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特開2024-158515リン化合物の生産方法及びリン化合物の生産システム
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  • 特開-リン化合物の生産方法及びリン化合物の生産システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158515
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】リン化合物の生産方法及びリン化合物の生産システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/58 20230101AFI20241031BHJP
   C02F 11/127 20190101ALI20241031BHJP
   C02F 11/143 20190101ALI20241031BHJP
   C02F 11/145 20190101ALI20241031BHJP
   B01D 9/02 20060101ALI20241031BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20241031BHJP
   C01B 25/32 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
C02F1/58 S
C02F11/127
C02F11/143
C02F11/145
B01D9/02 601C
B01D9/02 602E
B01D9/02 603B
B01D9/02 608A
B01D9/02 608B
B01D9/02 609A
B01D9/02 615A
C01B25/45 D
C01B25/32 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073772
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金澤 推
(72)【発明者】
【氏名】山田 武彦
(72)【発明者】
【氏名】萩野 隆生
(72)【発明者】
【氏名】ギッチャーヌギット サンティサック
(72)【発明者】
【氏名】古賀 大輔
(72)【発明者】
【氏名】飯倉 智弘
【テーマコード(参考)】
4D038
4D059
【Fターム(参考)】
4D038AA10
4D038AB45
4D038AB48
4D038BA02
4D038BA06
4D059AA19
4D059BE37
4D059BH05
4D059BJ01
4D059CB19
4D059CC01
4D059DA05
4D059DA08
4D059EA03
4D059EB02
(57)【要約】
【課題】洗浄装置からのリン化合物粒子の移送を効率良く行うことが可能なリン化合物の生産方法及びリン化合物の生産システムを提供する。
【解決手段】リンを含む汚泥をリン化合物の種結晶を用いた晶析反応液を収容する反応槽1中に投入して混合することにより晶析反応液中でリン化合物粒子を晶析させ、反応槽1からリン化合物粒子を含む晶析反応液を引き抜き、晶析反応液からリン化合物粒子を回収して洗浄装置5内に貯留して洗浄し、洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量を測定し、リン化合物粒子の貯留量の測定結果に基づいて、洗浄後のリン化合物粒子を洗浄装置5外へ移送する際のリン化合物粒子の移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを制御することを含むリン化合物の生産方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンを含む汚泥をリン化合物の種結晶を用いた晶析反応液を収容する反応槽中に投入して混合することにより前記晶析反応液中でリン化合物粒子を晶析させ、
前記反応槽から前記リン化合物粒子を含む前記晶析反応液を引き抜き、
前記晶析反応液から前記リン化合物粒子を回収して洗浄装置内に貯留して洗浄し、
前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子の貯留量を測定し、
前記リン化合物粒子の貯留量の測定結果に基づいて、洗浄後の前記リン化合物粒子を前記洗浄装置外へ移送する際の前記リン化合物粒子の移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを制御することを含むリン化合物の生産方法。
【請求項2】
前記リン化合物粒子の貯留量を、前記洗浄装置が備える窓部を介して前記洗浄装置の外部から識別されるリン化合物粒子層の界面の高さの画像データを取得し、前記画像データを画像判定することを含む請求項1に記載のリン化合物の生産方法。
【請求項3】
前記洗浄装置の重量を測定することにより、前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子の貯留量を測定することを含む請求項1に記載のリン化合物の生産方法。
【請求項4】
前記洗浄装置内に貯留されるリン化合物粒子層の界面の高さを超音波測定装置を用いて測定することにより、前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子の貯留量を測定することを含む請求項1に記載のリン化合物の生産方法。
【請求項5】
前記洗浄装置が備える窓部を介して前記洗浄装置の外部から識別されるリン化合物粒子層の界面の高さの画像データから得られる特徴量と、前記画像データに関連づけられた前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子の貯留量を表す特徴量とを含む学習データを用いた機械学習アルゴリズムにより構築されたモデルに、測定対象となる前記リン化合物粒子層の界面の高さを撮影した画像データを入力し、前記測定対象の前記リン化合物粒子の貯留量の予測値を出力することにより、前記リン化合物粒子の貯留量を測定することを含む請求項1に記載のリン化合物の生産方法。
【請求項6】
前記学習データが、前記リン化合物粒子層の界面の高さの画像データに関連づけられた前記リン化合物粒子の移送に適した移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを示す特徴量を少なくとも含み、測定対象となる前記リン化合物粒子層の界面の高さを撮影した画像データを前記モデルに入力することにより、前記測定対象に適した前記リン化合物粒子の移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを更に出力することを更に含む請求項5に記載のリン化合物の生産方法。
【請求項7】
前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子の貯留量の測定結果に基づいて、前記種結晶を収容する前記反応槽内の前記晶析反応液中の種結晶濃度を算出し、
前記種結晶濃度の算出結果に基づいて、前記反応槽内からの前記晶析反応液の引抜量又は引抜頻度の少なくともいずれかを更に制御することを更に含む請求項1~6のいずれか1項に記載のリン化合物の生産方法。
【請求項8】
リン化合物の種結晶を用いた晶析反応を用いてリンを含む汚泥からリン化合物粒子を生成させる反応槽と、
前記反応槽から前記リン化合物粒子を含む晶析反応液を引き抜く引抜装置と、
前記引抜装置によって引き抜かれた前記晶析反応液から前記リン化合物粒子を分離する分離装置と、
前記分離装置で分離された前記リン化合物粒子を洗浄する洗浄装置と、
前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子を前記洗浄装置外へ移送する移送装置と、
前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子の貯留量を測定する測定装置と、
前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子の貯留量の測定結果に基づいて、前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子を、前記洗浄装置外へ移送する際の前記リン化合物粒子の移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを制御する移送制御部と
を備えるリン化合物の生産システム。
【請求項9】
リン化合物の種結晶を用いた晶析反応を用いてリンを含む汚泥からリン化合物粒子を生成させる反応槽と、
前記反応槽から前記リン化合物粒子を含む晶析反応液を引き抜く引抜装置と、
前記引抜装置によって引き抜かれた前記晶析反応液から前記リン化合物粒子を分離する分離装置と、
前記分離装置で分離された前記リン化合物粒子を洗浄する洗浄装置と、
前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子を前記洗浄装置外へ移送する移送装置と、
前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子の貯留量を測定する測定装置と、
前記洗浄装置内の前記リン化合物粒子の貯留量の測定結果に基づいて、前記種結晶を収容する前記反応槽内の晶析反応液中の種結晶濃度を算出し、
前記種結晶濃度の算出結果に基づいて前記反応槽内からの前記晶析反応液の引抜量又は引抜頻度の少なくともいずれかを制御する引抜制御部と
を備えるリン化合物の生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン化合物の生産方法及びリン化合物の生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機性廃水又は汚泥から窒素成分及びリン成分を分離する方法として有機性廃水又は汚泥にマグネシウムイオンやカルシウムイオン等を添加して、廃水中に含まれるリンをリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)又はヒドロキシアパタイト(HAP)等のリン化合物として晶析させ、晶析物を分離回収する技術が知られている。このような晶析技術は、薬剤使用量、機械動力、熱エネルギー等も比較的少なく安価でありリン成分の回収を安定的に行うことができる上、回収されるリン化合物は優れた肥料としての付加価値がある。よって、資源の有効利用の点からも優れたリン化合物の回収技術又は生産技術として有用である。
【0003】
特開2004-160304号公報(特許文献1)には、有機性廃水を嫌気性処理する嫌気性消化工程において、汚泥中に発生するMAP粒子を液体サイクロンなどによって分離し、MAP粒子を含むMAP分離濃縮液を得た後、MAP分離濃縮液にマグネシウムイオンを新たに添加し、溶解しているリン成分との反応によって、MAP分離濃縮液に存在するMAP粒子の表面に新たなMAPを積層させてMAP粒子として回収する工程が記載されている。
【0004】
特開2002-370094号公報(特許文献2)には、被処理水中のリンを晶析反応槽内で流動しているリン酸マグネシウムアンモニウム粒子の表面で晶析させて除去する装置の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-160304号公報
【特許文献2】特開2002-370094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
晶析反応槽で生成されたリン化合物粒子は、液体サイクロン等の分離装置で晶析反応液から分離され、表面に付着した汚泥等を除去するために洗浄装置内へ投入される。洗浄装置内で洗浄処理された後のリン化合物の粒子は、洗浄装置外へ引き抜かれた後、水切装置等の乾燥処理設備へ送られる。
【0007】
しかしながら、反応槽へ供給される有機性廃水又は汚泥は、季節又は地域特性等によってその成分濃度の変動が生じることがある。有機性廃水又は汚泥の成分濃度の変動が生じると、反応槽内の晶析反応の処理条件が変化し、反応槽内で生成するリン化合物粒子の粒径や生成量も変化する。これにより、洗浄装置内へのリン化合物粒子の回収量も変化する。リン化合物粒子を洗浄する洗浄装置内は、常時一定量のリン化合物粒子が保持されている。しかしながら、その保持量が適切な範囲を超えると、洗浄装置からリン化合物粒子を移送させる際に配管の閉塞が生じることや、洗浄装置内に保持されるリン化合物粒子の貯留量が少なすぎてリン化合物粒子の移送が適切に行われないこと等の種々の不具合が発生する。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、洗浄装置からのリン化合物粒子の移送を効率良く行うことが可能なリン化合物の生産方法及びリン化合物の生産システムを提供する。
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、洗浄装置内に貯留されるリン化合物粒子の貯留量を、測定手段を用いて測定することが有用であるとの知見を得た。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は一側面において、リンを含む汚泥をリン化合物の種結晶を用いた晶析反応液を収容する反応槽中に投入して混合することにより晶析反応液中でリン化合物粒子を晶析させ、反応槽からリン化合物粒子を含む晶析反応液を引き抜き、晶析反応液からリン化合物粒子を回収して洗浄装置内に貯留して洗浄し、洗浄装置内のリン化合物粒子の貯留量を測定し、リン化合物粒子の貯留量の測定結果に基づいて、洗浄後のリン化合物粒子を洗浄装置外へ移送する際のリン化合物粒子の移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを制御することを含むリン化合物の生産方法である。
【0011】
本発明に係るリン化合物の生産方法は一実施態様において、リン化合物粒子の貯留量を、洗浄装置が備える窓部を介して洗浄装置の外部から識別されるリン化合物粒子層の界面の高さの画像データを取得し、画像データを画像判定することを含む。
【0012】
本発明に係るリン化合物の生産方法は一実施態様において、洗浄装置の重量を測定することにより、洗浄装置内のリン化合物粒子の貯留量を測定することを含む。
【0013】
本発明に係るリン化合物の生産方法は別の一実施態様において、洗浄装置内に貯留されるリン化合物粒子層の界面の高さを超音波測定装置を用いて測定することにより、洗浄装置内のリン化合物粒子の貯留量を測定することを含む。
【0014】
本発明に係るリン化合物の生産方法は更に別の一実施態様において、洗浄装置が備える窓部を介して洗浄装置の外部から識別されるリン化合物粒子層の界面の高さの画像データから得られる特徴量と、画像データに関連づけられた洗浄装置内のリン化合物粒子の貯留量を表す特徴量とを含む学習データを用いた機械学習アルゴリズムにより構築されたモデルに、測定対象となるリン化合物粒子層の界面の高さを撮影した画像データを入力し、測定対象のリン化合物粒子の貯留量の予測値を出力することにより、リン化合物粒子の貯留量を測定することを含む。
【0015】
本発明に係るリン化合物の生産方法は更に別の一実施態様において、学習データが、リン化合物粒子層の界面の高さの画像データに関連づけられたリン化合物粒子の移送に適した移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを示す特徴量を少なくとも含み、測定対象となるリン化合物粒子層の界面の高さを撮影した画像データをモデルに入力することにより、測定対象に適したリン化合物粒子の移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを更に出力することを更に含む。
【0016】
本発明に係るリン化合物の生産方法は更に別の一実施態様において、洗浄装置内のリン化合物粒子の貯留量の測定結果に基づいて、種結晶を収容する反応槽内の晶析反応液中の種結晶濃度を算出し、種結晶濃度の算出結果に基づいて、反応槽内からの晶析反応液の引抜量又は引抜頻度の少なくともいずれかを更に制御することを更に含む。
【0017】
本発明は別の一側面において、リン化合物の種結晶を用いた晶析反応を用いてリンを含む汚泥からリン化合物粒子を生成させる反応槽と、反応槽からリン化合物粒子を含む晶析反応液を引き抜く引抜装置と、引抜装置によって引き抜かれた晶析反応液からリン化合物粒子を分離する分離装置と、分離装置で分離されたリン化合物粒子を洗浄する洗浄装置と、洗浄装置内のリン化合物粒子を洗浄装置外へ移送する移送装置と、洗浄装置内のリン化合物粒子の貯留量を測定する測定装置と、洗浄装置内のリン化合物粒子の貯留量の測定結果に基づいて、洗浄装置内のリン化合物粒子を、洗浄装置外へ移送する際のリン化合物粒子の移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを制御する移送制御部とを備えるリン化合物の生産システムである。
【0018】
本発明は更に別の一側面において、リン化合物の種結晶を用いた晶析反応を用いてリンを含む汚泥からリン化合物粒子を生成させる反応槽と、反応槽からリン化合物粒子を含む晶析反応液を引き抜く引抜装置と、引抜装置によって引き抜かれた晶析反応液からリン化合物粒子を分離する分離装置と、分離装置で分離されたリン化合物粒子を洗浄する洗浄装置と、洗浄装置内のリン化合物粒子を洗浄装置外へ移送する移送装置と、洗浄装置内のリン化合物粒子の貯留量を測定する測定装置と、洗浄装置内のリン化合物粒子の貯留量の測定結果に基づいて、種結晶を収容する反応槽内の晶析反応液中の種結晶濃度を算出し、種結晶濃度の算出結果に基づいて反応槽内からの晶析反応液の引抜量又は引抜頻度の少なくともいずれかを制御する引抜制御部とを備えるリン化合物の生産システムである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、洗浄装置からのリン化合物粒子の移送を効率良く行うことが可能なリン化合物の生産方法及びリン化合物の生産システムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係る有機性廃水の処理装置の一例を示す概略図である。
図2】本発明の実施の形態に係る画像判定装置の一例を示すブロック図である。
図3図3(a)は、本発明の実施の形態に係る重量測定装置の一例を示すブロック図であり、図3(b)は、本発明の実施の形態に係る超音波測定装置の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施の形態に引抜装置を介して反応槽の底部から引き抜かれて装置へ供給され、洗浄装置へと送られるリン化合物粒子を含む晶析反応液の構成比率を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を以下に説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0022】
本発明の実施の形態に係るリン化合物の生産システムは、図1に示すように、反応槽1と、反応槽1からリン化合物粒子を含む晶析反応液を引き抜く引抜装置3と、引抜装置3によって引き抜かれた晶析反応液からリン化合物粒子を分離する分離装置4と、分離装置4で分離されたリン化合物粒子を洗浄する洗浄装置5と、洗浄装置5内のリン化合物粒子を洗浄装置5外へ移送する移送装置8と、洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量を測定する測定装置6と、洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量の測定結果に基づいて、洗浄装置5内のリン化合物粒子を、洗浄装置5外へ移送する際のリン化合物粒子の移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを制御する移送制御部74とを備える。
【0023】
反応槽1は、リン化合物の種結晶を用いた晶析反応を用いてリンを含む汚泥からリン化合物を生成させる晶析反応槽である。反応槽1内には、投入汚泥中のリンイオンと反応し、リン化合物粒子を形成させるための薬剤が薬剤供給装置2を介して供給される。リン化合物は、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)又はヒドロキシアパタイト(HAP)を含む。
【0024】
リン化合物の種結晶は、投入汚泥中のリンを所定の粒径のリン化合物粒子に成長させるために晶析反応液中に混合される。以下に限定されないが、リン化合物粒子としてMAPを得る場合、一実施態様では粒径が30μm以上の結晶をいう。リン化合物粒子の粒径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、LA-910)及び超音波ふるい(昭和電工株式会社製マイクロシーブShodex PS)により測定した粒度分布の50%径(D50)を示す。リン化合物粒子の種結晶の粒径は、反応槽1の形状、体積、運転条件等に応じて当業者が適宜設定可能であり、この例には限定されないことは勿論である。
【0025】
反応槽1内の晶析反応液のpHは反応槽1に設けられたpH計11によって測定される。反応槽1内において回収に適した大きさ、即ち種結晶と同等以上の粒径に成長した粗リン化合物粒子は、反応槽1が備える攪拌機による乱流により反応槽1内の全体を常に流動しており、MAP粒子に付着する基質成分との接触機会を最大限に高めている。
【0026】
反応槽1全体に分散した粗リン化合物粒子を含む晶析反応液の懸濁液は、配管及びポンプ31を備える引抜装置3によって反応槽1の外部へ引き抜かれて分離装置4へと供給される。引抜装置3により反応槽1外へ引き抜かれた一部の晶析反応液は、液体サイクロン等の遠心分離を利用した分離装置4bによってリン化合物粒子と分離汚泥とに分離される。分離装置4bで分離されたリン化合物粒子は反応槽1へ返送される。引抜装置3により反応槽1外へ引き抜かれたその他の晶析反応液は、分離装置4aによってリン化合物粒子と分離汚泥とに分離される。分離装置4aで分離されたリン化合物粒子を多く含む濃縮汚泥は洗浄装置5へ送られる。分離装置4a、4bで分離された分離汚泥は汚泥処理工程へ送られる。
【0027】
洗浄装置5は、分離装置4aで分離されたリン化合物粒子を貯留して洗浄する洗浄槽50と、洗浄槽50の外壁面に配置され、洗浄槽50内のリン化合物粒子を洗浄槽50の外部から識別可能な窓部51とを備える。窓部51には、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子の界面Iの高さを測定するための目盛り52が設けられていてもよい。窓部51は、汚れ防止のための洗浄機構(不図示)を備えていても良い。洗浄槽50の下部には、洗浄槽50内に洗浄水を供給するための配管53が接続されている。配管53を介して洗浄槽50の下部から洗浄水が供給されることにより、洗浄槽50内に上向流が発生し、リン化合物粒子に付着する汚泥やし渣等の不純物が上方へ向けて押し出される。
【0028】
洗浄槽50の上方へ向けて押し出された不純物は、洗浄廃水とともに、洗浄槽50の上部に接続された配管54を介して洗浄装置5の外部へ排出される。洗浄装置5へ供給されたリン化合物粒子は所定の洗浄処理が行われた後、洗浄装置5で貯留され、洗浄装置5に接続された移送装置8を介して洗浄装置5の外部へ移送され、水切装置、乾燥機(不図示)等によって乾燥処理が行われた後、回収される。移送装置8としてはエアリフトポンプを用いることが装置簡略化及び小型化の観点から好ましい。
【0029】
反応槽1は、反応槽1内に薬剤を供給するためのポンプ及び配管を備える薬剤供給装置2と、反応槽1内に投入汚泥を供給するための汚泥供給装置10とが接続されている。汚泥供給装置10は、例えば、反応槽1内に供給される投入汚泥を貯留し、反応槽1内へ供給するための貯留槽、ポンプ及び配管等を備えることができるがこの例には限定されない。汚泥供給装置10から反応槽1へ投入汚泥を供給する配管には、投入汚泥のリン酸濃度を測定するためのリン酸濃度測定装置1aと、投入汚泥のpHを測定するためのpH計12を備えていてもよい。薬剤供給装置2は水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のマグネシウムを含む薬剤を収容するタンクとタンクから薬剤を供給するポンプ、配管、及び薬剤を必要に応じて希釈する希釈槽等を備えることができるがこの例には限定されない。
【0030】
汚泥供給装置10及び薬剤供給装置2は制御装置7に接続されている。制御装置7は汎用の計算機(コンピュータ)等で構成されている。制御装置7は、反応槽1が設置される現場に設置されてもよいし、クラウド上にあるサーバ等に設置されていてもよい。制御装置7は、演算部70、薬剤供給制御部71、及び引抜制御部72、洗浄制御部73、移送制御部74及び学習部75を備える。
【0031】
演算部70は、反応槽1、引抜装置3、分離装置4、洗浄装置5、測定装置6、移送装置8の運転制御に必要なパラメータを演算し、演算結果に基づいて、反応槽1、引抜装置3、分離装置4、洗浄装置5、測定装置6、移送装置8へ所定の制御信号を出力する。薬剤供給制御部71は、反応槽1内のマグネシウムとリンとの比(Mg/P比)の設定条件の入力に基づいて、薬剤供給装置2が反応槽1内へ供給する薬剤の供給流量及び供給時間を制御するための制御信号を出力する。引抜制御部72は、反応槽1内の種結晶濃度が一定範囲に維持されるように、引抜装置3が反応槽1から晶析反応液を引き抜くための処理、具体的には晶析反応液の引抜量及び引抜頻度を制御するための制御信号を出力する。洗浄制御部73は、洗浄装置5の洗浄処理を制御するための制御信号を出力する。移送制御部74は洗浄装置5内のリン化合物粒子を洗浄装置5外へ移送するための制御信号を出力する。学習部75は機械学習アルゴリズムを用いて所定の目的変数の入力に応じて所定の説明変数を出力する学習済モデルを作製する。
【0032】
晶析反応においては、溶液中の種結晶の存在によって発生する核化(結晶化)のプロセスを「二次核化」という。二次核化において晶析反応を安定的に進行させるためには、反応槽1内の種結晶の表面積(種結晶濃度)を十分に確保することが重要となる。反応槽1内の種結晶濃度が低いと、晶析反応を進行させる種結晶の表面積が不足し、投入汚泥中に含まれる溶存態イオンであるリンの除去性能が悪化する。種結晶濃度が高すぎると、反応槽1内にリン化合物粒子が生成されすぎて、引抜装置3が備える配管やポンプ等を閉塞させる恐れがある。ここで「種結晶濃度」とは、種結晶の濃度、即ち、晶析反応の種結晶として機能する大きさの粒径を有するリン化合物粒子の濃度(g-MAP/L)を指す。以下に限定されないが、本実施形態では例えば晶析反応液中に存在する粒径30μm以上のリン化合物粒子の濃度をいう。
【0033】
晶析反応においては、一般的には、種結晶濃度よりも、種結晶の表面積を主な操作因子の一つとして考える場合が多い。本システムでは、引抜装置3及び分離装置4bによって、反応槽1からの種結晶の引き抜きと返送とを所定の頻度で行うことで、反応槽1内の種結晶の粒径を一定に保つことができる。また、本システムでは、反応槽1内の種結晶の適切な濃度管理により、種結晶の表面積のコントロールが可能となる。ひいては種結晶の結晶化速度も任意に制御することができる。種結晶の粒径は、装置特性、地域特性、投入汚泥の性状変化等によって変動する場合もある。そのような場合は、種結晶の粒径の変動をも更に考慮して種結晶の表面積及び種結晶濃度を算出する。
【0034】
反応槽1内の種結晶濃度の分析は、現在、定期的に手分析を行うのみである。また、反応槽1内のリン化合物粒子を含む晶析反応液の引抜回数及び頻度も、洗浄装置5内のリン化合物粒子の移送装置8による移送量及び移送頻度も、予め定められた時刻で管理する一定制御のみである。しかしながら、投入される投入汚泥のリン酸(PO4-P)濃度は、投入汚泥の種類や性状変動によって変化する。
【0035】
反応槽1内に投入される薬剤のマグネシウム濃度又はカルシウム濃度も投入汚泥の性状変動、地域特性、気温等によって過不足となる場合もある。このような種々の事情により、反応槽1内の晶析反応を均一の運転条件で最適な状態に維持し続けることは、現状では困難である。洗浄装置5内に回収されるリン化合物粒子の量も、反応槽1内の晶析反応の状況に応じて変化するため、洗浄装置5から一定量且つ一定頻度で洗浄後のリン化合物粒子を移送する方法では、移送時に配管が閉塞したり圧力が高まったりするなどの不具合が生じることがある。
【0036】
本実施形態によれば、洗浄装置5内のリン化合物の貯留量を測定する測定装置6を備える。移送制御部74は、この測定装置6の測定結果に応じて、洗浄装置5内に導入されるリン化合物粒子及びリン化合物粒子に付随する不純物の貯留量が洗浄装置5内で適正範囲に保持されるように、洗浄装置5から洗浄装置5外へのリン化合物粒子の移送処理を制御する。その結果、移送装置8の移送条件を、洗浄装置5の内部状況に追従させることが可能となり、回収されるリン化合物粒子の純度を高めるとともに生産効率を安定的に向上させることが可能となる。
【0037】
洗浄装置5内のリン化合物粒子又は不純物の少なくともいずれかの貯留量を測定可能な測定装置6としては、種々の測定装置を利用することができる。以下にいくつかの例を説明する。
【0038】
(画像判定装置)
洗浄装置5内のリン化合物の貯留量を測定する測定装置6としては、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子を主として含むリン化合物粒子層の界面の高さを画像判定することにより洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量を測定する画像判定装置6bが好適に用いられる。画像判定装置6bは、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子を洗浄装置5の外部から識別可能な、洗浄装置5が備える窓部51を介して、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子層の界面の高さの画像データを取得し、画像データを画像判定する装置が好適に用いられる。
【0039】
反応槽1から引き抜いた晶析反応液は、分離装置4aにて遠心分離を基にリン化合物粒子と分離汚泥とに分離される。リン化合物粒子は、表面の汚泥やし渣等の不純物を洗い流すために、洗浄装置5に投入されて洗浄が行われる。ここで反応槽1から引き抜かれる晶析反応液の引抜量及び引抜頻度が一定である場合、反応槽1へ投入される投入汚泥のリン投入負荷量の変動が発生すると、洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量が変化する。画像判定装置6bを用いて洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量の推移を画像判定により測定することで、移送装置8によるリン化合物粒子の移送量又は移送頻度の少なくともいずれかの条件の最適化が可能となる。
【0040】
画像判定装置6bは、図2に示すように、静止画像又は連続画像(動画)を撮影する撮影部61bと、撮影部61bの画像データを用いて所定の演算処理を行う処理部60bとを備える。処理部60bは汎用の計算機等で構成される。処理部60bはグラフィックプロセッサ(GPU)を備えていてもよい。処理部60bの演算結果及び処理部60bの演算処理に必要な各種情報を記憶するための記憶装置(不図示)は、処理部60bの内部にあっても外部にあってもよい。
【0041】
処理部60bによる処理は、図1の制御装置7の演算部70又は図示しないクラウド上のサーバ内で行ってもよい。図示しないが、処理部60bは入出力制御装置を備え、入出力制御装置を介して処理部60bの外部から洗浄装置5内のリン化合物粒子層の界面の高さが撮影された画像データ又は機械学習を利用した画像判定のための学習済モデル等の各種情報の入出力を受け付けてもよい、処理部60bは、入出力制御装置を介して処理部60bの処理結果を本システムの外部へ出力してもよい。処理部60bは更に操作者に処理部60bの演算処理結果を表示するための表示装置を備えても良い。
【0042】
撮影部61bは、洗浄装置5が備える窓部51及び目盛り52の静止画像又は連続画像を撮影することが可能な機器であれば特に限定されない。例えば、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ等の映像素子を備えるカメラが撮影部61bとして好適である。撮影部61bの設置位置は洗浄装置5の外部から窓部51のリン化合物粒子層及び不純物層の界面が撮影できればどこでもよいし、撮影部61bの数は単数でも複数でもよい。典型的には図1に示すように撮影部61bが、窓部51に対向するように配置される。
【0043】
撮影部61bは、撮影領域となる窓部51周辺に光を照射するための照明を更に備えても良い。撮影部61bは、撮影環境が一定となるような覆蓋(不図示)を備えていても良い。撮影部61bのシャッタースピードも適宜調整が可能である。撮影部61bの画像データは、カラーでもモノクロでもよい。画像データに二値化処理を行う場合はモノクロが好適であるがカラーでもよい。撮影部61bが備えるレンズは任意に選択できる。レンズの汚れ防止のために、カメラとレンズとの間は、透明板又はフィルタが配置されてもよい。
【0044】
処理部60bは、撮影部61bが撮影した洗浄装置5の窓部51を含む画像データを取得し、画像データから識別される洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子層の界面の高さを画像判定により判定する画像判定部62bと、画像判定部62bの画像判定結果に基づいて、洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量を算出する貯留量算出部63bとを備える。画像判定部62bは、洗浄装置5の窓部51から識別される不純物層の界面を含む画像データを取得し、画像データから識別される洗浄装置5内に貯留された不純物層の高さを画像判定により判定してもよい。貯留量算出部63bは、画像判定部62bの画像判定結果に基づいて、洗浄装置5内の不純物の貯留量を算出してもよい。処理部60bは更に機械学習アルゴリズムを用いて所定の目的変数の入力に応じて所定の説明変数を出力する学習済モデルを作製する学習部64bを更に備えていても良い。学習モデルの作製は図1の制御装置7が備える学習部75で行われても良い。
【0045】
図2の画像判定部62bは、洗浄装置5内のリン化合物粒子層の界面の高さを検出することができれば、その具体的な操作手順は限定されない。例えば、画像判定部62bは、洗浄装置5内のリン化合物粒子層の界面の高さの識別性を向上させるために、取得した画像データのトリミング、白黒化、二値化、多値化、標準化、圧縮処理等を含む各種加工処理を行ってもよい。画像判定部62bは、複数の撮影部61bによって撮影した複数の画像データを結合したり、撮影部61bで異なる時刻に撮影した複数の画像データを結合処理したりすることによって、洗浄装置5内のリン化合物粒子層の界面の高さの変化を判定してもよい。画像判定部62bは、取得した画像データをいくつかのオブジェクトに分割し、分割したオブジェクトを領域別に分類してもよい。例えば、画像判定部62bは、窓部51から識別される画像データに対し、主としてリン化合物粒子を含むMAP層、し渣等の不純物で構成される不純物層、洗浄液層を領域別にそれぞれ分類し、この分類結果に基づいて、洗浄装置5内のリン化合物粒子層の界面の高さを画像判定することも好ましい。
【0046】
画像判定部62bは、機械学習アルゴリズムを利用した画像判定処理を行うことが好ましい。例えば、画像判定部62bは、リン化合物粒子層の界面の高さの情報を特徴量として少なくとも含む画像データと、リン化合物粒子層の界面の高さの測定結果の情報とを特徴量として少なくとも関連付けた学習データを用いて作製されたモデルを用いて、機械学習アルゴリズムを利用した演算処理を行い、洗浄装置5内のリン化合物粒子層の界面の高さを演算するように構成されていてもよい。機械学習アルゴリズムとしては、サポートベクター回帰法(SVR法)、部分最小二乗法(PLS法)、ランダムフォレスト法、決定木法等の任意のアルゴリズムが利用できる。学習データには、反応槽1内の種結晶濃度、反応槽1へ供給される薬剤のMg/P比、投入汚泥のリン投入負荷量、引抜装置3による引抜量及び引抜頻度等を更に含んでいてもよい。
【0047】
貯留量算出部63bは、画像判定部62bによる洗浄装置5内のリン化合物粒子層の界面の高さの画像判定結果に基づいて、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子の貯留量を算出する。貯留量算出部63bは、例えば洗浄装置5内のリン化合物粒子層の界面の高さの測定結果と洗浄装置5の容量とから、洗浄装置5内のリン化合物粒子の体積を算出することができる。貯留量算出部63bは、リン化合物粒子の体積の算出結果から、予め作製された既知の検量線(リン化合物粒子の体積-リン化合物粒子の重量)を使用して、洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量(重量)を算出する。
【0048】
貯留量算出部63bは、説明変数として、リン化合物粒子層の界面の高さの画像判定結果の情報の入力を少なくとも受けて、目的変数として洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量の予測結果を少なくとも出力するための所定のモデルを用いた機械学習により、洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量を推算してもよい。即ち、貯留量算出部63bは、洗浄装置5が備える窓部51を介して洗浄装置5の外部から識別されるリン化合物粒子層の界面の高さの画像データから得られる特徴量と、画像データに関連づけられた洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量を表す特徴量とを含む学習データを用いた機械学習アルゴリズムにより構築されたモデルに、測定対象となるリン化合物粒子層の界面の高さを撮影した画像データを入力し、測定対象のリン化合物粒子の貯留量の予測値を出力することにより、リン化合物粒子の貯留量を算出することが好ましい。この場合の機械学習アルゴリズムとしては、上述と同様に、サポートベクター回帰法(SVR法)、部分最小二乗法(PLS法)、ランダムフォレスト法、決定木法等の任意のアルゴリズムが利用できる。中でもディープラーニングを好適に用いることができるがこれに限定されない。機械学習は、教師あり学習でも教師なし学習でもよい。機械学習により構築された学習済モデルは定期的に更新されてもよいし、任意のタイミングで更新されてもよい。学習済モデルは1つでも複数でもよい。学習データには画像データに加えて本システムの運転データを含めてもよい。学習データには、リン化合物粒子層の界面の高さの画像データに関連づけられたリン化合物粒子の移送に適した移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを示す特徴量を少なくとも含み、貯留量算出部63bが、測定対象となるリン化合物粒子層の界面の高さを撮影した画像データをモデルに入力することにより、測定対象に適したリン化合物粒子の移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを更に出力する処理を行ってもよい。
【0049】
或いは、画像判定装置6bは、洗浄装置5のリン化合物粒子層の界面の高さを画像判定し、リン化合物粒子層の界面の高さの画像判定結果と、界面の高さの設定値からの差異を求めることで洗浄装置5のリン化合物粒子層の界面の高さの測定を行ってもよい。この測定結果に基づいて、図1の移送制御部74が、洗浄装置5からのリン化合物粒子の引抜量又は引抜頻度を調整することで、洗浄装置5内に貯留されるリン化合物粒子の貯留量の管理を自動で行うことが可能となる。更に、このリン化合物粒子層の界面の設定値からの差異の測定結果に基づき、反応槽1内の種結晶濃度を推測することもまた可能である。この種結晶濃度の推測結果を基に、洗浄装置5内に回収されるリン化合物粒子の貯留量をシミュレーション等により求め、洗浄装置5内に回収されるリン化合物粒子の貯留量が次の引抜処理時に設定値を超えることが予想される場合は、洗浄装置5内に貯留されるリン化合物粒子の貯留量(リン化合物粒子層の界面の高さ)が適正範囲となるように、移送制御部74が洗浄装置5からの引抜量を増大させるように制御することが好ましい。
【0050】
更に、画像判定装置6bは、機械学習アルゴリズムを用いた画像判別を利用して洗浄装置5内の色を識別することで、通常白色透明であるリン化合物粒子が多く存在するリン化合物粒子層で構成される領域及び通常黒色のゴマ等の植物由来の夾雑物を含む不純物層との差を見分けることが容易にできる。これにより、リン化合物粒子層及び不純物層の貯留量をより正確に判定することが可能になる。リン化合物粒子層の貯留量が適正範囲を超える場合は、移送制御部74が、移送装置8によるリン化合物粒子の移送量又は移送頻度が適正となるように移送量又は移送頻度の増減を行う。不純物層の貯留量が適正範囲を超える場合は、洗浄制御部73が、洗浄装置5内から不純物を選択的に配管54を介して排出できるように、洗浄装置5の洗浄処理を最適化する。
【0051】
(重量測定装置)
洗浄装置5内のリン化合物の貯留量を測定する別の測定装置6としては、洗浄装置5の重量を測定することにより、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子の貯留量を測定する重量測定装置6cが好適である。
【0052】
重量測定装置6cは、図3(a)に示すように、洗浄装置5の重量を測定する重量測定部61cと、重量測定部61cの重量測定結果から洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子の貯留量を算出する貯留量算出部63cとを備える。貯留量算出部63cは、必ずしも重量測定装置6c内に配置される必要はない。貯留量算出部63cの演算処理は、制御装置7が備える演算部70で行われても良いし、クラウド上のサーバで行われてもよい。
【0053】
重量測定部61cとしては、洗浄装置5内の総重量を測定可能な装置であれば限定されないが、荷重の時系列での変化をより簡単に検出することが可能なロードセルを用いることが好適である。貯留量算出部63cは、ロードセルから出力される電気信号の変化を検出することで、反応槽1からの晶析反応液の引抜処理前後の洗浄装置5の重量変化が測定できる。
【0054】
水の比重は1.0g/cm3であり、MAPの重量は1.7g/cm3である。そのため、洗浄装置5を水道水で満水にしたときの重量と、洗浄装置5内にリン化合物粒子が存在する状態で洗浄装置5を満水にしたときの重量とでは、洗浄装置5内のリン化合物粒子の重量に応じてその差が変化する。よって、貯留量算出部63cは、洗浄装置5を水道水で満水にしたときの重量と洗浄装置5内にリン化合物粒子が存在する状態で洗浄装置5を満水にしたときの重量との差と、リン化合物の比重との関係から、洗浄装置5内に貯留されるリン化合物粒子の重量を算出することができる。貯留量算出部63cは、貯留量算出部63bのように機械学習を利用することにより洗浄装置5内のリン化合物粒子の重量を自動演算するように構成されていてもよい。
【0055】
なお、重量測定装置6cは洗浄装置5の重量を直接的に測定しているため、比重が小さい植物由来の夾雑物等の不純物に起因する測定誤差は比較的小さいと考えられる。このように、重量測定装置6cによれば、反応槽1からのリン化合物粒子を含む晶析反応液の引抜前後における全体重量の変化を自動測定することによって、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子の増加分の重量を把握できる。このリン化合物粒子の増加分の重量を考慮して、図1の移送制御部74が、洗浄装置5内からのリン化合物粒子の引抜量又は引抜頻度のいずれかを制御することにより反応槽1内の種結晶濃度を適正範囲に制御することができる。
【0056】
(超音波測定装置)
洗浄装置5内のリン化合物の貯留量を測定する別の測定装置6としては、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子層の界面の高さを超音波を用いて測定することにより、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子の貯留量を測定する超音波測定装置6dが好適である。
【0057】
超音波測定装置6dは、図3(b)に示すように、洗浄装置5内のリン化合物粒子層の界面の高さを測定する超音波診断部61dと、超音波診断部61dの超音波診断結果から洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子の貯留量を算出する貯留量算出部63dを備える。貯留量算出部63dは、必ずしも超音波測定装置6d内に配置される必要はない。貯留量算出部63dの演算処理は、制御装置7が備える演算部70で行われても良いし、クラウド上のサーバで行われてもよい。
【0058】
超音波診断部61dの具体的構成は限定されない。例えば、超音波診断部61dとしては、超音波信号の液体中の伝播を利用して洗浄装置5内のリン化合物粒子を含むリン化合物粒子層の界面を計測する超音波発信型界面計測機、超音波式汚泥界面計等が利用可能である。図1の例では、超音波診断部61dの先端が洗浄装置5の上部に洗浄装置5の水面と対向するように設けられているがこの例には限定されない。
【0059】
貯留量算出部63dは、超音波診断部61dによる洗浄装置5内のリン化合物粒子層の界面の高さの超音波診断結果に基づいて、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子の貯留量を算出する。貯留量算出部63bは、例えば洗浄装置5内の界面の高さの超音波診断と洗浄装置5の容量とから洗浄装置5内のリン化合物粒子の体積を算出する。貯留量算出部63dは、リン化合物粒子の体積の算出結果から、予め作製された既知の検量線(リン化合物粒子の体積-リン化合物粒子の重量)を使用して洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量(重量)を算出する。貯留量算出部63dは、貯留量算出部63bのように機械学習を利用することにより洗浄装置5内のリン化合物粒子の重量を自動演算するように構成されていてもよい。
【0060】
超音波測定装置6dによれば、例えば、洗浄装置5のリン化合物粒子層の界面の高さの超音波測定結果を、界面の高さの設定値からの差異を求めることで、反応槽1内の種結晶濃度の推定を行うこともできる。この推定結果に基づいて、図1の引抜制御部72が、反応槽1からリン化合物粒子を含む晶析反応液の引抜量又は引抜頻度を調整することで、反応槽1内の種結晶濃度の管理を自動制御することも可能となる。更に、このリン化合物粒子の界面の設定値からの差異の測定結果に基づき、反応槽1の任意の時間における種結晶濃度を推測し、この種結晶濃度を基に、反応槽1内へ投入する投入汚泥のリン投入負荷量の想定を行う。これにより、投入汚泥中のリン酸イオン濃度の設定値の補正を行ってもよい。
【0061】
測定装置6として、上述の画像判定装置6b、重量測定装置6c、超音波測定装置6dを2以上組み合わせることにより、洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量をより精度よく測定することができる。
【0062】
例えば、測定装置6が、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子を洗浄装置5の外部から識別可能な洗浄装置5が備える窓部51を介して、洗浄装置5内に貯留されたリン化合物粒子層の界面の高さを画像判定する画像判定装置6bと、洗浄装置5の重量を測定する重量測定装置6cとを備え、画像判定装置6bと重量測定装置6cとにより、リン化合物粒子の貯留量を測定してもよい。測定装置6が、画像判定装置6b及び超音波測定装置6dの少なくともいずれかと重量測定装置6cとを備えていてもよい。
【0063】
洗浄装置5内のリン化合物粒子層の界面の高さの測定が可能な画像判定装置6b及び超音波測定装置6dでは、固形物であるリン化合物粒子を含むリン化合物粒子層と上澄水との界面の高さを視覚的または超音波により測定する。そしてリン化合物粒子層の界面の高さよりも下に位置する洗浄装置5の容量分のリン化合物粒子の重量を、リン化合物粒子の比重である1.7及び洗浄静置後のリン化合物粒子を含む層の間隙率、不純物混在割合、洗浄装置5内水分量、洗浄装置5の本体空重量等から算出する。
【0064】
画像判定装置6bは、画像解析により通常白色透明のMAP層の色と通常黒色のゴマ等の植物由来の夾雑物との差を見分けることも可能であるため、リン化合物粒子層に含まれるリン化合物粒子の純度を画像解析により把握することも可能である。重量測定装置6cは、直接的に重量を測定しているために不純物である植物由来の夾雑物による誤差の影響は小さいものの、汚泥中に微細なSIO2等の砂成分(比重2.0~2.2)が多く含まれる場合等は、砂成分をリン化合物粒子と誤認識してしまう可能性がある。よって、測定装置6として、上述の画像判定装置6b、重量測定装置6c、超音波測定装置6dを2以上組み合わせることにより、例えば画像判定装置6bにより洗浄装置5内で沈降堆積するリン化合物粒子を含む層と不純物を含む層のボリュームをそれぞれある程度正確に把握できるとともに、重量測定装置6cにより洗浄装置5内の固形物総重量を正確に把握できることから、不純物とリン化合物粒子の各容積と固形物総重量による計算によってMAP重量のより正確な把握が可能となる。
【0065】
更には、測定装置6として、上述の画像判定装置6b、重量測定装置6c、超音波測定装置6dを2以上組み合わせ、リン化合物粒子の物質収支を考慮に入れた以下の関係式(1)~(7)に基づく推算を行うことにより、洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量及び反応槽1内の種結晶濃度を自動で算出することができる。
【0066】
例えば、図1の演算部70が洗浄装置5内のリン化合物粒子の貯留量の測定結果に基づいて、種結晶を収容する反応槽1内の晶析反応液中の種結晶濃度を算出し、引抜制御部72が、種結晶濃度の算出結果に基づいて反応槽1内からの晶析反応液の引抜量又は引抜頻度の少なくともいずれかを更に制御することも好ましい。この際、反応槽1内の種結晶濃度が基準範囲を超える場合には、反応槽内の晶析反応液中又は投入汚泥を希釈水で希釈するような処理を行うことも好ましい。
【0067】
図4は、図1の引抜装置3を介して反応槽1の底部から引き抜かれ、分離装置4aへ供給されるリン化合物粒子を含む晶析反応液の構成を示す概略図である。分離装置4aでは晶析反応液から分離汚泥が分離される。分離汚泥は汚泥処理へ供給される。リン化合物粒子を含む残りの晶析反応液は洗浄装置5内へ投入される。洗浄装置5では上述の洗浄過程で洗浄装置5外へ流出(リーク)するリン化合物粒子(以下「MAPリーク」という)と、洗浄装置5内に貯留される不純物w2と、洗浄装置5内の洗浄処理により汚泥が分離されて後段の乾燥設備へ移送されるリン化合物粒子(以下「純MAPw1」という)とに分類できる。洗浄装置5内に貯留される固形物の全重量woは、純MAPw1と不純物w2の和である。
【0068】
図1の反応槽1、分離装置4a、洗浄装置5内での物質収支を考慮にいれると、反応槽1から引き抜いた純MAPの重さW[kg-純MAP]は、以下の関係式(1)で求められる。
W=Q×T×C×R/100 ・・・(1)
ここで、W:反応槽1から引き抜いた純MAPの重さ[kg-純MAP]
Q:反応槽1から引き抜いたMAPを含む晶析反応液の引抜流量[m3-晶析反応液/分]
T:反応槽1から引き抜いたMAPを含む晶析反応液の引抜時間[分]
C:反応槽1内の純MAP濃度[kg-純MAP/m3-晶析反応液]
R:分離装置4aと洗浄装置5のMAP回収率[%]
【0069】
ここで、洗浄装置5へ投入される純MAPw1の容量をv1、不純物w2の容量をv2、洗浄装置内に貯留される純MAPwtの容量v1と不純物w2の容量v2の和で表される固形物の全容量をv0とし、純MAPの密度をρ1、不純物の密度をρ2とすると固形物の全容量v0が100%純MAPであったときの重量wMは、
wM=v0×ρ1 ・・・(2)
となる。
【0070】
実際の固形物の全容量v0の重量をw0とすると、洗浄装置5内に不純物が入るために生じる重量の差w3は、
w3=wM-w0 ・・・(3)
となる。
純MAPと不純物密度の差ρ3はρ1-ρ2であるから、不純物w2の容量v2は、
v2=w3/ρ3 ・・・(4)
となる。
【0071】
したがって、洗浄装置5へ投入される純MAPの重量w1は、
w1=(v0-v2)×ρ1
={v0-(w3/ρ3)}×ρ1
=[v0-{(wM-w0)/(ρ1-ρ2)}]×ρ1
=[v0-{(v0×ρ1-w0)/(ρ1-ρ2)}]×ρ1・・・(5)
となる。
【0072】
また、不純物w2の重量は、
w2=w0-w1 ・・・(6)
となる。
【0073】
更に、反応槽1で生成される純MAPの濃度Cは、関係式(1)及び(5)より
C=[V0-{(v0×ρ1-w0)/(ρ1-ρ2)}]×ρ1÷(Q×T×R/100) ・・・(7)
となる。
【0074】
洗浄装置5内の固形物の全容量v0は、画像判定装置6b又は超音波測定装置6dによって不純物層又はリン化合物粒子層の界面の高さを測定することにより自動計測が可能である。洗浄装置5内の全重量woは、重量測定装置6cによって自動計測が可能である。純MAPの密度ρ1及び不純物の密度ρ2、回収率Rは実測値を利用することにより、洗浄装置5へ投入される純MAPの重量w1及び反応槽1内で生成される純MAPの濃度Cを計算により求めることができる。
【0075】
本実施形態によれば、このような物質収支の関係式(1)~(7)に基づいて、洗浄装置5内に貯留される純MAPの重量w1又は容量v1の算出し、この算出結果に基づいて、移送制御部74が、洗浄装置5からの純MAPの移送量又は移送頻度の少なくともいずれかを調整する。例えば、純MAPの重量w1の算出結果が設定値よりも多い場合、移送制御部74は、例えばその増加分の割合に応じて、移送装置8による洗浄装置5からの純MAPの1回あたりの移送量を多くするか又は移送頻度(回数)を増やすような制御を行う。純MAPの重量w1の算出結果が設定値以下である場合には、移送装置8による洗浄装置5からの純MAPの1回あたりの移送量を少なくするか又は移送頻度を少なくするような制御を行う。これにより、洗浄装置5からリン化合物の移送を効率良く移送することが可能なリン化合物の生産方法及びリン化合物の生産システムが提供できる。
【0076】
(その他の実施の形態)
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態及び運用技術が実施できる。
【符号の説明】
【0077】
1…反応槽
2…薬剤供給装置
3…引抜装置
4、4a、4b…分離装置
5…洗浄装置
6…測定装置
6b…画像判定装置
6c…重量測定装置
6d…超音波測定装置
7…制御装置
8…移送装置
10…汚泥供給装置
11、12…pH計
31…ポンプ
50…洗浄槽
51…窓部
53、54…配管
60b…処理部
61b…撮影部
61c…重量測定部
61d…超音波診断部
62b…画像判定部
63b…貯留量算出部
63c…貯留量算出部
63d…貯留量算出部
64b…学習部
70…演算部
71…薬剤供給制御部
72…引抜制御部
73…洗浄制御部
74…移送制御部
75…学習部
図1
図2
図3
図4