(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158510
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】評価装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20241031BHJP
A61B 5/08 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61B5/16 130
A61B5/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073766
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光伸
(72)【発明者】
【氏名】菅 竜貴
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038PP05
4C038SS09
4C038SV01
4C038SV05
(57)【要約】
【課題】ユーザにセンサ端末を装着させることなく、ユーザの睡眠状態を検出可能な評価装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】枕本体部又は枕カバーの形状を調節する調節部と、圧電素子から出力された検出信号に基づいて、ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部と、生体情報取得部により取得されたユーザの生体情報に基づいて、ユーザの睡眠状態に関する情報を取得し、取得した睡眠状態に関する情報に応じて、調節部により調節する枕本体部又は枕カバーの形状を制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの頭部を支持する枕本体部又は枕カバーに配置される非焦電性の圧電素子の出力に基づき、ユーザの睡眠状態を評価する枕型の評価装置であって、
前記枕本体部又は前記枕カバーの形状を調節する調節部と、
前記圧電素子から出力された検出信号に基づいて、ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報取得部により取得された前記ユーザの生体情報に基づいて、前記ユーザの睡眠状態に関する情報を取得し、取得した睡眠状態に関する情報に応じて、前記調節部により調節する前記枕本体部又は前記枕カバーの形状を制御する制御部と、
を備える評価装置。
【請求項2】
前記生体情報は、前記枕本体部又は前記枕カバーに加わる前記ユーザの頭部の圧力に関する情報、歯ぎしりに関する情報、いびき又は寝言に関する情報、脈波に関する情報、呼吸に関する情報、体動に関する情報、及び、血圧に関する情報のうちの少なくとも1つの時系列情報である
請求項1に記載の評価装置。
【請求項3】
前記圧電素子から出力された検出信号を、前記ユーザの脈波の状態を示す脈波信号、前記ユーザの呼吸の状態を示す呼吸信号、前記ユーザの体動の状態を示す体動信号、及び、前記ユーザの血圧の状態を示す血圧信号に分離する信号分離部を備え、
前記生体情報取得部は、分離された脈波信号、呼吸信号、体動信号、及び、血圧信号に基づいて、脈波に関する情報、呼吸に関する情報、体動に関する情報、及び、血圧に関する情報を、前記生体情報として取得し、
前記制御部は、前記生体情報取得部により取得された脈波に関する情報、呼吸に関する情報、体動に関する情報、及び、血圧に関する情報に基づいて、前記ユーザの睡眠状態に関する情報を取得する
請求項1に記載の評価装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ユーザの睡眠状態に関する情報に基づいて、前記ユーザの睡眠の質を示す睡眠指標を取得する
請求項1に記載の評価装置。
【請求項5】
前記生体情報取得部は、少なくとも呼吸に関する情報を取得し、
前記制御部は、前記ユーザの睡眠指標及び無呼吸の状態に関する情報の少なくとも1つを出力する
請求項4に記載の評価装置。
【請求項6】
前記調節部は、前記枕本体部又は前記枕カバーにおける、前記ユーザの後頭部を支持する領域の高さ、及び、前記ユーザの首部を支持する領域の高さのうちの少なくとも一方を調節可能に構成されており、
前記生体情報取得部は、少なくとも呼吸に関する情報又はいびきに関する情報を取得し、
前記制御部は、前記ユーザの無呼吸状態又はいびきの状態に応じて、自装置における前記ユーザの首部を支持する領域の高さが前記ユーザの後頭部を支持する領域の高さよりも高くなるように、前記調節部を制御する
請求項1に記載の評価装置。
【請求項7】
前記制御部は、1時間あたり10秒以上の無呼吸状態を20回以上検知した場合に、自装置における前記ユーザの首部を支持する領域の高さが前記ユーザの後頭部を支持する領域の高さよりも高くなるように、前記調節部を制御する
請求項6に記載の評価装置。
【請求項8】
前記圧電素子が備える圧電体は、非焦電性の有機圧電材料により形成されるライン状またはフィルム状の圧電体である
請求項1に記載の評価装置。
【請求項9】
前記圧電素子は、
長尺状の導体と、
前記導体に対して一方向に螺旋状に巻回された長尺状の圧電体と、
を備える
請求項1に記載の評価装置。
【請求項10】
ユーザの頭部を支持する枕本体部又は枕カバーの形状を調節する調節部を備え、前記枕本体部又は前記枕カバーに配置される非焦電性の圧電素子の出力に基づき、ユーザの睡眠状態を評価する枕型の評価装置を制御するためのプログラムであって、
前記圧電素子から出力された検出信号に基づいて、ユーザの生体情報を取得するステップと、
前記ユーザの生体情報に基づいて、前記ユーザの睡眠状態に関する情報を取得するステップと、
取得した睡眠状態に関する情報に応じて、前記調節部による調節の内容を制御するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、評価装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向の高まりにより、睡眠の質を知りたいという要望が高まりつつある。このような要望に応えるものとして、ユーザに装着させた腕時計型のセンサ端末により、睡眠時におけるユーザの生体情報を取得し、取得した生体情報に基づいてユーザの睡眠の質を解析する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ユーザが睡眠時に腕時計型のセンサ端末を装着せねばならず、利便性が悪いという問題があった。
【0005】
本開示の課題は、ユーザにセンサ端末を装着させることなく、ユーザの睡眠状態を検出可能な評価装置及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の評価装置は、ユーザの頭部を支持する枕本体部又は枕カバーに配置される非焦電性の圧電素子の出力に基づき、ユーザの睡眠状態を評価する枕型の評価装置であって、前記枕本体部又は前記枕カバーの形状を調節する調節部と、前記圧電素子から出力された検出信号に基づいて、ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部と、前記生体情報取得部により取得された前記ユーザの生体情報に基づいて、前記ユーザの睡眠状態に関する情報を取得し、取得した睡眠状態に関する情報に応じて、前記調節部により調節する前記枕本体部又は前記枕カバーの形状を制御する制御部と、を備える。
【0007】
前記生体情報は、前記枕本体部又は前記枕カバーに加わる前記ユーザの頭部の圧力に関する情報、歯ぎしりに関する情報、いびき又は寝言に関する情報、脈波に関する情報、呼吸に関する情報、体動に関する情報、及び、血圧に関する情報のうちの少なくとも1つの時系列情報としてもよい。
【0008】
また、前記圧電素子から出力された検出信号を、前記ユーザの脈波の状態を示す脈波信号、前記ユーザの呼吸の状態を示す呼吸信号、前記ユーザの体動の状態を示す体動信号、及び、前記ユーザの血圧の状態を示す血圧信号に分離する信号分離部を備え、前記生体情報取得部は、分離された脈波信号、呼吸信号、体動信号、及び、血圧信号に基づいて、脈波に関する情報、呼吸に関する情報、体動に関する情報、及び、血圧に関する情報を、前記生体情報として取得し、前記制御部は、前記生体情報取得部により取得された脈波に関する情報、呼吸に関する情報、体動に関する情報、及び、血圧に関する情報に基づいて、前記ユーザの睡眠状態に関する情報を取得してもよい。
【0009】
また、前記制御部は、前記ユーザの睡眠状態に関する情報に基づいて、前記ユーザの睡眠の質を示す睡眠指標を取得してもよい。
【0010】
この場合、前記生体情報取得部は、少なくとも呼吸に関する情報を取得し、前記制御部は、前記ユーザの睡眠指標及び無呼吸の状態に関する情報の少なくとも1つを出力してもよい。
【0011】
また、前記調節部は、前記枕本体部又は前記枕カバーにおける、前記ユーザの後頭部を支持する領域の高さ、及び、前記ユーザの首部を支持する領域の高さのうちの少なくとも一方を調節可能に構成されており、前記生体情報取得部は、少なくとも呼吸に関する情報又はいびきに関する情報を取得し、前記制御部は、前記ユーザの無呼吸状態又はいびきの状態に応じて、自装置における前記ユーザの首部を支持する領域の高さが前記ユーザの後頭部を支持する領域の高さよりも高くなるように、前記調節部を制御してもよい。
【0012】
この場合、前記制御部は、1時間あたり10秒以上の無呼吸状態を20回以上検知した場合に、自装置における前記ユーザの首部を支持する領域の高さが前記ユーザの後頭部を支持する領域の高さよりも高くなるように、前記調節部を制御してもよい。
【0013】
また、前記圧電素子が備える圧電体は、非焦電性の有機圧電材料により形成されるライン状またはフィルム状の圧電体であってもよい。
【0014】
また、前記圧電素子は、長尺状の導体と、前記導体に対して一方向に螺旋状に巻回された長尺状の圧電体と、を備えてもよい。
【0015】
本開示のプログラムは、ユーザの頭部を支持する枕本体部又は枕カバーの形状を調節する調節部を備え、前記枕本体部又は前記枕カバーに配置される非焦電性の圧電素子の出力に基づき、ユーザの睡眠状態を評価する枕型の評価装置を制御するためのプログラムであって、前記圧電素子から出力された検出信号に基づいて、ユーザの生体情報を取得するステップと、前記ユーザの生体情報に基づいて、前記ユーザの睡眠状態に関する情報を取得するステップと、取得した睡眠状態に関する情報に応じて、前記調節部による調節の内容を制御するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の評価装置及びプログラムによれば、ユーザにセンサ端末を装着させることなく、ユーザの睡眠状態を検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】
図1のA矢示方向から見た枕の概略構成図である。
【
図3】本実施形態の枕の機能ブロック構成等を示す図である。
【
図4】本実施形態の枕の評価ユニットとして機能するコンピュータの概略ブロック図である。
【
図5】本実施形態の圧電素子の具体的態様を示す側面図である。
【
図7】本実施形態の枕における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態の枕における評価レポートの一例を示す図である。
【
図9】本実施形態の枕における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】枕本体の形状が通常の状態でユーザが睡眠している状態を示した図である。
【
図11】枕本体の形状を変形させた状態でユーザが睡眠している状態を示した図である。
【
図25】枕から分離した状態の枕カバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の枕10の斜視図である。
図2は、
図1のA矢示方向から見た枕10の概略構成図である。
【0019】
本実施の形態の枕10は、枕10が備える圧電素子40により振動を検知することにより、枕10を用いて睡眠中のユーザから生体情報を取得し、取得した生体情報を解析して、ユーザの睡眠状態を評価する。枕10は、本開示の技術における評価装置の一例である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、枕10は、枕本体11に内蔵された評価ユニット20、エアポンプ30、エアバッグ31、及び、圧電素子40を備えている。
【0021】
図2に示すように、圧電素子40は、枕本体11においてユーザの後頭部を支持する領域に設けられている。圧電素子40の一端にはコネクタ45が形成されており、コネクタ45は評価ユニット20と接続されている。
【0022】
また、エアバッグ31は、枕本体11においてユーザの首部を支持する領域に設けられている。エアバッグ31は、エアポンプ30と接続されており、このエアポンプ30によりエアバッグ31内部の空気圧が調節可能に構成されている。エアポンプ30は、評価ユニット20と接続されており、この評価ユニット20により動作を制御される。エアポンプ30は、本開示の技術における調節部の一例である。
【0023】
なお、
図2において、評価ユニット20及びエアポンプ30は、実際の形状及び設置位置を示したものではない。
【0024】
図3は、本実施形態の枕10の機能ブロック構成等を示す図である。評価ユニット20は、ユーザに接触しない状態で配置される圧電素子40の出力に基づき、ユーザの睡眠状態を評価するユニットであり、
図3に示すように、信号分離部21と、生体情報取得部22と、記憶部23と、制御部24と、を備える。
【0025】
信号分離部21は、圧電素子40から出力された検出信号を、ユーザの脈波の状態を示す脈波信号、ユーザの呼吸の状態を示す呼吸信号、ユーザの体動の状態を示す体動信号、ユーザの血圧の状態を示す血圧信号、及び、音声信号に分離する。
【0026】
具体的には、脈波信号、呼吸信号、体動信号、血圧信号、及び、音声信号は、検出信号における周波数成分が各々異なるため、検出信号から特定の周波数成分を抽出することにより、各信号を分離することができる。
【0027】
先ず、脈波信号について説明する。一般的に、脈拍数の正常値は1分間に60回(すなわち、1Hz)から100回(すなわち、1.67Hz)程度とされている。そのため、例えば、上記成分を含む0.5Hz以上3Hz以下の周波数成分の信号を検出信号から抽出することにより、脈波信号を取得することができる。
【0028】
次に、呼吸信号について説明する。一般的に、新生児の呼吸は1分間に30回(すなわち、0.5Hz)程度であり、健常な成人の呼吸数は1分間に10回(すなわち、0.17Hz)から20回(すなわち、0.33Hz)程度とされている。そのため、例えば、上記成分を含む0.05Hz以上1Hz以下の周波数成分の信号を検出信号から抽出することにより、呼吸信号を取得することができる。
【0029】
次に、体動信号について説明する。体動としては、ユーザの寝返り、姿勢変化、移動、震え、及び、痙攣等が考えられ、これらの周波数成分は0.1Hz程度から大きくても数10Hz程度である。そのため、例えば、0.05Hz以上50Hz以下の周波数成分の信号を検出信号から抽出することにより、体動信号を取得することができる。
【0030】
次に、血圧信号について説明する。血圧は、脈波信号の振幅値に基づいて推定することができる。そのため、脈波信号と同様に、例えば、0.5Hz以上3Hz以下の周波数成分の信号を検出信号から抽出することにより、血圧信号を取得することができる。
【0031】
次に、音声信号について説明する。一般的に、人間の聴覚の可聴域は20Hz以上20kHz以下程度とされている。そのため、例えば、20Hz以上20kHz以下の周波数成分の信号を検出信号から抽出することにより、音声信号を取得することができる。
【0032】
生体情報取得部22は、圧電素子40から出力された検出信号に基づいて、ユーザの生体情報を取得するものである。本実施の形態において、生体情報取得部22は、信号分離部21により分離された脈波信号に基づいて、脈波に関する情報の時系列情報を、生体情報として取得する。また、生体情報取得部22は、信号分離部21により分離された呼吸信号に基づいて、呼吸に関する情報の時系列情報を、生体情報として取得する。また、生体情報取得部22は、信号分離部21により分離された体動信号に基づいて、体動に関する情報の時系列情報を、生体情報として取得する。また、生体情報取得部22は、信号分離部21により分離された血圧信号に基づいて、血圧に関する情報の時系列情報を、生体情報として取得する。また、生体情報取得部22は、信号分離部21により分離された音声信号に基づいて、歯ぎしりに関する情報、いびきに関する情報、及び、寝言に関する情報の時系列情報を、生体情報として取得する。
【0033】
記憶部23は、生体情報取得部22により取得されたユーザの生体情報を記憶する。記憶部23は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の記憶媒体によって実現できる。
【0034】
制御部24は、生体情報取得部22により取得されたユーザの生体情報に基づいて、ユーザの睡眠状態に関する情報を取得する。また、制御部24は、ユーザの睡眠状態に関する情報に基づいて、ユーザの睡眠の質を示す睡眠指標を取得する。また、制御部24は、ユーザの睡眠状態に関する情報に基づいて、ベッド50のエアポンプ30を制御する。制御部24の処理内容については、後段で詳細に説明する。
【0035】
上記の評価ユニット20は、例えば、
図4に示すコンピュータ50で実現することができる。コンピュータ50はCPU(Central Processing Unit)61、一時記憶領域としてのメモリ52、及び不揮発性の記憶媒体である記憶部23を備える。
【0036】
また、コンピュータ50は、入出力装置等(図示省略)が接続される入出力interface(IF)53、及び記録媒体に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するread/write(R/W)部54を備える。また、コンピュータ50は、インターネット等のネットワークに接続されるネットワークIF55を備える。CPU51、メモリ52、記憶部23、入出力IF53、R/W部54、及びネットワークIF55は、バス56を介して互いに接続される。
【0037】
記憶媒体としての記憶部23には、ユーザの生体情報のデータ、及び、コンピュータ50を機能させるためのプログラムなどが記憶されている。CPU51は、プログラムを記憶部23から読み出してメモリ52に展開し、プログラムが有するプロセスを順次実行する。
【0038】
図5は、圧電素子40の具体的態様を示す側面図である。
図6は、
図5のX-X線断面図である。
【0039】
図5に示すように、圧電素子40は、ライン状に形成された圧電素子であり、具体的には、導体としての長尺状の内部導体41と、内部導体41に対して一方向に螺旋状に巻回された長尺状の圧電体42と、内部導体41と圧電体42との間に配置された接着層(不図示)と、圧電体42を覆うように形成された導体層43と、導体層43を覆うように形成された非導電性の被覆層44と、を備えている。圧電体42は、一例として、非焦電性の有機材料であるヘリカルキラル高分子からなる。ヘリカルキラル高分子としては、例えば、ポリ乳酸(Poly Lactic Acid)等を用いることができる。
【0040】
圧電体42は、内部導体41の外周面に沿って、螺旋角度βで一端から他端にかけて、隙間がないように一方向に螺旋状に巻回されている。ここで、「螺旋角度β」とは、内部導体41の軸方向Gと、内部導体41の軸方向に対する圧電体42の配置方向とがなす角度を意味する。
【0041】
また、
図5中、圧電体42に含まれるヘリカルキラル高分子の主配向方向は、両矢印Dで示されている。即ち、ヘリカルキラル高分子の主配向方向と、圧電体42の配置方向(圧電体42の長さ方向)とは、略平行となっている。
【0042】
さらに、内部導体41と圧電体42との間には、接着層(不図示)が配置されている。これにより、圧電素子40の長さ方向に張力が印加されても、圧電体42と内部導体41との相対位置がずれないように構成されている。
【0043】
上記のように形成された圧電素子40の長さ方向に張力が印加されると、圧電体42に含まれるヘリカルキラル高分子にずり力が加わり、ヘリカルキラル高分子は分極する。このヘリカルキラル高分子の分極は、
図6中、矢印で示されるように、圧電素子40の径方向に生じ、その分極方向は位相が揃えられて生じると考えられる。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される。さらに、圧電素子40では、内部導体41と圧電体42との間に接着層が配置されているため、圧電体42に張力がより印加されやすくなっている。
【0044】
以上のことから、上記のように構成された圧電素子40は、圧電感度に優れ、圧電出力の安定性が優れたものとなる。このような圧電素子40としては、例えば、三井化学株式会社製「PIEZOLA」(登録商標)等を用いることができる。
【0045】
次に、枕10の作用について説明する。先ず、枕10において、ユーザの睡眠の質を示す睡眠指標を取得する際の処理について説明する。
図7は、枕10において、睡眠指標を取得する際の処理の流れを示すフローチャートである。
【0046】
先ず、ステップS11において、生体情報取得部22は、圧電素子40の検出信号に基づいて、枕10を用いて睡眠中のユーザの生体情報を取得する。
【0047】
詳細には、生体情報取得部22は、信号分離部21により検出信号から分離された脈波信号、呼吸信号、体動信号、血圧信号、及び、音声信号に基づいて、脈波に関する情報、呼吸に関する情報、体動に関する情報、血圧に関する情報、歯ぎしりに関する情報、いびきに関する情報、及び、寝言に関する情報の時系列情報を、生体情報として取得する。
【0048】
このように枕10に内蔵された圧電素子40により、枕10を用いて睡眠中のユーザが発生させた振動を検出することにより、生体情報を取得するためのセンサ端末等をユーザに装着させる必要がない。
【0049】
次に、ステップS12において、制御部24は、ステップS11で取得された生体情報に基づいて、ユーザの睡眠時のバイタルサイン(ユーザの睡眠状態に関する情報)を取得する。
【0050】
ここで、「バイタルサイン」とは、例えば、脈拍数、呼吸数、無呼吸状態の時間、体動、血圧、歯ぎしりの回数又は時間、いびきの回数又は時間、及び、寝言の回数又は時間等である。
【0051】
次に、ステップS13において、制御部24は、ステップS12で取得されたバイタルサインに基づいて、ユーザの睡眠段階及び身体状態の類推を行う。
【0052】
「睡眠段階」は、脈拍数、脈拍変動、呼吸数、及び、体動等から類推ができる。詳細には、人間は、覚醒状態から睡眠が深くなるにつれて、体動の大きさが小さくなり、発生頻度が少なくなる。また、睡眠が深くなるにつれて、脈拍数が小さくなる。また、レム(Rapid Eye Movement)睡眠状態では、抗重力筋の緊張が消失し、急速眼球運動が出現し、脈拍数及び呼吸数が増加し、脈拍及び呼吸の周期が不規則になる。また、レム睡眠の前後に体動が集中する。また、レム睡眠は、成人の場合、平均90分から100分程度の周期で出現する。
【0053】
上記の特徴に基づき、制御部24は、バイタルサインに基づいて、睡眠段階がレム睡眠状態、深い睡眠状態、浅い睡眠状態、及び、覚醒状態のいずれに該当するかを判定する。
【0054】
「身体状態」は、例えば、呼吸状態、筋肉の緊張状態、寝返り、歯ぎしり、いびき、及び、震え等の身体の状態である。
【0055】
ステップS11からステップS13の処理は、ユーザが睡眠中の間、継続して行われる。そして、ユーザが起床してベッド50から退避したら、ステップS14において、制御部24は、ユーザの睡眠中に取得されたユーザの睡眠段階及び身体状態の情報に基づいて、ユーザの睡眠の質を示す睡眠指標を取得する。
【0056】
ここで「睡眠指標」は、ユーザの睡眠時間、無呼吸状態の有無、無呼吸状態の時間、いびきの回数及び時間、及び、体動の状態等から総合的に算出される評価点数である。
【0057】
例えば、ユーザの睡眠時間が8時間以上で、無呼吸状態が無く、いびきの回数が少ないといったように、理想的な睡眠に近い場合には、睡眠指標の点数が高くなる。逆に、ユーザの睡眠時間が4時間以下で、無呼吸状態が長く、いびきの回数が多いといったように、理想的な睡眠から外れている場合には、睡眠指標の点数が低くなる。
【0058】
制御部24は、睡眠指標を含むユーザの睡眠時の情報を、
図8に示すような評価レポートの形で、出力してもよい。
【0059】
評価レポートには、例えば、睡眠指標(
図8中では睡眠評価点)の他、睡眠時間、寝返り回数、平均心拍数(脈拍数と同義)、平均呼吸数、平均血圧、呼吸停止総回数、呼吸停止総時間、いびき発生時間、体動発生総時間、ノンレム睡眠の割合、レム睡眠の割合、覚醒状態の割合等の情報が含まれる。評価レポートは、これらの情報を、体裁を整えて表示したものである。
【0060】
評価レポートの出力については、例えば、評価ユニット20に含まれるネットワークIF55を介して、評価レポートをユーザの所有するスマートフォン100に送信したり、コンピュータに送信したりしてもよいし、入出力IF53を介して、外部装置に出力してもよい。また、評価レポートの形ではなく、バイタルサインのデータをそのまま出力するようにしてもよい。
【0061】
次に、枕10において、睡眠時無呼吸症候群の予兆を把握した際の処理について説明する。
図9は、枕10において、睡眠時無呼吸症候群の予兆を把握した際の処理の流れを示すフローチャートである。この睡眠時無呼吸症候群の予兆を把握する処理は、上記の睡眠指標を取得する処理と同時並列的に行われる。
【0062】
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気であり、高血圧や動脈硬化を引き起こし、様々な生活習慣病やメタボリックシンドロームを引き起こす原因となるため、早期の治療が必要とされている。
【0063】
本実施形態の枕10においては、睡眠時無呼吸症候群の予兆を把握した際に、ユーザの呼吸状態を改善させる。
【0064】
先ず、ステップS21において、生体情報取得部22は、圧電素子40の検出信号に基づいて、ベッド50(詳細には、枕10上)で睡眠中のユーザの生体情報を取得する。
【0065】
次に、ステップS22において、制御部24は、ステップS21で取得された生体情報に基づいて、ユーザの睡眠時のバイタルサイン(ユーザの睡眠状態に関する情報)を取得する。
【0066】
次に、ステップS23において、制御部24は、ステップS22で取得されたバイタルサインに基づいて、ユーザの睡眠段階及び身体状態の類推を行う。
【0067】
なお、ステップS21からステップS23の処理は、上記のステップS11からステップS13の処理と同じである。
【0068】
次に、ステップS24において、制御部24は、ステップS23で取得されたユーザの睡眠段階及び身体状態の情報に基づいて、睡眠時無呼吸症候群の予兆の有無を判定する。
【0069】
一般的に1時間あたり10秒以上の無呼吸状態が20回以上出現するような場合、睡眠時無呼吸症候群が疑われる。そのため、制御部24は、1時間あたり10秒以上の無呼吸状態を20回以上検知した場合に、睡眠時無呼吸症候群の予兆が有ると判定する。
【0070】
なお、睡眠時無呼吸症候群の予兆の有無の判定方法については、特に制限はなく、上記の態様以外に、どのような態様としてもよい。
【0071】
ステップS24において、睡眠時無呼吸症候群の予兆が把握された場合(判定Yes)、制御部24は、ステップS25において、ユーザの呼吸状態を改善させる機能を動作させる。
【0072】
本実施形態において、ユーザの呼吸状態を改善させる機能は、枕本体11の形状変化機能である。制御部24は、睡眠時無呼吸症候群の予兆が把握された場合、エアポンプ30を制御してエアバッグ31内の空気圧を高め、首部を支持する領域の高さが高くなるように、枕本体11の形状を変化させる。
【0073】
ここで、枕本体11の形状の変化について詳細に説明する。
図10は、枕本体11の形状が通常の状態でユーザが睡眠している状態を示した図である。
図11は、枕本体11の形状を変形させた状態でユーザが睡眠している状態を示した図である。
【0074】
図10に示すように、睡眠時無呼吸症候群の場合、睡眠中にユーザの舌根Tが沈下して気道を塞ぐことにより、無呼吸状態が発生していることが主要原因として想定される。
【0075】
そのため、制御部24は、睡眠時無呼吸症候群の予兆が把握された場合、
図11に示すように、エアポンプ30を制御してエアバッグ31内の空気圧を高め、ユーザの首部を支持する領域の高さが、ユーザの後頭部を支持する領域の高さよりも高くなるように、枕本体11の形状を変化させる。
【0076】
これにより、ユーザの顎先が拳上され、舌根Tの沈下が解消される。その結果、ユーザの気道が確保され、無呼吸状態が解消される。
【0077】
なお、エアバッグ31内の空気圧は、ユーザの呼吸状態に応じて変化させてもよい。例えば、無呼吸状態が少ない場合には空気圧を僅かに高め、無呼吸状態が多い場合には空気圧を大きく高めてもよい。
【0078】
また、無呼吸状態が設定された閾値を超えて多い場合には、空気圧をさらに高めたり、又は、空気圧を高くした状態及び低くした状態を繰り返し発生させてユーザの頭を揺らしたりしてユーザを覚醒させ、睡眠時無呼吸症候群の予兆があることをユーザに認識させるようにしてもよい。
【0079】
また、枕本体11の形状の変形については、上記のように一つのエアバッグ31を用いて行う態様に限らず、複数のエアバッグを用いて行う態様としてもよい。
【0080】
例えば、枕本体11においてユーザの後頭部を支持する領域と首部を支持する領域に各々エアバッグを設け、睡眠時無呼吸症候群の予兆が把握された際に、後頭部を支持する領域のエアバッグ内の空気圧を低くし、首部を支持する領域のエアバッグ内の空気圧を高くするように構成することにより、一つのエアバッグを用いる態様と比較して、ユーザの顎先を拳上させ易くなる。
【0081】
ステップS24において、睡眠時無呼吸症候群の予兆が把握されなかった場合(判定No)、制御部24は、ステップS21に遷移し、ステップS21からステップS24までの処理を繰り返す。
【0082】
以上説明したように、本実施形態によれば、ユーザにセンサ端末を装着させることなく、ユーザの睡眠状態を検出することが可能となる。
【0083】
また、枕10に圧電素子40を内蔵して生体情報を取得する場合、枕10はベッドと比較して高さがあり、ベッドと比較して身体からの圧力が大きくなるため、圧電素子40に掛かる荷重の総和が大きくなる。そのため、圧電素子40における感度が良好となる。
【0084】
また、脈拍、呼吸等のバイタルサインは周波数成分を有する動的荷重であるが、圧電方式よる検出では静的荷重には反応せず、頭の重さ等による静的荷重成分を無効化できる。そのため、圧電方式による検出は、枕10でのバイタルセンシングに適する。
【0085】
また、枕10は、ベッドと比較して形状が平らではなく、また変形されやすい。また、枕10は、顔の近くで使用されるため、ベッド以上に使用感が求められる。そのため、枕10に使用されるセンサは、可撓性を有する有機圧電材料により形成された圧電素子40が適する。
【0086】
枕10、ユーザによる持ち運びが想定されるため、軽さが求められる。そのため、枕10に使用されるセンサは、加速センサIC(Integrated Circuit)、又は、セラミック等の無機圧電材料により形成された圧電素子よりも軽い、有機圧電材料により形成された圧電素子40が適する。
【0087】
また、睡眠時無呼吸症候群の把握に効果的ないびきは喉元で発生するため、枕10に圧電素子40を内蔵することにより、いびきを検知し易くなる。
【0088】
また、本実施形態では、圧電素子40として、ライン状に形成されたものを用いている。本実施形態の圧電素子40の圧電体42には、有機圧電材料としてポリ乳酸(Poly Lactic Acid)が用いられている。また、ポリ乳酸の他にも、有機圧電材料としてはポリフッ化ビニリデン(Poly Vinylidene DiFluoride)等を用いることもできる。ただし、これらの高分子材料により形成された圧電体には、通気性がない。
【0089】
フィルム状の圧電素子と比較して、ライン状の圧電素子40は、断面積及び設置面積が小さい。そのため、ライン状の圧電素子40は、枕本体11等の構造体の内部に組み込み易く、さらに、枕本体11の通気性及び寝心地を損なうことなく、生体情報を取得することができる。
【0090】
また、ライン状の圧電素子40は、内部に金属線を備えており、枕本体11を構成するスポンジ等の弾性体と比較して、剛性が高い。そのため、枕本体11にライン状の圧電素子40を内蔵し、枕本体11に荷重を与えた場合、枕本体11よりもライン状の圧電素子40は変形し難く、圧電素子40に応力(荷重)が集中することになり、感度が高くなりやすい。
【0091】
また、圧電素子40がユーザに直接接触しないため、損傷の可能性が低くなり、耐久性を高めることができる。
【0092】
[変形例]
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0093】
例えば、枕10に配置する圧電素子40の形状、数、位置、及び、深さ等の配置態様は、上記実施形態の態様に限らず、どのような態様としてもよい。
【0094】
また、評価ユニット20は、枕本体11に内蔵する態様に限らず、枕本体11の外部に設置する態様としてもよい。この場合、枕本体11又は枕カバー60(後述の
図24及び
図25参照)等に配置された圧電素子40のコネクタを外部に露出させ、評価ユニット20と接続可能に構成すればよい。
【0095】
この場合、枕本体11又は枕カバー60の形状を調節する調節部として機能するエアポンプ30及びエアバッグ31については、エアポンプ30及びエアバッグ31の両方を枕本体11に内蔵して、エアポンプ30と枕本体11の外部に設置された評価ユニット20とを接続可能に構成してもよい。また、エアバッグ31のみを枕本体11に内蔵して、エアバッグ31と枕本体11の外部にエアポンプ30とを接続可能に構成してもよい。
【0096】
以下、枕10に配置する圧電素子40の配置態様の変形例について図面を用いて説明する。なお、以下の変形例では、評価ユニット20を枕本体11の外部に設置し、圧電素子40のコネクタを外部に露出した例について説明する。また、以下の説明における図面では、評価ユニット20、エアポンプ30、及び、エアバッグ31の図示は省略する。
【0097】
例えば、
図12及び
図13に示す枕10Aのように、枕10Aの左右方向に直線状に延びるライン状の圧電素子40A、圧電素子40B、及び、圧電素子40Cを、枕本体11の前後方向において互いに平行な状態で配置してもよい。
【0098】
圧電素子40A、圧電素子40B、及び、圧電素子40Cは、枕10Aにおける同じ深さ位置に内蔵されている。また、圧電素子40A、圧電素子40B、及び、圧電素子40Cの一端には、評価ユニット20と接続するためのコネクタ45A、コネクタ45B、及び、コネクタ45Cが設けられている。
【0099】
これにより、枕10Aの広範囲にわたって、ユーザのバイタルサインを検出することが可能となる。また、枕10Aの部位毎に独立して、ユーザのバイタルサインを検出することが可能となる。
【0100】
また、
図14及び
図15に示す枕10Bのように、枕10Bの水平面内において広範囲にわたって蛇行して延びるライン状の圧電素子40Dを、枕本体11に内蔵してもよい。圧電素子40Dの一端には、評価ユニット20と接続するためのコネクタ45Dが設けられている。
【0101】
これにより、枕10Bの広範囲にわたって、ユーザのバイタルサインを検出することが可能となる。また、1つの圧電素子40Dのみで枕10Bの広範囲を検出することができるため、評価ユニット20での信号処理が簡易化される。
【0102】
また、
図16及び
図17に示す枕10Cのように、枕10Cの垂直面内において折り曲げられて延びるライン状の圧電素子40Eを、枕本体11に内蔵してもよい。圧電素子40Eの一端には、評価ユニット20と接続するためのコネクタ45Eが設けられている。
【0103】
これにより、枕10Cにおける広い深さ範囲で、ユーザのバイタルサインを検出することが可能となる。また、枕10Cは、裏返して使用することもあるが、折り曲げられた圧電素子40Eの両端部が異なる深さに配置されていることにより、折り曲げられた圧電素子40Eのうち常に頭に近い側の領域で検出することが可能となる。
【0104】
また、
図18及び
図19に示す枕10Dのように、枕10Dの左右方向に湾曲して延びるライン状の圧電素子40Fを、枕本体11に内蔵してもよい。圧電素子40Fの一端には、評価ユニット20と接続するためのコネクタ45Fが設けられている。
【0105】
このように、ライン状の圧電素子40Fは、所望のバイタルサインが取れやすい深さを狙って、枕10Dの表層から異なる深さに配置でき、配置位置の最適化がしやすい。
【0106】
例えば、中央部は頭の荷重が多くかかりやすく、静的荷重由来のノイズが乗りやすいため、中央部は深い位置に圧電素子40Fが配置されるようにしてもよい。
【0107】
また、
図20及び
図21に示す枕10Eのように、枕10Eの左右方向に直線状に延びるライン状の圧電素子40G及び圧電素子40Hを、枕本体11の異なる深さ位置に互いに平行な状態で配置してもよい。圧電素子40G及び圧電素子40Hの一端には、評価ユニット20と接続するためのコネクタ45G及びコネクタ45Hが設けられている。
【0108】
ライン状の圧電素子40G及び圧電素子40Hは、設置体積が小さいため、上面から見たときに枕10Eの同じ位置に多段状に配置することができる。
【0109】
枕本体11の深い部分であるほど荷重は緩和される。また、枕本体11が吸収層となるため、周波数帯域によって荷重の減衰状態が異なる。これらの現象を利用し、深さの異なる位置に組み込まれた各圧電素子40G及び圧電素子40Hの情報から、体動、脈拍、及び、呼吸等に由来する振動を分離し易くなる。例えば、体動は荷重が大きいため、深い部分に配置された圧電素子40Hにて体動が検出しやすい。一方で、浅い部分に配置された圧電素子40Gは体動、脈拍、及び、呼吸等に由来するほとんどの身体由来の振動を検出できるが、すべての振動を高感度に検出してしまうため、荷重が比較的弱い脈拍や呼吸の信号が体動の信号に埋もれてしまう傾向がある。そのため、圧電素子40Hにて検出された振動信号から体動成分を抽出し、それを用いて浅い部分に配置された振動素子40Gにて検出された信号成分から体動成分を除くことで、脈拍や呼吸の信号が検出しやすくなる。
【0110】
また、枕10Eは、裏返して使用することもあるが、圧電素子が多段状に複数あることで、常に頭に近い側の圧電素子を使用することが可能となる。
【0111】
また、
図22及び
図23に示す枕10Fのように、互いに検出領域が異なるライン状の圧電素子40I、圧電素子40J、及び、圧電素子40Kを、枕本体11の同じ深さ位置に配置してもよい。
【0112】
圧電素子40I、圧電素子40J、及び、圧電素子40Kの一端には、評価ユニット20と接続するためのコネクタ45I、コネクタ45J、及び、コネクタ45Kが設けられている。
【0113】
このように、圧電素子40I、圧電素子40J、及び、圧電素子40Kは、設置面積が小さいため、所望のバイタルサインが取れやすい位置を狙って、枕本体11の同じ深さ位置に配置でき、配置位置の最適化がしやすい。
【0114】
また、異なる検出位置に圧電素子40I、圧電素子40J、及び、圧電素子40Kを配置することにより、寝返り等による頭の位置を推定することができるようになる。
【0115】
また、
図24及び
図25に示す枕10Gのように、ライン状の圧電素子40Lを、枕本体11と着脱可能な枕カバー60に内蔵してもよい。圧電素子40Lの一端には、評価ユニット20と接続するためのコネクタ45Lが設けられている。
【0116】
このように、枕カバー60に圧電素子40Lを内蔵することにより、枕本体11自体を洗濯することが可能となる。特に、ライン状の圧電素子40は、軽量であり、可撓性及び通気性に優れているため、枕カバー60に組み込みやすい。
【0117】
また、圧電素子は、ライン状のものに限らず、フィルム状に形成されたものを用いてもよい。
【0118】
また、評価ユニット20は、信号分離部を設ける態様に限らず、検出信号から直接ユーザの生体情報を取得するようにしてもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、調節部として、エアポンプ30を用いているが、エアコンプレッサ等の他の気圧調節装置を用いてもよい。
【0120】
また、調節部としては、空気圧を変化させることにより、枕本体11又は枕カバー60の形状を調節するものに限らず、例えばアクチュエータ等を用いて機械的に形状を調節するもの、また、例えば電界特性に基づいて物理的特性が変化する材料等を用いて電気的に形状を調節するもの等、どのような態様としてもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、プログラムが予めインストールされている態様について説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0122】
[付記]
以下に、本開示の好ましい形態について付記する。
【0123】
[付記1]
ユーザの頭部を支持する枕本体部又は枕カバーに配置される非焦電性の圧電素子の出力に基づき、ユーザの睡眠状態を評価する枕型の評価装置であって、
前記枕本体部又は前記枕カバーの形状を調節する調節部と、
前記圧電素子から出力された検出信号に基づいて、ユーザの生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報取得部により取得された前記ユーザの生体情報に基づいて、前記ユーザの睡眠状態に関する情報を取得し、取得した睡眠状態に関する情報に応じて、前記調節部により調節する前記枕本体部又は前記枕カバーの形状を制御する制御部と、
を備える評価装置。
【0124】
[付記2]
前記生体情報は、前記枕本体部又は前記枕カバーに加わる前記ユーザの頭部の圧力に関する情報、歯ぎしりに関する情報、いびき又は寝言に関する情報、脈波に関する情報、呼吸に関する情報、体動に関する情報、及び、血圧に関する情報のうちの少なくとも1つの時系列情報である
付記1に記載の評価装置。
【0125】
[付記3]
前記圧電素子から出力された検出信号を、前記ユーザの脈波の状態を示す脈波信号、前記ユーザの呼吸の状態を示す呼吸信号、前記ユーザの体動の状態を示す体動信号、及び、前記ユーザの血圧の状態を示す血圧信号に分離する信号分離部を備え、
前記生体情報取得部は、分離された脈波信号、呼吸信号、体動信号、及び、血圧信号に基づいて、脈波に関する情報、呼吸に関する情報、体動に関する情報、及び、血圧に関する情報を、前記生体情報として取得し、
前記制御部は、前記生体情報取得部により取得された脈波に関する情報、呼吸に関する情報、体動に関する情報、及び、血圧に関する情報に基づいて、前記ユーザの睡眠状態に関する情報を取得する
付記1又は2に記載の評価装置。
【0126】
[付記4]
前記制御部は、前記ユーザの睡眠状態に関する情報に基づいて、前記ユーザの睡眠の質を示す睡眠指標を取得する
付記1から3のいずれか1項に記載の評価装置。
【0127】
[付記5]
前記生体情報取得部は、少なくとも呼吸に関する情報を取得し、
前記制御部は、前記ユーザの睡眠指標及び無呼吸の状態に関する情報の少なくとも1つを出力する
付記4に記載の評価装置。
【0128】
[付記6]
前記調節部は、前記枕本体部又は前記枕カバーにおける、前記ユーザの後頭部を支持する領域の高さ、及び、前記ユーザの首部を支持する領域の高さのうちの少なくとも一方を調節可能に構成されており、
前記生体情報取得部は、少なくとも呼吸に関する情報又はいびきに関する情報を取得し、
前記制御部は、前記ユーザの無呼吸状態又はいびきの状態に応じて、自装置における前記ユーザの首部を支持する領域の高さが前記ユーザの後頭部を支持する領域の高さよりも高くなるように、前記調節部を制御する
付記1から5のいずれか1項に記載の評価装置。
【0129】
[付記7]
前記制御部は、1時間あたり10秒以上の無呼吸状態を20回以上検知した場合に、自装置における前記ユーザの首部を支持する領域の高さが前記ユーザの後頭部を支持する領域の高さよりも高くなるように、前記調節部を制御する
付記6に記載の評価装置。
【0130】
[付記8]
前記圧電素子が備える圧電体は、非焦電性の有機圧電材料により形成されるライン状またはフィルム状の圧電体である
付記1から7のいずれか1項に記載の評価装置。
【0131】
[付記9]
前記圧電素子は、
長尺状の導体と、
前記導体に対して一方向に螺旋状に巻回された長尺状の圧電体と、
を備える
付記1から8のいずれか1項に記載の評価装置。
【0132】
[付記10]
ユーザの頭部を支持する枕本体部又は枕カバーの形状を調節する調節部を備え、前記枕本体部又は前記枕カバーに配置される非焦電性の圧電素子の出力に基づき、ユーザの睡眠状態を評価する枕型の評価装置を制御するためのプログラムであって、
前記圧電素子から出力された検出信号に基づいて、ユーザの生体情報を取得するステップと、
前記ユーザの生体情報に基づいて、前記ユーザの睡眠状態に関する情報を取得するステップと、
取得した睡眠状態に関する情報に応じて、前記調節部による調節の内容を制御するステップと、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0133】
10 枕
11 枕本体
20 評価ユニット
21 信号分離部
22 生体情報取得部
23 記憶部
24 制御部
30 エアポンプ
31 エアバッグ
40 圧電素子
41 内部導体
42 圧電体
43 導体層
44 被覆層
45 コネクタ
50 コンピュータ
51 CPU
52 メモリ
53 入出力IF
54 R/W部
55 ネットワークIF
56 バス
60 枕カバー
100 スマートフォン