(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158519
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】セルバランススイッチ回路、電池監視装置、電池システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20241031BHJP
【FI】
H02J7/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073776
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 凌
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA11
5G503GA01
5G503GA12
5G503HA01
(57)【要約】
【課題】セルバランススイッチ回路内のセルバランススイッチの積層とセル列内の電池セルの積層との接続に際して生じる可能性のある、セルバランススイッチ一段当たりの電位差の不均一を低減する。
【解決手段】セルバランススイッチ回路17は、複数の電極23、電極23のそれぞれに接続される複数の導電線25、及び導電線25のうち隣り合う2つの導電線25の間に接続されるように構成される複数のセルバランススイッチ27を備え、各セルバランススイッチ27は、隣り合う導電線25の間に接続される第1トランジスタ31、第1トランジスタ31のゲート(G)に接続されたバイアス線33、及びバイアス線33と導電線25との間に接続される抑制回路35を含み、抑制回路35は、導電線25の電圧変化に応答して、一時的にバイアス線33と導電線25とを接続するように構成されるスイッチ37を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続されるn個の電池セルを含むセル列における前記電池セルのうち隣り合う2つの電池セルの共有ノードのそれぞれに接続されるように構成される(n+1)個の電極と、
前記電極のそれぞれに接続される(n+1)個の導電線と、
前記導電線のうち隣り合う2つの導電線の間に接続されるように構成されるn個のセルバランススイッチと、
を備え、
前記セルバランススイッチの各々は、隣り合う前記導電線の間に接続される第1トランジスタ、前記第1トランジスタのゲートに接続されたバイアス線、及び前記バイアス線と前記導電線との間に接続されるように構成される抑制回路を含み、
前記抑制回路は、前記導電線の電圧変化に応答して、一時的に前記バイアス線と前記導電線とを接続するように構成されるスイッチを含む、
セルバランススイッチ回路。
【請求項2】
前記抑制回路は、前記抑制回路に関連付けられた前記導電線と前記バイアス線とにそれぞれ接続されるソース及びドレインを有する第2トランジスタを含む、
請求項1に記載されたセルバランススイッチ回路。
【請求項3】
前記抑制回路は、前記抑制回路に関連付けられた前記導電線と前記第2トランジスタのゲートとの間に接続される遅延回路を更に含む、
請求項2に記載されたセルバランススイッチ回路。
【請求項4】
前記抑制回路は、前記第2トランジスタのゲートと前記導電線との間に接続される抵抗体と、前記第2トランジスタの前記ゲートと前記ドレインとの間に接続されるキャパシタとを更に含む、
請求項2に記載されたセルバランススイッチ回路。
【請求項5】
前記セルバランススイッチは、前記バイアス線と前記導電線との間に逆方向に接続されるダイオードを更に備える、
請求項2に記載されたセルバランススイッチ回路。
【請求項6】
前記第2トランジスタの導電型は、前記セルバランススイッチの前記第1トランジスタの導電型と同じである、
請求項2に記載されたセルバランススイッチ回路。
【請求項7】
前記セルバランススイッチの前記第1トランジスタの少なくとも一部は、pチャネル型を有する、
請求項1に記載されたセルバランススイッチ回路。
【請求項8】
前記セルバランススイッチの前記第1トランジスタの少なくとも一部は、nチャネル型を有する、
請求項1に記載されたセルバランススイッチ回路。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に接続されたセルバランススイッチ回路と、
前記セルバランススイッチのそれぞれに接続されるセル選択スイッチを含むセル選択スイッチ回路と、
前記セルバランススイッチ回路及び前記セル選択スイッチ回路を介して前記電極の奇数番目に接続される第1ライン、並びに前記電極の偶数番目に接続される第2ラインに接続されるセル電圧測定回路と、
を備える、電池監視装置。
【請求項10】
前記バイアス線に接続されるバイアス線制御回路を更に備え、
前記セルバランススイッチは、前記バイアス線と前記導電線との間に接続される抵抗体を更に含み、
前記バイアス線制御回路は、前記抵抗体に流す電流を生成して、前記第1トランジスタを導通させる、
請求項9に記載された電池監視装置。
【請求項11】
請求項9に記載された電池監視装置と、
直列に接続されるn個の電池セルを含むセル列と、
を備える、
電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルバランススイッチ回路、電池監視装置、及び電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電池監視装置を開示する。電池監視装置は、セルバランス回路のセルバランス制御端子の望まれない動作による電池セルの望まれない放電を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池監視装置は、電池セルの直列接続を含むセル列におけるセルの端子電圧をバランスさせる。具体的には、電池監視装置は、複数のスイッチ素子を含み、これらのスイッチ素子は、セル列における直列接続のそれぞれの電池セルに接続される。電池監視装置は、これらのスイッチ素子を制御して、充電量の多い電池セルを放電して電池セルの充電量を均等化する。
【0005】
電池監視装置は、セル列を含む電池装置に活線挿抜(差し込み及び抜き取り)可能である。電池装置が、電源に接続された電池監視装置に一体化されるとき、セル列の直列接続の隣接セルの陰極及び陽極からの端子は、電池監視装置の対応する電極に接続される。
【0006】
対応する電極と個々の端子との接触は、全ての端子及び電極において完全に同時に生じず、差し込み毎に様々な順序で生じる。差し込みの際には、耐圧違反になる電圧が電池監視装置のスイッチに加わる可能性があることが見いだされた。しかしながら、電池装置及び電池監視装置の一体化に際して、全ての端子と電極との接触のタイミングを制御する方策は、見いだされていない。
【0007】
耐圧違反になる電圧がスイッチに加わることを避けるために、外部のツェナーダイオードを電池監視装置の電極に接続している。
【0008】
本発明は、セル列内の電池セルの積層とセルバランススイッチの積層との接続に際して生じる可能性のある、セルバランススイッチの端子間電圧の不均一を低減できるセルバランススイッチ回路、電池監視装置、及び電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様に係るセルバランススイッチ回路は、直列に接続されるn個の電池セルを含むセル列における隣り合う2つの電池セルの共有ノードのそれぞれに接続されるように構成される(n+1)個の電極と、前記電極のそれぞれに接続される(n+1)個の導電線と、前記導電線のうち隣り合う2つの導電線の間に接続されるように構成されるn個のセルバランススイッチと、を備え、前記セルバランススイッチの各々は、隣り合う前記導電線の間に接続される第1トランジスタ、前記第1トランジスタのゲートに接続されたバイアス線、及び前記バイアス線と前記導電線との間に接続されるように構成される抑制回路を含み、前記抑制回路は、前記導電線の電圧変化に応答して、一時的に前記バイアス線と前記導電線とを接続するように構成されるスイッチを含む。
【0010】
本発明の第2態様に係る電池監視装置は、第1態様に従うセルバランススイッチ回路と、前記セルバランススイッチのそれぞれに接続されるセル選択スイッチを含むセル選択スイッチ回路と、前記セルバランススイッチ回路及び前記セル選択スイッチ回路を介して前記電極の奇数番目に接続される第1ライン、並びに前記電極の偶数番目に接続される第2ラインに接続されるセル電圧測定回路とを備える。
【0011】
本発明の第3態様に係る電池システムは、第2態様に従う電池監視装置と、直列に接続されるn個の電池セルを含むセル列とを備える。
【発明の効果】
【0012】
上記の態様のセルバランススイッチ回路、電池監視装置、及び電池システムによれば、セル列内の電池セルの積層とセルバランススイッチの積層との接続に際して生じる可能性のある、セルバランススイッチの端子間電圧の不均一を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る電池システムを概略的に示す図面である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る電池監視装置のセルバランススイッチ回路を概略的に示す図面である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る電池システムの例示的な抑制回路を概略的に示す図面である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る電池システムの例示的な抑制回路を概略的に示す図面である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る電池監視装置の例示的な極性切替回路を概略的に示す回路図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る電池監視装置の例示的なセル選択スイッチを概略的に示す回路図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る電池システムを概略的に示す図面である。
【
図8】
図8は、抑制回路を備えない電池システムを概略的に示す図面である。
【
図9】
図9は、
図8の電池システムにおける起動における電池監視装置の全ての導電線の電圧波形及び電池監視装置の電源線の電圧波形を示す図面である。
【
図10】
図10は、
図8に示された電池システムにおけるセルバランススイッチのp型トランジスタ及びn型トランジスタのゲート-ソース間電圧(VGS)を示す図面である。
【
図11】
図11は、抑制回路を備える電池システムを概略的に示す図面である。
【
図12】
図12は、
図11の電池システムにおける起動における電池監視装置の全ての導電線の電圧波形及び電池監視装置の電源線の電圧波形を示す図面である。
【
図13】
図13は、
図11に示された電池システムにおけるセルバランススイッチのp型トランジスタ及びn型トランジスタのゲート-ソース間電圧(VGS)を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明を実施するための実施形態について説明する。引き続く説明において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付して、繰り返しの説明を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態に係る電池システムを概略的に示す図面である。電池システム11は、電池装置13及び電池監視装置15を含む。
図2は、本実施形態に係る電池監視装置のセルバランススイッチ回路を概略的に示す図面である。
図2において、トランジスタの回路記号が示される。引き続く記述において、トランジスタのゲート、ドレイン、及びソースは、符号「G」、「D」及び「S」によって示される。
【0016】
図1を参照すると、電池装置13は、直列に接続されるn個の電池セル14を含むセル列18を有する。セル列18における電池セル14のうち隣り合う2つの電池セル14は、共有ノード16において互いに接続される。一方の電池セル14の陽極ADと他方の電池セル14の陰極CDとが、共有ノード16においてを互いに接続される。各電池セル14は、充電、放電、セルバランス処理を行う単位のリチウム電池を包含し、また複数の単位のリチウム電池を含む電池デバイスを包含する。「セル」の呼称は、物理的なリチウム電池セルを必ずしも意味しない。電池装置13は、共有ノード16のそれぞれに接続された電池電極20を備える。
図1において、電池装置13は、電池監視装置15に接続されていない。
【0017】
電池監視装置15は、セルバランススイッチ回路17を含む。セルバランススイッチ回路17は、(n+1)個の電極23、(n+1)個の導電線25、及びn個のセルバランススイッチ27を備える。電極23は、電池セル14の共有ノード16のそれぞれに接続されるように構成される。導電線25は、電極23のそれぞれに接続される。セルバランススイッチ27は、導電線25のうち隣り合う2つの導電線25の間に接続されるように構成される。
【0018】
図1及び
図2を参照すると、セルバランススイッチ27の各々は、第1トランジスタ31、バイアス線33、及び抑制回路35を含む。バイアス線33は、第1トランジスタ31のゲート(G)に接続されると共に、第1トランジスタ31のソース(S)及びドレイン(D)は、それぞれの隣り合う導電線25(陽極側の導電線25及び陰極側の導電線25)の間に接続される。第1トランジスタ31は、p型又はn型のMOSトランジスタであることができる。
【0019】
セルバランススイッチ27の第1トランジスタ31の少なくとも一部は、pチャネル型を有することができる。セルバランススイッチ回路17によれば、セル列18の高電位側のセルバランススイッチ27には、pチャネル型の第1トランジスタ31を提供することができる。また、セルバランススイッチ27の第1トランジスタ31の少なくとも一部は、nチャネル型を有することができる。セルバランススイッチ回路17によれば、セル列18の低電位側のセルバランススイッチ27には、nチャネル型の第1トランジスタ31を提供することができる。
【0020】
第1トランジスタ31のバックゲート(基板端子)は、ソース(S)に接続される。このセルバランススイッチ回路17によれば、個々のセルバランススイッチ27の第1トランジスタ31には、セルバランススイッチ27の段数に関係無く、同程度の閾値が提供される。
【0021】
抑制回路35は、導電線25とバイアス線33との間に接続されるように構成される。抑制回路35は、スイッチ37を含み、スイッチ37は、導電線25の電圧変化に応答して、一時的に導電線25とバイアス線33とを接続するように構成される。
【0022】
セルバランススイッチ回路17によれば、セル列18の電池セル14からのセル電圧がセルバランススイッチ回路17の電極23に加わると、セル電圧は、これらの電極23に接続された導電線25の電圧を変化させる。個々の導電線25上の電圧の変化に応答して、抑制回路35のスイッチ37が一時的に導通して、第1トランジスタ31のソース(S)-ゲート(G)間の容量結合によるバイアス線33の電圧変化を抑制する。電圧変化の抑制は、セルバランススイッチ27の第1トランジスタ31の意図しない導通を防止できる。
【0023】
抑制回路35は、遅延回路39を更に含み、遅延回路39は、この抑制回路35に関連付けられた導電線25(第1トランジスタ31のソース(S)に接続される導電線25)とスイッチ37の導電線25との間に接続される。
【0024】
セルバランススイッチ回路17の各セルバランススイッチ27によれば、遅延回路39は、第1トランジスタ31のソース(S)に接続される導電線25の上昇に応答して導通するスイッチ37を遅延回路39の遅延時間の後に非導通にして、バイアス線33と導電線25との一時的な接続を可能にする。
【0025】
図3は、本実施形態に係る電池システムの例示的な抑制回路を概略的に示す図面である。
図4は、本実施形態に係る電池システムの例示的な抑制回路を概略的に示す図面である。
【0026】
図3及び
図4を参照すると、例示的な抑制回路35(35a、35b)は、第2トランジスタ41を含み、第2トランジスタ41のソース(S)及びドレイン(D)は、それぞれ、この抑制回路35に関連付けられた導電線25(第1トランジスタ31のソース(S)に接続される導電線25)とバイアス線33とにそれぞれ接続される。
【0027】
セルバランススイッチ回路17によれば、抑制回路35のスイッチ37の閾値には、第2トランジスタ41の閾値が提供される。
【0028】
第2トランジスタ41のバックゲート(基板端子)は、ソース(S)に接続される。このセルバランススイッチ回路17によれば、セルバランススイッチ27の段数に関係無く、抑制回路35のセルバランススイッチ27の閾値には第2トランジスタ41の閾値が提供される。
【0029】
セルバランススイッチ回路17の各セルバランススイッチ27によれば、第2トランジスタ41は、第1トランジスタ31のソース(S)に接続される導電線25とバイアス線33との一時的な接続を可能にする。一時的な接続は、導電線25の電圧を第2トランジスタ41のゲート(G)に与えて、第2トランジスタ41のゲート(G)とソース(S)との電位差が大きくなることを防止する。
【0030】
抑制回路35の遅延回路39は、第1トランジスタ31のソース(S)に接続される導電線25と第2トランジスタ41のゲート(G)との間に接続される。具体的には、遅延回路39は、抵抗体Res及びキャパシタCapを含む。キャパシタCapは、バイアス線33と第2トランジスタ41のゲート(G)との間に接続される。抵抗体Resは、導電線25と第2トランジスタ41のゲート(G)との間に接続される。
【0031】
セルバランススイッチ回路17の各セルバランススイッチ27によれば、遅延回路39は、第1トランジスタ31のソース(S)に接続される導電線25の上昇に応答して一時的に導通する第2トランジスタ41を遅延回路39の遅延時間の後に非導通にして、バイアス線33と導電線25との一時的な接続を可能にする。
【0032】
第2トランジスタ41のソース(S)は、導電線25に接続される。導電線25の電位が変化する際に、キャパシタCapは、第2トランジスタ41のゲート(G)にバイアス線33に近い電位を与えるように動作する。これ故に、導電線25の電位変化は、第2トランジスタ41のゲート(G)とソース(S)との間の電位差が一時的に大きくなる。一方、導電線25の電圧は、抵抗体Resを介してキャパシタCapを充電する。充電により、キャパシタCapの一端の電位が、第2トランジスタ41の閾値を横切ると、第2トランジスタ41は非導通になる。
【0033】
詳細には、第1トランジスタ31がp型を有するとき、第2トランジスタ41にはp型が提供される。第1トランジスタ31がn型を有するとき、第2トランジスタ41にはn型が提供される。これ故に、第2トランジスタ41の導電型は、第1トランジスタ31の導電型と同じであることができる。同じ導電型は、バイアス線33に対する導電線25の電位変化を利用して一時的に導通するスイッチを提供できる。
【0034】
再び
図2を参照すると、セルバランススイッチ27は、バイアス線33と導電線25との間に逆方向に接続されるダイオード43を更に備えることができる。ダイオード43は、ツェナーダイオードであることができる。ダイオード43の陽極ADZは、バイアス線33に接続され、ダイオード43の陰極CDZは、導電線25に接続される。ダイオード43は、セルバランススイッチ27の第1トランジスタ31及び抑制回路35の第2トランジスタ41を保護することができる。
【0035】
セルバランススイッチ27は、バイアス線33と導電線25との間に接続される抵抗体45を更に備えることができる。抵抗体45は、バイアス線33の電圧又はバイアス線33に流れる電流の制御に応答して、第1トランジスタ31の導通及び非導通を制御することを可能にする。バイアス線33は、セルバランススイッチ27毎に設けられるので、第1トランジスタ31の導通及び非導通の制御は、セルバランススイッチ27毎に行われることができる。
【0036】
再び
図1を参照すると、電池監視装置15は、セル選択スイッチ回路51を更に備えることができる。セル選択スイッチ回路51は、セルバランススイッチ27のそれぞれに接続されるセル選択スイッチ53を含むことができる。セル選択スイッチ53は、導電線25のそれぞれに接続される。
【0037】
また、電池監視装置15は、セル電圧測定回路55を更に備えることができる。セル電圧測定回路55は、セル選択スイッチ回路51によって選択された電池セル14の端子間電圧を測定することができる。
【0038】
電池監視装置15は、セル選択スイッチ回路51とセル電圧測定回路55との間に接続された極性切替回路57を更に備えることができる。
【0039】
導電線25は、セル列18の共有ノード16のそれぞれに接続される。セル列18内のある電池セル14の電圧をモニタするとき、隣り合う2本の導電線25が、セル選択スイッチ回路51内の隣り合う2個のセル選択スイッチ53によって選択される。
【0040】
具体的には、セル列18内の一段目の電池セル14では、電池セル14の陰極は一番目の導電線25に接続され、この電池セル14の陽極は二番目の導電線25に接続される。セル列18内の二段目の電池セル14では、電池セル14の陰極は二番目の導電線25に接続され、この電池セル14の陽極は三番目の導電線25に接続される。二番目の導電線25は、一段目の電池セル14の陽極及び二段目の電池セル14の陰極に接続される。
【0041】
セル選択スイッチ回路51内のセル選択スイッチ53は、測定対象の電池セル14を選び、その選択に応じて極性切替回路57がラインの接続を調節する。極性切替回路57は、偶数段目の電池セル14の測定及び奇数段目の電池セル14の測定の際に、隣り合う2本の導電線25における電圧極性を切り替えて、測定対象の電池セル14の陰極及び陽極をセル電圧測定回路55に接続する。
【0042】
具体的には、極性切替回路57は、第1入力57a及び第2入力57bを有する。第1入力57aは、奇数番目の導電線25に関連付けられたセル選択スイッチ53からの第1ラインLN1に接続される。第2入力57bは、偶数番目の導電線25に関連付けられたセル選択スイッチ53からの第2ラインLN2に接続される。極性切替回路57は、第1出力57c及び第2出力57dを有する。第1出力57cは、極性切替回路57は、セル電圧測定回路55の高電位入力55aに接続される。第2出力57dは、セル電圧測定回路55の低電位入力55bに接続される。
【0043】
図5は、本実施形態に係る電池監視装置の例示的な極性切替回路を概略的に示す回路図である。
【0044】
例示的な極性切替回路57は、4つのスイッチ(58a、58b、58c、58d)を有する。スイッチ(58a、58c)は、切替信号PHIに応答して動作する。スイッチ(58b、58d)は、切替信号PHIの反転した切替信号PHIBに応答して動作する。スイッチ(58a)は、第1入力57aと第1出力57cとの間に接続される。スイッチ(58b)は、第2入力57bと第1出力57cとの間に接続される。スイッチ(58c)は、第2入力57bと第2出力57bとの間に接続される。スイッチ(58d)は、第1入力57aと第2出力57bとの間に接続される。
【0045】
図6は、本実施形態に係る電池監視装置の例示的なセル選択スイッチを概略的に示す回路図である。
【0046】
例示的なセル選択スイッチ53は、一端53b及び他端53cを有する。セル選択スイッチ53は、一端53bと他端53cとの間に電流路を形成するように接続された第3トランジスタ54b及び第4トランジスタ54cを有する。第3トランジスタ54b及び第4トランジスタ54cは、共有ノード54dにおいて互いに接続される。セル選択スイッチ53は、共有ノード54dと電源線(例えばGND)との間に接続される切替回路56を含む。切替回路56は、第1電流源56b、第2電流源56c、スイッチSW1及びSW2、ツェナーダイオードDZ並びに電流ミラー回路56dを含む。電流ミラー回路56dの入力部は、選択信号CSELBに応答するスイッチSW1を介して第1電流源56bに接続される。電流ミラー回路56dの出力部は、選択信号CSELに応答するスイッチSW2を介して第2電流源56cに接続される。電流ミラー回路56dの出力部は、切替回路56の出力56outに接続される。ツェナーダイオードDZの陰極が、共有ノード54dに接続され、陽極が出力56outに接続される。
【0047】
切替回路56において、スイッチSW1が切替信号(CSELB)に応答して開くと共にスイッチSW2が切替信号(CSEL)応答して閉じるとき、第2電流源56cの電流が、ツェナーダイオードDZに流れて、出力56outの電圧は、電源線(例えばGND)の電位ではなく、共有ノード54dの電位からツェナーダイオードDZの逆方向電圧だけ低い電位になる。第3トランジスタ54b及び第4トランジスタ54cは、導通する。
【0048】
スイッチSW1が切替信号(CSELB)に応答して閉じると共にスイッチSW2が切替信号(CSEL)に応答して開くとき、第1電流源56bの電流は、電流ミラー回路56dの入力部に流れて、電流ミラー回路56dの出力部は導通している。出力56outの電圧は、共有ノード54dの電圧になる。共有ノード54dの電位は、閾値程度の値になる。
【0049】
図1を再び参照すると、電池監視装置15は、セルバランススイッチ27を制御する制御回路47を更に備えることができる。制御回路47は、n個のバイアス線制御回路49を備え、バイアス線制御回路49は、セルバランススイッチ27の各々におけるバイアス線33に接続されて、バイアス線33の電圧又は電流を制御する。
【0050】
例示的なバイアス線制御回路49は、セルバランススイッチ27の第1トランジスタ31の導通又は非導通を制御するために、ある値の電流を流すこと、電流値をゼロにすること、のいずれかを行う。バイアス線制御回路49からの電流は、セルバランススイッチ27の抵抗体45に流れる。第1トランジスタ31のゲート(G)の電位は、抵抗体45の抵抗値に応じて特定される。ゲート(G)とソース(S)との間の電位差が第1トランジスタ31の閾値より大きいとき、第1トランジスタ31は導通する。バイアス線制御回路49からの電流がゼロであるとき、ゲート(G)とソース(S)との間の電位差がゼロであるので、第1トランジスタ31は非導通になる。バイアス線制御回路49は、抵抗体45を介して導電線25に接続される。
【0051】
再び
図1を参照すると、電池装置13は、電池セル14の陽極ADと陰極CDとの間に接続されたセルキャパシタCcellを有する。セルキャパシタCcellの一端は、セル抵抗体Rcellを介して共有ノード16に接続される。電池電極20は、直列に接続されるn個のセルキャパシタCcellを含むセルキャパシタ列における隣り合う2つのセルキャパシタCcellの共有ノード22のそれぞれに接続される。セル列18の最上位の電池セル14の陽極は、共有ノード16に接続されることなく、対応するセルキャパシタCcellの一端及び電池電極20にセル抵抗体Rcellを介して接続される。セル列18の最下位の電池セル14の陰極は、共有ノード16に接続されることなく、対応するセルキャパシタCcellの他端及び電池電極20にセル抵抗体Rcellを介して接続される。
【0052】
電池システム11は、コントローラ61を更に備えることができる。コントローラ61は、セル列18の電池セル14の充電電圧に係るデータをセル電圧測定回路55から受け、当該データに基づきセル列18のうちのセルバランシングを行うべき一又は複数の電池セル14を特定し、特定された電池セル14に接続されるセルバランススイッチ27を導通させるように、当該セルバランススイッチ27に接続されたバイアス線制御回路49に選択信号を提供するように構成されることができる。
【0053】
図7は、本実施形態に係る電池システムを概略的に示す図面である。電池システム11では、電池装置13及び電池監視装置15が互いに接続される。具体的には、電池監視装置15に電源電圧が印加された後に、
図8に示されるように、電池装置13が電池監視装置15に接続される。また、電池監視装置15に電源電圧が印加されたまま、電池装置13が電池監視装置15から切り離される。このように、電池システム11では、活線挿抜が行われる。
【0054】
図8は、抑制回路を備えない電池システムを概略的に示す図面である。
図8において、
図7の電池システム11と同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付して複写的な記述を省略する。
図8の電池システム10は、電池装置13は、例えば17段の電池セル14の直列接続を有する。電池監視装置12は、17段のセルバランススイッチ26の直列接続を有する。具体的には、17段のセルバランススイッチ26のうち低電位の2段のセルバランススイッチ26はn型トランジスタを備え、残りの15段のセルバランススイッチ26はp型トランジスタを備える。
【0055】
図9は、
図8の電池システムにおける起動における電池監視装置の全ての導電線の電圧波形及び電池監視装置の電源線の電圧波形を示す図面である。
【0056】
時刻t0において、電池監視装置12に電源が与えられる。電池監視装置12の導電線25及びバイアス線33の電位は不定である。電池監視装置12に、十分な電源電圧が与えられた後に、時刻t1において、電池装置13が電池監視装置12に接続される(ホットスワップ)。電池監視装置12の導電線25は、それぞれ対応する電池セル14からのパワーを受ける。電池装置13の電池セル14は、セルキャパシタCcell及びセル抵抗体Rcellを介して、導電線25にパワーを与える。
【0057】
図9を参照すると、電池監視装置12では、高電位側の導電線25の電位の間隔が小さくなり、低電位側の導電線25の電位の間隔が大きくなっている。導電線25の電位の大きな間隔は、セルバランススイッチ26のトランジスタに大きな電圧が加わることを示す。これは、セルバランススイッチ26のトランジスタの耐圧違反になることを示す。
【0058】
図10は、
図8に示された電池システムにおけるセルバランススイッチ26のp型トランジスタ及びn型トランジスタのゲート-ソース間電圧(VGS)を示す図面である。
【0059】
時刻t1において、ホットスワップに合わせて、セルバランススイッチ26のp型トランジスタ及びn型トランジスタのゲート-ソース間電圧(VGS(p)及びVGS(n))が一時的に大きく変化している。これは、セルバランススイッチ26のトランジスタのソース(S)とゲート(G)との間の容量結合によって引き起こされている。p型トランジスタの電圧変化は、n型トランジスタの電圧変化に比べて大きく、これは、p型トランジスタのサイズがn型トランジスタのサイズより大きいから生じる。
【0060】
図11は、抑制回路を備える電池システムを概略的に示す図面である。
図11の電池システム11では、電池装置13は、例えば17段の電池セル14の直列接続を有する。電池監視装置15は、17段のセルバランススイッチ27の直列接続を有する。具体的には、17段のセルバランススイッチ27のうち低電位の2段のセルバランススイッチ27はn型トランジスタを備え、残りの15段のセルバランススイッチ27はp型トランジスタを備える。
【0061】
図12は、
図11の電池システムにおける起動における電池監視装置の全ての導電線の電圧波形及び電池監視装置の電源線の電圧波形を示す図面である。
【0062】
時刻t0において、電池監視装置15に電源が与えられる。電池監視装置15の導電線25及びバイアス線33の電位は不定である。電池監視装置15に、十分な電源電圧が与えられた後に、時刻t1において、電池装置13が電池監視装置15に接続される(ホットスワップ)。電池監視装置15の導電線25は、それぞれ対応する電池セル14からのパワーを受ける。電池装置13の電池セル14は、セルキャパシタCcell及びセル抵抗体Rcellを介して、導電線25にパワーを与える。
【0063】
図12を参照すると、電池監視装置15では、高電位側の導電線25から低電位側の導電線25にわたって導電線25の電位はほぼ等間隔である。
【0064】
図13は、
図11に示された電池システムにおけるセルバランススイッチのp型トランジスタ及びn型トランジスタのゲート-ソース間電圧(VGS)を示す図面である。
【0065】
時刻t1において、ホットスワップに合わせて、セルバランススイッチ27のp型トランジスタ及びn型トランジスタのゲート-ソース間電圧(VGS)が一時的に僅かに変化している。これは、抑制回路35が、セルバランススイッチ27内のトランジスタのソース(S)とゲート(G)との間の容量結合によって電位変動を低減していることを示す。p型トランジスタの電圧変化及びn型トランジスタの電圧変化は、互いに同じ程度に小さい。
【0066】
本実施形態によれば、セルバランススイッチ回路17内のセルバランススイッチ27の積層とセル列18内の電池セル14の積層との接続に際して生じる可能性のある、セルバランススイッチ一段当たりの電位差の不均一を低減できるセルバランススイッチ回路、電池監視装置、及び電池システムを提供できる。また、本実施形態によれば、セルバランススイッチ27の積層と電池セル14の積層との接続順序に関係なく、耐圧違反になる電圧の印加が生じる可能性を低減できる。
【0067】
本実施形態は、以下のような様々な側面を有する。
【0068】
本実施形態に係る第1側面のセルバランススイッチ回路は、直列に接続されるn個のセルを含むセル列における前記セルのうち隣り合う2つのセルの共有ノードのそれぞれに接続されるように構成される(n+1)個の電極と、前記電極のそれぞれに接続される(n+1)個の導電線と、前記導電線のうち隣り合う2つの導電線の間に接続されるように構成されるn個のセルバランススイッチと、を備え、前記セルバランススイッチの各々は、隣り合う前記導電線の間に接続される第1トランジスタ、前記第1トランジスタのゲートに接続されたバイアス線、及び前記バイアス線と前記導電線との間に接続されるように構成される抑制回路を含み、前記抑制回路は、前記導電線の電圧変化に応答して、一時的に前記バイアス線と前記導電線とを接続するように構成されるスイッチを含む。
【0069】
本実施形態に係る第1側面に従う第2側面のセルバランススイッチ回路では、前記抑制回路は、前記抑制回路に関連付けられた前記導電線と前記バイアス線とにそれぞれ接続されるソース及びドレインを有する第2トランジスタを含むことができる。
【0070】
本実施形態に係る第2側面に従う第3側面のセルバランススイッチ回路では、前記抑制回路は、前記抑制回路に関連付けられた前記導電線と前記第2トランジスタのゲートとの間に接続される遅延回路を更に含むことができる。
【0071】
本実施形態に係る第2側面又は第3側面に従う第4側面のセルバランススイッチ回路では、前記抑制回路は、前記第2トランジスタのゲートと前記導電線との間に接続される抵抗体と、前記第2トランジスタの前記ゲートと前記ドレインとの間に接続されるキャパシタとを更に含むことができる。
【0072】
本実施形態に係る第2側面、第3側面又は第4側面に従う第5側面のセルバランススイッチ回路では、前記セルバランススイッチは、前記バイアス線と前記導電線との間に逆方向に接続されるダイオードを更に備えることができる。
【0073】
本実施形態に係る第2側面、第3側面又は第4側面に従う第6側面のセルバランススイッチ回路では、前記第2トランジスタの導電型は、前記セルバランススイッチの前記第1トランジスタの導電型と同じであることができる。
【0074】
本実施形態に係る第1側面から第6側面のいずれか一側面に従う第7側面のセルバランススイッチ回路では、前記セルバランススイッチの前記第1トランジスタの少なくとも一部は、pチャネル型を有することができる。
【0075】
本実施形態に係る第1側面から第7側面のいずれか一側面に従う第8側面のセルバランススイッチ回路では、前記セルバランススイッチの前記第1トランジスタの少なくとも一部は、nチャネル型を有することができる。
【0076】
本実施形態に係る第9側面の電池監視装置は、第1側面から第8側面のいずれか一側面に従うセルバランススイッチ回路と、前記セルバランススイッチのそれぞれに接続されるセル選択スイッチを含むセル選択スイッチ回路と、前記セルバランススイッチ回路及び前記セル選択スイッチ回路を介して前記電極の奇数番目に接続される第1ライン、並びに前記セルバランススイッチ回路及び前記セル選択スイッチ回路を介して前記電極の偶数番目に接続される第2ラインに接続されるセル電圧測定回路と、を備える。
【0077】
本実施形態に係る第9側面に従う第10側面の電池監視装置は、前記バイアス線に接続されるバイアス線制御回路を更に備え、前記セルバランススイッチは、前記バイアス線と前記導電線との間に接続される抵抗体を更に備え、前記バイアス線制御回路は、前記抵抗体に流す電流を生成して、前記第1トランジスタを導通させることができる。
【0078】
本実施形態に係る第11側面に従う電池システムは、第9側面又は第10側面に従う電池監視装置と、直列に接続されるn個のセルを含むセル列と、を備える。
【0079】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
10、11・・・電池システム、12、15・・・電池監視装置、13・・・電池装置、14・・・電池セル、16・・・共有ノード、17・・・セルバランススイッチ回路、18・・・セル列、20・・・電池電極、22・・・共有ノード、23・・・電極、25・・・導電線、26、27・・・セルバランススイッチ、31・・・第1トランジスタ、33・・・バイアス線、35・・・抑制回路、37・・・スイッチ、39・・・遅延回路、41・・・第2トランジスタ、43・・・ダイオード、45・・・抵抗体、47・・・制御回路、49・・・バイアス線制御回路、51・・・セル選択スイッチ回路、53・・・セル選択スイッチ、54b、54c・・・トランジスタ、54d・・・共有ノード、55・・・セル電圧測定回路、56・・・切替回路、57・・・極性切替回路、61・・・コントローラ。