(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158545
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】回路埋込基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/20 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H05B3/20 341
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073830
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒▲崎▼ 寿文
(72)【発明者】
【氏名】横山 崇
【テーマコード(参考)】
3K034
【Fターム(参考)】
3K034AA02
3K034AA12
3K034AA22
3K034BA08
3K034BA17
3K034BB08
3K034BB13
3K034BC03
3K034BC12
3K034JA01
(57)【要約】
【課題】回路と電極パッドとの位置合わせ精度を上げることで良品率を向上できる回路埋込基板の製造方法を提供する。
【解決手段】フィルム準備工程と、フィルム上に第1方向に沿って2つの電極パッドを配置する工程と、1つの金属細線からなり、任意パターンの機能部と、その両端から引き出された2つの配線部と、配線部から機能部とは反対側に延びて、電極パッドに一部が重なり、2つの位置ずれ吸収領域を構成する2つの端部とを有する回路を、超音波溶着機を用いてフィルムに埋め込んで形成する工程と、電極パッドとその上の金属細線とを接続する工程とを備え、超音波溶着機は、超音波振動でフィルムの金属細線との接触面を溶融させて金属細線をフィルムに埋め込むホーンと、その内部を通り引き出される金属細線を有し、位置ずれ吸収領域は、屈曲形状の端部で構成され、電極パッドと回路との第1方向の位置ずれを吸収する幅を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを準備する準備工程と、
前記フィルムの第1主面上の周縁部に、第1方向に沿って第1電極パッド及び第2電極パッドを間隔を空けて互いに平行に配置する配置工程と、
前記第1主面上に配置された1つの金属細線からなり、任意のパターンを有する機能部と、前記機能部の両端の一方から引き出された第1配線部と、前記機能部の両端の他方から引き出された第2配線部と、前記第1配線部及び前記第2配線部からそれぞれ前記機能部とは反対側に延びて、前記第1電極パッド及び前記第2電極パッドにそれぞれ一部が重なり、第1位置ずれ吸収領域を構成する第1端部及び第2位置ずれ吸収領域を構成する第2端部とを有する回路を、前記機能部と、前記第1配線部及び前記第2配線部と、前記第1端部及び前記第2端部のうち前記第1電極パッド及び前記第2電極パッドに重ならない部分とを超音波溶着機を用いて前記フィルムの前記第1主面に埋め込んで形成する回路形成工程と、
前記第1電極パッド及び前記第2電極パッドと、前記第1電極パッド及び前記第2電極パッドの上に位置する前記金属細線とをそれぞれ電気的に接続する接続工程とを備え、
前記超音波溶着機は、超音波振動を与えることにより前記フィルムの前記金属細線との接触面を溶融させるとともに前記金属細線を前記フィルムの前記第1主面に埋め込むホーンと、前記ホーンの内部を通り前記ホーンの先端から前記フィルムの前記第1主面上に連続的に引き出される前記金属細線を有しており、
前記第1位置ずれ吸収領域及び前記第2位置ずれ吸収領域は、屈曲形状の前記第1端部及び前記第2端部で構成され、前記第1電極パッド及び前記第2電極パッドと前記回路との前記第1方向の位置ずれを吸収する幅をそれぞれ有している、回路埋込基板の製造方法。
【請求項2】
前記屈曲形状が平面視でジグザグ形状またはU字状である、請求項1に記載の回路埋込基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路埋込基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1つの金属細線が任意のパターンでフィルムに埋め込まれた、フィルムヒータなどが知られている(例えば、特許文献1参照)。
図10を参照して、このようなフィルムヒータ100は、フィルム200と、フィルム200の周縁部に、Y方向に沿って間隔を空けて互いに平行に配置された四角形状の第1電極パッド500及び第2電極パッド600と、フィルム200に埋め込まれた1つの金属細線300からなる回路400とを備えている。
回路400は、任意のパターンを有するヒータ部450と、ヒータ部450の両端からそれぞれ引き出された第1配線部430及び第2配線部440と、第1配線部430及び第2配線部440からそれぞれヒータ部450とは反対側(図の+X方向)に延びて、第1電極パッド500及び第2電極パッド600にそれぞれ重なる第1端部410及び第2端部420とを有している。回路400は、超音波溶着機を用いて超音波振動を与えることにより、フィルム200の金属細線300との接触面を溶融させて埋め込まれている。例えば、第1端部410から、第1配線部430、ヒータ部450、第2配線部440、第2端部420の順で埋め込んでいくことができる。
【0003】
第1端部410及び第2端部420は、それぞれ第1電極パッド500及び第2電極パッド600をX方向に跨いでいる。第1電極パッド500及び第2電極パッド600の上面と、第1端部410及び第2端部420のうち上面に接する金属細線300とを電気的に接続する。第1電極パッド500及び第2電極パッド600に電圧を印加すると、回路400に電流が生じ、ヒータ部450が発熱する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のフィルムヒータ100の製造方法では、フィルム200上にまず電極パッド500,600を配置し、そのフィルム200の角を治具(図示せず)に当ててセットする。その後に、第1端部410及び第2端部420が電極パッド500,600に重なるように金属細線300をフィルム200に埋め込む。電極パッド500,600の配置と金属細線300の埋め込みとが別工程であるため、次のような位置ずれが生じる。すなわち、(1)電極パッドの位置ずれ(2)金属細線の埋め込みの位置ずれ(3)電極パッド及び金属細線埋め込みの位置ずれである。この製造方法において、例えば電極パッド500,600の配置箇所が
図10(a)の+Y方向にずれてしまうと、相対的に金属細線300の埋め込み位置は
図10(a)の-Y方向にずれてしまう。つまり、従来の製造方法では、電極パッド500,600と回路400との位置合わせが難しいため良品率が上がりにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、回路と電極パッドとの位置合わせ精度を上げることにより、良品率の向上を図ることができる回路埋込基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための第1の発明は、
フィルムを準備する準備工程と、
フィルムの第1主面上の周縁部に、第1方向に沿って第1電極パッド及び第2電極パッドを間隔を空けて互いに平行に配置する配置工程と、
第1主面上に配置された1つの金属細線からなり、任意のパターンを有する機能部と、機能部の両端の一方から引き出された第1配線部と、機能部の両端の他方から引き出された第2配線部と、第1配線部及び第2配線部からそれぞれ機能部とは反対側に延びて、第1電極パッド及び第2電極パッドにそれぞれ一部が重なり、第1位置ずれ吸収領域を構成する第1端部及び第2位置ずれ吸収領域を構成する第2端部とを有する回路を、機能部と、第1配線部及び第2配線部と、第1端部及び第2端部のうち第1電極パッド及び第2電極パッドに重ならない部分とを超音波溶着機を用いてフィルムの第1主面に埋め込んで形成する回路形成工程と、
第1電極パッド及び第2電極パッドと、第1電極パッド及び第2電極パッドの上に位置する金属細線とをそれぞれ電気的に接続する接続工程とを備え、
超音波溶着機は、超音波振動を与えることによりフィルムの金属細線との接触面を溶融させるとともに金属細線をフィルムの第1主面に埋め込むホーンと、ホーンの内部を通りホーンの先端からフィルムの第1主面上に連続的に引き出される金属細線を有しており、
第1位置ずれ吸収領域及び第2位置ずれ吸収領域は、屈曲形状の第1端部及び第2端部で構成され、第1電極パッド及び第2電極パッドと回路との第1方向の位置ずれを吸収する幅をそれぞれ有している、回路埋込基板の製造方法である。
【0008】
このような製造方法によれば、第1電極パッド及び第2電極パッドと、第1端部及び第2端部の埋め込み位置とが相対的に第1方向にずれた場合であっても、第1端部及び第2端部が屈曲形状であり、第1電極パッド及び第2電極パッドと回路との第1方向の位置ずれを吸収する幅をそれぞれ有しているため、第1端部及び第2端部はそれぞれ第1電極パッド及び第2電極パッドと重なる部分を有する。したがって、電極パッドと回路との位置合わせ精度が上がるため、良品率の向上を図ることができる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、屈曲形状が平面視でジグザグ形状またはU字状である、回路埋込基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の回路埋込基板の製造方法によれば、回路と電極パッドとの位置合わせ精度を上げて、良品率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】回路埋込基板の製造方法の一実施形態を示す模式的な斜視図。
【
図2】第1端部及び第2端部の一例を示す部分拡大図。
【
図3】電極パッドが+X方向に位置ずれした状態を示す拡大図。
【
図4】第1端部及び第2端部の別の例を示す部分拡大図。
【
図5】電極パッドが+X方向に位置ずれした状態を示す拡大図。
【
図6】電極パッドが、
図5からさらに+X方向に位置ずれした状態を示す拡大図。
【
図7】電極パッドが-X方向に位置ずれした状態を示す拡大図。
【
図8】従来のフィルムヒータにおいて、電極パッドが+X方向に位置ずれした状態を示す拡大図。
【
図9】従来のフィルムヒータにおいて、電極パッドが-X方向に位置ずれした状態を示す拡大図。
【
図10】(a)従来のフィルムヒータを示す模式的な平面図。(b)(a)のA-A断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(回路埋込基板の概要)
図1(f)を参照して、回路埋込基板1は、フィルム2と、フィルム2の第1主面2a上に配置された1つの金属細線3からなる回路4と、第1電極パッド5と、第2電極パッド6とを備えている。回路4は、機能部45と、第1配線部43と、第2配線部44と、第1端部41と、第2端部42とを有する。機能部45は、任意のパターンを有する。第1配線部43は、機能部45の両端の一方45aから引き出されている。第2配線部44は、機能部45の両端の他方45bから引き出されている。第1端部41は、第1配線部43から機能部45とは反対側(-Y方向)に延びて、第1電極パッド5に重なっている。第2端部42は、第2配線部44から機能部45とは反対側(-Y方向)に延びて、第2電極パッド6に重なっている。
本実施形態では、第1端部41及び第2端部42は、平面視でジグザグ形状(屈曲形状の一例)である。
【0013】
機能部45、第1配線部43及び第2配線部44は、フィルム2の第1主面2aに埋め込まれている。第1端部41及び第2端部42のうち電極パッド5,6に重なっている部分は第1主面2aに埋め込まれておらず、それ以外の部分は埋め込まれている。換言すれば、電極パッド5,6の上に位置する金属細線3は第1主面2aに埋め込まれておらず、電極パッド5,6の上に位置しない金属細線3は埋め込まれている。
【0014】
本実施形態では、機能部45は発熱部であり、回路埋込基板1はフィルムヒータである。例えば第1電極パッド5にプラスの電圧を印加し、第2電極パッド6にマイナスの電圧を印加することにより、金属細線3からなる回路4に電流が生じ、機能部45が発熱する。機能部45は、第1配線部43及び第2配線部44にそれぞれ接続された両端45a,45bを有し、ループ状のパターン形状を有する。より詳細には、機能部45は、第1配線部43との接続部45aから+X方向に延びた後、+Y方向、-X方向、-Y方向、そして+X方向へと延びて第2配線部44との接続部45bに到達するパターン形状である。このように機能部45は、第1配線部43及び第2配線部44との接続部45a,45bを有し、接続部45a,45bからXY平面に広がる任意のパターンを有する。
【0015】
フィルム2は任意の形状とすることができ、本実施形態では矩形状である。フィルム2は透明、不透明又は着色透明のものを用いることができる。フィルム2の材料としては、例えば、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂を用いることができる。これらを2種以上含有するものであってもよい。フィルム2には無機微細粉末あるいは有機フィラー、分散剤、酸化防止剤、相溶化剤、紫外線安定剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤などを適宜添加することができる。フィルム2の厚みは、例えば0.05mm~1mmである。
【0016】
金属細線3には、例えば、銅、鉄、金、銅ニッケル、ニッケルクロム、鉄ニッケルクロムなど導電性を有する材料を用いることができる。電気抵抗や耐久性、コストの観点から、銅又は銅に亜鉛や鉛、錫、銀、アルミ、ニッケル、ベリリウム、ジルコニウムなどを単独もしくは複数組み合わせた銅合金を用いることが好ましい。金属細線3の直径は、例えば0.01mm~0.5mmである。直径をできるだけ細くし、例えば0.01mm~0.2mmとすると、金属細線3を目立たなくすることができる。
【0017】
なお、回路4は、金属細線3とそれを被覆する絶縁被覆層とからなる導電線によって形成してもよい。絶縁被覆層は絶縁性の樹脂であり、例えばポリエステル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド、フッ素樹脂等を用いることができる。導電線の直径は、例えば0.05mm~0.3mmである。
【0018】
2つの電極パッド5,6は例えば、銅、リン青銅、黄銅、コルソン合金、ニッケル、モリブデンなど導電性を有する材料を用いることができる。これら材料を母材とし、母材にニッケル、スズ、金、銀、銅などをメッキしたものを用いてもよい。電極パッド5,6の大きさは、例えば5mm×10mmである。厚みは、例えば0.1mmである。
なお、本実施形態では電極パッド5,6は四角形状であるが、これに限定されない。例えば、四角形以外の多角形状、円形状、楕円形状、L字形状などでもよい。
【0019】
(回路埋込基板の製造方法)
このような回路埋込基板1の製造方法の一実施形態を、
図1を参照して説明する。
回路埋込基板1の製造方法は、フィルム2を準備する準備工程(図示せず)と、第1電極パッド5及び第2電極パッド6をフィルム2の第1主面2a上の周縁部に配置する配置工程(
図1(a))と、超音波溶着機7を用いて回路4を形成する回路形成工程(
図1(b)~
図1(e))と、回路4の第1端部41及び第2端部42と電極パッド5,6とを電気的に接続する接続工程(
図1(f))とを備えている。
【0020】
準備工程では、フィルム2をステージ(図示せず)の上に固定するとよい。また、フィルム2の位置合わせを容易にするために治具(図示せず)を用いてもよい。配置工程では、第1電極パッド5及び第2電極パッド6を、フィルム2の第1主面2a上の周縁部に配置する。換言すれば、フィルム2のX方向(第1方向)に平行な一辺に沿って、X方向に並んで配置する。2つの電極パッド5,6は四角形状であり、X方向に沿って間隔を空けて互いに平行に配置する。2つの電極パッド5,6が、それぞれ回路埋込基板1の端子部となる。2つの電極パッド5,6は、例えば接着剤などを用いて第1主面2a上に固定することができる。
【0021】
図1(b)を参照して、回路形成工程で用いる超音波溶着機7は、超音波振動を発生させる発振器(図示せず)と、発振器からの超音波振動を伝播させるホーン71と、金属細線3とを備えている。ホーン71は、超音波振動を与えることによりフィルム2の金属細線3との接触面を溶融させるとともに、金属細線3をフィルム2の第1主面2aに埋め込むことができる。金属細線3は、ホーン71の内部を通り、ホーン71の先端71aからフィルム2の第1主面2a上に連続的に引き出される。
【0022】
回路形成工程は、まず、
図1(b)に示すように、ホーン71から金属細線3を所定長さだけ引き出しつつフィルム2の第1主面2aに埋め込み、第1電極パッド5の上をジグザグ形状に跨いで第1端部41を形成する。このとき、ジグザグ形状の折れ曲がり部は第1主面2aに埋め込まれ、第1電極パッド5に重なる金属細線3は第1主面2aに埋め込まれず、第1電極パッド5の上面に接触する。
次に、
図1(c)に示すように、第1端部41の埋め込み終端から+Y方向に向かって金属細線3を所定長さだけ引き出しつつ第1主面2aに埋め込んで、第1配線部43を形成する。次に、第1配線部43の埋め込み終端43aから金属細線3を所定長さだけ引き出しつつ、XY平面に広がる任意のパターンで第1主面2aに埋め込んで機能部45を形成する。第1配線部43の埋め込み終端43aは、機能部45の始端となる。換言すると、第1配線部43の終端43aは、機能部45の両端の一方45aとなる(
図1(d)参照)。
次に、
図1(d)に示すように、ホーン71から金属細線3を所定長さだけ引き出しつつ、機能部45の終端45bから-Y方向に延びて第1主面2aに埋め込んで、第2配線部44を形成する。機能部45の終端45bは、第2配線部44の始端であり、機能部45の両端の他方となる。
次に、
図1(e)に示すように、第2配線部44の埋め込み終端44aから金属細線3を所定長さだけ引き出しつつ第1主面2aに埋め込み、第2電極パッド6の上をジグザグ形状に跨いで第2端部42を形成する。このとき、ジグザグ形状の折れ曲がり部は第1主面2aに埋め込まれ、第2電極パッド6に重なる金属細線3は第1主面2aに埋め込まれず、第2電極パッド6の上面に接触する。第2端部42を形成した後、第2端部42の埋め込み終端で金属細線3を切断する。切断方法としては、例えば、カッターやニッパーを用いることができる。
最後に接続工程では、
図1(f)の点Pに示すように、2つの電極パッド5,6と、2つの電極パッド5,6の上に位置する(上面に接触している)金属細線3とをそれぞれ電気的に接続する。接続には、公知の金属接合技術である、溶接(抵抗溶接、超音波溶接、レーザ溶接など)、半田付け、ロウ付けなどを用いることができる。なお、電極パッド5,6と金属細線3とを電気的に接続する箇所は、複数であってもよい。
このようにして、回路埋込基板1を得ることができる。
【0023】
(位置ずれ吸収領域の第1実施形態)
図2を参照して、第1端部41及び第2端部42は、それぞれ第1位置ずれ吸収領域41a及び第2位置ずれ吸収領域42aを構成する。第1位置ずれ吸収領域41a及び第2位置ずれ吸収領域42aは、図中の破線で示した領域である。
図2は、第1電極パッド5及び第2電極パッド6と、第1端部41及び第2端部42との位置ずれがない状態を示している。
第1位置ずれ吸収領域41aは幅W
41を有し、第2位置ずれ吸収領域42aは幅W
42を有している。これら幅W
41,W
42は、端部41,42のジグザグ形状の幅に等しく、2つの電極パッド5,6の幅W
5,W
6よりも大きく設定される。当然ながら、位置ずれ吸収領域41a,42aの幅W
41,W
42を大きくすれば、許容できる電極パッド5,6のX方向の位置ずれの大きさも大きくなる。
例えば、電極パッド5,6の幅W
5,W
6がそれぞれ5mm、電極パッド5,6の間隔Sが10mmのとき、幅W
41,W
42はそれぞれ15mmとすることができる。
【0024】
図3に示すように、例えば電極パッド5,6の位置が+X方向にdだけずれて配置された場合であっても、位置ずれ吸収領域41a,42aがそれぞれdよりも大きい幅W
41,W
42を有しているため、電極パッド5,6の位置ずれを吸収することができる。位置ずれ吸収領域41a,42aがそれぞれ幅W
41,W
42を有することにより、フィルム2に対する電極パッド5,6の位置がX方向にdだけずれたとしても、端部41,42は電極パッド5,6に重なる。そのため、端部41,42の埋め込み位置は、電極パッド5,6の位置ずれを考慮する必要がない。つまり、端部41,42は、回路埋込基板1を製造する度に、毎回同じ位置に埋め込めば良い。
このように、電極パッド5,6の位置ずれを考慮せずとも、端部41,42と電極パッド5,6との位置合わせが可能になるため、良品率を向上することができる。
【0025】
(位置ずれ吸収領域の第2実施形態)
図4を参照して、第1端部41及び第2端部42の屈曲形状は、平面視でU字状であってもよい。第1端部41及び第2端部42は、それぞれ第1位置ずれ吸収領域41a及び第2位置ずれ吸収領域42aを構成する。
図4は、第1電極パッド5及び第2電極パッド6と、第1端部41及び第2端部42との位置ずれがない状態を示している。
【0026】
第1位置ずれ吸収領域41aは幅W41を有し、第2位置ずれ吸収領域42aは幅W42を有している。これら幅W41,W42は、端部41,42のU字状の幅に等しく、それぞれ下記の式(1)及び式(2)を満たす。ここで、S5,S6はそれぞれ、各電極パッド5,6をY方向に跨いでいる2つの金属細線3の間隔である。
W41=(2×W3)+S5 ・・・(1)
W42=(2×W3)+S6 ・・・(2)
また、金属細線3と電極パッド5,6とを超音波溶接する場合は、第1位置ずれ吸収領域41a及び第2位置ずれ吸収領域42aのそれぞれの幅W41,W42と、2つの電極パッド5,6の幅W5,W6とを等しく設定することができる。なお、金属細線3と電極パッド5,6とを半田付けする場合は、半田を金属細線3の両脇に配置(換言すれば、金属細線3を挟む位置に半田を配置)して、金属細線3を固定する必要があるため、W5(W6)>W41(W42)とする。
電極パッド5,6の幅W5,W6に対して、金属細線3の幅(直径)W3及び間隔S5,S6は、それぞれ下記の式(3)及び式(4)を満たす値に設定する。
W5=2W3+S5 ・・・(3)
W6=2W3+S6 ・・・(4)
つまり、電極パッド5,6の幅W5,W6と金属細線3の幅(直径)W3とが決まれば、間隔S5,S6は上式(3)(4)から求められる。例えば、幅W5(=幅W6)が5mmの電極パッド5,6と、幅(直径)W3が0.5mmの金属細線3を用いた場合、間隔S5(=S6)は5-1=4mmとなる。
【0027】
このように、間隔S
5,S
6を空けて、U字状に第1位置ずれ吸収領域41a及び第2位置ずれ吸収領域42aを形成することによって、例えば
図5に示すように、電極パッド5,6がそれぞれ+X方向にd(=W
5/2=W
6/2)だけずれた場合であっても、金属細線3と電極パッド5,6とが重なる部分(金属細線3が電極パッド5,6を跨ぐ部分)が存在する。つまり、電極パッド5,6と端部41,42との位置合わせ精度が上がるため、良品率を向上することができる。
【0028】
また、
図6及び
図7に示すように、±X方向にそれぞれd+d/2だけ電極パッド5,6がずれたとしても、第1端部41及び第2端部42の形状が上式(3)(4)を満たしている限り、金属細線3と電極パッド5,6とが重なる部分が存在する。
図6及び
図7では、1本の金属細線3がそれぞれ電極パッド5,6の縁部分に重なっている。
図6及び
図7から分かるように、電極パッド5,6のX方向の位置ずれの許容範囲はそれぞれd+d/2である。ここでd=W
5/2(=W
6/2)であるから、W
5/2+W
5/4=3W
5/4(=3W
6/4)となる。
【0029】
一方、
図8及び
図9を参照して、従来のフィルムヒータ100における第1端部410及び第2端部420は直線である。
図8及び
図9は、電極パッド500,600がX方向にずれているが、金属細線300と電極パッド500,600とが重なる部分が存在している。
図8及び
図9の電極パッド500,600のずれ量は、電極パッド500,600の幅の半分(W
500/2,W
600/2)である。つまり、電極パッド500,600のX方向の位置ずれの許容範囲は、電極パッド500,600の幅の半分(W
500/2,W
600/2)である。
【0030】
このように、第1端部41及び第2端部42の形状を、従来の直線から上式(3)(4)を満たすU字状にすることによって、電極パッド5,6のX方向の位置ずれの許容範囲は1.5倍になる。つまり、第1端部41及び第2端部42と電極パッド5,6とを位置合わせしやすくなるため、良品率を向上することができる。
【0031】
なお、上記2つの実施形態は、金属細線3の埋め込み位置はずれず、電極パッド5,6が位置ずれする形態であるが、これとは逆に電極パッド5,6が位置ずれせず、金属細線3の埋め込み位置がずれる形態でも、本発明の製造方法は上記実施形態と同様の作用効果を奏する。また、電極パッド5,6の位置及び金属細線3の埋め込み位置の両方がずれる形態でも、本発明の製造方法は上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0032】
1 :回路埋込基板
2 :フィルム
2a :第1主面
3 :金属細線
4 :回路
41 :第1端部
41a:第1位置ずれ吸収領域
42 :第2端部
42a:第2位置ずれ吸収領域
43 :第1配線部
44 :第2配線部
45 :機能部
5 :第1電極パッド
6 :第2電極パッド
7 :超音波溶着機
71 :ホーン
100:フィルムヒータ
200:フィルム
300:金属細線
400:回路
410:第1端部
420:第2端部
430:第1配線部
440:第2配線部
450:ヒータ部
500:第1電極パッド
600:第2電極パッド
700:接着層