(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158525
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】圧電性材料膜およびその製造方法ならびに振動発電素子
(51)【国際特許分類】
H10N 30/074 20230101AFI20241031BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20241031BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20241031BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20241031BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H10N30/074
H10N30/853
H10N30/20
H10N30/87
H01L21/316 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073787
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000173795
【氏名又は名称】公益財団法人電磁材料研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川上 祥広
【テーマコード(参考)】
5F058
【Fターム(参考)】
5F058BA20
5F058BB05
5F058BC03
5F058BD05
5F058BF01
5F058BF21
5F058BH01
(57)【要約】
【課題】表面平滑性の向上を図りうる圧電性材料膜の製造方法等を提供する。
【解決手段】基板10の表面に、圧電性セラミックス材料の造粒粉末を原料粉末として用いてエアロゾルデポジション法によりアズデポ膜が成膜される。造粒粉末は、メジアン径D50が10~100μmの範囲に含まれ、かつ、変動係数CV値が0.1~0.6の範囲に含まれている。圧電性材料膜20の平均結晶粒径が0.05~2.0μmの範囲に含まれ、平均気孔径が0.5~2μmの範囲に含まれ、気孔率が0.01~0.05(0.5~5%)の範囲に含まれ、圧縮残留応力が30~300MPaの範囲に含まれ、かつ、表面粗さRaが0.05~0.3μmの範囲に含まれるように、アズデポ膜が熱処理される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均結晶粒径が0.05~2.0μmの範囲に含まれ、
平均気孔径が0.01~2μmの範囲に含まれ、
気孔率が0.005~0.05の範囲に含まれ、
圧縮残留応力が10~300MPaの範囲に含まれ、かつ、
表面粗さRaが0.03~0.5μmの範囲に含まれている
圧電性材料膜。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電性材料膜の製造方法であって、
基板の表面に、メジアン径D50が10~100μmの範囲に含まれ、かつ、変動係数CV値が0.1~0.6の範囲に含まれている圧電性セラミックス材料の造粒粉末を原料粉末として用いてエアロゾルデポジション法によりアズデポ膜を成膜する工程と、
前記アズデポ膜を熱処理する工程と、を含む圧電性材料膜の製造方法。
【請求項3】
支持部材により片持ち状態で支持され、前記支持部材を基準として延在している弾性変形可能な金属からなる基板と、
前記基板の上に誘電性材料膜を介して形成されている圧電性材料膜と、
前記圧電性材料膜に対して電圧を印加可能に配置されている第1電極および第2電極と、を備え、
前記圧電性材料膜の平均結晶粒径が0.05~2.0μmの範囲に含まれ、平均気孔径が0.01~2μmの範囲に含まれ、気孔率が0.005~0.05の範囲に含まれ、圧縮残留応力が10~300MPaの範囲に含まれ、かつ、表面粗さRaが0.03~0.5μmの範囲に含まれている
振動発電素子。
【請求項4】
請求項3に記載の振動発電素子において、
前記第1電極が第1櫛歯電極により構成され、前記第2電極が第2櫛歯電極により構成され、
前記第1櫛歯電極を構成する複数の第1櫛歯部分および前記第2櫛歯電極を構成する複数の第2櫛歯部分が、前記基板の長手方向について交互に隣接するように、前記第1櫛歯電極および前記第2櫛歯電極が配置され、
前記第1櫛歯部分および前記第2櫛歯部分のそれぞれの幅bが前記圧電性材料膜の厚さt1より小さく、
前記誘電性材料膜の誘電率ε2に対する前記圧電性材料膜の誘電率ε1の比率r=(ε1/ε2)が50~300の範囲に含まれ、
前記圧電性材料膜の厚さt1が10~50μmの範囲に含まれ、
前記誘電性材料膜の厚さt2が0.5~3μmの範囲に含まれ、
前記第1櫛歯部分と前記第2櫛歯部分との間隔aが2t1より大きく、かつ、t1+rt2より小さい範囲に含まれている
振動発電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電性を有する圧電性材料膜、当該圧電性材料膜を製造する方法、および、当該圧電性材料膜を用いた振動発電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者により、コストの低減を図る一方で特性の向上および機械的堅牢性の向上を図りうる振動発電素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この振動発電素子は、支持部材により片持ち状態で支持され、当該支持部材を基準として延在している弾性変形可能な金属からなる基板と、当該基板の上に誘電性材料膜を介して形成されている圧電性材料膜と、圧電性材料膜の上に形成されている第1櫛歯電極および第2櫛歯電極と、を備えている。第1櫛歯電極を構成する複数の第1櫛歯部分および第2櫛歯電極を構成する複数の第2櫛歯部分が、基板の長手方向について交互に隣接するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、圧電性材料膜の表面の平滑性が低い場合、第1櫛歯電極および第2櫛歯電極の形状精度が低下し、ひいては振動発電素子の性能低下を招来する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、表面平滑性の向上を図りうる圧電性材料膜の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の圧電性材料膜は、
平均結晶粒径が0.05~2.0μmの範囲に含まれ、
平均気孔径が0.01~2μmの範囲に含まれ、
気孔率が0.005~0.05(0.5~5%)の範囲に含まれ、
圧縮残留応力が10~300MPaの範囲に含まれ、かつ、
表面粗さRaが0.01~0.5μmの範囲に含まれている。
【0007】
本発明の前記構成の圧電性材料膜を製造する方法は、
基板の表面に、メジアン径D50が10~100μmの範囲に含まれ、かつ、変動係数CV値が0.1~0.6の範囲に含まれている圧電性セラミックス材料の造粒粉末を原料粉末として用いてエアロゾルデポジション法によりアズデポ膜を成膜する工程と、
前記アズデポ膜を熱処理する工程と、を含む。
【0008】
当該構成の方法によれば、エアロゾルデポジション法によりアズデポ膜が製膜される際の原料粉末として、圧電性セラミックス材料の1次粒子ではなく、メジアン径D50が10~100μmの範囲に含まれ、かつ、変動係数CV値(=標準偏差/D50)が0.1~0.6の範囲に含まれている圧電性セラミックス材料の造粒粉末(2次粒子)が用いられている。これにより、アズデポ(as-deposited)膜が熱処理された結果として得られる圧電性材料膜の表面粗さRaが0.01~0.5μmの範囲に含まれるような表面平滑性の向上が図られる。
【0009】
本発明の振動発電素子は、
支持部材により片持ち状態で支持され、前記支持部材を基準として延在している弾性変形可能な金属からなる基板と、
前記基板の上に誘電性材料膜を介して形成されている圧電性材料膜と、
前記圧電性材料膜に対して電圧を印加可能に配置されている第1電極および第2電極と、を備え、
前記圧電性材料膜の平均結晶粒径が0.05~2.0μmの範囲に含まれ、平均気孔径が0.01~2μmの範囲に含まれ、気孔率が0.005~0.05(0.5~5%)の範囲に含まれ、圧縮残留応力が10~300MPaの範囲に含まれ、かつ、表面粗さRaが0.03~0.5μmの範囲に含まれている。
【0010】
当該構成の振動発電素子によれば、圧電性材料膜の表面の平滑性の向上が図られているので、第1電極および第2電極のそれぞれの形状精度の向上、ひいては振動発電素子の性能の向上が図られる。
【0011】
前記構成の振動発電素子において、
前記第1電極が第1櫛歯電極により構成され、前記第2電極が第2櫛歯電極により構成され、
前記第1櫛歯電極を構成する複数の第1櫛歯部分および前記第2櫛歯電極を構成する複数の第2櫛歯部分が、前記基板の長手方向について交互に隣接するように、前記第1櫛歯電極および前記第2櫛歯電極が配置され、
前記第1櫛歯部分および前記第2櫛歯部分のそれぞれの幅bが前記圧電性材料膜の厚さt1より小さく、
前記誘電性材料膜の誘電率ε2に対する前記圧電性材料膜の誘電率ε1の比率r=(ε1/ε2)が50~300の範囲に含まれ、
前記圧電性材料膜の厚さt1が10~50μmの範囲に含まれ、
前記誘電性材料膜の厚さt2が1~3μmの範囲に含まれ、
前記第1櫛歯部分と前記第2櫛歯部分との間隔aが2t1より大きく、かつ、t1+rt2より小さい範囲に含まれている。
【0012】
当該構成の振動発電素子によれば、基板と圧電性材料膜(強誘電性材料膜)との間に誘電性材料膜が形成されている。このため、第1櫛歯電極と第2櫛歯電極との間に電圧が印加された際に、圧電性材料膜の厚み方向に対して平行な方向の電界成分が主成分となることが回避される。したがって、圧電性材料膜の上において隣接する第1電極の少なくとも一部(または第1櫛歯電極の第1櫛歯部分)および第1電極の少なくとも一部(または第2櫛歯電極の第2櫛歯部分)の間に、当該圧電性材料膜の抗電界よりも十分に強い電界が印加された際、圧電性材料膜の内部において圧電性材料膜の厚み方向に対して垂直な面方向または基板の延在方向に自発分極の向きを揃えることが可能になる。
【0013】
これにより、圧電性材料膜を面方向に分極の向きが揃えられた圧電体として機能させることができる。そして、片持ち梁を構成する金属基板の曲げ変形に応じて圧電性材料膜に分極方向と平行に応力が印加されることにより、圧電縦効果によって複数の第1櫛歯部分を有する第1櫛歯電極と複数の第2櫛歯部分を有する第2櫛歯電極との間に電圧を発生させることが可能になる。
【0014】
このように当該構成の振動発電素子によれば強誘電性材料膜の膜表面にのみ電極を形成することで圧電層を形成することが可能となり、貴金属を電極として使用する必要がなく熱処理を行うことが可能になる。また、表面平滑性および膜質の向上は、上記に加え膜厚方向に分極の向きを揃える横効果の特性向上にも寄与することは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態としての振動発電素子の上面図。
【
図2】
図1のII-II断面線に沿った振動発電素子の断面図。
【
図3】櫛歯電極間に電圧印加時の圧電性材料膜における電界を示す模式図。
【
図5A】2次粒子を用いたAD膜由来の圧電性材料膜の表面性状を示す図。
【
図5B】1次粒子を用いたAD膜由来の圧電性材料膜の表面性状を示す図。
【
図6】本発明の他の実施形態としての振動発電素子の構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(構成)
図1および
図2に示されている本発明の一実施形態としての振動発電素子は、基板10と、基板10の上に誘電性材料膜102を介して形成されている圧電性材料膜20と、圧電性材料膜20の上に形成されている第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42と、を備えている。
【0017】
(基板)
基板10は、例えば、可撓性があるまたは弾性変形可能な略矩形状の厚さ20~200μmの金属板材により構成されている。基板10は、好ましくはAlを含有している耐熱性ステンレス鋼からなり、表面には酸化アルミニウム(Al2O3)を主成分とする、厚さ1μm以上の誘電性材料膜102が形成されている。この誘電性材料膜102により、圧電性材料膜20に基板10と共に熱処理が施された場合でも、基板10および圧電性材料膜20のそれぞれの成分の拡散が防止されうる。
【0018】
(固定方法)
略矩形板状の基板10は、その下面(圧電性材料膜20が形成された一方の主面とは反対側にある他方の主面)の一端部において支持部材11に接合または接着されることにより、当該支持部材11によって片持ち状態で支持され、支持部材11を基準として第1指定方向(X方向)に延在している。圧電性材料膜20が形成された基板10を挟持する樹脂製のクランプ、または、基台および基板10を当該基台取り付けるためのネジなどの機械的固定機構により支持部材11が構成されていてもよい。
【0019】
(圧電性材料)
圧電性材料膜20は、生体に装着する用途および廃棄時の環境負荷の観点から、非鉛系圧電セラミック材料により構成されていることが好ましい。圧電性材料膜20は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)、(KxNa1-x)NbO3系、(Bi0.5Na0.5)TiO3系、(Bi0.5K0.5)TiO3を主成分とした非鉛圧電性材料の薄膜により構成されている。
【0020】
(圧電性材料膜および誘電性材料膜の構成)
圧電性材料膜20の厚さt1は、例えば10~50μmの範囲に含まれるように調整される。これは、圧電性材料膜20の厚さt1が50μmを超える場合、基板10の曲げ変形により圧電性材料膜20にクラックなどの機械的破壊が発生しやすくなるためである。また、圧電性材料膜20の厚さt1が10μmに満たない場合、発電エネルギーが低下するためである。
【0021】
圧電性材料膜20の誘電率ε1よりも低い誘電率ε2を有する誘電性材料膜102を形成することが好ましい。これは、圧電性材料膜20の分極処理に際して、面方向(主面に平行な方向)の電界強度が圧電性材料膜20の抗電界Ecとなるように、第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42の間、ひいては隣接しあう第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の間に電圧が印加された際、圧電性材料膜20の厚さ方向(Z方向)の電界成分が主成分になることを回避するためである。
【0022】
誘電性材料膜102の厚さt
2が0.5~3μmの範囲に含まれるように調整される。これは、電界成分の制御の効果を図りながら、その形成の容易を図るためである。
図3には、隣接しあう第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の間に電圧が印加された場合における、圧電性材料膜20における電界方向成分が当該方向を向く矢印により模式的に示されている。
【0023】
圧電性材料膜の20の平均結晶粒径が0.05~2.0μmの範囲に含まれている。圧電性材料膜の20の平均結晶粒径が0.1~1.5μmの範囲に含まれていることが好ましく、0.3~1.5μmの範囲に含まれていることが好ましい。
【0024】
圧電性材料膜の20の平均気孔径が0.01~2μmの範囲に含まれている。圧電性材料膜の20の平均気孔径が0.1~1.8μmの範囲に含まれていることが好ましく、0.3~1.5μmの範囲に含まれていることが好ましい。
【0025】
圧電性材料膜の20の気孔率が0.005~0.05(0.5~5%)の範囲に含まれている。圧電性材料膜の20の気孔率が0.01~0.04(1~4%)の範囲に含まれていることが好ましい。
【0026】
圧電性材料膜20の圧縮残留応力が10~300MPaの範囲に含まれている。圧電性材料膜の20の圧縮残留応力が30~250MPaの範囲に含まれていることが好ましく、50~150MPaの範囲に含まれていることが好ましい。XRDのピークの半値幅およびピークシフトから求められるアズデポ膜の圧縮残留応力は比較的大きい。アズデポ膜が熱処理されることにより結晶粒の成長が促進され、圧電性材料膜20(または熱処理中の未完成膜)の結晶性が向上するため、その圧縮残留応力はアズデポ膜と比較して少し小さい。しかし、アズデポ膜の熱処理温度が高くなると、基板10および圧電性材料膜20(または熱処理中の未完成膜)の線膨張係数の差が熱応力となって、当該圧電性材料膜20の圧縮残留応力が大きくなる。アズデポ膜の熱処理温度がさらに高くなり、圧電性材料膜20(または熱処理中の未完成膜)の粒径が大きくなると粒内に自発分極(格子の長軸方向)が異なる分域を形成して残留応力が緩和される。
【0027】
圧電性材料膜の20の表面粗さRaが0.03~0.5μmの範囲に含まれている。表面粗さRaが0.03μm未満である場合、表面平滑性がそこまで高い圧電性材料膜20の形成が困難であるためであり、表面粗さRaが0.5μmを超えると、圧電性材料膜の20の表面平滑性が低いために第1櫛歯電極41および/または第2櫛歯電極42の形状精度に影響を及ぼすためである。圧電性材料膜の20の表面粗さRaが0.05~0.3μmの範囲に含まれていることが好ましく、0.1~0.25μmの範囲に含まれていることが好ましい。
【0028】
(櫛歯電極の説明)
第1櫛歯電極41は、支持部材11による支持箇所を基準として基板10の延在方向(+X方向)に延在している第1基礎部分411と、第1基礎部分411から基板10の延在方向に対して垂直な方向(-Y方向)に延在している複数の第1櫛歯部分412と、を有している。第2櫛歯電極42は、支持部材11による支持箇所を基準として基板10の延在方向(+X方向)に延在している第2基礎部分421と、第2基礎部分421から基板10の延在方向に対して垂直な方向(+Y方向)に延在している複数の第2櫛歯部分422と、を有している。第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42は、金属などの導電体により構成されている。第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42のそれぞれは、圧電性材料膜20の上面を全面的に覆うものではないため、第1櫛歯電極41および/または第2櫛歯電極42が貴金属で構成されていてもその材料コストの低減が図られている。
【0029】
(圧電式振動発電エネルギーの関係式と寸法パラメータ)
基板10の長手方向(X方向)について複数の第1櫛歯部分412および複数の第2櫛歯部分422が存在する範囲の長さである基板10の梁長L、第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の基板10の短手方向(Y方向)についての重なり長さwe、圧電性材料膜20の圧電縦効果の圧電定数d33、圧電性材料膜20の厚さt1および誘電率ε1、真空の誘電率ε0、第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422のそれぞれの幅b、第1櫛歯部分412と第2櫛歯部分422との間隔a、ならびに、基板10の延在方向の曲げ変形により圧電性材料膜40に加わる応力Tおよび当該応力Tに応じた第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42の電位差に応じた発電エネルギーU33の間に、関係式(01)で表わされる関係がある。
【0030】
U33={d33
2/(2ε1ε0)}(wet1L)T2{a/(a+b)} ‥(01)。
【0031】
関係式(01)は、基板10が圧電性材料膜20の分極軸と平行な方向(第2指定方向)に応力が加わる片持ち梁構造であるため、圧電縦効果による発電エネルギーを表わす式である。
【0032】
圧電横効果素子としての振動発電素子は、圧電性材料膜を上下から一対の電極で挟み込む構造であり、分極方向が圧電性材料膜の厚さ方向である一方、圧電性材料膜に応力が印加される方向は分極方向と垂直な方向である。これは、圧電横効果素子であり、圧電横効果の発電エネルギーは関係式(01)の圧電定数がd31となり、a/(a+b)の項が不要になる。したがって、発電エネルギーU31は関係式(02)で表わされる。
【0033】
U31={d31
2/(2ε1ε0)}T2(wet1L) ‥(02)。
【0034】
圧電セラミックスの場合、材料のポアソン比の関係から一般的に圧電定数d33≒2×d31の関係がある。このため、同じ応力が基板10および圧電性材料膜20に加わった場合、圧電縦効果による発電エネルギーU33が圧電横効果による発電エネルギーU31よりも大きくなるには、関係式(01)および関係式(02)から、不等式4a/(a+b)>1で表わされる関係が成り立つ必要がある。すなわち、U33>U31の関係が成り立つためには、第1櫛歯電極41の第1櫛歯部分412および第2櫛歯電極42の第2櫛歯部分422のそれぞれの電極幅bと、第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の間隔aと、の間には不等式b/a<3で表わされる関係が成り立つ必要がある。
【0035】
(誘電性材料膜の効果)
基板10の上に形成された圧電性材料膜20が熱処理される際の誘電性材料膜102(拡散バリア層)の誘電率ε2が圧電性材料膜20の誘電率ε1よりも小さいことに着目し、その厚さt2を制御することで基板10の上に形成された圧電性材料膜20を全体的に圧電縦効果素子として機能させることができる。
【0036】
誘電性材料膜102の誘電率ε2に対する圧電性材料膜20の誘電率ε1の比率r=(ε1/ε2)が50~300の範囲に含まれている。第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422のそれぞれの幅b(基板10の長手方向についてのサイズ)が圧電性材料膜20の厚さt1より小さい。
【0037】
金属製の基板10の主面に誘電性材料膜102を介して形成された圧電性材料膜20の分極の向きを面内方向(X方向)に揃える分極処理に際して、圧電性材料膜20の表面に形成された第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42の間に電圧が印加される。この際、第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42のそれぞれと基板10との間にも電位差が生じる。このため、第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42の間で圧電性材料膜20の面内方向に電場の向きを揃える必要がある。
【0038】
基板10と圧電性材料膜20との間に誘電性材料膜102が設けられていることにより、基板10と第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42との実効間隔(または圧電性材料膜20の実効厚さ)が、圧電性材料膜20の厚さt1の(1+n)倍(n=(ε1/t1)/(ε2/t2))になる。すなわち、誘電性材料膜102の介在により、圧電性材料膜20の厚さt1が(1+n)倍に見かけ上は増大されている。例えば、(ε1/ε2)=50、t1=50μm、かつ、t2=1μmである場合、基板10と櫛歯電極41、42との実効間隔(1+n)t1が、圧電性材料膜20の厚さt1の2倍(n=1)になる。また、(ε1/ε2)=300、t1=10μm、かつ、t2=3μmである場合、基板10と櫛歯電極41、42との実効間隔(1+n)t1が、圧電性材料膜20の厚さt1の91倍(n=90)になる。
【0039】
FEM解析によれば、電極幅bが圧電性材料膜20の厚さt1よりも小さく、かつ、電極間隔aが2t1よりも小さい場合、第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42の間の電界強度EのX方向成分Exは、圧電性材料膜20の上面(圧電性材料膜20と第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42との境界面)からの深さに応じて不均一になる。例えば、隣接しあう第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の中間地点において、圧電性材料膜20の上面(圧電性材料膜20と第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42との境界面)からの深さ0.25t1、0.50t1および0.75t1のそれぞれにおける圧電性材料膜20の電界EのX方向成分Ex(0.25)、Ex(0.50)およびEx(0.75)のそれぞれが不均一であることが確認された。ここで「不均一」であるとは、max(Ex(0.25)、Ex(0.50)、Ex(0.75))/min(Ex(0.25)、Ex(0.50)、Ex(0.75))が1.20を超えることを意味する。
【0040】
その一方、同じくFEM解析によれば、電極幅bが圧電性材料膜20の厚さt1よりも小さく、かつ、電極間隔aが2t1以上の範囲に含まれている場合、第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42の間の電界強度EのX方向成分Exは、圧電性材料膜20の上面(圧電性材料膜20と第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42との境界面)からの深さによらずにほぼ均一になる。この条件は関係式(11)により表わされる。
【0041】
b<t1≦a/2 ‥(11)。
【0042】
例えば、隣接しあう第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の中間地点において、圧電性材料膜20の上面(圧電性材料膜20と第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42との境界面)からの深さ0.25t1、0.50t1および0.75t1のそれぞれにおける圧電性材料膜20の電界EのX方向成分Ex(0.25)、Ex(0.50)およびEx(0.75)のそれぞれが不均一であることが確認された。ここで「ほぼ均一」であるとは、max(Ex(0.25)、Ex(0.50)、Ex(0.75))/min(Ex(0.25)、Ex(0.50)、Ex(0.75))が1.0~1.20の範囲に含まれることを意味する。
【0043】
したがって、b<t1の条件下では、分極処理により圧電性材料膜20の自発分極の向きを厚さ方向にも均一に揃えるには、
電界Eの圧電性材料膜20のX方向成分Exの大きさが抗電界Ec以上となるように隣接している第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の間の電界Eが調整されればよい。
【0044】
(電界強度Eの定義と、電界Ex,Ezの説明)
第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42の間に電圧Vが印加された場合、基板10の長手方向について間隔aで隣接している第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の間の電界強度EはV/aである。電界の圧電性材料膜20の厚さ方向(Z方向)の成分をEz、電界の圧電性材料膜20の長手方向(X方向)の成分をExとすると、圧電性材料膜20の分極方向をx方向にそろえる観点から、電界のX方向成分Exの大きさが圧電性材料膜20の抗電界Ec以上である必要がある。ExおよびEzは有限要素法によりシミュレーション計算可能である。
【0045】
(電界強度比Rの定義)
ここで、電界EのX方向成分Exは、第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の間で、圧電性材料膜20の複数箇所(例えば、第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の中間において、圧電性材料膜20の表面から異なる複数の深さ箇所)の電界のX方向成分Exの平均値が採用される。例えば、圧電性材料膜20の分極方向をx方向にそろえることができる条件として、Ex>Ecである必要がある。櫛歯型の電極パターンではExの大きさはEよりも小さくなるためExをEcよりも大きくして分極処理を行うにはEの大きさは膜を電極で挟み込む構造の時の電界強度よりも大きくする必要がある。
【0046】
そのため充分な大きさのExを印加するための製造条件として電界強度EをEcの3倍と設定する。現実的には第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42の間で放電せず電界が圧電性材料膜20に印加される大きさのEが選択されてもよい。Exの大きさは櫛歯電極の電極パターン寸法、圧電性材料膜20の形状寸法の条件によって変わるため、ExがEc以上となるような電極や圧電性材料膜20の形状を決定する必要がある。電界強度比R=Ex/Eを定義するとE≧3Ecの製造条件を満たすにはより電界強度比R=Ex/Eが1/3以上であるという条件が採用される。
【0047】
ここで、第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の間隔aが、基板10と櫛歯電極41、42との実効間隔(1+n)t1またはt1+r・t2(r=(ε1/ε2))よりも小さく設計される。この条件は関係式(12)により表わされる。
【0048】
a<(1+n)t1=t1+r・t2 ‥(12)。
【0049】
これは、第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422の間隔aが、基板10と櫛歯電極41、42との実効間隔(1+n)t1以上である場合、第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42の間の電界強度Eに対するX方向成分Exの比である電界強度比R=(Ex/E)が1/3を下回るためである。
【0050】
(製造方法)
本発明の一実施形態としての振動発電素子の製造方法について説明する。
【0051】
(AD法による成膜)
真空中において、Alを含有している耐熱性ステンレス鋼からなる略矩形板状の基板10の上に、例えば粒径が1μm程度の非鉛圧電セラミックス粉末、具体的には、原料粉末としてのチタン酸バリウム(BaTiO3)粉末がノズルから噴射されて基板10に衝突させられることにより、エアロゾルデポジション(AD)による成膜が実施される。このAD法により所望の10~50μmの厚さの圧電性材料膜20が形成される。アズデポ膜(AD膜)の表面平滑性、ひいては圧電性材料膜20の表面平滑性の向上の観点から、基板10の表面粗さRaが0.01~0.5μm(または0.1~0.4μmもしくは0.15~0.3μm)の範囲になるように基板10に物理的および/または化学的に表面処理が施されていてもよい。
【0052】
基板10として未研磨品(Rax(x:圧延直交方向)=0.25μm、Ray(y:圧延方向)=0.12μm))が用いられた場合、圧電性材料膜20としての厚さ3μmのチタン酸バリウム膜のRaxは0.233μm、Rayは0.239μmであった。これに対して、基板10として研磨品(Rax=0.032μm、Ray=0.034μm)が用いられた場合、圧電性材料膜20としての厚さ3μmのチタン酸バリウム膜のRaxは0.211μm、Rayは0.233μmであった。
【0053】
ここで用いられる原料粉末として、1次粒子ではなく、当該1次粒子がスプレードライ法により造粒された2次粒子(造粒粉末)が用いられた。スプレードライに際して、PVAがバインダとして1~2%程度添加された。
図4Aには、2次粒子の粒度分布(粒子径分布)が示されている。
図4Aに示されている2次粒子の粒度分布は、メジアン径D50が10~100μm(好ましくは10~80μm、より好ましくは10~60μm)の範囲に含まれ、かつ、変動係数CV値(=標準偏差/D50)が0.1~0.6(好ましくは0.2~0.5、より好ましくは0.25~0.4)の範囲に含まれている。
図4Bには、参考のため、1次粒子の粒度分布が示されている。
【0054】
チタン酸バリウム(BaTiO3)粉末は、残存BaCO3が少なくなる製法で作製された粉末であることが好ましい。BaCO3が残存していると熱処理過程でCO2ガスが発生して膜剥がれ(基板10から圧電性材料膜20が剥がれること)の原因となるためである。
【0055】
(AD膜の可撓性および密着強度)
AD法により形成されたままの膜(アズデポ膜)は、基板10に対してアンカー効果により強固に接合される。この強固な接合は、最終的な状態の圧電性材料膜20においても保たれる。そのため、振動発電素子を曲げ変形させた際に圧電性材料膜20が割れたり基板10から剥がれたりする可能性が低減される。このように、AD法は、可撓性を有する圧電性材料膜20を得るために適した方法である。
【0056】
(圧電性材料膜の結晶粒径の調整)
アズデポ膜の微細組織は、AD法に使用した原料粉末(1次粒子)の粒径よりも小さく、数十nm程度まで微細化されているために圧電性が低いため、熱処理により結晶粒成長を促進する必要がある。一方、セラミックスの破壊は一般的に粒界面で発生するため、圧電性材料膜20の強度を向上させるには粒界面が多い微結晶組織の方が望ましい。圧電特性の向上の観点から圧電性材料膜20を構成する結晶の平均結晶粒径が100nm以上になり、かつ、圧電性材料膜20の強度の確保の観点から圧電性材料膜20を構成する結晶の平均結晶粒径が2000nm以下になるように、アズデポ膜に対して800~1200℃で1~4hrにわたり熱処理が施される。
【0057】
この際、圧電性材料膜20の平均結晶粒径が0.05~2.0μmの範囲に含まれ、平均気孔径が0.01~2μmの範囲に含まれ、気孔率が0.005~0.05の範囲に含まれ、圧縮残留応力が10~300MPaの範囲に含まれ、かつ、表面粗さRaが0.03~0.3μmの範囲に含まれるように、熱処理温度(熱処理温度の時間変化パターン)および熱処理時間のそれぞれが制御される。平均気孔径および気孔率は、電子顕微鏡の写真が画像処理されることにより求められた。
【0058】
図5Aには、
図4Aに示されている粒度分布を有するチタン酸バリウムの2次粒子を用いて作製されたアズデポ膜(AD膜)由来の実施例の圧電性材料膜20の表面の様子を示す写真が示されている。
図5Bには、
図4Bに示されている粒度分布を有するチタン酸バリウムの1次粒子を用いて作製されたアズデポ膜(AD膜)由来の参考例の圧電性材料膜20の表面の様子を示す写真が示されている。
図5Bに示されているように、参考例の圧電性材料膜20の表面には、1次粒子由来の50~100μm程度の拡がりを有するクレーター状の打痕が存在している。その一方、
図5Aに示されているように、実施例の圧電性材料膜20の表面には、そのような打痕は存在せず、その表面平滑性が高い。
【0059】
(誘電性材料膜(拡散バリア層)の形成)
熱処理工程において基板10と圧電性材料膜20との間にAlの酸化物(Al2O3)を主成分とする誘電性材料膜102が形成される。これにより、誘電性材料膜102がステンレス製の基板10と圧電性材料膜20との間の成分拡散を抑制する拡散バリア層として機能し、900℃以上の高温で熱処理される際に基板10と圧電性材料膜20とが反応する事態が回避される。ステンレス製の基板10の主面に1μm以上の厚さの誘電性材料膜102があらかじめ形成されてもよく、Alを含有しているステンレス製の基板10の主面に圧電性材料膜20が直接的に形成された後、当該圧電性材料膜20に熱処理が施されることで誘電性材料膜102が形成されてもよい。
【0060】
(櫛歯電極の形成)
熱処理された後の圧電性材料膜20の上に第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42が形成される。第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42は、導電性膜からなるものであり、例えば0.4~0.6μmの厚みを有している。導電性膜は例えばスパッタ法または蒸着法により形成することができる。第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42は、Au膜に限定されるものではなく、Cu膜またはCu合金膜など、他の金属からなる金属膜であってもよく、Au/Ni/Tiなどの多層構造であってもよい。
【0061】
(分極処理)
アズデポ膜およびこれが熱処理されて得られた熱処理後膜は多結晶組織であるため、そのままでは、電気分極の向きがランダムである。そこで、分極の向きを揃えるために分極反転する電界強度以上の電圧(所定の電圧)が第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42の間で熱処理後膜に印加される。誘電性材料膜102が基板10と圧電性材料膜20との間に形成されていない場合および圧電性材料膜20の厚さt1に対して誘電性材料膜102の厚さt2が過度に小さい場合、電界の圧電性材料膜20の厚み方向(Z方向)成分が主成分となりやすくなるため、誘電性材料膜102の厚さt2は1μm以上であることが望ましい。誘電性材料膜102(拡散バリア層)の誘電率ε2が圧電性材料膜20の誘電率ε1よりも小さくすることで圧電性材料膜20における電界の面方向成分または第2指定方向成分(Y方向成分)が主成分となる。
【0062】
また、ステンレスなどの金属からなる基板10の主面に、厚さが3μmを超える誘電性材料膜102を形成するには、薄膜形成法では成膜レートが遅いため生産効率の観点で現実的ではない。AD法などの厚膜形成法によれば、厚さが3μmを超える誘電性材料膜102を形成することは可能であるが、発電エネルギー向上の観点から誘電性材料膜102を厚くするよりも圧電性材料膜20を厚くする方が性能向上に対する効果が大きい。このため、誘電性材料膜102の厚さが3μm以下に調節された。また、誘電性材料膜102を形成する方法としてAlを含むステンレス基材を使用することで、当該基材に含まれているAlの熱酸化によって誘電性材料膜102を形成することが可能であり、圧電性材料膜20の熱処理過程でも被膜が厚く成長し、かつ圧電性材料膜20と誘電性材料膜102の密着強度を向上させる効果が奏される。
【0063】
これにより、本発明の一実施形態としての振動発電素子が製造される(
図1および
図2参照)。
【0064】
(本発明の他の実施形態)
図6に示されている本発明の他の実施形態としての振動発電素子は、
図1および
図2に示されている前記実施形態の振動発電素子と共通の構成を有し、当該共通の構成については同一の符号を用いるとともにその詳細な説明を省略する。
図6に示されているように、この振動発電素子は基板10と、基板10の上に誘電性材料膜102を介して形成されている第1電極410と、第1電極410の上に形成されている圧電性材料膜20と、圧電性材料膜20の上に形成されている第2電極420と、を備えている。当該振動発電素子は、圧電横効果素子であり、圧電性材料膜20を一対の電極410および420により挟み込む構造であり、分極方向が圧電性材料膜20の厚さ方向である一方、圧電性材料膜20に応力が印加される方向は分極方向と垂直な方向である。当該一対の電極410および420は、前記実施形態における第1櫛歯電極41および/または第2櫛歯電極42と同程度の厚みの金属により構成されていてもよい。
【0065】
図6に示されているように、第2電極420は略矩形状に形成されているが、少なくとも部分的に第1電極410と対向するのであれば、その形状は略円形状、略楕円形状、略平行四辺形状、略台形状、略正N角形など、任意の形状であってもよい。「略」とは、隅角が丸みを帯びていること等の微細な相違を除き、数学的に厳密にその形状であることを意味する。
【0066】
前記実施形態における第1櫛歯電極41および第2櫛歯電極42に代えて、第1櫛歯部分412および第2櫛歯部分422のように、基板10の長手方向について少なくとも部分的に相互に対向して配置された第1電極および第2電極が圧電性材料膜20の表面に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10‥基板
11‥支持部材
20‥圧電性材料膜(強誘電性材料膜)
41‥第1櫛歯電極
42‥第2櫛歯電極
102‥誘電性材料膜(拡散バリア層)
410‥第1電極
411‥第1基礎部分
412‥第1櫛歯部分
420‥第2電極
421‥第2基礎部分
422‥第2櫛歯部分