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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015855
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】保安器具
(51)【国際特許分類】
   E01F 13/02 20060101AFI20240130BHJP
   E04H 17/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
E01F13/02 A
E04H17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118198
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】守村 進
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 由美
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 芳明
(72)【発明者】
【氏名】森田 貢一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐司
(72)【発明者】
【氏名】滝田 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 さゆり
(72)【発明者】
【氏名】小根山 弥生
【テーマコード(参考)】
2D101
2E142
【Fターム(参考)】
2D101CA11
2D101DA05
2D101EA08
2D101FA13
2D101FA22
2D101FB12
2D101GA04
2D101GA21
2E142AA03
2E142GG00
2E142JJ01
(57)【要約】
【課題】比較的に簡単な構成でありながら、運搬や設置・撤去に要する労力や手間を低減することができ、運搬や収納・保管のためのスペースを少なく抑えることが可能な保安器具を提供する。
【解決手段】膜材で画成された本体部(10)と、本体部(10)に設けた気体導入部(11)とを備え、気体導入部(11)から本体部(10)に導入される空気などの気体によって本体部(10)が膨らむことで所望の形状となる路面設置用の保安器具(1)であって、本体部(10)は、複数の略円錐形状のコーン部(20)と、複数のコーン部(20)を連結してなる一又は複数の長尺状のバー部(30)とを有し、コーン部(20)とバー部(30)とは互いの内部が連通しており、気体導入部(11)から本体部(10)に導入された気体がコーン部(20)とバー部(30)との両方に充填される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜材で画成された本体部と、前記本体部に設けた気体導入部と、を備え、前記気体導入部から前記本体部に導入される気体によって前記本体部が膨らむことで所望の形状となる路面設置用の保安器具であって、
前記本体部は、複数の略円錐形状のコーン部と、前記複数のコーン部を連結してなる一又は複数の長尺状のバー部と、を有し、
前記コーン部と前記バー部とは互いの内部が連通しており、前記気体導入部から前記本体部に導入された気体が前記コーン部と前記バー部との両方に充填されるように構成した
ことを特徴とする保安器具。
【請求項2】
前記バー部は、前記コーン部における下端部以外の位置に接続されている
ことを特徴とする請求項1に記載の保安器具。
【請求項3】
前記本体部には、前記気体導入部から導入された気体を外部に漏出させる気体漏出部が設けられており、
前記本体部は、前記気体導入部から気体が常時導入されることで前記所望の形状が維持される
ことを特徴とする請求項2に記載の保安器具。
【請求項4】
前記気体漏出部は、前記膜材を縫い合わせてなる縫合部における前記膜材同士の隙間と前記膜材の小穴の少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項3に記載の保安器具。
【請求項5】
前記膜材は、ターポリンからなる布材である
ことを特徴とする請求項4に記載の保安器具。
【請求項6】
前記コーン部の下端部に連接されて前記保安器具を設置する路面に載置される基部を備え、
前記基部は、錘部材を載置可能なシート状であって、前記錘部材と前記路面との隙間から当該基部が抜けることを防止する抜け防止部を備える
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の保安器具。
【請求項7】
前記コーン部の下端部に連接されて前記保安器具を設置する路面に載置される基部を備え、
前記基部は、錘部材又は錘となる材料を収容するための袋状の収容部を備える
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の保安器具。
【請求項8】
前記コーン部の前記膜材に設けた開閉部を備える
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の路上設置用の保安器具。
【請求項9】
前記開閉部は、前記コーン部の前記膜材を開閉可能な線ファスナーである
ことを特徴とする請求項8に記載の路上設置用の保安器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や建造物の工事現場等で用いるための路面設置用の保安器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、道路や建造物の工事現場等において特定のスペースを規制したり区分けをしたりする目的で、三角コーン、セーフティーコーン、カラーコーン(登録商標)等と称されるコーン型の保安器具が使用されている。一般的なコーン型の保安器具は、地面等の設置面に置かれる略円錐形状のコーン本体と、並べて配置した複数のコーン本体において隣接するもの同士の間に掛け渡す棒状のバー(コーンバー)とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-127656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来構造の保安器具は、コーン本体とコーンバーのいずれもポリエチレン樹脂や軟質塩化ビニル樹脂などの合成樹脂材で形成されており、畳んだり分解したりすることができず、また相当の重量を有する構造であった。そのため、収納時や運搬時にもそのままの形状で保管や運搬をすることが必要で、特に複数(多数)のコーン本体とコーンバーを設置・撤去・移動又は保管する際に多大な労力や手間を要するものであった。また、それらの運搬や収納・保管のために大きなスペース(場所)が必要であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、比較的に簡単な構成でありながら、運搬や設置・撤去に要する労力や手間を低減することができ、また、運搬や収納・保管のためのスペースを少なく抑えることが可能な保安器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る路上設置型の保安器具は、膜材で画成された本体部(10)と、本体部(10)に設けた気体導入部(11)と、を備え、気体導入部(11)から本体部(10)に導入される気体によって本体部(10)が膨らむことで所望の形状となる路面設置用の保安器具(1)であって、本体部(10)は、複数の略円錐形状のコーン部(20)と、複数のコーン部(20)を連結してなる一又は複数の長尺状のバー部(30)と、を有し、コーン部(20)とバー部(30)とは互いの内部が連通しており、気体導入部(11)から本体部(10)に導入された気体がコーン部(20)とバー部(30)との両方に充填されるように構成したことを特徴とする。
【0007】
本発明にかかる保安器具によれば、略円錐形状のコーン部と長尺状のバー部とを有してなる保安器具の本体部を、気体導入部から導入される空気などの気体によって膨らむことで所望の形状となるいわゆるバルーン型の保安器具としたことで、本体部の内部の気体を抜いた状態で膜材を折り畳んだり丸めたりすることで寸法を小さくして保管でき、また、その状態で使用現場(設置現場)まで運搬することができる。そして、使用現場において本体部の膜材を広げて気体導入部から本体部内に気体を導入することで、コーン部が略円錐形状に膨らみ、かつバー部が円柱状(棒状)に膨らむことで、本体部を従来のコーンとコーンバーからなる保安器具を設置した状態と同様の形状にすることができる。したがって、収納時の省スペース化及び運搬時の省力化を図ることができ、かつ、使用時には保安器具としての機能を十分に発揮することで利便性を高めることができる保安器具となる。
【0008】
また、本発明によれば、コーン部とバー部を一体化していることで、一の工程で従来のコーン本体とコーンバーの両方に対応する保安器具の設置が完了するので、使用現場(設置現場)での設営の時間を短縮することができると共に作業の省力化を図ることができる。
【0009】
また、この保安器具では、バー部(30)は、コーン部(20)における下端部(20b)以外の位置に接続されていてよい。
【0010】
この構成によれば、本体部のバー部がコーン部における下端部以外の位置に接続されていることで、本発明のバー部を従来の(折り畳み等ができない)コーンを連結してなる棒状のコーンバーと同様に、隣り合うコーンの間に渡した柵状の部分として機能させることができる。
【0011】
また、この保安器具では、本体部(10)には、気体導入部(11)から導入された気体を外部に漏出させる気体漏出部が設けられており、本体部(10)は、気体導入部(11)から気体が常時導入されることで所望の形状が維持されるようにしてもよい。
【0012】
この構成によれば、本体部には、気体導入部から導入された気体を外部に漏出させる気体漏出部が設けられており、本体部は、気体導入部から気体が常時導入されることで所望の形状が維持されるようにしたことで、保安器具を使用している間は、送風機等の運転を継続することで常時本体部の内部へ空気などの気体を送り込み続けるようにすれば、本体部の内部へ送り込まれた気体は、その一部が空気漏出部から僅かな量ずつ外部へ漏出し続けるようになる。これにより、簡単な構成で、送風機等の運転を継続している間、本体部(コーン部及びバー部)を膨らませ続けて所望の形状を保持することができる。
【0013】
また、この保安器具では、気体漏出部は、膜材を縫い合わせてなる縫合部における膜材同士の隙間と膜材の小穴の少なくともいずれかであってよい。
【0014】
この構成によれば、膜材を縫い合わせてなる縫合部における膜材同士の隙間や膜材の小穴を気体漏出部として用いることができるので、気体漏出部として機能するための部分を別途に設けることなく常時送風型の保安器具を構成できる。したがって、本体部の縫製などの製造過程の簡素化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
また、この保安器具では、膜材は、ターポリンからなる布材であってよい。
【0016】
この構成によれば、本体部を構成する膜材がターポリンからなる布材であることで、膜材の薄型化や保安器具の軽量化を図りながらも、保安器具に必要な防水性及び耐久性等を確保することが可能となる。また、保安器具の製造コストを比較的に低く抑えることができる。
【0017】
また、この保安器具では、コーン部(20)の下端部(20b)に連接されて保安器具を設置する路面(L)に載置される基部(25)を備え、基部(25)は、錘部材(40)を載置可能なシート状であって、錘部材(40)と路面(L)との隙間から当該基部(25)が抜けることを防止する抜け防止部(26)を備えてもよい。
【0018】
この構成によれば、基部に錘部材を載置することで、強風等で保安器具が不用意に移動したり倒れたりすることを防止できる。また、基部に抜け防止部を備えたことで、錘部材と路面との隙間から基部が抜けることを防止できるので、錘部材を基部に載置するだけでよく、設置の作業の容易化や時間の短縮化を図ることができる。
【0019】
また、この保安器具では、コーン部(20)の下端部(20b)に連接されて保安器具を設置する路面(L)に載置される基部(25)を備え、基部(25)は、錘部材又は錘となる材料を収容するための袋状の収容部(29)を備えてもよい。
【0020】
この構成によれば、基部に設けた収容部に錘部材又は錘となる材料を収容することで、強風等で保安器具が不用意に移動したり倒れたりすることを防止できる。また、基部に設けた収容部が袋状であることで、収容部に既存の粒状の錘となる材料なども収容することができ、保安器具の利便性が向上する。
【0021】
また、この保安器具では、コーン部(20)の膜材に設けた開閉部(21)を備えてもよい。
【0022】
この構成によれば、コーン部の膜材に設けた開閉部を備えることで、コーン部を開閉して内部に照明装置などを収容することで保安器具を発光させるができる。これにより、簡単な構成で保安器具の利便性を高めることができる。
【0023】
また、この場合、開閉部(21)は、コーン部(20)の膜材を開閉可能な線ファスナーであってよい。
【0024】
この構成によれば、開閉部は、コーン部の膜材を開閉可能な線ファスナーであることで、簡単な構成で、保安器具の設置現場で照明装置などを出し入れする際に開閉部を容易かつ確実に開閉することが可能となる。したがって、保安器具の利便性を更に高めることができる。
【0025】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における対応する構成要素の図面参照番号を参考のために示すものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明にかかる保安器具によれば、比較的に簡単な構成でありながら、運搬や設置・撤去に要する労力や手間を低減することができ、運搬や収納・保管のためのスペースを少なく抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る路面設置用の保安器具を示す概略の側面図である。
図2図1のX-X矢視図である。
図3図1のY部分の拡大図である。
図4】保安器具の一部を示す斜視図である。
図5】保安器具の一部を示す斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る保安器具の一部を示す斜視図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る保安器具を示す概略の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る路面設置用の保安器具を示す側面図で、図2は、図1のX-X矢視図、図3は、図1のY部分の拡大図である。また、図4及び図5は、保安器具の一部を示す斜視図である。これらの図に示す路面設置用の保安器具1は、薄いシート状の膜材で画成された中空の本体部10と、本体部10に設けた空気導入路(気体導入部)11とを備え、空気導入路11から本体部10に導入される空気(気体)によって本体部10が膨らむことで所望の形状となるものである。
【0029】
そして、保安器具1の本体部10は、複数の略円錐形状のコーン部20と、それら複数のコーン部20を互いに連結してなる複数の長尺棒状のバー部30とを有している。図示するものでは、本体部10は、四個のコーン部20とそれらの隣接するもの同士を連結する三本のバー部30とで構成されている。コーン部20とバー部30は、いずれもシート状(布状)の薄い膜材で画成された中空状であって、それらは互いの内部が連通しており、空気導入路11から本体部10に導入された空気がこれらコーン部20とバー部30との両方に充填されるようになっている。
【0030】
コーン部20の下端部20bには、当該下端部20bの下面(底面)側を覆って保安器具1を設置する路面Lに載置される基部25が設けられている。基部25は、膜材で略正方形状(矩形状)のシート状に形成されており、その各辺(縁部)25aには抜け防止部26が連接されている。この基部25には、コーン部20とは別部材であるリング状の錘部材40(図1及び図3参照)を載置することができる。錘部材40は、コーン部20の下端部20bの外周を囲むように設置される環状の重量物であり、この錘部材40を基部25に載置することでコーン部20の位置ずれや倒れを防止できる。抜け防止部26は、錘部材40を載せた基部25が路面Lと錘部材40との間から抜けないようにするための部分で、基部25の各辺に設けた中空状の膜材からなる。抜け防止部26に筒状又は棒状の長尺部材45を挿入することで抜け防止部26が錘部材40の端辺に引っ掛かるようになり、基部25が路面Lと錘部材40との間から抜けることを防止できる。
【0031】
また、基部25の下面(裏面)25cは保安器具1を設置する路面Lに載置される面である。そのため、路面Lとの擦れによる摩耗を防止するため、当該下面25cには、摩擦に対する耐性の高い布材27を取り付けることが望ましい。布材27は、摩擦に強い材質のシート材とするほか、本体部10の膜材と同じ材質(例えばターポリン)でその厚さを本体部10の膜材よりも厚いものとすることなども可能である。布材27は、基部25の下面25cに接着剤で貼付したり縫い付けたりすることができる。
【0032】
バー部30は、コーン部20の側面における上端部20aの近傍の接続部31でコーン部20に接続されている。バー部30は隣接するコーン部20の間に掛け渡されており、その長手方向が保安器具1(コーン部20)を設置する路面Lと略平行に延びている。バー部30とコーン部20を接続する接続部31は、バー部30の膜材をコーン部20の膜材に縫合してなる縫合部(縫目)である。接続部31でバー部30の内部とコーン部20の内部とが連通している。
【0033】
本実施形態では、本体部10を構成する膜材は、一例としてターポリンからなる可撓性を有する薄いシート材(布材)である。ここでいうターポリンは、ポリエステルなど合成樹脂製の布材を含み防水性及び耐久性を有するシート状の素材をいい、一例として、ポリ塩化ビニル製の層とポリエステル製の層との積層構造のシートなどが挙げられる。また、膜材の厚さ寸法は、一例として、0.20mm~0.50mm程度が好ましいが、厚さや材質は、保安器具1の重量、強度、耐久性などを考慮して適宜に選択することが可能である。また、後述するようにコーン部20の内部に照明装置50を設置してコーン部20及びバー部30(本体部10)を光らせる場合には、膜材の透光性も考慮してその厚さや材質を選択することが望ましい。また、膜材は使用場所や用途によっては難燃性や防火性の高いシート材を選択する場合もある。
【0034】
また、本実施形態では、本体部10の膜材としてターポリンからなるシート材を示したが、本発明の保安器具の膜材を構成するシート材は、他の材質であってもよい。シート材の材質としては、撥水性が良好で比較的に丈夫な生地であることが望ましく、他の材質のシート材としては、例えば、ポリウレタン及びナイロンからなる光沢性及び撥水性を有するシート材であるセシーナ(商標)、ナイロン製のタフタ、ナイロン製のリップストップ生地ならなるシート、塩ビニル樹脂製のシート材などが挙げられるが、これらに限らずさらに他の材質のシート材であってもよい。
【0035】
また、本体部10には、空気導入路11から導入された空気を外部に漏出させる空気漏出部が設けられている。ここでいう空気漏出部は、送風機60によって空気導入路11から本体部10内に導入されて該本体部10内に充填されている空気を僅かな量ずつ外部へ漏出させる部分である。この空気漏出部は、詳細な図示は省略するが、具体的には、例えば、バー部30の膜材とコーン部20の膜材とを縫い合わせてなる縫合部における膜材同士の隙間、コーン部20の膜材と基部25の膜材とを縫い合わせてなる縫合部における膜材同士の隙間、あるいは、膜材が有する小穴(縫目の小穴やその他の小穴)などである。また、後述する線ファスナーや面ファスナーで閉じられている開閉部21も隙間から空気を漏出させ得るための空気漏出部として機能する。
【0036】
また、コーン部20の膜材には開閉部21が設けられている。本実施形態では、開閉部21は、コーン部20の膜材を開閉可能な線ファスナーであり、コーン部20の側面における下端部20bから上方に向かって延びる直線状の部分として設けられている。
【0037】
開閉部21を開くことでコーン部20の内部に照明装置50を設置することが可能である。照明装置50は、例えばバッテリーを内蔵した携帯型のLED照明装置などであってよい。コーン部20の内部に設置した照明装置50からの光が膜材を透過してコーン部20及びバー部30を光らせることができる。コーン部20の内部に設置する照明装置50は、コーン部20の底部(基部25)に載置するようにしてもよいし、コーン部20の内部に吊り下げ用の紐(図示せず)などを設けておき、そこに吊り下げるようにしてもよい。
【0038】
なお、開閉部21はすべてのコーン部20に設けても良いし、いずれかのコーン部20のみに設けてもよい。また、開閉部21は一つのコーン部20に複数個所設けてもよい。さらに、開閉部21の配置や形状は本実施形態に示すコーン部20の側面における下端部20bから上方に向かって延びる直線状には限らず、コーン部20の側面における他の位置に設けても良いし、曲線状や屈曲線状など直線状以外の他の形状であってもよい。また、図1では、一つのコーン部20の内部にのみ照明装置50を図示しているが、他のコーン部20の内部にも同様の照明装置を設置してよい。
【0039】
また、コーン部20の側面には、側方へ突出する筒状の空気導入路(気体導入部)11が設けられている。空気導入路11は、コーン部20と同じ膜材で構成された中空筒状の部分で、コーン部20の側面に縫合で取り付けられている。空気導入路11の内部とコーン部20の内部は連通している。また、空気導入路11の先端部には空気導入口11aが設けられている。空気導入口11aは、線ファスナー又は面ファスナーなどで開閉可能であり、送風機60の吹出口60aを接続することで、送風機60からの空気を本体部10内に導入することができる。
【0040】
本実施形態の図示する態様では、空気導入路11は、本体部10における両側の二個のコーン部20それぞれに設けられており、それら二つのコーン部20それぞれから外側に向かって突出している。これら空気導入路11は、コーン部20の側面においてバー部30とは異なる方向(向き)に突出している。
【0041】
次に上記構成の保安器具1の使用方法を説明する。保安器具1は、本体部10の内部の空気を完全に抜いた状態でシート状の膜材を折り畳んだり丸めたりすることで寸法を小さくした状態で保管する。また、その状態(畳んだ状態)で使用現場(設置現場)まで運搬することができる。そして、使用現場において本体部10の膜材を広げ、さらにいずれか一つの空気導入路11の空気導入口11aに送風機60の吹出口60aを接続する。他の空気導入路11の空気導入口11aは閉じておく。その状態で送風機60を運転して空気導入口11aから本体部10内に空気を送り込む。これにより、コーン部20が略円錐形状に膨らみ、かつバー部30が円柱状(棒状)に膨らむことで、本体部10が従来のコーンとコーンバーからなる(折り畳み等ができない)保安器具を設置した状態と同様の形状に膨らむ。
【0042】
その状態で保安器具1を所望の設置場所の路面Lに設置し、その際、必要に応じてコーン部20の基部25に環状の錘部材40を載せる。またその際、必要に応じて、基部25の抜け防止部26に筒状又は棒状の長尺部材45を挿入することで、抜け防止部26が錘部材40と路面Lの隙間から抜けないようにする。また、必要に応じて、コーン部20の開閉部21(線ファスナー)を開いてコーン部20の内部に照明装置50を設置する。
【0043】
そして、保安器具1を使用している間は、送風機60の運転を継続することで常時本体部10の内部へ空気を送り込み続けるようにする。本体部10の内部へ送り込まれた空気は、その一部が膜材の縫目や小穴などの空気漏出部から僅かな量ずつ外部へ漏出し続ける。これにより、送風機60の運転を継続している間、本体部10(コーン部20及びバー部30)が膨らんだ状態で所望の形状を保持することができる。
【0044】
なお、本実施形態では、空気導入路11は両側の二つのコーン部20それぞれに設けているが、既述のように、使用しない空気導入口11aの線ファスナー又は面ファスナーなどの開閉具を閉じておくことで、当該使用しない空気導入口11aを本体部10内の空気を外部へ漏出させる空気漏出部として機能させることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の保安器具1は、膜材で画成された本体部10と、本体部10に設けた空気導入路(気体導入部)11と、を備え、空気導入路11から本体部10に導入される気体によって本体部10が膨らむことで所望の形状となる路面設置用の保安器具1であって、本体部10は、複数の略円錐形状のコーン部20と、それら複数のコーン部20を連結してなる複数の長尺状のバー部30とを有し、コーン部20とバー部30とは互いの内部が連通しており、空気導入路11から本体部10に導入された空気がコーン部20とバー部30との両方に充填されるように構成されている。
【0046】
本実施形態の保安器具1によれば、略円錐形状のコーン部20と長尺状のバー部30とを有してなる保安器具1を、空気導入路11から導入される空気によって膨らむことで所望の形状となるいわゆるバルーン型の保安器具としたことで、本体部10の内部の空気を抜いた状態で膜材を折り畳んだり丸めたりすることで寸法を小さくして保管でき、また、その状態で使用現場(設置現場)まで運搬することができる。そして、使用現場において本体部10の膜材を広げて空気導入路11から本体部10内に空気を導入することで、コーン部20が略円錐形状に膨らみ、かつバー部30が円柱状(棒状)に膨らむことで、本体部10が従来のコーンとコーンバーからなる保安器具を設置した状態と同様の形状に膨らむ。したがって、収納時の省スペース化及び運搬時の省力化を図ることができ、かつ、使用時には保安器具としての機能を十分に発揮することで利便性を高めることができる保安器具となる。
【0047】
また、本実施形態の保安器具1では、コーン部20とバー部30を一体化していることで、一の工程(作業)のみで従来のコーン本体とコーンバーの両方に対応する保安器具の設置が完了するので、使用現場(設置現場)での設営の時間を短縮することができると共に作業の省力化を図ることができる。
【0048】
また、本実施形態の保安器具1では、バー部30は、コーン部20における上端部20aの近傍の側面に接続されていることで、コーン部20における下端部20b以外の位置に接続されている。
【0049】
この構成によれば、バー部30がコーン部20における下端部20b以外の位置に接続されていることで、従来の(折り畳み等ができない)コーンを連結してなる棒状のコーンバーと同様に、バー部30を隣り合うコーン20の間に渡した柵状の部分として機能させることができる。
【0050】
また、本実施形態の保安器具1では、本体部10には、空気導入路11から導入された空気を外部に漏出させる空気漏出部(気体漏出部)が設けられており、本体部10は、空気導入路11から空気が常時導入されることで所望の形状が維持されるようになっている。
【0051】
この構成によれば、保安器具1を使用している間は、送風機60の運転を継続することで常時本体部10の内部へ空気を送り込み続けるようにすれば、本体部10の内部へ送り込まれた空気は、その一部が空気漏出部から僅かな量ずつ外部へ漏出し続けるようになる。これにより、簡単な構成で、送風機60の運転を継続している間、本体部10(コーン部20及びバー部30)を膨らませ続けて所望の形状を保持することができる。
【0052】
また、本実施形態の保安器具1では、空気漏出部は、膜材を縫い合わせてなる縫合部における膜材同士の隙間又は膜材の小穴である。
【0053】
この構成によれば、膜材を縫い合わせてなる縫合部における膜材同士の隙間や膜材の小穴を空気漏出部として用いることができるので、空気漏出部として機能するための部分を別途に設けることなく常時送風型の保安器具を構成できるので、本体部10の縫製などの製造過程の簡素化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0054】
また、本実施形態の保安器具1では、膜材は、ターポリンからなる布材である。
【0055】
この構成によれば、本体部10を構成する膜材がターポリンからなる布材であることで、膜材の薄型化や保安器具1の軽量化を図りながらも、保安器具1に必要な防水性及び耐久性等を確保することが可能となる。また、保安器具1の製造コストを比較的に低く抑えることができる。
【0056】
また、本実施形態の保安器具1では、コーン部20の下端部20bに連接されて保安器具1を設置する路面Lに載置される基部25を備えている。そして、基部25は、錘部材40を載置可能なシート状であって、錘部材40と路面Lとの隙間から当該基部25が抜けることを防止するための抜け防止部26を備えている。
【0057】
この構成によれば、基部25に錘部材40を載置することで、強風等で保安器具1が不用意に移動したり倒れたりすることを防止できる。また、基部25に抜け防止部26を備えたことで、錘部材40と路面Lとの隙間から基部40が抜けることを防止できるので、錘部40材を基部25に載置するだけでよく、保安器具1の設置の作業の容易化や時間の短縮化を図ることができる。
【0058】
また、本実施形態の保安器具1は、コーン部20の膜材に設けた開閉部21を備えている。
【0059】
この構成によれば、コーン部20の膜材に設けた開閉部21を備えることで、コーン部20を開閉して内部に照明装置50を収容することで保安器具1を発光させることなどができる。これにより、簡単な構成で保安器具1の利便性及び安全性を高めることができる。
【0060】
また、本実施形態では、開閉部21は、コーン部20の膜材を開閉可能な線ファスナーである。
【0061】
この構成によれば、開閉部21は、コーン部20の膜材を開閉可能な線ファスナーであることで、簡単な構成で、保安器具1の設置現場で照明装置50などを出し入れする際に開閉部21を容易かつ確実に開閉することが可能となる。したがって、保安器具1の利便性を更に高めることができる。
【0062】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項、及び図示する以外の事項については、第1実施形態と同じである。この点は、下記の他の実施形態についても同様である。
【0063】
図6は、本発明の第2実施形態に係る保安器具の一部を示す斜視図である。第1実施形態の保安器具1では、コーン部20の下端部20b(底部)に設けた基部25はシート状の部材で、当該基部25に別部材である錘部材40を載置する構成であったのに対して、図6に示す本実施形態の保安器具1-2では、基部25-2は膜材で袋状に形成されており、当該基部25-2内に錘部材や錘となる材料(いずれも図示せず)を収容するように構成している。
【0064】
すなわち、基部25-2はコーン部20の下端部20bの周囲の部分が袋状に形成されており、その周縁25aには、袋状の内部に設けた収容部29を開閉する開閉部28が設けられている。開閉部28は線ファスナーからなる開閉具を備えている。なお、開閉部28に設ける開閉具は線ファスナーには限らず、面ファスナーなど他の開閉具であってもよい。
【0065】
本実施形態の保安器具1-2は、第1実施形態の保安器具1と同様、本体部10内に空気を導入して本体部10のコーン部20とバー部30を膨らませるが、その膨らませる工程の前又は後に、必要に応じて、基部25-2の開閉部28を開いて袋状の基部25-2の収容部29内に錘部材や錘となる材料を収容することができる。基部25-2の収容部29に収容する錘部材は、例えば基部25-2の形状に沿う複数本の長尺状の薄板部材などであって良い。また、錘となる材料としては、砂又は砂鉄などの粒状物であってもよい。粒状物の場合は、収容部29内に当該粒状物を直接収容するようにしても良いし、予め粒状物を別の収容袋に収容しておき、その収容袋ごと収容部29内に収容するようにしてもよい。
【0066】
本実施形態の保安器具1-2によれば、基部25-2の収容部29に錘部材や錘となる材料を収容することができるので、強風等で保安器具1-2が不用意に移動したり倒れたりすることを防止できる。また、基部25-2に設けた錘部材や錘となる材料を収容するための収容部29が袋状の収容部であることで、基部25-2に既存の砂鉄などの粒状の錘となる材料も収容することができ、保安器具1-2の利便性がさらに向上する。
【0067】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図7は、本発明の第3実施形態に係る保安器具を示す概略の側面図である。本実施形態の保安器具1-3では、バー部30とコーン部20を接続する接続部31の内部に中空筒状のパイプ材32が設置されている。パイプ材32は中空筒状の形状を保持することができる程度の硬さを有する部材であれば、材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの各種の合成樹脂材で構成することができる。接続部31の内部に中空筒状のパイプ材32を設置することで、接続部31の膜材が密着して通気が妨げられることを防止でき、接続部31における気体(空気)の流通を確保することができる。パイプ材32は、接続部31内で位置ずれしないように、膜材に縫い止めしたり粘着テープで止めたりするなど各種の手段で固定してもよい。パイプ材32は、すべての接続部31に設けてもよいし、一部の接続部31のみに設けてもよい。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、保安器具1(1-2,1-3)の本体部10を構成する膜材に、空気導入路11から導入された空気を外部に漏出させる空気漏出部が設けられており、本体部10は、空気導入路11から空気が常時導入されることで所望の形状が維持される構成である場合を示したが、本発明の保安器具はこれに限らず、空気漏出部を備えていない構成であってもよい。すなわち、その場合は、本体部内に導入された空気が外部へ漏出しない封入型となる。したがって、送風機からの送風による本体部内への空気の導入は本体部が完全に膨らんだ状態となるまでの間のみとし、その状態で送風機を取り外して空気導入口を完全に塞ぐことで、その後の使用状態では本体部内に空気が封入されていることで本体部がコーン部とバー部の形状を維持するようになる。
【0069】
また、上記実施形態では、コーン部20に設けた開閉部21を開閉する機構が線ファスナーである場合を示したが、これ以外にも、開閉部21を開閉する機構は面ファスナーやスナップなど他の構造であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、保安器具1(1-2,1-3)の本体部10が四個のコーン部20と三本のバー部30を備える場合を示したが、本発明の保安器具が備えるコーン部とバー部の数はこれに限定されず、他の数であってもよい。また、本発明の保安器具が備えるコーン部とバー部は直線状に並ぶように連結する以外にも、屈曲状や環状に並ぶように連結してもよい。
【0071】
上記実施形態では、コーン部が円錐形状である場合を示したが、コーン部の具体的な形状はこれ限らず、例えば、四角錐形状をはじめとする多角錐形状など他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1,1-2,1-3 保安器具
2 膜材
10 本体部
11 空気導入路(気体導入部)
11a 空気導入口(気体導入部)
20 コーン部
21 開閉部(線ファスナー)
25,25-2 基部
26 抜け防止部
27 布材
28 開閉部(線ファスナー)
29 収容部
30 バー部
31 接続部
32 パイプ材
40 錘部材
45 長尺部材
50 照明装置
60 送風機
L 路面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7