(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158542
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】光源内蔵型の多波長近赤外線照射装置。
(51)【国際特許分類】
G01N 21/01 20060101AFI20241031BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20241031BHJP
G02B 6/32 20060101ALI20241031BHJP
G02B 6/04 20060101ALI20241031BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20241031BHJP
【FI】
G01N21/01 D
G02B6/42
G02B6/32
G02B6/04 B
H01L33/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073813
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】399038192
【氏名又は名称】日本ピー・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088214
【弁理士】
【氏名又は名称】生田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】武藤 高裕
【テーマコード(参考)】
2G059
2H137
2H250
5F142
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB11
2G059EE11
2G059FF01
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH01
2G059JJ11
2G059JJ17
2G059KK04
2H137AB06
2H137BA15
2H137BB02
2H137BB17
2H137CA15A
2H137CA15F
2H137CC21
2H137DA07
2H137EA02
2H137HA05
2H250CA02
2H250CA37
2H250CA39
2H250CA42
2H250CA69
5F142AA22
5F142AA56
5F142BA14
5F142DB39
5F142EA02
5F142GA33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来技術による多波長近赤外線照射装置よりも小型で、それぞれ相互にピーク波長の異なる近赤外線を同時又は個別に出射させることのできる光源内蔵型多波長近赤外線照射装置を提供する。
【解決手段】それぞれピーク波長の異なる近赤外線を出射する近赤外線LED素子を複数有する多波長近赤外線光源とライトガイドとが一体化された多波長近赤外線照射装置であって、前記ライトガイドは相互に独立して延在する複数本の光ファイバーから構成された束(以下、光ファイバーバンドル)を複数本含み、該光ファイバーバンドルの本数は、前記近赤外線LED素子の数と同じであることを特徴とする光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれピーク波長の異なる近赤外線を出射する近赤外線LED素子を複数有する多波長近赤外線光源とライトガイドとが一体化された多波長近赤外線照射装置であって、
前記ライトガイドは相互に独立して延在する複数本の光ファイバーから構成された束(以下、光ファイバーバンドル)を複数本含み、該光ファイバーバンドルの本数は、前記近赤外線LED素子の数と同じである
ことを特徴とする光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項2】
前記複数の近赤外線LED素子は、1つの基盤上で、該基盤の中心点から半径方向に所定距離離れた円周線上に沿って相互に均等距離離れた位置に搭載されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項3】
前記複数の近赤外線LED素子は、集光レンズを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項4】
前記複数の近赤外線LED素子は、それぞれ異なるピーク波長の近赤外線を、同時又は個別に出射する砲弾型LEDである
ことを特徴とする請求項3に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項5】
前記個別に出射することが時系列的に出射することである
ことを特徴とする請求項4に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項6】
前記光ファイバーバンドルを構成する複数の光ファイバーのそれぞれの太さ、断面形状および光学特性は1本の光ファイバーバンドルの中の全体に亘って、及び、複数本の光ファイバーバンドルの全てに亘って、同じである
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項7】
前記複数の光ファイバーバンドルは、それぞれ対応する近赤外線LED素子が決められており、
多波長近赤外線光源からの近赤外線が入射する端面(以下、入射端面)の中心点における該端面の垂直線が、該対応する近赤外線LED素子の長手方向に沿った中心軸線と一致する
ことを特徴とする請求項6に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項8】
前記光ファイバーバンドルは、前記多波長近赤外線光源からの近赤外線が入射する端面(以下、入射端面)において、対応する近赤外線LED素子の長手方向に沿った中心軸線に直交する入射端面を有する
ことを特徴とする請求項7に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多波長の近赤外線を照射することが可能な近赤外線光源を内蔵する近赤外線照射装置に関する。より具体的には、1台の電磁波照射装置から、それぞれピーク波長波長の異なる複数の近赤外線を、同時に、又は個別に、1つの出射面から出射できる近赤外線光源を内蔵する近赤外線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可視波長領域では見えないものを可視化することができる近赤外線(一般的に0.7μmから2.5μmの波長帯域に含まれる電磁波)は、古くから、シリコンウエハ上に形成された多層型集積回路の検査に使われている。近赤外線は対象物の組成の違いに起因してその反射・吸収・透過特性が異なる。この特徴を活用して、対象物の組成の違いを可視化したり、対象物の内部を可視化したりすることができることから、近赤外線を使った検査技術は、近年では、食料品(水分量測定、糖度測定等)、医療(血中酸素濃度測定器等)、医薬品、化粧品やインフラの非破壊検査、セキュリティ、バイオ、認証、通信などの幅広い分野にもその用途が広がりつつある。
【0003】
これらの検査技術においては、一般的に、近赤外線カメラと併せて近赤外線光源が使用されている。この場合、従来技術においては、近赤外線光源としてハロゲンランプを使い、そこから出射される近赤外線のうち検査対象に合わせた必要な波長だけの近赤外線を透過するフィルターを、ハロゲンランプとそこからの光を集光する部材の間に搭載して使用されている。また、このようなフィルターは、光源からの近赤外線を光源から離れた位置に伝播させるためのライトガイドの出射部の端部の手前(光源から見て近位側)に挿入して同じような機能を持たせるシステムもある。
【0004】
ところで、近赤外線の反射・吸収・透過特性は、照射する対象物(ワーク)の組成により異なるので、可視波長領域では見えないものを近赤外線で可視化するためには、対象と成るワークに特有なスペクトルデータを予め入手しておいて、そのスペクトルデータにマッチしたピーク波長を有する近赤外線を照射する必要があり、一般的には、近赤外線LEDを光源としている。
【0005】
近年において、近赤外線LEDから出射されるピーク波長が異なる様々な近赤外線LEDが開発されそれによるラインアップが増加した。この結果、波長領域が800nm~1700nm付近までの波長範囲において、個々のピーク波長を有する単一の波長の近赤外線を出射できる近赤外線LEDが市販されるようになっている。
【0006】
しかし、近赤外線LEDは基本的に単一波長を中心とした狭い波長範囲の光(電磁波)を出射するが、検査対象の組成や検出目的の物質ごとにスペクトルデータを特定してそれに合わせて使用する近赤外線LEDのピーク波長を選定する必要がある。
【0007】
【特許文献1】特開2003-329603号公報
【特許文献2】特開2009-162685号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近赤外線LEDを光源とする従来の近赤外線照射装置は、一種類のピーク波長の近赤外線を出射するLEDを搭載するに過ぎないので、検査対象物の組成が微妙に変化した場合には、公開されているスペクトルデータから得られる特定の波長から若干ずれる場合があり、近赤外線LEDから出射された近赤外線のピーク波長が検査対象物の組成により決まる波長とは一致しない場合となり、鮮明な可視化が困難となるという課題があった。
【0009】
例えば、近赤外線LEDを搭載した従来の光源装置からピーク波長が2つ以上の近赤外線を出射させてワークの可視化を図る場合には、ワークの中の特定の部位、構成要素にマッチしたピーク波長を出射する光源装置複数用意して、個々の光源装置からの近赤外線を合成するユニットを別途使用せざるをえなく、装置システム全体が複雑になりサイズが大型化すると言う課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の特有の課題を解決することを企図しており、第1の発明は、それぞれピーク波長の異なる近赤外線を出射する近赤外線LED素子を複数有する多波長近赤外線光源とライトガイドとが一体化された多波長近赤外線照射装置であって、前記ライトガイドは相互に独立して延在する複数本の光ファイバーから構成された束(以下、光ファイバーバンドル)を複数本含み、該光ファイバーバンドルの本数は、前記近赤外線LED素子の数と同じであることを特徴とする光源内蔵型多波長近赤外線照射装置である。
【0011】
第2の発明は、前記第1の発明において、前記複数の近赤外線LED素子は、1つの基盤上で、該基盤の中心点から半径方向に所定距離離れた円周線上に沿って相互に均等距離離れた位置に搭載されていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明は、前記第2の発明において、前記複数の近赤外線LED素子は、集光レンズを有する
ことを特徴とする。
【0013】
第4の発明は、前記第3の発明において、前記複数の近赤外線LED素子は、それぞれ異なるピーク波長の近赤外線を、同時又は個別に出射する砲弾型LEDであることを特徴とする。
【0014】
第5の発明は、前記第4の発明において、前記個別に出射することが時系列的に出射することであることを特徴とする。
【0015】
第6の発明は、前記第1~5の発明のうちのいずれか1つの発明において、前記光ファイバーバンドルを構成する複数の光ファイバーのそれぞれの太さ、断面形状および光学特性は1本の光ファイバーバンドルの中の全体に亘って、及び、複数本の光ファイバーバンドルの全てに亘って、同じである
ことを特徴とする。
【0016】
第7の発明は、前記第6の発明において、前記複数の光ファイバーバンドルは、それぞれ対応する近赤外線LED素子が決められており、多波長近赤外線光源からの近赤外線が入射する端面(以下、入射端面)の中心点における該端面の垂直線が、該対応する近赤外線LED素子の長手方向に沿った中心軸線と一致することを特徴とする。
【0017】
第8の発明は、前記第7の発明において、前記光ファイバーバンドルは、前記多波長近赤外線光源からの近赤外線が入射する端面(以下、入射端面)において、対応する近赤外線LED素子の長手方向に沿った中心軸線に直交する入射端面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
1台の多波長近赤外線照射装置から、それぞれ相互に異なるピーク波長を有する近赤外線を検査対象物に同時に又は個別に照射することが可能となり、また、各ピーク波長の遠赤外線の出力を相互に独立して調整することが可能となり、その結果、検査対象物の組成が微妙に変化した場合でも近赤外線での検査・検出が可能となる。例えば、シリコンウエハを近赤外線で内部欠陥を見える化する際に使用される近赤外線の波長は1200nmと言われているが、シリコンウエハに使用されている素材の違い(例えばドーパントの量の違い)により検査に最適な波長が1200nmから若干ずれる場合があるが、このような場合でも、本発明の複数波長を合成した近赤外線照射装置により、各波長での近赤外線の出力を個々に調整することで検査対象のワークに適した波長で検査することが可能になる。また、本発明の近赤外線照射装置を用いて従来のような複数の近赤外線波長を測定する場合、波長選定が必要なマルチスペクトルカメラや高価なハイパースペクトルカメラを使用していた検査を安価な近赤外線カメラ(センサーにInGaAsを使用する近赤外線カメラ)での測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
以下の図面は、いずれも、3in1ライトガイドの場合の本発明の光源内蔵型多波長近赤外線光源装置の説明用図面である。なお、図面中において同じ参照番号で示された要素は同一のものであることを意味する。
【
図1】本発明の光源内蔵型多波長近赤外線光源装置の全体の外観を示す概念図である。
図1-aは、光源内蔵型多波長近赤外線光源装置を左側面から見たときの正面図を示し、
図1-bは、全体の側面図を示し、
図1-cは、光源内蔵型多波長近赤外線光源装置を右側面から見たときの正面図を示す。
【
図2】本発明の光源内蔵型多波長近赤外線光源装置(3in1ライトガイドの場合)を構成するその構成要素ごと(ライトガイド本体部210;ライトガイドケース220;光源アラインメント用金具230)に分解したところの側面図を示し、
図2-aは、
図1-bに示す本発明の光源内蔵型多波長近赤外線光源装置のライトガイド部の内部構造(分解不能)を示す。ライトガイド本体部の内部構造(分解不能)は、出射側口金240、内部に光ファイバーバンドル(図示せず)を収容する熱収縮チューブ250、入射側口金260から構成される。
図2-bは、ライトガイド本体部を右側面から見たときの正面図、即ち、入射側口金260の正面図を示し、入射側口金260には、光ファイバーバンドルを貫通させて固定させるための貫通孔270が3つと光源アラインメント用金具230を入射側口金260にネジ固定するためのネジを受けるネジ穴280が3つ形成されている。
【
図3】
図3-aは、
図2に示された光源アラインメント用金具230の断面図(紙面に平行な断面図)を示し、
図3-bは、光源アラインメント用金具230を左側面から見たときの正面図を示し、
図3-cは、光源アラインメント用金具230を右側面から見たときの正面図を示す。光源アラインメント用金具230には、砲弾型近赤外線LED素子の砲弾型ケースが嵌合する貫通孔310が3つと光源アラインメント用金具230を入射側口金260に固定するためのネジ穴320が3つ形成されている。また、光源アラインメント用金具230の光源側の円環状部の内側にはネジ330が形成されており、
【
図4】ライトガイドケース220のみの形状の特徴を図示する。
図4-aは出射側から見た正面図である。
図4-bは側面図である。
図4-cは入射側から見た正面図である。ライトガイドケース220には、ライトガイドケース220をライトガイド本体部210の出射側口金240に固定するためのネジ穴410と、ライトガイドケース220をライトガイド本体部210の入射側口金260に固定するためのネジ穴420がそれぞれ形成されている。
【
図5】
図5における
図5-aは、
図6に示す基板610を、
図3-aに示す光源アラインメント用金具230に対して光源側から押し当てるための押し当て用金具510の側面図を示す。
図5-bは、押し当て用金具510を近赤外線出射側から見たときの正面図、
図5-cは、押し当て用金具510を近赤外線入射側から見たときの正面図を示す。
図5-dは断面図を示す。押し当て用金具510には、その円環状部の外側面にネジ520が形成されている。
【
図6】近赤外線LEDを搭載する基板610を近赤外線出射側から見たときの正面図である。この基板610には、近赤外線LED素子を保持・固定するための貫通孔620が3つとアラインメント用の貫通孔630が3つ形成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、実施例を基に本発明を詳細に説明する。なお、図面中において同じ参照番号で示された要素は同一のものであることを意味する。
図1に本発明の光源内蔵型多波長近赤外線装置がアセンブリされたときの全体の側面図を概念的に図示する。同図中、
図1-aは、光源内蔵型多波長近赤外線光源装置を左側面から見たときの正面図を示し、
図1-cは、光源内蔵型多波長近赤外線光源装置を右側面から見たときの正面図を示す。
【0021】
本発明の光源内蔵型多波長近赤外線装置は、
図2~
図6に図示された各構成要素(但し、近赤外線LED素子は図示されていない)をアセンブリすることで調製できる。そのアセンブリをする対象となる各構成要素のうち、本発明を為す際に特に工夫を加えた主な構成要素は、1)光源600(
図6には基板610のみ図示し、搭載する近赤外線LED素子は図示せず)と2)ライトガイド本体部210であり、それぞれ、以下のような特徴を有する。
【0022】
1)光源600(
図6には基板610のみ図示し、搭載する近赤外線LED素子は図示せず)における工夫
光源600は、
図6に示す基板610とそこに搭載された砲弾型の近赤外線LED素子(図示せず)(ウシオ電機から入手)とから構成されており、
図6には図示されていないが、当然のことながら、外部電源からの交流電気又は直流電気を通す電源コードが接続可能になっている。基板610には、
図6に示すように、砲弾型の近赤外線LED素子(図示せず)の砲弾型ケースを嵌合するための貫通孔620(φ3mm)が、搭載する近赤外線LED素子の数と同じ数(3in1ライトガイドの場合は3つ)形成されている。砲弾型の近赤外線LED素子(図示せず)はその砲弾型ケース部がこの貫通孔620をライトガイド本体部210側に向けて貫通するようにして配置される。また、これらの近赤外線LED素子を駆動・制御するための制御器が内蔵されることもある。この場合の制御器は自立型(stand alone)であっても、有線又は無線で外部と交信できるように構成されて、外部の制御器により遠隔制御するタイプのものであってもいずれも好適に使用できる。
【0023】
光源600の一部を構成する基板610の形状は円形板(φ21mm、厚さ1.6mm)が好適に使用できる。本発明の実施例におけるそのサイズはφ21mmで、厚さ1.6mmであり、入手先は、DEC(Digital Equipment Corporation社)であるが、この基板610は、本発明に必要な光源の位置決めが容易に出来て位置決め後は位置がずれないようなものであれば如何様なサイズ、形状のものも好適に使用可能である。また、その材質も、本発明の作用効果に影響を与えない範囲内で適宜選択可能であるが、使用する多波長近赤外線LED素子から発生する熱により基板610の温度が上昇して基板610が撓み、その結果、多波長近赤外線LED素子からの光の光軸が初期のときの位置からずれることがあり得るので、そのような事態に至らないような材質が好適に使用される。
【0024】
2)ライトガイド本体部210における工夫
ライトガイド本体部210は、その中を介して多波長近赤外線を伝播させる機能を呈するものであり、
図2に図示された出射側口金240(出射側端面φ8mm;先端部長さ12mm、中央部長さ20mm、基端部長さ8mm)、内部に光ファイバーバンドル(図示せず)を収容する熱収縮チューブ250、入射側口金260から構成される。光ファイバーバンドルは、相互に独立して延在する複数の光ファイバーの束から成る。本発明の実施例ではφ50μmの光ファイバーを使用して、これを約3000本束ねて1本の光ファイバーバンドルを作成した。φ50μmの光ファイバーを使用する理由は、折れにくく曲げやすいので、2700本もの多量の光ファイバーを束ねて作成した光ファイバーバンドルの取扱い、特に、捩じりに有利だからである。φ30μmの光ファイバーは折れやすく欠点があり、φ75μmの光ファイバーでは太いため曲げにくい。使用する光ファイバーの外径が50μmの場合は、ライトガイドの入射面から出射面までの直線距離は60mmが限界であった。
【0025】
この光ファイバーバンドルは、その一端面を入射側口金260の入射面と同じ平面内に有し、他端面を出射側口金240の出射面と同じ平面内に有する。この光ファイバーバンドルは、本発明の実施例においては、熱収縮チューブ250(商品名:スミチューブ(登録商標))により外側から締め付けられて内部で個々の光ファイバーがばらつかないように工夫されている。
【0026】
1本の光ファイバーバンドルを構成する複数本の光ファイバーの各々は、ライトガイド本体部210の出射側口金240からの近赤外線出射面において、他の光ファイバーバンドルを構成する複数本の光ファイバーの各々とペア、又は1つのグループを構成して出来るだけランダムに配置されるようにする。この結果、ライトガイド本体部210の入射側口金260において、どの点を見ても、あたかもカラーTVスクリーンやカラー液晶スクリーンの3原色ピクセルのごとく、3種類の光ファイバーが必ずペアとなって出現し、それぞれ別々の光ファイバーに入射した近赤外線が、出射側口金240から出射するときは、近赤外線の強度のバラつきが実用レベルにまで低減することが可能となる(この束ね方方法を便宜上ランダム加工と呼称する)。一方、ランダム加工なしの場合は、出射口端でその断面領域がほぼ3分割された状態(3in1ライトガイドの場合)で光が出射され、近赤外線の強度のバラつきが激しくなり、使用に耐えなくなる。
【0027】
このバラつきはセパレート型照度計を使用して以下のようにして評価する。入射端の1つに光(近赤外線光)を入れて出射端の微小面積領域から照射される照度を測定する。この測定時は、他の2本に光が入らないように遮光する。これを、他の2本のそれぞれについて、同様にして、照度を測定する。入射端の本数が増えた場合、その本数文の照度を、同様にして、測定する。分岐入射端には同等光量の光を入射させて出射光量を測定する。測定点は2mm間隔で9点実施する。多点測定することで、入射端からの光ファイバーの出射端の各部分が均一状態かどうか確認できる。この微小面積領域での各々の光ファイバーに入射したときの出射端の光量が測定各点で同等の場合(基準公差±10%以内)をランダムとする。この±10%と言う数値は、この範囲内であれば、調光により修正が可能であるが、この範囲を超える場合は光ファイバーの断線の可能性があることから決められている。より具体的には、以下のようにする。出射側口金240の出射端面から10mm離間した位置にセパレート型照度計センサー部を置く。この場合のセンサー部にはφ1mmの精密ピンホールが形成されている。次に、分岐入射端の同等光量の光を入射させ分岐単体の出射光量を測定する。このときの各入射端に入射したときの出射端の光量が、測定点(照度測定点9点が、矩形状に配置され、各点の相互間距離が2mm)の各点で同等の場合をランダムであると判断する。基準公差±10%以内とする。この測定は、入射端面に均一に光を照射する光源を使用する。平均照度が分岐した分との照度と誤差±10%以内の場合をランダムであると判断する。本発明に使用する光ファイバーバンドルはこのような判断基準に基づくランダム性を呈することが好ましい。
【0028】
光ファイバーバンドルの入射側の端部は、それぞれが入射側口金260に設けられた貫通孔270に固定されている。そしてそれぞれの端面は円形状でありその外径はφ3mmである。その端面は、4000番の研磨剤を使って精密研磨が施されている。また、出射側の端部は、光ファイバーバンドルを構成する光ファイバーが全て縒り合されて外観が円形状を呈して出射側口金240(の中央部に形成された貫通孔に固定されている。この固定には接着剤が好適に使用できる。光ファイバーバンドルの出射側の端面もまた4000番の研磨剤を使って精密研磨が施されている。このように光ファイバーの両端が同等に精密研磨されることにより、近赤外線LED素子から出射された近赤外線が光ファイバーバンドルに入射する際、及びそこから出射する際のエネルギーロスの実務レベルでの低減が図られている。
【0029】
3)ライトガイドケース220における工夫
近赤外線LED素子(図示せず)は通電されると発熱して近隣の他の近赤外線LED素子から出射されるピーク波長を変化させるので、ライトガイドケース220には、近赤外線LED素子から出射される近赤外線のピーク波長がシフトすることを極力避けるために、放熱特性の良い素材を使用することが好ましく、また、場合によっては、放熱用のクーリングファンを内蔵するも好ましい。ライトガイドケース220の外径はφ25mmで、内径は約φ21mmであり、長さは70mmである。
【0030】
4)アセンブリ過程における工夫
光源は基板610の貫通孔620に保持・固定された近赤外線LED素子(図示せず)により構成されている。アセンブリする際は、この基板610を、押し当て用金具510(幅約7.4mm)をネジ回しながら締め付けて、事前にライトガイド本体部210の入射側口金260にネジ留めされた光源アラインメント用金具230に対して押し当てることで、押し当て用金具510と光源アラインメント用金具230との間でサンドウィッチ状態にする。こうすることで、近赤外線LED素子(図示せず)のそれぞれが、対応する光ファイバーバンドルの入射側端面において出来る限り1直線状にアラインメントするようになる。かかるアラインメント状態の確保には、ネジによる固定以外にも様々なメカニズムが考えられるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲のものも好適に使用できる。
【0031】
押し当て用金具510は、その詳細が
図5に図示されている。
図5-aは、
図6に示す基板610を、
図3-aに示す光源アラインメント用金具230に対して光源側から押し当てるための押し当て用金具510の側面図を示す。
図5-bは、押し当て用金具510を近赤外線出射側から見たときの正面図、
図5-cは、押し当て用金具510を近赤外線入射側から見たときの正面図を示す。押し当て用金具510には、その円環状部の外側面にネジ520が形成されている。
【0032】
入射側口金260は、その詳細が
図2に図示されている。
図2-aは、
図1-bに示す本発明の光源内蔵型多波長近赤外線光源装置のライトガイド部の内部構造(分解不能)を示す。ライトガイド本体部の内部構造(分解不能)は、出射側口金240、内部に光ファイバーバンドル(図示せず)を収容する熱収縮チューブ250、入射側口金260から構成される。
【0033】
図2-bは、ライトガイド本体部を右側面から見たときの正面図、即ち、入射側口金260の正面図を示し、入射側口金260には、光ファイバーバンドルを貫通させて固定させるための貫通孔270が3つと光源アラインメント用金具230を入射側口金260にネジ固定するためのネジを受けるネジ穴280が3つ形成されている。
【0034】
固定用口金4は、
図9に図示された基盤の周縁を、その裏側から
図5に図示されたLED押さえ金具5でもって、固定用口金4の内側表面の内側段差部430に押さえ付けることで、固定用口金4に対して固定できるように構成されている。
【0035】
最終的にアセンブリされた光源内蔵型多波長近赤外線照射装置の外観が
図1に図示されている。
図1-aは、光源内蔵型多波長近赤外線光源装置を左側面から見たときの正面図を示し、
図1-cは、光源内蔵型多波長近赤外線光源装置を右側面から見たときの正面図を示す。
【0036】
本発明の光源内蔵型多波長近赤外線光源装置(3in1ライトガイドの場合)を構成するその構成要素ごと(ライトガイド本体部210;ライトガイドケース220;光源アラインメント用金具230)に分解したところの側面外観が
図2に図示されている。
図2-aは、
図1-bに示す本発明の光源内蔵型多波長近赤外線光源装置のライトガイド部の内部構造(分解不能)を示す。ライトガイド本体部の内部構造(分解不能)は、出射側口金240、内部に光ファイバーバンドル(図示せず)を収容する熱収縮チューブ250、入射側口金260から構成される。
図2-bは、ライトガイド本体部を右側面から見たときの正面図、即ち、入射側口金260の正面図を示し、入射側口金260には、光ファイバーバンドルを貫通させて固定させるための貫通孔270が3つと光源アラインメント用金具230を入射側口金260にネジ固定するためのネジを受けるネジ穴280が3つ形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、光源を内蔵することで小型化が図られた近赤外線照射装置から、それぞれ相互にピーク波長の異なる近赤外線を同時に又は個別に出射させることが可能となり、その結果、本発明の光源内蔵型近赤外線照射装置を用いて複数の近赤外線波長を検査対象物に照射して検査する場合、従来のように対象物に適合したピーク波長を選定することが必要なマルチスペクトルカメラや高価なハイパースペクトルカメラを使用することなく、安価な近赤外線カメラ(InGaAs)で検査することが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
1 光源内蔵型多波長近赤外線照射装置
110 光源部
120 入射側口金部
130 ライトガイド部
140 出射側口金部
210 ライトガイド本体部
220 ライトガイドケース
230 光源アラインメント用金具
240 出射側口金
250 熱収縮チューブ
260 入射側口金
310 貫通孔
320 ネジ穴
330 ネジ部
410 ネジ穴
420 ネジ穴
510 押し当て用金具
520 ネジ部
610 基板
620 貫通孔
630 貫通孔
【手続補正書】
【提出日】2024-10-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれピーク波長の異なる近赤外線を出射する近赤外線LED素子を複数有する多波長近赤外線光源とライトガイドとが一体化された多波長近赤外線照射装置であって、
前記ライトガイドは相互に独立して延在する複数本の光ファイバーから構成された束(以下、光ファイバーバンドル)を複数本含み、該光ファイバーバンドルの本数は、前記近赤外線LED素子の数と同じであり、
前記光ファイバーバンドルの出射側の端部は、該光ファイバーバンドルを構成する光ファイバーが全て縒り合され、
前記光ファイバーの両端が同等に精密研磨されている
ことを特徴とする光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項2】
前記複数の近赤外線LED素子は、1つの基盤上で、該基盤の中心点から半径方向に所定距離離れた円周線上に沿って相互に均等距離離れた位置に搭載されている
ことを特徴とする請求項1に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項3】
前記複数の近赤外線LED素子は、集光レンズを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項4】
前記複数の近赤外線LED素子は、それぞれ異なるピーク波長の近赤外線を、同時又は個別に出射する砲弾型LEDである
ことを特徴とする請求項3に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項5】
前記個別に出射することが時系列的に出射することである
ことを特徴とする請求項4に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。
【請求項6】
前記光ファイバーバンドルを構成する複数の光ファイバーのそれぞれの太さ、断面形状および光学特性は1本の光ファイバーバンドルの中の全体に亘って、及び、複数本の光ファイバーバンドルの全てに亘って、同じである
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の光源内蔵型多波長近赤外線照射装置。