(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158528
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電動車両の充電制御方法、充電制御装置及び充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20241031BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241031BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241031BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20241031BHJP
B60L 53/62 20190101ALI20241031BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20241031BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20241031BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H02J7/00 P
B60L50/60
B60L53/14
B60L53/62
B60L53/63
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073790
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 崇
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA04
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA08
5G503CA10
5G503CA11
5G503CB16
5G503DA04
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC05
5H125BC21
5H125BC24
5H125BE02
5H125CC04
5H125CD10
5H125DD02
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】充電効率が向上した電動車両の充電制御方法及び充電制御装置を提供する。
【解決手段】複数の充電ポートにより、複数の電動車両のバッテリを充電可能なマルチポート充電器における電動車両の充電制御方法が提供される。この充電制御方法は、充電対象車両に設定された出発予定時間に基づき、当該充電対象車両に必要な充電電力を算出し、マルチポート充電器が出力可能な電力の上限値である出力上限値に基づき、充電対象車両に必要な充電電力を供給可能か否かを判断する。必要な充電電力を供給できない場合、充電中または充電を完了した他車両から放電して、当該放電電力とマルチポート充電器からの出力電力とを充電対象車両に充電電力として供給する。また、当該放電は、放電を行う放電車両の出発予定時間に基づき算出される放電可能な出力電力の範囲内で実行される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の充電ポートにより、複数の電動車両のバッテリを充電可能なマルチポート充電器における電動車両の充電制御方法であって、
充電対象車両に設定された出発予定時間に基づき、当該充電対象車両に必要な充電電力を算出し、
前記マルチポート充電器が出力可能な電力の上限値である出力上限値に基づき、前記充電対象車両に必要な充電電力を供給可能か否かを判断し、
前記必要な充電電力を供給できない場合、充電中または充電を完了した他車両から放電して、当該放電電力と前記マルチポート充電器からの出力電力とを前記充電対象車両に充電電力として供給し、
前記放電は、前記放電を行う放電車両の出発予定時間に基づき算出される放電可能な出力電力の範囲内で実行される、
電動車両の充電制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両の充電制御方法であって、
前記放電車両は、充電を完了した充電完了車両がある場合、充電完了車両の中から各充電完了車両の出発予定時間に基づき選定され、充電完了車両が無い場合、充電中の車両の中から、各車両の出発予定時間に基づき選定される、
電動車両の充電制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動車両の充電制御方法であって、
前記放電後に、前記放電車両を再充電するために前記マルチポート充電器から前記放電車両に出力可能な充電電力を予測し、
予測された出力可能な充電電力に基づき、前記放電後における前記放電車両のバッテリSOCの時間に対する増加の傾きを算出し、
前記放電可能な出力電力は、前記SOCの増加の傾きと前記放電車両の出発予定時間とから、算出される、
電動車両の充電制御方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の電動車両の充電制御方法であって、
前記マルチポート充電器に接続された各電動車両のバッテリの電圧を制御することにより、前記マルチポート充電器からの充電電力の供給及び前記放電車両から前記充電対象車両への充電電力の供給を行う、
電動車両の充電制御方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の電動車両の充電制御方法であって、
前記放電の放電電力及び放電時間に基づき、前記放電車両のユーザに対して、前記マルチポート充電器の使用に関するインセンティブを設定する、
電動車両の充電制御方法。
【請求項6】
複数の充電ポートにより、複数の電動車両のバッテリを充電可能なマルチポート充電器を制御する充電制御装置であって、
充電対象車両に設定された出発予定時間に基づき、当該充電対象車両に必要な充電電力を算出する充電電力算出部と、
前記マルチポート充電器が出力可能な電力の上限値である出力上限値に基づき、前記充電対象車両に必要な充電電力を供給可能か否かを判断する判定部と、
前記必要な充電電力を供給できない場合、充電中または充電を完了した他車両に放電させ、当該放電電力と前記マルチポート充電器からの出力電力とを前記充電対象車両に充電電力として供給する放電指令部と、を備え、
前記放電指令部は、前記放電をさせる他車両の出発予定時間に基づき算出される放電可能な出力電力の範囲内で、前記放電を実行する、
電動車両の充電制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の充電制御装置が、前記マルチポート充電器、前記電動車両の車両コントローラ及び外部サーバのいずれか一つに設置された、
電動車両の充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両の充電制御方法、充電制御装置及び充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の充電ポートにより、複数の電動車両を充電可能なバッテリ充電ステーション(充電器)が開示されている。このバッテリ充電ステーションでは、車両の到着時間、バッテリSOC、意図される出発予定時間等に基づき、各充電ポートの電力分配を決定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、充電器にはそれぞれ出力可能な電力の上限(電力キャパシティ)がある。このため、特許文献1のバッテリ充電ステーション(充電器)において複数の電動車両を充電する場合、充電器の電力キャパシティの制約から、充電対象車両に対し、出発予定時間までに、目標のSOCまで充電することができない虞がある。一方、常に、出発予定時間までに、目標のSOCまで充電できるように、充電器の電力キャパシティをより大きくしておく場合、コストが増大する虞がある。電力キャパシティを低く抑えつつ、目標の時間内に充電を完了できるようにするためには、充電効率の向上が必要となる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みたものであり、充電効率が向上した電動車両の充電制御方法、充電制御装置及び充電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、複数の充電ポートにより、複数の電動車両のバッテリを充電可能なマルチポート充電器における電動車両の充電制御方法が提供される。この充電制御方法は、充電対象車両に設定された出発予定時間に基づき、当該充電対象車両に必要な充電電力を算出し、マルチポート充電器が出力可能な電力の上限値である出力上限値に基づき、充電対象車両に必要な充電電力を供給可能か否かを判断する。必要な充電電力を供給できない場合、充電中または充電を完了した他車両から放電して、当該放電電力とマルチポート充電器からの出力電力とを充電対象車両に充電電力として供給する。また、当該放電は、放電を行う放電車両の出発予定時間に基づき算出される放電可能な出力電力の範囲内で実行される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、充電対象車両に必要な充電電力を供給できない場合、充電中または充電を完了した他車両から、放電可能な出力電力の範囲内で放電して、放電電力とマルチポート充電器からの出力電力とを充電対象車両に充電電力として供給する。即ち、充電電力が不足している充電対象車両に対して、マルチポート充電器からの出力電力とともに、放電可能な範囲で他車両からの放電電力も充電電力として供給する。従って、複数の電動車両に対し、効率良く充電を行うことができ、マルチポート充電器の出力上限を抑えつつ、出発予定時間までに各充電対象車両の充電を完了させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の充電制御装置を含む充電システムの概略構成図である。
【
図3】
図3は、マルチポート充電器に複数の車両が接続された状態の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、各充電対象車両の充電状態を予測したタイムチャートの一例である。
【
図5】
図5は、マルチポート充電器に複数の車両が接続された状態の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、各充電対象車両の充電状態を予測したタイムチャートの一例である。
【
図7】
図7は、マルチポート充電器に複数の車両が接続された状態の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、各充電対象車両の充電状態を予測したタイムチャートの一例である。
【
図9】
図9は、放電制御を説明するフローチャートである。
【
図10】
図10は、変形例による放電制御実行時におけるマルチポート充電器の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態の電動車両の充電制御方法が採用された充電制御装置100を含む充電システム1の概略構成図であり、
図2は、充電制御装置100の概略構成図である。
【0011】
充電システム1は、充電制御装置100と、充電制御装置100の制御対象であるマルチポート充電器10とから構成される。
【0012】
マルチポート充電器10は、給電機器(EVSE:Electric Vehicle Supply Equipment)11、接続装置12、及び複数の充電ポート13(13A~13E)を備え、同時に複数の電動車両(以下、単に車両とも言う)を充電可能に構成される。例えば、
図1では、充電ポート13Aに車両Aが、充電ポート13Bに車両Bが、充電ポート13Cに車両Cがそれぞれ接続されており、マルチポート充電器10は、車両A~Cのバッテリを同時に充電することができる。以下、マルチポート充電器10に接続された電動車両のことを、充電対象車両と言う。
【0013】
給電機器(EVSE)11は、送電設備から配電盤を介して配電される電力を、各充電ポート13に出力する。EVSE11は、接続装置12を介して各充電ポート13に電気的に接続されている。EVSE11から出力される電力は、各充電ポート13(13A~13E)を介して、充電電力として各充電対象車両に供給される。これにより、各充電対象車両が充電される。なお、EVSE11から出力される電力は、充電制御装置100により制御される。
【0014】
接続装置12は、EVSE11と充電ポート13との間に配置され、EVSE11と各充電ポート13A~13Eとの間の導通状態を切り替えるスイッチ121(121A~121E)を備える。スイッチ121がオン状態の場合、EVSE11と充電ポート13とが導通し、EVSE11から充電ポート13に接続された車両に充電電力が供給される。一方、スイッチ121がオフ状態の場合、EVSE11と充電ポート13との接続が遮断され、充電ポート13に車両が接続されていても、当該車両に充電電力は供給されない。例えば、
図1においては、EVSE11と充電ポート13A,13Bとを接続するライン上のスイッチ121A,121Bがオンであるため、充電ポート13A,13Bに接続された車両A,車両Bのバッテリに充電電力が供給される。一方、EVSE11と充電ポート13Cとを接続するライン上のスイッチ121Cはオフであるため、車両Cのバッテリに充電電力は供給されない。なお、各スイッチ121の動作は、後述の充電制御装置100により制御される。
【0015】
複数の充電ポート13(13A~13E)は、それぞれ充電器131(131A~131E)と、充電対象車両の充電口に接続させる充電ケーブル及びコネクタを備えた充電インターフェース132(132A~132E)とを含む。充電器131は、EVSE11から出力された充電電力を、充電インターフェース132を介して充電対象車両に供給する。例えば、
図1においては、EVSE11から出力された充電電力が、充電器131A,131Bから充電インターフェース132A,132Bを介して車両A,車両Bに供給される。
【0016】
充電制御装置100は、マルチポート充電器10を制御するコントローラにより構成され、1または複数のコンピュータを含み、例えば、中央演算装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び、入出力インターフェース(I/Oインターフェース)等を備える。充電制御装置100は、充電ポート13に接続された車両に対し出力する電力を制御する充電制御を実行するようにプログラムされている。
【0017】
充電制御装置100は、EVSE11を制御可能に構成され、適宜、EVSE11から出力される電力の大きさを制御する。
【0018】
また、充電制御装置100は、充電ポート13に接続された各充電対象車両の車両コントローラと通信可能に構成され、マルチポート充電器10から、各充電対象車両に所望の充電電力が供給されるように、各充電対象車両の車両コントローラを介して、適宜、各充電対象車両のバッテリ電圧を制御する。このように、充電対象車両のバッテリ電圧を制御することで充電対象車両に供給する電力を調整するため、接続装置12のスイッチ121の動作を最小限にすることができるとともに、各充電ポート13から系統(EVSE11)への接続を一つにすることができ、マルチポート充電器10を簡素化することができるため、コストを低減することができる。
【0019】
また、充電制御装置100は、接続装置12のスイッチ121の動作を制御可能に構成され、充電ポート13に接続された車両の有無や充電状態に応じて、適宜スイッチ121のオン、オフを制御する。
【0020】
なお、本実施形態では、充電制御装置100は、マルチポート充電器10の内部に備えられ、マルチポート充電器10の一部として構成されるが、これに限られない。例えば、充電制御装置100を外部サーバに設置し、通信によりマルチポート充電器10を制御するように構成されていてもよく、また、充電制御装置100を電動車両(受電対象車両)の車両コントローラに設置してもよい。
【0021】
図2に示すように、充電制御装置100は、バッテリ情報取得部101、出発予定時間取得部102、充電電力算出部103、第1判定部(判定部)104、充電停止制御部105、第2判定部(判定部)106、放電指令部107、インセンティブ設定部108、ユーザ承諾取得部109、報知部110を含む。
【0022】
バッテリ情報取得部101は、マルチポート充電器10の充電ポート13に接続された車両(充電対象車両)のバッテリの仕様、温度及びSOC等を含むバッテリ情報と、充電対象車両のバッテリの目標SOCを取得する。バッテリの仕様には、バッテリに使用される電池の種類、バッテリの最大充電量及び出入力電圧等が含まれるが、これらに限られない。バッテリ情報取得部101は、充電ポート13を介して、充電対象車両のコントローラから、バッテリの仕様、バッテリの温度情報、バッテリのSOC等を受信(取得)する。また、目標SOCは、充電対象車両の所有者等のユーザ(以下、単にユーザと言う)により設定される。ユーザは、例えば、マルチポート充電器10に備えられたタッチパネル(不図示)等を介して、または、充電予約をする際の予約画面に入力等することで、目標SOCを設定することができる。バッテリ情報取得部101は、ユーザにより設定された目標SOCを受信(取得)する。
【0023】
出発予定時間取得部102は、充電対象車両がマルチポート充電器10から離脱し、出発する予定の時刻である、出発予定時間(以下、出発予定時刻とも言う)を取得する。出発予定時間は、充電対象車両のユーザにより設定される。例えば、マルチポート充電器10のオーナー側は、充電対象車両がマルチポート充電器10に接続されたときから出発予定時刻までの時間の長さに基づき、マルチポート充電器10の使用料金を設定する。時間に余裕のないユーザは、使用料金を上乗せして、出発予定時刻までの時間を短く設定し、時間に余裕のあるユーザは、出発予定時刻までの時間を長めに設定して使用料金を抑えることができる。ユーザは、マルチポート充電器10に備えられたタッチパネル(不図示)等を介して、または、充電予約をする際の予約画面に入力等することで、出発予定時間を設定することができる。出発予定時間取得部102は、ユーザにより設定された出発予定時間を受信(取得)する。なお、出発予定時間の設定方法は上記に限られない。例えば、充電制御装置100が、マルチポート充電器10の使用(混雑)状況や各充電対象車両のSOC等に基づき、自動的に設定するようにしてもよい。
【0024】
充電電力算出部103は、充電対象車両に設定された出発予定時間に基づき、充電対象車両に必要な充電電力を算出する。例えば、マルチポート充電器10に接続された車両Aの出発予定時間がtAである場合、充電電力算出部103は、出発予定時間tAまでに車両Aのバッテリが目標SOCまで充電されるような充電電力を算出する。
【0025】
第1判定部(判定部)104は、マルチポート充電器10が出力可能な電力の上限値(以下、出力上限値と言う)に基づき、マルチポート充電器10が充電対象車両に対し、必要な充電電力を供給可能か否かを判断する。即ち、マルチポート充電器10から複数の車両に電力を供給する場合、マルチポート充電器10からの出力電力が出力上限値に達してしまうことがある。マルチポート充電器10からの出力電力が出力上限値に達すると、充電対象車両に対し、充電電力算出部103で算出した充電対象車両に必要な充電電力をマルチポート充電器10から供給できない場合がある。このような場合、第1判定部104は、必要な充電電力を供給できないと判断する。一方、充電対象車両に対し、マルチポート充電器10の出力上限値の範囲内で、必要な充電電力を供給できる場合、第1判定部104は、必要な充電電力を供給可能と判断する。また、必要な充電電力を供給可能な場合、第1判定部104は、充電対象車両に必要な充電電力を供給できるように、充電対象車両の車両コントローラを介して充電対象車両のバッテリ電圧を制御するとともに、マルチポート充電器10から必要な充電電力に応じた電力を出力する。これにより、充電対象車両が充電される。
【0026】
充電停止制御部105は、必要な充電電力を供給できない充電対象車両(以下、電力不足車両とも言う)に、より大きな充電電力を供給できるように、充電中の他車両の充電を停止する充電停止制御を実行する。即ち、充電中の他車両の充電を一時的に停止し、その分、電力不足車両に対し、充電ポート13からより大きな充電電力を供給する。これにより、電力不足車両を急速充電することができる。
【0027】
充電停止制御部105は、まず、充電中の車両の中から、充電を停止する車両(以下、充電停止車両と言う)を選定する。具体的には、充電停止制御部105は、充電中の車両のうち、出発予定時間まで余裕がある車両を充電停止車両として選定する。例えば、現在時刻から出発予定時刻までの時間の長さが、所定の閾値以上である充電中の車両を充電停止車両として選定するが、これに限られない。なお、充電停止車両は複数選定してもよい。また、出発予定時間まで余裕がある車両が無い場合には、充電停止車両は選定されない。
【0028】
次に、充電停止制御部105は、充電を停止する時間(充電停止時間)を設定する。充電停止制御部105は、充電停止可能な時間の範囲を算出し、充電停止可能な時間の範囲内で充電停止時間を設定する。なお、ここでいう充電停止可能な時間の範囲とは、充電停止制御の終了後に、充電停止車両が出発予定時間までに充電を完了(目標SOCまで充電)し得る充電停止時間の範囲のことである。即ち、充電停止制御が終了すると、充電停止車両に対する充電が再開されるが、充電停止制御部105は、充電再開時のマルチポート充電器10からの出力電力を予測し、当該予測に基づき、充電再開により出発予定時間までに充電停止車両のバッテリが目標SOCまで充電されるように、充電停止時間を設定する。なお、充電再開時のマルチポート充電器10からの出力電力は、マルチポート充電器10の出力上限値及び使用状況等に基づき予測することができる。
【0029】
充電停止制御部105は、充電停止車両を選定し、充電停止時間を設定すると、充電停止制御を実行する。具体的には、充電停止制御部105は、接続装置12のスイッチ121を制御して、選定された充電停止車両への充電を停止する。即ち、充電停止車両が接続されている充電ポート13に接続するライン上のスイッチ121をオフに切り替える。また、充電停止制御部105は、設定した充電停止時間の間、充電停止車両への充電を停止し、充電停止時間が経過すると、充電停止車両が接続されている充電ポート13に接続するライン上のスイッチ121をオンに切り替える。これにより、充電停止車両への充電が再開される。
【0030】
第2判定部(判定部)106は、充電停止制御が実行された場合に、充電対象車両(電力不足車両)に必要な充電電力を供給可能か否かを判断する。即ち、第2判定部106は、充電停止制御における充電停止時間、マルチポート充電器10の出力上限値及び電力不足車両の出発予定時間に基づき、出発予定時間における電力不足車両のバッテリSOCを予測する。出発予定時間における電力不足車両のバッテリSOCが目標SOCまで達していると予測される場合、第2判定部106は、電力不足車両に必要な充電電力を供給可能と判断する。一方、出発予定時間までに電力不足車両のバッテリが目標SOCまで充電されないと予測される場合、第2判定部106は、電力不足車両に必要な充電電力を供給できないと判断する。充電停止制御を実行しても、充電対象車両(電力不足車両)に必要な充電電力を供給できないと判断される場合、後述の放電制御が実行される。
【0031】
放電指令部107は、充電中または充電を完了した車両に放電させ、必要な充電電力を供給できない充電対象車両(電力不足車両)に対し、当該放電電力を充電電力として供給する放電制御を実行するための指令を出力する。放電制御が実行されると、マルチポート充電器10からの出力電力と放電電力とが、充電電力として電力不足車両に供給され、電力不足車両のバッテリが急速充電される。なお、充電停止制御により必要な充電電力を供給可能な車両については、ここでの電力不足車両に含まれない。
【0032】
放電指令部107は、まず、必要な充電電力を供給できない充電対象車両(電力不足車両)に対し、放電により電力を供給する放電車両を選定する。具体的には、充電を完了した車両(充電完了車両)がある場合、充電完了車両が放電車両として選定される。充電完了車両が複数ある場合は、充電完了車両のうち、出発予定時間が最も遅い車両が放電車両として選定される。一方、充電完了車両が無い場合、充電中の車両のうち、出発予定時間まで余裕がある車両を放電車両に選定する。例えば、現在時刻から出発予定時刻までの時間の長さが所定の閾値以上である車両のうち、最も出発予定時間が遅い車両を放電車両として選定するが、これに限られない。なお、充電完了車両が無く、且つ出発予定時間まで余裕がある車両が無い場合、放電車両は選定されない。
【0033】
次に、放電指令部107は、放電車両が放電する放電電力及び放電時間を設定する。放電指令部107は、放電車両が放電可能な放電(出力)電力を算出し、放電可能な出力電力の範囲内で放電電力及び放電時間を設定する。ここでいう放電可能な出力電力とは、放電により放電車両のバッテリのSOCが減少しても、出発予定時間までに放電車両が充電を完了(目標SOCまで充電)し得る出力電力のことである。即ち、放電車両は、放電終了後、マルチポート充電器10からの出力電力により再充電されるが、放電指令部107は、放電終了後におけるマルチポート充電器10からの出力電力を予測し、当該予測に基づき、再充電により出発予定時間までに放電車両のバッテリが目標SOCまで充電されるように、放電電力及び放電時間を設定する。なお、放電終了後のマルチポート充電器10からの出力電力は、マルチポート充電器10の出力上限値及び使用状況等に基づき予測することができる。放電可能な出力電力の算出方法の詳細は後述する。
【0034】
放電指令部107は、放電電力及び放電時間を設定すると、放電車両及び充電対象車両の車両コントローラに放電指令を出力する。具体的には、放電指令部107は、設定した放電時間の間、設定した放電電力が出力されるように、放電車両及び充電対象車両(電力不足車両)のバッテリ電圧を制御するよう放電指令を出力する。これにより、放電車両による放電が実行され、マルチポート充電器10からの出力電力と放電電力とが、充電電力として充電対象車両(電力不足車両)に供給され、充電対象車両(電力不足車両)のバッテリが急速充電される。
【0035】
インセンティブ設定部108は、設定された放電車両の放電電力及び放電時間に基づき、放電車両のユーザに対して、マルチポート充電器10に関するインセンティブを設定する。例えば、インセンティブ設定部108は、放電車両のユーザに対して、放電を承諾した場合にマルチポート充電器10を使用する際の料金を割り引くクーポンを与える等のインセンティブを設定する。また、当該インセンティブは、放電電力が大きいほど、また、放電時間が長いほど有利に設定する。
【0036】
ユーザ承諾取得部109は、放電車両として選定された車両のユーザから放電の承諾を取得する。例えば、ユーザ承諾取得部109は、マルチポート充電器10に備えられたタッチパネルディスプレイ等に、放電を承諾するか否かを表示し、放電車両として選定された車両のユーザはタッチパネルディスプレイ等に、放電の諾否を入力する。なお、放電を承諾するか否かの表示をする際、設定されたインセンティブも併せて表示する。これにより、ユーザの承諾が促される。ユーザにより放電が承諾される(ユーザ承諾取得部109がユーザから放電の承諾を取得する)と、放電指令部107から放電指令が出力される。一方、放電車両として選定された車両のユーザにより放電が拒否されると、放電指令部107は、放電を拒否した車両を除いた充電完了車両または充電中の車両から、放電車両を選定する。
【0037】
報知部110は、電力不足車両があり、且つ、充電停止車両及び放電車両が無い(選定されない)場合に、電力不足車両のユーザに、出発予定時間までに充電を完了できないことを報知する。当該報知は、例えば、マルチポート充電器10に備えられたディスプレイに表示したり、音声等により行われるが、これに限られない。
【0038】
以上のとおり、充電システム1は、同時に複数の電動車両を充電することが可能であり、充電対象車両のバッテリ電圧を制御することで、充電対象車両に所望の充電電力を供給する。
【0039】
ところで、前述のとおり、マルチポート充電器(充電器)には、出力可能な電力の上限(電力キャパシティ)がある。このため、充電器の電力キャパシティの制約から、充電器からの出力電力だけでは、充電対象車両に必要な充電電力を供給できない場合がある。即ち、同時に複数の電動車両を充電する場合、充電器から電力を供給するだけでは、充電対象車両に対し、出発予定時間までに、充電を完了(目標SOCまで充電)できない虞がある。一方、充電器からの出力電力によって、常に、出発予定時間までに、充電を完了できるように、契約電力を上げて、充電器の電力キャパシティをより大きくしておく場合、コストが増大する虞がある。また、充電器の電力キャパシティを大きくした場合、充電対象車両が少ない時間帯においては、充電器の出力電力と充電器の出力上限値との差が大きくなり、充電器のオーナー側にとっては非効率である。
【0040】
これに対し、本実施形態では、充電対象車両に必要な充電電力を供給できない場合、充電中または充電を完了した他車両から、放電可能な出力電力の範囲内で放電して、放電電力とマルチポート充電器10からの出力電力とを充電対象車両に充電電力として供給する。即ち、充電電力が不足している充電対象車両に対して、マルチポート充電器10からの出力電力とともに、放電可能な範囲で他車両からの放電電力を充電電力として供給する。従って、複数の電動車両に対し、効率良く充電を行うことができ、マルチポート充電器10の出力上限を抑えつつ、出発予定時間までに各充電対象車両の充電を完了させることができる。
【0041】
以下、本実施形態による充電制御方法の詳細を説明する。
【0042】
図3、
図5、
図7は、それぞれ、マルチポート充電器10に複数の車両が接続された状態の一例を示す図であり、
図4、
図6、
図8は、それぞれ、各充電対象車両の充電状態を予測したタイムチャートの一例である。なお、
図3~
図8における車両A、車両B、車両Dの出発予定時間はそれぞれt
6、t
5、t
2であるものとし、
図7~
図8における車両Cの出発予定時間はt
1であるものとする。
【0043】
図3では、マルチポート充電器10の充電ポート13A,13Bに、充電中の車両A,車両Bが接続され、充電ポート13Dには、充電が完了している車両Dが接続されている。車両A,車両Bは充電中であり、車両Dは充電が完了しているため、スイッチ121A,121Bはオン状態、スイッチ121Dはオフ状態に制御されている。なお、
図3において、マルチポート充電器10の出力電力は、略出力上限値に達しているものとする。
【0044】
図4は、
図3の状態から予測される各充電対象車両の充電状態を示したタイムチャートである。なお、
図3を時刻t
0におけるマルチポート充電器10の状態とする。
【0045】
時刻t0において、充電が完了している(バッテリSOCが目標SOCDtに達している)車両Dには、マルチポート充電器10から充電電力は供給されない。出発予定時間である時刻t2になると、車両Dは、マルチポート充電器10から離脱する。
【0046】
車両Bには、バッテリが目標SOCであるSOCBtに達する時刻t3までマルチポート充電器10から充電電力P2が供給される。車両Bの充電が完了する時刻t3において、スイッチ121Bがオフに切り替えられ、マルチポート充電器10から車両Bへの電力供給が停止される。その後、出発予定時間である時刻t5になると、車両Bはマルチポート充電器10から離脱する。
【0047】
また、車両Aには、バッテリが目標SOCであるSOC
Atに達する時刻t
4までマルチポート充電器10から充電電力P
1が供給される。車両Aの充電が完了する時刻t
4において、スイッチ121Aがオフに切り替えられ、マルチポート充電器10から車両Aへの電力供給が停止される。その後、出発予定時間である時刻t
7になると、車両Aはマルチポート充電器10から離脱する。なお、時刻t
3において車両Aよりも先に車両Bの充電が完了するため、時刻t
3以降は、車両Bに供給されていたマルチポート充電器10の出力電力分だけ大きな充電電力を車両Aに供給することができる。従って、
図4に示すように、時刻t
3において、車両Aに供給される充電電力がP
1からP
3に上昇する。
【0048】
以上のとおり、
図3の状態では、すべての充電対象車両(車両A、車両B、車両D)について、出発予定時間までに充電を完了し得る(必要な充電電力を供給可能である)ことが予測される。即ち、
図3の状態においては、電力不足車両は存在しない。
【0049】
ここで、
図3の状態から、充電ポート13Cに新規の充電対象車両である車両Cが接続されたとする。この場合、マルチポート充電器10の出力上限値による制約により、車両Cには、出発予定時間t
1までにマルチポート充電器10から必要な充電電力を供給できない。即ち、車両Cは、電力不足車両である。そこで、
図5に示すように、スイッチ121A,121Bがオフ状態に制御され、充電中の車両A,車両Bに対する充電電力の供給が一時的に停止される。即ち、充電停止制御が実行される。これにより、車両A,車両Bに供給していた充電電力分だけ大きな充電電力が車両Cに供給され、車両Cが急速充電される。なお、車両A,車両Bは、車両Cが新規にマルチポート充電器10に接続された時刻において、出発予定時間まで余裕があるものとする。
【0050】
図6は、
図5の状態から予測される各充電対象車両の充電状態を示したタイムチャートである。なお、
図5を時刻t
0におけるマルチポート充電器10の状態とする。
【0051】
図6に示すように、時刻t
0において、充電が完了している(バッテリSOCが目標SOC
Dtに達している)車両Dには、マルチポート充電器10から充電電力は供給されない。出発予定時間である時刻t
2になると、車両Dは、マルチポート充電器10から離脱する。
【0052】
また、時刻t0から車両Cの出発予定時間t1まで、車両A,車両Bには充電電力は供給されない。即ち、時刻t0からt1まで、車両A,車両Bへの充電が一時的に停止される。これにより、車両A,車両Bに供給していた充電電力分だけ大きな充電電力P4が車両Cに供給され、車両Cが急速充電される。なお、車両Cの出発予定時間t1以降、車両A,車両Bへの充電が再開される。
【0053】
このように、充電停止制御が実行されることにより、電力不足車両である車両Cが急速充電される。しかしながら、電力不足車両の出発予定時間や、充電器の出力上限によっては、充電停止制御を実行しても、出発予定時間までに電力不足車両の充電を完了できない場合がある。
図6の予測タイムチャートでも、車両Cのバッテリは、出発予定時間t
1には目標SOCであるSOC
tCまで充電されておらず、出発予定時間t
1までに充電を完了できていない。このように、充電停止制御を実行しても、出発予定時間までに電力不足車両の充電を完了できない場合がある。
【0054】
そこで、充電停止制御によっても充電対象車両に必要な充電電力を供給できない場合、充電中または充電を完了した他車両から放電して、放電電力とマルチポート充電器10からの出力電力とを充電対象車両に充電電力として供給する放電制御を実行する。例えば、
図6のように、充電停止制御によっても車両Cに必要な充電電力を供給できない場合、
図7に示すように、スイッチ121Dをオン状態に制御するとともに、車両Dのバッテリ電圧を制御することで、車両Dから放電を行い、放電電力を車両Cに充電電力として供給する。これにより、車両Cをより急速に充電することができる。
【0055】
図8は、
図7の状態から予測される各充電対象車両の充電状態を示したタイムチャートである。なお、
図7を時刻t
0におけるマルチポート充電器10の状態とする。
【0056】
図6と同様に、時刻t
0から車両Cの出発予定時間t
1まで、充電停止制御により車両A,車両Bには充電電力が供給されない。これにより車両Cを急速充電することができる。
【0057】
また、時刻t0から車両Cの出発予定時間t1まで、時刻t0において充電が完了していた車両Dのバッテリが放電され、放電電力が充電電力として車両Cに供給される。即ち、車両Cには、マルチポート充電器10からの出力電力に車両Dからの放電電力が上積みされた電力P5が、充電電力として供給される。これにより、車両Cはより急速に充電される。
【0058】
ここで、車両Dからの放電は、放電可能な出力電力の範囲内で実行される。即ち、車両Dから車両Cに放電電力が供給される時刻t0から時刻t1までの間、放電により車両DのバッテリのSOCは低下する。一方、放電終了後、マルチポート充電器10から車両Dに充電電力が供給され、車両Dは再充電される。再充電により車両DのバッテリSOCは上昇する。従って、再充電が開始される時刻t1から、車両Dの出発予定時間t2までの間に、車両DのバッテリのSOCが目標SOCDtまで回復可能な範囲(放電可能な出力電力の範囲)で、車両Dからの放電が実行される。
【0059】
具体的には、放電可能な出力電力の範囲は、以下により決定される。まず、放電後にマルチポート充電器10から車両D(放電車両)に供給される充電電力(
図8ではP
6)を予測し、予測した充電電力P
6に基づき、放電後における車両D(放電車両)のバッテリSOCの時間に対する増加の傾き(以下、SOCの増加の傾きと言う)を算出する。そして、SOCの増加の傾きに基づき、車両D(放電車両)の出発予定時間t
2丁度に車両DのバッテリSOCが目標SOC(SOC
Dt)まで回復するような、車両C(電力不足車両)の出発予定時間t
1における車両DのバッテリSOC(SOC
min)を算出する。車両C(電力不足車両)の出発予定時間t
1に、車両DのバッテリSOCがSOC
minよりも小さくなると、車両D(放電車両)の出発予定時間t
2までに車両DのバッテリSOCを目標SOCであるSOC
Dtまで回復されない。従って、放電可能な出力電力の範囲は、車両C(電力不足車両)の出発予定時間t
1に、車両DのバッテリSOCがSOC
minよりも小さくならないように実行される放電の範囲である。なお、
図7では、車両D(放電車両)から車両C(電力不足車両)に、放電可能な出力電力の最大値となる電力が供給されている。
【0060】
放電制御により、車両Cがより急速に充電されることで、車両CのSOCは、出発予定時間t1までに目標SOCCtに到達する。車両Cは、出発予定時間t1になると、マルチポート充電器10から離脱する。
【0061】
時刻t1において車両Cが離脱すると、車両Bへの充電が再開される。時刻t3において車両BのバッテリSOCが目標SOCBtに達すると、スイッチ121Bがオフに切り替えられ、車両Bへの充電電力の供給が停止される。その後、出発予定時間t5になると、車両Bはマルチポート充電器10から離脱する。
【0062】
一方、車両Bよりも出発予定時間が遅い車両Aに対しては、時刻t1において車両Cが離脱しても、充電が再開されない。これにより、時刻t1(放電終了時)以降、マルチポート充電器10から車両D(放電車両)に、再充電のための充電電力が供給される。
【0063】
出発予定時間t2において、車両DのバッテリSOCが再び目標SOC(SOCDt)に達すると、車両Dは、マルチポート充電器10から離脱する。
【0064】
時刻t2において、車両Dが離脱すると、スイッチ121Aがオンに切り替えられ、車両Aへの充電が再開される。時刻t4において、車両AのバッテリSOCが目標SOCであるSOCAtに達すると、スイッチ121Aがオフに切り替えられ、車両Aへの充電電力の供給が停止される。その後、出発予定時間t6になると、車両Aはマルチポート充電器10から離脱する。
【0065】
以上のとおり、放電制御を実行することで、電力不足車両に対してマルチポート充電器10からの出力電力とともに、他車両からの放電電力も充電電力として供給することができ、出発予定時間までに電力不足車両の充電を完了させることができる。
【0066】
なお、
図3~
図8では、充電停止制御によっても充電対象車両に必要な充電電力を供給できない場合に放電制御を実行する例を説明したが、放電制御は、充電停止可能な車両が無く、充電停止制御ができない場合にも実行される。
【0067】
図9は、本実施形態の充電制御方法を説明するフローチャートである。以下の制御は、いずれも充電制御装置100を構成するコントローラにより、充電ポート13に新規の充電対象車両が接続される度に繰り返し実行される。なお、充電制御装置100は、充電ポート11を介して充電対象車両のバッテリ情報及び出発予定時間を適宜取得する。また、充電制御装置100は、マルチポート充電器10から充電対象車両に、所望の充電電力が供給されるように、充電対象車両の車両コントローラに電圧制御指令を送信することで適宜充電対象車両のバッテリ電圧を制御する。また、充電制御装置100は、充電対象車両の充電が実行される場合、適宜、スイッチ121をオンに制御し、充電が完了した場合、適宜、スイッチ121をオフに制御する。
【0068】
充電システム1が起動等されると、充電制御装置100は、充電制御を開始する。
【0069】
ステップS101において、充電ポート13に新規の充電対象車両(以下、新規充電車両と言う)が接続されると、充電制御装置100は、新規充電車両に設定された出発予定時間に基づき、新規充電車両に必要な充電電力を算出する。即ち、出発予定時間までに新規充電車両のバッテリが目標SOCまで充電されるような充電電力を算出する。
【0070】
ステップS102において、充電制御装置100は、既に充電中である他車両によるマルチポート充電器10の使用状況と、マルチポート充電器10の出力上限値に基づき、マルチポート充電器10が新規充電車両に対し、必要な充電電力を供給可能か否かを判断する。即ち、マルチポート充電器10の出力上限値の範囲内で、マルチポート充電器10から新規充電車両に、必要な充電電力を供給できるか否かを判断する。必要な充電電力を供給可能であると判断した場合、充電制御装置100は、ステップS103の処理を実行する。一方、マルチポート充電器10の出力上限値の制約により、マルチポート充電器10から必要な充電電力を供給できない(即ち、新規充電車両は電力不足車両である)と判断した場合、充電制御装置100は、ステップS104の処理を実行する。
【0071】
ステップS103において、充電制御装置100は、新規充電車両への充電を開始する。具体的には、充電制御装置100は、充電対象車両の車両コントローラにバッテリ制御指令を送信し、新規充電車両のバッテリ電圧を、新規充電車両に必要な充電電力を供給できるような電圧に制御するとともに、マルチポート充電器10から、新規充電車両を含む充電ポート13に接続されている各車両に必要な充電電力に応じた電力を出力する。
【0072】
新規対象車両への充電を開始すると、充電制御装置100は、充電制御を終了し、再びステップS101からの処理を繰り返す。
【0073】
これに対し、ステップS102において、必要な充電電力を供給できないと判断した場合、充電制御装置100は、ステップS104において、充電中の車両(他車両)のうち、充電停止可能な車両があるか否かを判断する。即ち、充電制御装置100は、充電中の車両のうち、出発予定時間まで余裕がある車両があるか否かを判断する。例えば、充電制御装置100は、時間に関する閾値を設け、現在時刻から出発予定時刻までの時間の長さが、当該閾値以上である車両を出発時間までに余裕がある車両と判断する。出発予定時間まで余裕がある車両がある場合、充電制御装置100は、充電停止可能な車両があると判断するとともに、当該車両を充電停止車両として選定し、ステップS105の処理を実行する。なお、充電中の車両のうち、出発予定時間まで余裕がある車両が複数ある場合、いずれの車両も充電停止車両として選定される。一方、充電中の車両のうち、出発予定時間まで余裕がある車両が無い場合、充電制御装置100は、充電停止可能な車両が無いと判断し、ステップS109の処理を実行する。
【0074】
ステップS105において、充電制御装置100は、充電停止時間を設定する。充電停止時間は、充電停止可能な時間の範囲内で設定される。前述のとおり、充電停止可能な時間の範囲とは、充電停止制御が終了(充電停止時間が経過)した後の充電再開により、充電停止車両が出発予定時間までに充電を完了(目標SOCまで充電)し得る時間の範囲である。
【0075】
充電停止時間を設定すると、ステップS106において、充電制御装置100は、設定された充電停止時間の間、充電停止車両に対する充電を停止(即ち、充電停止制御が実行)した場合に、新規充電車両に必要な充電電力を供給可能か否か(充電要求を満たすか否か)を判断する。即ち、設定された充電停止時間及び新規充電車両の出発予定時間に基づき、出発予定時間における新規充電車両のバッテリSOCを予測し、出発予定時間における新規充電車両のバッテリが目標SOCまで充電されるか否かを判断する。出発予定時間における新規充電車両のバッテリが、目標SOCまで充電されていると予測される場合、充電制御装置100は、新規充電車両に必要な充電電力を供給可能であると判断し、ステップS107の処理を実行する。一方、出発予定時間までに新規充電車両のバッテリを目標SOCまで充電できないと予測される場合、充電制御装置100は、新規充電車両に必要な充電電力を供給できないと判断し、ステップS109の処理を実行する。
【0076】
ステップS107において、充電制御装置100は、充電停止制御を実行する。即ち、スイッチ121を制御し、充電停止車両として選定された充電中の車両への充電を、設定された充電停止時間の間だけ、一時的に停止する。これにより、マルチポート充電器10から新規充電車両に、より大きな充電電力が供給され、新規充電車両が急速充電される。
【0077】
充電停止制御を実行し、充電停止時間が経過すると、ステップS108において、充電制御装置100は、充電停止車両への充電を再開する。充電停止車両への充電を再開すると、充電制御装置100は、充電制御を終了し、再びステップS101からの処理を繰り返す。
【0078】
一方、S104において充電停止可能な車両が無いと判断した場合、及びステップS106において新規充電車両に必要な充電電力を供給できないと判断した場合、充電制御装置100は、ステップS109において、放電可能な車両の有無を判断する。具体的には、充電を完了した車両の有無、及び出発予定時間まで余裕がある充電中の車両の有無を判断する。出発予定時間まで余裕があるか否かは、例えば、現在時刻から出発予定時刻までの時間の長さが所定の閾値以上の場合に、出発予定時間まで余裕があると判断する。放電可能な車両がある場合、充電制御装置100は、ステップS110の処理を実行する。一方、放電可能な車両が無い場合、充電制御装置100は、ステップS116の処理を実行する。
【0079】
ステップS110において、充電制御装置100は、放電車両を選定する。前述のとおり、充電完了車両がある場合、充電完了車両のうち、出発予定時間が最も遅い車両を放電車両として選定し、充電完了車両が無い場合、出発予定時間まで余裕がある充電中の車両のうち、出発予定時間が最も遅い車両を放電車両として選定する。
【0080】
放電車両を選定すると、ステップS111において、充電制御装置100は、放電時間及び放電電力を設定する。充電制御装置100は、選定された放電車両の出発予定時間に基づき、放電可能な出力電力を算出し、放電可能な出力電力の範囲内で、放電時間及び放電電力を設定する。
【0081】
放電時間及び放電電力を設定すると、ステップS112において、充電制御装置100は、放電車両のユーザに対して、マルチポート充電器10の使用に関するインセンティブを設定する。例えば、放電車両のユーザが放電を承諾した場合に、マルチポート充電器10の割引クーポンを与える等のインセンティブを設定する。
【0082】
インセンティブを設定すると、ステップS113において、充電制御装置100は、放電車両として選定された車両のユーザからの承諾の取得の有無を判断する。例えば、充電制御装置100は、マルチポート充電器10に備えられたタッチパネルディスプレイ等に、放電を承諾するか否かを表示する。なお、この際、充電制御装置100は、設定されたインセンティブの内容も併せて表示する。タッチパネルディスプレイ等を介して、ユーザにより放電の承諾が得られると、充電制御装置100は、ステップS114の処理を実行する。一方、ユーザの承諾が得られない(放電を拒否された)場合、充電制御装置100は、ステップS109に戻り、放電を拒否された車両を除外して、放電可能な車両の有無を判断し、それ以降のステップを実行する。
【0083】
ユーザの承諾が得られると、ステップS114において、充電制御装置100は、放電車両からの放電(即ち、放電制御)を実行し、放電電力を新規充電車両に対し充電電力として供給する。これにより、マルチポート充電器10からの出力電力と、放電車両からの放電電力とが、充電電力として新規充電車両に供給され、新規充電車両のバッテリが急速充電される。なお、充電停止車両が選定されている場合、充電制御装置100は、ステップS114において、放電制御と併せて、充電停止制御も同時に実行する。
【0084】
放電制御を実行し、放電時間が経過すると、ステップS115において、充電制御装置100は、放電車両への再充電を開始する。放電車両への再充電を開始すると、充電制御装置100は、充電制御を終了し、再びステップS101からの処理を繰り返す。
【0085】
これに対し、ステップS109において放電可能な車両が無いと判断した場合、充電制御装置100は、ステップS116において、新規充電車両のユーザに、出発予定時間までに充電を完了できないことを報知する。例えば、充電制御装置100は、マルチポート充電器10に備えられたディスプレイに表示したり、音声等により当該報知を行う。これにより、電力不足車両のユーザは、充電後の行動計画等を予め考えることができる。新規充電車両のユーザへの報知を行うと、充電制御装置100は、充電制御を終了し、再びステップS101からの処理を繰り返す。
【0086】
上記した実施形態の電動車両の充電制御方法及び充電制御装置100によれば、以下の効果を得ることができる。
【0087】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、充電対象車両に必要な充電電力を供給できない場合、充電中または充電を完了した他車両から、放電可能な出力電力の範囲内で放電して、放電電力とマルチポート充電器10からの出力電力とを充電対象車両に充電電力として供給する。即ち、充電電力が不足している充電対象車両に対して、マルチポート充電器10からの出力電力とともに、放電可能な範囲で他車両からの放電電力も充電電力として供給する。従って、複数の電動車両に対し、効率良く充電を行うことができ、マルチポート充電器10の出力上限を抑えつつ、出発予定時間までに各充電対象車両の充電を完了させることができる。よって、低コスト化しつつ、ユーザの充電要求を満たすことができる。
【0088】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、放電車両は、充電完了車両がある場合、充電完了車両の中から各車両の出発予定時間に基づき選定され、充電完了車両が無い場合、充電中の車両の中から各車両の出発予定時間に基づき選定される。即ち、放電車両は、よりSOCが大きい充電完了車両が優先的に選定され、また、出発予定時間まで、より時間に余裕のある車両を優先的に選定することができる。これにより、放電可能な出力電力をより大きくすることができ、複数の電動車両をより効率良く充電することができる。
【0089】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、放電可能な出力電力は、放電後における放電車両のバッテリSOCの時間に対する増加の傾きと、放電車両の出発予定時間とから算出される。これにより、放電可能な出力電力の範囲をより正確に算出することができ、放電車両の電力を効率的に利用することができる。従って、複数の電動車両をより効率良く充電することができ、低コスト化しつつ、ユーザの充電要求を満たすことができる。
【0090】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、マルチポート充電器10に接続された各電動車両(充電対象車両)のバッテリの電圧を制御することにより、マルチポート充電器10からの充電電力の供給及び放電車両から充電対象車両への充電電力の供給を行う。このように、充電対象車両のバッテリ電圧を制御することで充電対象車両に供給する充電電力を調整しているため、各充電ポート13から系統(EVSE11)への接続を一つにすることができ、マルチポート充電器10を簡素化することができるため、コストを低減することができる。
【0091】
本実施形態の電動車両の充電制御方法によれば、放電の放電電力及び放電時間に基づき、放電車両のユーザに対して、マルチポート充電器10の使用に関するインセンティブを設定する。これにより、放電車両のユーザに対し、放電の承諾が促される。
【0092】
本実施形態の電動車両の充電制御装置100は、充電対象車両に必要な充電電力を供給できない場合、充電中または充電を完了した他車両に放電可能な出力電力の範囲内で放電させ、放電電力とマルチポート充電器10からの出力電力とを充電対象車両に充電電力として供給する放電指令部107を備える。これにより、充電電力が不足している充電対象車両に対して、マルチポート充電器10からの出力電力とともに、放電可能な範囲で他車両からの放電電力も充電電力として供給することができる。従って、複数の電動車両に対し、効率良く充電を行うことができ、マルチポート充電器10の出力上限を抑えつつ、出発予定時間までに各充電対象車両の充電を完了させることができる。よって、低コスト化しつつ、ユーザの充電要求を満たすことができる。
【0093】
なお、本実施形態においては、放電可能な車両の中から1つの車両を放電車両として選定するものとしたが、これに限られず、複数の車両を放電車両として選定してもよい。例えば、
図10に示すように、マルチポート充電器10に接続された車両A、車両B及び車両Dを放電車両として選定し、車両A、車両B及び車両Dから、電力不足車両である車両Cに放電電力を充電電力として供給してもよい。
【0094】
また、本実施形態のように、各電動車両のバッテリの電圧を制御することにより、充電電力の供給等を行うことが好ましいが、必ずしもこれに限られず、充電電力の供給方法は既知の如何なる方法を用いてもよい。
【0095】
また、本実施形態では、充電停止制御において、スイッチ121を制御することで、充電停止車両への充電電力の供給を停止するものとしたが、必ずしもこれに限られない。例えば、スイッチ121はオン状態にしたまま、バッテリの電圧を制御することにより充電電力の供給を停止してもよい。
【0096】
また、本実施形態のように、放電車両は充電完了車両から優先的に選定することが好ましいが、必ずしもこれに限られない。例えば、充電完了車両がある場合でも、充電中の車両から放電車両を選定してもよい。即ち、本実施形態における放電車両の選定方法は一例であり、放電車両は、放電制御後の再充電により出発予定時間までに充電が完了する範囲であれば、どのように選んでもよい。
【0097】
同様に、本実施形態における充電停止車両の選定方法は一例であり、充電停止制御後の充電再開により出発予定時間までに充電が完了する範囲であれば、充電停止車両はどのように選んでもよい。
【0098】
また、本実施形態では、充電停止制御が可能な場合、放電制御の前に充電停止制御を実行するものとしたが、必ずしもこれに限れない。例えば、充電停止制御前に放電制御を実行してもよく、また、放電制御のみを実行してもよい。
【0099】
また、本実施形態では、放電車両のユーザは放電の諾否を決定するものとしたが、必ずしもこれに限られず、例えば、放電車両のユーザが、放電の一部を承諾することを可能にしてもよい。即ち、放電車両のユーザが、承諾する放電電力や放電時間を決定できるようにしてもよい。この場合、放電車両のユーザに対して、放電電力がより大きいほど、放電時間がより長いほど有利なインセンティブを設定するようにしてもよい。また、放電車両のユーザと、電力不足車両のユーザとの交渉により放電電力や放電時間を決定できるようにしてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、放電車両のユーザの承諾を取得した場合に、放電制御を実行するものとしたが、必ずしもこれに限られない。例えば、充電中の車両から放電を行う場合のみにユーザの承諾を必要とし、充電完了車両から放電を行う場合にはユーザの承諾を必要としないようにしてもよい。また、再充電により放電車両の出発予定時間までに充電が完了する範囲で放電制御が実行されるのであれば、いずれの場合もユーザの承諾を不要にしてもよい。
【0101】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0102】
1:充電システム,10:マルチポート充電器,11:給電機器(EVSE),12:接続装置,13:充電ポート,100:充電制御装置,101:バッテリ情報取得部,102:出発予定時間取得部,103:充電電力算出部,104:第1判定部(判定部),105:充電停止制御部,106:第2判定部(判定部),107:放電指令部,108:インセンティブ設定部,109:ユーザ承諾取得部,110:報知部