状は長方形で構成することができる。また、凸多角形、凹多角形、星形多角形などで構成することもできる。これらの場合における挿入孔12の上開口縁16は、少なくとも1個の半田ボール2を落とし込める大きさに設定する。上開口縁16の基準形状が長方形の場合、下開口縁19は平面視で上開口縁16を画成する長方形に内接する楕円形に形成することができる。上下の開口縁16・19は、線対称状或いは点対称状に構成されている形態に限られず、例えば少なくとも1つのアール部18・21の曲率が残るアール部18・21の曲率とは異なるように形成することもできる。
【0061】
本発明の配列用マスクは、蒸着用マスク、印刷用マスク、はんだボール吸着用マスクとして転用することも可能である。本発明に係る配列用マスクは、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs : Sustainable Development Goals)の目標9(産業と技術革新の基盤をつくろう)および目標12(つくる責任、つかう責任)に貢献することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 配列用マスク(マスク)
2 半田ボール
3 ワーク
10 マスク本体
12 ボール挿入孔(挿入孔)
16 上開口縁
17 直線部
18 アール部
19 下開口縁
20 直線部
21 アール部
26 スキージ
C1 上開口縁を画成する角丸正多角形のアール部の曲率
C2 下開口縁を画成する角丸正多角形のアール部の曲率