IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 水ing株式会社の特許一覧

特開2024-158514リン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置
<>
  • 特開-リン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置 図1
  • 特開-リン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置 図2
  • 特開-リン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置 図3
  • 特開-リン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置 図4
  • 特開-リン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置 図5
  • 特開-リン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置 図6
  • 特開-リン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置 図7
  • 特開-リン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158514
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】リン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 25/26 20060101AFI20241031BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20241031BHJP
   C01B 25/32 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C01B25/26
C01B25/45 A
C01B25/32 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073770
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金澤 推
(72)【発明者】
【氏名】山田 武彦
(72)【発明者】
【氏名】萩野 隆生
(72)【発明者】
【氏名】ギッチャーヌギット サンティサック
(72)【発明者】
【氏名】古賀 大輔
(72)【発明者】
【氏名】飯倉 智弘
(57)【要約】
【課題】リン化合物の洗浄を十分行うことができ、回収されるリン化合物の純度を向上させることが可能なリン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置を提供する。
【解決手段】不純物を含むリン化合物粒子を洗浄装置5内に供給する供給工程と、洗浄装置の下部から洗浄水を洗浄装置5内のリン化合物粒子を洗浄可能な第1の通水速度で供給し、洗浄装置5内に予め貯留されたリン化合物粒子及び不純物と、洗浄装置5内に新たに供給されたリン化合物粒子とを混合し、洗浄する槽洗浄工程と、槽洗浄工程後に、洗浄装置5の下部から洗浄水を第1の通水速度よりも大きい第2の通水速度で供給することにより洗浄装置5内の不純物を洗浄装置5の上部へ押し流し、洗浄装置5の上部から不純物を洗浄装置5の外部へ排出させる不純物排出工程とを含むリン化合物の洗浄方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物を含むリン化合物粒子を洗浄装置内に供給する供給工程と、
前記洗浄装置の下部から洗浄水を前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子を洗浄可能な第1の通水速度で供給し、前記洗浄装置内に予め貯留されたリン化合物粒子及び不純物と、前記洗浄装置内に新たに供給されたリン化合物粒子とを混合し、洗浄する槽洗浄工程と、
前記槽洗浄工程後に、前記洗浄装置の下部から前記洗浄水を前記第1の通水速度よりも大きい第2の通水速度で供給することにより前記洗浄装置内の前記不純物を前記洗浄装置の上部へ押し流し、前記洗浄装置の上部から前記不純物を前記洗浄装置の外部へ排出させる不純物排出工程と
を含むリン化合物の洗浄方法。
【請求項2】
前記槽洗浄工程後、前記不純物排出工程の前に、前記洗浄水の供給を止めて静置する静置工程を更に含む請求項1に記載のリン化合物の洗浄方法。
【請求項3】
前記不純物排出工程の後に、前記第2の通水速度より通水速度が小さい第3の通水速度で前記洗浄水を前記洗浄装置内に供給し、前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子を更に洗浄する追加洗浄工程を更に含む請求項1に記載のリン化合物の洗浄方法。
【請求項4】
前記追加洗浄工程後、前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子をエアリフトポンプを用いて前記洗浄装置外へと移送する移送工程を更に含む請求項3に記載のリン化合物の洗浄方法。
【請求項5】
前記槽洗浄工程及び前記不純物排出工程は、曝気を行わないことを含む請求項1に記載のリン化合物の洗浄方法。
【請求項6】
前記第2の通水速度が、前記第1の通水速度の1.25~3.0倍であることを含む請求項1~5のいずれか1項に記載のリン化合物の洗浄方法。
【請求項7】
不純物を含むリン化合物粒子を洗浄装置内で洗浄するリン化合物の洗浄方法において、
前記洗浄装置内に予め貯留されるリン化合物粒子層の上層に堆積する不純物の貯留量を測定し、
前記不純物の貯留量の測定結果に基づいて、前記洗浄装置内へ供給する洗浄水の通水速度を制御する工程を含むリン化合物の洗浄方法。
【請求項8】
前記不純物の貯留量を測定することが、前記リン化合物粒子層の上層に堆積する不純物層の界面の高さを測定することを含む請求項7に記載のリン化合物の洗浄方法。
【請求項9】
前記不純物の貯留量を測定することが、
前記洗浄装置が備える窓部を介して前記洗浄装置の外部から識別される前記不純物を含む不純物層の界面の高さの画像データを取得し、
前記画像データを画像判定により測定すること
を含む請求項7に記載のリン化合物の洗浄方法。
【請求項10】
前記不純物の貯留量を測定することが、
前記洗浄装置が備える窓部を介して前記洗浄装置の外部から識別される前記不純物を含む不純物層の界面の高さの画像データから得られる特徴量と、前記画像データに関連づけられた前記洗浄装置内の前記不純物の貯留量を表す特徴量とを含む学習データを用いて機械学習アルゴリズムにより構築されたモデルに、測定対象となる前記不純物層の界面の高さを撮影した画像データを入力し、前記測定対象の前記不純物の貯留量の予測値を出力させることを含む請求項7に記載のリン化合物の洗浄方法。
【請求項11】
前記学習データが、前記不純物層の界面の高さに関連づけられた前記洗浄水の通水速度及び通水時間を示すデータを更に含み、前記測定対象となる前記不純物層の界面の高さを撮影した画像データを前記モデルに入力することにより、前記測定対象に適した前記洗浄水の通水速度及び通水時間を更に出力させることを更に含む請求項10に記載のリン化合物の洗浄方法。
【請求項12】
前記不純物の貯留量の測定結果が予め定められた基準値を超える場合に、
前記洗浄装置の下部から前記洗浄水を前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子を洗浄可能な第1の通水速度で供給し、前記洗浄装置内に予め貯留された前記リン化合物粒子及び前記不純物と、前記洗浄装置内に新たに供給された前記リン化合物粒子とを混合し、洗浄する槽洗浄工程と、
前記槽洗浄工程後に、前記洗浄装置の下部から前記洗浄水を前記第1の通水速度よりも大きい第2の通水速度で供給することにより前記洗浄装置内の前記不純物を前記洗浄装置の上部へ押し流し、前記洗浄装置の上部から前記不純物を前記洗浄装置の外部へ排出させる不純物排出工程と
を実施することを含む請求項7に記載のリン化合物の洗浄方法。
【請求項13】
前記不純物の貯留量の測定結果が前記基準値以下の場合に、前記洗浄装置の下部から前記洗浄水を前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子を洗浄可能な前記第1の通水速度で供給し、前記洗浄装置内に予め貯留された前記リン化合物粒子及び前記不純物と、前記洗浄装置内に新たに供給された前記リン化合物粒子とを混合し、洗浄する前記槽洗浄工程を実施することを含む請求項12に記載のリン化合物の洗浄方法。
【請求項14】
不純物を含むリン化合物粒子を貯留して洗浄する洗浄槽と、
前記リン化合物粒子を洗浄する洗浄水を前記洗浄槽の下部から供給する給水管と、
前記洗浄槽内に供給された前記洗浄水を前記洗浄槽の上部から排出する排水管と、
前記洗浄槽の底部に堆積する洗浄後の前記リン化合物粒子を前記洗浄槽外へ移送する移送装置と、
前記洗浄槽内の前記リン化合物粒子上に堆積する不純物の貯留量の測定結果に基いて、前記洗浄水の通水速度を制御する洗浄制御部と
を備えるリン化合物の洗浄装置。
【請求項15】
前記給水管を2本以上備え、
前記不純物の貯留量の測定結果が予め定められた基準値を超える場合は2本以上の前記給水管を介して前記洗浄槽内に前記洗浄水を供給し、前記不純物の貯留量の測定結果が前記基準値以下の場合は1本の前記給水管を介して前記洗浄槽内に前記洗浄水を供給することを含む請求項14に記載のリン化合物の洗浄装置。
【請求項16】
前記不純物の貯留量を測定する測定装置を更に備える請求項14又は15に記載のリン化合物の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃水又は汚泥から窒素成分及びリン成分を分離する方法として、有機性廃水又は汚泥にマグネシウムイオンやカルシウムイオン等を添加して、廃水中に含まれるリンをリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)又はヒドロキシアパタイト(HAP)等のリン化合物として晶析させ、晶析物を分離回収する技術が知られている。このような晶析技術は、薬剤使用量、機械動力、熱エネルギー等も比較的少なく、安価であり、リン成分の回収を安定的に行うことができる。回収されるリン化合物は優れた肥料としての付加価値がある。そのため、資源の有効利用の点からも優れたリン化合物の回収技術又は生産技術として有用である。
【0003】
例えば、特開2004-160304号公報(特許文献1)には、有機性廃水を嫌気性処理する嫌気性消化工程において汚泥中に発生するMAP粒子を液体サイクロンなどによって分離し、MAP粒子を含むMAP分離濃縮液を得た後、MAP分離濃縮液にマグネシウムイオンを新たに添加し、溶解しているリン成分との反応によって、MAP分離濃縮液に存在するMAP粒子の表面に新たなMAPを積層させてMAP粒子として回収する工程が記載されている。
【0004】
特開2002-370094号公報(特許文献2)には、被処理水中のリンを晶析反応槽内で流動しているリン酸マグネシウムアンモニウム粒子の表面で晶析させて除去する装置の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-160304号公報
【特許文献2】特開2002-370094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
晶析反応槽で生成されたリン化合物の粒子は、液体サイクロン等の分離装置で晶析反応液から分離され、表面に付着した汚泥等を除去するために洗浄装置内へ投入される。この時、原汚泥中等に元来含まれる夾雑物であってリン化合物の粒子と粒径又は比重が近い不純物がリン化合物の粒子とともに洗浄装置内に投入されることがある。
【0007】
洗浄装置内では、洗浄装置下部からの洗浄水の供給により、リン化合物粒子表面に付着した汚れを洗い流すとともに一部の夾雑物を排出させるが、粒径や比重がリン化合物に近い夾雑物は洗浄排水とともに洗浄装置から排出することなく洗浄装置内に留まることがある。洗浄装置内に留まる夾雑物の量が増えると、リン化合物粒子の洗浄が十分に行えないことがある。その結果、回収されるリン化合物に不純物が混入し、リン化合物の純度が低下することがある。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、リン化合物の洗浄を十分行うことができ、回収されるリン化合物の純度を向上させることが可能なリン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置を提供する。
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、洗浄装置内の不純物を所定の手順で排出させることが有用であるとの知見を得た。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は一側面において、不純物を含むリン化合物粒子を洗浄装置内に供給する供給工程と、洗浄装置の下部から洗浄水を洗浄装置内のリン化合物粒子を洗浄可能な第1の通水速度で供給し、洗浄装置内に予め貯留されたリン化合物粒子及び不純物と、洗浄装置内に新たに供給されたリン化合物粒子とを混合し、洗浄する槽洗浄工程と、槽洗浄工程後に、洗浄装置の下部から洗浄水を第1の通水速度よりも大きい第2の通水速度で供給することにより洗浄装置内の不純物を洗浄装置の上部へ押し流し、洗浄装置の上部から不純物を洗浄装置の外部へ排出させる不純物排出工程とを含むリン化合物の洗浄方法である。
【0011】
本発明に係るリン化合物の洗浄方法は一実施態様において、槽洗浄工程後、不純物排出工程の前に、洗浄水の供給を止めて静置する静置工程を更に含む。
【0012】
本発明に係るリン化合物の洗浄方法は別の一実施態様において、不純物排出工程の後に、第2の通水速度より通水速度が小さい第3の通水速度で洗浄水を洗浄装置内に供給し、洗浄装置内のリン化合物粒子を更に洗浄する追加洗浄工程を更に含む。
【0013】
本発明に係るリン化合物の洗浄方法は更に別の一実施態様において、追加洗浄工程後、洗浄装置内のリン化合物粒子をエアリフトポンプを用いて洗浄装置外へと移送する移送工程を更に含む。
【0014】
本発明に係るリン化合物の洗浄方法は更に別の一実施態様において、槽洗浄工程及び不純物排出工程は、曝気を行わないことを含む。
【0015】
本発明に係るリン化合物の洗浄方法は更に別の一実施態様において、第2の通水速度が、第1の通水速度の1.25~3.0倍である。
【0016】
本発明は別の一側面において、不純物を含むリン化合物粒子を洗浄装置内で洗浄するリン化合物の洗浄方法において、洗浄装置内に予め貯留されるリン化合物粒子層の上層に堆積する不純物の貯留量を測定し、不純物の貯留量の測定結果に基づいて、洗浄装置内へ供給する洗浄水の通水速度を制御する工程を含むリン化合物の洗浄方法である。
【0017】
本発明に係るリン化合物の洗浄方法は更に別の一実施態様において、不純物の貯留量を測定することが、リン化合物粒子層の上層に堆積する不純物層の界面の高さを測定することを含む。
【0018】
本発明に係るリン化合物の洗浄方法は更に別の一実施態様において、不純物の貯留量を測定することが、洗浄装置が備える窓部を介して洗浄装置の外部から識別される不純物を含む不純物層の界面の高さの画像データを取得し、画像データを画像判定により測定することを含む。
【0019】
本発明に係るリン化合物の洗浄方法は更に別の一実施態様において、不純物の貯留量を測定することが、洗浄装置が備える窓部を介して洗浄装置の外部から識別される不純物を含む不純物層の界面の高さの画像データから得られる特徴量と、画像データに関連づけられた洗浄装置内の不純物の貯留量を表す特徴量とを含む学習データを用いて機械学習アルゴリズムにより構築されたモデルに、測定対象となる不純物層の界面の高さを撮影した画像データを入力し、測定対象の不純物の貯留量の予測値を出力させることを含む。
【0020】
本発明に係るリン化合物の洗浄方法は更に別の一実施態様において、学習データが、不純物層の界面の高さに関連づけられた洗浄水の通水速度及び通水時間を示すデータを更に含み、測定対象となる不純物層の界面の高さを撮影した画像データをモデルに入力することにより、測定対象に適した洗浄水の通水速度及び通水時間を更に出力することを更に含む。
【0021】
本発明に係るリン化合物の洗浄方法は更に別の一実施態様において、不純物の貯留量の測定結果が予め定められた基準値を超える場合に、洗浄装置の下部から洗浄水を洗浄装置内のリン化合物粒子を洗浄可能な第1の通水速度で供給し、洗浄装置内に予め貯留されたリン化合物粒子及び不純物と、洗浄装置内に新たに供給されたリン化合物粒子とを混合し、洗浄する槽洗浄工程と、槽洗浄工程後に、洗浄装置の下部から洗浄水を第1の通水速度よりも大きい第2の通水速度で供給することにより洗浄装置内の不純物を洗浄装置の上部へ押し流し、洗浄装置の上部から不純物を洗浄装置の外部へ排出させる不純物排出工程とを実施することを含む。
【0022】
本発明に係るリン化合物の洗浄方法は更に別の一実施態様において、不純物の貯留量の測定結果が基準値以下の場合に、洗浄装置の下部から洗浄水を洗浄装置内のリン化合物粒子を洗浄可能な第1の通水速度で供給し、洗浄装置内に予め貯留されたリン化合物粒子及び不純物と、洗浄装置内に新たに供給されたリン化合物粒子とを混合し、洗浄する槽洗浄工程を実施することを含む。
【0023】
本発明は別の一側面において、不純物を含むリン化合物粒子を貯留して洗浄する洗浄槽と、リン化合物粒子を洗浄する洗浄水を洗浄槽の下部から供給する給水管と、洗浄槽内に供給された洗浄水を洗浄槽の上部から排出する排水管と、洗浄槽の底部に堆積する洗浄後のリン化合物粒子を洗浄槽外へ移送する移送装置と、洗浄槽内のリン化合物粒子上に堆積する不純物の貯留量の測定結果に基いて、洗浄水の通水速度を制御する洗浄制御部とを備えるリン化合物の洗浄装置である。
【0024】
本発明に係るリン化合物の洗浄装置は一実施態様において、給水管を2本以上備え、不純物の貯留量の測定結果が予め定められた基準値を超える場合は2本以上の給水管を介して洗浄槽内に洗浄水を供給し、不純物の貯留量の測定結果が基準値以下の場合は1本の給水管を介して洗浄槽内に洗浄水を供給することを含む。
【0025】
本発明に係るリン化合物の洗浄装置は別の一実施態様において、不純物の貯留量を測定する測定装置を更に備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、リン化合物の洗浄を十分行うことができ、回収されるリン化合物の純度を向上させることが可能なリン化合物の洗浄方法及びリン化合物の洗浄装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係るリン化合物の洗浄装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態に係るリン化合物の洗浄方法の一例を示す概略図である。
図3】本発明の実施の形態に係るリン化合物の洗浄方法の一例を示す概略図である。
図4】本発明の実施の形態に係るリン化合物の洗浄方法の一例を示す概略図である。
図5】本発明の実施の形態に係るリン化合物の洗浄方法の一例を示す概略図である。
図6】本発明の実施の形態に係る画像判定装置の一例を示すブロック図である。
図7】本発明の実施の形態に係るリンの生産システムの一例を示す概略図である。
図8】本発明の実施の形態に引抜装置を介して反応槽の底部から引き抜かれて分離装置へ供給されるリン化合物粒子を含む晶析反応液の構成比率を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を以下に説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0029】
(リン化合物の洗浄装置)
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るリン化合物の洗浄装置5は、不純物を含むリン化合物粒子を貯留して洗浄する洗浄槽50と、リン化合物粒子を洗浄する洗浄水を洗浄槽50の下部から供給する給水管(第1の給水管55、第2の給水管56)と、洗浄槽50内に供給された洗浄水を洗浄槽50の上部から排出する排水管54と、洗浄槽50の底部に堆積する洗浄後のリン化合物粒子を洗浄装置5外へ移送する移送装置8と、洗浄後のリン化合物粒子上に堆積する不純物の貯留量の測定結果に基いて、洗浄水の通水速度を制御する洗浄制御部73とを備える。
【0030】
洗浄槽50の上部には、液体サイクロン等の分離装置4aが配置されている。分離装置4aは、リンを含む被処理水からリン化合物の種結晶の存在下でリン化合物粒子を晶析させる反応槽1(図7参照)から引き抜いた晶析反応液の懸濁液を導入し、遠心分離等により分離汚泥とリン化合物粒子とに分離する装置である。反応槽1から所定の頻度で所定量の晶析反応液の懸濁液を引き抜く引抜処理が行われると、リン化合物粒子を含む晶析反応液の懸濁液が分離装置4aへと供給され、分離装置4aにおいて分離されたリン化合物粒子が洗浄槽50内へと供給される。
【0031】
洗浄槽50内には、常時リン化合物粒子及びリン化合物粒子に付着した汚泥やし渣等を含む不純物が貯留されている。不純物はリン化合物粒子よりも典型的には比重が小さいものが多い。そのため、洗浄処理前の静置状態の洗浄槽50内には、図1に示すように、洗浄槽50の底部に堆積するリン化合物粒子を含むリン化合物粒子層と、リン化合物粒子層上に堆積された不純物を含む不純物層とが形成されている。不純物層上には上澄水が貯留されている。洗浄槽50の上部には堰59が配置されている。堰59から越流した越流水は排水管54を介して洗浄槽50の外部へ排出される。
【0032】
洗浄槽50の下部には、洗浄液を洗浄装置5内へ供給する配管53を介して少なくとも2本の第1の給水管55及び第2の給水管56が接続されていることが好ましい。第2の給水管56は、第1の給水管55よりも多い流量(又は第1の給水管55より大きい通水速度)の洗浄水を流すことが可能であるように、第1の給水管55よりも配管口径(JIS配管の呼び径)が大きい配管であることが好ましい。以下には限定されないが、第1の吸水管は流量90~155L/min(通水速度0.2~0.5m/min)の洗浄水を供給することが可能な25~65A配管、典型的には40A配管であり、第2の給水管56は流量100~400L/min(通水速度0.25~1.5m/min)の洗浄水を吸水することが可能な40~80A配管、典型的には50A配管が利用できる。
【0033】
配管53、第1の給水管55及び第2の給水管56はそれぞれ給水弁を備えており、配管53、第1の給水管55及び第2の給水管56を流れる流量および通水速度を洗浄に好適な値に設定することができる。配管53、第1の給水管55及び第2の給水管56の給水弁はそれぞれ洗浄制御部73に接続されている。洗浄制御部73は、所定の洗浄タイミングに応じて、配管53、第1の給水管55及び第2の給水管56が備える給水弁の開閉を制御することにより洗浄槽50内へ供給する洗浄水の流量及び通水速度を制御する。
【0034】
洗浄槽50の外壁面には、洗浄槽50内のリン化合物粒子及び不純物を洗浄槽50の外部から識別可能な窓部51を備える。窓部51は、洗浄槽50の外壁面の垂直方向に1又は複数設けられる。窓部51の近傍には、洗浄装置5内に貯留された、主としてリン化合物粒子で構成されるリン化合物粒子層と、リン化合物粒子層上に堆積した、主として不純物で構成される不純物層の界面の高さを測定するための目盛り52が設けられていてもよい。窓部51は汚れ防止のための洗浄機構(不図示)を備えていても良い。
【0035】
移送装置8は、一端が洗浄槽50内の底部に接続され、他端が洗浄槽50の外部に配置されている。移送装置8としては、エアリフトポンプが好適に用いられる。エアリフトポンプを用いることにより、一般的な加圧ポンプ等を用いる場合に比べて装置を小型化及び構成部品を簡略化できるとともに、メンテナンス作業の回数も少なくできる。
【0036】
移送装置8としてエアリフトポンプを用いる場合、エアリフトポンプを用いて洗浄槽50から洗浄槽50外へのリン化合物粒子の移送を円滑に行うためには、洗浄槽50内のリン化合物粒子層の界面の高さを一定に保つことが好ましい。しかしながら、晶析反応で生成されるリン化合物の生成量の変動により分離装置4aから供給されるリン化合物粒子が増大してリン化合物粒子層の界面の高さが高くなると、リン化合物粒子層の圧密が生じる。圧密が生じると、洗浄槽50の下部から供給される洗浄水が洗浄槽50内全体に十分に拡散せず、送水に偏りが生じて洗浄が十分に行えない場合もある。
【0037】
リン化合物粒子に付随する不純物の粒径や比重がリン化合物粒に近い夾雑物は、洗浄排水とともに洗浄槽50から排出することなく洗浄槽50内に留まることもある。その結果、洗浄槽50内で徐々に不純物の貯留量が増えることがある。洗浄槽50内の不純物の貯留量が相対的に増大すると、リン化合物粒子層の圧密が生じ、洗浄槽50内での洗浄処理が十分に行えない場合もある。
【0038】
本実施形態によれば、洗浄装置5へ供給される洗浄水の通水速度を制御する洗浄制御部73を備える。例えば、洗浄装置5内の不純物の貯留量が予め定められた基準値よりも多い場合には、洗浄制御部73によって通水速度を適切に制御することにより、洗浄装置5内の不純物を効率良く洗浄装置5の外部へ排出させることが可能となる。その結果、移送装置8を介して回収されるリン化合物粒子に不純物が混入することを抑制でき、リン化合物の純度を向上できる。
【0039】
(リン化合物の洗浄方法)
洗浄制御部73は、例えば、図2(a)~図5(b)に示す手順に従って洗浄処理を行うことができる。ここではリン酸化合物としてMAPを例に説明するが、MAPの代わりにHAPを洗浄してもよいことは勿論である。図2(a)は、洗浄処理前の静置状態(洗浄待機状態)の洗浄装置5の内部の状態を表す模式図である。洗浄装置5内には常に一定のMAP粒子が保持されている(以下において、洗浄装置5内に予め保持されるMAPを「保持MAP」という)。保持MAPで構成される保持MAP層上には、MAPよりも比重が軽い不純物で構成される不純物層が堆積されている。
【0040】
図2(b)に示すように、分離装置4aから不純物を含む新たなリン化合物粒子(以下において「新規MAP」ともいう)が洗浄装置5内に供給されると、新規MAPは不純物層上に堆積される(供給工程)。分離装置4aには微量のMAPが残存するため、図2(c)において、分離装置4aを水で洗い流し、水で洗い流された微量のMAPと汚泥等の不純物が洗浄装置5内へ供給される。
【0041】
図3(a)において、洗浄装置5の下部から洗浄水を洗浄装置5内のリン化合物粒子を洗浄可能な第1の通水速度で供給し、洗浄装置5内に予め貯留されたリン化合物粒子(保持MAP)及び不純物と、洗浄装置5内に新たに供給されたリン化合物粒子(新規MAP)とを混合し、洗浄する(槽洗浄工程)。洗浄制御部73は、第1の給水管55の給水弁を開き、洗浄装置5の下部から洗浄水を第1の通水速度及び第1の通水時間で供給する。
【0042】
第1の通水速度は、例えば0.2~0.5m/minとすることが好ましく、0.25~0.4m/minとすることがより好ましく、0.30~0.35m/minとすることが更に好ましい。この際の洗浄装置5内への洗浄水の供給流量としては、例えば75~195L/minとすることが好ましく、90~155L/minとすることがより好ましく、110~130L/minとすることが更に好ましい。第1の通水時間は、洗浄装置5内に供給された新規MAPが洗浄装置5外へ排出されず、なおかつ不純物を新規MAP粒子と比重分離させるために必要な高さまで上部へ押し流すことが可能な時間を確保することができれば特には限定されない。典型的には、第1の通水時間を1~10分程度とすることができ、1~5分程度とすることが好ましく、2分~4分とすることが更に好ましく、3分程度とすることがより更に好ましい。なお、洗浄装置5が配置される地域や処理場によって、新規MAPの洗浄装置5内への供給量及び不純物の構成は異なる。このため、第1の通水速度、供給流量及び第1の通水時間は、上記具体例に限定されないことは勿論である。
【0043】
図3(a)に示す槽洗浄工程後は、図3(b)に示すように、洗浄水の供給を止めて静置する静置工程を更に備えることが好ましい。槽洗浄工程後に静置を行うことにより、洗浄装置5で撹拌された保持MAPと新規MAPと不純物との比重分離を促進できる。また静置工程により不純物をできるだけ早く沈降させて圧密することで、後述する不純物排出工程における不純物の排出を効率的に進めることができる。静置工程後は、図3(b)に示すように、保持MAPと新規MAPで構成されるMAPが洗浄装置5の底部に沈降し、MAP上には不純物が堆積する。
【0044】
図3(b)の静置工程は省略してもよい。例えば、図3(a)の槽洗浄工程において、第1の通水速度で新規MAPと保持MAPと不純物との混合及び洗浄を行なった後、MAPと不純物とを比重分離することができる程度に通水速度を徐々に小さくしながら通水し通水完了後には図3(b)に示すようなMAPと不純物との分離が行われればよい。或いは、槽洗浄工程において、新規MAPと保持MAPと不純物との混合及び洗浄を行うとともにMAPと不純物との比重分離が可能となるような第1の通水速度を設定すればよい。
【0045】
槽洗浄工程後は、図3(c)に示すように、洗浄装置5の下部から、洗浄水を第1の通水速度よりも大きい第2の通水速度で供給する。これにより、洗浄装置5内の不純物を洗浄装置5の上部へ押し流し、洗浄装置5の上部から排水管54を介して不純物を含む越流水を越流させて洗浄装置5の外部へ排出させる(不純物排出工程)。不純物排出工程は、洗浄装置5内の不純物の排出を含めて洗浄装置5内の底部に保持されているMAPの圧密抑制も目的とする。そのため、第2の通水速度は、第1の通水速度よりも高くすることが必要である。第2の通水速度は、第1の通水速度の1.25~3.0倍とすることが好ましく、1.5~2.0倍とすることがより好ましく、1.6~1.8倍とすることがより更に好ましい。
【0046】
第2の通水速度で通水する場合の第2の通水時間は長く設定しすぎると、洗浄装置5内のMAPも洗浄装置5の上部へ押し流されて、洗浄装置5の上部から洗浄装置5外へ漏洩する可能性がある。第2の通水速度は、MAP上に堆積される不純物量に応じて適宜調整することが好ましい。
【0047】
第2の通水速度は、例えば0.25~1.5m/minとすることが好ましく、0.3~0.8m/minとすることがより好ましく、0.50~0.55m/minとすることが更に好ましい。供給流量としては、例えば90~400L/minとすることが好ましく、115~310L/minとすることがより好ましく、190~250L/minとすることが更に好ましい。第2の通水時間は、典型的には、1~15分とすることができ、1~10分とすることが好ましく、1分~7分とすることが更に好ましい。第1の通水速度、供給流量及び第1の通水時間と同様に、第2の通水速度、供給流量及び第2の通水時間も、上記具体例に限定されないことは勿論である。
【0048】
不純物排出工程では、第2の通水速度及び供給流量を十分に確保するために、2本以上の給水管(第1の給水管55、第2の給水管56)を介して洗浄装置5内に洗浄水を供給することが好ましい。2本以上の給水管を用いて洗浄液(洗浄水)の通水速度を制御することにより、給水管の流量を調整するよりも、簡易且つ迅速かつ安定的に所望の通水速度の洗浄水を洗浄装置5内に供給できる。例えば洗浄制御部73は、第1の給水管55及び第2の給水管56の給水弁を開き、洗浄装置5内に洗浄液を供給する。
【0049】
不純物排出工程後は、図4(a)に示すように、第2の通水速度より通水速度が小さい第3の通水速度で洗浄水を洗浄装置5内に供給し、洗浄装置5の上部から不純物を排出させながら洗浄装置5内のリン化合物粒子を更に洗浄することが好ましい(追加洗浄工程)。これにより、リン化合物粒子に付着する汚泥等の不純物を更に取り除くことができるため、洗浄装置5から回収されるリン化合物粒子の純度が向上する。
【0050】
追加洗浄工程は、洗浄装置5内に貯留されるMAPを洗浄装置5から漏洩させない程度の通水速度で洗浄を行えばよい。そのため、第3の通水速度は第2の通水速度よりも低く設定する必要がある。第3の通水速度は第1の通水速度と同様の通水速度でもよい。MAPの表面に付着した汚泥を確実に洗浄するため、第2の通水時間は第1の通水時間よりも長めに設定することが望ましい。
【0051】
第3の通水速度は、例えば0.2~0.5m/minとすることが好ましく、0.25~0.4m/minとすることがより好ましく、0.30~0.35m/minとすることが更に好ましい。供給流量としては、例えば95~195L/minとすることが好ましく、75~155L/minとすることがより好ましく、110~130L/minとすることが更に好ましい。第3の通水時間は、典型的には、1~10分程度とすることができ、1~5分程度とすることが好ましく、5分~7分とすることが更に好ましい。第1の通水速度、供給流量及び第1の通水時間と同様に、第3の通水速度、供給流量及び第3の通水時間も上記に限定されないことは勿論である。
【0052】
図3(c)の不純物排出工程と図4(a)の追加洗浄工程の間は、静置工程を設けずに連続して洗浄処理を実施することが好ましい。不純物排出工程と追加洗浄工程とが連続して実施されることにより、不純物排出工程でMAPが流動化した状態で追加洗浄工程で連続的に洗浄処理が行えるため、洗浄時間及び洗浄水量の効率化が図れる。
【0053】
図4(a)の追加洗浄工程の後は、図4(b)に示すように静置を行う。これによりMAP粒子層の界面を整えることができる。追加洗浄工程後、洗浄装置5内のMAP粒子層の界面が整ったら、図4(c)において、洗浄装置5内のMAPをエアリフトポンプ等の移送装置8を用いて洗浄装置5外へと移送する(移送工程)。移送工程では、例えば、洗浄後のMAP粒子を移送装置8のエアリフトポンプに計装空気を導入することにより引き抜き、MAP粒子に付着する水分を取り除くための水切装置(不図示)等へ移送する。
【0054】
移送が完了したら、図5(a)に示すように、移送工程で乱れた保持MAP層の界面を整えるために、第1の給水管55を用いて洗浄装置5内に洗浄水を供給する。その後、洗浄水の供給を止めることにより、図5(b)に示すように、洗浄装置5内を洗浄待機状態とする。
【0055】
リン化合物粒子の実質的な洗浄処理を行う槽洗浄工程、不純物排出工程及び追加洗浄工程のいずれも、洗浄装置5への洗浄液の供給のみで洗浄処理を十分に行うことができる。そのため槽洗浄工程、不純物排出工程及び追加洗浄工程では、曝気は行わなくてよい。本実施形態によれば、曝気のための動力を省略できるため、リン回収に必要な機械動力及び熱エネルギーを削減できる。
【0056】
図2(a)~図5(b)に示す洗浄処理は、洗浄装置5内に予め貯留されるリン化合物層の上層に堆積する不純物の貯留量を測定し、不純物の貯留量の測定結果に基づいて、洗浄装置5内へ供給する洗浄水の通水速度を制御することが好ましい。不純物の貯留量の測定は、図2(a)又は図5(b)に示されるような洗浄待機状態において、例えば洗浄装置5内に形成された不純物を含む不純物層の界面の高さを測定することが好ましい。
【0057】
洗浄装置5内の不純物層の界面の高さは、図1に示す窓部51を介して、操作者が洗浄装置5の外部から洗浄装置5の内部の状況を識別することにより行ってもよい。操作者は、一定期間毎に、窓部51から不純物層の界面の高さを、窓部51に隣接して配置された目盛り52を用いて測定することができる。
【0058】
洗浄制御部73は、洗浄装置5内の不純物の貯留量、ここでは、不純物層の界面の高さの測定結果に基づいて、洗浄装置5内へ供給する洗浄水の通水条件を設定する。例えば、不純物の貯留量の測定結果である不純物層の界面の高さが基準値を超える場合には、洗浄制御部73は、洗浄装置5内に新たに供給されたリン化合物粒子に対して、図3(a)に示すような槽洗浄処理と、図3(c)に示すように2本(2本以上)の給水管(第1の給水管55、第2の給水管56)を用いて洗浄槽50内に洗浄水を供給する不純物排出処理とを少なくとも行う。
【0059】
即ち、洗浄制御部73は、不純物層の界面の高さが基準値を超える場合には、洗浄装置5の下部から洗浄水を洗浄装置5内のリン化合物粒子を洗浄可能な第1の通水速度で供給し、洗浄装置5内に予め貯留されたリン化合物粒子及び不純物と、洗浄装置5内に新たに供給されたリン化合物粒子とを混合し、洗浄する槽洗浄工程と、槽洗浄工程後に、洗浄装置5の下部から洗浄水を第1の通水速度よりも大きい第2の通水速度で供給することにより洗浄装置5内の不純物を洗浄装置5の上部へ押し流し、洗浄装置5の上部から不純物を洗浄装置5の外部へ排出させる不純物排出工程とを実施するように洗浄条件を制御する。
【0060】
一方、洗浄装置5内の不純物の貯留量の測定結果である不純物層の界面の高さが基準値以下の場合には、図3(a)に示すような1本の給水管(第1の給水管55)gを用いた槽洗浄処理を行えば十分である。即ち、洗浄制御部73は、不純物層の界面の高さが基準値以下である場合には、洗浄装置5の下部から洗浄水を洗浄装置5内のリン化合物粒子を洗浄可能な第1の通水速度で供給し、洗浄装置5内に予め貯留されたリン化合物粒子及び不純物と、洗浄装置5内に新たに供給されたリン化合物粒子とを混合し、洗浄する槽洗浄工程を実施するように制御条件を制御する。洗浄処理として槽洗浄工程を実施する場合は、第1の通水時間は標準時間よりも長めにとり、槽洗浄時間内にリン化合物粒子に付着する汚泥を十分に洗浄ができる程度に、例えば12~15分程度とすることができる。槽洗浄工程の後に、図4(a)に示す追加洗浄工程を更に実施してもよい。
【0061】
或いは、不純物層の界面の高さが基準値以下の場合には、槽洗浄工程の代わりに追加洗浄工程のみを実施してもよい。即ち、不純物層の界面の高さが基準値以下の場合は、図2(a)~図2(b)に示す工程の後に、図2(c)、図3(a)、図3(b)、図3(c)に示す各工程を省略して図4(a)の追加洗浄工程を行う。洗浄装置5内に供給される不純物の構成は地域、処理場、季節毎に相違があることが分かっている。そのため、洗浄制御部73或いは操作者が、洗浄装置5が置かれた地域、処理場、季節毎によって洗浄処理条件を選択することにより、より効率的な洗浄処理を行うことができる。
【0062】
不純物の貯留量は、洗浄装置5の不純物の貯留量を測定する測定装置6を用いて測定することが好ましい。測定装置6としては、洗浄装置5が備える窓部51を介して洗浄装置5の外部から識別される不純物を含む不純物層の界面の高さの画像データを取得し、画像データを画像判定処理する画像判定装置6bを備えることが好ましい。
【0063】
画像判定装置6bは、図6に示すように、静止画像又は連続画像(動画)を撮影する撮影部61bと、撮影部61bの画像データを用いて所定の演算処理を行う処理部60bとを備える。処理部60bは汎用の計算機等で構成される。処理部60bはグラフィックプロセッサ(GPU)を備えていてもよい。処理部60bの演算結果及び処理部60bの演算処理に必要な各種情報を記憶するための記憶装置(不図示)は、処理部60bの内部にあっても外部にあってもよい。
【0064】
処理部60bによる処理は、図示しないクラウド上のサーバ内で行ってもよい。図示しないが、処理部60bは入出力制御装置を備え、入出力制御装置を介して処理部60bの外部から洗浄装置5内の不純物層の界面の高さ及びリン化合物層の界面の高さが撮影された画像データ又は機械学習を利用した画像判定のための学習済モデル等の各種情報の入出力を受け付けてもよい、処理部60bは、入出力制御装置を介して処理部60bの処理結果を処理部60bの外部へ出力してもよい。処理部60bは更に操作者に処理部60bの演算処理結果を表示するための表示装置を備えても良い。
【0065】
撮影部61bは、洗浄装置5が備える窓部51及び目盛り52の静止画像又は連続画像を撮影することが可能な機器であれば特に限定されない。例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等の映像素子を備えるカメラが撮影部61bとして好適である。撮影部61bの設置位置は窓部51から識別されるリン化合物粒子層及び不純物層の界面の高さを撮影することができればどこでもよい。撮影部61bの数は単数でも複数でもよい。典型的には、図1に示すように、撮影部61bが、窓部51に対向するように配置される。
【0066】
撮影部61bは、撮影領域となる窓部51周辺に光を照射するための照明を更に備えても良い。撮影部61bは、撮影環境が一定となるような覆蓋(不図示)を備えていても良い。撮影部61bのシャッタースピードも適宜調整が可能である。撮影部61bの画像データは、カラーでもモノクロでもよい。画像データに二値化処理を行う場合はモノクロが好適であるがカラーでもよい。撮影部61bが備えるレンズは任意に選択できる。レンズの汚れ防止のために、カメラとレンズとの間は、透明板又はフィルタが配置されてもよい。
【0067】
処理部60bは、図6に示すように、撮影部61bが撮影した洗浄装置5の窓部51を含む画像データを取得し、画像データから識別される洗浄装置5内に貯留されたMAP粒子層の界面の高さを画像判定により判定する画像判定部62bと、画像判定部62bの画像判定結果に基づいて、洗浄装置5内の不純物の貯留量を算出する貯留量算出部63bとを備える。処理部60bは更に機械学習アルゴリズムを用いて所定の目的変数の入力に応じて所定の説明変数を出力する学習済モデルを作製する学習部64bを更に備えていても良い。
【0068】
機械学習アルゴリズムとしては、上述と同様に、サポートベクター回帰法(SVR法)、部分最小二乗法(PLS法)、ランダムフォレスト法、決定木法等の任意のアルゴリズムが利用できる。中でもディープラーニングを好適に用いることができるがこれに限定されない。機械学習は、教師あり学習でも教師なし学習でもよい。機械学習により構築された学習済モデルは定期的に更新されてもよいし、任意のタイミングで更新されてもよい。学習済モデルは1つでも複数でもよい。学習データには画像データに加えて本システムの運転データを含めてもよい。
【0069】
画像判定部62bは、洗浄装置5内の不純物層の界面の高さを検出することができれば、その具体的な操作手順は限定されない。例えば、画像判定部62bは、洗浄装置5内の不純物層の界面の高さの識別性を向上させるために、取得した画像データのトリミング、白黒化、二値化、多値化、標準化、圧縮処理等を含む各種加工処理を行ってもよい。画像判定部62bは、複数の撮影部61bによって撮影した複数の画像データを結合したり、撮影部61bで異なる時刻に撮影した複数の画像データを結合処理したりすることによって、洗浄装置5内のMAP粒子層の界面の高さの変化を判定してもよい。画像判定部62bは、取得した画像データをいくつかのオブジェクトに分割し、分割したオブジェクトを領域別に分類してもよい。例えば、画像判定部62bは、窓部51から識別される画像データに対し、主としてリン化合物粒子を含むリン化合物粒子層、し渣等の不純物で構成される不純物層、上澄液層を領域別にそれぞれ分類し、この分類結果に基づいて、洗浄装置5内のリン化合物粒子層及び不純物層界面の高さをそれぞれ画像判定することも好ましい。
【0070】
貯留量算出部63bは、画像判定部62bによる洗浄装置5内の不純物層の界面の高さの画像判定結果に基づいて、洗浄装置5内に貯留された不純物の貯留量を算出する。貯留量算出部63bは、例えば洗浄装置5内の不純物層の界面の高さの測定結果と洗浄装置5の容量と予め定められた不純物の比重とから洗浄装置5内の不純物の体積を算出する。貯留量算出部63bは、不純物の体積の算出結果から、予め作製された既知の検量線(不純物の体積-不純物の重量)を使用して、洗浄装置5内の不純物の貯留量(重量)を算出することができる。
【0071】
貯留量算出部63bは、画像判定部62bによる洗浄装置5内の不純物層の界面の高さの画像データを含む学習データを用いた機械学習アルゴリズムを利用して画像判定処理を行ってもよい。例えば、貯留量算出部63bは、洗浄装置5が備える窓部51を介して洗浄装置5の外部から識別される不純物を含む不純物層の界面の高さの画像データから得られる特徴量と、画像データに関連づけられた洗浄装置内の不純物の貯留量を表す特徴量とを含む学習データを機械学習アルゴリズムにより構築されたモデルに、測定対象となる不純物層の界面の高さを撮影した画像データを入力し、測定対象の不純物の貯留量の予測値を出力するように構成されていてもよい。
【0072】
不純物層の界面の高さの画像データから得られる特徴量としては、不純物層の色、構成物(汚泥、し渣等)等の情報を含む。不純物の貯留量を表す特徴量としては不純物層の厚さ、重量、体積、界面の高さ等の情報を含む。
【0073】
画像データには、不純物層の界面の高さに関連づけられた洗浄水の通水速度及び通水時間を含む洗浄条処理件を示すデータを含んでいてもよい。学習部64bが、このようなデータを用いて、不純物層の界面の高さに応じて最適な洗浄処理条件を判定するための学習モデルを作製し、このモデルに、測定対象となる不純物層の界面の高さを撮影した画像データをモデルを入力し、測定対象に適した洗浄水の通水速度及び通水時間を出力させることにより、測定対象となる不純物層の界面の高さから好適な洗浄条件を予測してもよい。
【0074】
貯留量算出部63bは、洗浄装置5の前段に接続され、リン化合物粒子を晶析反応により生成させるための反応槽1内から回収されるリン化合物粒子と洗浄装置5内に貯留されるリン化合物粒子との後述する物質収支の関係式に基づいて、不純物の貯留量を算出してもよい。
【0075】
(リン化合物の生産システム)
本発明の実施の形態に係るリン化合物の生産システムは、図7に示すように、反応槽1と、リンイオンと反応してリン化合物を生成させるためのイオンを含む薬剤を反応槽内へ供給する薬剤供給装置2と、リン化合物粒子を含む晶析反応液を反応槽1内から引き抜く引抜装置3と、晶析反応液からリン化合物粒子を分離する分離装置4と、分離装置4で分離されたリン化合物粒子を貯留し、洗浄する洗浄装置5と、洗浄装置5内のリン化合物粒子を洗浄装置5外へ移送する移送装置8と、洗浄装置5内のリン化合物粒子又は不純物の少なくともいずれかの貯留量を算出可能な測定装置6を備える。
【0076】
反応槽1は、リンを含む投入汚泥をリン化合物の種結晶が存在する晶析反応液中で混合することにより、晶析反応液中にリン化合物粒子を晶析させる晶析反応槽である。反応槽1内には、投入汚泥中のリンイオンと反応し、リン化合物粒子を形成させるためのイオンを含む薬剤が薬剤供給装置2を介して供給される。
【0077】
リン化合物の種結晶は、投入汚泥中のリンを所定の粒径のリン化合物粒子に成長させるために晶析反応液中に混合される粒子である。以下に限定されないが、一実施態様では粒径が30μm以上の結晶をいう。リン化合物粒子の粒径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA-910)及び超音波ふるい(昭和電工株式会社製マイクロシーブShodex PS)により測定した粒度分布の50%径(D50)を示す。リン化合物粒子の種結晶の粒径は、反応槽1の形状、体積、運転条件等に応じて当業者が適宜設定可能であり、この例には限定されないことは勿論である。
【0078】
反応槽1内の晶析反応液のpHは反応槽1に設けられたpH計11によって測定される。反応槽1内において回収に適した大きさ、即ち種結晶と同等以上の粒径に成長した粗リン化合物粒子は、反応槽1が備える撹拌機による乱流により反応槽1内の全体を常に流動しており、MAP粒子に付着する基質成分との接触機会を最大限に高めている。
【0079】
反応槽1全体に分散した粗リン化合物粒子を含む晶析反応液の懸濁液は、配管及びポンプ31を備える引抜装置3によって反応槽1の外部へ引き抜かれて分離装置4へと供給される。引抜装置3により反応槽1外へ引き抜かれた一部の晶析反応液は、液体サイクロン等の遠心分離を利用した分離装置4bによってリン化合物粒子と分離汚泥とに分離される。分離装置4bで分離されたリン化合物粒子は反応槽1へ返送される。引抜装置3により反応槽1外へ引き抜かれたその他の晶析反応液は、分離装置4aによってリン化合物粒子と分離汚泥とに分離される。分離装置4aで分離されたリン化合物粒子を多く含む濃縮汚泥は洗浄装置5へ送られる。分離装置4a、4bで分離された分離汚泥は汚泥処理工程へ送られる。
【0080】
反応槽1は、反応槽1内に薬剤を供給するためのポンプ及び配管を備える薬剤供給装置2と、反応槽1内に投入汚泥を供給するための汚泥供給装置10とが接続されている。汚泥供給装置10は、例えば、反応槽1内に供給される投入汚泥を貯留し、反応槽1内へ供給するための貯留槽、ポンプ及び配管等を備えることができるがこの例には限定されない。薬剤供給装置2はリン化合物としてMAPを晶析させる場合には水酸化マグネシウム等のマグネシウムを含む薬剤、HAPを晶析させる場合には酸化カルシウム等のカルシウムを含む薬剤を収容するタンクと、タンクから薬剤を供給するポンプ、配管、及び薬剤を必要に応じて希釈する希釈槽等を備えることができるがこの例には限定されない。
【0081】
汚泥供給装置10及び薬剤供給装置2は制御装置7に接続されている。制御装置7は汎用の計算機(コンピュータ)等で構成されている。制御装置7は、反応槽1が設置される現場に設置されてもよいし、クラウド上にあるサーバ等に設置されていてもよい。制御装置7は演算部70、薬剤供給制御部71、引抜制御部72、洗浄制御部73及び移送制御部74を備える。
【0082】
演算部70は反応槽1、引抜装置3、分離装置4、洗浄装置5、測定装置6、移送装置8の運転制御に必要なパラメータを演算し、演算結果に基づいて、反応槽1、引抜装置3、分離装置4、洗浄装置5、測定装置6、移送装置8へ所定の制御信号を出力する。薬剤供給制御部71は、被除去イオンと反応するイオンと被除去イオンとの比、例えば、MAPを晶析させる場合は、マグネシウムとリンとの比(Mg/P比)の設定条件の入力に基づいて、薬剤供給装置2が反応槽1内へ供給する薬剤の供給流量及び供給時間を制御するための制御信号を出力する。引抜制御部72は、反応槽1内の種結晶濃度が一定範囲に維持されるように、引抜装置3が反応槽1から晶析反応液を引き抜くための処理、具体的には晶析反応液の引抜量及び引抜頻度を制御するための制御信号を出力する。洗浄制御部73は、洗浄装置5の洗浄処理を制御するための制御信号を出力する。移送制御部74は洗浄装置5内のリン化合物粒子を洗浄装置5外へ移送するための制御信号を出力する。
【0083】
洗浄装置5に設けられた測定装置6としては、上述した画像判定装置6bの他に、洗浄装置5の重量を測定可能な重量測定装置6cと、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子又は不純物の少なくともいずれかの貯留量を超音波測定可能な超音波測定装置6dの少なくとも何れかを備えることが好ましい。重量測定装置6cとしては、洗浄装置5の重量変化を測定可能なロードセル等が好適に用いられる。超音波測定装置6dとしては、音波信号の液体中の伝播を利用して洗浄装置5内のリン化合物粒子層又は不純物層の界面の高さを計測する超音波発信型界面計測機、超音波式汚泥界面計等が利用可能である。
【0084】
図8は、引抜装置3を介して反応槽1の底部から引き抜かれ、分離装置4aへ供給されるリン化合物粒子を含む晶析反応液の構成を示す概略図である。分離装置4aでは晶析反応液から分離汚泥が分離され、分離汚泥は汚泥処理へ供給され、リン化合物粒子を含む残りの晶析反応液w0は洗浄装置5内へ投入される。洗浄装置5では上述の洗浄過程で洗浄装置5外へ流出(リーク)するリン化合物粒子(以下「MAPリーク」という)と、洗浄装置5内に貯留される不純物w2と、洗浄装置5内の洗浄処理により汚泥が分離されて後段の乾燥設備へ移送されるリン化合物粒子(以下「純MAPw1」という)とに分類できる。
【0085】
反応槽1、分離装置4a、洗浄装置5内での物質収支を考慮にいれると、反応槽1から引き抜いた純MAPの重さW[kg-純MAP]は、以下の関係式(1)で求められる。
W=Q×T×C×R/100 ・・・(1)
ここで、W:反応槽1から引き抜いた純MAPの重さ[kg-純MAP]
Q:反応槽1から引き抜いたMAPを含む晶析反応液の引抜流量[m3-晶析反応液/分]
T:反応槽1から引き抜いたMAPを含む晶析反応液の引抜時間[分]
C:反応槽1内の純MAP濃度[kg-純MAP/m3-晶析反応液]
R:分離装置4aと洗浄装置5のMAP回収率[%]
【0086】
ここで、洗浄装置5へ投入される純MAPw1の容量をv1、不純物w2の容量をv2、洗浄装置5内に貯留される純MAPw1の容量v1と不純物w2の容量v2の和で表される固形物の全容量をv0とし、純MAPの密度をρ1、不純物の密度をρ2とすると、全容量v0が100%純MAPであったときの重量wMは、
wM=v0×ρ1 ・・・(2)
となる。
【0087】
実際の全容量v0の重量をw0とすると、洗浄装置5内に不純物が入るために生じる重量の差w3は、
w3=wM-w0 ・・・(3)
となる。純MAPと不純物密度の差ρ3はρ1-ρ2であるから、不純物w2の容量v2は、
v2=w3/ρ3 ・・・(4)
となる。
【0088】
したがって、洗浄装置5へ投入される純MAPの重量w1は、
w1=(v0-v2)×ρ1
={v0-(w3/ρ3)}×ρ1
=[v0-{(wM-w0)/(ρ1-ρ2)}]×ρ1
=[v0-{(v0×ρ1-w0)/(ρ1-ρ2)}]×ρ1・・・(5)
となる。
【0089】
また、不純物w2の重量は、
w2=w0-w1 ・・・(6)
となる。
【0090】
更に、反応槽1で生成される純MAPの濃度Cは、関係式(1)及び(5)より
C=[V0-{(v0×ρ1-w0)/(ρ1-ρ2)}]×ρ1÷(Q×T×R/100) ・・・(7)
となる。
【0091】
洗浄装置5内の全容量v0は、画像判定装置6b又は超音波測定装置6dによって不純物層又はリン化合物粒子層の界面の高さを測定することにより自動計測が可能であり、洗浄装置5内の全重量woは重量測定装置6cによって自動計測が可能である。純MAPの密度ρ1及び不純物の密度ρ2、回収率Rは実測値を利用すればよい。
【0092】
本実施形態によれば、このような物質収支の関係から洗浄装置5内に貯留される不純物の貯留量を求め、不純物の貯留量の算出結果に基づいて、上述の洗浄処理を制御することで、操作者の主観によらず、洗浄装置5内の不純物の貯留量に応じて好適な洗浄条件を求めることができる。
【0093】
関係式(7)により反応槽1で生成される純MAPの濃度Cも洗浄装置5の測定結果により推算することができるため、推算結果に応じて純MAPの濃度Cが好適な範囲となるように反応槽1内の処理条件、例えば薬剤供給装置2からの薬剤の供給量、汚泥供給装置10からの汚泥供給量、引抜装置3からのリン化合物粒子の晶析物を含む晶析反応液の引抜頻度及び引抜量を適正に制御することで、反応槽1内の晶析反応を常に安定して良好な状態に維持できる。
【実施例0094】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0095】
図7に示すような洗浄装置5を備えるリン化合物の生産システムにおいて、洗浄装置5内の洗浄液へ供給する洗浄水の供給流量を変えて不純物の洗浄装置5からの排出処理を行った。試験1では120L/min、試験2では200L/min、試験3では240L/minで洗浄液を洗浄装置5内へ供給した後静置した。MAP粒子層及び不純物層の界面は窓部から測定した。MAP粒子層及び不純物層ともに洗浄水の供給に伴い界面が上昇し、窓部からの界面の測定が困難になった場合は測定不能(-)とした。測定結果の一例を表1に示す。
【0096】
【表1】
【0097】
洗浄水の供給流量を上げることにより、不純物を洗浄装置5外から効果的に排出させることでき、MAP粒子層及び不純物層の界面の高さが調節できていることが分かる。試験1ではMAP粒子のリークを抑制しながら不純物層を10cm程度も除去できており、試験2では不純物層を45cm程度除去できている。試験3では洗浄水の供給速度が速いため、不純物層を34cm程度除去できたが、MAP粒子層も34cm程度除去されていることが分かる。
【符号の説明】
【0098】
1…反応槽
2…薬剤供給装置
3…引抜装置
4,4a,4b…分離装置
5…洗浄装置
6…測定装置
6b…画像判定装置
6c…重量測定装置
6d…超音波測定装置
7…制御装置
8…移送装置
10…汚泥供給装置
11…pH計
31…ポンプ
50…洗浄槽
51…窓部
53…配管
54…排水管
55…第1の給水管
56…第2の給水管
59…堰
60b…処理部
61b…撮影部
62b…画像判定部
63b…貯留量算出部
64b…学習部
70…演算部
71…薬剤供給制御部
72…引抜制御部
73…洗浄制御部
74…移送制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8